1. ミスト
《ネタバレ》 2008年公開の最高傑作、ダークナイトさえなければ、間違いなく1位をさらっていた。ここまで引き込まれるサスペンス/ホラーがあるだろうか。「異次元の怪物」という一見してチープなモチーフとは裏腹に、この人間がもちうる狂気は何だ!集団心理、極限の状態に追い込まれた者が理性から狂った宗教へ転落する様、すべてがリアルすぎる!まるで自分があのスーパーに閉じ込められたような気になる、まるごと劇場ごと。そんな空気さえ形成させるほどの撮り方、これはうますぎる。キング作品のもつ雰囲気・特徴を見事、撮影に実現させしめた。DVDでは半減、劇場で見なければ意味がない。何よりもこのラストよ、驚愕、衝撃、唖然、言語を絶するとはこのことよ。鳥肌がたって劇場を去ることができなかった。とにかく何よりもまず観てほしい、部屋を暗くして、液晶テレビで、大型32型以上で、5.1CHサラウンドで! [映画館(字幕)] 10点(2008-08-10 23:08:36)(良:1票) |
2. 花より男子F(ファイナル)
《ネタバレ》 予定調和の大団円。ハナから筋が見えていることを除けば、原作・ドラマ通りの安定したフックが供給されます(しかし一部下ネタあり!)。今回は金を使いまくるシーンが多いので、そのへんでも爽快感あり。無人島になぜ熊が生息しているのかは不明ですが(笑)、例の「なぐるシーン」を入れたいがためだけじゃなかったのかと指摘され、なるほど合点。松本君のトリガラBODYがなんともセクシーなんでしょうか。完全なるデートムービー、というか男は原作のファンでもない限り、彼女がはまり込んでしまってつまんないだろうなぁ。原作やドラマが好きならば楽しめます!言うまでもなく、F4より誰よりもカッコよかったのは北大路欣也である。 [映画館(邦画)] 7点(2008-08-10 23:00:27) |
3. ダークナイト(2008)
《ネタバレ》 これは10点ではおさまりきらない。従来の映画の枠組みを超えてしまった作品。あえて点数をつければ、10点中の100点。間違いなく2008年の最高傑作。間違いなく21世紀最初の10年での最高傑作。アクションとかヒーローものとかいうジャンルの全てを飛び越えて、今後これを超える映画が出てくることができるのか、まったく想定できない。ヒース・レジャーによる文字通り全存在を賭した乾坤の一擲。最初から最後まで観客はジョーカーの狂気にのまれ、「正義」のよってたつ地盤を崩される。正義は抵抗しうる悪をもってこそ、正義であることができる。悪もまた自身を増長させるためには強大な正義を必要とする。恐るべき共依存関係、または共犯関係。ジョーカーはゆえにバットマンを殺さない、バットマンも自ら悪と堕ちることを許さずジョーカーを殺せない。だからこのバットマンはヒーローとしてのバットマンであることをやめた。今宵よりダークナイトとなり、巨悪を倒すために小悪をも辞さない、曖昧で両義的なモンスターとなった。タイトルがあまりに素晴らしい。それにしてもこのヒース・レジャーの演技はなんだ!これでアカデミー賞とれなかったら暴動がおきるぞ。ヒースだけじゃない、撮影がすごい、脚本がすごい、他の役者もみんなすごい、ありえない完成度、ブラボー!! [映画館(字幕)] 10点(2008-08-10 22:42:40)(良:1票) |
4. 崖の上のポニョ
《ネタバレ》 多分にメタファーに満ちた作品。「神経症と不安の現代人」に対して、神話を提示してみせる宮崎の新たな試みをポジティブに評価したい。あまりに無垢に世界を破滅へと導くポニョの神々しさと、あまりに容易に「愛」で世界を破滅から救ってしまう宗助ら人間の対比、ストーリーの破綻と言ってしまえばそれまでだが、この破綻具合が「神話」そのものな気がしてならない。グランマンマーレが自らの出自を語る部分「私たちは泡から生まれた」などは、ヴィーナスの神話を明らかにモチーフとしている。ならば彼女は神として、フジモトは魔法使いとあるが、俗世を捨てて人であることをやめながらも、なお世界の均衡を保とうとするその姿は「森の人」などと重なる、しかしどこかカリカチュアルだ。この世界でもっとも「人間的」なのは、皮肉屋で懐疑的で、周囲から浮いている老婆トキである。トキ以外の、宗助ら全ての登場人物は、あまりに記号的すぎて感情移入ができない。大人はこれを子どもに見せたい、しかし子どもはこれを見たがるだろうか。 [映画館(邦画)] 8点(2008-08-08 10:14:22) |
5. ルー・サロメ 善悪の彼岸
《ネタバレ》 友情の三位一体、その内実よりも19世紀末ヨーロッパの“進歩的な”生(性)のリアリズムこそこの作品の衝撃的たる所以ではないか。字義どおりの善悪の彼岸にある阿片、同性愛、乱交、そのありのままを描写し、やがて狂気へおもむくニーチェの孤独の深遠をのぞく。果たして彼は永劫回帰に達したからこそ狂気に至ったのか、あるいは愛と友情を一度に失ったからか。プロット、演技、音楽ともに申し分無い。 [映画館(字幕)] 9点(2008-03-13 23:39:25) |
6. ジェイン・オースティンの読書会
《ネタバレ》 惜しむらくは自分がオースティンについて極めて無知ということである!パンフレットを見る限りでもおおよそ作品のウィットは理解できるが、本物のオースティン読者の域に達することはないだろう。読書会を通して、6人のバラバラだった人生が豊かさを取り戻してく様は見るものにカタルシスを与えるが、これをいざ実践できない自らのはがゆさよ。デートムービーとしては最適ではないでしょうか。 [試写会(字幕)] 8点(2008-03-03 22:29:53) |
7. ノートに眠った願いごと
《ネタバレ》 脚本がすばらしい。慶尚北道の景色がすばらしい。これを邦画でやろうとした場合、確実にクソ映画になるだろう。それをそつなく美しく作りあげるところに韓国映画のレベルの高さを感じる。いつか二人がめぐるはずだったところを自分も追って歩いてみたい。それにしてもフィアンセきれいだなぁ。 [試写会(字幕)] 8点(2008-03-03 22:15:44) |
8. KAMATAKI -窯焚-
《ネタバレ》 良心的外国人監督による所謂「禅的」自然観への憧憬をもとにした親日的作品、と書くと現代日本の描写とその現実のあり方とに異様なギャップが生まれるのが関の山だったが、本作では見ていてそこまでの違和感は無い(それでも吉行和子は滝前に座禅するが)。と言うのは、主人公の叔父であり師となる藤竜也の演じる造形そのものが、現代的・文明的な生活(車・展覧会・バー・ロック)の中にいつつも、最も古典的な窯業の様式を守る古代的・自然的な生き方(窯焚・セックス・太鼓・狸)をバランスさせる事を主題としているからだろう。そして、その叔父の奔放な生き方こそが主人公を再び「生」に向かわせるのだが、このある意味分かりやすい筋書きとは別に、案外風景の撮り方がうまいのである。冒頭の森のシーンなどは『殯の森』を想起させた。 [映画館(字幕)] 7点(2008-02-24 20:43:00) |
9. ナインスゲート
《ネタバレ》 さすがポランスキー、悪魔の女との「天城越え」セックスがいいですなぁ(笑)肩の向こうに城が燃えるっと。オチは割と陳腐ですが、古書をキーとしたサスペンスは珍しくもあり、けっこう見させてくれます。それにしてもジョニーデップは無防備すぎでしょ…。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-24 01:35:20) |
10. トランスアメリカ
《ネタバレ》 ラストでゲイ役者としてデビューした息子が「Sex-ed」って言いながらパンツを脱ぐシーンに爆笑。主人公は女にしか見えません。ロードムービーの良作。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-18 21:37:23) |
11. ニック・オブ・タイム
《ネタバレ》 ウォーケンのヅラが2、3度外れるところが本作の最大の見せ所。何よりデップが若い!あいかわらずカッコイイねぇ。サスペンスとしては及第点、レンタルで充分、レンタルすればレンタル代分は楽しめる。 [DVD(字幕)] 6点(2008-02-18 21:18:51) |
12. トレーニング デイ
《ネタバレ》 黒人俳優の良心的存在がヒールを演じるのが魅力。やること為すことえぐい、えぐい。おまえは自分が悪だとすら気づいていない巨悪だ、と言いたくなる怪演。イーサン・ホークも負けず劣らずクール。 [DVD(字幕)] 7点(2008-02-18 21:15:38) |
13. サイドウェイ
《ネタバレ》 さえない中年おっさん2人組を主人公にした点で話題を読んだ本作、期待通りの展開を繰り広げてくれます。ロードムービー好きには満足できる作品ではないでしょうか。ダチョウに追いかけられて“Those fuckers are mean”っていうセリフに爆笑してしまった。 [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2008-02-11 20:46:00) |
14. L change the WorLd
《ネタバレ》 見事に単なるクソ邦画になってしまいましたね。原作とファンを愚弄するにも程があります。中田秀夫は万死に値するでしょう。これは単純に原作のキャラクターと設定を借用してつくった“別物語”に過ぎなく、ただそれ以上でもなく、それ以下でもありません。その作りこみの浅さたるや見るも無残…みなさんお馴染の一般的邦画レベルです。見て損した、金返せ、全国1千万の怒号が聞こえてきそうです。ニアがタイ人ってそんなあんた…。しかも、ナンチャンなんて…ギャグだろ? [映画館(邦画)] 2点(2008-02-11 20:39:39) |
15. プレデター
《ネタバレ》 クラシック。プレデターが他のクリーチャーと異なる最大の点は、文明を持つ、ということであろう。文明が限界まで到達すると、「狩り」という原始的な欲求に立ちかえる、という設定がすばらしいではないか。エイリアンが人間を根絶やしにするまで攻撃・繁殖をやめない点で純粋にあい入れない「反・人間」「反・社会」の存在であるのに対して、プレデターは儀礼的に異文明・異種を殺戮・収集するが、それはあくまで儀礼的な振る舞いであって、逆に言えば、狩る側・狩られる側として本質的に「共生共存」が可能な存在なのである。後に『AVP』でエイリアンによる通過儀礼が描かれるが、監督の談によれば、異星にハントに単身やってくるプレデターはまだそういった成人にすら満たない“子ども”のプレデターでしかない(ならば最後意外にあっけないのも合点がいく)。SFの魅力に尽きない作品である。 [DVD(吹替)] 10点(2008-02-09 16:09:48) |
16. デジャヴ(2006)
《ネタバレ》 まさかこんなトンデモ展開になるとはね…。多くの方が書いていますが、最初は良かった。後半はギャグですよ。タイムトラベルはやっちゃだめなんだよ、だから。 [DVD(字幕)] 5点(2008-02-09 15:38:20) |
17. 魁!!男塾(2007)
《ネタバレ》 原作を愛する者ならば、まずこれを実写化した「男意気」を称えねばなるまい。あれこれ些細な原作とのミスマッチを嘆いても仕方ない。金と尺は限られているのである!Jや雷電がいないのも、飛燕が不細工でも、赤石が噛ませ犬でも、エキストラがおっさんばかりでも、桃と伊達の戦いが単なる喧嘩アクションになってしまっても、だ。その中で、桃、富樫、江田島、秀麻呂、鬼ヒゲ等かなりのキャラクターがはまり役だったのではないか。逆に許せんのは虎丸である。気は優しくて力持ちなのが、虎丸ではなかったのか?300kgの吊天井を1年以上ひとりで支えていたのが虎丸ではなかったのか?それが山田弟だなんて、ちゃんちゃらおかしくて笑っちゃうぜ。原作で最後にメンバーに参加して、桃を一号生筆頭として送り出すために、自慢の怪力で月光と心中する姿に感動したんだよ、読者は。そこは個人的に読み違えちゃならないところだった。あえて嘆くとすれば、そこですな、本当なら10点あげたいけど、マイナス1点。 [映画館(邦画)] 9点(2008-02-09 15:31:58)(良:2票) |
18. サイレントヒル
《ネタバレ》 ゲームで慣れていたせいか、そこまで怖さを感じず。逆に言うと、ゲームが怖すぎですよ。敵キャラもかなり忠実に再現してましたけど、ゲームじみすぎていてリアリティーが無いんだよなぁ…。貞子のほうが怖いっスよ。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-27 22:01:00) |
19. 再会の街で
《ネタバレ》 アダム・サンドラーという「役者」を初めて評価するに到った。物語もいい。おそらく劇場予告版で、音楽をヘッドフォンでききながら、完全に自分の世界の中で、夜中のニューヨークをスクーターで駆け抜ける、あのシーンでやられてしまって実際に劇場に足を運んだ人は多かったのではないか。期待のシーンは、すこし短かったけれど、やはり非常に美しい。911への言及はこの映画の良し悪しには関係ない。交通事故だろうかがなんだろうが、たまたまチャーリーをあのように追いやった原因を直近の実例に拠っただけのことである。問題は一度社会の<外>に出てしまった人間をどのようにして<社会>のなかに引き戻すのか、そもそも引き戻せるのか、引き戻すべきなのかという一連の問題である。チャーリーはチャーリーの時間を生きている、というあの判事のセリフは鳥肌ものである。上への直接的な答えは「誰も出せない」のこそが答えだ。関係するものたちはともにそれぞれの時間を生きることしかできない。そして、それでいい。うーむ、自分の生活、考えちゃいますなぁ。 [映画館(字幕)] 8点(2008-01-15 08:53:09)(良:1票) |
20. ボーン・アルティメイタム
《ネタバレ》 おもしろい。ボーン君、強すぎるよ。完璧すぎる。ただこうも強すぎるヒーローよりも、やっぱりマクレーンやバルボアのような弱いヒーローに強い共感を覚えてしまう。本作でボーンの暗い過去が明らかになるが、それでも「すごい」とは思っても、「共感」とは性質を異にするなぁと、感情移入の問題として。映画としてはこれ以上ないエンターテイメントですね。モロッコの町並みが美しい。 [映画館(字幕)] 7点(2008-01-01 20:39:57) |