1. 闇金ウシジマくん ザ・ファイナル
《ネタバレ》 債務者中心エピソードとウシジマ中心エピソードを交互に出してくる実写化シリーズですが、本作はウシジマ中心エピソードでした。度を越した貧困ビジネスやヤクザ者同士の抗争といったテーマはもはや一般人とは無縁の世界であり、『闇金ウシジマ君』というコンテンツそのものの魅力とは一線を画す内容で、多少のガッカリ感がありました。 また、本作はウシジマのルーツを描くという触れ込みであり、確かに中学時代のウシジマのエピソードは描かれるのですが、中学生の時点で現在に繋がるウシジマの人格はすでに完成した状態にあり、結局、ウシジマを作り上げたものとは何だったのかが分からないという点でもガッカリでした。両親との別離や転校など、要所要所にウシジマ少年の人格に影響を与えたと思われるキーワードは登場するものの、それらは回想の時点ですでに過去の話であり、具体的に描かれることはありませんでした。 今回の敵となる鰐戸三兄弟のキャラ造形も雑。策士タイプの長男と狂犬タイプの三男に挟まれた二男がほぼ存在意義を失っているし、完全にキレた人間として描かれる三男はともかく、頭が良く大局的な視点を持っている長男までもがウシジマに対して中学時代からのパラノイア的な逆恨みを引きずっているという点も、設定間で内部矛盾を起こしているように感じました。 また、これは6年間続いた長期シリーズならではの問題なのですが、キャラクター達の設定年齢と演じる役者の実年齢に乖離が生じており、一部に違和感がありました。テレビシリーズ第一弾から見ており、例えば劇中頻繁に登場する携帯電話がシリーズの進行とともに新しくなっている様からも、現実の時間経過と同じだけ登場人物達は歳をとっているものと思い込んできた私としては、ウシジマや江崎が依然として24歳であり(本作公開時点で山田孝之は33歳、やべきょうすけは43歳)、しかも高橋メアリージュン(本作公開時点で29歳)演じる犀原茜と同世代という点は、さすがに無理ありすぎでした。そこは設定年齢を山田の実年齢に合わせ、実写版オリジナルキャラである犀原は彼らよりも下の年代であるということにしてもよかったと思います。 上記の通り不満点を書いてきましたが、良かった点もあります。力なき善意で他人を救おうとする竹本と、お金という必要な手段は与えるが、部外者である自分が関与するのは元本と利息が返済されるかどうかのみであり、そこから這い上がるか落ちぶれていくかは当人次第との姿勢を貫くウシジマ。この対比が面白いのです。 困っている人を無償で助けてやれば確かに当人は喜ぶだろうが、対症療法的な解決には問題の本質を覆い隠すという副作用があり、その人はまた同じことで躓く。転んだ都度助ければそのうち依存体質が身に付き、自力で立ち上がれない人間になってしまう。しかし救済者側の体力にも限界があって無限に人助けなどできないのだから、いつか共倒れになる日がやってくる。竹本の善意や自己犠牲の精神は本物ではあるものの、「救済者側の体力」と「救われる側の自立」がまるで考慮されていないため、本当の意味で人を救える力にはなりえていません。 他方、ウシジマは徹底的にドライ。貸した金さえ返ってくれば正しい使い道かどうかは関係なく、どんな債務者にも公平に接するのですが、同情すべき背景のある債務者ほどウシジマを非情であると非難します。彼らの主張を要約すると「自分を特別扱いしろ」なのですが、ウシジマも非営利ではやっていない以上、どこかで債権を回収しなければならないし、同情すべき背景のある債務者を免責して取りっぱぐれた分は自業自得の債務者の利息に上乗せするなんてことになれば、問題は余計にややこしくなります。債務者は公平に扱い、その私情には一切立ち入らない。それこそが闇金家業を営むウシジマなりの倫理観なのです。 竹本とウシジマは対立した後、力なき竹本が倒れて終わりとなります。ここでウシジマは親友である竹本にも一切の手加減なく死亡するまでの肉体労働を課すのですが、これもまた他の債務者との公平性を図るウシジマならではの倫理観だったと言えます。ただし、車を一瞬止めさせ、竹本を特別扱いして連れ帰るかどうかの葛藤を垣間見せる辺りの演出がうまく、ここで竹本の主張がウシジマにも届いていたことが分かるため、見ている私の心も揺さぶられました。 [インターネット(邦画)] 5点(2018-01-16 23:20:47)(良:2票) |
2. 闇金ウシジマくん Part3
《ネタバレ》 原作においてウシジマは狂言回し的な立ち位置にあり、実質的な主人公は各エピソードの債務者達なのですが、実写化シリーズ全体を通して見るとウシジマを立たせるか、債務者を立たせるかで製作者が常に試行錯誤していることが伺えます。傾向としては、週刊誌と似た放送ペースのテレビ版では原作準拠で債務者中心の構成、起承転結を2時間でまとめる必要のある映画版では分かりやすくウシジマ中心の構成となることが多いように感じます。 この点、私個人の嗜好としては、一般人がちょっとした心の弱さから多重債務状態に陥る様こそが『闇金ウシジマ君』の本質であると考えており、テレビシリーズこそが原作の要素を引き継いでいると思っています。他方、映画版ではウシジマがヤクザや反グレと抗争を繰り広げるというバトル要素が強くなっており、これでは別物になっているように感じます。なので、映画版『PART1』『PART2』への評価は低めです。そこにきてこの『PART3』ですが、映画版としては例外的に債務者中心の構成となっており、これはかなり好意的に見ることが出来ました。 主人公の一人は、不倫や水商売に入れ込んで借金まみれになっているものの、一流企業勤務なのでいざとなれば返済能力はあるという自信を持っており、多重債務状態に危機感を抱いていない加茂。他の債務者達とは違って加茂は借入を深刻なこととは捉えておらず、以前に闇金からの借金を踏み倒したことすら覚えていないという感覚の軽さもいいスパイスになっています。ここまでひどくはないものの、キャバクラ通いやパチンコ中毒で消費者金融から頻繁な借入をしている大手企業勤務の友人が何人かいることから、このエピソードには大変なリアリティを感じながら見ることができました。実際、彼らも借入をさほど深刻には捉えていません。また、バラエティ番組で見るとたまに不快感を覚えることのあるオリラジ藤森の軽さやイヤらしさが加茂というキャラクターに見事ハマっており、いい感じでイラつかせてもらいました。 もう一人の主人公は「ビッグになりたいという願望こそあるが、自分には何もない」という心の弱みを突かれ、ネットビジネスに入れ込む沢村。このエピソードでは、実力以上の成功に憧れて一発逆転の夢を見るという多くの人が抱く心理が簡潔に描かれているし、一時期マスコミで「ネオヒルズ族」などと持て囃された与沢翼のビジネスの実態が理解できたという点で、社会問題の勉強にもなりました。沢村は表面的な成功を掴むものの、金が回らなくなれば終わりというギリギリの状態でいつ破局が訪れるか分からないというサスペンス要素も見事に機能しており、なかなか緊張感を持って見ることが出来ました。 [インターネット(邦画)] 7点(2018-01-16 23:20:04)(良:1票) |
3. 闇金ウシジマくん Part2
《ネタバレ》 原作未読、テレビドラマは鑑賞済です。 本作は丑嶋から金を奪おうとするヤンキーとの戦いがメインであり、金絡みのドロドロとしたドラマはほとんどなし。これはウシジマくんに求められている内容じゃないなぁという感じでした。また、キャラクター間の力関係も歪なものでした。加賀は本物の迫力を持つ丑嶋に勝負を挑もうとする一方で、小物に過ぎない愛沢に対しては恐怖心を抱き続けているし、愛沢は愛沢で犀原にビビりまくっている一方で丑嶋には勝てると思っていたりと、なんだかよく分からないことになっています。 また、同時進行で描かれる新人ホストとその彼女のエピソードについても、17歳の彼女に用立てさせようとする金額が70万円とか200万円とか浮世離れしており、今時AVに出たってそんな金稼げないという点でリアリティを失っていました。 本作で描くべきものは、ホストに狂って自殺にまで追い込まれた麗の母親や、社会の底辺で正気を失ってストーカー化した蝦沼のエピソードだったと思うのですが、そうしたものに限ってアッサリと流されている点も残念でした。 唯一褒められる点はキャスティングの先見性でしょうか。菅田将暉、門脇麦、窪田正孝と、その後数年でブレイクした若手俳優を複数出演させており、彼らのフレッシュな姿を見るだけでも楽しめました。 [インターネット(字幕)] 4点(2017-01-29 19:54:29) |
4. 闇金ウシジマくん
《ネタバレ》 原作未読、テレビドラマは鑑賞済です。 テレビドラマのseason1がかなり面白かったので映画版にも期待していたのですが、こちらはやや期待外れでした。ドラマでは視点人物である片瀬那奈の存在が大きく、一般人とほぼ近い彼女の感性こそがド底辺の特殊な世界と視聴者との間の橋渡しをしていたのですが、今回はゲスト扱い。代わって、大島優子演じる鈴木未來が善悪の境目を彷徨う一般人役を担っていますが、彼女の本編への絡ませ方がどうにも中途半端なのです。彼女に係るエピソードは枝葉に過ぎず、彼女がいなくても本編が成立してしまいます。また、母親が自宅で売春しているというかなりハードな環境に居る割に、彼女自身は出会いカフェの実態すら知らない、若い女に群がる男達のゲスな本性を垣間見て驚くといったナイーブさを示しており、キャラ設定内で不整合を起こしている点もまずかったと思います。 本編の絡ませ方がおかしかったのは新井浩文演じる肉蝮も同じくで、金に絡む人間ドラマが見せ場の本作において、金ではなく殺しそのものを目的とする肉蝮の存在はかなり浮いていました。また、ウシジマと肉蝮によるアクションも本作に求められているものからは外れており、存在自体が不要だったように思います。 以上の通り余計な枝葉は目立ったものの、本編そのものは楽しめました。何ができるわけでもないのに「俺はビッグになりたい」と抜かし、根本的な自分の能力不足とも向き合わずに「俺の武器は人脈っす」と言う小川純の浅はかさがとにかく最高なのです。こいつがどんどん自滅していく様には「いい気味だ」と思ったし、ウシジマに焼きを入れられる場面には拍手喝采しました。小者がえらい目に遭わされる映画って、やっぱり面白いです。 [インターネット(字幕)] 6点(2017-01-29 19:54:01) |
5. 屋敷女
『マーターズ』と並んで、近年のフレンチホラーを代表するとされる凶悪作品。ハリウッドホラーのショック演出、イタリアンホラーのグロ描写、ジャパニーズホラーの湿っぽい空気感、ジャーマンホラーの変態性等、世界中のホラー映画を丁寧に研究し、それらの尖がった部分をすべて吸収して作られた結果、暴君怪獣タイラント並の強力な映画が仕上がったわけです。「これ以上やっちゃいかんだろ」というレベルを軽々と越えてくる残酷描写の過激さや、短時間に多くのイベントを詰め込んでくるという展開の素早さ、そして底抜けに陰惨な結末など、従来のホラー映画が牧歌的に思えてくるほどの容赦のなさには腰を抜かしました。普段はボカシを無粋だと感じる私も、本作のクライマックスでボカシがかかった時には、「これを見ずに済んでよかった」とホっとした程です。。。 ただし、被害者と加害者双方の動きに合理性を欠く面があったり、中盤に登場した刑事3人が、どう考えても現場を制御できる状況にあったにも関わらず、一人のキ○ガイ女によって全滅させられてしまうという展開にイライラさせられたりと、いくつかの場面で不自然さが見られた点は残念でした。こうした点をうまく処理できていた『マーターズ』と比べると、作りはやや洗練されていないと感じました。 [DVD(字幕)] 6点(2014-05-18 10:23:49) |
6. 野蛮なやつら/SAVAGES
メキシコの麻薬カルテルはとにかくヤバイ。2006年から2012年の6年間で7万6千人もの死者を出すという過激な抗争を繰り広げ、時に敵対勢力の村民を女・子供に至るまで皆殺しにするというトンデモない残虐性を見せており、もはや手のつけようのないレベルにまで達しています。他方、長引く対テロ戦争の影響でアメリカ国内には従軍経験のある若者がゴロゴロしており、世界一の先進国でありながら、血生臭い戦場の記憶を持つ世代が現在進行形で生み出されているという、なんとも異様な国家となっています。そんなメキシコのマフィアとアメリカの従軍経験者が、アメリカ国内で戦争をおっ始めたらどうなるのか?本作の切り口は非常に魅力的です。。。 監督はオリバー・ストーン。かつては映画を撮る度に論争を巻き起こしていたハリウッド随一の問題児も、『アレキサンダー』を大コケさせて以降は目立った映画を作っておらず、いよいよ才能も枯れたかと思われていましたが、本作では久々に目が覚めるような手腕を披露しています。多くの登場人物の思惑が入り乱れる複雑な物語を混乱なくまとめ上げ、ユーモアもドラマ性も残虐性も絶妙なバランスでブレンド。さらにはアクションの出来も上々であり、この手の映画としては間違いなく最高レベルの仕上がりとなっています。そう、この人は『スカーフェイス』の脚本を書き、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を監督してバイオレンス映画の歴史にいくつもの足跡を残してきた人なのです。全盛期を彷彿とさせる脚本や演出の切れ味には唸らされました。。。 『野蛮なやつら』というタイトルは逆説的で、実際に野蛮な人間は出てこないという点が本作のポイントとなっています。映画では目を背けたくなるような暴力が繰り広げられるのですが、各キャラクターの立ち位置を考えれば、どの暴力にも合理的な目的が存在しており、ナチュラル・ボーン・キラーは一人も登場しないのです。暴力や殺人が肯定されうる状況が存在すること、本作で描かれているのはその恐ろしさなのかもしれません。上記のメキシコ麻薬戦争も、テレビのニュースで見る分には「あら、野蛮ね」なんて上から目線で悠長なことを言っていられますが、当事者としてその抗争に巻き込まれれば、自分達だって同様のことをするかもしれない。そこに暴力の根深さがあります。 [DVD(吹替)] 8点(2014-01-07 00:41:58) |
7. 闇を生きる男
《ネタバレ》 タイトルが示す通り、真っ暗闇の人生の中で孤独に生きる男が、そのとどめとも言える最悪の事件に巻き込まれて破滅へと向かうという、ポール・シュレイダーもかくやという暗い映画です。鍛えすぎてパツパツの体の上に、生気のない顔が乗っかっている男・ジャッキーが本作の主人公。このジャッキーが温厚そうな老人を容赦なく恫喝する場面から映画ははじまり、「これは何事か」と思わされるのですが、その後、ジャッキーがなぜこのような人格になったのかが明らかにされると、この男の悲惨な運命に同情せざるをえなくなります。。。 本作の理解に必要な情報として、牛成長ホルモンとホルモン・マフィアの2点が挙げられます。飼料を節約しながら食肉牛を大きく成長させたり、商品価値の高い赤身部分を増やすことを目的に、欧米諸国では牛にホルモン剤を投与するということが行われていました。しかし、人体への影響が懸念されることから規制の動きが活発化し、欧州では1981年に一切のホルモン剤の使用が禁止されたのですが、これに目を付けたのがマフィア達でした。いまだ合法とされるアメリカから仕入れたホルモン剤を畜産業者に提供し、利益をあげはじめたのです。禁止されている薬剤が密かに使用され、国民の健康を脅かしている。当局はホルモン・マフィアの捜査と食肉汚染の全容調査を開始するのですが、その過程において獣医検査官が殺害されるという事件が1995年に発生します。この一連の流れが、本作のモチーフとなっています。。。 主人公・ジャッキーは、人用ホルモン剤の投与によって成り立っている男です。外部から男性ホルモンを摂取することで男性性を維持し、強いコンプレックスによって攻撃性が定着した彼は、人為的に作り上げた男性性によって破滅へと向かいます。本来の彼はおとなしく、かつ冷静で正しい判断を下す男なのですが(ホルモン・マフィアと関係を持つことにもっとも慎重だった)、男性性をコントロールしきれなくなって起こした2、3のトラブルによって、その人生はどん底へと叩き落とされます。もし、クラブで会った男や自動車修理工に暴力を振るっていなければ、彼は幼い頃からの片思いを成就させて、幸せな人生を送れていたかもしれないのです。主題とドラマを完璧に一致させたこの設定は、本当に見事だったと思います。演技の質も極めて高く、必見のサスペンスドラマとなっています。 [DVD(字幕)] 7点(2013-02-15 13:40:59) |
8. 闇の子供たち
戦慄を覚えました、映画があまりに酷くて。社会派映画にとっての必要条件とは、キャラ造形等に脚色を加えることはあっても、作品の根幹をなすテーマについては事実に基づくということだと思うのですが、驚いたことに本作で描かれる内容はほぼウソっぱち。確かに、貧しい国で人身売買が行われているという惨い現実は実際にあります。ならば徹底した取材で現実に迫ればいいものを、本作は原作者と監督の思い込みや妄想で物語を作り上げてしまっているのです。とにかく、この映画のディティールはメチャクチャです。まず、子供が生きたままゴミ袋に入れて捨てられるということはありえません。警察に挙げられたら終わりの商売ですから、証言者になる可能性のある子供を表立って捨てるわけがないのです。また、ヤクザが子供の背中をムチで打ったり、タバコを押し付けたりする描写もありましたが、高い金を払って調達した商品をわざわざ傷ものにするバカはいません。同様に、客が子供を傷つけるようなことがあれば、管理者であるヤクザは烈火の如く怒るはず。本作に登場するヤクザの行動にはあまりにリアリティがなくて、作り手が意図したのとは別の意味で、観ていてイライラしました。同時に、グロテスクな虐待行為を妄想で作り上げた原作者と監督の負のパワーには驚かされました。彼らこそヘンタイですよ。。。 本作のメインテーマである心臓移植の件もウソっぱちです。心臓移植を行うにはその道を極めた優秀な医者が8名も必要だし、おまけに最新の医療機器も調達しなければなりません。その上、逮捕されれば漏れなく重罪に問われるというリスクまでを考慮すれば、コストがかかりすぎて商売にならないのです。こんなことは少し調べればわかる話ですが、監督にはわからなかったのでしょうか?もしくは、わかってはいたけど、冷静な分析を無視してでも扇情的な内容を求めたのでしょうか?どちらにしても、この監督に社会派映画を撮る資格はありません。。。 不自然な点を観客から指摘されるまで、本作をノンフィクションとして売っていた配給会社の責任も重く感じます。事実無根の内容でタイという国にネガティブなイメージを与えたのですから、これは国家と国民に対する名誉棄損ですよ。とにかくこの映画は酷すぎます。善人面して平然とウソをついているのですから、ゲテモノホラーや低俗なエロ映画以下の最低な代物だと思います。 [DVD(邦画)] 0点(2013-01-22 01:31:49)(良:4票) |
9. ヤング≒アダルト
幸せになれない肉食女子を描いた痛いブラックコメディなのですが、『JUNO/ジュノ』でオスカーを受賞したディアブロ・コーディによる脚本が相変わらず素晴らしく、男女を問わず楽しめる作品に仕上がっています。あらすじはかなり現実離れしているのですが、過去の栄光を懐かしんだり、初めての恋人を特別視したりといった主人公の心理には一定の普遍性があり、この点が観客と映画との間の共感の接点となっています。また、主人公の職業を小説家とし、彼女の歪んだ性根を小説によって明快に表現するという映画的工夫も素晴らしいと感じました。単なるバカ女にしか見えなかった主人公が、実は苦しい過去を抱えていたことが判明する終盤の急展開にも驚きと意外性があり、隅から隅まで計算し尽くされた脚本だと思います。。。 ジェイソン・ライトマンによる演出も安定しています。皮肉家で嫌味な性格なんだけど、どこか愛嬌を感じさせるキャラクターを描かせると、毎度この人は素晴らしい仕事をします。主人公のやっていることは最低で、その言動には同情の余地ゼロなのですが、それでもこのキャラクターを好意的に見てしまうのです。ハッピーエンドでもバッドエンドでもないクライマックスはいかにもライトマンらしい終わり方で、観客に何も押しつけてこないラフな姿勢に好感が持てます。 [DVD(吹替)] 8点(2012-10-13 02:47:36)(良:1票) |
10. ヤングガン2
大予算が組まれた期待作でもなく、最高のスタッフの渾身の作品というわけでもなく、含蓄のある深いテーマがあるわけでもなく、恐らくは「偶然」おもしろくなったと思われるヤングガン。ハリウッドではこういう奇跡ってたまに起こるようで(ダイハード、スピード…)、そしてその続編はたいていが大したものじゃないというのもよくあることで、そのためこのヤングガン2もほとんど期待せずに見たのですが、驚くべきことに第一作のレベルを完全に超えてしまっていました。しかもリーサル・ウェポンやダイハードのような物量作戦に出るわけでもなく、エイリアンやミッション・インポッシブルのようにまったく別物にして前作との比較を避けるわけでもなく、雰囲気自体は第一作のままに、映画としてのクォリティそのものが上がっているのです。稀に見る続編の成功例ではないでしょうか。キャラクター達はより魅力的になり、前作では時にサイコ気味で仲間を窮地に追い込む張本人だったビリーが、今作では主役としてのカリスマ性をきちんと放っています。対するパット・ギャレットも冷徹さの中にどこか人間性を残しており、ドラマを盛り上げる理想的な悪役となっています。そのギャレットに同行するのはなんと無名時代のヴィゴ・モーテンセン。大した役ではないものの、やはり彼もかっこいいのです。センス良く撮られた映画なので、端役までちゃんと活きてるんですね。アクションの見せ方も絶妙で、テンポやタイミングがうまく計算されています。ただ撃ち合うだけではなく、しばしばトンチで切り抜けてるあたりもいいですね。恐らくは映画史の中に埋もれていくであろうこのヤングガンシリーズですが、正統派西部劇にも負けない独特の味を持つこのシリーズが私達の世代のみの鑑賞で終わってしまうには惜しい気もします。 [DVD(字幕)] 8点(2006-03-05 15:37:36) |
11. 野獣教師
おもしれぇ、これ。すでにイっちゃってる邦題に劣らず、豪快に破綻してる話がナイスです。見せ場はやっぱり前半の学園物語。不良相手に説教し、それでも聞かない生徒は窓から放り投げる。これぞ鉄拳制裁の完全映像化ですよ。このやりたい放題がたまりません。少年ジャンプとかで連載してそうですよ。 生徒に聞かせるベトナムの話も感動的で、チャーリー・シーンが部下だった頃、善人のウィーレム・デフォーを置き去りにした話はいつ出るのかと、一瞬期待しちゃいました。 8点(2004-07-08 16:57:06)(笑:2票) (良:1票) |