1. ブラック・デーモン 絶体絶命
環境問題をテーマにしているとの評を見かけ実はまともな内容ではないか一縷の望みを託して見てみたのですが、まあやっぱりダメな映画でした(笑)。一応米国の石油企業による現地の自然破壊という社会派の視点が持ち込まれてはいるのですが、どちらかというと作品の比重が置かれているのは目新しさもない家族愛の物語の方です。キャストの大半がヒスパニックなのは今時という感じです。下手なパロディ演出には走らず意外と真面目に作ってはいるのですが、真面目に作っているだけにパニックものとしての陳腐な描写や展開が退屈極まりないです。低予算なので鮫は全然画面に出てきません。アステカの伝説にルーツを持ち幻覚を見せる超能力まで発揮してくるので鮫ではなくオリジナルのモンスター映画として製作すべき内容ではないかと思いました。 [インターネット(字幕)] 3点(2023-08-21 22:17:37) |
2. ブレット・トレイン
アクション映画の主人公までがセラピーを受けるとは世知辛い時代ですな。まあ主人公と言ってもブラッド・ピットは災難に巻き込まれただけで物語の重要な部分は真田広之が持って行ってますけどね。よくこんな映画に出たとも思いますが現場は楽しかったかもしれませんので余計な心配はしないことにしましょう。日本が舞台となるわけですがおそらくロケーション撮影は全くされておらずほぼセットとCGで再現された新幹線内のみでストーリーが進行します。夜や夕焼けを表現した照明のカラフルでノスタルジーも感じさせる雰囲気は悪くなくリアリティを無視したいい加減な内容ですがこのアプローチは一応成功しているとは言えます。とにかくステレオタイプな描写とそれをおちょくったようなシーンしか出てきませんのでクエンティン・タランティーノというよりそれを真似ただけのダメな日本映画を見ているような気分にすらなります。まあ伊坂幸太郎自体がそういうところありますので逆輸入という形にはなるんでしょうね。ジョーイ・キングや福原かれんがかわいかったのでとりあえず見て損したとまでは思いませんでした。 [インターネット(吹替)] 5点(2023-08-03 23:58:15) |
3. ファミリア
日本社会における移民に関する物語を描くこと自体は何も間違っていませんしこういう題材を扱ったオリジナル脚本の映画はもっと増えるべきだと思います。しかし安易に悪役を設定したり最終的に家族愛に帰着するならば社会派や人間ドラマとして売り出すのではなくもうちょっと娯楽性のある内容にした方が良いのではないでしょうか。この映画特有の強みというのが日本映画としては扱う題材が希少であるという点だけで、人物造形や演出・構成の新規性があまり見られないのが苦しいところです。内容としてはグラン・トリノをやりたかったのかなとは思いますが、そのために何を描くべきかよくわかっておらず焦点がぼやけている印象を受けます。主人公の家業としての焼き物とブラジル移民の苦境、そしてアルジェリアの紛争が並行して描かれますが各要素がバラバラなままで進行し、伝えたいテーマやメッセージがよくわからなくなっております。無駄に複数の要素を投入するよりも重要な要素を一つだけピックアップして丁寧に掘り下げた方がまとまりのある良い映画になったと思います。 [DVD(邦画)] 4点(2023-07-30 23:35:40) |
4. ファーザー
まあ設定がリアルなメメントですね。でも逆に現実に存在する認知症を題材にしたことで認知症患者は本当にこのように見えてるのかという違和感が生じてしまっていると思います。認知症の当事者がこの映画を自分の経験と照らし合わせて評価することは困難でしょうし、結局はこの描写で正しいか間違っているかの判断は誰にもできないのでしょうけど。認識の不確かさがもたらす不安感、親を思う子の気持ち、確かに評価できるポイントはあります。しかしパズルとして面白さに気を取られて根本的なドラマがおざなりになってはいないでしょうか。認知症の感覚を再現するために複雑な構成にしているのではなく、ギミックの方を先に思いついたのではないかとすら思えてしまいます。サスペンスやホラー調のシーンが挿入されるのも安っぽい印象を受けてしまいます。ラストシーンにはさすがにうるっときましたが、それは映画全体の力というよりもアンソニー・ホプキンスの演技の力によるものが大きいです。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-06-09 23:38:04) |
5. FALL/フォール
これも映画の最先端の形の一つではないでしょうか。新しい映画とは常にこれはどうやって撮ったんだろう?と興味を湧かせるものです。落下場面ではちょいちょい合成っぽさは目立ちますが、VFXが用いられてるとは思えないほど高所を感じさせる自然な映像で本当に怖ろしさを感じます。サスペンス映画としては鳥やめまいのような古典もきっちり踏まえた上で作られてるのも好印象です。お話は冒頭で主人公が大切な人を失い、そのトラウマから再起しようとする定番のやつです。風刺という程ではないものの過激さを求める配信文化の悪影響という問題意識もベースに、スマホ、ドローン、自撮り棒、現代的なアイテムを使ったオリジナル脚本のエンターテインメント作品としては上出来でしょう。頂上にある夜間照明が良いワンポイントとして機能していますね。序盤の小ネタの伏線回収に、点滅に合わせての場面転換も洒落てますし、幻覚と現実の区切りとしても効果的に使われています。ただ終盤になると主人公の不自然なまでのタフさと無駄にひねった展開で映像のリアリティに比して物語が非現実的なものになってしまうのは大きな欠点です。途中までは複雑な女同士の友情もちゃんと描いていてドラマ的にも評価できそうだったのですがそこはやっぱり減点せざるを得ないです。 [DVD(字幕)] 6点(2023-06-06 23:56:50) |
6. フェイブルマンズ
映画愛などほとんど語られないのはいいことです、偉大な映画史などという大風呂敷を広げず、あくまで個人の実体験をベースに描いている慎ましさはこの映画の美点です。理想的な昔の家族や学校生活という描き方でもなく登場人物はみな弱さを持った人間として描き、安易なノスタルジーや一方的な断罪に陥らないバランス感覚も持ち合わせている。悪い映画ではないのですが、かといって斬新な視点もありません。結局は老人の昔話といえばそれまでです。自身を史上最高の映画監督の薫陶を受けた存在として描けるのはスティーヴン・スピルバーグの特権ではありますが、地平線がどうのこうのというアドバイスが現代において何らかの意味があるとも思えません。個人的な体験の域から出ていないのはこの映画の弱点でもあります。撮影はいつも通りのヤヌス・カミンスキーだなあとややうんざりしました。初心に戻るような内容ですのでキャストだけでなくスタッフも新鮮な顔触れを用意するぐらいでちょうどよかったのではないでしょうか。 [映画館(字幕)] 6点(2023-03-12 22:49:02) |