61. ファインディング・ドリー
《ネタバレ》 前作で、そのうっとうしさに少々苦手なイメージがついてしまったドリー。 今作は主役。多少の不安を抱きながら、おそるおそる鑑賞。 結果、うっとうしさは相変わらずのドリーですが、健気に両親に会いに行こうとするその姿、凄く良かったです。 声優さんの力によるところも大きいのですが、小さい頃のドリーが本当にかわいくて、ますます感情移入しちゃいます。 ストーリーは単純明快ですが、二転三転する情報により、『結局ドリーの両親はどこにいるんだ?』っていうプチミステリーの要素があって面白い。 そして魅力的な新キャラも登場。 眼が悪いジンベエザメのディスティニー。エコロケーションが使えないシロイルカのベイリー。海が怖いタコのハンク。 うーん、さすがディズニー。誰も彼もが愛すべきキャラに仕上がっていますね。 そして言わずもがな映像のクオリティの高さ。ついにここまできたかというビジュアル。 特に水面、そして『水面から見る地上の景色』は実写と見紛うばかり。更にはオープンオーシャン(大水槽)を遠景で眺めたときの画は言葉にならないくらい美しい。 ラストがちょっとひっぱりすぎですが、ドリーが貝殻を見つけてたどっていくシーンは文句なしに感動のシークエンス。 こんなに完成度の高い名作なのに、タコのハンクがベビーカーを走らせたり、トラックを運転したり、行き過ぎた擬人化がとても残念。興が冷めちゃいます。 あくまで『魚達の世界』の限界を超えない範囲で、夢のあるアドベンチャーを見せて欲しかったですね。 『何でもアリ』ってゆうのは、少なくともこの作品には相応しくなかったと思います。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-05-16 01:19:53) |
62. ブラッド・ワーク
《ネタバレ》 安心して観られる王道サスペンスの良作。 序盤から中盤にかけては謎が多く、少しずつ明らかになる事実や証拠をもとに、いろいろ考えながら見られるのが楽しいです。火曜サスペンスと同じノリですね。 で、謎が多いわりに難解ではなく、気楽に観ていても内容がつかめるので、娯楽作品として申し分ありません。 それでいて自分が事件を解決していくような爽快感も感じられます。 相棒に小切手の宛名を尋ねるシーン。 ちゃんとした推理ができていなくても、ここの『間』のとりかたやカメラワークで、何となく相棒が怪しいってわかってしまいます。 でもまだまだ楽しい。『本当に相棒が犯人なのか?』って期待しながら見れるので。 ただ本当に犯人が誰だかはっきりしてしまうと、そっから先は純粋なガンファイト。 しかも1対1。多少の心理的駆け引きはあるものの、う~ん、つまらない。盛り上がりません。くわえて、画面が暗い。よく見えないよー。 まあいつものごとく、こーゆーミステリー系では、どうしても真相がはっきりしたラストの展開が盛り下がりがちです。 最後に一つ。クリント・イーストウッドのロマンスはもーいいって。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2017-04-09 19:59:34)(良:1票) |
63. ファインディング・ニモ
《ネタバレ》 さすがピクサー、素晴らしい映像技術。今から14年前にこの映像が出来ているということに、もはや言葉が出ません。 ストーリーは、人間に連れ去られたニモを父親マーリンが助けに行くという一般ウケするアドベンチャー。 道中ドリーやアオウミガメのクラッシュ、ペリカンのナイジェルといった協力者の助けを借りるため、一本調子になりがちなロードムービーを、実に面白くアレンジしています。 また、我を失うサメ、アンコウ、クラゲの大群、クジラ、カモメ、ダイバー、子供など、小魚目線ならではの脅威の描き方が実に上手い。もはやホラーと言っても過言ではないくらい、手に汗握ります。 ピクサーは『おもちゃ』、『魚』、『恐竜』、『動物』とさまざまなものを擬人化しますね。 擬人化が極端になりすぎるとオリジナルの良さを損なうし、あまりにリアルを追求しすぎると夢がなくなりそうです。そういった意味では、この作品の擬人化は適度なバランス感覚で実によくできていると言えそうです。 また、擬人化をキーワードに考えると、『バラクーダ』『アンコウ』『カモメ』など、作中言葉を発しない、もしくは発しても意思疎通のできない生き物が出てきます。コミュニケーションの喪失。そして明らかな敵意のある存在。現実世界に例えるならば、テロリストや北朝鮮のようなものでしょうか。その一方で、本来魚にとって脅威であるはずのペリカンやサメでさえも、コミュニケーションが取れれば、友達や仲間になりえることが描かれているのですが、それは深読みのしすぎでしょうか。 サメのエピソードだけは、あってもなくても本筋のストーリーに影響を与えるものではありません。初めはムダだと思ったものですが、このサメのボス、ホオジロザメは、もしかしてアメリカの隠喩なのかなーって。 我を失い、仲間のサメたちから押さえつけられるホオジロザメ。自国への警告であり、自戒なのか。それともただの私の考えすぎなのか。 『クラゲ』や『クジラ』は自然災害を象徴しているように感じるのです。 魚群の忠告を無視し、結果クラゲの大群につっこみ、その脅威にさらされるマーリンとドリー。 クラゲやクジラに明確な敵意はなく、ただ存在しているだけ。 クジラに飲み込まれ絶体絶命のピンチだったにも関わらず、結果シドニーへとたどりつくことができたマーリンたち。それも、ドリーの言うように、『クジラ』という『自然』に逆らわず、身を任せた結果事態が好転してゆくのです。 脅威にもなれば味方にもなる。まるで自然の厳しさと恩恵を体現しているように感じたものですが。いったいどうなんでしょう。 考えすぎですかね。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2017-03-31 15:09:45) |
64. フロム・ヘル
《ネタバレ》 こーゆーミステリーものの醍醐味って、犯人がわかる瞬間だと思うんですよね。 『おまえが犯人かー。』って、見ているほうも味わえる驚きと興奮。この作品にはそれがない。 犯人がすぐわかるわけではないのです。正直ジョニー・デップが犯人かと疑うくらい、さっぱり見当もついてませんでした。 にも関わらず、犯人がわかったとき、『ああ、なんだ、お前か。』ぐらいの感想しかわきません。 なぜなら犯人という人物に、まるで愛着がわいていなかったからです。 『意外』、とも言えない人物。微妙なんですよね、劇中での犯人の立ち位置が。 ストーリーのわかりにくさもマイナスポイント。 少々難解な作品であっても、良作にはちゃんと考える余地があります。この作品については、その部分が不親切。製作側の自己満足で終わっちゃってないですか。 それにストーリーも、蓋を開ければただの口封じストーリーで、面白くありません。 ストーリーやキャラクターに求心力があるからこそ、不快な描写も活きると思います。 この作品では描写のグロさ、不快さでただインパクトがあるのみ。むしろ、そんな意図はないのでしょうが、グロ描写がストーリーのつまらなさをごまかすだけの代物にまで見えてきます。 ついでに言うと、個人的には切り裂きジャックによる猟奇殺人よりも、正常な人間の前頭葉除去手術のほうがショッキングでした。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2017-01-06 12:16:15)(良:1票) |
65. フレイルティー/妄執
《ネタバレ》 『うわー、本当に見えていたのかー。』というのが率直な感想。 主観を『父親』にするか、『子供』にするかで、こんなにも映画のテイストって変わるものかと思いましたね。 もし父親主観であれば、『神の啓示を受けたダークヒーローもの』っぽくなったのかもしれません。 その場合、子供に殺されるシーンは悲劇として演出され、その後を継ぐアダムが最終的なダーク・ヒーローに。そして暗黒面に落ちた兄フェントンと最終決戦ですね。 ですが、フェントンを主人公に据え置いたことで、作品は完全なるホラー・サスペンスへ。 そりゃあ父親がいきなり『神』だ『使命』だ『悪魔』だと言い始めて、人を殺し始めたら、ホラー以外の何者でもありません。 よくできてるなー。 視点を変えることで、ジャンルも変わる。大変よくできています。 ただ設定にかなり曖昧ですっきりしない部分がありますね。 例えば、『自分の欲望のために人を殺したことがある』という人たちが悪魔としてリストアップされる。 それはいいのですが、まだ誰も殺していないフェントンまでもリストアップされるってのは、どうなんでしょ。 ラストの『神の手』の犯人は結局誰なのか。どちらがフェントンでアダムなのか。若干混乱した部分がありましたが、どうやらフェントンが『神の手』の犯人。アダムが『殺した』いや、『滅ぼした』のは、悪魔になったフェントンと母親殺しの刑事だけのようですね。 そのあたり、もう少しわかりやすくしてほしいものです。 [DVD(字幕)] 7点(2016-12-31 03:53:04) |
66. ブラックホーク・ダウン
《ネタバレ》 実話をもとにしているだけに、ドキュメンタリーのように事実だけが淡々と映し出されていきます。 ですが退屈とは無縁の内容ですね。 ソマリアのアイディード将軍の側近?の身柄を拘束するだけの強襲作戦。速やかに30分程度で終わるはずだった作戦は、泥沼の市街戦へと突入。陸上部隊も、輸送トラックの部隊も、予想を超える攻撃に次々と死者を出します。 そして撃ち落とされるブラックホーク。救援に向かうブラックホークまで撃ち落とされ、被害は拡大の一途をたどります。 1名、2名を救うため、更なる死傷者を出していく。 単純な足し算引き算ができないのはわかっていますが、やりきれない思いでいっぱいになります。 『あいつらは石を投げてくるから気をつけろ』に代表されるソマリア民兵を下に見る、数々の格下発言。 民兵の子供達が無線機でヘリの音をとり、米軍の出動を知らせるシーンで、子供達に向かってヘリから手を振るアメリカの兵士。 確かにこの作品は純粋な反戦映画ではないのかもしれません。 むしろ、戦争の相手を『無能』『格下』と決め付けてしまったがために、急襲が急襲でなくなり、待ち伏せに会い、被害を拡大させてしまったことをアメリカに反省させるような内容に見えます。 見逃してしまった待ち伏せのサイン。あそこで待ち伏せされていることに気付いていれば、アメリカもソマリアも被害が拡大することはなかったのでしょう。 戦争をする気はなかったのに戦争になってしまった、というのが本当のところではないでしょうか。『これはもう強襲作戦ではない。最悪の市街戦へと突入したんだ。』という本部の上官の悲痛な叫びが、すべてを物語っている気がします。 登場人物が多すぎて、誰が誰だかわからなくなります。誰がデルタフォースなのかも、途中からよくわからなくなります。ソマリアの人たちも、民兵と一般市民の区別がつきません。 つまりは、偉そうに語ってしまいましたが、私がこの映画を理解できているのかどうかが、そもそも怪しい。 ですが、戦争のシビアな現実は、少なからず感じ取ることができたのではないかと思っています。 戦争映画でこのコメントを使うと顰蹙を買いそうですが、『大変面白かった』です。 当事者ではないから言える意見ですね。日本に生きる私にとっては、やはり他人事なのかもしれません。 [ブルーレイ(字幕)] 8点(2016-11-12 14:17:52)(良:2票) |
67. フラッシュバック(2001)
《ネタバレ》 レイチェル・リー・クックが好きで見たのに、あまりのつまらなさに彼女を嫌いになりそうです。 どう扱っても魅力的になりそうな女優を、ここまで魅力のない人物に仕上げたことにまず拍手をおくりたいですね。 それに、字幕がところどころ変な訳なのも気になります。 『面白い映画は細かい粗が気にならない。細かい粗が気になる映画はそもそもがつまらないからだ。』っていう一般論は本当みたいです。 そもそもが、薄く浅いストーリーに、魅力の無い人物設定なのに、変に真面目に作るもんだからB級作品にさえなれません。 切なくしたいのか、怖がらせたいのか、いったいどうしたいのかわかりません。 これははっきり言って監督の力量不足でしょうか。 この作品だって、アランとデビットの友情を、もう少し丁寧に深く掘り下げるだけで、ラストの衝撃がはかりしれないものになったかもしれません。使い古されたプロットだって、料理の仕方次第で何度でもおいしく食べられるものです。 ラスト20分くらいの真相解明は面白いです。予想はつくけど面白い。期待を裏切らないオチは程よい感じ。 でもこの程度のオチを見るために、つまらないエピソードを小一時間も見ないといけないとなると、とても人には勧められませんな。 [DVD(字幕)] 5点(2016-10-24 05:37:09) |
68. フォーン・ブース
《ネタバレ》 ジャンルとしてはサスペンスなのですが、個人的には結構コメディ。 もちろんハラハラもするのですが、なんか笑えちゃう部分があって。 どこで笑えるのか? 一番のポイントは、主人公スチュの告白シーン。 犯人に命令され、奥さんとパム(浮気相手?)の前で、自分がしてきたことを泣きながら告白する。この情けなさがちょっと面白いです。 でも一番おかしかったのは、奥さんの対応。 『あなたが何をしても平気よ。』 まじか奥さん。かっこよすぎ。 同じく騙されていた浮気相手のパムはというと、泣きながら真実を話すスチュに感動して、ちょっと泣きそうになっています。 この茶番、もう最高に面白いです。 犯人がなんだかんだ言いながらも、無関係な人を殺さなければ、脚本の完成度の高さを絶賛できたのですが。 客引きの兄ちゃんとピザ屋殺しちゃうんだもんなー。 いくらでも、どうとでもできそうなシチュエーションなのに、どうにもできないように思わせる演出は上手かもしれません。 それに、いざと言うときに人間の本性が出ると言いますが、その本性を逆に『善良』に描くという発想は、何となく好感がもてます。 こーゆー限られた空間、限られた状況下でのシチュエーションサスペンスって面白いですよねー。 まあ蓋を開けてみれば、引退したプロの殺し屋の暇つぶしにつきあわされただけのような気もしますが。 でも面白かったので、ま、いいか。という感じです。 残念ながら、全体的に良作ではありますが、傑作とまではいかず。 多くを望まなければ、娯楽作品としては十分及第点でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2016-10-23 15:06:37)(良:2票) |
69. ブルークラッシュ
《ネタバレ》 『なるほど。母親のこと、けがをしたときのことがトラウマになっているわけですね。きっとこれを克服していくんだな。そして仲間達と一緒にトレーニングを積んで、最後は優勝しちゃうのかな?』と、またまた先入観たっぷりに鑑賞。 結果。克服しない。練習しない。優勝しない。もうびっくりです。 もっとばりばりのスポ根とサクセスを期待していたので、思っていたのと違うテイストで残念。 妹のことでフラフラ。男のことでフラフラ。友人とけんかしてフラフラ。何に対しても優柔不断。信念なし。主張なし。プライドなし。こんなに情けない主人公いますかね。 この主人公にぴったりのストーリーもつまらない。サクセスストーリーとしては、棚ぼた感が強すぎて充足感が得られない。恋愛ドラマとしてはあほすぎて見ていられない。スポーツドラマとしては論外。 結局練習らしい練習はほとんどしないまま大会へ。で、当然のことながら予選敗退。それは当たり前の結果ではありますが、そんなん見て何が面白いのよ。 挙句の果てに、ラストは対戦相手に誘導してもらう始末。なんて情けない主人公。 せめて主人公が人格者であればもう少し違った見方もできるのですが。 妹とのことは何も解決しないままうやむやに。心配する友達には逆ギレ。 『ケイト・ボスワース』『ミシェル・ロドリゲス』『ミカ・ブーレム』と魅力的な女優さんをそろえて、こんなにも魅力の無い作品ができるものでしょうかね。 ただ波の映像は素晴らしいです。いったいどうやって撮ったんだというくらいの迫力の映像。これを見るとサーファーという人種はほんとクレイジーだと思います。それくらい凄い映像が盛り沢山。映像技術だけでいうなら文句なしの満点です。 これでストーリーと主人公にもっと魅力があれば、見ているほうもまさに〝波に乗れた〟のに。 ・・・お後がよろしいようで。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2016-10-02 16:15:21)(良:1票) |
70. PLANET OF THE APES/猿の惑星
《ネタバレ》 オリジナルとは切り離して見るつもりだったのですが、いつの間にか比べちゃいますね。 『現地の人が普通にしゃべっている。』『ここは地球ではないのか。』などなど。 それにしても、主人公や猿、現地の人、誰も彼もが一歩引いた演技に見えるのは気のせいでしょうか。 何となく舞台劇っぽく見えてしまいます。 そしてフィールドに広がりを感じなかったのも、やや物足りないです。 現実世界が映画の舞台であれば、映像には映らない世界の広がりや奥行きを、私達は自然と認識できます。 ですが、SFではそうはいきません。目に見える世界以外のことは、意識してはじめて、想像することができます。 SFって、どうしても世界がこじんまりと感じがちです。 そう考えると、舞台がオールフィクションでありながら、あの世界の広がりを感じられる『スター・ウォーズ』シリーズは、確かにSFにおける傑作かもしれません。 ストーリーに関しては、はっきり言って中途半端な印象です。 脱出劇なのか。アクションなのか。 脱出劇にしては緊張感に欠け、アクションにしてはカタルシスに欠けます。 『主人公達の脱出を手伝うアリ。』『セード将軍を裏切る部下ゴリラ。』 その動機に説得力はありません。整合性もありません。 ビジュアルだけが凄く良かったですね。 ストーリー3、ビジュアル9、間をとって6点といったところでしょうか。 正直ラスト、さっぱりわかりませんでした。 あるサイトで、かなり説得力のある意見を目にしましたが、この映画を見ただけでそこまで理解するのは、普通の人には無理でしょう。 『猿の惑星』シリーズとのファーストコンタクトがこの作品であれば、一本の映画としてはまあまあ面白いと思われます。 B級の域は出ないと思いますが。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-07-16 14:15:14) |
71. ファム・ファタール(2002)
《ネタバレ》 宝石強盗。狂言誘拐。自分とウリ二つな女。予知夢。 現実感と虚構感が絶妙なバランスで交じり合う世界。これにまたミスマッチなのんびりとした音楽が流れます。 この独特な雰囲気。これがフランス映画特有の味わいなのでしょうか。アメリカ映画ではなかなか感じることができない空気感ですね。 レベッカ・ローミンは、善人の顔と悪人の顔、人間の二面性を見事に演じきっていたと思います。更にリリーは全く別人に見えるので凄い演技力です。 そしてもう一人の主人公、アントニオ・バンデラス演じるニコラス・バルド。やはりこの人、かっこいい。ずば抜けた美形ではないのに、表情の作り方や立ち居振る舞いでこうもかっこよくなるものかと、感心します。 サスペンスとしても面白いのですが、人間ドラマとしても非常に興味深い作品。何となくニキータを思い出すプロット。 最後の15分間は一瞬何が起こったのかわからなくなる展開。ほぼ反則技の大技ですが、個人的にはこれはアリです。 正直、ちょっと内容に対して、スローすぎるテンポに集中力が切れそうになることも。テンポはもう少し速いほうが好きかもしんないです。 『ファム・ファタール』って『男を破滅させる魔性の女』という意味と、『男にとっての運命的な恋愛の相手』の二つの意味があるのですね。なるほど。そう考えると、『こんな形で出会わなければ~』を体現したかのようなクライマックス。サクセスストーリー並みの幸福感が得られるだけでなく、まさにタイトルどおりの結末となったわけです。良い。 [DVD(字幕)] 7点(2016-05-28 16:32:24)(良:1票) |
72. ブロンド・ライフ
《ネタバレ》 ストーリーが悪いとは思いません。ただ、メインのストーリーがわかりづらい作品だとは思います。 仕事でのサクセスをメインにしたいのか。ラブストーリーか。コメディか。 中盤くらいまで、何が主軸なのかよくわからないのは、そのどれもがインパクトが弱いためだと思われます。 また、スタート時の人物関係の説明が足りていない気がします。群像劇ではないのに、まるで群像劇のようにメインの人がその他大勢の中に埋もれてしまっています。そして人物相関図にまとまりがありません。それなのに、ストーリーだけどんどん先に進んじゃいます。 ですから、人物に思い入れがないままラストまでいかれても、胸には響かないということです。言いたいことはわかりますけどね。 ジャックが重要人物で、彼の予言を中心としたプロットになっていることには途中から気付きます。この作品に限って言うならば、事前にあらすじを知ったうえで鑑賞したほうが、物語を純粋に楽しめそうです。 ジャックの予言が次々と的中する演出は面白いです。ですがそれがストーリーの面白さへと転化しきれていない気がするのです。 それに、レイニーがピートと、ジャックの予言の情報を早くに共有していれば、ピートは初めからレイニーのことを本気で心配してくれたかもしれません。個人的にあら捜しはしない主義なのですが、していないのに粗が気になるのは問題。 これぞ、決定打に欠ける代名詞と言えそうな映画だと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2016-04-29 10:45:56) |
73. フー・アー・ユー?
《ネタバレ》 仮想空間の恋愛と、現実世界の恋愛が同時に進行するストーリー。なかなか面白い設定です。そしてその設定を活かしたストーリーも面白い。 少々変わっているのが、バーチャルの『メルロ』=ヒョンテが、バーチャルの『ピヨリ』=インジュだと知っていること。インジュのほうは、メルロがヒョンテだということは知りません。 普通こーゆーカテゴリーの作品は、『お互いに相手が誰かわからない。』っていうのがミソだと思うんですよね。それを初めからこんなアンフェアな関係にするなんて、ある意味斬新かもしれません。 だから基本的には『ヒョンテ目線』になりがちです。つまりは、男性目線の作品だと言えそうです。 ディテールが雑な印象のある韓国映画ですが、この作品はかなり丁寧に作りこまれていると思います。 また、フィールドをヒョンテ、インンジュ、その周辺の人々に留めて、無駄に話しを広げすぎなかったのも良かったと思います。 途中でダレる部分も無いことは無いんですけど、最後がとにかく感動しますね。 ラストシーンで、出来上がったゲームのCMが街中で流れます。このCMが大変に素晴らしい。 こーゆーネット系のゲームってやったことないのですが、やってみたくなります。 最後に、内容とは関係ないのですが、ヒョンテの吹き替えはあまり良くなかったです。インジュのほうは良かったと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2016-04-28 00:55:53) |
74. ファイナル・デッドブリッジ
《ネタバレ》 個人的には、シリーズ中一番盛り上がらなかった作品かもしれません。 今作はグロ描写に力を入れすぎてしまい、もはや悪趣味の域です。 いきすぎた表現は、現実感を薄め、虚構感を生み出す傾向があります。今作は特にその傾向が強く、作りものであることを観る側に強く意識させてしまう可能性があります。 また、死んだ姿を見せている時間が長いのも問題あります。倫理的な面でもそうですが、それ以前に『どーだ、こーゆーのが見たいんだろう。』と一方的に言われているようで、大変不愉快です。 シリーズ通して必ずあった『サイン』のようなものも無くなっています。あの『サイン』こそが、このシリーズの緊張感を生み出している最大のポイント。つまりはこのシリーズは、『結果』ではなくその『過程』における工夫の度合いが重要なのです。この監督さんはシリーズの良さが全くわかっていません。 そして最悪なのが、『人』対『人』の構図を作ってしまったことです。このシリーズで一番やってほしくなかったことです。それをやっちゃうと、ただのサスペンスに成り下がってしまうということがわからないのでしょーか。 最初の橋落としのシークエンスとラストの飛行機。この作品でよかったのはこの2点です。 特にラストのつながりは、このシリーズのファンにとっては感慨深いものがあるのではないでしょーか。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2016-04-22 11:12:31)(良:2票) |
75. 15ミニッツ
《ネタバレ》 刑事と消防捜査官がタッグを組む変則バディもの。エミルとウルグは異常者のふりをして無実になろうとする、ある意味正真正銘の異常者。エミルのきれっぷりと、人が殺されていても涼しい顔してビデオを回すウルグの気持ち悪さは戦慄を覚えます。 対するエディとジョーディはやり手の刑事と消防官で、なかなか頭が良い。 つまりは、頭がきれる人たちと、本当に頭がぶちぎれちゃっている人たちのバトル。 ですから、中盤くらいまでは、スリリングでスピーディな展開に手に汗握ります。 ところが、エディが殺されジョーディは冷静さを欠いた行動が多くなり、状況はどんどん悪い方向に。ウルグの悪趣味な犯罪ビデオの気持ち悪さもあいまって、後半はイライラすることも多い。 また、ジョーディがエディのために涙したり、法律を無視して暴走しちゃうことには、個人的には違和感を感じます。何故なら二人の関係はビジネスライクなものに近い印象だったからです。正直、ジョーディとエディの間に、そこまでの絆が生まれていたとまでは思えないのです。 テレビ局エントランスでの警官とマスコミの攻防など、1つ1つのシーンや作品全体のプロットは大変面白いだけに、後半の主人公の整合性を欠いた暴走はちょっともったいなかったですね。どうせフィクションなんですから、『第2のエディ』みたいな形でしめくくって、主人公をもっとヒーローにしてほしかったです。 それでも2時間という尺で、緊張感が一度も途切れないのはなかなか凄いと思います。この作品の持つパワーを感じます。閉塞感漂う作品は観ていて疲れますが、緊張感のある作品は大好きです。 [DVD(字幕)] 7点(2016-03-23 12:01:52) |
76. ファイナル・デッドサーキット 3D
《ネタバレ》 個人的に大好きなシリーズ。順番でいくと1<3<2<4ですが、この作品も十分に面白いです。 前3作品に比べると、ニックとローリを除いて、死に対する意識が低すぎるのが少々マイナス。 また、ニックが見る予兆を簡単に信じることができないというのは当たり前ですが、かと言ってみんながみんな最初から全否定だとかえって不自然です。それに、生への執着があってはじめて死への恐怖や死んだ後に残された者達の喪失感が感じられるわけで、生への渇望や死を恐れる描写が少なすぎると、せっかくの恐怖演出もその効果が半減します。 ただ、ファイナルディスティネーションにファンが求めるであろうものは、おそらくきちんと押さえてあるのではないでしょーか。 最初の大事故だってそうだし、一人一人の死に方のレパートリーも、流石に既視感はあるものの工夫が見られます。 また、いつもと違って、途中でもう一回『映画館爆発で大量死』を挿入しちゃったというのは、今までこのシリーズには無かったパターンです。結局は主人公の奮闘で未然に防がれてしまいますが、ちょっと新しいパターンでした。 何にせよ、ファンを裏切らないいつものファイナル・ディスティネーションでして、個人的には満足のいくレベルに仕上がっていました。 [DVD(字幕)] 7点(2016-03-10 00:51:15)(良:1票) |
77. ブラウン・シュガー(2002)
《ネタバレ》 『男女の友情は成立するのか』という不変のテーマに挑んだ作品。答え。『成立しません』。そりゃそうです。 主役の二人は仕事においてもプライベートにおいても、お互いを認め合い励ましあう理想のカップル。しかも二人とも『仕事ができる』というおまけつき。ところが幼馴染の二人は、なかなか『親友』としての枠を超えることができず、それぞれ別の人と結婚してしまいます。だからこそラブコメとして面白い展開が期待できるわけですが、当て馬のような役割の相手はやはり可哀想ですよね。 しかもそれぞれの相手役は、なかなか性格が良くて、地位も名誉も金もあって、結婚相手としては申し分ありません。ですから途中までは、主演の二人はくっつかないのかも、と観客に先を読ませない展開はうまいと思います。 ただその分、その相手役の二人に同情しちゃうと、ラストで主役のドレイとシドニーがくっついても素直に喜べない人は喜べないかもしれないですね。個人的には素直にドレイとシドニーを祝福できるくらいには面白かったです。 また、脇を固めるご友人の方々も良い味出していますね。特にクリスとフランシーンはとても良い。良いアクセントになっています。 ラブコメ一辺倒ではなく、仕事に真剣に打ち込み悩むもう一つのサクセスストーリーがあるので、ドラマとしても面白い作品。 ちょっとした下ネタや軽快なトークなど、笑える要素が多く、見飽きないのも良い感じです。 ただ、じれったい二人の様子を延々と見せ付けられることに変わりはないので、多少ダレを感じる部分が無くもないです。大きな事件もありませんし。その一方で、日本人にも共感できる一種の切なさはしっかりと感じることができます。だからこそラストは感動するのかもしれません。これも隠れ良作の部類に入る逸品でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-28 19:26:42) |
78. ブラディ・サンデー
《ネタバレ》 映画としての評価がとても難しい作品です。 文献・資料としての映像作品と見るならば、その価値は極めて高いと思われます。 一応調べてみたのですが、この事件は本当にあったようですね。 映画というよりはドキュメンタリーに近い作風。もちろん、実話をもとにフィクションで構成されているわけですが、まったくのフィクションではなくノンフィクションの側面も持ち合わせている作品です。起こった出来事をおそらく忠実に再現し、それを淡々と流しているだけなのですが、言いようのない緊迫感が充満しています。 解説では、『イギリス、アイルランド、どちらが見ても納得できるように作った。』とありますが、この内容ではとてもイギリス側は納得しないでしょう。完全にイギリス側が非人道的な行為を行い、それを国ぐるみで隠蔽したように描いているのは明らかです。 もちろん、先にコースをはずれ、投石という暴力行為に出たアイルランドの若者達にも非はありますが、それに対する報復措置としては罰が重過ぎます。また、逃げ惑う人、撃たれた人を助けようとしている人まで狙撃されています。完全にイギリスという国家、その国が抱える軍隊を糾弾する内容に仕上がっています。 個人的には、この作品の作成の中心にイギリス人がいることが最早凄いです。 アイルランドの人はこの事件を忘れることはないが、イギリスではこの事件はほとんど語られないという事実が、この事件の全てかもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2016-02-18 00:32:24) |
79. フラッシュバック(2000)
《ネタバレ》 子供のときに両親を殺された子供が、トラウマを抱えたまま10年経った後の物語。 ほどほどに怖く、ほどほどにスリリングで、グロ表現はなかなかのものがあります。 ドイツ映画ですが、ハリウッド定番のスラッシャーものと内容はさほど変わりません。もの凄く性格の悪い若者たちが、次々と殺されていくという、しっかり定石を踏んだ手堅い作りになっています。 ただ、『犯人は誰?』というミステリ要素を含んでいるため、犯人が誰かわかってしまうとやはりトーンダウンしてしまうのは否めません。 この作品は、出だしと終わり方にセンスを感じます。個人的にはかなり好きな演出です。 こうして歴史は繰り返してゆくのだなーと、しみじみ感じてしまいますね。 [DVD(字幕)] 8点(2016-02-07 16:12:27) |
80. ファイナル・デッドコースター
このシリーズだけはいつまでたっても飽きないですねー。 数々の伏線。伏線がつながった瞬間に起きる惨劇。はしる戦慄。心無い人から『殺人ピタゴラスイッチ』なんてゆわれちゃいますが、正にその通りなので、何も言えません。 ゾンビも殺人鬼もモンスターも出ないのに、これだけハラハラできるシリーズが他にあるでしょうか。 死に方も偶発的なものに人為的なミスを絶妙な匙加減でからめ、大変自然に、でも大惨事に仕上げているこの手腕が素晴らしい。 必死に写真からヒントを探し、それを次の犠牲者になんとか伝えようとする、わかりやすくも引き込まれてしまうストーリー。 このシリーズでしか感じることのできないドキドキが、確かにあります! [DVD(字幕)] 8点(2016-01-18 02:08:24)(良:1票) |