1. トゥモロー・ワールド
《ネタバレ》 いま何かと揶揄される60~70年代の思潮を覆っていた素朴な平和主義。だが、本当にそれは破棄されるべき考え方だったのだろうか。テロは否定するが、だからといってブッシュのやり方でいいのか。その答えは出ていない。この映画は、臆面もなく70年代前後の思潮を前面に出す。音楽からしてそうだ。主人公は決して銃を手にしない。ただ、未来への唯一の希望である赤子を守って、殺伐とした戦闘の中をひたすら逃げる。トモロー号がどんな組織によるものか分からなくとも、少なくともまっとうな組織ではないと判明しない限り、希望を託してバトンを手渡すだけだ。ジュリアン、元看護婦、言葉の通じない女の3人の女性がリレーをするようにバトン渡しの手伝いをしていく。ありきたりかもしれないが、このしっかりしたストーリーの構造と重厚な画面に感服した。 [映画館(字幕)] 10点(2006-11-22 01:05:29) |
2. グレートレース
《ネタバレ》 鑑賞環境が「映画館(字幕)」?嘘だろうと思うかもしれませんが、本当です。もう30年以上も前。高校生のとき授業をサボって巨大スクリーンで見ました。その後、テレビやビデオでも見てますが、最初に劇場で見たときのインパクトにはやっぱりかないません。終盤、ナタリーウッドが歌う、They say there's a tree in the forest...という歌で、画面に歌詞が出て、カラオケのごとく歌詞の歌ってる語に点がついて、跳ねていたのですが、アレは最近のDVDには出てるのでしょうか? [映画館(字幕)] 10点(2006-10-03 03:51:08) |
3. グエムル/漢江の怪物
いろんな解釈ができる。そういう、いろんな解釈ができる映画は素晴らしい映画だ。 [映画館(字幕)] 10点(2006-09-07 22:44:35) |
4. 大いなる西部
(1)荒馬を乗りこなすシーンの丁寧なこと! そしてコミカルな締め。(2)ジムがビッグマディを訪問したときの風景美と、やはりコミカルなシーン。(3)そして何より静寂の中でのジムとリーチの殴り合い。あの広大な中での殴りあい!その光景がもたらす意味! 「これで何が証明されたんだ?」 やっぱ、この映画のジム・マッケイは僕にとって先生のような存在です。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2006-03-13 23:22:55) |
5. ALWAYS 三丁目の夕日
《ネタバレ》 地方都市の電気屋のせがれとして昭和32年に生まれた僕としては、これはもはや映画として評価することはムリで、すでに他界した父や軽度の認知症に悩む母の昔の姿や自分の子供時代(さらに自分の子供たちの心)がスクリーンに二重写しになって仕方なく、どっぷりとノスタルジーに浸かって、他の映画ならふんっとあざ笑ってしまうだろう感傷エピソードにも、いとも容易く撃沈し、ダラダラ涙してしまいました。建造中の東京タワーの視覚イメージには圧倒されました。堀北真希は若い頃の吉永小百合に似ていましたね。このままずっとこの映画世界に浸っていたい(苦笑)。そのような甘えた気持ちを、クレヨンしんちゃんの「オトナ帝国」では、最後に打ち砕いてくれましたが、この映画ではどうなのだろう。でも10点つけてしまいたいのだ。 [映画館(字幕)] 10点(2005-11-09 00:46:13)(良:1票) |
6. 七人の侍
《ネタバレ》 ケーブルTVでやっていたので改めて鑑賞しました。やっぱりグイグイ引きこまれますね。「7人」の「7」という数の絶妙さ。マジカル・ナンバー・セブンを黒澤監督は、その作劇センスで直感したのか? 討ち死にした4人は皆、種子島にやられたということに初めて気がついた。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2005-10-11 10:42:51) |
7. 誰も知らない(2004)
《ネタバレ》 途中、コンクリートの川辺の壁に頭をちょこんと出してる明のカットがあります。あのカットを思い出すたび明が何を思っていたかを想像してしまいます。「おかあさん、いつ帰ってくるのかな」「お金、どうしよう」「学校行きたいな」「家に帰りたくないな」「茂、にんじん食うかな」「またあの人にお金をもらいに行くのいやだな」「サンタはいるよ」「遊びたいな」「アポロチョコ、あの時から買ってないな」「キャッチボールしたいな」。そういう内側の声が聞こえてくるカットがたくさん出てくる映画でした。 10点(2004-09-20 00:47:26)(良:2票) |
8. アラビアのロレンス
《ネタバレ》 NHKで再見しました。アカバ攻略のシーンに萌え。馬が走る。走る、走る。快進撃。進撃、進撃。そして海。砂だらけだった画面に水がたくさんの水が画面に出る。ロレンスが純粋さを失い、汚れていく様子が痛い。命を賭けて救った男を殺し、付き添ってきた若者を砂地獄に失い、そしてさらにもう1人も。生気を失ったロレンスは悲しかったし、正直、怖かった。ダマスカスでアラブがまとまっていさえすれば! 10点(2004-02-29 01:10:11) |
9. ミスティック・リバー
すごい映画でした。 10点(2004-02-10 19:25:59) |
10. さびしんぼう
劇場で見たときすでに20代半ばになっていたが、懐かしさに泣いた思い出がある。前半は、男子高校生のありがちなドタバタを描いていて「俺もこんな感じだったなあ」と微笑ませるが、後半、特に父親が風呂に割り入って来て母親との思い出を息子に語り、それを風呂の外で聞いている母親のシーンをきっかけに涙腺が緩み、その後の、畳み掛けるように感傷的な場面の連続に泣けてしまった。山中亘の原作も読んだが、小学生を主人公にした普通の童話だった。あれを、懐かしくもおもしろ切ない初恋物語に仕上げてくれた大林監督に感謝したい。 10点(2003-11-12 12:32:48) |
11. 妻は告白する
ラスト近く幸田の職場に来た滝川(若尾)のびしょ濡れの着物姿に圧倒されます。若尾はこの映画のヒロインをどう演じてよいか分らず悩みぬき、いつしか彩子そのものになりきっていたと、新聞のエッセイで読みました。エロティックで、可愛らしく、そして恐ろしいという素晴らしく深みのあるヒロインです。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2006-03-08 01:44:44) |
12. サマータイムマシン・ブルース
小品なのだと思う。SFタイムマシン物なのだがスケールが悲しいほどに小さい(笑)。登場人物は、だるそうにしてるときも空騒ぎしてるときも、妙に脱力してるし、画面もゆらゆらと熱気に揺らめいていて、見てるだけで暑苦しくなってくる。しかし、ストーリーはしっかり整合が取れていて驚く。それに、いつのまにか、こちらも、登場人物たちと一緒に過去と未来を行ったりきたりして遊んでいたくなっていたし、いつまでもこの夏が終わって欲しくないという気持ちにもなっていた。小ネタも豊富で、ギャグも嵌った。普段、映画館で映画を見て笑うとき、片頬を歪めてニヤリとするとか、ハハッと声なく笑ってニコニコするとかの僕なのだが、この映画の場合は吹き出す場面が多く、「まったく、やってくれるぜ、思わず笑ってしまったじゃねえか、見ている他のみんなすまねえな」と思いながら、声に出して笑った後、後ろの観客席を振り返ってみたら、3人しかいなく、泣けてしまった。小品だが傑作だと思うのだが。 [映画館(字幕)] 9点(2005-10-07 09:59:37)(良:3票) |
13. パッチギ!
《ネタバレ》 音楽の力はすばらしい。バス内、破水した彼女を映したあと、カメラが横に移ると外には血眼の若者たちが乗る車。そして、それにかぶさる悲しくてやりきれないの歌。ありえないとは思いながら、激しく興奮を覚える。ギターをぶつけた欄干には亀裂があったし、レオポンも異種の融合によって生まれた命なのだ。 [映画館(字幕)] 9点(2005-03-22 22:02:39)(良:2票) |
14. 大いなる勇者
物語の進行を助ける、詩情溢れる語り風の歌がよいと思う。インディアンの掟を蹂躙した責任を負い、延々と命を狙われ続けるのではあるが、それでも山で生きていこうと必死に歯を食いしばり、戦い続けるジェレマイアをレッドフォードが素晴らしい演技で表現していたと思う。最後に、彼に敬意を表し、容赦するインディアンも良かった。他民族の風習の冒涜には、あれほどの贖罪が必要なのであり、それがあってこその真の和解なのだろうと思う。これを見ながら、暴力の悪循環が起きている世界のことが頭をよぎった。 9点(2003-11-25 18:45:47)(良:1票) |
15. キル・ビル Vol.1(日本版)
《ネタバレ》 いきなり首が切り落とされ、その残酷さに目を覆えば、テーブル上のオーレンの啖呵が素敵に決まり、その直後に通訳で笑わさせられる。恐いと思えばカッコよく、そして苦笑を強要される。単純なバカ映画として括ることができない、妙な映画だった。この映画で本当に残酷と言える、出だしのバンとドアのバンバンのシーンの後は、日本語のセリフが増すにつれ、次第にリアリティを失い、ハイセンスな映像と音楽のリズムに乗って常識が麻痺していく。さまざまな引用に満ち溢れながらも、独自の世界が速度を増しつつ展開し、最後に絶頂点で宙ぶらりんのまま恨み節だ。感情をぐるぐるかき回され、複雑だが麻薬的な余韻を残した映画だった。 9点(2003-11-06 18:37:17) |
16. 蜘蛛巣城
《ネタバレ》 妖怪の声が三輪明宏の声に聞こえた。白黒ゆえにか、まばゆい光の白色が記憶に残る。スピルバーグ映画での光に似た印象。歴史に残る矢のシーン、名作アニメの「サムライ・ジャック」エピソード7で引用されていました(というか、このアニメは黒澤映画からの引用だらけと言ってもよいですが)。 [地上波(邦画)] 8点(2007-06-07 21:37:29) |
17. 父親たちの星条旗
「ミスティック・リバー」は正直ムカついたが10点出した。だが二度と見たくない映画だ。何様のつもりだと思った。しかし、その淀みのどす黒さに10点つけた。だが、ようやくにしてイーストウッドも分かってきたようだ。遅すぎるが。というか、日米戦争で2部作作るよりも、南米辺りを舞台にしたものだったら1点加算しただろう。イーストウッドには、そこまでの度胸はないらしい。少しはまともに客観視できるようになっただけでも、ほめてやる。ともあれ、911の感想がミスティックリバーだなんて幼児レベルから脱却できただけでも8点をあげてやってもいいだろう。甘すぎだが。 [映画館(字幕)] 8点(2006-11-29 01:41:16) |
18. ハチミツとクローバー
僕は日本映画(中国や韓国もかな)の青春映画が大好きでよく見るのですが、これは好きな1本になりました。なんといっても5人の若者のキャラクターが生き生きしていますよ。とても分かりやすい。それに恋をしたときの心の状態もよく出ていたと思います。原作の存在自体知りませんでしたが、こういう映画がもっと作られると、嬉しいです。 [映画館(邦画)] 8点(2006-08-14 00:24:07) |
19. シリアナ
毎日やってくる新聞の5ページ目あたりを飾る中東の話。断片的で人が何人死んだかの数値が飾る。なぜそんな悲惨なことが日常的に起きるのだろう。関心は持っていても断片的な情報ばかりで奥を探ろうとするととたんに疲労感が増す。歴史的な事実を自分なりに整理し、送られてくる情報をその枠組みに当てはめ、一つ一つ丹念に評価を下していかなければ、日々送られてくる情報は消化したとはいえないだろう。しかし、情報として伝えられる事象には、裏のストーリーがあり、さらにその裏ストーリーにも裏がある場合がある。整合的で一貫性があるストーリーで整理するのは至難の業に近づく。混沌とした話の進め方は、それだけでまさにリアルで、それゆえにスリリングだった。「表面的に分りづらいことこの上ない。理解するには、観る方が枠組みを確かに持っていることが必要である。」と、そういった作りになっていることが、とても素晴らしい。 [映画館(字幕)] 8点(2006-03-16 22:01:23) |
20. 巴里のアメリカ人
格安DVDを買ってきて改めて鑑賞しました。終盤のダンスシーンを見ながら、なぜか「2001年宇宙の旅」の終盤のサイケ映像を思い出した。作り手が見せたい絵があって、それを「そこまでやるか?!」と度を越えて見せつける! そういう、後の時代になるとやりすぎに思われてしまうようなことを、やってのけるエネルギー。そういう、度を越したところがある映画は好きです。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-09 00:22:02) |