1. メランコリア
《ネタバレ》 冒頭に、堂々と結末が示されているにも拘わらず人間ならば誰もか抱いてしまう一縷の希望という物が、針金のワッカを覗き込むワンカットで見事に打ち砕かれてしまう瞬間が、さりげなく凄いです。 パニックに陥る街の様子なんて一切描かずに、細かな現象の積み重ねで想像させてしまう演出力には感動します。 永年仕えてきたであろう執事のおじさんが突然来なくなってしまう、なんていうのも人々の救いようのない事象を強く暗示していますし、1部と2部で描かれた相反する『絶望』と『調和』が、同じ点に向かって収束してゆくという構成も、とても思惑的です。 これがハッピーエンドと言うならば、こんなシニカルなハッピーエンドは見たことありません。 最も静かで、芸術的な気概に満ちたディザスタームービー。 もう四回見ました。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2012-09-07 18:00:37)(良:1票) |
2. イキガミ
《ネタバレ》 期待して観に行ったのですが、設定とそれに伴う演出が緩くて、きっちりとした世界観が構築されないまま紋切り型の感動話がダラダラと続くので、辟易として鑑賞しました。 体制を批判したり、ナノカプセルの接種を拒んだだけで拉致され、思想を矯正されてしまうという恐ろしい世の中にあって、繁華街の真ん中で、路上ライブでのんきに青春を謳歌できてしまうという不思議。 小学校入学時から、宝くじに当たるより遥かに高い確率でイキガミが来るのが分かっているのにもかかわらず、人々の心に確実に根差しているはずの恐怖や怒り、来るかもしれない「その時」に対するそれぞれの覚悟の描写がないというのは足りないし、独自の制度の下はぐくまれてきた親子や家族の関係など、この設定ならではの描くべきことが沢山あるはずなのに、最早選ばれてしまった青年と家族の「可哀相なドラマ」にストーリーがシフトしてしまうので、設定を念頭に置いて丁寧に編みこまれた作品というよりは、ただ感動話を設定の器にはめ込んで、手っ取り早くプレスして作った「缶詰」のような作品なんだなと思いました。 あの強硬な体制における配達人のエモーショナルな立場も、何かちぐはぐでなじめないし、選挙制度のある世の中で、あの狂った法律がまかり通っている理由も説得力に欠けていました。 ・・・結局のところ単なる安いメロドラマとしか思えませんでした。 [映画館(邦画)] 4点(2008-10-03 14:00:59)(良:1票) |
3. サイレントヒル
あの「三角頭」はジェイソン、フレディーに匹敵するホラーキャラだと思う。もっと有用に使うべきだった。ゲーム版を知る人には既視感のある作り込まれた映像はうれしいが、ストーリーのオリジナル部分が消化不良気味で、終盤はグダグダになっていた。ラダ・ミッチェルが独り健闘。 [映画館(字幕)] 6点(2006-07-15 12:21:32)(良:1票) |
4. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
登場人物たちの、恐怖や怒りや悲しみが深く、真に迫っていて見応えがあった。 [DVD(字幕)] 7点(2006-06-21 11:29:04) |
5. ダンサー・イン・ザ・ダーク
《ネタバレ》 徐々に、しかも確実に視力が失われていく恐怖は想像を絶するものがあるだろう。 一人息子もまた、同じ運命をたどるとなれば、もう現実から逃げ出したくなってしまうのは良く分かる。 セルマは、そんな人生に対する不安や、息子ジーンに対する責任、果ては自分の気持ちまでも、貯めたお金とともにドロップの缶に封じ込めてしまったのだろう。 そしてその缶にしがみつくことで自分を納得させながら、自分だけの夢想の世界に入ってしまったのかもしれない。 彼女は「ミュージカルの最後の歌は聴きたくない」と言うが、これは「物事を締めくくらずに逃げる」という彼女の精神構造を表していて、実際作中でも、「ビルのついた嘘」から、「キャッシーの友情」から、「ジーンに対して親として生き抜く責任」すら放棄して逃げている。 どこかで逃げずに立ち止まっていれば、何かが変わっていたかもしれないのに・・・。 まだ終わりじゃないと言う結末も逃避的。 それが結果、そこで全て終わりなのだ。 セルマという女性の愚直な純粋さと現実とのずれが、取り戻すことの出来ない大きな歪みとなって重く心に突き刺さった。 繊細な彼女の精神世界には多くの感情を喚起され、揺さぶられた。 辛く苦しい作品だが、傑作だと思う。 [DVD(字幕)] 9点(2006-06-17 03:05:54)(良:1票) |
6. タイムリミット
面白すぎ。 脚本が圧倒的にいい。 マット(デンゼル)の身から出た錆とはいえ、前半で蒔いた種が蔓になって縦横無尽に絡み付いてくるのをギリギリで振りほどくスリルはたまらないものがあった。 人の不幸は蜜の味と言うが、この場合ネタがみっともない下世話な話なので、主人公が必死になればなるほどコメディー色が強まると言うよく練られた脚本で、悲鳴を上げながら大笑いした。 キャストもほんのチョイ役まで見事に立っていて、小品ながら出来としては、結末も含めて非の打ち所が見つからない。 時間もタイトで気軽に見られる。 現時点で今年のマイ№1。 超オススメ! [DVD(字幕)] 9点(2006-06-10 02:20:18) |
7. ポセイドン(2006)
タッパーにはいった前菜をさくっと食べ終わった後、豪華な皿に丁寧に盛り付けられた高級和牛のメインディッシュがドンッと出てきて、ライスもパンも無いけど旨い肉だなと味わって・・・あぁ、もう例えるのめんどくせ。 要は冒頭のスペクタクルシーンが全てってこと。 ・・あとはオマケ。 そんなことはハナから分かってたけどホントにそのとおりだった。 製作者サイドの狙いもおそらくそこだけでしょう。 でも、僅か5分ほどのシーンですがそうとうのハクリョクです。 見る価値アリです。 大画面大音響で見なければ体感できない凄さです。 上映時間の短さも良い。 つまらないドラマを2時間半も見るより遥かにマシ。 [映画館(字幕)] 6点(2006-06-09 12:14:06) |
8. 遥かなる山の呼び声
高倉、倍賞、山田の黄金プロット炸裂。 ラストシーンに向かってきれいに敷かれたレールの上をひたすら走る電車道ストーリー。 でもラスト、重苦しい空気から一変、ずっと閉め切っていた窓を一気に開けたような、荒地に沸いた泉のような、一瞬にして物語に血肉を巡らす巧みな演出には、ベタと分かってスイッチを押されてしまいました。 健さんの役は冒頭のアプローチからして相当姑息で不気味な男なんだけど、なぜかそう思わせない説得力があります。 吉岡君もこの頃が一番上手かった。 『幸福の黄色いハンカチ』と表裏一体の作品。 西部劇のようなテイストも違和感が無く、特に道東の雄大な景色は絶品。 人間関係がドロドロしないところも見やすくて好い。 [DVD(邦画)] 8点(2006-05-23 11:01:29) |
9. ポーラー・エクスプレス
子供にとってはかなりエキサイティングな展開のよう。 うちの4歳の子は1週間のレンタル期間中に4回も観ていた。 単純に楽しくて、冒険心も満たして夢も見せてくれる、無難な子供向けクリスマスイベントムービー。 屋根の上の男の存在が謎なのが、大人の事情を象徴していてなんかイイ。 毒の無い、やさしいファンタジーなので物足りなさはあるが、「海に取り残されてサメに襲われる、救いようの無い映画。」を見たばかりだったので、かえって心が洗われた。・・・あれから15年がたち、我が家では毎年クリスマスに見る程好きな、『定番季節もの』になってしまいました。 [DVD(吹替)] 8点(2006-05-13 19:24:51) |
10. オープン・ウォーター
怖ェーーッ!!! 結末の賛否はともかく、あの進退窮まった状況下で、首から下で何が起っているのか分からない恐怖、怒りの持って行き場も無く、ただ流されていくだけのナマ殺しの恐怖、もう耐えられませんでした。 ボートのスタッフに「何か気づきそうなドラマティックな役者」がキャスティングされてないのも絶望的。 途中で挿入された穏やかなリゾート地の映像との対比が、現場の悲壮感を浮き彫りにして印象的でした。 終始水中で奮闘した主演の二人に拍手。 この恐怖は尋常じゃないです。 [DVD(吹替)] 7点(2006-05-12 12:06:54) |
11. ホステージ
ブルース・ウィリスはもっと追い詰められてボロボロになったところからタフなエキスが体から染み出して見せ場が始まるのに、エキスが出る前に終わっちゃいましたね。 ハイテクハウスやDVDでもう少し面白く出来たと思うんですが、いろんな要素が詰まっている割に全体的には淡白な印象でした。 [DVD(字幕)] 6点(2006-05-02 20:02:20) |
12. シャイニング(1980)
《ネタバレ》 冒頭の俯瞰のシーンで描いた外界との絶望的な隔たりが、逃れようの無い切迫感となって全てのシーンに恐怖の陰影を落としていて、そのうえ始めからどこと無く異様で心底頼れない親父が加速度的に狂気に染まってゆき、一緒にいるのがか弱き妻と少年だけとなれば、設備の整った豪華美麗な高原ホテルも完璧なホラーの舞台と化す。 頼るべき人が狂気に染まってゆく恐怖。 背筋も凍る「コワキレイ」な映像は言うまでも無く素晴らしかったです。 恐怖を演出する音楽が少し耳障りだったかも。 [DVD(字幕)] 8点(2006-04-30 02:37:53) |
13. ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ
犯人に全く気付きませんでした。(滝汗) 「チャーリーが誰か」を言えないエミリーの気持ちが痛かった。 観終わってしまえば「ナンダまたこれか。」ということですが、デ・ニーロとダコタ・ファニングの演技力で緊張感は保っていました。 犯人分かってから結末までがかなり雑。 脇のキャストもやや薄かった。 2人の演技を見る作品。 [DVD(字幕)] 6点(2006-04-22 02:05:48) |
14. ロボッツ
ぜいたくな話だが、ロボットが動きすぎだと思う。CGが進歩して画面の情報量が増えるのは結構だが、パンフォーカスで背景まで細かく動かれたら目が疲れてしまう。好みの問題もあるが、その辺のさじ加減も大事だなと思った。 [DVD(吹替)] 4点(2006-04-21 17:44:52) |
15. クライシス・オブ・アメリカ
メリルの怪演はさすがの迫力。他の役者も皆良かった。しかし、ストーリーの焦点がややボケ気味で印象が薄かった。 [DVD(字幕)] 6点(2006-04-19 15:50:51) |
16. デッドコースター
つぎ絶対この人死ぬ、ほら、ほら、死ぬ、死ぬって、えっ?、オイオイオイ、おうわっ!、グシャッ、ウッソー!、オエーッ!!!。で全てをくくれる定番型ホラーの新種。 所詮画面の向こうの絵空事、血しぶきや肉片に悲鳴を上げながら楽しんだモンの勝ち。 見終わって全く何も残らない薄さも良かった。 [DVD(吹替)] 5点(2006-03-16 16:18:30)(良:1票) |
17. 銀河鉄道999
《ネタバレ》 少年はある日、「何かを手に入れるためには二度と戻れない旅に出なくてはいけない」ことを知る。 常に誰かに見守られている事を感じながら、強い意志で旅に出る。 そして旅の経験を通して何かに気付き、あらため、自分の進むべき道を見出し、ちからづよく歩き始める。 常に周りから助けられてばかりいた少年が、決断と行動を経ていつしか愛すべきものを助けるという存在になる。 少年の成長と、その通過儀礼が象徴的によく表わされたストーリーだと思う。 各駅停車で行く、旅の過程が大事なこの作品だが、2時間余りで結果を急いだためTV版と比べて旅の風情が少しかけているが、それでも心に深く残る部分はあるし、久し振りに観ても、胸に込み上げて来る物はあった。 少年が見てはじめて価値がある、少年による少年のための映画、先の見えてる褪めた大人が見てもあまり意味は無い。 [DVD(邦画)] 7点(2006-03-08 16:01:26)(良:1票) |
18. ファイナル・デスティネーション
《ネタバレ》 人の「運命」はあらかじめ決められていて、それに逆らって生き永らうと「運命」が辻褄を合わせるためにあからさまに殺しに来る、という設定がすでにコメディー。 あとは、誰がどの順番でどうやって殺されるかを従来のホラー映画の方法に則って見せているだけ。 なかなか思った通りにならず、額に汗して意固地になってる「運命」様っていう存在も想像すると笑えるが、意味が分からないしそれが狙いではないでしょう。 前半の質の高い緊張感が、後半では別物になってしまった。 冒頭の事故シーンだけは圧巻でした。 [ビデオ(吹替)] 5点(2006-03-02 17:11:32)(良:1票) |
19. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 前半の展開に感情移入して主人公とともに深く悲しみ涙しましたが、涙の乾く間もなく不思議な魔法の介入ですべて無かった事になってて、「なんだョ生きてるじゃん。」と口走ってしまった。 生きててがっくりさせるドラマってどうなんだろ。 しかも何度でもリセット可能で、にっちもさっちもいかなくなった挙句の果てに、出会わなかったことにしてこれでいいのだってそりゃないでしょ。 人生はテレビゲームじゃないんだから。 悲しみは悲しみとして自分の力で乗り越えましょうよ、観てるこっちもその準備は充分出来ていたのに・・・。 前半の切実で重いドラマと後半のSF的展開の相性があまり良くなかった気がした。 でも役者は皆良かったし、映像的にも引き込む力はあった。 [DVD(吹替)] 6点(2006-02-22 12:58:04) |
20. セルラー
「たとえ内容が薄くとも、面白ければそれでいいんだ。」という娯楽に徹した潔さが心地よい快作。 絶対的な正義を全うする為ならば、ちょっとくらいの違法行為もイイジャンカ精神で貫かれている所も気楽でいい。 キム・ベイシンガーの恐怖の演技が作品に説得力を持たせている。 地味だけどかなりのファインプレーだったと思う。 受話器をとったら最後まで、観ずにはいられなくなる。 オススメ。 [DVD(吹替)] 8点(2006-02-19 01:54:19)(良:1票) |