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よしのぶさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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21.  裸の島(1960) 《ネタバレ》 
飲み水も無い乾燥した島の斜面畑で、がむしゃらに土にしがみつくように生きている農民一家の姿を通じて、生きることの厳しさと尊さを伝え、更に人間とは何か、人は何のために生きるのかという人間の根源に迫る映画。そのため白黒映像で、会話は一切排除し、急斜面を桶で水を運び、乾いた土に水を注ぐ農夫婦の姿を執拗なまでに繰り返し追う。その単調さは、人間が生き抜くことの辛さ、切なさを表わすと同時に、生きることの崇高さをも表わしているように見える。物語としての映画ではなく、人間という“生き物”の本質に迫る象徴主義的映像詩となっている。 以上のような感想が持てればよかったのだが、残念ながらそうではなかった。感動には到らなかった。 とても土着の農民には見えない主演二人の“演技の”奮闘ぶりに苦笑するしかなかったのだ。いかにも都会育ちでございといわんばかりの華奢な体つきのへっぴり腰で、やっとこさ水桶を運ぶ姿には違和感を覚えた。あんな風では、三日も経てば足腰が立たなくなるだろう。それが感動できない理由である。 それでも光る演出が随所にあった。妻が水桶をこぼしたとき、夫が妻を殴ったこと。亡き子の葬式のとき、僧侶と生徒ら一行を迎える母親の服が一張羅の浴衣であったこと。子供を亡くした妻は平常心を装い埋葬まで済ませたが、あるとき感情を爆発させて、苦労して運んで来た水桶をひっくり返し、大地に身を投げて慟哭し、大切に育ててきた作物を乱暴にむしりとる。それを見つめる夫は無言。子供の為を思えばこそ、辛い生活にも耐えてきたのに、運命のなんと残酷なことか。だが、妻の“乱心”も束の間で、またすぐに、何事もなかったかのように元の作業に戻る。演出の冴えを見た。 他に不満点もある。それは島が乾燥した土地には見えないこと。それは草木の豊かさで明らかだ。飲み水や灌漑用水に天水を利用しないのもいただけない。また舟で水を運ぶのに一回で桶四つでは効率が悪い。八つ運べばよい。また、無い物ねだりだが、梅雨、冬の雪や霜柱、秋の台風など、一年を通じた丹念な島の生活の描写がほしかった。
[ビデオ(邦画)] 6点(2014-03-04 00:57:04)
22.  パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 《ネタバレ》 
ギリシア神話を下敷きにして、現代のニューヨークを舞台に、盗まれたゼウスの最強兵器「稲妻」をめぐっての冒険譚。冒頭の巨大ポセイドン出現場面では期待したが、以降の威厳の感じられない神々には幻滅させられた。総じてファンタジー色が少ない。高校生とファンタジーでは親和性が薄い。原作の12歳の方が適切だ。活躍する舞台は地上ではなく、天上などの異次元にした方がよい。そうすれば園芸店にメデューサがいて客を石に変えているが人間に露見しない、という矛盾がなくなる。ゼウスがポセイドンを呼び付けるが、そこは高層ビルで、共に人間の姿。摩天楼をオリンポス山になぞらえているのはわかるが、神同士なら天上で会えばよい。ファンタジーはイメージが大切だ。カインの渡し守もハデスもその妻も人間の姿。手抜きであろう。ゼウスはこれといった理由もなく、ポセイドンの息子パーシー(P)が犯人と決めつける。そしてポセイドンに「期日までに持ってこなければ戦争だ」と脅す。それでいて息子との面会は許さない。酷い神だ。Pは継父の酷い悪臭で神々から隠されているという。酷い設定だ。でも何故隠すのか?「Pが稲妻を盗んだ」の噂が広まり、「稲妻」を奪いに魔物が現れる。魔物に居場所が分るのに、ゼウスには分らない?母が冥界の支配者ハデスにさらわれ、ハデスは「稲妻」と母の交換を条件とする。Pは仲間と母の救助に向うが、先ず冥界からの帰還に必要な「真珠」を見つける必要がある。ここからペルセウス神話をなぞっての冒険が始まる。宝探し、怪物退治、ロード・ムービー、旅の仲間等の要素で、最大の見せどころ。が、残念ながら盛り上がらない。緊迫感がないのだ。「ジュラシック・パーク」の恐竜の迫力と比較すれば一目瞭然。前段のキャンプでの訓練もチャンバラにしか見えなかった。冥界で、ハデスを説得して母を返してもらうという最大の難問が立ちはだかるが、労せず解決してしまう。カタルシスは得られない。帰還してルークと一騎打ち。彼が「稲妻」を盗んだ真犯人で、楯に隠してPに与え、冥界でハデスに渡るように企んだのだった。「稲妻」が実践で使用されるが、驚くほどの威力はない。羊頭狗肉だ。夜の場面が多く、見にくい。何故魔物の近くに真珠があるのかは謎だ。真珠を守っている様子はなく、ハデスとも不連絡。真珠が足ずに一人冥界に残るが、後にPがゼウスに頼んで戻してもらう。無駄な挿話はやめよう。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-20 22:04:03)
23.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
シリーズのマンネリ化を防ぐためだろう、度肝を抜く演出、鑑賞者を驚かせて新鮮味を出そうという演出が顕著にみられる。 冒頭、いきなり前回からの続き、オスプレイ航空機部隊によるアルカイダ号襲撃が、スロー逆回転で始まる。 海に転落して気を失っていたアリスが意識を取り戻すと、別の人間に入れ替わっており、ゾンビに襲撃されて逃げ惑う。 実はクローンで別人だが、編集で錯誤させる。クローンが捕殺され意識が途切れると、今度は本物のアリスの意識が回復する。そこはアンブレラ社の実験施設内で、半裸衣装を着て床に横たわっていた。尋問されている途中で、メインコンピュータが再起動、その隙をついて部屋を脱出すると、そこは東京で、ゾンビに追いかけられる。別の部屋に逃げると、そこは中央制御室だが、奇妙なことにオペレータは全員射殺されていた。そkへ見知らぬ女が入ってきて、「私はウェスカーの仲間であなたを助けにきた。ウェスカーはアンブレラ社を裏切り、あなたと力を合わせて戦いたいと希望している」といった。こちらの頭も逆回転しそうな、意表をつく展開の連続だ。ここまでは面白かったが、後がいけない。銃を中心にしたアクションの連続で、目新しさはなく、飽きてしまった。観終わってみれば、進展はわずかで、実験施設から脱出するだけの話。そもそも物語は破綻しかけている。アンブレラ社は、人類がほぼ滅亡している状況なのに、人体実験を繰り返して化学兵器の開発に余念がない。とおもったら、今度は人類絶滅を目指すとか言い出す。ゾンビ感染ものから、マッドマックス風の荒涼世界、マトリックス風の仮想現実世界を経て、ターミネーター風のコンピュータ反乱世界へと変貌を遂げつつ、プリズン・ブレイク、エイリアン2の風味も加わって、最早統一感なしの世界観に堕してしまっている。観客を喜ばせようという努力は買うが、何でもありの荒唐無稽設定と中味のない物語では、いくら大金をかけたアクション娯楽大作でも限界がある。半裸も危険なアクションも厭わない主演女優の役者根性と相変わらずのキレのあるアクションには頭が下がる。次回作でいよいよ最終回。ゾンビ+クリーチャー+コンピュータ軍団と人間との壮絶な戦いが繰り広げられ、人間は苦戦し追い詰められるが主人公の捨て身戦法により、中央制御装置が爆破され、最終的に人間が勝利、ワクチンでゾンビが人間に戻る、といった内容と予想する。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 19:30:29)(良:1票)
24.  バイオハザードIV アフターライフ 《ネタバレ》 
第一、冒頭の東京での戦闘場面。ヒロインのアリスとそのクローン達の襲撃により、悪の枢軸アンブレラ社の地下要塞は損壊を受け、機能不全に追い込まれる。非情なる議長ウェスカーは部下らを見棄て、ただ一人飛行機で脱出し、特殊爆弾による自爆装置を起動させ、部下もろとも地下要塞を爆発させる。だがアリスはいつの間にか飛行機に忍び込んでいた。アリスが銃を突きつけると、ウェスカーは振り向きざま、首に特殊遺伝子無効化ワクチンを注射する。飛行機が富士山に激突して爆発炎上するがアリスは奇跡的に助かる。 第二、アリスとウェスカーの最終対決場面。死闘の果て、アリスがウェスカーの口に銃弾を撃ち込み、勝利を収める。クリスとクレア兄妹がとどめを弾丸を撃ち込む。それでもウェスカーは復活し、またもや飛行機で脱出する。機上、アリスらの船の自爆装置を起動させるが爆弾は機内にあり、爆発する。アリスが予想して潜ませておいたのだ。上記2点に映画の制作方針が集約されている。安易な設定、強引な展開、御都合主義等の誹りはあえて甘受し、美女がゾンビや敵役をひたすら倒すアクション・シーンを魅力的に描くことに専念したのだ。もともとゾンビを倒すテレビゲームの映画化なので、堅いことは言いっこなしという暗黙の了解がある。ビジュアル重視なのでセクシー美女が多数登場し、ここぞという場面ではスーパー・スローモーションでじっくり鑑賞となる。ヒロインと敵役が超人的な能力を持つのに対し、ゾンビ共は弱弱しく、あっけなくなぎ倒される。テンポを速めるため、非主要人物の描写は記号的でしかなく、次々に消えてゆく。話題作りのためプリズン・ブレイクのパロディも取り入れる。ホラーや人間ドラマ要素を抑え、3Dアクションを気楽に楽しむ娯楽作品に徹したところに成功の要因があるだろう。印象的なアクション場面が2つ。飛行機が山に激突した瞬間にストップモーションとなり、そのままカメラが奥へパンする場面と、アリスが大勢のゾンビ共を引連れて屋上から飛び降り、縄伝いに垂直降下する場面。その適確な映像処理を讃えたい。難点は、スローモーション過多なこと。飽きさせては駄目。素早いカッティングとの併用で緩急をつけるのが肝要。大斧の巨大処刑人はギャグにしか見えず。「噴出する水」の演出のため、水道管の立並ぶ部屋が出てくるが、実際にあんな部屋があるか?必殺兵器の25セント硬貨弾は威力があるか?
[DVD(吹替)] 6点(2013-06-19 11:35:34)(良:1票)
25.  バダック 《ネタバレ》 
イラン版「山椒大夫」といったところ。「バダック」とは国境沿いで密輸品を扱う運び屋のこと。 両親を亡くし、天涯孤独となった子供の兄妹が、人さらいに連れ去られ、人身売買の仲介者に売られる。兄はバダックとして密輸業者に買われ、学校にもいかず、苛酷な強制労働に従事させられる。妹は仲介者の所有となる。イスラム諸国では国内の売春が禁止されているため、異国の女性を連れてきて売春させることがあるという。妹はそれの予備軍で、いずれ海外に売られてゆくのだろう。やがて兄はバダック仲間の協力を得て、監禁所を脱走し、国境を越え、わずかな情報を手がかりに妹の行方を探す。そして最終的に妹が監禁されている船に潜伏することができた。しかしそれは勘違いで、皮肉なことに妹は密輸業者の元にいたのだった。全ては子供の朝知恵であったという残酷な結末。 子供の誘拐、人身売買、密輸、殺人、売春等、イランで子供の置かれている厳しい現実を知ってもらおうという企図がみえる。しかし成功しているとは思えない。あれこれと疑問の多い映画なのだ。 水の枯れた村で主人公の一家だけが井戸を掘ってまで村に留まろうとする理由は何か。陥没事故時、村人が一人もいなかったいのはどうしてか?さっきまであれほどいたのに。全員が一斉に引っ越したか。兄が最初の脱走をしたとき、監禁所に舞い戻って来ざるを得なかったのはどうしてか?大人達、警察、役所、宗教施設などに相談しても保護してもらえないのか。そんなことはあるまい。国境を越えるとき有刺鉄線にてこずっていたが、切断すれば簡単に越えられる。少女達が監禁されている施設に忍び込んだ兄とその友人だが、友人がトラックの中に妹がいると思い込んだのはどうしてか。声をかけさえすればよかったのに。トラックが走り去った次の場面で、兄と友人が港に停めてあるトラックを見張っている。どうやってトラックの後を追ったのか。全体として兄の冒険的行動に多くの比重がかけられているが、それよりも苛酷な環境を描いた方が企図に叶っていたのではないか。救いの見えないエンディングにしたも疑問だ。妹は終始泣くだけで、他に何もしない。他力本願では、観賞者の心は動かない。 
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-16 05:19:48)
26.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 
女「ブリトー食べたい」⇒弟ドラッグストアに天井破って進入(曲ピンクパンサー)⇒警察に捕まる⇒兄「もう26歳だぞ、海軍に入れ!」⇒数年後大尉に昇進、これが序章。海軍兵学校は23歳までしか入れないのに、しかも数年で大尉……。男女の出会いも設定もおバカ全開のポップコーン映画に決定。で、演習中に敵エイリアン侵略。恒星間移動可能な高度な技術を持ちながら一機(通信機)が人工衛生に衝突して墜落するというトホホさ……。四機はハワイ近海に潜伏。敵は攻撃されない限り反撃しないのだが、愚弟が暴走して戦闘モードに。敵がバリアーを張ったことから、互いにレーダーが使えない(あれだけ音するのにソナーも使えない?)アナログ対決になる。が、敵が戦闘機や爆撃機、照明弾などを使わないのが不思議、戦闘機は確かに映っていた。デザイン秀逸な火球型飛行兵器も放置。それより敵戦艦がバタフライのようにジャンプしながらの移動って……、揺れるし、衝撃は受けるし、遅くなるし……。全艦撃沈されて、展示艦ミズーリ―号を使うアイデアは出色だが、旧軍人がなぜそこにいるのか、実砲弾が何故あるのかなどの説明がないのがおバカ映画のお約束?一方女と傷痍軍人は偶然?アオフ島の通信基地の近くにいて、敵が施設を使って母星と通信しようとしていることを愚弟に伝える。見つかって傷痍軍人と敵の殴り合いが始まる。ここで敵の前歯がぶっとぶシュールなスローモーションをお楽しみください。あとは省略可。当然第二陣が攻めてくるだろうからそれに備えよ、という常識的な可能性を捨てきって、よかった、よかったと大団円で終了。終ってみれば、敵は専守防衛に徹しており、子供や武器を持たない人間は攻撃せず、捕虜は見捨てず回収するといったある意味紳士的な人たち。この中途半端な設定のためにカタルシスを得ることができない。地球を救ったのは誰か?地球を危機に陥れたのは誰か?もっと単純明快にすべき。自衛隊を出したのは日本での興行収入アップを見込んでの下心みえみえ。結局この映画、そこそこヒットしたものの莫大な制作費は回収できずに赤字で、あえなく撃沈。せめて軍事オタクが喜ぶような真剣でもバトルがあれば、カルト的な人気を博するのだけれど。心優しいエイリアンの勝利?
[映画館(字幕)] 6点(2012-09-09 12:35:40)(良:1票)
27.  白蛇伝 《ネタバレ》 
実に大らかな作柄。声優(ナレーション、歌含む)がたった二人というのは弁士の伝統が残っていたからでしょうか。現在ではありえない選択で、そういう意味で貴重。芸達者の二人だから成しえたこと。登場人物や動物達の造詣は優美で、傑出していると思います。アニメーションの動きはさすがに古さを感じさせるものですが、背景画はとても温かみがあり、心にかなうものでした。物語は中国民話を改変したもの。男の子(許仙)が白蛇を可愛がっていたが、大人達に指弾され、泣く泣く野に逃がす。後年妖術の力を得た白蛇は娘(白娘)の姿に化身し、かつて可愛がってくれた男の子を探し出す。大人になった許仙は白娘に一目惚れ。白娘の正体を見抜いた僧法海の妨害など、いくつかの障害を乗り越え、最後に本当の人間となり許仙と結ばれるという恋愛物語。わかりやすい内容だが、感動は薄い。その最大の理由は、白娘が人間になるために払う代償が少ないから。人魚姫では、声を失い、足の痛みに耐えなければならなかった。白娘の場合は、払う代償は単に妖術が使えなくなるというもの。人間になれば妖精としての永遠の命が失われることになるが、元々人間になりたいのだから、大きな代償ではない。さらに死んだ許仙を生き返らせる生命の花をもらう。これは安直すぎる。さほどの努力もしてないのに障害が解決されるのでは感動も薄くなろうというもの。最後のクライマックスは、白娘の下女小青の頼みとする「なまず王」と法海との妖術対法力合戦。人間となってしまった白娘は浪に翻弄されるのみで影が薄い。許仙は宝石を盗んだ罪を着せられ、強制労働に従事させられ、白娘の幻を追って崖から墜落死する。常に受け身で、法海や白娘から助けられる存在。白蛇は許仙の類まれな優しさに惹かれたのだが、許仙の優しさが発揮る展開もない。許仙がもう少し活躍する展開になれば、名作になりえただろう。脚本がひとつの方向を向いていない。物語中盤で、町の愚連隊である動物達が仲間に加わるが、物語にはほとんど絡まない。許仙と白娘が再会するきっかけとなった笛、胡弓といったアイテムも後半活用されない。だからとぎれとぎれの印象となる。ちなみに小青は魚から人間に変身するが、これは後年宮崎駿の「ポニョ」の原型か。「崖の上のポニョ」のベースに本作品があるのかも。宮崎氏は、この映画を観た経験がアニメ界に入るきっかけの一つとなったと語っているのだから。
[DVD(邦画)] 6点(2012-07-15 18:52:51)
28.  白痴(1951) 《ネタバレ》 
妙子=絶対不幸者で魔性の女。少女時代から愛人生活。金で売られそうになる。妙子は綾子を自分にないものすべてをもっていると思っていた。綾子=恵まれた環境で育ったお嬢さん。気分の起伏が激しい。妙子に嫉妬する。亀田=聖者。善の象徴。戦犯となり死刑直前から奇跡的に生還するが後遺症で癲癇発症。純粋すぎて嘘がつけず、心に思ったことをそのまま口にする。他人の心を見抜く力、直観力に優れている。赤間=俗人、悪の象徴。妙子に恋をし、結婚を阻むためお金を出す。恋敵の亀田を殺そうとする。 ◆戦争の副産物といえる、珍奇な聖者亀田。彼は一瞬で妙子の不幸を見抜き、彼女の心をとらえてしまう。妙子の傷を癒したい一心で、結婚を申し込む。妙子は亀田はあまりに純粋すぎて、汚れた自分にふさわしくないと考え、綾子と結婚させようとする。綾子の心は揺れ動くものの、最終的に亀田との結婚を承諾。妙子は亀田が結婚したら、自分も赤間と結婚するつもりだった。しかし綾子は亀田が本当に自分だけを愛しているか知りたくて、亀田と共に妙子と対面、感情が噴出し、絶縁宣言をする。妙子は嫉妬する綾子を見て、亀田にはふさわしくない女と確信し、亀田に自分を選ぶか綾子を選ぶか迫る。亀田は戸惑うばかり。綾子は家を飛び出し、雪中をさ迷い、倒れて高熱を出す。妙子はその場で失神。嫉妬に狂った赤間は妙子を独占するために妙子を刺殺、精神を病む。亀田は精神は破綻する。純粋な心の鏡は欲望を曇りなく映し出す。亀田の純粋すぎる精神を媒介に、各人の欲望が増幅され、凶器となって跳ね返ってきた。全員が破滅するというショッキングな結末。純粋すぎる心はこの世に存在することは許されないのか? ◆男女入り乱れての息つまる心理戦。見えにくい心の動きを窓、吹雪、積雪、風、樹などの背景や仮面、悪魔像、服装、蝋燭などの小道具、そしてライティングで豊かに表現する。構図もビシビシ決まる。映画の技術教科書のような映画。 ◆純粋すぎる心というのは得てして人を傷つける。原作に共鳴して純粋な心で映画制作した監督も又打撃を受ける。フィルムは短縮され、客は入らず、批評も散々、会社から馘首を宣言される。落胆甚だしく電車にも乗らず、徒歩で家まで帰っ監督を待っていたのが羅生門グランプリ受賞の報せだった。本人は映画祭に参加していることも知らなかったのに。奇跡はある。
[インターネット(字幕)] 6点(2011-10-06 09:34:46)
29.  薔薇の名前 《ネタバレ》 
時代考証を重ねて忠誠を忠実に再現しているのは好感が持てる。だがわざわざ欧州中の醜い顔の役者を集める必要があったか疑問だ。特殊メイクはなしという。まるで動物園のようで、悪趣味としかいいようがない。中世のキリスト教に恨みがあるのだろう。ヒロイン?の女性もしかり。がさつで下品で汚く撮っている。性愛場面は醜悪だ。あの場面はラストの題名の意味を明かす重要なパートにつながる甘美な想い出でなければならない。青い体験描写として失敗。そもそも女はどうして少年修道士を強姦したのか?その背景が描けていない。食料を求めて侵入した筈だが。◆ミステリーとして弱い。黙示録の予言通りに殺人が進む、というのはフェイクで終わってみればただの偶然。何のために血を貯める大壺があるのか疑問だ。まぎらわしく風呂で溺死するなと言いたい。最初のは殺人ではなく飛び降り自殺。理由は禁書を見せてもらう見返りの男色行為を恥じたから。納得ずくの筈だし、自殺は重い罪なのだが。しかも嵐の夜に塔から飛び降りるというややこしい死に方。◆犯人は盲目の長老で、禁書に毒を塗っておいただけ。それを二人が盗み見して死んだ。盲目なのにどうやって秘密の迷宮図書館に独りで出入りできるのか疑問です。また何しに図書館に行くのか?また禁書は焚書にすれば済むわけで、どうして収蔵しておくのか?理由がさっぱりわからない。笑うことが罪だというオチに笑ってしまう。◆事件を裁くべくやってきた異端審問官だが、一目みてどういう人物が分るので意外性がない。暗愚で、杓子定規。主人公との対決も肩透かし。この人物は民衆に崖から馬車ごと突き落とされるが、そんなに悪人だろうか?民衆がこの人物をどれだけ知っていたというのか?自らの信念に則って異端審問しただけだ。一方的に悪者にされる理由もないだろう。女には火をつけなかったのだし。修道院が火事なったら逃げだしたのも腑に落ちない。◆主人公はどうやってあの炎の中から脱出できたのか?あんなに諦め顔だったのに。知恵を絞り秘密の抜け穴を見つけ出すのが筋だと思うが、何も描かれていない。又修道院長や長老の姿が見えないのはどういうわけだろうか?主人公が真実を説明し、修道院長らが感謝したり謝ったりする場面があって当然ではないか?◆欧州と日本ではヒットしたがアメリカでは酷評で終わった。理由は上記に説明した通り、話がすっきりしないからだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2011-09-12 15:15:38)(笑:1票) (良:2票)
30.  張込み(1958) 《ネタバレ》 
かつて恋人同士だった男と女が、どういう理由か別れてしまう。 男は仕事を求めて上京。3年間汗水たらして真面目に働くが、現実は厳しかった。どの職場も長続きせず職を転々とし、遂に肺病に罹患し、働けなくなってしまう。 進退極まった男は悪友の誘いに乗り、質屋強盗を決行するも、店主を殺害するという最悪の結果に。相棒は捕まり、男は拳銃を持って逃走する。 女は20歳以上年上の銀行員の後妻に納まる。子供は3人。経済的に恵まれ、表面上は平安な家庭に見えるが、子供達と必ずしもしっくりとはいかず、何より強い吝嗇癖のある夫の元での生活は潤いが無い。刑事の目には女はくたびれきっているように見える。 ◆そんな二人が邂逅。男にとって女はこの世の最後の名残に会っておきたかっただけ。女をどうこうするつもりはなかった。男は沖縄に行くと嘘をつく。女は情念が昂ぶり、家庭を捨てて男についてゆくとまで言う。3年前に別れたときも未練たらたらだったのだ。それを聴いている刑事だが、あんなに離れていても会話が聞こえるのは不思議である。 ◆刑事は終始女に同情的であるが、幾分高踏的なのが鼻につく。ろくに知りもしないのに他人の人生を値踏みするきらいがある。二人は温泉宿で会っている事実があるのに、女は男の情婦ではないと主張。絶対に事情聴取をしなければならない状況の筈なのにそれをせず、無罪放免で家に帰す。バス代まで与える。そして何を思ったか自分の恋人へ前代未聞の電報でのプロポーズ。 ◆短編を引き延ばして映画化。脚本が失敗している。肝心な事件の詳細や犯人の心理が描かれておらず、且恋人時代の描写も割愛。従って観客は男にも女にも感情移入できない。女の心情を刑事が想像しているだけ。尺が足らないので刑事の恋愛も加えましたというお粗末さ。刑事があれほど警戒していた拳銃は所持しておらず、逮捕もあっけない。まさに肩透かしだ。見せ場は、旧恋人と邂逅した主婦が生き生きとしだし、女性心理の神秘が垣間見れたあたりか。物語の中心を男と女の心理に据え、刑事はあくまでオブザーバーにすればよかったのに、中途半端に刑事を描いてしまったので、未消化な映画となった。男を善人にし過ぎたのも間違い。無理心中するつもりだった設定にすれば物語が動いた。
[DVD(邦画)] 6点(2011-07-25 00:58:58)
31.  バルカン超特急(1938) 《ネタバレ》 
冒頭のおもちゃのようなセットの町に口あんぐり。何もかもがユルイ。密室、鉄道、サスペンス、アクション、ラブコメ。道具立ては良いのだが、詰めが甘い。◆ホテルで小夜曲を歌う男が突然出てきた手によって絞殺された。あの歌は暗号だったのか?何故そんなまどろっこしいことをするのか?で、スパイの老嬢がその曲を覚えて、駄賃の小銭を投げる。殺されたのに気づけよな!翌日出発の駅で老嬢が娘に向かって、「私の茶色のバック知らない?」知るわけないよね。そして階上から老嬢めがけて植木鉢が落とされる。が手元が狂って、隣の娘の頭に激突。自分が狙われていることに気づかない老嬢。本当にスパイ?◆植木鉢の件から推察するに、敵は老嬢を拘束して尋問したいのではなく、ただ殺したいだけのようだ。それなのに随分と手の込んだことをする。同席の乗客を買収。ウエイトレスの一人は仲間。高名な医者も仲間。老嬢の身代わりを病人に化けて乗車させる。付添いの尼僧も仲間。娘が寝た隙をついて、老嬢を拉致、病人とすり替える。そんな面倒なことをしなくてもスパイ罪で逮捕するか、毒殺でもすれば済むものを。三流国の警察のやることはわかりませんね。◆娘と音楽家は列車の物置場で奇術師の男と対決する。倒した男を箱に閉じ込めたら消えてしまったが、どこに消えたのか?男はどうやって客車に戻ったのか。◆・尼僧の裏切りで敵の策略が明らかとなり、老嬢を取り戻してからもドタバタは続く。銃撃戦だが、敵は最終ターゲットである老嬢が逃げても追わない。撃たれて死んだと思ったのか。それでも銃撃戦を続けるのはなぜ?銃撃戦が始まっても逃げない運転手達。あーあ、結局殺されちゃった。◆外務省に着いた娘と音楽家。音楽のことはまかせてくれと言っていたのに旋律をすっかり忘れている男。旋律を弾く老嬢に出会うが、科の尉はどうやって早く戻ってくることができたのか。一方は鉄道、一方は徒歩だよな。◆いつも喧嘩ばかりしているダブル不倫カップル。男は死んでしまった。女のその後は描かれず。それにしても6週間の不倫旅行とは…。◆クリケットファンの二人の紳士。ロンドンに着いたら試合が中止。唖然とする二人。だが観客も唖然とする。登場人物が一体となって同じ方向を向き、勝利することでカタルシスを得る。なのにこの映画は最後まで登場人物場がばらばらの方向を向いている。おしゃれなコメディのつもりだろうか。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-18 01:05:40)(笑:2票)
32.  パプリカ(2006) 《ネタバレ》 
人間ドラマに注目してみた。粉川刑事は、不安神経症で悩み、サイコセラピーマシンによる治療を試みる。彼の夢は映画監督になること。友人がいて一緒に映画を作り、将来の夢を語り合った。だが友人は夭折し、彼も挫折、刑事になった。そのせいで映画が嫌いになる。犯人を取り逃がしたことと、夢を失ったことのトラウマがある。夢の中でパプリカを助ける英雄を演じたことでトラウマは消えた。犯人を捕らえ、映画も観れるようになった。これをサポートする千葉(パプリカ)、時田(天才)、所長、氷室はどうだろうか?彼らの人間ドラマはあまり描かれていない。千葉と時田が結ばれるのがオチだが、その伏線がほとんどないので唐突感がある。所長のキャラが定まらない。しっかりしているようで、しっかりしていない。いてもいなくてもいいのだ。氷室は抜け殻である。一方敵はどうか?大ボスの理事長のトラウマは何か?年老いて、歩けないだけしか描かれていない。大妄想の持ち主で、夢と現実の世界を支配しようという野望のある人物にはみえない。描きこみが足りない。アシスタントの小山内は、科学者として時田の足元に及ばないことと、好きな千葉から軽んじられていることがトラウマとなっている。それで理事長に操られるようになった。これは分かりやすい。DCミニのシステムが分かりにくいのは欠点だ。夢を他人と共有できるというのはいいが、アナフェラキシー効果で現実の中に夢が侵入してくるとか、ネットからも夢に入れるとか、複雑すぎないか?というか、やりすぎではないか?千葉とその分身であるパプリカが同時に存在するのをどう説明する?それに夢と現実の境界が曖昧になりすぎて、現在そこにある危機が認識できない。どうせ夢だろうと思うと引いてしまう。美しい夢ならしばらくの間浸っていたいと思うが、ビル街を人形やロボットがごちゃごちゃ行進するような殺伐とした夢では、早く終わってくれと願うだけ。オイディプス、人魚、孫悟空、ピノキオ、ターザン、みんな借りてきたキャラで薄っぺらい。だから映画として重みに欠ける。現実世界で、理事長と小山内はどうなったのか?粉川はどうやって犯人を逮捕したのか?千葉と時田の恋愛の成就する瞬間は?意識不明だった氷室は?多くがおいてきぼりのまま残される。これでは夢オチにも等しい内容。描き込みが凄いのは評価できる。
[DVD(邦画)] 6点(2009-11-09 07:51:33)
33.  ハンコック 《ネタバレ》 
楽しく鑑賞できる、中身のない娯楽映画です。 シャーリーズ・セロンってどんどん変ってゆくなあ、と思いつつ見てました。 しかし、この人がスーパーウーマンだったという設定には口あんぐり。 これといった見所、はらはら、どきどきはなかったです。 飲んだくれのスーパーマン、という設定に魅力を感じませんでした。
[映画館(吹替)] 6点(2008-10-02 19:24:39)
34.  パニック・ルーム 《ネタバレ》 
あんな広い四階建の屋敷を離婚した母子が借りるかなあ、という疑問はさておき、 密室サスペンスものとしてはまずまずの出来でした。 娘は小児糖尿病をわずらっている。 (切迫した状況を作り出すために使われるよくあるパターンだね) 侵入する犯人三人が、間抜け、凶悪、善人というキャラ設定はいいけど、 チームワークが悪くていらいらさせられる。 挙句の果てに仲間割れで自滅じゃ救いようがない。 お互い知恵と知恵を絞りあっての攻防戦が見せ所になるはずなんだけどね。 観ている間には気づかないのですが、あとから考えると首をひねりたくなるようなことが多いです。 ガスを送られているのに自ら火をつけることないでしょ。自殺行為です。 パニックルームにチャッカマンがあるとはね。 警察に電話したら、「少々お待ちください」って何? で、待たないで元夫のところに電話するか? しかも、あんな年取った夫がやってくるとは。 警察がきたときに素直に事情を話せばよかったのに。 犯人が娘を殺すわけないので、警察に囲まれた時点で犯人の負けでしょ。 途中立場が逆転して、パニックルームに犯人が閉じこもる場面は面白かった。 凶悪の犯人が指を挟まれて骨折し、拳銃を奪われた時点で緊張感が失われた。 最後鶴瓶キャラの犯人が戻ってきて母子を救うのがどんでん返しのつもりなのでしょうね。 インパクトに欠けます。 ぼくが犯人であれば事情を説明し、顔を隠し、拳銃を渡して部屋に入れてもらい、とっとと金庫を破って逃げます。
[DVD(字幕)] 6点(2008-04-28 00:31:00)
35.  配達されない三通の手紙 《ネタバレ》 
【人間を描く】特殊な事情の下での復讐的犯行であり、もっと犯人に同情できるように描かれていれば余韻が残ったろう。犯人が結婚直前に婚約者の男性に捨てられた失意の様子、その後の3年間の喪失の日々、婚約者が戻ってきてからの和解の過程、楽しいヨーロッパでの新婚旅行、満ち足りた結婚生活、これらの動機に関する重要なことが簡略にしか描かれていないのが不満だ。犯人の内面に踏み込んでおらず、女の情念や嫉妬といった感情は記号的にしか伝わらず、感情移入ができない。また夫は二人の美女から死ぬほど愛される役柄である。それなのに男性的・人間的魅力に乏しい。神経質な顔に軟弱そうな体、言われるまま義父の会社に勤務するが勤務評価は低い、感情的に女に手をあげる、酔いつぶれて「あの女を殺す」と叫ぶ、別れてくれない女を毒殺しようとする、妻や妻の姉に金を無心する…、ダメ人間である。いったいどこに魅かれるのか。彼がどうして結婚破棄をして逃亡したのかも説明されない。過去の苦悩や苦悩が描かれなにので、この男が自殺しても観客の心は動かない。脚本は米国青年が日本にやってきてからの出来事を律儀に時系列で進め、ジョギングや陶芸やフルートなど不要なものばかり描いている。加害者の不幸な人生を描くことに成功して名作となった「砂の器」と好対照をなす。ただ被害者である元恋人の不幸な人生は描けている。 【サスペンス】登場人物の少ない家庭内殺人事件である。夫が犯人であるかのようにミスリードしているのは見え見えで、苦笑を禁じえない。三女と居候の青年は探偵役、長女は本筋に絡まない、父親も母親も影が薄い。となると残るは妻と夫の妹だけで、意外性がないのだ。三女の婚約者や長女、父親などを容疑者候補にするくらい練らないと良質のサスペンスをはいえないだろう。警察の捜査も不信で、どうして被害者の身元を真っ先に確認しないのか。素人探偵に先を越されている。警察の不注意で無実の容疑者人が逃亡、自殺させてしまった責任は重い。逃亡を幇助した容疑者の妹も見逃している。事件の真相を明らかにせず、闇に葬るのは検事としてあるまじき行為である。証拠がないというが、ヒ素の入手経路を調べれば真相が明らかになるはずである。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-21 22:44:41)
36.  ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 《ネタバレ》 
美術的なセンスは優れているのだが、演出に問題があるのでのめりこめない。例えば幽霊が何度も出現するが、ストーリーとは無関係で、集中力を削ぐ結果となっている。二つの出来事のつなぎや感情のながれもうまく処理できていない。鳥獣バックビークは処刑されるところをハリーとハーマイオニーに助けてもらい、その後二人を人狼から救うのだが、バックビークには何の感情も表われない。両者に友情が生まれないのだ。もっと感動的に演出できるはずだ。代わりにハリーがバックビークに乗って飛翔する場面が感動的な演出で表現されているが、ハリーは日常的に杖で空を飛んでいるので観る側にさほどの感興は湧かない。ハリーの味方であったはず先生の正体が人狼で、月を見て変身しハリーを襲うのだが、翌日はもとの先生の姿に戻って通常通り親しく会話をしている。この不自然さはいかんともしがたい。ハーマイオニーが突然悪童ドラコを殴る場面があるが、殴る理由はあとにならないと分からない。わかりやすく伝える努力をしてほしい。題名が「アズガバンの囚人」なのに、アズガバンの牢獄の描写が一切ないのも不満だ。恐怖の番人「吸魂鬼」の目をかいくぐって、どうやって脱獄したのかミステリーで、それを知りたいのに、完全にスルーされてしまっている。冒頭、ハリーが人間界で使ってはいけない魔法を使っても処罰されず、その理由も明確に提示されない。メインの主題は冤罪で幽閉されていたシリウスの無実が判明するということなのに、その大団円の場面がない。ネズミ男の正体もはっきしないまま、行方不明で終わる中途半端さ。このように演出が拙劣で、この監督は「魅せる」才能に恵まれていない。◆ハーマイオニーが持つタイムトラベル時計で事件が解決されるが、これが最大の問題点だ。まず彼女がどういう経緯で入手したのかが描かれていない。何度も過去に戻って、やり直しが効くというのであれば、どんな問題でも解決できてしまう。死人だって生き返らすことができるだろう。間違いないなく、賢者の石に匹敵する重要アイテムだ。大変危険でもあり、魔法学校の生徒が持っているのがおかしい。ファンタジーであっても軽々しく登場させてはいけない類のもので、これを登場させたせいで底の浅い世界観にしか見えなくなってしまっった。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-19 17:05:23)(良:1票)
37.  ハワイ・マレー沖海戦 《ネタバレ》 
東宝が海軍から依頼され、海軍賛美・国威称揚・戦意高揚を目的として作られた生粋の国策映画。それにも関わらず、毒々しいプロタガンダはさほど見られないので現代でも安心して鑑賞できる。「スマートな海軍さん」と親しまれていた海軍のイメージを大切にしている。何と言っても円谷英二による日本初の特撮映画として有名。特撮の出来は大変良い。◆海軍飛行予科練習生、練習航空隊の訓練ぶりが詳細に描かれているのも興味深い。飛行機や軍艦の実物が登場し、記録映画としても大変貴重。◆海軍から依頼されたにも関わらず、実際の空母等の資料はほとんど提供されなかった。これに対して東宝側は憤慨したらしいが、当時空母赤城、加賀、飛龍、蒼龍はすでにミッドウェー海戦で撃沈されており、その事実は国民に隠されている状況だったことを考えると海軍の対応は無理もないと思われる。◆優秀な兵士を育てるコツは、死ぬことを怖がらせないこと。精神論、大和魂を強調する教育方針。「自分のことごとくは、かしこくも大元帥陛下のために捧げ奉ったものである。そう肚をくくれば、何も怖くは無くなった」当時多くの人がこの言葉を信じたことだろう。戦争は必然で、国や天皇のために命を捧げて発奮、戦争に勝利しさえすれば、家族は幸福になれると信じていた。単純な論法である。◆家族は淡々と描かれる。姉や妹は主人公のことを気にかけているが、母親は「海軍にやった以上もううちの子ではない」と気丈に軍国の母ぶりを発揮。少年の夢にも現れない。それ以上は検閲があるので描けない。
[DVD(邦画)] 5点(2011-01-25 04:10:55)
38.  ハッピーフライト(2008) 《ネタバレ》 
CAが仕事を通じて成長する物語かと思っていたが、航空の仕事の紹介だった。全体を通じて仕事上のミスが多すぎ。あの頼りない操縦士が機長に昇格できたはずがない。CAもケーキをだめにしたり、お客さんに頼まれたことをこなせなかったり、怒らせたり。客をなだめるのにクーポン券を渡すのは疑問。今時「機長を出せ」とか、「行き先を変えろ」と騒ぐ客がいるだろうか?故障の原因はバードストライク。バードパトロールはニセ記者に気を取られていたとはいえ職務怠慢。仕事と取材は分けようよ。この人最後まで反省なし。最悪は航空マニアに指摘されるまで鳥が原因と気づかなかったこと。鳥で簡単にエアデータコンピュータが故障するとは、なんとも脆弱。操縦士はバードストライクを目撃しているのだから、直ちにシステムチェックすべき。また故障がわかるまで時間がかかりすぎる。速度を計測する気筒管の破損に気づかないなんて。故障個所はすぐに表示されるべき。速度データが取れないのに何故気づかない。残った気筒管はヒーター故障で氷って使えない。低空飛行すれば氷は解けるが、何故か燃料計算を始める。ハワイまでの飛行時間は約7時間、2時間半しか飛んでないので少し低空飛行しても引き返せるのは明白。それにスピードは管制側である程度把握できる筈。管制塔では落雷で、ほとんどの端末が使用不可に。落雷対策って基本なんですが。整備士は工具が足りないのは一目瞭然なのに工具箱を戻してしまう。整備も完全でなく、不完全なまま飛ぶ。出発ぎりぎりまで整備する体制がおかしい。整備優先のスケジュールにすべき。台風圏内に着陸させるのは論外。名古屋に行け。物語の構成上、最後にミズをカバーして、成長してゆく人間模様を描くのがセオリー。だがほとんどのミスがカバーできていない。ケーキを作ったくらいか。綾瀬と吹石はミスを取り戻せていない。飛行機も引き返してしまった。これでは感動できない。コメディなので、不時着に失敗するかもしれないというサスペンスもない。新婚旅行のバカップルやヅラネタはチープ。 笑えないのは乗客の命がかかっているから。大事故になりかねない飛行機トラブルをコメディにする設定に無理がある。ジャズやシンクロのような趣味なら笑える。完全にアンハッピーフライト。
[DVD(邦画)] 5点(2010-05-12 10:08:58)(良:4票)
39.  ハプニング 《ネタバレ》 
自殺のオンパレードには辟易。芝刈り機とかライオンとかは悪趣味。自殺を罪と考えるキリスト教圏の人たちにはさぞショッキングだったでしょう。大きな謎を投げかけた導入部は成功でしょう。しかし、結論の「植物が何らかの理由で(たぶん人間に抵抗するため)放出する毒素」では、リアリティがなさすぎるので減点。この映画の路線では人々のパニックと恐怖を描ければ成功だろうが、残念な結果に。駅や道路の混雑などの集団パニックシーンがない。警察や軍が出動して隔離や救出を行い飛行機やヘリも飛ぶはず。軍人が一人でてくるが、基地に死体があるというだけで、死体は見せない。また逃避者から必死さが伝わらない。植物の毒素と指摘しながらホットドックをほおばる。車のルーフに切れ込みがあるのに黙って見ている。主人公の夫婦が浮気関連のジョークを言う。人工の植物に話しかける。二人の少年が愚かしい行動をし、射殺される。サイコばあさんという別の恐怖を描く。ハンカチで口を覆うなどの防御をしない。これらを廃し、じわじわと迫り来る恐怖を描くべきだったのだ。謎解きの解明も早すぎる。それも主人公が経験や考察から導くのではなく、農場の老人が指摘するのも減点。また「突発現象は一日くらいで急激に収まる」と二度も説明があり、オチが読めてしまう。全く不要で、最後にTV解説者が説明すればよい。サブストーリーは冷めかけた夫婦のよりが戻ることと、子供を守ること。夫が危険を承知で妻のいる別棟に向かうシーンでそれを表現したかったらしいが、あれは愛情とは思えなかった。お互い家にいれば安心で、会話もできるのだ。風が収まるまで待てばいい。外にに出るにしても、せめて走れ。また呼応して妻も出なくていいのに出てしまう。しかも子供を連れて。本当に子供を守る気がありますか?脱出を諦めた自殺行動としか映りません。しかもその子は友人の子供で、ほとんど活躍せず、弱い存在として描かれていない。当然夫婦と子供の絆も見えてこない。徐々に絆が強くなる展開にすべき。友人が別れてすぐに亡くなるのも減点。助かりそうになるが、最終的に亡くなる方が悲劇性が高まる。植物の毒素をCGで視覚化すばもっとリアリティが出たと思う。風と音楽だけじゃね。ところで雨が降れば毒素も飛ばないので、脱出できますね。
[DVD(字幕)] 5点(2009-04-08 20:41:44)(笑:1票) (良:1票)
40.  バイオハザードIII 《ネタバレ》 
で、アラスカはどうなったの? ということはつまり4も作るつもりってわけね。 目新しさがあまりないのが残念。 突然飛び出してくるゾンビ、感染犬、傷を隠す人間、レーザーナイフ。 感染カラスと変異博士はよかったかな。 植物にも感染して地球が砂漠化というのは大げさすぎるんじゃ。 ミラは超能力もっちゃうし。 ストーリーはあってなきがごとし。 ひたすらゾンビを殺しまくる。 誰が死んでも助かってもどうでもいいや。 どうせいきあたりばったしなんだから。 ミラに魅力があるので5点献上。 
[DVD(字幕)] 5点(2008-04-16 04:18:51)
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