1. フォーガットン
ある程度柔軟性を求められる映画だと思うがこういう世界にファイト一発で乗れる人ならそこそこ時間潰しにはなると思う。やはり特筆すべきはこういう映画にジュリアン・ムーアやゲイリー・シニーズ、アルフレ・ウッダードといった濃いメンバーを放り込んだことであって、異種格闘技的な醍醐味は充分。スター隠し芸大会だと思って楽しむのが一番だが、ジャンルを見誤ったり乗り遅れてしまうと後半はかなり辛い展開となるだろう。要するに豪華メンバーが正月の企画番組でXファイルごっこをやってると思えばこんなに楽しい企画モノはない。はっきり言って久しぶりの真性立ちくらみ系作品だと思うが、個人的にはこういう現場が楽しそうな映画は大好きだ。ビデオで見たらサラッと見流してしまいがちな映画ではあるので、どうせなら踊る阿呆として当日券払って劇場で立ちくらみたい。しかしジュリアン・ムーアはそれなりに老けた。15年前のメリル・ストリープぐらいの力量は充分ある女優だと思うのだが、この人のある種ふっきれた芸人根性にはひたすら感服するばかり。だからこそこういう映画がスゴくなっちゃうんだけど。 [映画館(字幕)] 7点(2005-06-12 19:43:59)(笑:1票) |
2. フライト・オブ・フェニックス
1カット1カットに張り詰めた異様な緊迫感、極限状態を決してナメないシビアな展開、決して多くはない台詞に込められた凝縮された感情の数々。それだけに観客への要求度も比較的高い作品ではないかと思うが、いわゆるハリウッド映画に馴れ過ぎた感覚を一気に覚醒させるだけの力はある作品。墜落シーンの凄まじい迫力や、広大な砂漠で遭難者達に容赦なく襲いかかる大自然の脅威など、現代の技術ならではの見せ場もふんだんに用意され、そこで展開される「人間模様」もステレオタイプに走らず徹底的にリアルに迷走。諦めるな、努力しろ、というお約束のシンプル&ストレートなメッセージを骨にしながら、この手の遭難物にありがちな「保身に走り仲間を裏切る完全悪役」とか「自己犠牲の崇高な魂」のようなありきたりの展開に走らず、同じ方向を向いていてなお難しい結束力の維持や個々の抱える意地やプライド、刻々と変化して行くグループ内での役割分担など、人の心の機微を実にきめ細かに描いている。映像本位に捉えられがちだろうが、シナリオの完成度も決して見逃せない、傑作の域に加えて良い作品だろう。ジョバンニ・リビシは若手個性派の面目躍如、この人は過去に一度も期待を裏切らない最優良株の1人。あの「閉ざされた森」ですら、彼の熱演でサイテーの汚名を逃れた。彼を持って来た時点で秀作は手堅いと思っていたが、これまでの役柄の中でも筆頭に挙げたい好演でした。ハリウッドにもこんな監督が出て来るようになったんですね。物凄い完全主義者の匂いがして、一緒に働く人たちは大変でしょうが(笑)良い物を見せて戴きました。ありがとうと言いたいです。 [映画館(字幕)] 10点(2005-04-28 23:02:30)(良:1票) |
3. ブロウ
《ネタバレ》 これを最後まで観てしまった私は、たぶん何かを期待してたんでしょうね。一代記モノってけっこう好きなんですけど、なんというかこれは、好きになれない映画でした。前半のイケイケムードは楽しめますし、儲かって儲かって笑いが止まらないあたりまでは良かったんですけど、後半の泥沼とあまりにもお約束の訓話的オチには正直怒りに近いものを感じました。同じ「夢のあと」系だったら『カジノ』とか『グッドフェローズ』が既にありますし、ファンの方には非常に申し訳ないんですけどペネロペ・クルズという女優に品性のカケラも感じてない立場からは、あのバカ女役は全然シャレになってなかったです。ハル・ベリーとかシャロン・ストーンとかとは格が違い過ぎます。要は知性の問題かと。敢えて増量せずに中年太りを演じたジョニデには自信のほどが伺えますが残念ながらこれやるんだったらいっそ増量した方が良かったですね。加えてこれだけの長尺一代記にしては脇があまりにも甘かったです。レイ・リオッタは熱演しすぎて一人浮きしちゃってるし。ジョニデとレイ・リオッタで麻薬撲滅キャンペーンに荷担してどうする、って感じですね。麻薬王と言うにはちょっとスケールが小さいし、何しろオチが健全すぎる。その上長い。フランカ・ポテンテの横顔が美しいので+3点。 【追記】皆さんのレビューを読んでてだいたいわかりました。これ、出て来る女性がみんなサイテーな役だから嫌いなんですね、私(笑) 6点(2004-11-05 03:26:02) |
4. ブレス・ザ・チャイルド
観る前からだいたいどんな映画か想像がついてしまったので、実際に観ても特に驚きもなければ落胆もなかった。クリスティナ・リッチはやっぱり好きなのでそれなりに何をやってても喜んでしまうキケンなファン心理。加えて子役はとてつもなく可愛いし、キム・ベイシンガーもクリスティナ・リッチと共演するのはさすがにキツくなって来たけどやっぱりキレイだ。(対する男優陣はパッとしない顔ばかりだ。)しかしコレに物凄い期待を賭ける人もあんまりいないと思うので、そういう意味でのリスクは限りなく低いと言える、ある意味良心的な小品。残念ながらお値ごろ感には欠ける。こういう映画は雰囲気一発、選ぶかどうかは好みの問題だと思うので、出来は悪いがわたし自身が期待した程度の内容ではあった。原語で観てたので字幕をつけてたらもうちょっとつまんなくなったかも知れない。やや点数甘め。 7点(2004-07-30 00:42:23) |
5. フォーチュン・クッキー
《ネタバレ》 やっぱりジェイミー・リー・カーティスってこのまま埋もれさせるには惜しい逸材だと思うので、この作品は久々に「キタキター」という感じでうまくハマりましたね。娘役のリンゼイ・ローハン可愛いです。何故今ごろロック・ムービー?という大疑問も、ラスト近くでジェイミー・リー・カーティスがエレキギター持つシーン見て非常に納得しました。なんというか、異常に似合ってますし。リンゼイ・ローハンのギターさばきもかなり玄人っぽくて良い感じです。心配したロックバンドが予想をはるかに超えて素晴らしかったのと、楽曲のクォリティが高かったので不当に評価が甘くなったという自覚はありますが、それなりに見て損はない爽やかなファミリー映画という印象を受けました。まあディズニーですからそんなにヒドいことはないという保証つきですが。ディズニー映画にアレルギーのある方以外は、そこそこ楽しめるんじゃないかと思います。 7点(2004-05-10 02:31:35)(良:1票) |
6. ブラッド・シンプル
これはいいですね。原点だからこそのシンプルさと、ストレートさがその後のコーエン兄弟の作風を端的に集約していると思います。たまたま運悪く、3つ重なってしまった偶然。夫の元を離れた妻は、愛人が夫を殺したと思い込み、愛人は彼女の仕業だと思い込む。たったこれだけのストーリーが、ちゃんとサスペンスになっていることに驚きます。整理されたシナリオ、個性豊かというにはクセの強すぎる登場人物たち、計算の行き届いた画面構成。夫が殺されるまでの成り行きを丁寧に描く前半と、勘違いからお互いに猜疑心をつのらせて行く後半のそれぞれが独自のサスペンスを持っていて、ほとんどスキらしいスキもないのは見事。斬新なように見えて、映画学校で基本中の基本として教えるセオリーを徹底的に踏襲し、手堅く真剣に作られた誠意溢れる作品だと思います。基本だって、やっぱり無視しちゃいけないのよ。教科書通りにきちんと作ったって、新しいものはできるのよ。という基本的すぎてもはや誰も振り向こうとしない根本的な2つの事実に、この作品はふと思いをよぎらせてくれます。傑作だと思います。 9点(2004-04-18 03:12:20) |
7. プレッジ
配役の上手さだけでも余裕で合格点の作品。実力のあるバイプレイヤーを集めて来て使い方にひとつの誤りもなく、それぞれが各自の持ち場をキチンと引き締めたこのバランスは見事。中西部独特の大自然に囲まれた町の持つ絶妙なスケール感と、刑事という仕事だけにアイデンティティを見出して来た男の孤独、その引退する最後の日に降って湧いた突然の「事件」に余生を引きずられて行く人間の危うさ。主観と客観との落差を調整するために必要不可欠な緩衝材としての「家族」を取り除かれた人間の孤独は、愛情さえも時として狂気にさえなり得ることを、観客の目にしか明かされない運命の皮肉という形であまりにも冷酷に描いた救いのない作品だが、逸脱した使命感を誰が何の権利を持って「異常」と決めつけるのか、その線引きの曖昧さ、難しさを描いた作品としてこれは明らかに傑作の域に達し得ていると思う。彼は本当に狂っているのか、あるいはどの時点からその心理状態は「狂気」と捉えて良いものなのか、物語はその経過を描きはするが結論は出していない。おそらく正常と狂気を見極める絶対的な価値観などは存在し得ず、万人が認めさえすれば愛情さえもその瞬間から狂気になるのだ。そして万人から認められた狂気はその瞬間から、人間を本物の狂気へと追い込んで行くのだろう。90年代以降、決して作品に恵まれて来たとは言えないジャック・ニコルソンが、老境に及んでなおその持ち味をいかんなく発揮できる作品に恵まれたことの意義は大きい。そしてその場を提供したジョーン・ペンこそ、実はニコルソンの最高のファンの一人と言えるのではないだろうか。 10点(2004-02-21 12:50:39)(良:2票) |
8. PLANET OF THE APES/猿の惑星
前作の熱狂的な、おそらく生涯の大ファンである私が、そこまでではないが結構熱心なファンであるティム・バートンの「猿の惑星」を観ていったい何と言ったら良いのか。究極のジレンマな気もするが、こういうモノはとにかく前作と切り離すに限る。この作品にはもちろん、前作に色濃かった絶望的な未来感、壮絶な主従逆転の構図、といった趣はない。その代わりに、この作品には前作では技術的になし得なかった超越的な運動能力を誇る猿、スピード感溢れる演出、CGを駆使した圧倒的なスケール感がある。娯楽作品としてどちらが優れているかは自明の理であり、前作を支配していた世界観をそのまま引きずって低俗な二番煎じに落ち着けなかったという点で、全く別の現代の娯楽作品として正当に評価するべきだろう。ティム・バートンならではの茶目っけに溢れ、前作の時点で技術的に実現し得なかった部分については誠実にオマージュとしてやるべきことをやり、「ゴメンネ。」と観客に率直に頭を下げるエンディングは爽快。あくまでも前作に敬意を表しつつ、今どきの映画だったらこうなるんだよね、というところを無限のプレッシャーの下で上手く切り回したバートンには率直に拍手を贈りたい。残念ながら生涯に渡って愛し抜くほどの作品には至らなかったが、考えられるギリギリのバランスで上手くまとめられていると思う。この作品が前シリーズをどれだけ愛しているか、愛している者にはやっぱりわかると思うんだよね。どうしても誰かが作らなければならなかったんだとしたら、それがティム・バートンでやっぱり良かったと思う。一時はオリバー・ストーンまで名前が挙がっていたぐらいだし。被害は最小限に食い止められたんだと思いますよ、これ。 8点(2004-02-18 00:58:54)(良:4票) |
9. ブロークン・アロー
とにかく冒頭でクレジットタイトルの微妙に小さい赤い文字がダサすぎて私は引いた。クレジットだけでこんなに観る気を失わせる作品って滅多にないと思う。予告編とクレジットは普通どんな映画でも面白そうなものなのだが。全体の印象としてとにかく作りが雑。何故か砂煙をバックにいつもスローモーションで登場するジョン・トラボルタも暑苦しい。せっかくなので大きめのスクリーンを選んだのに、爆発しても爆発してもちっとも迫力がない。クリスチャン・スレイターは初のビッグバジェットで肩の力入りまくり、結果思いっきり空回っている。滅多にないほど華のないサマンサ・マシスは途中意味不明に列車からぶら下がったりしているし、殺される端役は必ずアップになってから撃たれるし、とにかくひたすら早く終わることだけを祈っていたような記憶がある。あと15分、トラックで逃げても被爆は免れないだろうと日本人なら誰でも知っている核爆弾に対するハリウッドの認識の甘さも痛い。チョウチョ飛んでるし。あらゆる意味で空振っている映画。ジョン・トラボルタの煙草の持ち方に1点。 1点(2004-01-17 23:58:00)(笑:1票) |
10. フロム・ザ・ダークサイド/三つの闇の物語
一時期流行った小粒ホラーのオムニバス作品の中では、チープさと顔ぶれの地味豪華さで一線を引く作品。ナビゲーター役に元ブロンディのデボラ・ハリー、さりげなく普通の高校生にクリスチャン・スレイターやスティーブ・ブシェミ、こういうワケのわからないメンバーで描かれるのがいかにもなベタベタのホラー小話。ミイラが出た!とかミもフタもないエピソードばかりなんだけど、ハナからカウチポテトしか相手にしてないためヘタな気負いもなく非常に的を得た仕上がりであるとは言える。真剣に向かい合うような作品ではないけど、ハロウィンパーティのBGVなんかにはもって来いの一作ではないかと思います。「ほらほら、これブシェミ~」「ホントだ~」なんてノリで楽しむのが吉。 7点(2004-01-17 11:49:26) |
11. 古畑任三郎スペシャル すべて閣下の仕業 <TVM>
久しぶりに古畑任三郎が観れる、ってだけで点が甘くなっちゃうところがあるんですよね。まあ、任三郎の元気な姿が拝めたからいっか、みたいな。今泉君の不在はたしかにえらく寂しかったですね。彼も任三郎を袖にするほどエラくなってしまったんでしょうか。かつてこの作品でスターダムにのし上がったにしてはあまりにも寂しい展開ですね。全体的に懐古趣味でしかあり得ないのでディテールは大目に見ますが、ラストのオチもシリーズポリシーに違反してる気がするし、個人的には「これで本当におしまいかよ。寂しいぞ~~~」と泣いた第2シリーズの最終回で終わっておいた方がポイント高かったです。これ以上やってるとドリフの大爆笑ノリになって行く気がする。古畑任三郎とルパン三世は、会いたいな~、と懐かしがってるぐらいがちょうどいいんです。 6点(2004-01-12 15:00:35) |
12. フレッシュ・アンド・ボーン/渇いた愛のゆくえ
鳴り物入り~、でコケちゃったいい例ですね。話は暗いし、メグ・ライアンの陽性な個性は明らかに浮いている。後味も悪い。公開前にはかなり話題になった作品だったんですが、フタを開けてみたら意外性のへったくれもない全然楽しめないサスペンスでした。メグ・ライアンとデニス・クエイドが結婚してた頃なら、「どれどれ?」って観てみる価値もあったかも知れませんが、今となっては永遠に忘れ去られても誰も困らない作品だと思います。メグ・ライアンとしても、むしろ忘れてもらった方がよろしいのでは。 1点(2004-01-11 13:00:58) |
13. プレシディオの男たち
ずいぶん昔に地上波で放映されたのを見て「へ~けっこうおもしろいじゃん」と思ったことだけは覚えているのだが、10年以上たってみたらほとんど何も覚えていないところを見るとその程度の作品だったのだろう。たとえば私が最後に「カプリコン1」を観てからざっと10年は経っていると思うのだが、内容を思い出せなかったことは1度もない。そういう意味では、この映画ってたぶん、普通に面白いんだけど10年経ったら忘れちゃう映画、というのが正しい評価なんだろうな。でもメグ・ライアンはけっこう可愛かったような記憶があります。もう1度見てみようかな?と思うぐらいの面白さではあったと思う。 7点(2004-01-11 12:57:43) |
14. フライド・グリーン・トマト
いわゆるハートフル系だけど題材としてさりげなく人種差別や女性解放を扱っていて押し付けないところに好感が持てました。男性が観てどこまで理解できるのかな?という不安はありますが、少なくとも女性にとっては一度は観ておいて無駄ではない映画だと思います。歴史の中で女性達が歩いて来た道のりを泥くさすぎず、悲しすぎずに描き切れたのは、人生に感謝する良い年の取り方をしたジェシカ・タンディの存在感あってこそでしたね。話も良く出来ているし、しんみりと心に残る佳作だと思います。 9点(2004-01-04 12:08:53) |
15. ブルース・オールマイティ
ジム・キャリーにこのままヒューマンドラマ専門役者になって欲しくない!と危機感を感じる身としては、彼が今でもこういう役を忘れずにいてくれることを定期的に示してくれるのは実にありがたい。「トゥルーマンショー」をやっても、「マジェスティック」をやっても、どこかでちゃんとスラップスティックを忘れずにいてくれるというのは、たぶん彼のファンに対する誠意の現われなんじゃないかという気がする。彼がハートフルなヒューマンコメディに出て来ても、どこからも「オスカーちょうだい」オーラが漂って来ないのはそのせいだろう。自分を有名にしたもの、ファンが彼に求めているものに忠実でいられるセレブは少ない。そういう意味で、私はジム・キャリーを全面的に支持する。この作品は彼の主演したコメディの中では特に突き抜けて優れているとは言えないが、それなりにジム・キャリーのハチャメチャコメディが健在であることは十二分に示した。だから個人的には合格点をあげたい。主人公はいい人なんかでは全然なく、利己的で、自己中心的で、ジェニファー・アニストン演じる恋人に愛想をつかされても仕方のない男。その彼を、悪気のないフツーのダメ男として等身大に描いたことで、キレ味は若干悪くなった。ドぎつい物は何もないが、正統派のコメディとして充分佳作の域には達していると思う。実はこういう普通のコメディって、ありそうでなかったりするので私は好き。楽しませていただきました。 7点(2004-01-03 12:35:04) |
16. ふたりの男とひとりの女
《ネタバレ》 ちょっとハートフル・コメディみたいな作品が続いて、ジム・キャリーってこのままロビン・ウィリアムスみたいな「幸せ配達人」になっちゃうの?という危機感を感じていた身としては、この映画のジム・キャリーには久々に彼の持ち味が感じられて嬉しかったです。レネーも可愛いし。ファレリー兄弟にしては毒気が抜け切っていてファンには物足りないところかも知れませんが、壁に飛び散るオシッコの微妙な色合いとかやっぱりすごいなぁと感じました。個人的にはこれまで観たファレリー兄弟の作品中では一番素直に笑うことが出来ましたので、やっと一般大衆とのバランスが取れて来たというところなのかな?という気がします。オチもお約束っぽいですがこれがなきゃ心暖まれないし、必要なオチだと感じました。ご家族で、というにはもう一つ毒気が抜け切らないですが、ジム・キャリーのファンにはお勧めできますね。 8点(2004-01-02 12:34:31)(良:1票) |
17. フィラデルフィア
トム・ハンクスがコメディに見切りをつけて、オスカー獲得に向けて本格的に走り出した作品。ハナからそういう批判的な態度で見始めてしまったため、まったく主人公に肩入れできず、ちっとも楽しむことが出来なかった。扱っているテーマは重要な物だし、映画にして広く一般の人たちに認識させるべき問題ではあると思う。そういう意味での存在価値は高い作品だが、コメディアン時代のトム・ハンクスが好きで好きで大好きだったファンの一人としては正直、落胆したと言わざるを得ない。トム・ハンクスよ、ファンはあなたにオスカー俳優になってもらいたかったわけではないのだ。 6点(2004-01-01 12:17:01) |
18. プレタポルテ
腹黒いんだけど思いっきり笑えてしまった。何のために出て来たんだか誰にもわからないジュリア・ロバーツとか、設定だけで笑わせる手法はアルトマンならでは。言いたいこともココまで言えればスッキリするでしょ?と思える爽快感もあいまって、意地悪で腹黒い私としては気分スッキリ。でもアルトマンっていう人、つくづく敵に回したらおっかないです。ハリウッドセレブに信奉者が多いのは有名な話ですが、たぶんうっかり彼を敵に回しちゃうとどんな恐ろしいことになるかわかってるからついて行かざるを得ないんじゃないでしょうか。そういう意味では、政治手腕に長けてるのかも知れないですね。いや~腹黒いわこの人。 7点(2004-01-01 12:00:26) |
19. フル・フロンタル
敢えて体制側に与せずというスティーブン・ソダーバーグの心意気には敬意を表するが、映画を見馴れていない観客にはキツいだろう。非常に実験的な要素が強く、ジュリア・ロバーツやブラッド・ピットというビッグネームを出演させたことによって間違えてマスを動員してしまいかねないリスクは大きいと思う。BGMの少ないハンディカメラの映像、散文的な展開、劇中劇とそれを製作中の俳優たち、オンとオフの切り分けの難しい不親切な構成は単調で退屈だが、ちゃんとそれに続く展開の面白さを予感させている点は素晴らしい。あくまでも物語の先行きに興味が持てるかどうかにかかって来る運びだが、それなりにニヤリと笑える仕掛けも爆笑モノのネタもあり、通好みの作品としては評価できる。オスカーWノミネなど華やかな経歴が記憶に新しいスダーバーグが、敢えて巨匠になろうとせずに貧しい映画小僧だった頃の「やりたかったこと」を忘れずにいること自体は、未だかつて誰も実行できなかった偉業であると言えるが、残念ながらビッグネームに騙されて足を運んだ一部の観客に対しては完全に失望させてしまったとしか思えないため手放しで誉めちぎれない悲しさはある。劇場で観る以上、楽しさは他の観客と共有できた方が嬉しい。やっぱり大物スター不在のちょっと極端な実験映画として公開した方が、みんなが幸せになれたような気はする。 9点(2004-01-01 11:41:19) |
20. ファーゴ
ちょっと小金を手に入れようと企んだ小悪党が、不幸な偶然から泥沼にはまり込んで行くストーリーは比較的ありがちで語り尽くされて来たテーマと言えるが、天性の悪党顔でどこまでも情けなく突っ走り抜いたスティーブ・ブシェミのカール役はこれまでのダメ男達の中でも一見に値する存在と言えるのではないか。犯罪者の生い立ちや背景まで持ち出して役柄に奥行きを持たせる方向へ逃げず、あくまでも事件の中で見せる表情ひとつで人間性まで浮かび上がらせてしまったブシェミの力量には頭の下がるものがある。金持ちの舅と嫁、女房殺し(ここでは誘拐だが)で遺産を手にしようとする夫というこれまた描き尽くされたキャラクターを泣きの演技で引っ張り続けたウィリアム・H・メイシーの底力も見事。ここに登場するのが妊娠8ヶ月、ベタベタのサウス・ダコタ訛りで「ヤー、ヤー」を連発する中年の婦人警官フランシス・マクドーマンドで話が一挙に新しくなった。こういうドス黒くも高尚な笑いはコーエン兄弟の得意とするところだが、笑いのツボを観客の選択に委ねたところにこの映画の評価の高さが納得できる。名声に頼らない実力ある演技者たちの個性のせめぎ合いが、一歩間違えば実録犯罪シリーズ的なチープな内容を独特のテンションにまで押し上げている。日ごろ抑えた脇役に回ることの多い役者たちの技量が冴え渡る佳作。もちろんコーエン兄弟のこだわりの演出も忘れてはならないところだが。唯一マイク・ヤナギタの登場が余計に思えたので減点、これさえなければ完璧だったのに。 9点(2003-12-31 12:22:16)(良:2票) |