1. 私はいったい、何と闘っているのか
《ネタバレ》 つぶやきシロー流哀愁と自虐のヒューマンコメディ。主人公のメンタリティに共感し、真摯に仕事や家族と向き合う姿に好感を覚えました。ただ、春男を単なる「不器用で不遇な弱者」と捉えるのは間違っていると考えます。それは彼が失脚するに至った「内引き事件」を見れば分かります。彼は同僚の不正を見逃しました。これは仲間を守りたいという信念による判断。もちろん擁護などできません。万引き犯は警察行きか、最低限商品を買い取らせるのが当たり前。「仲間だから見逃す」は筋が通りません。しかし懲罰を受けてもなお、春男は自分の行為を悔いていません。彼は「自分の正義」を持っているということ。しかも彼自身の中で、社会一般のルールより上位なのです。腰の低さに惑わされてはいけません。春男は「強い人」です。また部下の言うように「優しい人」でもあるのでしょう。この気質は夫婦の馴れ初めからも窺い知れます。ただ、この傾向が過ぎると政治犯とかテロリストに行き着くため褒める気はありませんし、彼の優しさは結果的に同僚を救っていません。今回の選択は関係者全員が損をした悪手でした。もっとも、人生において最善手のみを指し続けることなど出来ません。間違って当たり前。でもどうせ間違うなら、正しいと信じて選択したいもの。そういう意味で「自分の正義」を持つのは悪いことではないと思うのです。あくまで自己責任の範囲で、という注釈が付きますけども。春男はきっと自分の事が大好きだと思います。本人に聞いたら絶対否定するでしょうが。というわけでタイトルの問いかけに対するアンサーは「みんなの正義と私の正義」であると考えます。 [DVD(邦画)] 7点(2022-08-18 20:52:33) |
2. ワンダーウーマン 1984
《ネタバレ》 DCコミック『ジャスティスリーグ』で突出した人気を誇るワンダーウーマンの活躍を描くソロシリーズ第2作目。今回は1984年のアメリカが舞台です。1984年といえばロサンゼルスオリンピックが開かれた年。当時私は12歳でした。その前のモスクワ五輪は日本が不参加でしたから、私が記憶に留める最初のオリンピックというワケ。開会式のロケットマンやカールルイスの9.99など今なお鮮明に脳裏に焼き付いています。そんな1984年のアメリカは、現在より遥かに人々に活気があふれていたと感じます。その時代の色彩や空気感の再現はお見事でした。そんな1984年にダイアナが戦うのは、世界征服を企む悪の怪物ではなく、“人々の欲望”という概念でした。なるほど、この題材ならば当時のアメリカが舞台としてうってつけでしょう。個人的にはアメコミで観念的なアプローチは勘弁して欲しいのですが、アメコミヒーローものって結構こういうのが好きなのですよね。『そんなわけあるかい』な甘々で力業な結末も、アメコミの大らかさで許せてしまうから不思議です。というより、本作のダイアナちゃんは前作にも増して美しくエレガントで、ゴールド聖闘士さながらのコスチュームも私世代的にたまらなく、些細な粗は気にならないのですけども。ガル・ガドット様がワンダーウーマンを引き受けてくださるうちに、どんどん新作を作ってくださいな。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2021-08-10 21:29:17) |
3. わたしに××しなさい!
《ネタバレ》 少女漫画原作のラブコメとは知らず、“うっかり”鑑賞しました。そもそも50近いおっさんなど相手にしていないでしょうし、私が劇場鑑賞する可能性もほぼありません。つまり私は本作を語る資格を有していません。しかし観た映画の感想を書きたくなるのがレビュワーの性。『戯言』扱いでお願いできればと思います(いつもの感想だって同じですけども)。 主人公は女子高生作家です。作品にリアリティを持たせる為に疑似恋愛体験をしたいそう。この設定を聞いただけで、あらすじが容易に推測できてしまう王道のラブコメであります。結末は『瓢箪から駒』ではなく、潜在的な欲求を『言い訳』を使って叶えたパターンと思慮します。真正面から挑戦するのは失敗が怖いけど、何かひとつ『言い訳』が付くと案外チャレンジできてしまうもの。恋愛に限りません。誰だって身に覚えありますよね。これは主人公だけでなく彼氏役にも当てはまることで、2人はある種の『恋愛プレイ』を楽しんだと考えます。羨ましい限り。やや不満が残るのは、彼氏の自立(家族のしがらみからの解放)が漠然と処理されてしまったこと。主人公が彼氏の鎖を引きちぎったポイントをきちんと描いて欲しかった気がします。点数は冒頭に述べた理由により放棄の意味で5点です。(以下余談)××の読み方について。「チョメチョメ」「ペケペケ」「ホニャララ」あるいは「キス」なんてパターンもあるなと思い悩んだのですが、まんま「バツバツ」とは。劇場窓口でチケットを買っていたら大恥をかくところでした。人生には至る所にトラップが仕掛けられています。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-12-05 00:56:23)(笑:1票) |
4. わたしのハワイの歩きかた
《ネタバレ》 主人公がハワイまでやって来た表向きの理由は2つ。①ガイドブックの取材のため(仕事)、②ハワイで結婚式を挙げる友人の2次会会場の下調べ(プライベート)。でも実際は、仕事で評価されない現実と、社内不倫という現実、2つの辛い現実から逃げ出すためでした。会社の経費を使いまくり、出張期限をぶっちぎって遊びまくり、最終的には『ハワイの住人』になるという結末。リゾート地でバカンスの延長から住み着く人っていますよね。『現実逃避』は、本来一時避難ですが、主人公の場合は計画移住の線が濃厚。一応仕事はこなしたので会社から訴えられる心配は無さそうですが、筋を通さぬ身勝手な振る舞いは社会人として褒められた態度ではありません。ただし、主人公の生き方を非難する気もありません。一度きりの人生、好きに生きたらよろしいでしょう。さて、そんな型破りな主人公ですが、一番のサプライズは『玉の輿』を自ら降りた事。王子様の年齢や人間性に難ありでもないのに、当てた宝くじを自ら破り捨てるとは。彼女の人生観が伺い知れます。歯に衣着せぬ物言いは、日本よりもアメリカ向きなのは間違いありません。結果的に移住は正解だったと思います。自分自身で人生をコントロールしようとする姿勢も良いと思いました。ただそれなら、お茶漬け屋からのプロポーズなんか待たずに、自分から告白したら良いのに。これが乙女心ってヤツなんでしょうか。榮倉ちゃんがモデル体型のSクラス美女ゆえ、その存在自体が『浮世離れ』しており、感情移入し辛いのが難点(オッサンが何言ってんだか)。あるいは「こんなの御伽噺なんだから、お前ら本気にすんなよ」という監督からの忠告かもしれませんが。 [インターネット(邦画)] 5点(2020-08-10 18:27:20) |
5. 若おかみは小学生!
《ネタバレ》 萌え系?キャラデザインに敬遠ぎみだったのですが、NHK地上波放送を機に初鑑賞しました。率直な感想は「思っていたのと違う!(良い意味で)」。物語冒頭から主人公を襲う悲劇。さらには幽霊、妖怪の出現。ほのぼのホームドラマを想定していたので、いきなりのトップギア&急カーブに度肝を抜かれました。とはいえ、基本はオーソドックスな少女の成長物語。人との出会い、様々な体験を通じて、主人公は人間性を高めていきます。それにしても、おっこは良い子でした。いや良い子過ぎたかもしれません(全裸監督の口調で)。私の人間観と照らし合わせると、いくら早熟な女子でも、あの物分かりの良さ、聞き分けの良さは出来過ぎと感じました。小学生なら、自己中で、我儘で、怠け者で、甘えん坊で、当たり前。ゲーム機が欲しくて、でんぐりがえるくらいで正常です。失礼。これは私の子ども時代の話。恥を晒してしまいました。一般的なお子さんは、もっとちゃんとしてます。とはいえ、元来子供は未熟なもの。長い年月日をかけて、徐々に心を成型していくものです。一気に大人になった(ならざるを得なかった)子どもは、やはりどこか歪なのではと心配になります。建材だって急いで乾燥させたら、割れたり曲がったりしますから。おっこにとって女将は天職に違いありません。だからこそ、無理せず、少しずつ、立派な女将になって欲しいと願います。そういう意味では、本作で感じた違和感は、主人公の年齢設定に対するものと言えるでしょう。「若女将は女子大生!」せめて「若女将は女子校生!」くらいなら、素直に納得できた気がします。何やら安めのAVタイトルのようですが、予期せず全裸監督の伏線を回収出来たので、個人的に満足した感想文となりました。 [地上波(邦画)] 7点(2020-06-05 18:58:43)(良:3票) |
6. 私はヒーローそれともヴィラン?よみがえれ勝連城
《ネタバレ》 成果が全てのビジネスの世界に、過程を重視するボランティア精神を取り入れてステップアップ。一人の力はたかが知れてる。共働することで大きな力になる。なるほどメッセージは素晴らしいです。でも本当に主人公がそれを学んだかどうかは謎(正直そうは見えません)。意味のあるシーンや説得力のある描写をすっ飛ばして、結果だけで説明しようとしている気がしました。勝連城は良さそうな所だと思ったので、ご当地映画としての役目は果たしているのでしょうが、正直それ以上でもそれ以下でもないとのジャッジです。それより気になるのはタイトル。本気で作品を売る気があるのかと小一時間問い詰めたいくらい。これはナイです。ついでに言うならビジュアルイメージも。生首が青空に浮いているのは気持ち悪くないですか。もっとも本作最大の問題点は、主人公を演じた女優さんの好感度の低さという気がします。 [インターネット(邦画)] 4点(2020-03-10 21:22:43) |
7. ワンダー 君は太陽
《ネタバレ》 いきなりネタバレしております。未見の皆様は閲覧ご注意ください。 林間学校での出来事。オーギーの親友ジャック・ウィルは、いじめっ子に突き飛ばされて石に頭を打ち付けます。一見して明らかな伏線。死亡フラグが立ちました。友の尊厳を守るために戦い、命を落とす悲劇の結末へ。ところが、です。これが全然平気。感動のクライマックスでは、主人公と笑顔でハイタッチを交わすジャック・ウィルの姿がありました。勿論ハッピーエンドに文句などあろうはずがありませんし、彼が死んでいたら憤慨したでしょう。しかし映画の論法的にはスカシなのです(出血確認=内出血なし=命に別状なし。で流せば良いのでしょうが、元来深読みが好きなもので笑)。この部分にメッセージが込められていると考えます。「一般論で決めつけるな」と。常識は凝り固まると偏見に姿を変え、差別を生む要因となります。見た目が変わっているからきっと虐められるだろう。そんな経験則でオーギーをみていた私も、実は偏見の持ち主だったのかもしれません。実際、オーギーは特別な努力をしていません。皆に気に入られるよう芸を習得したり、認めてもらえるよう勉学に励んだりもしていません。彼は在るがまま、ただ一歩、外の世界に踏み出しただけ。それでOK。今のままで十分に魅力的なのですから。少年に必要だったのは、チャレンジする勇気でした。その事実をちゃんと見抜き、息子の背中を押したお母さん。その決断と覚悟に敬意を表します。もっとも、今回のように良き友や理解者に恵まれるとは限りません。でもチャレンジしなければ可能性はゼロです。もし小学校で出会えなければ中学で、さらにその上、社会に出て、気の合う仲間を探せばいいのです。それでもダメなら・・・自分では気づいていない原因を疑いましょう。世の中は広い!味方は必ず出来ますよ。授賞式で語られるオーギーの心情「誰もが人生で一度は称賛されるべき」は、「挑戦することを諦めてはいけない」と同義と考えます。父親である私が、娘たちに望むのも唯一コレ。勉強や運動は程々でいいので(うちはトンビではなくカエルの家系なので高望みはしません)、チャレンジする勇気を持って欲しいということ。無難な方にばかり逃げていると、人生の後半で辛くなるんですよね。本当は意気地なしのお父さんが、偉そうに言えた義理はないのですけれども。ですから本作は、お涙頂戴でもなければ、哀れみや同情で鑑賞する映画ではありません。他人事ではなく自分事。あなたは自分の人生に勇気を持って立ち向かっていますか?という問い掛けの映画です。 [インターネット(吹替)] 9点(2020-01-01 00:00:00)(良:3票) |
8. ワンダーウーマン
《ネタバレ》 女優(キャラクター)の魅力だけで成立してしまう映画がたまにあります。『ローマの休日』のオードリー然り『キック・アス』のクロエ然り。本作もガル・ガドット嬢演じるダイアナちゃんがノーベル賞級のアダルトキューティ。主演女優のキャラクターだけで、ほぼ作品が成立しています。素晴らしい。しかし、残念ながら“ほぼ”なのです。大切なのは、ダイアナちゃんの魅力を最大限に引き出すこと。その点で本作は不完全燃焼であったと判断します。物語の仕立ては、『300』のような格闘アクション+『クロコダイルダンディー』的カルチャーギャップの面白さ。後者の比率が大き過ぎた事、またクライマックスの戦いの格闘要素が弱くカタルシス不足であった事が、不完全燃焼の要因かと。構成の問題。とはいえ、このキャラクターは映画界の宝でしょう。続編に期待します。 [ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-01-05 19:29:21)(良:1票) |
9. ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
《ネタバレ》 頭のテッペンから尾っぽの先まで“ザ・エドガーライト”印のサスペンス風味コメディ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』と『ホット・ファズ』と『宇宙人ポール』を足して3で割ったようなと言えば、ファンなら容易にご理解いただけると思います。ある意味『男はつらいよ』クラスの安定感さえ漂う定番の味。ただ、かの作品との大きな違いは、作品ごとにキャラクター造形が全く違うこと。今回のサプライズは、ニック・フロストの常識人設定。あのグータラダメ人間が弁護士先生とは。でも完璧にこなしてしまう辺り、役者としての技量の高さが窺えます。“酔っ払いには何を言っても無駄”という全世界の共通認識が、宇宙人相手にも通用した結末は実に爽快でしたが、それだけに猛烈にネタバレ(?)している邦題(副題)は何とかならなかったのでしょうか。いや、むしろ世界救ってないじゃんてツッコミ待ちのボケなんですかね。 [DVD(字幕)] 8点(2017-11-25 22:21:00) |
10. 私たちのハァハァ
《ネタバレ》 本作は“距離”の映画。北九州から東京までの物理的な移動距離。旅に要する費用などの金銭感覚。憧れのバンドと自分たちとの間に在る隔たり。そして自らの将来に対する希望。どの距離感覚も彼女たちには、全くと言っていいほど備わっていません。いや正確には“測ろうとしていない”のでしょう。実測して現実と向き合い、絶望してしまうことに怯えているのかなと。この心理は理解できます。子供時代の終焉。現実と向き合う大人の世界へ。そんな不安な状況ゆえ、刹那の快楽に逃げるのも無理からぬこと。世間を、現状を、自分自身を、とりあえず見ないふり。まあ、それもいいでしょう。というより私自身、彼女らに説教を垂れられるほど立派な大人ではありません。ただ、心配なのは、今回の旅を“良い思い出”として消化してしまわないかということ。それだけは要注意です。360度いろんな人に迷惑をかけた事実を自覚すること。しばらくは布団に入る度に後悔でジタバタする必要があるでしょう。失敗をきちんと整理し、反省することで、はじめて成長できるのですから。家庭用ハンディカメラの映像をメインツールに臨場感を演出しながらも、通常のカメラも併用し客観的な視点を担保するバランス感覚は秀逸です(純粋に観易いという利点もあり)。ただ、編集用のカチンコをさりげなく本編に入れ込むあたりは、ハイセンス過ぎて鼻につきますが。主演の女子高生はみんな生々しくて素晴らしかったです。 [DVD(邦画)] 8点(2017-03-15 21:28:43) |
11. ワールド・ウォー Z
《ネタバレ》 ゾンビ業界の2大潮流といえば、スローな動きとハト並みの知性が味わい深い『オールドタイプ』と、俊敏な動きで人間を襲いまくる“走るソンビ”『ニュージェネレーション』。本作のゾンビは後者のタイプでした。それも運動機能だけなら業界屈指。さらに集団時には無類の突破力を発揮します。最強最悪クラスのゾンビです。このようなゾンビを相手にした場合、一市民では太刀打ちできる要素がありません。国連の元調査員の立場で、ゾンビ攻略の最前線を描いたのは正解だったと思います。また物語の着地点も、ゾンビ現象の根本治療ではなく、ゾンビ対抗方策とした点も意外性があり良かったと思います。ゾンビウィルスに対して“偽装する”という科学的な理由づけも納得できました。ただ、惜しむらくは、特効薬発見の過程をお手軽に処理してしまった事。細菌学者のヒントと、ごく僅かな例外を目にしただけで、主人公が画期的なゾンビ対抗策を思いついてしまうあたり、“ご都合主義”と批判されても仕方がないかと(私は髪の毛を剃れば襲われないのかと思いましたよ笑)。もう少し試行錯誤してくれた方が、リアリティが出たと思います。主人公が大切な家族を誰一人失わずに済んだのは、ゾンビ映画としては破格のハッピーエンド。たまには、こんな結末もいいものです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-07-12 21:28:49) |
12. 藁の楯
《ネタバレ》 素材が藁ではどんなに束になろうとも、楯の役目は果たせません。ではなぜ精鋭の警官隊が藁に成り下がってしまったのでしょうか。10億円の懸賞金が原因?それも一因。しかし大多数の善良な警官が金に転ぶワケがありません。最大の要因は警護対象者。万人が認める鬼畜。壊れた人間。自分自身の良心に対する言い訳は十分でしょう。そんなクズに命を懸けられる人間は、それだけで尊敬に値します。藁の中の鋼鉄の芯。無念にも、ある者は折られ、ある者は深く傷つきましたが、見事楯の役目を果たして見せました。何という矜持。プロフェッショナルの凄みを見せつけられました。さて、批判集中のリアリティの無さについて。私も正直、監督の正気を疑いました。大沢以外のSPが防弾チョッキを付けていないなんて有り得ませんもの。しかし批判を受けるのは三池監督だって承知のはず。きっと監督はリアリティよりも死に際のドラマを優先させたのだと思います(ヘッドショットだと即死ですからね)。この決断力!流石エンターテイメント馬鹿!娯楽の意味をはき違えている可能性も否定できませんが、いずれにしても徹底しているのは素晴らしいです。私は1周回って、アリだと思いました。個人的には清丸の量刑は無期懲役、いっそ大沢は最期死んで欲しかったと思います。中途半端なカタルシスより、腸が煮えくり返る感情も快感の一種と考えます。 [地上波(邦画)] 7点(2014-06-06 21:29:06) |
13. 私の奴隷になりなさい
《ネタバレ》 私自身、ゆるキャラの着ぐるみを着た女性にしか欲情しないという、至ってノーマルな性癖の持ち主ですので、SM世界の事は良く分かりませんし、興味もありません。人気女性タレントのおヌードが頂戴出来たとしても、興味の無い話を延々と見せられるのは正直苦痛でありました。例えるなら、ラーメンは大好物でもラーメン屋亭主のウンチクなど聞きたくないという感じでしょうか。SMの主従関係を共依存で説明したのは納得出来ましたが、ラストには違和感を覚えました。今まで奴隷だった女が、すぐさま女王様になり替われるものでしょうか?SMに詳しい方(できれば女王様経験者様)のレビューをお待ちしております。 教えてエロい人! [CS・衛星(邦画)] 4点(2013-07-01 19:26:36) |
14. 私の優しくない先輩
《ネタバレ》 (以下は私個人の勝手解釈です。未見の方はご注意ください。)“火蜥蜴島に越してきた心臓病の娘、イリオモテヤマコのひと夏の経験”は、“名も知らぬ少女が病院のベッドで今際の際にみた夢”でありました。虚実入り混じった物語でしたが、そのほとんどが空想だったと理解します。唯一の現実は、病床の少女に青年がキスする場面のみ。この事実は火祭りの夜、ヤマコが発した言葉により示唆されています。「ヤマコなんて名前の子がいますか?」観客が抱いていた疑問を劇中の人物が口にすることの意味とは何でしょう。火蜥蜴島なんて島があるか?武道・球技以外がマット運動部って?その他同級生の描写が一切無いのは何故?たこ焼き機が本格的過ぎないか?これらの疑問が正当であった事の裏付けです。全てが現実にあらず。天然記念物のような名前の女子高生は存在しなかったのです。ヒトカゲとは“人影”の意。ヤマネコは飼い猫とは違い、懐きません。病床の少女もまた病気を理由に、人との交流を避けてきたのではないでしょうか。そんな彼女を励まし、支え続けてきたのが“先輩”だったのでは。少女にとっては、疎ましい存在かもしれません。その情熱は、現実を見たくない少女には眩しすぎます。しかし先輩の思いは、最後の最後で少女に届きました。その言葉が胸を突きます。「人生、思い出をいっぱい作った奴の勝ちなんだよ!」それは面倒な事から逃げていては叶わぬこと。臭くて、ウザくて、暑苦しい思いをして、思い出は勝ち取るのです。「お前の感じた事全てが真実だ」もう戦う事すら叶わぬ彼女への、精一杯の肯定。少女のでんぐり返しは、空想を“本当”に変えることです。彼女がみた最後の夢を、先輩は優しい口づけで真実に変えてくれました…。ヤマコが存在しないと知ったとき、自分は物語に引き込まれた気がします。実在しないという事は、誰もがヤマコなのかもしれないのだから。本作は全ての観客に問いかけます。今、あなたは“感じていますか?”と。エンドクレジット。単なるオマケであれば、どんなに見事な技術を労しようとも、自分は心を奪われなかったと思います。高田延彦と小川菜摘が、最後までヤマコの父と母であり続けてくれたこと。これが何より嬉しかったです。美しく、そして優しい人生の最終回でした。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2011-12-09 20:29:43)(良:2票) |
15. ワナオトコ
《ネタバレ》 原題のままだと類似タイトル作品と判別が付かなくなるので、この邦題はイイと思います。それに実際のところ、コレクションしていませんし。正確には、“鮎の友釣り用餌鮎の捕獲”。餌以外の獲物に対する扱いがぞんざいなのも困りものですが、ご自慢の罠に対する拘りが感じられないのも頂けません。箱を開けて驚いたところを後ろから襲うって、あんまり意味ないような。折角仕掛けた罠ですから、ちゃんと活用しなくては。直接ナイフで襲い掛かるとか、トラバサミに突き飛ばすとか美しくありません。一般人が気にしない細かな部分に拘るのがオタクのイイ所だと思います。時間制限と子供救出というクリア条件をつけ、かつ主人公を“良い人”に設定したのは上手いです。ハラハラ・ドキドキさせて頂きました。ワナオトコVS人の良い盗人の第2ラウンドも期待していいのかな? [DVD(字幕)] 6点(2011-09-28 18:53:12)(良:2票) |
16. 脇役物語
《ネタバレ》 主役がスーパースターなら、キャラクター造詣にとやかく言うつもりはありません(ウソ。ちょっとは言うけど)。イチローや石川遼がどんなパーソナリティだろうと、所詮別次元の人間ですから。でも(自分と同じ)脇役が主役となれば、是非とも感情移入したいと思うのです。ところがヒロシという人間がよく分からなかった。倒れている自転車を直す潔癖さ。損な役回りを引き受けてしまうお人好しぶり。これらの性質と、酔っ払って花壇の花を抜いたり、写真を千切って路上に巻いたりする“雑”な部分とが、どうも相容れないのです。後者の描写はドラマでよく目にする典型シーンではありますが、彼にさせるのは間違っていると感じました。この事はアヤの方にも当てはまります。彼女はサッパリした性格。だからといって、売り物の葡萄を無断で頂戴したり、インターネット喫茶のアルバイトに食って掛かったりするでしょうか。キーアイテムを印象付けるため、あるいは彼女に啖呵を切らせるために、無理矢理エピソードを捻じ込んだような。彼ならどうする?彼女ならどう考える?脚本を練る上で必要な人物造詣との調整が、出来ていない気がしました。それに核となる2人の恋愛模様もパッとしません。起承転結の頭と尻尾だけ提示されても困ってしまう。いつ2人は愛を育んだのでしょう。賑やかしの枝葉のエピソードに気をとられて、肝心の本筋が脆弱では意味がありません。物語のコンセプトは気に入りましたし、役者も良い人達を揃えたたけに勿体無いです。以下完全なる余談。松坂慶子について。腐っても鯛。太っても美人女優。さすがにお綺麗です。でも失礼ながら、あの腕ならリキラリアットが打てる。 [DVD(邦画)] 4点(2011-09-04 00:25:01) |
17. 笑う警官
《ネタバレ》 本当に申し訳ありません。最初に謝っておきますが、自分は本作を観て良からぬ想像をしてしまったのです。それは大森と宮迫の関係について。2人は潜入捜査という修羅場を乗り越えてきました。その中で共に心を病み、友情を越えた関係性を築いたという。友情を超えた関係って何?自分には“愛情”しか思いつかないのです。そういう目で2人を見ると、もうね、そういう風にしか見られません。サックス演奏、尺八で拳銃自殺した警官、タイプライターの音色、全てがゲイのメタファーに思えてしまいます。流行の言い方をするならボーイズラブってヤツですか。そんな映画なワケないですよね。ですよね?最後にもう一度謝ります。邪推をして、本当に申し訳ありませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-03-14 19:58:09) |
18. わたし出すわ
《ネタバレ》 走れないランナーに再び走る足を与えもすれば、慎ましく生きてきた夫婦の歩む力を奪うことも出来る。僅かなお金でツキを呼び込む男もいれば、大金で不幸を引き寄せてしまう女もいる。お金にまつわるエトセトラ。本作のエピソードは基本的に明暗・正負が対になる形で綴られています。お金の魔力に慄くのが小池だとすれば、その威力に気づいていないのが小雪です。彼女はランナー母に株価の値上がり情報を教えました。素人に株の快楽を覚えさせてしまう事がどれほど危険か、彼女は気づいていない。それは、小雪がこれまで負けてこなかった事を意味します。天賦の才なのかもしれない。大金を所有する小雪は、強大な力を有しているとも言える。そんな彼女でもままならぬのは、母のこと。どんなに金があっても、最先端の医療を持ってしても、母親の健康は取り戻せない。資産を全て手放したとき、母の身の上に神の奇跡が舞い降りるというエピソードは、お金至上主義に対するアンチテーゼと見て取れます。カネという人が作り出した価値観の中で生きる虚しさを描きたかったのでしょうか。ただ、そうだとするならば本作の踏み込みは甘いと感じます。男に狂った路面電車奥は、単純に彼女がバカだっただけ。殺された女も金を得たから命を落とした訳ではない。負のサンプルとして提示されるエピソードは、どれも筋違いでピンと来ません。それ以上に、ランナーが再び表舞台に立てるようになった事や、引越し屋に起業のキッカケを与えた事実の方が大きい。小池の判断や最後の奇跡が霞みます。本作を観た人は「小雪みたいなお友達が欲しいわ~」としか思わないのではないかと。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2010-12-18 19:24:38)(良:2票) |
19. 嗤う伊右衛門
《ネタバレ》 舞台演出家の印象の強い蜷川幸雄監督。“らしい”映画でした。まず役者の演技が濃い。これは良い意味で。唐沢、椎名、香川ら芸達者が作品世界にのめり込んで演技をしてくれている。ちゃんとした劇を見せてくれるのが嬉しいです。小雪も良かった。力みは感じられるものの、“精練な女性像”を感じ取ることが出来ました。顔のハンデが気にならない。十二分に魅力的です。典型的な“幽霊顔”だし(失礼!)、これからもホラー(というより怪談)で活躍して欲しいです。逆に悪い意味で気になったのがBGM。ベタ過ぎました。折角の好演に余計な飾りを付けるようなもの。使用箇所と選曲は一考を要すると感じます。四谷怪談を純愛物語に解釈したのは面白い。昼メロか韓国映画並みのハチャメチャのドロドロ。核となるのは伊右衛門と岩の心の繋がり。「すまぬ」を連発する夫に苛立つ妻。引け目がある者同士が心を開き通わせていく。本来なら、尺をかけて描きたいところ。でも少し言い合いを見せたのみで処理するのが凄い。でも本作の場合は十分と感じました。たった一度本音を言い合うことで深く繋がれる。なんとなく分かる気がする。だけど2人は純過ぎました。相手を想うだけで満足してしまった。相手を慕うのと同じだけ、自分も愛さなきゃいけないのに。乳を出しながら(!)死ぬ梅や、エンディングの処理等、演出の意図は理解できても受け入れ難い部分に若干のマイナスを付けます。 [DVD(邦画)] 7点(2008-11-11 20:26:36) |
20. 私は二歳
『ベイビートーク』(1982)のような作品を予想していましたが、少し違いました。確かに2歳の坊やは心情を語るものの、それは物語のスパイス程度。子育てにまつわるエピソードの数々と、坊やを取り巻く大人たちの人物描写がメインでした。親と子、夫と妻、嫁と姑。どの人間関係も一筋縄で行かないのは、今も昔も変わらないみたい。面白かったのは、いがみ合っていた嫁と姑がふとしたキッカケでガッチリタッグを組んだところ。こうなると男はタジタジ。でもこれが一番平和な状態なんですね。家庭は女でもっている。幼子の成長と共に親の成長が描かれていたのも良かったです。まるっきりお子ちゃまだったお父さんが、終盤はそれらしく見えてきました。子が親を育ててくれる。 [DVD(邦画)] 6点(2008-08-24 18:21:45) |