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1.  ミステリと言う勿れ 《ネタバレ》 
原作未読、テレビドラマは全話視聴。元々本作を観に行く予定はなかったのだが、息子と娘がこの作品を観たいと言いだし、その付き添いを妻に頼まれたことで急遽出かけることに。仕方ないなぁと面倒に思う気持ちの中にちょっぴりワクワクする気持ちが入り混じった複雑な感情。非オタク系の映画を劇場で観るのは何年ぶりだろう。結婚前以来かな。  フジテレビ系列の番組で大ヒット中とアナウンスしていたので混雑しているのではと少々緊張しながらチケットを予約したらそうでもなさそうだ。9月23日の土曜日、いざ劇場で席に座ると僕ら三人の列には誰もいない。他の観客を合わせても30人はいないかな。心なしかいつもと観客の雰囲気が違うような気がする。なんだか“普通”の人が多そうだ。  物語は主人公・久能整が広島である女子高生に声を掛けられるところから動き出す。彼女は狩集汐路といい、整と知り合いで複雑な経歴を持つ若者・犬堂我路と繋がりがあるようだ。彼女の家は資産家で、祖父の狩集幸長が亡くなったことで遺産相続争いが起こる気配がある。さらに汐路は言う。これまでも相続争いで死者が出たことがあるので護衛をしながら知恵を貸してほしいと。巻き込まれるようについていった整の前には狩集家一族が集められており、一族の顧問弁護士及び顧問税理士によって祖父の遺言が伝えられる。孫たち一堂に謎解きが出され、その謎を解いた者が遺産を手にできるというのだ。果たして遺産は誰の手に渡るのだろうか。  劇場版ならではのパワーアップ感を出そうと考えたのだろう、クラシック音楽を多用したテレビシリーズの硬質でパキッとした演出ではなく、大きなものをゆったりとゴージャスに見せようとする演出はいかにもテレビシリーズの劇場版そのものであると感じた。そのため、のちの展開に必要な状況や感情を描写していく前半には鼻白んでしまったところもあり素直に没入できなかった。 だが整が徐々に事件の推理や独特の知見を述べ始めてからはその言葉の内容に惹きつけられて演出が気にならなくなった。やはり本作は彼のパーソナリティーが大きな魅力であり作品を支えているのだろう。 終盤に入る前に犯人の予想はついたものの、最終的には僕が推理したものよりもひねりが効いていて推理ものとしても楽しめた。何よりも犯人の言葉によって心に大きな傷を負う汐路の悲しみとやるせなさが強く印象に残った。  帰りの車の中で娘も言っていたが、僕も何だか犯人役のことが苦手になってしまった。役柄と本人を同一視してしまうこの現象が起こったことは本作の成功を示しているように思う。久しぶりの親子での映画鑑賞、もう少しその場で自分の意見を述べても良かったようにも思えるがいい思い出になりそうだ。
[映画館(邦画)] 8点(2023-10-08 14:10:25)
2.  未来のミライ 《ネタバレ》 
本作公開の頃、その評判は良いとは言えなかった。主人公くんちゃんの可愛げのなさと、今後の細田作品における脚本家の必要性が幾人もの批評者から指摘されていたと思う。そしてアニメーションから心が離れ始めていた自分自身の事情と、上記の評価のため食指が動かず、結局、劇場へは足を運ばなかった。  今回ようやく視聴したのは、昨年TV放送されたものの録画だ。  大まかに言えば、本作は、意外な来訪者――女子高生(?)に成長した、未来の未来ちゃん――などの関与によって、4歳の主人公”くんちゃん”がそれまでの小さくてどこかぎこちない日常から、大きな世界を見ることで、自身が成長する物語なのだろう。  中盤で、くんちゃんが若かりし頃のひいじいじとバイクで疾走するシーンは、戦後当時を彷彿とさせる映像的解放感が出ていて良かった。また、終盤、成長した未来ちゃんとくんちゃんが空を軽やかに飛翔しながら、様々な時代や別世界を観望するシーンには映像的快感があった。クライマックスとしての盛り上がりは確かに感じた。  こういったいいシーンもあるのだが、残念ながら、本作には大きな欠点がある。こういったヤマ場へ行くまでの段取りが非常に悪いことだ。ヤマ場にたどり着くまでの精神的苦痛が大きすぎるのである。それはキャラクターへの嫌悪感と不自然感によるものだ。  主人公くんちゃんは4歳ということで、それらしいわがままさが描かれているのだが、その描写がエキセントリック過ぎるのだ。 まずは、生後、新しく家に来た妹の赤ちゃん、未来ちゃんに嫉妬してちょっかいをかけるのは分からないではないが、嫉妬が強すぎておもちゃを投げようとするのはやり過ぎだ。いくらアニメとはいえ、赤ちゃんというデリケートな存在を壊そうとする、観ているこちらの心の奥底をドキッとさせる描写はいかがなものだろうか。 未来ちゃんの方を大事にし、自分を中心に見てくれない両親に「嫌い!」「嫌い!」と、やたらネガティブな言葉をぶつけるのもリアルかもしれない。だが、それも必要以上に繰り返されると、観ているこちらはイライラしてくる。気分が悪くなってくるのだ。顔を赤くして大声で泣きわめく描写も不快だ。 監督は子供をわがままなものと捉えているのだろうし、わがままな部分以外の、日常での子供の存在そのものを可愛さとして感じているのかもしれない。それでも、僕にとっては描写が辛口過ぎた。僕はもう少し甘めのさじ加減が好きだ。本作でも自転車の練習をするくんちゃんにアドバイスしたり、自転車に乗れるようになったくんちゃんに遊ぼうと言ってくれた子供がいたが、あれくらいの(リアルではないかもしれない)優しさがくんちゃんにも欲しかったし、自分ではいかがなものかと思いながらも、ここが本作で最も心が和むシーンとなった。  くんちゃんの不自然感も気になった。まずは声。先ほど書いた自転車のシーンの子供の声の方がよっぽどリアルで心地良かったし、キャスティングに何かしらの裏事情まで感じてしまった。それから「さびしかったよ~」などの、自身の気持ちを端的に分かりやすく発した言葉の数々。いずれも大人びていて、とても4歳には思えない。子供の感情って、一言では言い表せない、もっとモヤモヤしたものなのではないだろうか。  両親の描写も好きになれない。やたら自己主張が強い母親と、気弱で芯の通っていない父親。恋愛結婚のようだし、結婚して数年経っているはずだが、それにしてはよそよそしいし会話にトゲがある。育児が大変だから母親がツンツンしているとこちらに感じてほしいのかもしれないが、そういった描写の少なさからとてもそうは思えない。二人の精神的距離が離れているように感じられる。 終盤に描かれる両親の成長も、日常生活の一つと捉えればリアルかもしれないが、本作が映像作品ということから考えると、くんちゃんの体験や成長とリンクしていないのは不満だ。  ところで考えてみると、くんちゃんのわがままで大人びた描写というのは、中学生くらいの視聴者にとっては憧れなのではないだろうか。言いたいことが言えるし、それに自覚的でいられる快感が伴うのだ。 今や世界的に注目される細田監督作品としては寂しいが、本作のメインターゲットは中学生くらいまでなのかもしれない。 もう少しターゲットを広く、そして上に引き上げる作品作りをした方がいいのではないか。それには、物語を紡げると同時に、作品を客観視できる脚本家の存在は必須であろう。  アニメーション映像作家としての細田監督のセンスと実力に敬意を表しながらも、今回は、その素晴らしさゆえに甘めの評価をした前作『バケモノの子』よりは辛口の点数とする。
[地上波(邦画)] 4点(2020-05-17 16:58:20)(良:1票)
3.  ミヨリの森(TVM)
今、日本のアニメ制作現場はかなりの人材不足です。制作スタッフ、特に背景の人達にはもっと別の、良い作品を作って欲しい。
[地上波(邦画)] 1点(2007-12-16 16:45:43)
4.  耳をすませば(1995) 《ネタバレ》 
柊あおいさんのファンですので、映画化が決まる前に原作は読んでいました。 どのように仕上げてくれるのかを楽しみにしながら映画館へ行ったのですが、 「良くも悪くも、原作をジブリっぽくいじられてしまった」というのが第一印象です。  具体的には、映画にする際に多く加えられた土着的な発想によって、一般客に 受け入れられ易い作品にはなったものの、反面それが原作の持つ 少女マンガ特有のほんわかした、また自己満足的かつご都合主義的な (褒め言葉です、為念)感覚と上手く融合出来ていないのではと感じました。 また、井上直久氏が描いたイバラードの世界も、この作品とは相容れないのでは ないかとも思います。  最後に余談ですが、この映画を単純に「宮崎駿作品」として 宣伝することには大きな違和感を感じます。確かに脚本は書いていますし、大人の 都合もあるとは思いますが、この映画は正真正銘、「近藤喜文作品」です。 彼だからこそ、色々な意味でこの映画が成立したのではないかと考えます。 ただ欲を言えば、この映画にもう少し彼の作家性が欲しかったな、とは思いますが…。 
[映画館(邦画)] 6点(2006-05-07 03:52:52)
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