1. レディ・イン・ザ・ウォーター
《ネタバレ》 僕は、僕の中の彼女が僕以外の人の中の彼女と全然違うと言うことにうろたえていたけれど、それは顔に出さずに悲しんでる振りをした。相変わらず窓のそとに降り続く雪と、そのくせやけに明るい空が余計に、自分の居場所がどこなのかを分からなくしてしまった。 「ねえ、鵠沼に行こ」 少々投げやりに選んだ水族館よりも、海岸の方が落ち着くし時間が長く感じられるじゃん。という理屈に大変納得しつつも、アクアリウムを二人で眺めている自分に満足したい様な気もしたからだろう。 「あ、うん」 などと、気のない返事をする僕は感情の出やすい顔の作りでもしているのだろう。彼女は少し意地悪な顔をして、ずんずん134号線を歩いて行く。 本当はカップルが腕を組んで、キスをしたら思い出を作ってしまい込んでいくのをうらやましく思いながら一拍遅れて付いていく。 記憶が目の前に現れて、そして消える。彼女と僕の周りで悲しい顔をする誰かは、きっと僕の知らない彼女を知っている。それがどんな顔でしゃべり方の彼女なのかを、彼女に尋ね続ける僕は何者なんだろう。 彼女は応えない。そして、彼女は目を覚まさない。 っていう、ありきたりな側面にやたらフォーカスされた映画である一方で、中身はあんまり一般向けでは無かったっていう味わいがよく出来てた様な気がする。付和雷同を呼び起こす攻撃誘発性がどこかに仕込んであるのだけれど、わざとなのかもしれない。 もう見るな、というメッセージかもしれない。 [映画館(字幕)] 8点(2014-08-04 13:03:29) |
2. レスラー
《ネタバレ》 叫び声がいくつも、いくつも重なって画が暗転したとき、少し感動した。でも、何に感動したのだろう。彼の人生にだろうか。 ランディが本当に実在したのは、彼の中で80年代を生きたラムというプロレスラーの中で。90年代に入ると、ショウビジネスの変遷はそこに居た誰もが考えるよりも速く、容赦が無かった。そうだ、僕たちが生きた90年代も、彼が生きた90年代も自分が考えるよりも速く移り変わっていき、そうして終わった頃にはたった10年が何十年前と同じようにレトロな記憶になってしまった。 その時代をプロレスラーとして生きたことは、彼にとって実は幸運だったのかもしれない。僕たちが今、普通に暮らしているこの瞬間も、彼が普通に暮らすことが出来なかったあの瞬間も実は何かに寄り添って生きている。でも、寄り添うことが出来る何かは彼にとって適当でも優しくもなかった。それは彼自身が蒔いた種に他ならないのだけど、そんな彼がずっと昔は誰よりも優れた人間で居られる時代にいることが出来たのは間違いない。僕たちの多くは彼のように誰よりも高いところに立って大活躍はしていないだろうから。 それを何十年も引きずっていた彼を、なすすべもなく見つめるしかないのが僕たち。そして、僕たちの中にも彼のような僕らが居て、救いをどこかで欲しがっている。そうしている内に、彼は諦観に押しつぶされて燃え尽きようとしてしまった。 ラムジャムを繰り出すあのほんの僅かな瞬間。彼の中で確かなものが完全に終わったのが聞こえた。僕らはその音を間違いなく聞いたけど、無情にもフィルムはそこまでだった。 でも、もしかしたらそれは慈悲のようなものかもしれない。だって、あの後、あれ以上続いたら涙が止まらないと思うから。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2012-04-12 01:16:19)(良:1票) |
3. 0:34 レイジ 34 フン
《ネタバレ》 クソだなぁ。 すがすがしいほど半製品。日常とか生活の裏側にある怖さをねらってんのかな。もうちょっと現実に即さないとそういう怖さが出てこないと思う。 で、作ってる人たち自身が途中でそれに気づいてしまったのか、怖さの対象を変な怪人にしちゃったような別の主題になっちゃってる。 結局いらない謎とか、現実世界に戻ったラストの、普通の人たちが主人公に一瞥も投げかけないとか、よその話がやりすぎな手法とかもうなんかこうやったら怖いリストをみんなで持ち寄りました的な作りが無念きわまりない。 スプラッターに頼るとかそういうところも良くない。 迷い無くつまらなかったといえる普通のC級映画だった。そういう意味では外してはいない。 [DVD(字幕なし「原語」)] 4点(2011-12-30 03:07:25) |
4. レモ/第1の挑戦
《ネタバレ》 淀川長治が面白い面白い映画なんですね、って言ってたので期待してみたのがいけなかった。大きすぎた期待は徐々に冷めてしまって、普通に楽しい映画で終わってしまった。 脳天気でいやそうな雰囲気の主人公とか、訳の分からない武術の市販とか影のボスとか。そういう80年代の雰囲気は大好き。こういう映画って自分から探さないと最近は向こうからやってくるって言うことが無くなってる気がする。なんかちょっと寂しい。 [地上波(吹替)] 6点(2011-09-01 01:36:34) |
5. REC:レック/ザ・クアランティン
《ネタバレ》 ヤッベ、そこそこ面白かった。 狂犬病的な何か病原菌的なものが仕掛けになっているけど、それより密室だから良かった。これ、病原菌がもっと弱いもので何が原因で出られないのかよくわからないと思っていた序盤が非常に良かった。中盤いきなり暴威をほしいままにしちゃったりするのが魅力をそいじゃったりしている。もったいない。大人の事情か。 しかし、結構みれる。リメイクだと思わなかった。というか、リメイクされてるもんだと知らなかった。オリジナルはもっと面白いんだろうけど荒削りなんだろうなきっと。2とか作られちゃってるみたいだけど、天井裏の子供とかいきなりオカルト研究所みたいなのとか、落とし方がやっちゃいけない感じだからきっとそこからふくらませたらこけるだろう。思わせぶりにして余韻を楽しむくらいの落ちだろうし。そういうところもちょっともったいなかった。終盤のプロットが至って映像作品的で残念。 とはいえ面白かった。普段怖いヤツはほとんど観ないから印象良かった。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 6点(2010-07-18 00:51:08) |
6. レッド・オクトーバーを追え!
《ネタバレ》 ジャックライアンなんだが、ショーン・コネリーが完全に喰ってる。 商用インターネットが存在しない時代。潜水艦がリアルに恐ろしい存在だった時代。その時代の国家間、私人間のつばぜり合いが巧妙にストーリーを構築し、多少ザルなプロットも意識させないで見ることが出来る佳作だと思う。 同時に潜水艦の戦闘のおもしろさをリアル映像にすると言うのを実に見事にやってのけ、アクション映画としても一級。 そのメインキャラクターをショーン・コネリーが演じているというのが何ともよく解らなかった。ワタシの中では愛すべき英国のオッチョコチョイでアホなスパイを演じる、大ファンの大根役者のショーン・コネリーがこういうシリアスで良い役をやっているとものすごい違和感とともにものすごい、なんていうか「イィヤッホウ!」てな気持ちになるのはなぜか。わかんないけど。 薔薇の名前とかアンタッチャブルを観るともう心躍っちゃうんだよなあ。ショーン・コネリーが大好きなんだな。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2010-06-06 18:30:49) |
7. レオン(1994)
《ネタバレ》 リュックベッソンはこの作品まで良い職人だったと思う。フィフス・エレメントあたりからおかしな方向に行ってしまったが、それはそれ。この作品が大変面白いこととはあまり関係のないことだろうからあまり考えないことにしている。 この映画の特徴の一つとなっているが、閉じられた世界観が精神的にも地理的にも支配的で、その小さな世界の中で逆らえない予定とも運命ともつかない時間の流れからの圧迫感が、登場人物にも観客にもそこから逃れる術を模索させる。 ほんの短い時間で不可逆的に変わってしまう彼らの生き方は壊れることで収束するが、大きな街の中で小さな箱庭が失われてしまったに過ぎないこの出来事は、観客の気持ちに小さな感傷を残す。生き残った登場人物のその後を思ってじっくりと憂鬱に浸ることができる。 そういう小さな世界で起こった大きな出来事はほんのちょっと私を切なくさせるが、そういう気持ちをちゃんと植え付けてくれる映画って言うのは実はそんなに多くない。だから大事にしたいお話なのである。 完全版の方は、追加されたシークエンスが私が持っていたイメージを強烈な力で矯正してしまい、この映画に持っていた幻想的な世界を打ち消してしまった。付け足して作られた新たな世界観は、何となくその後のリュック・ベッソン的でなじめない。 [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2010-04-30 00:54:14) |
8. レッド・スコルピオン
《ネタバレ》 意外とおもしろくない。期待していなければもしかしたらね。という感じ。 アフリカ諸国の社会主義国家の抱える不安定性というものを、巧く取り込んでいる。が、当時の時事ネタを映画にする脚本技術の限界なのか、そういう風に見えてこないのが何とも残念。 スタローンやシュワルツェネッガーが敷いた、コマンドモノがベースにある(というかそういうのを期待している客をターゲットにしているモノ)から、どうしてもシリアスさに限界が生じるのだと思うが、やむを得ないか。 見せ場のアクションシーンの完成度も高く、それが故にソ連という設定、アフリカという設定、部族に認められるという設定が共食いを初めてしまう。B級映画はこのあたりが共存してしまうせいで満足感が高いが、この映画はB級になるチャンスを逸してしまっている。 題材がいいことは、何も悪いことではないが、それを何とどう組み合わせるのかを間違えるととたんにすべての材料の味が薄い映画になってしまうと言うことがよくわかる。 [映画館(字幕)] 4点(2009-11-14 00:42:08) |
9. レッド・ブロンクス
《ネタバレ》 80年代風味全開のカンフーアクションだと思っていたら、90年代の映画だったんですね。 話の筋がどうにも中途半端だし、衣装に違和感を感じてしまって集中できなかった。 なんていうか、目の付け所がずれている感じがするのだけど、それをきちんと説明できないような感じがある。 でもちゃんとずれている。そういう映画。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-05-17 16:48:42) |
10. レッドクリフ Part I
《ネタバレ》 正直面白かった。 合戦シーンのボリュームも満足のいく尺だったし、ラブシーンとか入っていたので映画としても緩急ついていて○。 三国無双みたいな戦闘アクションなんてコーヒー吹きますよ。そのくせ迫力あってかなり○。 最小限に絞った武将の数で、きちんと物語が進行していくので感心した。 そもそも、実際の合戦で指揮官が一騎打ちなんかしてたわけがねえだろ。と、思いながらも楽しく読んだりみたりしてる多種多様な三国志もこういうバリエーションが増えて楽しいもの。 演技も正史も小説もマンガも、そんな訳ねえだろとつっこみながら楽しく読むもんです。三国志は。 正史だって文科省認可の英語の教科書みたいなものでしょう。確かに大筋で間違ったことは書いてないけど、現実のツールとしては嘘でしょう。 当時の現実なんて学者でもあんまり分からないのだから素直に楽しんだら2時間お得だと思う。 [地上波(吹替)] 7点(2009-04-19 23:56:45) |
11. レオン/完全版
なかなか面白いことは間違いないんだけど、なんかイマイチだ。 追加された部分がものすごく蛇足で、かなり不完全になっちゃった感じがする。マチルダがティーンズ向け雑誌やアニメで覚えた恋愛表現を優しく受け流すレオンを表現したかったのは分かるけど、マチルダの性格造形が雑で素直に観るのが辛い。 レオンの過去をしゃべらせるトリガーが、マチルダが性交渉をせがむこと、というのもいかん。倫理性を大きく損なう犯罪を絡めると簡単に脚本にエッジが効くのは分かるけど、それを嫌って入れなかった保険の場面じゃないのかこれは。なぜ入れたんだろう。 少年的な表情と体の動きで当惑するレオンにセックスをせがむと、過去の人への愛を語り始める。これもレオンのキャラ造形を揺らがせてしまっているように思う。よく言えば幅が出た、だろうか。でも、トニーのほんの少しの台詞から、過去を想像させた方が良かったはず。レオンの涙ながらの吐露も想像を具体的、確定的にさせてしまう効果になってしまっているようでもったいなかった。 マチルダの性格を極端にしてしまった結果、あの演技をかわいいと思えないという人もいるんじゃないだろうか。とはいえ、それほど考えさせる映画ではないので、素直に見入れば良いことかもしれない。劇場版の方が高品質というだけ。 完全版じゃない方を最初に見ておいて、もっと世界観に浸りたいっていう感じで使うと良いなと思った。 ファンなら気にならないし、ありがたくもあるんだけど入れずにすんだ場面をなぜ入れたんだか分からない。もうちょっと何とかならなかったのか。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2009-02-11 15:49:06)(良:1票) |
12. レイジング・ブル
《ネタバレ》 話自体は全然面白く感じないんですが、出来事への興味は尽きないという感じでグイッと見させられます。 デニーロの役者魂とか、そう言う要素がなかったらものすごく退屈なのかもしれませんが、きちんとそう言うイベント的な部分があるため映像的なおもしろさもあります。 話の筋自体は、ドキュメンタリーな味わいと、記録映画的な味わいを娯楽映画フォーマットのギリギリのところで表現している感じでさじ加減のうまさが秀逸。 でも本当のところ私は楽しめず残念。非常に良くできた映画なんですが、見るときの気分や求めているものに満足度が相当支配される感じがします。 [DVD(字幕)] 5点(2009-01-02 14:19:04) |
13. レクイエム・フォー・ドリーム
《ネタバレ》 おっかねぇ。 こういう結末になったとき、誰かのせいにしますよね。 本当にその人のせいだったとしても、無くなった人生とか生活って戻ってきませんね。 おまえのせいだと泣きながらいっても、「おまえの言うとおりだけど、だから?」 と開き直られたらどうします?怖いでしょ。 って思った。あのときああすればとか、あいつがいけないんだ。なんて壊れた後思ってもしょうがないんだと、ホントにおっかねー。 触らぬ神にたたり無しでございます。 [DVD(字幕)] 7点(2008-10-26 19:12:19) |
14. レッドブル
《ネタバレ》 この作品のシュワルツェネッガーが朴訥で頼りになるけれど、うち解けていないからすれ違う。 っていう雰囲気がとても良い。 子供の頃何度も見て、何となく地味な話なんですけど、かっこいい軍人と相棒の刑事の姿にしびれた物です。 今見たらたぶん笑っちゃうんでしょうけど、子供には凄くシリアスなハードボイルドにフィルタがかかってました。 良い思い出です(笑) [ビデオ(字幕)] 6点(2008-10-18 23:54:07) |