1. ダイナー(1982)
《ネタバレ》 誰にでも青春の終わりは来る。その時期を延長したくて「責任ある大人」になり切れず、だらだらとつるんでいるのよねこの5人組は。気の置けない生暖かな友人関係がうらやましい。 それぞれ抱える悩みはあるのだけど、あまり深刻にならないのは米国がイケイケだった年代背景だからか、あるいはチャラ男M・ロークのフットワークの軽さのせいか。 個性的な役者を集めてキャラ立ちさせて、描写するペアを変えながら話に化学変化を起こさせる監督の映画作りの巧さ。過剰なノスタルジーを避けてからりとしてるのも好印象でした。 男同士のノリに女は同化できない、という普遍の事実。しみじみと首肯する次第です。嫁になる相手に自分の趣味問題をテストするなんて、エディの結婚生活のこれからには不安しかないけどな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-04-17 23:14:59) |
2. ニトラム/NITRAM
《ネタバレ》 実際に起きた事件で、実在の犯人の名MARTINを逆さ読みしたのがタイトルなんだとか。 こんな話を聞くと出口がなくてやりきれなくなる。 ニトラムの犯した罪は裁かれるべきだけど、知能レベルの低い彼をこの行いに追い込んだと思われる原因が見当たらないんですよね。 両親は精一杯やっていたように見受けられるし、篤志家の存在などは普通に願っても得られないレベルの僥倖でしょう。ヘレンはさすがにフィクションかと思ったけれど、彼女もちゃんと実在したらしいです。 ヘレンの死や事件の犠牲者を出さないためには何ができたのかしら。ニトラムの母を演じたジュディ・デイビスの疲れた顔。中盤以降は息子に対して遠慮がちになっているその辛さがぐさぐさと刺さって切なかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-04-12 23:35:45) |
3. ビフォア・サンセット
《ネタバレ》 まさかの9年経ってからの「半年後」の答え合わせとは。いやあ・・、そうだったんだ。 9年分の熟成効果と言いますか、前作よりも渋みが増して良い仕上がり。もう「知らないカップル」ではないからかもしれない。 時を経てジェシーは“倦怠期気味の家庭持ち”になってるしセリーヌは独身をこじらせ気味。二人とも実年齢どおりに顔に年齢が刻まれているのが説得力半端なかった。 前作は一日あった二人の時間が今回はなんと1時間もない。そんな短尺を一本の映画にするにはイベントが少なすぎるのでは、という心配はもちろん無い。今作も会話のみだから。そして聞き入ってしまった彼と彼女の物語に。9年前綺麗だった二人がそのあとの年月をどう過ごしてきたのか。今どう暮らしているのか。気持ちは親戚のおばさん。 9年前に再会できていたらこの二人の関係はどうなっていたでしょうね?映画観た皆に聞いてみたい。 そしてまたもドラマの続きについてボールをパスされちゃった。上手いなあ。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2025-04-10 23:38:38) |
4. 恋人までの距離(ディスタンス)
《ネタバレ》 これは凄く攻めた脚本。男女の会話だけで一日分の時間を見せるのだから。あまりに何も起こらずしゃべってばかりの展開にたじろいだ。エリック・ロメールだってもう少し事件は起きた。でも観られた。なんだかんだ引き付けられたのは、E・ホークとJ・デルピー両者の役者の力とウィーンの美麗な街並みのおかげ。 そもそも知らんカップルのデートの様子など大方の人間が興味ないでしょう。個人的に恋愛モノで刺さる作品少ないし。でもイーサン演じるジェシーのアメリカンな熱の上げっぷりがリアルで微笑ましく、ジュリー・デルピーがもうとても綺麗で。立ち姿からきらっと輝く彼女は眼福でしたので、とりあえずこの二人に付き合うか、という気持ちにさせられました。 二人とも中途半端に大人な年齢なのですね。十代のように頭に熱がバーッと上がって恋愛まっしぐらにもなれないし、人生の苦い展開をちょっとずつ経験してもいるので今この時の感情に今後を委ねるふんぎりもつかない。 二人揃って相手の気持ちを量りつつ時間は過ぎて、さあどうするのとなった時にはお話は終幕。“その後”を観客に引き渡した粋なエンディングでした。観る者が100人いれば100通りのその後がありそう。 映像が大変キレイです。二人がたどったコースをもう一度振り返る数ショットも余韻があってハイセンスなのですが、そんな場面にあっても「公園に空き瓶とグラスを残していくなや」と思っちゃったワタシはやっぱり恋愛映画に向いてないのかも。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-04-06 18:47:27) |
5. ブラック・フォン
《ネタバレ》 安いホラーかなと根拠なく値踏みしての鑑賞だったけど、これがなかなか良く出来たジュヴナイル作品でした。 主人公のメイソン君がちょっと陰のある魅力的な15歳(くらい?)で、その妹がまた健気で肝っ玉座ってて大変好ましい。 誘拐された先でも、観る側の嫌悪感を掻き立てるような悪趣味な怖がらせをしない演出が好印象。友人や、街の不良先輩らの手助けを得てギリギリの環境下で心の成長を遂げる主人公が瑞々しくて、まさにジュヴナイルの世界線。 冷凍庫を裏からぶち抜いてもねえ表の扉がかんぬきではねえ。まったく不良ってバカなんだからもっと有用なアドバイスをしてちょうだいよ、とあの場面ではワタシも主人公と一緒に泣いてしまったがまさかラストに効いてくるとは。舌を巻いてしまいました。 友情と勇気で成長するお話ということで、そう少年ジャンプみたいです。もっとずっと暗めでえげつないですけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-04-05 23:19:46) |
6. プライベート・ベンジャミン
《ネタバレ》 全編アーミーコメディ路線で行ってほしかった。この映画は二等兵スタイルの、目の大きなゴールディの仏頂面写真がそれはそれは印象的で。観る側はその路線を期待するし、中盤まではゴールディ・ホーンもベンジャミン二等兵として大いに活き活きしているのだけど。 女が自我を確立し表明するのに結婚という装置が必要という発想が、もう古い映画なんだな。 ゴールディ・ホーンだから客を呼べた。もっといい脚本だったら時代を代表するコメディになれたのに。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-03-27 23:19:06) |
7. ザ・レポート
真面目な作品。やや(かなり)退屈。 でもダンのような人間がいることに米国の人材の豊富なことを感じる。それはもう感動的なまでに。 近頃はまるで今までと違う国を見ているようなアメリカをまだ信じたい気持ちがあるのは、あの国にはたくさんのダンがいるのだから、ということが大きい。 アダム・ドライバーがハマリ役です。彼の好演がなければこの平板な脚本に付き合うのはかなりキツかっただろう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-03-26 23:02:52) |
8. セイフ ヘイヴン
《ネタバレ》 この監督らしい、心の通い合い描写の丹念なこと。丹念ではあるけど、どうも合わなかった。訳アリそうな女と子持ちのシングルファーザーの恋バナだけどまあ陳腐。 主演二人はキレイな顔だけど今ひとつハリウッド俳優としてのオーラが乏しくて引き込まれず「どこかの知らないカップル」どまりに感じ、なんかこの二人の行く末はどうでもいいやと思っちゃった。 そもそも恋愛話よりはサスペンス部分の方に興味を持って観始めたので、こちらサイドの雑なつくりにはがっかりです。あるわけないじゃないか現役警官があんなムチャクチャ。それに人同士の心理描写に注力するはずの監督が、この暴力夫とヒロインのいきさつについてはほとんど台詞説明で済ますてのもずいぶん手抜きではないですか。 すっかり冷めちゃったのでラストの種明かしのところもいやあ、盛ってきたなあ・・としか。合わないなあこの監督とは。良い人なんだろうけど。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2025-03-18 23:21:05) |
9. フーズ・ザット・ガール
当時大ブレイク中のマドンナに当て書きしたようなキャラクターと、よくある筋書き。あんまり面白くない。 マドンナは人気絶頂にあるスターの輝きを放ってはいるけれど、やはり女優ではないという感じ。 ヘアスタイルとかファッションとか濃い目のメイクとか、マドンナ単体を売り出す演出で手一杯で話はスカスカだし、マドンナも役を演じているというよりは彼女そのもの。ただのアイドル映画。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2025-03-17 23:19:16) |
10. ドント・ウォーリー・ダーリン
《ネタバレ》 この世界線が崩れそうになった時、アリスの夫が主張するんですよ「ここだったら僕らは完璧だ」って。50年代の、アメリカがグレイトだった時代を模した妙にペカペカした世界が。君にとっても理想の生活だろう?と。 びっくりしちゃうな。たとえ激務でへとへとのドクター職であろうと、アリスは自分の人生を生きていたんだよ。 自己決定力を取り上げられてもその安寧に甘んじられる人間とそうでない者といて、前者はアリスの夫でアリスは後者だった。なんでこの二人がカップルでいられたのかと不思議に思うくらいだわ。アリスの懐が深かったからだろうな ヒモ男を養うくらいには。「ドンウォーリー・ダーリン」て言ってくれて。 見ていた世界の皮がべろんとめくれて裏返ったら、仲の良い夫婦に見えていたのはエゴ全開の無能男とその犠牲になった女だった。なかなか衝撃で胸の悪くなる仕掛けでありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-03-13 23:28:23) |
11. クロスロード(1986)
《ネタバレ》 中盤まではすごく素敵なロードムービー。口八丁なブルースマンじいちゃんのキャラも良いし、ラルフ・マッチオの青臭い一生懸命さで理想を追い求める姿も良い。女の子との別れは大切で必要な経験値。 しみじみと滋味あふれるブルースの調べも心地よく、日銭を演奏で稼ぎながら過去を辿る二人の歩みには没入できるものがありました。 この映画の評価が割れるのは、やはり後半の突然のファンタジー描写がそれまでの空気感と全然違っちゃってるからでしょうね。 出発点の「悪魔との取引」がそもそもリアル味の薄い話しではあるのですが。制作陣もこれでイケるのか半信半疑だったりして。 劇中曲がブルース一本で来てたのに、対決シーンはロックだったりクラシックだったりしてんのにも「これでいいの?合ってる?」と思ったなあ。やっぱりちょっと他の展開はなかったのかしら。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-03-11 23:11:49) |
12. ジョン・ウィック:コンセクエンス
シリーズ4作目にしても揺るがぬコンセプト。数多の人間がゲーム画面のように派手に散り、演出から舞台設定から全てがサバイバルアクションのため。いかになぎ倒すか蹴散らすか、どの角度で撮れば効果的に人が吹っ飛ぶか。この熱意、熱量の大きさもう脱帽。 けれんみと犬。この辺の原点回帰も変に律儀。 観てるだけで体力使っちゃった。疲労した頭の片隅で「真田広之がいなくなったら美しい剣技を誰が受け継いでくれるのかなあ」などと考えていました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-03-06 22:48:33) |
13. モガディシュ 脱出までの14日間
《ネタバレ》 政情不安の国っておっかないなあ。うっかり大使館も置けないなあ。 韓国もダイナミズムあふれる経験が多いねしかし。ここ半世紀ほどを眺めても映画のネタになる実話が尽きない、というか。 脱出モノのセオリーどおりの安定したハラハラ感な作りで上手いです。隠れる「静」と銃撃戦を展開しながら逃走の「動」。そこにかの国ならではの事情、「北」も絡んできて話に厚みを持たせます。「あの人たちって素手で人を殺せるらしいわよ」とは韓国側の大使館職員の台詞。北に対する韓国の見方をちょっと垣間見た一瞬でした。 もっとも、北とのあつれきは若い男二人が取っ組み合いする程度の描写止まり。政治レベルのネタは描けないことが多かったのかも。 お金次第で動く現地警察、人助けする余裕の無い他国の大使館、撃ってくる反政府ゲリラ。リアルなその場の事情は経験者ならではの生々しさでした。 リアルといえば本を車体に貼り付けて防弾にしようというアイデア!いかに現場が切羽詰まっていたことか。ゴリラテープ何巻き使ったのかなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-03-03 22:59:44) |
14. 浮雲(1955)
《ネタバレ》 名作との誉れ高い本作だけど、苦手なジャンルでした・・。 誠意のセの字もない究極のダメ男と、口が攻撃的な割に自己決定力の乏しい女のぐだぐだな関係。離れたのにまた会いに行って相手をなじって別れる。このパターン何度見せられたんだろ。 富岡はまず間違いなくゆき子がいなくても大丈夫。ゆき子ねえさんにしっかりしてほしい。自分を大切にしてほしい、とはるか後輩は思いましたよ。あれだな、彼女と友人だったら夜中に電話してきて長々と富岡との愚痴を聞かされるやつだな。言いたいだけだからこちらの助言など聞きやしないの。 なにしろ画が暗く貧しくゆき子が終始不機嫌なものだから高峰の美貌も半減。富岡がせめて陽性のキャラだったらな。 この時代の定番の一途なヒロイン物なのでしょうが、ワタシは観てるのがちょっとキツかった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-03-01 00:00:13) |
15. ベートーベン
犬映画って当たりますよね。犬可愛いもん。 セントバーナードって大きいなあ。知ってたけど冒頭の子犬が数秒で巨犬になってるのに一番笑った。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-26 23:04:41) |
16. おもいでの夏
《ネタバレ》 高1って言ってたから15~16才かあ。男の子って小さい頃からおばかさんでそこが可愛いけど、思春期になってもおバカなままなのね。なにしろ性のことで頭がいっぱいのハーミーと友人ら。医学書(?)を書き写したり、同世代の女の子とのイタいデートや抱腹絶倒の薬局でのひとコマなど若い(青い)エピソードがいっぱい。 笑わせてくれるとこがいっぱいあるけど、一方で大変にロマンチックで美しい映画でもあります。切ない旋律の音楽と輝く海辺と年上の女性。 思いがけず彼女への思いを遂げることになった夜の場面は悲しみと衝撃とが合わさった、静謐な美しさがありました。空回りしているレコードの針を戻し、煙草の火を消すハーミーの所作がなんともいえず良かった。彼女への気遣いがこんなところからも伺えて。 そして夫が戦死したとの報が届いてすぐにあのような展開になるのか、と訝しく思う向きも多いようで。でもたとえばあまりのショックと混乱の中、誰かに頼りたいと強く願った時にドロシーが年下の男の子に身を委ねるのはあの場合アリよね。そう思わせた演出とJ・オニールの演技力が素晴らしかったですねえ。 美しいということは儚いこと。すうっと消えてしまって永遠にハーミーの女神となった年上のひと。幕切れも完璧。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2025-02-21 23:10:58)(良:1票) |
17. バンド・ワゴン(1953)
《ネタバレ》 ミュージカルは苦手なのであまり観ないです。なのでアステアはともかく、シド・チャリシーをこのたび初めて知りました。 今さらの今頃になって、え、彼女なんていう名前?と鑑賞中は興奮ぎみでした。なんて優雅な身のこなしでしょう。脚線美はもちろん、身体のしなやかさ、回転のキレイさ。アステアと公園で踊る場面はクラシカル・ダンスの美の極致でした。 ストーリーは超シンプルでお決まりの大団円。それにメインキャストが全員白人男女で黒人俳優の役どころが靴磨きと警備員のみ、というのもなかなか強烈に50年代を感じさせます。 コンプラ意識のズレは痛いほどだけど、明るく楽しくダンスのレベルもハイクオリティなミュージカルの王様の地位はしばらく譲らないでしょうね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-18 23:24:50)(良:1票) |
18. ザ・コンテンダー
《ネタバレ》 陰謀ありスキャンダルありのポリティカルドラマ。伏線の張り方とか終盤にヒールをやっつける展開とか、よくできた娯楽作ではあるけど。でもちょっとあちこちすとん、と落ちなくて楽しめなかった。 第一にあんな「ポルノな映像」(出演者の弁)が出たら、それも自身が無関係ならまず否定するべきでは?「男だったら在学中に何人もの女と寝ても問題にならない」から、女である自分もあえて問題化しないという姿勢でしたが。いやあれが男だとしても有権者は嫌悪感を抱くと思うけど? それに冒頭からこの副大統領候補議員のひと、職場のデスクで夫と行為に及んでるんだけど。(夫が)尻出した格好で電話取ってる画ヅラにもうドン引きしました。アメリカってこうなんですか。ブリッジスの大統領役も品が無くてなんだかなと思ったけど、現実にはトランプが再選してるんだなこれが。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2025-02-13 23:26:40) |
19. ヒトラーのための虐殺会議〈TVM〉
《ネタバレ》 説明なしに物語は始まる。 湖畔の瀟洒な屋敷に顔を揃える高官ら。議長のもと会議は進行する。各担当部署の代表らが集まったらしく、縄張り争いがあったり好かない奴への小さい嫌がらせがあったり、とサラリーマンのそれと何ら変わらない。 対象物のあまりの多さに輸送方法でまず一山あり。だがそこは有能な執行武官が良案を出してなんとかパス。 留め置く場所をめぐって「ウチばかり負担が多くないか」と公平分担を主張して引き下がらない管轄部署がいれば現行法の遵守を強く訴える役人もいる。 任務遂行に当たるドイツ軍人のメンタルに配慮する役人もいて、一見福利にも目配りができている。 場が紛糾すれば一旦ブレイクを取り、その間はあちこちの固まりにて行われる根回し。 ちょっとの意見の相違があっても全員がミッションの完遂に向けて意志は一つにまとまっているのだった。有意義な会議である。一見。 が、しかし。有能で効率的ゆえに観ているこちらは震えが止まらない。イヤイヤイヤ、なんでそんなに冷静かつ明瞭に論旨を述べるの。 誰も突っ込まないんだ。この場にいるんだから当然だけど。 こんなんなってしまうんだろうか。戦時なら。任務なら。怖すぎる。人間が。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2025-02-12 23:46:56) |
20. RRR
《ネタバレ》 濃い、くどい、過剰。インド映画の特質を際限まで盛り込んだ3時間。人の心の機微というものを、例えば小津映画やミニシアター系作品が何層にもなって構成されていると描き出したのに対し、本インド映画の人物らは三種類(怒り・喜び・悲しみ)ほどしか感情を発露しないのですね。単純明快、これこそインド映画の不文律。 加えて何事も大きく描くのでアクションシーンは人体としてあり得ないほど跳躍するうえ、スタミナは続くしイギリス人統治者らの極悪非道ぶりは悪鬼のごとし。 勧善懲悪を柱に友情や民族独立の大義までぶっ込んで実ににぎにぎしい。ご都合主義という言葉がかすむほど圧倒的な「我らの英雄が勝てば万事オッケー」な映画です。 これだけのボリューム。3時間の長尺をもってしても飽きさせない猛烈な展開に、制作陣の強靭な体力を感じました。私は終盤へとへとでしたが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2025-02-08 10:29:37) |