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1.  ブラックブック
レジスタンスものは、近年の戦争映画の中では少数派とも言えるが、本作ではむしろ一人のユダヤ人女性の戦争体験による、波乱に満ちた数奇な運命を中心に、戦争というものがいかに残酷で、人間の運命を狂わしていくかを描いたものである。しかも監督がP・ヴァーホーヴェンという事もあり、展開は必ずしもセオリー通りとはならず、かなりアクの強い作品に仕上がっている。ナチスとレジスタンスという明確な対立の構図の中を、女スパイとして綱渡りをするのも、肉親を虐殺された事による私憤の為であり、映画としては常識的に、彼女の復讐劇が描かれていく筈のものが、そうはならないのは、従来から既成概念に捉われず、自由闊達な視点で創作するヴァーホーヴェンの一つの特徴と言えるだろう。そういう意味においては、中盤の見せ場である仲間の救出劇や、ムンツェとのラブ・ロマンスにしても、敗北感や虚無感ばかりが覆い尽くしている。つまりは本当の意味で、溜飲を下げる要素は何一つ無いと言ってもよく、波乱万丈の大娯楽作品としての味わいとは程遠いのである。しかしながら、ただひたすら荒っぽい筋立てで、まったく先の読めないまま、目まぐるしく展開していく事と、彼の作品の特徴でもある、残虐性や露骨さ、或いは猥雑さ(中でも美女を裸にして汚物まみれにするという悪趣味の極み!)等が渾然一体となって、本作を魅力的なものにしている事も事実である。全編、既成の善悪の判断の無意味さと、欲望に駆られた人間の愚かしさが痛烈に炙り出されていくが、やがて平和を迎えた時に、かつて、仇の男と毎夜の如く情痴を繰り返していた、もう一人の女性と再会した事から物語が回想されていくのも、何やら皮肉な運命を感じさせる。女たちの生きる事への貪欲さとしたたかさに、改めて人生を教えられた思いだ。注文を付けるとすれば、何の前触れも無く唐突に出現した感のある、肝心の“ブラックブック”の(まるで葵の印籠のように)有無を言わせぬその信憑性と齎す意味に 、あまり説得力を感じない点だ。
[映画館(字幕)] 8点(2007-07-29 15:53:51)(良:1票)
2.  ブロークン・フラワーズ
口数こそ少ないが女性にはことのほか優しく、いかにも頼りなげだが、それでいてどこか放っては置けない。女はこういうタイプの男に惚れやすいのか。しかし、男の優柔不断な性格が災いして、結局別れるハメに。泣いた女の数は一人や二人ではないのである。そして今日もまた一人、彼の元を去っていく・・・。プレイボーイを自認し、数々の女性と浮名を流してきた主人公も中年期を過ぎ、孤独な日々がただ虚しく過ぎていく。それでも未だに女性にとっての理想の男性像を追い求めている男は、自分の殻の中から抜け出そうとしない。その姿には哀れさが漂うが、隣人すら放っては置けないのだから、お節介と言うより、やはりどこか憎めない、愛すべき人物なのだろう。そんな彼がある事をきっかけに、数人の元カノたちと再会する旅に出る。手土産として胸に花束を忘れないところなどは、伊達男いまだ健在である。しかし、感情を露わにせず、終始無表情な主人公とは対照的に、女たちの感情の起伏は激しく、反応も様々だ。若かりし頃を懐かしみ、ヨリを戻してもいいような素振りを見せる女から、困惑するばかりで、突然の来訪にいかにも迷惑だと言わんばかりの女。あるいはまったく相手にされないばかりか、恨みつらみをぶちまける女まで、その生活力の差や幸福度も然ることながら、当時の“新密度”や“別れ方”までもが瞬時に透けて見える。それぞれの場面でのセリフの間合いや空気感、女たちのアンサンブルの面白さが本作のポイントだが、やはり主人公のドンを演じるB・マーレイのダメ男ぶりが最大の魅力の作品だと言っていいだろう。永年培ってきたコメディアンとしての彼独特のおとぼけぶりが、歳相応のひとつの味わいを醸し出せている。演技派として近年とみに心境著しい、今が旬の貴重な俳優である。長い歳月が過ぎ去り、歳を重ねた彼女たちと再会を果たしたことで、我が身を振り返り、男としての責任の重さと痛みをヒシヒシと感じ始める主人公。人生は長いようでいて短くもある。男が、そして女がいつまでも変わらずにいられるのか・・・。  「時の流れの残酷さ」という自明の理をしみじみと感じさせてくれる好篇だ。
[映画館(字幕)] 8点(2006-09-17 23:59:40)
3.  フォーガットン 《ネタバレ》 
自分のお腹を痛めてまで生み育てた子供が、実は最初から存在していなかったとしたら・・という発想から編み出された、「記憶」に纏わるサスペンス・ドラマ。これはもはや、記憶違いや物忘れなどのレベルの話ではないだけに、ヒロインの妄想すなわち、昨今流行の“あのパターン”の映画だろうと高をくくっていたが、同じ様なパターンの映画が通用するほど、ハリウッドもそう甘くはない。巧妙に仕掛けられた罠なのか、或いはやはり彼女の思い違いなのか・・・といったミステリアスな雰囲気は持続することなく、映画は中盤から様相が一変してしまう。当初、D・フィンチャーの「ゲーム」を連想していたのだが、謎の男が出現してからはかなり具体的に、しかも人知の及ばない“何か”の策略が蠢いていることが解かってくる。このあたりを「Xファイル」的だと指摘する声もあるが、私などはむしろ昔の米TVドラマ「ミステリー・ゾーン」のロッド・サーリングの世界そのものだと思っている。決して理屈ではなく、我々の日常周辺に生じる身近な出来事。奇異であり奇跡的であり、人知では計れない不可思議な現象を描いた本作は、小さな世界の話のようでいて、実に大きいスケール感を伴った映画だ。しかし謎の解明のプロセスが大雑把で、結論に至るまでが余りにも性急過ぎるのは、上映時間の問題だけではないように思う。とりわけ、信じ難い話にやたら物分りの良い女性警官や、何かを嗅ぎ回っていたフシのある連邦保安局員は、途中から登場しなくなったりと、何かにつけて不備が目立つ。要はせっかくのアイデアを上手く脚本化できなかった事が、本作の最大の欠陥とも言えるのだが、もう少しヒネリがあれば、もっと面白い作品になっていただけに、惜しい気がする。
[映画館(字幕)] 7点(2005-06-30 16:02:58)
4.  フライト・オブ・フェニックス
物語の大筋はオリジナルと殆んど同じであり、結末もまた然り。それでも尚すこぶる面白く観れたのは、絶えず観客の興味を引くような見せ方の上手さ、つまりは演出の弛まざる創意工夫が成されているという事に尽きる。このまったく新しい感覚でリメイクされた単純明快な物語の面白さは、オリジナルを知っている世代も知らない世代にもストレートに伝わってくる。そういう意味で本作は古い皮袋に新しいワインを注ぎ入れた作品だと言える。作品の成否を左右しかねないのが序盤の不時着シーン。最新SFXによるCGとライブアクションが絶妙にブレンドされ凄まじいスペクタクル効果が生み出された。その度肝を抜くスピード感溢れる映像は圧巻で、少々大袈裟に言えば映画史に残るほどの名シーンとなっている。そして、独特の丘陵を描く砂漠の美しさと寂寞感、あるいは眩く輝くシルバー・メタリックのツインブーム機を縦横無尽に捉えた見事な撮影技術が、本作の成功を担っていたと言ってもいい。登場人物のポイントゲッターである設計技師にG・リビシ。オリジナルではH・クリューガーの役だが、その偏執狂で謎めいた人物像は、○○の設計技師という、いかにもオタクっぽい彼のキャラにピッタリで、その点ではクリューガー以上かも知れない。前作の異常気象による厳寒の地から灼熱の砂漠へと舞台を移しても、D・クエイドのタフガイぶりは不変であり、頼れる兄貴のイメージを見事に体現している。その真面目さからか、彼の演じる役にはどこか説得力があり、決して嫌味がなく安心して見ていられる。作品的にはハズレのない、数少ない役者さんだ。欲を言えば伏線の張り方、例えば機体を解体する機材や工具あるいは食料や水を積荷としているという、いわゆるお膳立てにもうひと工夫欲しいところ。しかし“サバイバルもの”と言う意味では「エネミー・ライン」以来久々の登板となったJ・ムーア監督の得意分野。登場人物それぞれが人生の岐路に立ち、現実の危機的状況に絶望しつつ、古いものを棄て新しく生まれ変わろうとするこの寓意に満ちた物語を、オリジナルと比較されるというリスクを負いながらも、独特の映像感覚で人間の再生のドラマへと昇華させた手腕は、もっと評価されていい。ご贔屓の監督作だけに点数は大甘だが決して期待を裏切らない作品となっている。「DVDが出たら、見よぅっと」などと考えてるアナタ!是非、劇場で観るべし。
[映画館(字幕)] 10点(2005-04-18 18:25:10)(良:2票)
5.  フォーチュン・クッキー
特に秀でているわけではないが、これと言った破綻も無く、定番ながら手堅く纏め上げられたライトコメディの佳作。コミカルさが決して過剰でなく、シリアスな部分とほどよくバランスを保ちながら展開するドラマは過不足なく描かれ、まずは安心して観ていられる。このバランスと言うのがこのテの作品には重要でコメディの難しいところ。失敗作の多くは話がやたら大袈裟になったり、説教臭くなったりしてしまうのだが、本作はそういった点を見事にクリアーしている。体が入れ替ってしまうといった不思議なマジナイはいつも東洋(特に中国)からというのも、東洋の神秘に憧れを擁いている(?)アメリカ人的な考え方の一端を窺い知れるが、やや安直過ぎるように思う。J・リー・カーチスのコメディエンヌぶりは、今更ながら彼女の芸域の広さを思い知らされるが、そのチャーミングぶりが映画の成功を決定づけたのかも知れない。「プレシディオの男たち」で颯爽とした二枚目アクション俳優として登場し、M・ライアン相手に濃厚な濡場を演じたM・ハーモンが渋い中年男性として久々に出演してくれたのは嬉しい限りだった。
8点(2004-07-29 18:14:56)
6.  フォーン・ブース
携帯電話では決して成立し得ない、昨今では珍しい“公衆電話ボックス”という小さな小さな空間から、やがてこの作品世界は際限なくグローバルに広がっていくという、今までにない独自性をまず感じさせられる。無差別犯罪のターゲットにされ、極限状態に追い詰められた男の恐怖を描く本作は、まさに監督J・シューマカーの得意分野でもある。で、およそ映画的スケール感とは無縁の限定された世界の話であり、しかもプロットは極めてシンプルなだけに誤魔化しが効かず、より演出の緻密さが要求される。そういう意味においては、小品だが彼の本領が存分に発揮された佳作となっている。とりわけ分割画面の効果を最大限に生かしている点などは、上映時間の短縮には実に有効だったと思う。また、F・ウィティカー演じる警部を機知に富んだ聡明な人物として配置するなど、バランス感覚にも細やかな配慮がなされている。しかしそれも、全編のほとんどを一人芝居で演じきったC・ファレルの的確な演技があってこそ。世の中はすべて金!といった傲慢で世渡り上手な面がある一方、脅迫で自身の人間性を曝け出すような弱さも併せ持っているという、この何処にでもいるような男=スチュを演じて見応え十分。ただ警察より一枚も二枚もうわ手で、すべてが計算ずくで、ゲームを楽しんでいるような犯人の動機や真の目的が謎である以上、ラストにチラッと姿を見せたのはやはり間違いで、謎は謎のままにしておいたほうが、より不気味さが出たように思う。
8点(2003-12-17 17:02:37)(良:2票)
7.  ファインディング・ニモ
鮮やかな珊瑚に彩られた海底のオープニングから冒険の旅へと展開されるこの物語は、主要なキャラクターたちが魚ということもあって、その舞台のほとんどが海に限定されている。それだけに視覚的にはどぅしても単調になってしまいがちだが、光が射し込む明るい海の中と暗黒の深海とを対比させたり、遠くかすかにしか見えない薄ぼんやりとした海底などといった、様々なバリエーションを用意して見せ方に工夫を凝らしているのが良く解かる。そして水槽といったもぅひとつの“海の世界”を用意する事で、遠く離れているという距離感を感じさせると共に、ドラマに振幅をもたらせている。さらに終盤活躍するペリカンの登場で、海から空へと空間的な広がりをも感じさせてくれ、実に贅沢なヴィジュアルと見事な構成力で堪能させてくれる。それぞれのキャラクターたちの自然な動きの滑らかさも、これがアニメーションだと感じさせないほどリアルで完成度は高い。ただ余り必要性を感じないキャラも多く、またマーリンとドリーとのシーンになると、話の流れが止まってしまうような印象を受けるのは残念だ。「モンスターズ・インク」のような感動味は薄いが、それでも、溜息の出るような海の中の物語を見せてくれ、これはこれで満足のゆく作品ではないかと思う。
8点(2003-12-15 18:17:39)(良:2票)
8.  ファム・ファタール(2002) 《ネタバレ》 
巻頭、エロティシズム溢れる白昼の宝石略奪シーンからデ・パルマ印全開の本作は、結論から言うと、昨今流行りの“脳内映画”の変種だと言える。仲間を裏切って宝石を独り占めして姿を眩ましたまではよかったが、追われる者の恐怖感からか、はたまた後ろめたさからくる強迫観念からか、延々と続くヒロインが見る悪夢(しかしそれは実に刺激的で魅惑的な)に、我々観客は否応なくつき合わされ、そして翻弄される。従って映画の大半はいわゆる「騙し絵」であって、要はルール違反なのだが、それでも先の展開が読めないほど巧妙に入り組んだプロットを、流れるようなカメラワークとデ・パルマの見事なストーリーテリングで、観客に有無を言わさず、ぐいぐい引き込んでしまう手腕はさすがで、実に魅力的な作品に仕上がっている。
7点(2003-12-03 00:30:42)(良:1票)
9.  ファミリービジネス
親子3代が泥棒稼業というお話。ここで言う“Family”とは“家族”と言うよりも、むしろ“一族”もしくは“民族”と解釈したほうが良さそうだ。映画の中の彼らが揃って風貌も考え方もまったく似ていない(いや、敢えて似させていない)のも、明らかにアメリカへ渡ってきた移民の末裔であることを強調したかったからに他ならない。これは多民族国家アメリカの大いなる特徴であり、舞台がニューヨークであるならば、尚更似ていなくとも何ら不思議ではない。大柄でダンディな女好きの祖父ジェシー(=コネリー)に何かと憧れを抱いている典型的なお爺ちゃん子で、泥棒というにはまだヒヨッコの孫アダム(=ブロデリック)。そんな彼らの間に立つヴィトー(=ホフマン)は息子アダムの将来を案じ、何かと反目し合う父ジェシーを警察に売ったりする小男・・・といったアンサンブルが面白く、彼ら名優たちの演技合戦もまた楽しい。泥棒映画としてのサスペンスフルなストーリー性よりも、親子の反撥と和解といったテーマをベースに、民族を大切にしニューヨーカーとして生きてきた彼らの人間ドラマにより重点が置かれた作品だと言える。サイ・コールマンの都会的なスコアが心地よく、劇中で歌われる“♪ダニー・ボーイ”が胸に染みる。
7点(2003-09-28 16:12:14)(良:1票)
10.  ブルジョワジーの秘かな愉しみ
巨匠L・ブニュエルが、6人の男女の遭遇する奇妙な日常を寓話的に描くことで、ブルジョア社会を痛烈に皮肉るという怪作。ここでは晩餐会(もしくはパーティ)というブルジョアジーの典型例をモチーフとして描かれていくが、なにやらボタンの掛け違えのような様々なエピソードを挟みながら、何故か終始食事にありつけない彼等の人間本来の姿が炙り出されていく。愛欲も食欲も普通の人間そのものだが、彼等はあくまでも見かけに拘る。体裁に構う。表層的なもので身を覆う。そしてその事により悪夢にうなされ続けるのである。繰り返し挿入される、着飾った正装姿でなぜか車にも乗らずに田園の一本道を歩く彼等。しかし何処へ行こうというのか、定かではない。あたかも夢の堂々巡りを象徴するかのようなエンディングに、ブルジョアジーの傲慢さと退廃の臭いを感じさせる。素人の批評など挟み込む余地の無いほど、ブニュエルの偏屈ぶりとイメージの奔放さは、本作でも独特のブラックな作品世界を築き上げ、異彩を放っている。
8点(2003-08-14 00:27:25)(良:2票)
11.  フリービーとビーン/大乱戦
70年代に大流行したポリス・ムービーの中にあっては異色中の異色作。四六時中喧嘩の絶えない二人の刑事の徹底したハチャメチャ・デタラメぶりが描かれるコメディだが、J・カーンとA・アーキンが大真面目に演じているところがこの作品の狙いであり面白いところ。捜査をしているうちに、逆に殺し屋に狙われるハメとなり、追いつ追われつのまさに“大乱戦”が始まってからは、あたり構わずトイレで二丁拳銃をぶっ放すわ、シースルーのエレベーターでの銃撃戦は始まるわ、凄まじいカーアクションではクラッシュしまくりの、最後は高速道路からビルの窓に突っ込むわで、(これで一般人にけが人が出ないのがご愛嬌でもあるのだが)全編見せ場の連続といった、そのサービス精神には恐れ入る。ラストのオチまでひっくるめて、どこまでも人を食った、しかし愛すべき映画で、ストレス解消には持ってこいの珍品。
8点(2003-05-21 14:50:38)
12.  プロフェシー
「隣人は静かに笑う」のM・ペリントン監督作品。まったく油断のできない人らしく、今回もラストにあっと言わせる仕掛け(それもかなりの大スペクタクル)が用意されている。しかし、それまでのミステリアスでしかもかなり地味な物語の展開と、あまりにもトーンが違いすぎて、予想外というよりもまったく違う映画を見せられているようだ。それは、ほとんど意味があるような無いような、取ってつけたような伏線の張り方が機能していない為で、まさに演出プランに計算違いが生じた為でもある。
6点(2003-03-14 15:47:24)
13.  ブラッド・ワーク
ラストの締めくくり方は、いつものイーストウッド作品的通俗さで工夫が足りないが、心臓移植されたヒーローという着眼点が極めてユニークで、その孤軍奮闘ぶりはやはり彼ならではのもの。古い仕事仲間とのやりとりなどは、ダーティ・ハリー以来の伝統を継承しているし、逃げる車や新聞の束に銃をぶっ放すところなど、まさに歌舞伎の大見得を切るシーンそのもの。イーストウッドという役者としての年季が違うのだ。惜しむらくは意外でもない真犯人に魅力が欠けている点だろうか。
7点(2003-02-01 00:44:41)
14.  プレッジ
作品は一見、犯人探しをしているようでいて、実は一人の男の執念を克明に追った点が狙い。そして、この引退したベテラン刑事の長年の感による、思い込みあるいは妄想ともとれる執拗な捜査に対して、まったく予想外の結末が用意してある。果たして“あの人物”が犯人だったのだろうか?なんとも虚しい結末だが、ひとつの事件が人知の及ばないところで展開し、まったく予断を許さないものだと言う事を、S・ペンは言いたげだ。それにしてもこのことごとく予想をはぐらかせる演出力は、彼の監督としての力量を十分証明しているし、一種の強迫観念のように個人的な意地で犯人探しをする主人公を演じるJ・ニコルソンの主演男優賞級の好演もあり、本作はまったく無駄のない、サスペンス映画としては申し分のない出来となっている。
9点(2002-10-14 15:28:06)
15.  ファイナル・デスティネーション
この映画を観ていて、例えば地震や火災で災難に遭うという事は、それらの現象そのものよりも、その影響で生じる建物の倒壊や密閉状態で脱出不能といった、いわゆる物理的な作用によるものだと言うことを改めて感じた次第で、そういう意味で本作は、まるで科学の実験を見ているかのような(一見、理に適ったように)、見えざる力により物理的・偶発的に殺されていく過程がなんとも丁寧に描かれていて、その部分がこの作品の唯一興味深くて面白い点だろう。
6点(2002-06-07 23:40:19)
16.  ブラックホーク・ダウン
“戦場映画”という触れ込みだけあって、それはそれは視覚的に良く出来ている作品で、その臨場感たるや、我々観客ともども戦地に放り込まれたような感覚に陥るほど。しかし要はそれだけのこと。ブラック・ホークが撃墜されたあと市民が次々と襲いかかるシーンなどは、「アラモの砦」でのインディアンのそれと酷似していて、アメリカ映画お得意の伝統ともとれるが、それら全編に渡る戦闘シーンは、凄まじさを通り越して滑稽ですらあるのは、そもそもわざわざ敵陣にやってきて絶望的な戦いを強いられる破目になったのも、相手を見くびった事に拠る米軍の傲慢さに他ならないからだ。「俺が死んだら妻や子に、勇敢に戦ったということを伝えてくれ・・・」「自分で言えばいいだろぅ」という戦争映画お定まりのセリフを用意するあたり、本作を見る限り被害者意識だけは十分だが、作戦の失敗の本質がなんら見えてこない。
6点(2002-05-19 16:30:15)(良:1票)
17.  プラットホーム
1980年代の中国をある若者たちの青春を通して、その時代の空気というものを掬い取った作品。天安門事件に至るまでの激動の歴史的な出来事は敢えて声高には描かれず、極めて普通の日常をスケッチ風に、それはまるでバスの窓から風景を眺めているかの如く、決してドラマチックにはならず実に淡々とした描写で展開されていく。主な舞台となる小さな村に遠い過去から脈々と流れ続けている時間やそのたたずまい、あるいはどの国にでもいるような、恋愛や新しいミュージックや煙草などに興味を示す若者たちの初々しい描写など、興味は尽きない。ただ漠然と鑑賞していると漠然とした印象しか残らず、精神的にも肉体的にも充実したときにでも観ないと、まさしく“プラットホーム”に置き去りにされてしまう・・・そんな作品だ。
7点(2002-04-26 15:09:31)
18.  フロム・ヘル
猟奇的で謎めいた未解決の事件だけに、創作は自由奔放にいくらでも可能だ。それほど“切り裂きジャック”のお話は有名ということか。しかし今回の場合、設定が強引すぎてどこかに無理があるし、だいたい話そのものがつまらない。時代背景のダークな雰囲気は十分だが、オドロオドロした恐怖感は案外乏しいし、又、J・デップの妖しい美しさは際立っているものの、肝心の予知能力がほとんど生かされていないのも不満が残るところ。ラスト、彼女を守るため自らの命を絶つ(?)という、結果的に究極の愛を貫いたという事なんだろうけど、彼女の事を本当にそこまで思っていたのかは大いに疑問だ。
6点(2002-02-07 00:44:41)
19.  ブレス・ザ・チャイルド
オカルティック・サスペンスに刑事モノ的な味付けを施した作品で、悪魔や大量の鼠が登場するといったショック・シーンも用意されてはいるが、幻覚という意味合いもあってSFXはこれ見よがし的でなく、むしろ控えめなのが効果的だし、また好感がもてる。ただしストーリーとしては取り立てて新味はなく、ぎりぎり及第点といったところか。K・ベイシンガーの恐怖にひきつった表情がなかなか素敵で、まずは彼女のその美しさに救われたような作品だ。
7点(2001-12-14 16:46:36)
20.  ブラインド・デート
この作品まではB・ウィリスはコメディアンだとすっかり思い込んでいて、その後「ダイ・ハード」なるアクション映画に主演すると聞いて、意外に感じたものだった。それからと言うもの、彼はアクション路線をひた走るわけだけれども、コメディ的な演技にセンスを感じるのも、本来の彼の資質に合ったこういった作品を経てきているからなのだろう。彼がミュージシャンだったことも思い出させてくれる。
7点(2001-11-04 00:18:09)
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