1. バンブルビー
《ネタバレ》 これは泣いた。もうガチで泣いた。 小学生の頃からトランスフォーマーで遊んできたけど、これは僕がずっと観たかったトランスフォーマーだった。 本作はベイ版の前日譚とのことだが、過去作との矛盾が散見され、実はリブートとの噂まで出ているので、シリーズファンすら混乱気味である。気にせずに楽しもう。(そもそもベイ版ではビーは既にWW2でナチス相手に暴れていた設定) トランスフォーマーはベイを監督に据え、5作品が制作されきたが、もはや何をやっているのか分からないほど散らかっており、映画として誉められる出来ではなかっただろう。(個人的には大好きだが) しかしトラビス・ナイト版はベイとは対照的にコンパクトにまとめられ、チャーリーとビーの絆を丁寧に追っていく。 エモーショナルなアクションは、ファミリー映画を逸脱せぬようにとても見やすく、変形ギミックを活かすアイデアに満ちている。 まず映像が良い。複雑なキャラデザだった過去作では、もはや変形はほとんど描かれなくなってしまったが、今作では80年代という舞台を加味し、当時のG1世代を思い起こさせるレトロで簡素なデザインが採用されている。(サイバトロン星のトランスフォーマー達に興奮するファンも多いだろう。) 彼らが現実のトイのようにガシャンガシャンとパーツを移動させて変形すれば、否が応でも子供心がくすぐられるというものだ。 実際、チャーリーがワーゲンの下にビーの顔を発見するシーンは、ある種のメッセージだろう。多くの車型TFトイは車体下部にロボットの顔が配置されることが多いのだ。これは僕が親しんできた、あのおもちゃの映画なのだ。 もちろんただの回顧主義だけではなく、シンプルなデザインの恩恵で、アクションはとても見やすい。 変形ギミックも、作中至る所で活かされており、今更ながら他のSF作品との違いを見せつけてくれる。 例えば、チャーリーとメモの距離をぐっと近づけたチェイスシーン、或いは吹き飛ばされた勢いそのままにに変形し、継ぎ目ない攻撃を見せる戦闘描写、そしてビーのお茶目な一面をのぞかせる感情表現として。敵のトリプルチェンジャー(三段変形)もせわしなく変形し、見せ場を盛り上げてくれる。 またクライマックスでは、同時進行するイベントをワンショットで処理するなど、ナイトはアクションの見せ方もずば抜けている。 アニメ作品で鳴らしてきた彼だが、実写でもその技巧やセンスを遺憾なく発揮したといえるだろう。 主要キャラを黄色、赤、青と特徴づけたり、小さな子供に分かりやすいような配慮も優しくて好きだ。 そんな本作の最も良い点は、他のどのTF映画よりもドラマ性とメッセージ性に長けている点だろう。 ほんの数年前に、本作とほぼ同じプロットのSFファミリー映画が制作されいるように、話自体は有りがちだ。 しかしチャーリーとビーの交流は、丁寧な人物描写に裏打ちされ、爽やかな感動をもたらしてくれる。 日本公開時に字幕が出るか不明だが、チャーリーを映して去るカマロのミラーには「ミラーに映る物体は、実際には見えている場所よりも近くにあります」という旨の注意喚起が表記されている。(アメリカでは安全面からこの表記が義務付けられているのである) 「世界を救え!!」と訴え続けてきたベイ版とは、全く別のアプローチがここで結実している。 大好きだったお父さんも、遠くに行ってしまったようで今も一番身近な心にいるということ。 心が離れてしまったようでも、家族の愛はいつもチャーリーを見守っているということ。 それはきっとバンブルビーにとっても同じ。 傷ついた二人が絆を深め、お互いに再生を促していく。 EDテーマの歌詞(主演のヘイリーちゃんが作詞して歌っている)に、「一人では見つけられなかった気持ちを君がくれたんだよ」とあるように、目に見える以上の力がチャーリーやビー、そして家族を繋げているのである。 これぞまさにトランスフォーマーシリーズに受け継がれる「モア・ザン・ミーツ・ジ・アイ」の精神ではないだろうか。 子どものころ、おもちゃで遊びながら「彼らと友だちになりたいな」と空想したものだが、「バンブルビー」はそんな僕が本当に観たかったトランスフォーマー映画であり、号泣ファミリー映画に仕上がっていた。 余談ですが僕は「トゥルー・グリッド」以来、ヘイリーちゃん追い続けています。初期は「存在感あるなぁ」的な感じで見てたのですが、今では曲を発表すればヘビロテし、海外でヘイリーちゃん似を見つければ必ずナンパするなど、半ば変態じみた目線で彼女を見ています。そんで今回のヘイリーちゃんなんですが、もう可愛くて可愛くて…はい満点。 ※映画も良かったです。 [映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2019-03-04 15:23:53) |
2. ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
《ネタバレ》 「ローグ・ワン」に続くスピンオフ第2作目。 監督の降板など制作面での苦心が耳に入る本作。一応シリーズ最高の製作費(3億ドルを超えるという…)もこれに伴う再撮影が一因である。 興行面でも、12月公開の法則を覆し、「最後のジェダイ」からわずか半年で公開されたうえ、アメコミ勢が幅を利かす中で苦戦を強いられ、思うような興行成績を上げられなかったようだ。(実際には北米だけで2億ドル以上も稼いだが、SW作品として見れば、これは失敗とみなされる数字である。普通2億ドルって大ヒットなんだけども…) ネガティブな話題が先行してしまったが、実際に観てみるとコレがとても「楽しい」。 最終的に大ベテランのロン・ハワードが上手くまとめてくれたようだ。 「ソロ」は明らかにスター・ウォーズの雰囲気・世界観を纏いながら、どこかクラシックな活劇の匂いを感じ取れる楽しい楽しいアドベンチャー映画である。 それは大列車強盗を思わせる中盤の素晴らしいアクション・シーケンスによく現れている。 どんだけCGで武装しても、結局は走るノリモノに乗り移って敵との攻防をきっちり描けば、それは楽しいのである。 さらにカルリジアンが合流したあたりからは、キャラの魅力も深まり、これまた胸のすく銃撃戦が繰り広げられる。うん、面白い! ハリソン・フォードの後釜として登場したエアエンライクは、予想をはるかに超えるソロっぷり。大胆不敵で自信家ながらも、隠しきれないのチャーミングさをよく体現している。 これはビックリしたけど、本当に期待を超える良いソロだった。 しかし、そんな素晴らしいソロが登場する一方、個人的に本作で一番残念な点もまたソロである。 先に述べたとおり、エアエンライクは期待以上だし、監督の演出も適切である。しかし脚本視点からみたソロについては物足りなさを禁じ得ない。 この映画はソロの始まりを描く立ち位置のはずが、本当の意味で僕の知らないソロは出てこない。 つまりソロがスクリーンに登場した時からソロ過ぎるのである。 本作のラストには、もともと利害関係だけのドライデンの想像通りの裏切り、そしてメンターであるベケットの裏切り、さらには(フォローもあるが)最愛のキーラの裏切りというどんなメンタル強者でも泣いて帰りたくなる裏切りの連打が用意されている。 これほどの心理攻撃がありながら、そこにソロの成長・学びは感じられない。 元からいつものソロだったため、成長譚・誕生譚としての深みが希薄なのだ。 劇中にはソロを構成するいくつものキーワードや、シリーズが抱える要素に答えや驚きを提供しているが、大事なのは「ソロ」だろう。 幸運のお守り、ソロという名前、チューイとの出会い、ブラスター、ミレニアムファルコンとその速さの秘密、「知ってるさ」、「帝国のマーチ」のCM、名前だけ出て結局謎な格闘技「テラス・カシ」、ソロの活躍が反乱軍の血肉となっていた等々…興味深い考察が盛りだくさんだ。(PSのゲームでフィーチャーされたテラス・カシは個人的にずっと謎に思ってたので、映画での初登場は驚き) 非情に興味深く嬉しい演出の数々だが、問題はこういう部分を優等生的に回収するのみで、肝心のソロの誕生に踏み込めなかった脚本か。 制作側が往年のファンのバッシングに敏感になっているのは承知だが、ソロの内面についてはもう少し冒険して欲しかったのが個人的な感想だ。 また敵キャラの描きこみが薄いのも物足りないか。 サノスのアゴからポール・ベタニーが出てきたような見た目のドライデンなど、どうも雑魚臭がぬぐいきれない。そのうえ紋切り型のキャラ造形のためハックスやカイロのような「味」がない。 ドライデンなど「小物だけどウザい中ボス」に据えておいて、スター性のあるダース・モールさんを惜しげなく暗躍させた方が良かったのではないだろうか。 L3と絡めたカルリジアン、ハンの「相棒」で独立した面を見せるチューイなど面白い部分もあるだけに、敵キャラを上手く見せられなかったのが惜しい。 しかしながら、要所要所であのテーマ曲が否応なしに心を躍らせてくれるのも、この映画の巧いところ。盛り上げ方は熟知している。 惜しい点もあったが「ハン・ソロ」は楽しいアドベンチャー映画として高次元に位置し、とても魅力的な映画に仕上がっていることは事実だ。 [映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2018-06-05 00:43:30)(良:2票) |
3. 白鯨との闘い
《ネタバレ》 「白鯨との闘い」とはなかなか吹っ掛けた邦題である。モビー・ディックとの死闘を描くアクションかと思いきや、この映画で語られるのは「白鯨」のモデルとなった凄惨な海難事件を描いたドラマである。白鯨の課した過酷なサバイバルとの闘いを指しての邦題だろう。アサイラムあたりが「白鯨VSメカシャーク」とかを作ってしまいそうなところ、ロン・ハワードはこれを奥深いドラマに仕上げている。 石油という燃料にあやかる私たちにとって、産業革命を支えた一昔前の燃料のストーリーは充分に通じるテーマといえる。ましてや米国の技術革新によりシェールオイルが増産され、OPECはじめ世界にきな臭い影響を与えている昨今である。この映画においてオイルが示すもの、それと人類との関係性が胸に突き刺さるはずだ。 そもそも本来の捕鯨とは食用に行う狩猟であったはずである。しかし鯨油がもたらす恩恵に気づくと、捕鯨は生活を豊かにするための行為へと変貌した。いかに立派な帆船と言えど鯨油以外を置く場所は無いので残りは海に捨ててしまうのだ。 街の灯を絶やさぬために海洋の心臓部で鯨油を追う。人間の英知を象徴する物が火なら、それを動かす燃料の一つは人間の傲慢である。これを悪とは思わないが、しかし同時にこのような行為に伴う業の深さを忘れてはいないか。知っていても、普段意識したりすることもないのではないか。 そこで白鯨は、鯨油を求める船乗り達に試練を与えた。油はもちろん食べるものもない。ただ一つの渇望は飢えを満たすことである。 生きるために食べる。至極単純ながら苦渋の決断を下さなければ乗り越えられない試練だ。だからこそ再び白鯨と対峙したときにオーウェンは武器を置き、ジョージは自らの行為の業の深さを話したのだろう。 クジラの数も減り、海の果ての宝を求める捕鯨も衰退期に入った。しかし映画のラストには新たな燃料の存在を匂わせる。今度は地の果てまでオイルを求める時代が来るのだ。知っての通り、これは豊かさと同時に人類に混乱や破壊をもたらすことになる代物でもある。つまり現代人も、豊かさに伴うエゴや、それが引き起こす悲劇を、意識せずとも実は知っているということだ。 [映画館(字幕)] 8点(2016-01-25 13:26:41)(良:1票) |
4. バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
《ネタバレ》 これは映画か、現実か。または娯楽か芸術か、目の前の人間かネットの友達か、人は飛べるのか。お互いに対して理解を示さないもの、それは時に予期せぬ奇跡をもたらす。 驚異のカメラワークで、ある俳優の劇的なカムバックを演出した本作は、今年最高の1本に数えるべき大傑作だ。 M・キートンといえばバットマンだ。間違いない。まだヒーローがユビキタスな存在ではなかった頃、タイツの自警団に市民権を与えたのは彼だ。 今ではヒーロー映画はハリウッド最強の稼ぎ頭となった。しかしその立役者はどうなった?イメージの定着により、キャリアのどん底にいる。チャンベー主演のバットマン世代なら、存在すら知らないのがオチだ。 かつての大スター・リーガン同様、演じるキートンも同じ悪夢に苦しめられてきたのである。 「どうしてこうなった…」まさにキートンの心の声。 引き合いに出されるジョージ兄貴は三代目バットマンの過去を、「忘れたいね」と笑い飛ばし、今も人気者なのに。 そんな彼と激突するのはE・ノートン。演技派ながら新ハルクに登板、かと思えば「アベンジャーズ」は降板し「芸術家」のブランドを保っている。キートンにはキツい対戦相手だ。 劇中ノートン演じるシャイナーは、これまたリアルにリーガンを糾弾する。ハリウッド対ブロードウェイ、つまり娯楽と芸術のぶつかり合いだ。この構図がなかなか面白く、双方の理解の無さが本作の鍵にもなる。 舞台俳優の罵声、批評家の冷笑。彼らにとって、リーガンは只のセレブ。しかしリーガンは彼らのイメージ通りかというとそれも違う。 純粋な理由から俳優を志し、過去の失敗から、今は家族を真摯に見つめている。理解されないだけだ、演技と家族への思いに嘘はない。 だからこそ公演初日の事件は、お互いを歩み寄らせた。それは娯楽と芸術だけではなく、家族との愛もだ。鼻は吹き飛んだが、欲しかった花の香りを感じ取れた。 ラストでサムが何を見たのかは、個人のとらえ方によると思う。もちろんリーガンに超能力はない(空を飛んだ後、タクシーの料金を請求される)。しかし僕としてはハッピーエンドを信じたい。ついにバードマンから解放され、飛翔したのだと。だってキートンも奇跡を起こしたんだから。 こんな物語を、奇跡を誰が予期しただろうか。リーガンとキートンのカムバックに乾杯。そして空気と化した2代目バットマン、バル・キルマーに合掌。 [映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2015-04-01 13:50:26) |
5. バイオハザードV リトリビューション
《ネタバレ》 シリーズも既に5作目に突入したが、ここに来て本シリーズがゲームを出発点にした映画であることを強く感じさせる作品に仕上がっている。一つ一つのチャプタをクリアしていく構成や、「そんな装備で大丈夫か?」と思わざるを得ない大胆な衣装はまさにゲームの映画化といった感じだ。それでいて、シリーズモノの強みを生かして、過去に出演したキャラを登場させているのも、サービス度が高くて好印象。しかも男勝りな役柄ばかりのミシェル・ロドリゲスが、か弱い女性として登場するという大サービス(?)もナイス。相変わらず突っ込みどころは多いが、ジルの胸元の空いたスーツとか、エイダのドレスとかに押し切られた感じで、なんか満足してしまった。 しかし、本編でミラにチェーンロックで殴打された挙句、頭を打ち抜かれたゾンビが、最後の最後でしんみりとバラードを披露するとは思わなかった。ウルトラC級の立ち回りですな。 [映画館(字幕)] 6点(2012-09-26 21:55:25) |
6. パラノーマル・アクティビティ2
《ネタバレ》 すごいホラー映画だと思う。鑑賞後お客さんが「それだけかよ~。」って爽やかに笑ってられるホラーってそう出会えるものではない。勿論褒めてないよ。第二部ということもあり、前作の小島よしおカップル登場など話は繋がっているようだが、静寂から大音響でドン!ばかりの恐怖演出、ツッコミ待ちの人物&ストーリーでは恐怖に震えることなど不可能だ。製作者側は真剣に怖いものを作ろうとしていると思うが、こちらは半ば冷めた目線で冷笑を交え鑑賞するしかない。まぁビックリ箱的な映画なのでティーン向けのアトラクションムービーとしては、少しは楽しめるのではないか。 余談ですが皆さんは「フルハウス」ってドラマ観てました?NHKであってたヤツ。この映画を観て思い出しました。「掃除機と格闘する父」「ザリガニみたいだな!」「階段を滑り台のように滑りまくる母」「父の首を折る女ターミネーター」「クレジット後の衝撃の事実」のシーンに観客の笑い声を入れれば、「フルハウス」になると思います。 [映画館(字幕)] 3点(2011-02-27 16:10:07)(笑:2票) |
7. バイオハザードIV アフターライフ
《ネタバレ》 シリーズ初の3D作品。元々普通に撮影したものを3Dに変換して上映するスタンスが多い中、本作は最初から3D上映用に撮影されただけあって熱のこもった映像が展開する。多用されるスローモーションの演出も、立体映像と相性がいいらしく、シャワー室での戦闘など随所で効果的に、スタイリッシュに決まっていた。アクションやストーリーは突っ込み所満載でご都合主義がまかり通っているが、前作で「もう好きにやってくれ!」と思わせられるようなラストを観ているので個人的には気にならなかった。むしろ序盤でアリス軍団と超能力をばっさり消滅させるところが潔い。「また好きにやってくれ!」と大らかな気持ちで鑑賞した。サブキャラなんて感情移入する間も無くポンポン退場していくのでこれはもう飛び出る美人女優のハチャメチャアクションを楽しむのが一番。もはややりすぎの域のウェスカー銃弾避けも原作らしさが出てて良し。ウェスカーの爆死に「ざまぁ(笑)」と見物するために血相変えて(超必死に!)甲板に走るヒーローたちにも突っ込んではいけない。タイトルは「バイオハザードIV プリズン・ブレイク」の方がいいんじゃないかとも思ってはいけない。 [映画館(字幕)] 6点(2010-09-05 02:18:15)(笑:1票) |
8. パリより愛をこめて
《ネタバレ》 「96時間」の超過保護溺愛パパに続き、この監督は正直失笑を買うような設定で、非常に真面目に映画を作るところがすごい。普通アクション映画は敵が主人公側より強く、またタイムリミットや人質などの圧倒的なアドバンテージを握っていれば、知恵を絞って仲間の犠牲を払ってやっとのことで敵の陰謀を食い止めることが出来るというものだ。しかしこの監督、この作品はどうだ。激しい銃撃戦から繊細な近接戦闘まで柔軟にこなし、捜査でも鋭いセンスを発揮すれば、重火器も使いこなす男が仲間にいる。ヒゲでハゲのチェスまでこなす最強の巨漢が主人公のバディだ。そんな彼らがお粗末なテロリスト(主犯格二人?)と闘うというならば、これはもはや負ける見込みはない。安心してトラボルタの凶行の数々を楽しめる。「主人公が最強(すぎる)」というある意味ずるい設定で強すぎる故の爽快感はなかなかのもの。その効果的な設定が、だれることない王道的なバディムービーと組み合わさることで、何も考えずに鑑賞するにはちょうどいい佳作へと昇華した。 [映画館(字幕)] 6点(2010-06-09 23:12:21)(良:1票) |
9. バッド・ルーテナント
《ネタバレ》 オリジナル未見で鑑賞。構成が独特で映像もアーティスティックな、かなりクセのある映画であり、客層が限られるかもしれないが、なかなかの出来映えだと感じた。話の本筋としては「殺人事件の解決」という目的が一応用意されているが、扱いは添え物程度で、悪徳警官のニューオーリンズでの日常を描くことに焦点をあてているようだ。警察ながら権力を振りかざして人を傷つけ、ドラッグに溺れ、賭博に興じ破産寸前。好き放題の末に問題を起こすも、悪銭で助かり事件も解決。恋人と一緒になり、昇進も果たしたが、心は決して安まらない。彼を見ていると、出来るだけ正しいことやりたいんだが、面倒ならば力を行使してしまう弱さ、権力によって他人にばれなかったり、許されるのならば悪いことでも平気で行動に移す弱さなど、色々な人としての弱さを感じ取れる。僕にも、人間的な弱さの部分で(ケイジほど激しくやってはいないが)非常に通ずる点があり、とても共感できたのが、本作を楽しめた要因だと思う。ニコラス・ケイジの名演と相まって、深い人間ドラマを堪能できた。また物事が良い方向に進むか、悪い方向に進むかは検討がつかず、脅した相手が大物だったり、八百長試合が失敗しても自然な結果で勝利したりと、人生は何が起きるか分からないモノだ。事件を解決し、ひと段落ついたこの男の顛末も非常に考えさせられるポイントだ。自分も、いやほとんどの人が思うように進まない、ままならない人生を送っているんだと思う。この映画を鑑賞したからといって、強くなれたり、答えが出るわけではないが、鑑賞する価値はあると思う。 [映画館(字幕)] 8点(2010-03-04 19:42:40)(良:1票) |
10. ハンコック
《ネタバレ》 「嫌われ者のヒーロー」から「愛されるヒーロー」に変わるという非常にユニークなキャラ設定とプロットで序盤は楽しませてくれるが、明らかに練りこみ不足。意外とすんなりと更正してしまい、そのあとは軸ブレブレの迷走状態に。ド派手なアクションは見せるだけで、話の面白さが伴っておらず興奮するまでには至らなかった(画はすごいんだけどね)。面白さもストーリーも予想通りだけど、笑えるところもあるし、ジェイソン・ベイトマン目当てで鑑賞したので個人的に満足。 [映画館(字幕)] 5点(2008-08-31 17:44:34) |
11. ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝
《ネタバレ》 家族みんなで楽しめる笑いあり、ロマンスあり、冒険ありの無難かつ爽快なつくりのアドヴェンチャー映画に仕上がっている。世界観の構築や映像世界が面白く、中国、兵馬俑、イエティなどの要素をうまく「ハムナプトラシリーズ」に盛り込んでいる。ただ、「もの凄く興奮した!」とまでは行かないのが残念なところか。ロブ・コーエンのような二流、三流以下の監督よりソマーズに監督して欲しかった! 余談ですが舞台をエジプトから中国へと大きく移して、ほんとにシリーズの共通点はタイトルでもある「MUMMY」だけ。そろそろ「ハムナプトラ」という邦題をつけた人も引くに引けずアセってんじゃないのかな?どうでもいいか。「マミー3」の方がヤバイ気もするし。そういえば反皇帝ミイラはミシェル・ヨーの英語の語りかけで蘇る程、インターナショナルなマミーだったな。どうでもいいか。気持ちが大事ってことか。 [映画館(字幕)] 6点(2008-08-16 21:44:42) |
12. ハプニング
《ネタバレ》 冒頭の異常な光景(怖かった。マジで。)からラストまで突発的なハプニングでグイグイ引きこんで離さないみせ方は評価したい。またジョン・レグイザモとマーク・ウォールバーグが撮影の妙もあり演技が際立っていたのもいい。なので個人的にジョンが途中で退場してしまうのが残念。あっけない感じもあるが死のリスクを負ってまでエリオットがアルマのもとに向かうシーンも良かった。アルマが「彼は絶対諦めない。」と言っていたが、エリオットが外にでたのは絶望的な状況で「生きること」を諦めたのではなく、妻を愛することを諦めたくなかったからであろう。できすぎなシチュエーションと展開、凄まじい幕開けの割りに妙にあたりさわりのないラストなど確かによくないと感じる部分もあるがそんなにこき下ろす必要もないかな。 [映画館(字幕)] 6点(2008-07-31 15:05:21) |
13. パンズ・ラビリンス
《ネタバレ》 厳しい現実から逃れるために幻想の世界で暮らす少女の心情を、二つの世界の対比と独特の映像美で上手く捉えた秀作ファンタジー。クリーチャーのデザインが凄い独走的。手に目がある人とか本気で不気味だった。 [映画館(字幕)] 7点(2008-04-02 13:32:59) |
14. バンテージ・ポイント
《ネタバレ》 異なる視点から大統領暗殺を見直していき序々に真相が明らかになっていくという群像劇とサスペンスを合わせたような構成は斬新で素直に面白かった。見直しが重なるためテンポを損ねるが一つ一つの視点からみたストーリーのテンポはよいのであまり気にならないだろう。派手な爆発、カーチェイスも楽しめるが謎解きに関して大味な部分もある。シガニー・ウィーバーの配役にも疑問が。それでもまさかマシュー・フォックスが裏切る(彼本人がいい人そうだからという勝手な理由)とは思わなかったので騙された感じで楽しめた。それにしてもエドガー・ラミレスはドミノとブラックブライアー作戦で鍛えられてるだけあって巧いね。 [映画館(字幕)] 6点(2008-03-11 09:59:27) |
15. パフューム/ある人殺しの物語
《ネタバレ》 サスペンスというよりはダークなファンタジーかと。嗅覚をつかって鑑賞した映画は始めてだ。ほんとにスクリーンから匂いが発せられているようだった。香りを表現するための、芸術ともいえる美しくも醜悪な画面作りには大満足。そして香水、究極の香り、香りの消失などを表現しきった音楽には脱帽だ。台詞の少ないグルヌイユの心情を表す手助けにもなっていたと思う。音楽に負けず主演のベン・ウィショーも非常に良い。驚愕の才能を持ちながら、人としての感性にかけ、それでいてどこまでもピュアなシリアル・キラーを独特の存在感で怪演している。ストーリーは非常に新鮮に魅力的に感じた。究極の香りが起こす奇跡、グルヌイユが最初に殺した少女を思って涙するシーン、そしてグルヌイユ自身が消えてしまうというラストも良かった。あの死刑台の広場でのシーンは説得力があった。演技、音楽、脚本、演出、そして香りと色々な要素を楽しむ事ができた。 [映画館(字幕)] 9点(2008-01-17 23:23:03)(良:1票) |