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1.  パシフィック・リム 《ネタバレ》 
異星人が次々と送りだしてくる怪獣を、人が巨大メカを操縦して撃退する本格的怪獣映画。最新技術を駆使して、怪獣とメカの戦いという“絵空事”を大真面目で製作するという姿勢に心打たれた。それも日本と米国の怪獣・メカ文化の伝統に則っており、「怪獣・メカ好き」の心の琴線に触れる作品に仕上がっている。監督は間違いなく“少年の心”を持っている。視覚的には文句なし。巨大感、重量感、臨場感が見事に体現できている。怪獣とメカが巻き上げる水飛沫や土埃を細部まで描き、複数の照明で明暗を際立たせ、前景に鳥、魚、車など尺度の分かる物を配し、雨、雪、火の粉を降らせて奥行きを出している。飛び道具はほとんど使用せず、肉弾戦で闘うことにこだわりがある。体感型の映画で、特撮の見本だ。戦闘場面の迫力ありすぎて見落としがちだが、人物描写にも時間を割いている。家族との死別、精神的外傷の克服、育ての親と子のつながり、怪獣への復讐心、恋愛、協調と信頼の大切さを学ぶ、仲の悪い者が仲直りする、引退操縦士の復帰、病気を隠す、自己犠牲と盛り込んでいる。特に、二人が同期しないと操縦出来ないなど、協調と信頼に重きを置いている。人類が力を合わせて怪獣を倒すという命題の象徴だ。加えて、生物博士、数理博士、闇商人という個性豊かな人物が登場する。彼等に諧謔や道化の役割を持たせて、観客に一息つかせ、同時に世界観を広げることに成功している。彼等は安直な脇役ではなく、怪獣の最大の秘密を探し当てるという重要な役目を果たす。特に新味は無いが、どの人物も手際よく描きわけている。核兵器で倒せるのなら核ミサイルで攻撃せよ、海底に核弾頭を運ぶのなら潜水艦だろう、怪獣防護壁が脆弱すぎる等の点には目をつぶるしかない。説明の無い部分はそういう世界観だと納得して観るしかない。それぞれのメカに個性があり、メカ愛があるのは分かるが、怪獣愛は日本人のそれとは違う。日本の怪獣は、恐怖と破壊をもたらし、忌み嫌われるだけの存在ではなく、恐竜や爬虫類が巨大化した生物でもない。どの生物とも違い、さほど醜くなく、造形美を供え、どこか愛嬌があって、人間味さえ感じられる。その人形を部屋に飾って置きたくなるものだ。本作品では「人類の危機」を強調する余りか、怪獣を醜悪に描きすぎている。殺害方法も血腥く、むごたらしい。本当の怪獣は、応援したくなるもので、死ぬ怪獣に憐みを持つのが日本人だ。
[DVD(字幕)] 10点(2015-02-09 04:59:15)(良:2票)
2.  幕末残酷物語 《ネタバレ》 
田舎から上京した柔弱な郷士青年・江波三郎が、新選組にあこがれて入隊するも、苛烈な規律で隊士を統率し、違反者は容赦なく殺戮するという恐怖の支配する閉塞的組織の中で徐々に人間性を失っていく様子を描く物語。と、視聴中思って疑わなかった。血を見ただけで卒倒していた江波が自ら切腹の介錯を申し出るようになり、又女中さととの恋愛も悲恋に終り、悲劇を盛り上げるものと信じていた。しかし最後に思わぬどんでん返しがあった。江波は近藤派に殺された、新選組初代隊長・芹沢鴨の甥で、復讐を誓って新撰組にもぐりこんだのだ。しかも坂本龍馬の海援隊の間諜でもあった。こうなると話が違ってくる。現実主義的手法で殺戮を繰り返す侍達の人間性を冷徹に描く筈が、単なる復讐譚に堕してしまうのだ。物語の軸がぶれており、失望感がぬぐえきれない。 新撰組の鉄の掟に辟易しながらも、心情的に近藤から離れられない沖田総司の葛藤の描写も全くの無駄に終る。沖田は江波のまだ汚れていない純粋な精神を見込んで新撰組に入れたのだ。だから江波の変化を意外に思うし、新選組の暗黒史である芹沢鴨暗殺の秘密も洩らす。その辺りの両者の微妙な心情変化もよく描けていた。結局のところ、江波の正体が間諜で近藤を狙う刺客であるという設定が全てを台無しにした。近藤を狙う機会はいくらもあったのに、何もしなかったという矛盾もある。舞台のほとんどが新撰組の屯所の中だけなのも不満だ。不逞浪人を取り締まる外でこそ新撰組の面目躍如があるからだ。途中までは非常に良いのに最後でしくじった作品である。白塗りのない大川橋蔵が見れる貴重な作品だが、興行面では失敗だったとのこと。
[DVD(邦画)] 7点(2014-12-13 01:50:01)
3.  白昼堂々 《ネタバレ》 
女掏摸(すり)が捕まったと思ったら、実は元掏摸が助けたという導入部は興を引く。元掏摸は伝説の箱師の銀三で、女掏摸の親分が綿勝、再会した二人は旧交を温める。廃炭鉱の無人宿舎に掏摸や万引きの常習犯が逃げ込む「泥棒部落」がある。綿勝はそこの首領で、四十人程の組合員を養っている。組合員は炭鉱閉鎖で行き場をなくして仕方なく悪事を働く朝鮮人、記憶喪失者、老人等で、同情の余地がある。綿勝は銀三を仲間に誘い、組合員を率いて大掛かりなデパート万引きを行う。これを追うのが嘗て二人を逮捕し更生させた老刑事森沢。仲間が逮捕された綿勝はデパートの売上を盗むという大勝負に出る。それを嗅ぎ付けた森沢との一騎打ちが最大の佳境。 義理と人情の狭間で悩む銀三の姿が描かれ、痛快な犯罪映画ではない。組合員の悲哀も描かれ、銀三の恋愛、若刑事と女掏摸の恋愛もある。犯罪、喜劇、社会派の入り混じった混合映画だ。犯罪映画としては、犯罪世界を見せる面白みに欠け、痛快さが無い。掏摸は洗練さを欠き、万引きの方法も目新しいものではなかった。社会派としては中途半端である。構成員の人物の掘り下げが浅い。老刑事も喜劇に組み込まれているので立ち位置が微妙である。人情喜劇としても物足りない。笑える場面もあるが、銀三と娘の逸話の“泣き”の比重が大きく、「泣き笑い劇場」になっている。分りやすく言えば、犯罪を背景とした二人の男の友情物語だろう。。 構成は悪くない。最初に魅力的な女掏摸や泥棒部落という奇抜さで興味をもたせ、構成員の哀れみを見せ、中盤から二つの恋愛を交えつつ、二人の友情と老刑事の執念を描き、最終対決に至る。要は均衡と落としどころの問題だ。最終対決は悪くないが、語り継がれるような水準ではなく、もう一工夫か、もう一波乱欲しい。何より森沢が二人の大勝負の相談の会話を立ち聞きするという安易な設定が興味を削ぐ要因となっている。犯罪者と刑事の知恵比べが見たかった。二人が看守から掏った煙草を吸い合う場面は一服の清涼剤だ。
[DVD(邦画)] 7点(2014-09-06 11:49:33)
4.  パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 《ネタバレ》 
物事を深く考えず、常に飄々と出たとこ勝負のジャック・スパロウの珍妙奇抜な行動が見ものだ。クスクス笑いの連続で、物語の本筋よりも枝葉末節の方が断然面白い。椅子に縛られたまま卓上のシュークリームを取りに行ったり、馬車に飛び込んで口でイヤリングを盗んだり、縛られたまま椰子の幹を登って脱出したり、泉への入口で聖杯をぶつけて鳴らしてみたりと、つい笑ってしまう。海賊の冒険物語というより、意表を突き、人を食った演出を楽しむコメディ映画だ。 登場人物を多彩にして飽きさせない工夫をしている。ジャックの旧知の友ギブス、超能力を操る黒ひげ、黒ひげの娘でジャックの元恋人の女海賊アンジェリカ、黒ひげを仇と狙うバルボッサ、船に乗った人間を襲う人魚、人魚と恋に落ちる宣教師、生命の泉を破壊しようとするスペイン軍、まぬけ面のジョージ一世、ポンセ・デ・レオン。意図はわかるが詰め込み過ぎで説明不足は否めない。 冒頭、魚網で引き上げられる男の正体。ポンセ・デ・レオンとは何者か?恋人同士だったアンジェリカとジャックの詳しい経緯。黒ひげはあれだけの超能力を持っているのにどうして予言を恐れるのか?ボンバッサと黒ひげの因縁。人魚と宣教師の結末。ギブスはどうやって船の小瓶を盗んだ?スペインが生命の泉を破壊する理由などなど。脚本に工夫の余地がありそうだ。特に黒ひげについては腑に落ちない点が多い。彼の能力はすば抜けている。命令のままに動くゾンビ水夫を造り出す、綱を意志あるように動かして人を捕える、船を小瓶の中に保管する、呪いの人形で人間を苦しめる、船の火炎放射器。彼の能力は発揮されずにあっけなくバルボッサに倒されてしまう。あたら惜しいではないか。それと宣教師を登場させる理由が判らない。船乗りでよいではないか。 次の事実を知っていれば理解が深まる。ポンセ・デ・レオンは16世紀のスペインの探検家で、若返りの泉を探している途中でフロリダを発見したという伝説の持ち主。黒ひげは18世紀の海賊、船は「アン女王の復讐号」でアン女王への共感が命名由来。聖杯はキリスト教の聖遺物のひとつで、最後の晩餐に使われたとされる杯。人魚の名シレーナは、ギリシア神話の海の怪物セイレーンに由来。米国人にとっては常識なので説明がないのだろう。ところでアンジェリカだが、ジャック人形を使ってどうやって孤島から脱出するのか?次回が楽しみである。
[DVD(字幕)] 7点(2014-05-14 05:26:06)
5.  裸の島(1960) 《ネタバレ》 
飲み水も無い乾燥した島の斜面畑で、がむしゃらに土にしがみつくように生きている農民一家の姿を通じて、生きることの厳しさと尊さを伝え、更に人間とは何か、人は何のために生きるのかという人間の根源に迫る映画。そのため白黒映像で、会話は一切排除し、急斜面を桶で水を運び、乾いた土に水を注ぐ農夫婦の姿を執拗なまでに繰り返し追う。その単調さは、人間が生き抜くことの辛さ、切なさを表わすと同時に、生きることの崇高さをも表わしているように見える。物語としての映画ではなく、人間という“生き物”の本質に迫る象徴主義的映像詩となっている。 以上のような感想が持てればよかったのだが、残念ながらそうではなかった。感動には到らなかった。 とても土着の農民には見えない主演二人の“演技の”奮闘ぶりに苦笑するしかなかったのだ。いかにも都会育ちでございといわんばかりの華奢な体つきのへっぴり腰で、やっとこさ水桶を運ぶ姿には違和感を覚えた。あんな風では、三日も経てば足腰が立たなくなるだろう。それが感動できない理由である。 それでも光る演出が随所にあった。妻が水桶をこぼしたとき、夫が妻を殴ったこと。亡き子の葬式のとき、僧侶と生徒ら一行を迎える母親の服が一張羅の浴衣であったこと。子供を亡くした妻は平常心を装い埋葬まで済ませたが、あるとき感情を爆発させて、苦労して運んで来た水桶をひっくり返し、大地に身を投げて慟哭し、大切に育ててきた作物を乱暴にむしりとる。それを見つめる夫は無言。子供の為を思えばこそ、辛い生活にも耐えてきたのに、運命のなんと残酷なことか。だが、妻の“乱心”も束の間で、またすぐに、何事もなかったかのように元の作業に戻る。演出の冴えを見た。 他に不満点もある。それは島が乾燥した土地には見えないこと。それは草木の豊かさで明らかだ。飲み水や灌漑用水に天水を利用しないのもいただけない。また舟で水を運ぶのに一回で桶四つでは効率が悪い。八つ運べばよい。また、無い物ねだりだが、梅雨、冬の雪や霜柱、秋の台風など、一年を通じた丹念な島の生活の描写がほしかった。
[ビデオ(邦画)] 6点(2014-03-04 00:57:04)
6.  パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 《ネタバレ》 
ギリシア神話を下敷きにして、現代のニューヨークを舞台に、盗まれたゼウスの最強兵器「稲妻」をめぐっての冒険譚。冒頭の巨大ポセイドン出現場面では期待したが、以降の威厳の感じられない神々には幻滅させられた。総じてファンタジー色が少ない。高校生とファンタジーでは親和性が薄い。原作の12歳の方が適切だ。活躍する舞台は地上ではなく、天上などの異次元にした方がよい。そうすれば園芸店にメデューサがいて客を石に変えているが人間に露見しない、という矛盾がなくなる。ゼウスがポセイドンを呼び付けるが、そこは高層ビルで、共に人間の姿。摩天楼をオリンポス山になぞらえているのはわかるが、神同士なら天上で会えばよい。ファンタジーはイメージが大切だ。カインの渡し守もハデスもその妻も人間の姿。手抜きであろう。ゼウスはこれといった理由もなく、ポセイドンの息子パーシー(P)が犯人と決めつける。そしてポセイドンに「期日までに持ってこなければ戦争だ」と脅す。それでいて息子との面会は許さない。酷い神だ。Pは継父の酷い悪臭で神々から隠されているという。酷い設定だ。でも何故隠すのか?「Pが稲妻を盗んだ」の噂が広まり、「稲妻」を奪いに魔物が現れる。魔物に居場所が分るのに、ゼウスには分らない?母が冥界の支配者ハデスにさらわれ、ハデスは「稲妻」と母の交換を条件とする。Pは仲間と母の救助に向うが、先ず冥界からの帰還に必要な「真珠」を見つける必要がある。ここからペルセウス神話をなぞっての冒険が始まる。宝探し、怪物退治、ロード・ムービー、旅の仲間等の要素で、最大の見せどころ。が、残念ながら盛り上がらない。緊迫感がないのだ。「ジュラシック・パーク」の恐竜の迫力と比較すれば一目瞭然。前段のキャンプでの訓練もチャンバラにしか見えなかった。冥界で、ハデスを説得して母を返してもらうという最大の難問が立ちはだかるが、労せず解決してしまう。カタルシスは得られない。帰還してルークと一騎打ち。彼が「稲妻」を盗んだ真犯人で、楯に隠してPに与え、冥界でハデスに渡るように企んだのだった。「稲妻」が実践で使用されるが、驚くほどの威力はない。羊頭狗肉だ。夜の場面が多く、見にくい。何故魔物の近くに真珠があるのかは謎だ。真珠を守っている様子はなく、ハデスとも不連絡。真珠が足ずに一人冥界に残るが、後にPがゼウスに頼んで戻してもらう。無駄な挿話はやめよう。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-20 22:04:03)
7.  バイオハザードV リトリビューション 《ネタバレ》 
シリーズのマンネリ化を防ぐためだろう、度肝を抜く演出、鑑賞者を驚かせて新鮮味を出そうという演出が顕著にみられる。 冒頭、いきなり前回からの続き、オスプレイ航空機部隊によるアルカイダ号襲撃が、スロー逆回転で始まる。 海に転落して気を失っていたアリスが意識を取り戻すと、別の人間に入れ替わっており、ゾンビに襲撃されて逃げ惑う。 実はクローンで別人だが、編集で錯誤させる。クローンが捕殺され意識が途切れると、今度は本物のアリスの意識が回復する。そこはアンブレラ社の実験施設内で、半裸衣装を着て床に横たわっていた。尋問されている途中で、メインコンピュータが再起動、その隙をついて部屋を脱出すると、そこは東京で、ゾンビに追いかけられる。別の部屋に逃げると、そこは中央制御室だが、奇妙なことにオペレータは全員射殺されていた。そkへ見知らぬ女が入ってきて、「私はウェスカーの仲間であなたを助けにきた。ウェスカーはアンブレラ社を裏切り、あなたと力を合わせて戦いたいと希望している」といった。こちらの頭も逆回転しそうな、意表をつく展開の連続だ。ここまでは面白かったが、後がいけない。銃を中心にしたアクションの連続で、目新しさはなく、飽きてしまった。観終わってみれば、進展はわずかで、実験施設から脱出するだけの話。そもそも物語は破綻しかけている。アンブレラ社は、人類がほぼ滅亡している状況なのに、人体実験を繰り返して化学兵器の開発に余念がない。とおもったら、今度は人類絶滅を目指すとか言い出す。ゾンビ感染ものから、マッドマックス風の荒涼世界、マトリックス風の仮想現実世界を経て、ターミネーター風のコンピュータ反乱世界へと変貌を遂げつつ、プリズン・ブレイク、エイリアン2の風味も加わって、最早統一感なしの世界観に堕してしまっている。観客を喜ばせようという努力は買うが、何でもありの荒唐無稽設定と中味のない物語では、いくら大金をかけたアクション娯楽大作でも限界がある。半裸も危険なアクションも厭わない主演女優の役者根性と相変わらずのキレのあるアクションには頭が下がる。次回作でいよいよ最終回。ゾンビ+クリーチャー+コンピュータ軍団と人間との壮絶な戦いが繰り広げられ、人間は苦戦し追い詰められるが主人公の捨て身戦法により、中央制御装置が爆破され、最終的に人間が勝利、ワクチンでゾンビが人間に戻る、といった内容と予想する。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-19 19:30:29)(良:1票)
8.  バイオハザードIV アフターライフ 《ネタバレ》 
第一、冒頭の東京での戦闘場面。ヒロインのアリスとそのクローン達の襲撃により、悪の枢軸アンブレラ社の地下要塞は損壊を受け、機能不全に追い込まれる。非情なる議長ウェスカーは部下らを見棄て、ただ一人飛行機で脱出し、特殊爆弾による自爆装置を起動させ、部下もろとも地下要塞を爆発させる。だがアリスはいつの間にか飛行機に忍び込んでいた。アリスが銃を突きつけると、ウェスカーは振り向きざま、首に特殊遺伝子無効化ワクチンを注射する。飛行機が富士山に激突して爆発炎上するがアリスは奇跡的に助かる。 第二、アリスとウェスカーの最終対決場面。死闘の果て、アリスがウェスカーの口に銃弾を撃ち込み、勝利を収める。クリスとクレア兄妹がとどめを弾丸を撃ち込む。それでもウェスカーは復活し、またもや飛行機で脱出する。機上、アリスらの船の自爆装置を起動させるが爆弾は機内にあり、爆発する。アリスが予想して潜ませておいたのだ。上記2点に映画の制作方針が集約されている。安易な設定、強引な展開、御都合主義等の誹りはあえて甘受し、美女がゾンビや敵役をひたすら倒すアクション・シーンを魅力的に描くことに専念したのだ。もともとゾンビを倒すテレビゲームの映画化なので、堅いことは言いっこなしという暗黙の了解がある。ビジュアル重視なのでセクシー美女が多数登場し、ここぞという場面ではスーパー・スローモーションでじっくり鑑賞となる。ヒロインと敵役が超人的な能力を持つのに対し、ゾンビ共は弱弱しく、あっけなくなぎ倒される。テンポを速めるため、非主要人物の描写は記号的でしかなく、次々に消えてゆく。話題作りのためプリズン・ブレイクのパロディも取り入れる。ホラーや人間ドラマ要素を抑え、3Dアクションを気楽に楽しむ娯楽作品に徹したところに成功の要因があるだろう。印象的なアクション場面が2つ。飛行機が山に激突した瞬間にストップモーションとなり、そのままカメラが奥へパンする場面と、アリスが大勢のゾンビ共を引連れて屋上から飛び降り、縄伝いに垂直降下する場面。その適確な映像処理を讃えたい。難点は、スローモーション過多なこと。飽きさせては駄目。素早いカッティングとの併用で緩急をつけるのが肝要。大斧の巨大処刑人はギャグにしか見えず。「噴出する水」の演出のため、水道管の立並ぶ部屋が出てくるが、実際にあんな部屋があるか?必殺兵器の25セント硬貨弾は威力があるか?
[DVD(吹替)] 6点(2013-06-19 11:35:34)(良:1票)
9.  バダック 《ネタバレ》 
イラン版「山椒大夫」といったところ。「バダック」とは国境沿いで密輸品を扱う運び屋のこと。 両親を亡くし、天涯孤独となった子供の兄妹が、人さらいに連れ去られ、人身売買の仲介者に売られる。兄はバダックとして密輸業者に買われ、学校にもいかず、苛酷な強制労働に従事させられる。妹は仲介者の所有となる。イスラム諸国では国内の売春が禁止されているため、異国の女性を連れてきて売春させることがあるという。妹はそれの予備軍で、いずれ海外に売られてゆくのだろう。やがて兄はバダック仲間の協力を得て、監禁所を脱走し、国境を越え、わずかな情報を手がかりに妹の行方を探す。そして最終的に妹が監禁されている船に潜伏することができた。しかしそれは勘違いで、皮肉なことに妹は密輸業者の元にいたのだった。全ては子供の朝知恵であったという残酷な結末。 子供の誘拐、人身売買、密輸、殺人、売春等、イランで子供の置かれている厳しい現実を知ってもらおうという企図がみえる。しかし成功しているとは思えない。あれこれと疑問の多い映画なのだ。 水の枯れた村で主人公の一家だけが井戸を掘ってまで村に留まろうとする理由は何か。陥没事故時、村人が一人もいなかったいのはどうしてか?さっきまであれほどいたのに。全員が一斉に引っ越したか。兄が最初の脱走をしたとき、監禁所に舞い戻って来ざるを得なかったのはどうしてか?大人達、警察、役所、宗教施設などに相談しても保護してもらえないのか。そんなことはあるまい。国境を越えるとき有刺鉄線にてこずっていたが、切断すれば簡単に越えられる。少女達が監禁されている施設に忍び込んだ兄とその友人だが、友人がトラックの中に妹がいると思い込んだのはどうしてか。声をかけさえすればよかったのに。トラックが走り去った次の場面で、兄と友人が港に停めてあるトラックを見張っている。どうやってトラックの後を追ったのか。全体として兄の冒険的行動に多くの比重がかけられているが、それよりも苛酷な環境を描いた方が企図に叶っていたのではないか。救いの見えないエンディングにしたも疑問だ。妹は終始泣くだけで、他に何もしない。他力本願では、観賞者の心は動かない。 
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-16 05:19:48)
10.  橋(1959年/ベルンハルト・ヴィッキ監督) 《ネタバレ》 
少年兵の悲劇を扱った反戦映画の佳作。 戦争となれば、子供達もいや応なしに巻き込まれてゆくのが現実だ。出征するまでの少年七人の人物描写を丁寧に行っているのが成功の第一の要因だろう。戦場での迫真の激闘場面と、少年兵が恐怖と錯乱に陥ってゆく生々しい様子も見所のひとつ。前半の少年たちの明るくて活気ある、そしてどこか鬱積した思春期の日常生活の描写と、後半の荒々しくも凄惨な戦場描写の対比が実に見事に描かれている。戦争に対して無邪気なまでの憧憬を持ち、軍隊に志願する少年達と、我が子の将来をひたすら憂慮する母親達の対比も心に残る。母親の愛は世界共通。軍人の子供を立派な軍人に育てるのも母親の愛の一種なのだろうか。打算的にみえる父親に対する反抗や嫌悪の露呈が物語に重みと深みを与えている。少年達が、想像していた勇猛果敢で英雄的な戦争と、実際のむごたらしく血で血を洗う戦争の違いを身をもって知ることになるのが主題だが、軍隊に入る前の描写に十分時間をかけているので、容易に感情移入できる。 生徒達の先生が、生徒の前途を案じて、軍舎に出向き、所属隊長に庇護を懇請する。そのような依願は拒否するのが建前だが、隊長は戦闘で子息を失ったばかり。遺族の気持ちは痛いほどわかる。特別に配慮すて、安全な後方の橋の守備につけることにした。しかし、これが徒とあるのが運命の皮肉。来ない筈の米軍戦車部隊が襲来してきたのだ。運悪く、その時彼らの上官は勘違いで味方に射殺されており、少年兵だけで対応しなければならなくなる状況。このあたりの流れは秀逸だ。さらに彼らの死守した橋は、実は軍事上何の価値もなく爆破されるという。そして最後に少年兵の銃が向けられるのは味方に対して。脚本は、戦争の悲惨さと虚しさを余す所なく描いており、精彩を放っている。実話を元にした小説が原作らしいが、首を傾げたくなる事柄もある。昨日軍隊に入ったばかりの兵隊では、小銃の扱いはおろか、敬礼さえ覚束ないはずなのに、重機関銃や対戦車擲弾筒「パンツァーファウスト」を扱い、最後には戦車隊撃退に成功するという摩訶不思議さ。これは見過ごせない瑕瑾である。 もう一つ、生徒の一人と妖艶な女教師とに肉体関係があるような描写があるが、不要だろう。思春期の青い性を垣間見せるくらいならよいが、先生と関係をもたすのはやりすぎだ。集中力が削がれてしまう。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-08 14:40:33)
11.  ハート・ロッカー 《ネタバレ》 
ひと癖もふた癖もある映画だ。突き放して、結論を観客に想像させるタイプの映画で、好みが分かれそう。その手法は、さほど成功しているとは思えない。理由はいろいろあるが、主人公の感情が読めないことが大きいと思う。冒頭場面、3人の爆弾処理兵があまりにビビっているので笑ってしまった。爆弾処理兵たるもの常に冷静であるべきで、実際にそうだと思う。周囲に民間人がうじゃうじゃいるのに、警告もせず、避難・警戒線も張らず、X線透視カメラも無し。予想通り爆破したが、あんなに遠くで爆発したのにまさかの死亡はあ然。肉屋の携帯との関わりは不明のまま。次に芋蔓式の爆弾がでてきたけど、何のためのものなのか?米軍車が偶然にあの上を通るのを願うのか?万事この調子。どれも説明不足な上に、各挿話の結論が放りっぱなしだ。転機となったベッカム少年の挿話を例にとっても、何故少年をそんなに気にするのか。ベッカムそっくりさんの正体は?ベッカムのいた露天商の主に何故通訳をつけて質問しないの?人間爆弾のことを上に報告して、チームで調査すればいいのに、何故単独でベッカム家に乗り込んでいくの?何故おばさんにやられっぱなしだったの?ベッカムに再会出来て何故あんなによそよそしいの?など、すっきりしないこと甚だしい。「任務あけまであと何日」としつこく字幕を出しながら、その日を描かない。わざと難解にしているようにも思えるくらい。だから、いつまで経っても映画の方向性が見えてこない。戦争の狂気を描きたいのか、悲惨さを描きたいのか、主人公の英雄ぶりを描きたいのか、成長を描きたいのか、戦場での兵士心理を描きたいのか、友情を描きたいのか、イラクでの現状を知ってもらいたいのか。緊張感だけは伝わってくるが、手ブレカメラの多用は目に余る。主題が「戦争は麻薬だ」ということは序文にある通り。となれば、最後の場面の説明としては、「帰国して日常生活に戻ったものの、妻との会話は通じず、かえって孤独は増し、無力感に苛まれていったが、やがて召集通知が届き、主人公な嬉々として戦場に戻っていった」ということになる。この人、特に成長してないと思う。戦場でしか生きられなくなった自分を再確認したということ。それを戦争の悲劇の一面として描いた作品。戦争は兵士の精神を蝕む。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-20 05:52:48)
12.  パットン大戦車軍団 《ネタバレ》 
鉄血将軍パットンの伝記映画だが、奥底には「人間は何故戦争するのか」という命題を含んでいると思う。新兵への演説で、 「米国民は常に戦いを求めている。お前たちが子供の頃あこがれたのはビー玉や徒競走の優勝者、野球の名選手、タフなボクサーだ。米国民は勝者が好きだ」と断言する。「死ぬほど戦場が好きだ。外に生き甲斐が無い」と言い切る男、「永遠に戦いに生きる男」とも 偉大なる時代遅れ」とも称される男、このような人間がどうして生まれたのか。それは時代が必要としたからだろう。平時ではものの役に立たない人物が、乱世や争乱になると人間ばなれした活躍を見せ、英雄になる場合がある。日本では、幕末の高杉晋作がよい例だ。戦争がいつから始まったか不明だが、紀元前25世紀の頃には記録がある。それ以前の戦争がない時代であも、動物を狩るということに快楽を覚えることがあっただろう。農業が始まると、富の蓄積が起こり、略奪行為が発生する。すると今度は防衛のための備えが重要になる。隣の村や部族同士で軍事力が増し、緊張が高まると、偶発的な事故や突発的な争いで戦争が勃発するようになる。生き残るためには常に戦争に備え、戦争に勝たなければならない。このような事情から、人類には闘争というDNAが沁み込んでいったのだろう。別言すれば、闘争というDNAを持たない人種、部族は滅亡する運命を辿ったのかもしれない。さて怪物的な闘争本能の持ち主であるパットンは良い時宜を得て、良い戦争に巡り合った。味方の兵にさえ人権を認めない彼は敵に対して容赦などしない。敵、味方関係なく、次々と屍の山を築いていく。勝つためには勇気と犠牲が必要だが、「愚将は敵より恐い」という諺があるようにその匙加減が難しい。彼は運よく勝利し、英雄となる。しかし勝利しても、「次はナチスと組んでソ連を叩く」と嘯く。戦うことが総てである彼にとっては当然の所見だ。ローマの英雄が現代に出現したかのような生き様を見せる彼は時代を映す鏡だ。国民を鼓舞し激励する指導者であり、戦争の英雄であり、血に飢えた愚将であり、弱い人間の見本のようにも映る。戦争と人間について考えさせられた映画だ。批判や英雄視を廃し、パットンを客観的に見据え続ける視座がよい。アフリカでの戦闘場面は迫力があった。  
[DVD(字幕)] 8点(2012-12-17 22:25:23)(良:1票)
13.  配達されない三通の手紙 《ネタバレ》 
【人間を描く】特殊な事情の下での復讐的犯行であり、もっと犯人に同情できるように描かれていれば余韻が残ったろう。犯人が結婚直前に婚約者の男性に捨てられた失意の様子、その後の3年間の喪失の日々、婚約者が戻ってきてからの和解の過程、楽しいヨーロッパでの新婚旅行、満ち足りた結婚生活、これらの動機に関する重要なことが簡略にしか描かれていないのが不満だ。犯人の内面に踏み込んでおらず、女の情念や嫉妬といった感情は記号的にしか伝わらず、感情移入ができない。また夫は二人の美女から死ぬほど愛される役柄である。それなのに男性的・人間的魅力に乏しい。神経質な顔に軟弱そうな体、言われるまま義父の会社に勤務するが勤務評価は低い、感情的に女に手をあげる、酔いつぶれて「あの女を殺す」と叫ぶ、別れてくれない女を毒殺しようとする、妻や妻の姉に金を無心する…、ダメ人間である。いったいどこに魅かれるのか。彼がどうして結婚破棄をして逃亡したのかも説明されない。過去の苦悩や苦悩が描かれなにので、この男が自殺しても観客の心は動かない。脚本は米国青年が日本にやってきてからの出来事を律儀に時系列で進め、ジョギングや陶芸やフルートなど不要なものばかり描いている。加害者の不幸な人生を描くことに成功して名作となった「砂の器」と好対照をなす。ただ被害者である元恋人の不幸な人生は描けている。 【サスペンス】登場人物の少ない家庭内殺人事件である。夫が犯人であるかのようにミスリードしているのは見え見えで、苦笑を禁じえない。三女と居候の青年は探偵役、長女は本筋に絡まない、父親も母親も影が薄い。となると残るは妻と夫の妹だけで、意外性がないのだ。三女の婚約者や長女、父親などを容疑者候補にするくらい練らないと良質のサスペンスをはいえないだろう。警察の捜査も不信で、どうして被害者の身元を真っ先に確認しないのか。素人探偵に先を越されている。警察の不注意で無実の容疑者人が逃亡、自殺させてしまった責任は重い。逃亡を幇助した容疑者の妹も見逃している。事件の真相を明らかにせず、闇に葬るのは検事としてあるまじき行為である。証拠がないというが、ヒ素の入手経路を調べれば真相が明らかになるはずである。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-21 22:44:41)
14.  バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 《ネタバレ》 
パート1では、高校生マーティが悪者に襲われ、緊急避難的に1985年から1955年へタイム・トラベルする。そこで偶然出会った父親(将来の)に意図せず干渉してしまい、父と母がつきあう機会が失われ、自分が生まれない未来に改変されてしまう。それを何とか元に戻そうとする話で、マーティと発明家ドクとの友情、エイリアンのネタ、チャックベリー小ネタ、落雷を利用して未来に戻る方法等、アイデアが洗練されていて夢がある。爽快感があるのだ。残念なのは「歴史に干渉してはいけない」といいながら、改変してしまっているところ。マーティの父親は成功者になったし、発明家ドクは射殺を免れる。願わくば歴史改変はドクが死を逃れるだけにしてほしい。そしてマーティは今回の経験から自信をつけ、音楽の才能を開花させるという方向にすれば座りがよくなったと思う。パート2は退屈だ。未来のスポーツ年鑑を持ち帰って、ギャンブルで金儲けをする話で、俗っぽく、夢がない。ほとんどがマーティと不良のビフとの喧嘩場面といってよく、飽きてしまう。腕力のビフに対して、頭脳で対抗するのが本来の姿であるはず。老人のビフが初めてみたタイムマシンの操作ができるなど無理があるし、マーティの恋人はただ寝ているだけの存在だ。パート3は、ドクの恋という意外性のある話で、脚本に破綻はない。タイムマシンが壊れて途方にくれたとき、70年間郵便局に留置の手紙が届くなど出色のアイデアだ。最後の未来へ脱出する疾走機関車の場面での怒涛の盛り上がりも見事だ。マーティは「腰抜け」と呼ばれると、熱くなって、自分を失ってしまう短気な性格だったが、その欠点を克服して、大人に成長する。ドクは科学一辺倒の変人で、恋とは無縁だったが、意中の相手に出会うと、てもなく「恋する男」に変身してしまう。とても人間味にあふれ、愛すべき人物だ。こういった軽いノリと、コミカルな雰囲気が本シリーズを「愛と夢にあふれるファンタジー」にする下地となっている。パート2の失速が重ね重ね残念だ。
[DVD(字幕)] 8点(2012-11-21 03:32:55)
15.  ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 《ネタバレ》 
美術的なセンスは優れているのだが、演出に問題があるのでのめりこめない。例えば幽霊が何度も出現するが、ストーリーとは無関係で、集中力を削ぐ結果となっている。二つの出来事のつなぎや感情のながれもうまく処理できていない。鳥獣バックビークは処刑されるところをハリーとハーマイオニーに助けてもらい、その後二人を人狼から救うのだが、バックビークには何の感情も表われない。両者に友情が生まれないのだ。もっと感動的に演出できるはずだ。代わりにハリーがバックビークに乗って飛翔する場面が感動的な演出で表現されているが、ハリーは日常的に杖で空を飛んでいるので観る側にさほどの感興は湧かない。ハリーの味方であったはず先生の正体が人狼で、月を見て変身しハリーを襲うのだが、翌日はもとの先生の姿に戻って通常通り親しく会話をしている。この不自然さはいかんともしがたい。ハーマイオニーが突然悪童ドラコを殴る場面があるが、殴る理由はあとにならないと分からない。わかりやすく伝える努力をしてほしい。題名が「アズガバンの囚人」なのに、アズガバンの牢獄の描写が一切ないのも不満だ。恐怖の番人「吸魂鬼」の目をかいくぐって、どうやって脱獄したのかミステリーで、それを知りたいのに、完全にスルーされてしまっている。冒頭、ハリーが人間界で使ってはいけない魔法を使っても処罰されず、その理由も明確に提示されない。メインの主題は冤罪で幽閉されていたシリウスの無実が判明するということなのに、その大団円の場面がない。ネズミ男の正体もはっきしないまま、行方不明で終わる中途半端さ。このように演出が拙劣で、この監督は「魅せる」才能に恵まれていない。◆ハーマイオニーが持つタイムトラベル時計で事件が解決されるが、これが最大の問題点だ。まず彼女がどういう経緯で入手したのかが描かれていない。何度も過去に戻って、やり直しが効くというのであれば、どんな問題でも解決できてしまう。死人だって生き返らすことができるだろう。間違いないなく、賢者の石に匹敵する重要アイテムだ。大変危険でもあり、魔法学校の生徒が持っているのがおかしい。ファンタジーであっても軽々しく登場させてはいけない類のもので、これを登場させたせいで底の浅い世界観にしか見えなくなってしまっった。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-19 17:05:23)(良:1票)
16.  ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 《ネタバレ》 
1、2、3、と観て、一作毎に完結しており、連続した物語の面白さは感じられなかった。それが4作目あたりからシリーズものの”つながり”が表れ、最終章で、謎の解明と、張り巡らせた多くの伏線が回収される快感を味わった。予想外の出来の良さだ。謎と伏線のほとんどは、魂を分けて保存する「分霊箱」と「三兄弟と死者の秘宝の物語」と「ダンブルドア校長の遺言書」に集約される。一度限りの登場としか思っていなかったり、大した意味もないと思っていた人物やものが、再登場したり、真の意味が明らかになるなど、奥深い一面を見せる。ハリーの額の傷の秘密とヴォルデモート卿との関係。ヴォルデモートの不死身の秘密と分霊箱の謎。伝説のグリフィンドールの剣と大蛇バジリスクの毒の合体の意味。ハリーがダンブルドアからもらった「透明マント」の由来。トム・リドルの日記の正体。世界最強の「ニワトコの杖」の真の主が、前所有者スネイプを殺害したヴォルデモート卿ではなく、ハリー・ポッターに移った理由。スネイプがダンブルドアを殺した理由。スネイプとハリーの母リリーの関係。細部までよく考えられている。屋敷しもべ妖精ドビーの思わぬ活躍と死など、意表をつく展開もあった。特筆すべきはCGの出来で、繰り返されるハリーとロンの仲違いと仲直り、生ぬるい恋愛、敵の弱すぎる手下など、”ゆるい”部分には目をつぶるしかない。描写希薄なヴォルデモートのまとめ。孤児院で生まれ、母親(魔法使い)はすぐに死亡。父はマグル(人間)。魔法学校で能力を発揮し、分霊箱の術で不死の力を得ると、ダークサイドに落ちる。純血主義を唱え、忠誠を誓う手下「死喰い人」を率いて、「マグル」や「半純血」を粛清。父親とその親族も抹殺。魔法界の大半を支配下に置く。ある日彼を滅ぼす可能性を持つ者の出現が予言される。それがハリー。赤ん坊だったハリーに放った「死の呪い」がハリーの母親の「守りの魔法」で撥ね返り、肉体を失ってしまう。この時ハリーの額の傷にヴォルデモートの魂の欠片が引っかかり、意図せぬ分霊箱となる。ハリーの血によって復活するが、ハリー母の「ハリーを守る呪文」も取り込んだため、彼が死なない限り、ハリーもまた死ぬことはなくなる。最後「ニワトコの杖」で、ハリーに「死の呪い」を用いたが、杖の真の所有者ハリーに対する忠誠心により、呪いは無力化され、結果的にハリーの体内の彼の魂だけが破壊された。
[DVD(字幕)] 8点(2012-11-10 06:34:17)(良:2票)
17.  母なる証明 《ネタバレ》 
 母性が理性に勝ったという映画。それだけではなく、きれいごとでは済まされない母性の本質をえぐり出した問題作。世に氾濫する勧善懲悪の御都合主義映画などとは無縁。「母の愛は永遠」などと考える楽観主義者にビンタを食らわせるような衝撃があり、実に見ごたえがある。単純にサスペンスとしてみても面白い。知恵遅れの息子が殺人の冤罪、ど素人の母親が探偵役で、容疑者が次々に登場、遂に真相にたどり着くが、そこには悲劇が待っていた。どんでん返しの妙があります。しかしこの作品の主題は母性。正直母親は怖いと思いました。愛は盲目の箴言の通り、母にとっては知的障害の子供はどうしても過保護になりがちで、自分と同一化してしまう傾向にある。自分が辛くなったときには殺してしまおうと考える。これが心中未遂。息子の冤罪を晴らすためには、全てをなげうって一心不乱に邁進する、その姿には心打たれる。息子が真犯人だと判った瞬間、逆上して目撃者を撲殺し、証拠隠滅の放火までする。総て母性のなせる業、愛こそは全て、善も悪も超えている。しかし因果応報の理あり。息子が心中未遂事件を思い出して、「母が僕を殺そうとした」と復讐される。息子が焼け跡から針道具を回収してきて、罪の意識が決して逃れることがないことが暗示される。母と子の関係が一生消えることがないのと同様、罪の意識は永遠に母親を苛む。そして真犯人にされた無実の男との対面。男は息子と相似で、軽い知的障害がある。しかし母親はいない。そのことに涙するのは、男はこの先、誰の愛も受けられれず、殺人の汚名を着て生きていかなければならないことを知っているから。この男への罪の意識も重い。これから二重、三重の苦しみが待っているが、母として息子のために生きていかなければならない。夕日の中の踊りは、苦しくとも、明日に向かって生きる勇気を振り絞る決意の表れだろう。◆警察の杜撰すぎる捜査や堕落しすぎている弁護士など、リアリティに欠ける部分があるのは惜しい。「ゴルフボールだけで逮捕」はありえない。伏線の回収は見事でした。息子はバカと言われたら暴力で立ち向かうように躾られていた。被害者は常日頃から鼻血を出しやすい体質。屋上に置かれた死体の謎。廃品回収の人は善い人。ゴルフクラブの血というミスリードもナイスショット。息子の悪友の容疑者から捜査協力者への転換なども見事、映画の勘所を心得ている監督です。
[DVD(字幕)] 8点(2012-09-10 18:20:29)
18.  バトルシップ(2012) 《ネタバレ》 
女「ブリトー食べたい」⇒弟ドラッグストアに天井破って進入(曲ピンクパンサー)⇒警察に捕まる⇒兄「もう26歳だぞ、海軍に入れ!」⇒数年後大尉に昇進、これが序章。海軍兵学校は23歳までしか入れないのに、しかも数年で大尉……。男女の出会いも設定もおバカ全開のポップコーン映画に決定。で、演習中に敵エイリアン侵略。恒星間移動可能な高度な技術を持ちながら一機(通信機)が人工衛生に衝突して墜落するというトホホさ……。四機はハワイ近海に潜伏。敵は攻撃されない限り反撃しないのだが、愚弟が暴走して戦闘モードに。敵がバリアーを張ったことから、互いにレーダーが使えない(あれだけ音するのにソナーも使えない?)アナログ対決になる。が、敵が戦闘機や爆撃機、照明弾などを使わないのが不思議、戦闘機は確かに映っていた。デザイン秀逸な火球型飛行兵器も放置。それより敵戦艦がバタフライのようにジャンプしながらの移動って……、揺れるし、衝撃は受けるし、遅くなるし……。全艦撃沈されて、展示艦ミズーリ―号を使うアイデアは出色だが、旧軍人がなぜそこにいるのか、実砲弾が何故あるのかなどの説明がないのがおバカ映画のお約束?一方女と傷痍軍人は偶然?アオフ島の通信基地の近くにいて、敵が施設を使って母星と通信しようとしていることを愚弟に伝える。見つかって傷痍軍人と敵の殴り合いが始まる。ここで敵の前歯がぶっとぶシュールなスローモーションをお楽しみください。あとは省略可。当然第二陣が攻めてくるだろうからそれに備えよ、という常識的な可能性を捨てきって、よかった、よかったと大団円で終了。終ってみれば、敵は専守防衛に徹しており、子供や武器を持たない人間は攻撃せず、捕虜は見捨てず回収するといったある意味紳士的な人たち。この中途半端な設定のためにカタルシスを得ることができない。地球を救ったのは誰か?地球を危機に陥れたのは誰か?もっと単純明快にすべき。自衛隊を出したのは日本での興行収入アップを見込んでの下心みえみえ。結局この映画、そこそこヒットしたものの莫大な制作費は回収できずに赤字で、あえなく撃沈。せめて軍事オタクが喜ぶような真剣でもバトルがあれば、カルト的な人気を博するのだけれど。心優しいエイリアンの勝利?
[映画館(字幕)] 6点(2012-09-09 12:35:40)(良:1票)
19.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
いきなり流血する少女のアップで始まり、テープが逆回転。全編、観客にショックを与えようという意図に満ちる。”意欲的”な作品で好感は持てるが、グロ・痛いシーンが多いのには辟易。大尉の父は将軍で、亡くなるとき懐中時計を壊して息子に”死の時刻”を遺す。大尉は父に憧れて軍人になった。懐中時計の逸話を無い事にするのは他人に弱い部分を見せたくないから。息子に対する執着は異様。臨月の妻に長旅させて自分の元で産ます、出産前から男の子と決めてかかる、医者には万が一の時には赤ん坊の命を優先せよと厳命。軍人の血統を継承させたい宿願があり、死期が近いのを本能で察している。洞察力に優れ、敵に対して情け容赦無い。完璧な軍人になりきろうとするあまり、彼にとって現実はファンタジーでしかない。大尉には現実がファンタジー、少女にはファンタジーが現実。両者は全く違うように見えるが、合わせ鏡のような関係。不幸の国にあるという摘んだ人に永遠の命を授ける奇跡の薔薇は、毒棘があるせいで誰にも摘まれない。少女が胎内の弟に語り聞かせる寓話だが、これには弟に摘み取ってもらいたいという願いが込められている。少女も自分の死を察している。ラストで、現実主義の大尉は閉じた迷宮の扉を難なく突破できたが、その先には死が待っていた。少女は死んで無垢の血を流すことで、魂が魔法の国に帰還できた。両者は常に対比して描かれる。全てを少女の幻想と決めつける事はできない。父を亡くし、継父とはそりが合わないが、母には愛され、経済的に恵まれ、戦争の悲惨さは知らない。彼女の幻想は戦闘の前から始まっている。現実逃避するほどのトラウマがない。泥で汚れた服、魔法の根っこ、チョークは実在するし、病気の母親は医者が首を傾げる程回復したし、チョークドア無しでどうやって壁を破り赤ん坊を横奪できたのか。それに現実逃避の幻想なら甘美で自分に都合のよいものと決まっている。魂の開放のためには死のイニシエーション=継父の銃弾が必要だったとの解釈も可能だろう。この場合継父はユダで、キリストの復活には不可欠の存在。どこまで現実か、ファンタジーか。作り手のそのあたりの匙加減、曖昧さ加減は絶妙。彼女がこの世に残したという”印し”を見つけたいものです。葡萄を食べたのは、まだこの世に残りたいという未練があったから。母が死んで未練は消えた。「手目坊主」そっくりお化けが出てきてびっくり。
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-10 12:35:23)
20.  白蛇伝 《ネタバレ》 
実に大らかな作柄。声優(ナレーション、歌含む)がたった二人というのは弁士の伝統が残っていたからでしょうか。現在ではありえない選択で、そういう意味で貴重。芸達者の二人だから成しえたこと。登場人物や動物達の造詣は優美で、傑出していると思います。アニメーションの動きはさすがに古さを感じさせるものですが、背景画はとても温かみがあり、心にかなうものでした。物語は中国民話を改変したもの。男の子(許仙)が白蛇を可愛がっていたが、大人達に指弾され、泣く泣く野に逃がす。後年妖術の力を得た白蛇は娘(白娘)の姿に化身し、かつて可愛がってくれた男の子を探し出す。大人になった許仙は白娘に一目惚れ。白娘の正体を見抜いた僧法海の妨害など、いくつかの障害を乗り越え、最後に本当の人間となり許仙と結ばれるという恋愛物語。わかりやすい内容だが、感動は薄い。その最大の理由は、白娘が人間になるために払う代償が少ないから。人魚姫では、声を失い、足の痛みに耐えなければならなかった。白娘の場合は、払う代償は単に妖術が使えなくなるというもの。人間になれば妖精としての永遠の命が失われることになるが、元々人間になりたいのだから、大きな代償ではない。さらに死んだ許仙を生き返らせる生命の花をもらう。これは安直すぎる。さほどの努力もしてないのに障害が解決されるのでは感動も薄くなろうというもの。最後のクライマックスは、白娘の下女小青の頼みとする「なまず王」と法海との妖術対法力合戦。人間となってしまった白娘は浪に翻弄されるのみで影が薄い。許仙は宝石を盗んだ罪を着せられ、強制労働に従事させられ、白娘の幻を追って崖から墜落死する。常に受け身で、法海や白娘から助けられる存在。白蛇は許仙の類まれな優しさに惹かれたのだが、許仙の優しさが発揮る展開もない。許仙がもう少し活躍する展開になれば、名作になりえただろう。脚本がひとつの方向を向いていない。物語中盤で、町の愚連隊である動物達が仲間に加わるが、物語にはほとんど絡まない。許仙と白娘が再会するきっかけとなった笛、胡弓といったアイテムも後半活用されない。だからとぎれとぎれの印象となる。ちなみに小青は魚から人間に変身するが、これは後年宮崎駿の「ポニョ」の原型か。「崖の上のポニョ」のベースに本作品があるのかも。宮崎氏は、この映画を観た経験がアニメ界に入るきっかけの一つとなったと語っているのだから。
[DVD(邦画)] 6点(2012-07-15 18:52:51)
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