1. バック・トゥ・ザ・フューチャー
タイム・トリップがテーマの作品は数多くあるが、とりわけ本作は未来社会の出来事を知る由もない人たちに、それをさり気なく知らしめるという、ある種の優越感と言うか、爽快感な気分を存分に味あわせてくれる作品だったと言える。夢のあった時代に遡る事で、アメリカ史の一段面を巡る面白さや、細かなエピソードがそれぞれ重要な意味を帯びてくるといったように、とにかく脚本が良く出来ている。R・ゼメキスの演出も実に歯切れの良いテンポで笑いとサスペンスを盛り上げていく。エンターティンメントとしては彼の最高傑作ではないだろうか。ダイナミックでスピード感溢れる迫力ある作品となったのも、タイムマシンにスポーツ・カーを選んだ事が大きなポイントだったという事も付け加えておきたい。 9点(2002-02-10 00:07:16)(良:1票) |
2. 薔薇の名前
ベテラン刑事と若手刑事とのコンビによるポリティカル・サスペンスの中世版といったところだろうか。(C・スレイターを初めて見たのも本作だったと思う)修道院やラストの書籍室のセットの素晴らしさ、修道士たちのメイクの強烈さ等で、否応無く中世の闇の世界へ引きずり込まれていく事に、快感すら覚えた記憶がある。又、このゴシック・ホラーとも言える独特の映像世界の創造には、製作サイドの並々ならぬ熱意をも感じる。コスチュームものあるいは中世ものは苦手だが、この作品だけは別格。 9点(2001-03-09 16:22:58) |
3. 八月の鯨
ストーリーには起伏にとんだ展開があるわけではなく、ごくありふれた日常を淡々と描いているすぎないのに、全編に綴られる老いと生の心地よい緊張感が人の心を捉えて離さない。老いていく人間と変わらぬ美しい自然の風景との対比を詩情豊かに描き出す。それでも肉体が衰えてもなお限界まで自分の力で、そして自分の家で生き抜こうとする老人の生き様は、人間の尊厳というものを、静かだが鮮烈に主張している。老いて目が不自由なためのイライラで、なにかとトゲトゲしい姉役のベティ・デイビスと、献身的に尽くす妹役のリリアン・ギッシュという往年の名優の共演がこの作品の命でもある。珠玉の名作とはこういった作品を言うのだろう。 9点(2001-01-21 18:37:09)(良:1票) |
4. 裸の銃を持つ男
全編、ナンセンス・ギャグのオンパレードで、こんなに腹を抱えて笑えるコメディーはめったにお目にかかれるものではない。大器晩成とはよく言ったもので、歳食ってからのレスリー・ニールセンの活躍ぶりには驚くほかはない。昔々、TV映画「ニュー・ブリード」って刑事モノで正義感に燃えた渋~いチームリーダーを演っていた頃からは想像も出来ないほどだけど、本質的にはコメディー・センスに長けた人だったんだなぁ~とこの作品を観て納得! 8点(2001-02-21 00:11:16) |
5. バットマン(1989)
パート2以降のコメントはあるのに、パート1がないという珍しい現象。オープニングからT・バートンのゴシックな世界に引き込まれていく快感がたまらない作品だが、救出しようとヴィッキーの体重を聞いてロープでするするとビルを昇っていこうとするが失敗し、その後、再度彼女に体重を確認するシーンや、バットウイングが空中を飛行中、雲の上に出て満月に重なる瞬間、バット・シンボルの図柄となる。実にシャレっ気もきいていて、そこがもうひとつの魅力ともなっている。さらにこの作品の成功は、本当の主役J・ニコルソンの憎々しげな怪演に負うところ大である。 8点(2001-01-21 18:07:37) |
6. バグダッド・カフェ
最初は、ん?って感じでしたが、やがてドラマが進むにつれ登場人物たちに感情移入し、どんどん作品世界に引き込まれ、そして最後はほんわかとした気分で映画館をあとにする事ができました。 8点(2000-10-26 23:07:28) |
7. バンデットQ
恐怖心よりも好奇心の方が勝っている少年が、6人の小人たちを引き連れて時空を超えた冒険の旅に出る。ファンタジーSF&冒険のツボをしっかり押さえ、ゴシック・ホラーのおどろおどろしさとユーモアセンスに溢れた、いかにもT・ギリアム的創造世界を見事に構築させている。例えば少年の部屋のタンスをブチ破って白馬の騎士が突然現れたり、その部屋を始め至るところに4次元へ抜けるタイムホール(なぜか四角い)が出現したり、次々とトリップする歴史は支離滅裂なものだったりと、彼本来のいい加減さと豊かなイマジネーションが巧くミックスされている。J・ハリソンのプロデュース作品でもある。 7点(2001-11-03 23:45:40) |
8. ハンター(1980)
マックィーンの遺作ともなった本作は、彼の作品歴の中でもあまり語られる事がない。それだけに、まるで彼の遺言のようで余計にいとおしく思える。彼が今まで演じてきたカッコよさよりも、老いに対してのあからさまな描写には驚かされるし、彼の人生そのものを感じざるを得ない。常にカッコいいマックィーンをリアルタイムで観つづけてきた者にとって、厳しい現実というものを突きつけられたようで、なんと辛くて寂しいことか。映画は、彼が死を自覚し、新しい世代に自分の夢を託すかのように、生まれた子供を抱きかかえるシーンで終わる。賞金稼ぎの役で売り出し、そして賞金稼ぎの役で終わった事に感慨深いものを感じる。 7点(2000-11-11 16:56:33)(良:4票) |