1. Oh! ベルーシ絶対絶命
《ネタバレ》 いつもハチャメチャなキャラで人気を博したサタデーナイトライブ出身の怪優ジョン・ベルーシ。人気が出れば必ずやってくる、まともなキャラのドラマ。彼の場合はロマンティック・コメディの本作でした。 おそらく、ファンの受けは決して良くなかったのでしょう、当時、公開されたことも気づかずビデオ屋で偶然見つけたのが鑑賞のきっかけです。内容は当時によく見られた、別な世界に暮らす彼女とともに生活するうちに…というお互いにいがみ合いながら最後はひかれあうストーリーです。こちらのレビュワーさんたちからは決して評価は得られない作品かもしれません。 でも、彼の死がなければ、もしかするとトム・ハンクスやビル・マーレイのような名優へのステップアップを果たしていた可能性を感じさせる貴重な一本です。 この作品がきっかけなのか彼の仕事への志向が変わったのかわかりませんが、彼の出演作が一気に減ったので、映画会社側が何らかの形で見限った可能性がないわけではありませんが。 面白い、面白くないとは別に、一人の俳優の通過点としてみておいてもいい作品だと思います。 [ビデオ(字幕)] 7点(2020-04-24 22:32:03) |
2. 男はつらいよ お帰り 寅さん
《ネタバレ》 CMが秀逸。寅さんの面白おかしいセリフの数々、少し寂しそうな現在の登場人物の表情。寅さんの迷言、名言が今を生きる人々や観客に突き刺さる構図を予想させる。過去作の「男はつらいよ」で描かれていることを知っているから当然だ。 しかし鑑賞してみると、その予想はかなりの肩透かし。なぜか湘南ボーイの桑田佳祐の「ひとり紅白」が唐突に始まる。おそらく数多くのひとがラストの渥美さんの歌唱でほっとするのを考えれば、彼の起用は失敗だったとおもう。渥美さんなき作品の宣伝フックのためとはいえ、この発想は間違いだ。寅さんファンである桑田さんとしてみれば、OPの歌を断るわけも無い。彼が悪いわけではない。ただ、この話を彼に持ちかけた松竹側の自信の無さが残念だ。でもこの中身に不安を覚えたのは仕方ないと、見続けると痛感する。 光男は「三丁目の夕日キャラ」とダブるのは致し方ないとしても、別に何かに行き詰っているわけではない脱サラ小説家。娘もストーリーや妻の死別に絡んでこない都合のいい存在。妻の3回忌に再婚を勧める周囲を描くのであれば、妻との思い出が必須なのにそれもなし。そうなるとただただ後藤久美子との再会に誘導されるだけだ。これはまさに「ニューシネマパラダイス完全版」を見た気分。見なくてもいいものを見せられていく感覚。特にがっかりしたのが、空港最後で妻の死別を告白するという行為。これは私だけでなく寅さんもがっかりしたに違いない。男は最後までかっこつけるもんだ。寅さんの「顔で笑って心で泣いて」を続けているからこそ「男はつらいよ」なのだ。光男ではなくさくら目線で作った方がよかったのではないかとすら思える。 テーマがぶれているというか、見えないままという意味で本作品は直感で3点。寅さんと過去のマドンナの登場シーンも「ニューシネマパラダイス」を彷彿とするというレビューを散見するが、入れ方が唐突過ぎて登場シーンの段積みという表現以外はまったく違う。「ニューシネマ~」はアルフレッドがつないだフィルムの試写という現実シーンの体裁だが、本作の過去シーンは、光男も生まれていないころのマドンナも登場するいわゆる回想シーンだからだ。渥美さん亡き作品は過去を振り返るしかないし、見る側も当然それを望む。それならば、あの回想シーンを生かすストーリー展開になぜしなかったのか?光男の生まれていないころのマドンナまでも思いをはせるストーリーに出来なかったのはあまりに残念だ。そういった意味でも、内容面のちぐはぐさを隠し、期待を持たせてくれたCMがやはり秀逸といえる。もし内容が素晴らしければあのようなフェイクCMにはしなかっただろうけど。 ただ、そのことを差し引いても寅さんと当時のマドンナの輝きには圧倒される。そこだけでプラス3点。それほどまでに寅さんの表情が素敵だ。 [映画館(邦画)] 6点(2020-01-04 00:29:09)(良:4票) |
3. オーメン(1976)
今から20年以上前のテレビ放映。50半ばの父親が、私に付き合ってこの映画を見た。見終わって父親が「実はこの写真だが…」と私に一枚のスナップ写真を見せた。そこには笑顔の父親と、その首を横切る黒い影。大正生まれのオヤジがなんだかんだ言いながらこの映画の描写を怖がっていたことが懐かしい。それほどインパクトが強かったのだ。 もちろん公開当時も、カメラマンのクビチョンパ(これまた古い!)と、男女の怖いコーラスも後世の映画にどれほど影響を与えた事だろう。「ジョーズ」を見て海に入りたくなくなったと同様に、6月6日6時に特別な思いをもたらすほどこの映画のパワーは絶大だった。有名俳優に「ダミアン」という名前がいないのも、アメリカもなんだかんだこの作品に影響を与えられているのでは?などと勝手に想像してしまう。それほどまでにエンターテインメント性のある正統派ホラーとしてこの点数はつけたいと思う。それにしても、シリーズを通し一番怖いのはなぜかこの作品最初の乳母の首吊りシーン。どの描写よりもゾッとしてなんかしゃれになっていないような気がするほど衝撃的。今でも何度観ても心臓に悪い。 [試写会(字幕)] 9点(2012-08-30 16:33:14) |
4. 俺たちの交響楽
《ネタバレ》 ご存知、寅さんの名脚本家・朝間義隆氏が監督したベートーベンの第九を目指す市民コーラスのストーリー。山田洋二組のメンバーを中心に川崎の労働者たちを中心に描いた「まじめな」映画である。彼女がほしいという浅はかな工場づとめの青年(武田鉄矢)がコーラスメンバーの勧誘をしている友里千賀子や森下愛子に惹かれつい、仲間を誘い参加するところから始まるのだが、メンバーそれぞれが抱える悩みを丹念に描き、女目当てで参加した武田が徐々に自分を見つめなおす過程をやさしく描く、まさに「朝間」節の作品。時代性を否定せず、高度経済成長の終焉を醸しながら、小市民のささやかな輝きを描いている。 「同胞」と相似する何かがある作品。 [地上波(邦画)] 7点(2009-10-29 23:17:49) |
5. オー!ゴッド
《ネタバレ》 キリスト教でも様々な宗派が存在するアメリカでよくこんな達観した映画ができたのかと感心する。無宗教、多神教の日本人でもなぜか納得できる内容は見事だ。ジョン・デンバーの素朴さも適役だが、ジョージ・バーンズの神様も素敵だ。軽妙かつ明るくそしてやさしい映画は数少ない。テリー・ガーもポール・ソルヴィノも巧い。悪役だろうがこの映画を理解して出演していることがうれしい。憎々しい宗教家を演じるからこそ、公判の結末で、より一層の爽快感が増すことを理解しているのだ。そして最後の神様のねぎらいと励ましの言葉に心を打つ。この映画自体がモーゼのメッセージに匹敵するのではと思える逸品だ。 [地上波(吹替)] 8点(2009-10-18 04:34:50) |
6. ALWAYS 続・三丁目の夕日
今年77歳になる母を連れて観にいった。まず、はじまり方が見事!もともとCG処理につい注目しがちな本作。奴の登場は、昔の再現を越えた最もCG向きな場面。そこから始めることによって、現実に戻った時の違和感が消えているのだ。時代性を伝える意味だけでなく、CGの違和感を消し去り、さらに「東宝」の金字塔に敬意を表するという3つの意味ですばらしい。ストーリーも1作目の伏線をすべて戻しているのが好感持てる。ついヒット作となると更なる続編のために結論を先延ばしが多い昨今の作品のなかでは貴重かもしれない。周辺の人々の配役も見慣れた役をこなした名優たちで固めているため安心感がある。東京で生まれ育った私にとって夕陽の位置が違う、などのツッコミも、余裕のあるストーリー展開のおかげで、薀蓄をたれる余地と感じてしまう。そして何よりもうれしかったのは、スクリーンを見つめる母親の横顔を何十年ぶりに見れたことかもしれない。 [映画館(邦画)] 9点(2007-11-12 12:46:13)(良:8票) |