181. サイゴン
「プラトーン」で一躍世界の脚光を浴びたウィレム・デフォーのオスカーノミネ後第一作と考えれば、再びベトナムで活躍する正義と苦悩のデフォーが見たいぞ、という世の中の期待は充分に満たした作品と言える。純然たるB級サスペンス+異国情緒の香りづけは当時の一つの流行りでもあり、「プラトーン」で憤死したエリアス軍曹のもう一つの活躍という以外ほとんど見るべきものもないのだが、あ~エリアス軍曹元気でやってるじゃん。という妙な救いが感じられてファンにはけっこう嬉しい作品。やはり85年の「ホワイト・ナイツ」でプチブレイクしたグレゴリー・ハインズとのカップリングというのも、いかにも季節モノ企画モノという開き直りが感じられてむしろ清々しくさえ思える。終戦直後のサイゴンで起きる軍幹部絡みの殺人事件を探る捜査官と、現地でボランティア活動に励む美しすぎるヨーロッパ人尼僧との恋、安っぽい仕掛け満載の究極のB級サスペンス。ヘタな重厚感や大作フレーバーをまぶさなかったという点で、個人的には非常に高く評価したい。 7点(2004-01-17 11:43:10) |
182. ライト・スリーパー
「俺の運は尽きたのか?」自問自答を繰り返しながら、占い師にまで頼るようになった中年の麻薬密売人が、仲間と仕事と愛する女の全てを失おうとする数日間を淡々とシビアに描いたポール・シュレイダーの最高傑作。人生の大半を無為に過ごし、裏社会と手を切りたいと願いながらもそこにしか居場所を見つけられない男は、過去を愛することも打ち捨てることもできず、存在することへの意義を何ひとつ見出せずにいる。別れた妻の留守番電話のメッセージを、ラジカセを抱えて何度も何度も繰り返し聞き続けるデフォーの背中がいい。38歳、人生をやり直せるデッドラインを三歩踏み越えた男の嗚咽が、静かに、だが例えようのない迫力で美しい映像の下から漏れ伝わって来る。浮き沈みの激しいポール・シュレイダー組だが、この作品では全員があ・うんの呼吸でここでしか描き出せない空気を伝える。それぞれが完璧に居るべき場所を見つけている、ファミリーならではの結束の固さが独特の雰囲気を漂わせることに成功した。地味ながら珠玉の傑作と言って良い。何度観ても、珍しいくらい飽きの来ない作品でもある。 9点(2004-01-16 23:55:23) |
183. ディープ・インパクト(1998)
今頃になってこんな映画を観ている私も私だが、公開当時の著しくアタマ悪そうな宣伝と評判に全く食指が湧かなかったのは事実。実際手に取ってみたらたかだか5年でこうまで古臭くなってしまうものかと驚き、使い捨てられて行く娯楽作品の運命を見た気がした。仕掛けとしては既に目新しさはまったくないのだが、空前絶後のスケール感の中で、異常とも思える豪華スターキャストを揃えた上、個々の家族関係を丁寧に描き出したことで正統派たらんとする作り手の信念が感じられて快かった。あまりにも人間関係を丁寧に描きすぎたため、ところどころでSF超大作を見ているのか「ペイ・フォワード」を見ているのかよくわからなくなったりしたが、それはそれで一つのノリが形成されており大きな違和感にはつながらないのが凄い。子役出身のイライジャ・ウッドがこういう風に要所要所でタイミング良くおもしろい役に当たっているのも異常な幸運だと感心。やはりリーリー・ソヴィエスキーの存在感は絶妙で、既に大物ぶりを発揮していますね。ニュースキャスター役のテア・レオーニの衣装が徹頭徹尾ダサかったのがやたら気になりましたが、女性監督が硬派を気どりすぎた結果でしょうか。あのダサさが微妙にリアルではあるんですが、せっかく彩りとして登場する以上はもうちょっとマシなファッションで楽しませて戴きたかったです。特に後半で着たきり雀になっているあの凄いサイズの合わないシャツとワイドパンツ、あの衣装の前にはどんな感動もふっ飛んでしまいます。あれだけでも一見の価値はあると思います。 8点(2004-01-14 07:27:08)(笑:1票) |
184. ミスティック・リバー
遺憾ながら、前評判とは全く裏腹にごく普通の地味なサスペンス映画でしかなかった。映像は重厚、演技陣は優秀、シナリオも良く練り込まれていて何一つ問題はないのだが、美しすぎる映像と音楽、演技者達の演技の素晴らしさにストーリーが全然追い付いていない違和感が大きい。これだけの重厚感で盛り上げておきながら、あのオチはないだろう、というのが率直な感想。のっけからショーン・ペンの絶叫する「She's my daughter!」に涙を絞り取られ、予告編で何度も観たはずのティム・ロビンスの苦悩に振り回され、マーシャ・ゲイ・ハーデンの混乱に翻弄され、実に役者の存在感が際立つ作品なのであるが、後に残されるのは人生観もへったくれもないベタベタのミステリー。要するに偶然が巻き起こす運命のいたずらについて、過去を仮定法で回顧する形で「誰の身にも起こり得たこと」として描きたかった意図はわからなくもないが、物語のたどり着く結論が結局人生を変え得るのは教育でしかないという言われ尽くしたメッセージであることの不毛さに脱力した。前半の展開の速さに、「スリーパーズ」の失敗をここで是正しようとしているのかな、という妙な納得はあったが、「スリーパーズ」で児童虐待に励んでいたケビン・ベーコンに、大学教育によって低所得層からの脱出を果たした「勝ち組」を割り振ったのは冗談としか考えられない。クリント・イーストウッド御大は既に1作1作を遺作のつもりで撮っているのに違いないし、それだけの気迫の込められた作品ではある。限りなく良い評価をされる可能性の高い作品だし、おそらく賞レースでも沢山の賞を手にするだろうが、御大と呼ばれるほどの巨匠になってから傑作をモノにする監督が極めて少ないのもまた事実である。イーストウッドよ、誰もあなたに厳しいことが言えない状況は理解できる。でもあなたは決してハリウッドを一括している場合ではないと思うよ。私はあなたのファンです。 6点(2004-01-13 06:44:41)(良:4票) |
185. 古畑任三郎スペシャル すべて閣下の仕業 <TVM>
久しぶりに古畑任三郎が観れる、ってだけで点が甘くなっちゃうところがあるんですよね。まあ、任三郎の元気な姿が拝めたからいっか、みたいな。今泉君の不在はたしかにえらく寂しかったですね。彼も任三郎を袖にするほどエラくなってしまったんでしょうか。かつてこの作品でスターダムにのし上がったにしてはあまりにも寂しい展開ですね。全体的に懐古趣味でしかあり得ないのでディテールは大目に見ますが、ラストのオチもシリーズポリシーに違反してる気がするし、個人的には「これで本当におしまいかよ。寂しいぞ~~~」と泣いた第2シリーズの最終回で終わっておいた方がポイント高かったです。これ以上やってるとドリフの大爆笑ノリになって行く気がする。古畑任三郎とルパン三世は、会いたいな~、と懐かしがってるぐらいがちょうどいいんです。 6点(2004-01-12 15:00:35) |
186. ビリー・バスゲイト
全体的にまとめ切れてない散漫なイメージが。D.ホフマンはキレまくってて大物の威厳のカケラもないし、あれじゃ末端のチンピラですよ。どう考えてもチンピラ役のブシェミに食われちゃってるようじゃダメでしょう。ニコールの悪女ぶりも中途半端な感じだし、やけに脱ぎっぷりがいいわりには濡れ場もナシ。トゥッチのああいう役って初めて見たんですが彼は怖いですね。どうでもいいけどこの作品のD.ホフマンって、ちょび髭を剃り落としたアドルフ・ヒトラーにそっくりですね。唯一、ブシェミが珍しくシリアスに徹しているのと、同じく珍しく(初めて見る)正面からのアップがあるので3点。完全に空振りました。 3点(2004-01-12 10:56:13) |
187. 花園の迷宮
これねえ、バカつまんないんだけど私はけっこう好きでしたね。耽美主義と言い張るには美しさに欠けるし、ミステリーとしては破綻しまくり、あるのはもうただひたすらノスタルジーのみ、という内容なんですけど。たぶん内田裕也の背中に弱いんだナ。内田裕也ってある種の女性にはどうしようもなく魅力的だったりするのですが残念ながら不特定多数にウケるタイプではないと思うので、裕也さん好きっ!っていうアホ以外はこれ見ても苦痛以外の何物でもないと思います。私は裕也さん好きっ!派なのでこの映画は嫌いなんだけど妙に好きです。つまんなさが芸になってるし。映像的にも日本映画にありがちな一人よがりの思い込み系、大物がやったら「スタイリッシュ」と言われかねないアレです。でもこういう突き抜けたこだわりを感じる映像って最近ではなかなか観られないので私はけっこう好きです。 5点(2004-01-11 13:23:41) |
188. コクーン2/遥かなる地球
前作に心酔しちゃって、あの感動をもう一度!とか素直に思ってしまった私のような者ならともかく、そうでない人には特にお勧めはできません。が、前作のコンセプトは見事に引き継ぎ、かつてないほどベタな焼き直しをやっているので、前作の余韻としては充分に楽しめる内容ではあると思います。それ以上のものをわざわざ期待する人もいないと思うのだけど、まあこのぐらいでいいんじゃないですか。 6点(2004-01-11 13:17:19) |
189. 告発の行方
作品そのものよりも、前評判の方が衝撃的すぎて本編の方はちょっと小ぢんまりしてしまった感じ。この作品に出るまでのジョディ・フォスターがいかに追い詰められていたかを知っている年代にとっては、起死回生のチャンスに賭けたジョディの捨て身の体当たりが痛々しくてちょっと見ていられないものがあった。話は暗いし、後味もよろしくない。結果的に、ジョディ・フォスターという女優が生き残れたからこその価値はあっても、それ以上のものはほとんど何もないと言って良いと思う。 6点(2004-01-11 13:14:39) |
190. ミスティック・ピザ
田舎町を舞台にした人間模様を淡々と描くのが当時の流行りでもあったわけで、そういう中では突出したところもないけど普通に上手くまとめた無難な作品ではあると思います。ジュリア・ロバーツはやっぱりこの後ブレイクする要素は充分あったと思いますし、ほとんどエキストラ並みの扱われ方だったマット・デイモンとか顔ぶれはさりげなく地味豪華です。なんとなく地味で穏やかでちょっぴり心暖まりたい時にはこういうのも良いのではないでしょうか。はっきり言って女性向けだと思います。「フライド・グリーントマト」とか「マグノリアの花たち」とか、あのへんが好きな方なら見ておいて損はないと思います。 8点(2004-01-11 13:10:38) |
191. デッド・カーム/戦慄の航海
何がコワイって、サム・ニールをどこまで信用していいのか?ってところが最後まで読み切れないところがストーリーと無関係にコワかったです。そういう意味では、キャスティングで非常に成功しているレアな例だと思います。23歳のニコール・キッドマンはこの世のものとは思えないほど美しいですし、これじゃあオーストラリアにおさまり切れないのも無理ないなあ、と素直に驚嘆できます。海上を舞台とした密室劇ですが、やや狙いすぎの感はあるものの仕掛けもきっちり作ってあって悪くないですし、サスペンスとして秀作の域には余裕で達していると思います。個人的には非常に好きな作品です。ちなみに5.1CHのサラウンドスピーカーを入れた時にこれを観たら心臓バクバクするほど怖かったので試運転にはもって来いだと思います。音作りがけっこう凝ってました。 9点(2004-01-11 13:06:52) |
192. フレッシュ・アンド・ボーン/渇いた愛のゆくえ
鳴り物入り~、でコケちゃったいい例ですね。話は暗いし、メグ・ライアンの陽性な個性は明らかに浮いている。後味も悪い。公開前にはかなり話題になった作品だったんですが、フタを開けてみたら意外性のへったくれもない全然楽しめないサスペンスでした。メグ・ライアンとデニス・クエイドが結婚してた頃なら、「どれどれ?」って観てみる価値もあったかも知れませんが、今となっては永遠に忘れ去られても誰も困らない作品だと思います。メグ・ライアンとしても、むしろ忘れてもらった方がよろしいのでは。 1点(2004-01-11 13:00:58) |
193. プレシディオの男たち
ずいぶん昔に地上波で放映されたのを見て「へ~けっこうおもしろいじゃん」と思ったことだけは覚えているのだが、10年以上たってみたらほとんど何も覚えていないところを見るとその程度の作品だったのだろう。たとえば私が最後に「カプリコン1」を観てからざっと10年は経っていると思うのだが、内容を思い出せなかったことは1度もない。そういう意味では、この映画ってたぶん、普通に面白いんだけど10年経ったら忘れちゃう映画、というのが正しい評価なんだろうな。でもメグ・ライアンはけっこう可愛かったような記憶があります。もう1度見てみようかな?と思うぐらいの面白さではあったと思う。 7点(2004-01-11 12:57:43) |
194. ジョー、満月の島へ行く
トム・ハンクスとメグ・ライアンの共演作品の中では唯一、見るに値すると感じる作品。思いっきりファンタジーなんだけど、「スプラッシュ」「ビッグ」とトム・ハンクス側から見て行けばきわめて順当な展開なわけで、このランクにふさわしいほどほどの安っぽさとウソっぽさ、普通にお約束通りのストーリーで最後まで安心して見ていられる。メグ・ライアンの1人何役とかは多くの方がご指摘の通り単に話題性だけで取り入れられたように思われるが、別に邪魔になってないしどうでもよかった。私にとってはトム・ハンクスの遺作。あくまでも売り出し中だった新進気鋭の若手女優メグ・ライアンが一連のトム・ハンクス主演のファンタジック・コメディに引っ張られただけのことであって、この二人をコンビ扱いにした目線で見ると確かにガックリさせられるものはあると思う。 8点(2004-01-11 12:53:32) |
195. 花嫁はエイリアン
隠れた傑作だと思っています。最初から最後まで飽きさせずにテンポよくつないで行くし、キム・ベイシンガーの宇宙人ぶりも見事。地球のことをな~んにも知らない美女というベタな設定でここまで見せてくれるというのは凄いことだと思います。ちゃんと笑えるし、ハラハラドキドキもできます。いかにもB級なタイトルのせいでちょっと引いてしまう人も多いかも知れませんが、たしかにビッグバジェットとは言えませんけどこれ決してB級じゃないですよ。ずっとブエナ・ビスタかと思っていたらコロムビア映画だったんですね。「潮風のいたずら」とか「ママのフィアンセ」とか、あのへんのディズニー映画が好きな人ならかなり楽しめると思います。 9点(2004-01-11 12:34:20) |
196. ビッグ
個人的には、この頃までのコメディ捨ててなかったトム・ハンクスは大好きでした。12歳の少年が大人の肉体を手に入れたらどうなる?という素朴かつシンプルなアイデアを、彼の体当たりの演技が上手く広げたと思います。ラストはしんみりと胸キュンできます。しかしまあ、周りの同年代のオトコたちを見ると、実はこの作品のトム・ハンクスなんじゃないのか?と思うヤツらが後を絶たない。 9点(2004-01-11 12:26:51) |
197. レインマン
特に言い立てるほどの欠点もなくソツなくまとめた感じだが、あまりにも教科書通りな感じがあって個人的には好きになれない。確かに心暖まることは間違いないのだが、このストーリーで心暖まらないヤツなんているのか?と考えるとわざわざ見るまでもないということになってしまう。「あなた人間でしょ?優しい心を持っているでしょ?」と尋ねられて否応なしに「うん」と言わされた感じ。でもそういう質問ってちょっとずるいと思う。 6点(2004-01-11 12:24:21)(笑:1票) |
198. ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ
安心して笑い続けられるコメディって意外と少ないのだが、この作品は珍しくきちんと最後まで笑い続けられるコメディ。マイケル・ケインという人は実に幅広く何でもやる人だが、コメディアンとしても全然イケてることを証明した。実はどらえもんに頼んでマイケル・ケインをあと20人ぐらい出してもらえば、同年代の男優は全員失業してもおかしくないほどの実力をこの人は持っていると思う。彼に比べればもう一つ当たりハズレの大きいスティーブ・マーティンもここでは水を得た魚状態で非常に活き活きとしています。それにしてもやっぱりマイケル・ケインって凄すぎる。 9点(2004-01-11 12:17:15) |
199. ハードロック・ハイジャック
すいません。この作品にココまで入れ込んじゃうのって私ぐらいかな?と思ったら意外と評価高いんですね!(人数は少ないですが^^;)とにかくキャスティングが凄いです。ブレンダン・フレイザーにブシェミにアダム・サンドラーじゃ、観るまでもなく素晴らしいに決まってます。個人的にはブレンダン・フレイザーってもう一つ二枚目なのかコメディアンなのかハッキリしないというか、ミイラ映画で主演張っちゃったところがイマイチ中途半端な印象なんですが、この映画では本気でバカやってて素晴らしい。相変わらずどこを切ってもアダム・サンドラーなアダム・サンドラーは言うに及ばず、実はさりげなくロックミュージシャン風ルックスだと踏んでいたブシェミはまさにビンゴでした。展開の情けなさ、「ローン・レンジャース」がそもそも文法的に破綻してるというネタ、ひたすら空回りし続けるマイケル・リチャーズ、何もかもが脱力系ギャグの条件を極めて高レベルで満たしておりアイロニカルなゴージャス感を煽り立てております。一度本気でコメディやってるブシェミが観たいぞ、という方にものすごくお勧めです。彼って本質的にはやっぱりコメディアンですよね。 9点(2004-01-08 00:11:20) |
200. ヤングガン2
クリスチャン・スレイター目当てで、とにかく彼が出ていれば何でもいいモードで観たわりには、意外な拾いモノという感じでした。面白かった。前作を観てなくて続編だけ観るというのは、普通に考えても面白いワケないと思いますので、続編だけを観てこれだけ楽しめたというのはかなり凄いことなんじゃないかと思います。ちゃんと単品として成立してるってことですから。顔ぶれ的にもテーマ的にも、どう考えてもそんなに面白そうな要素がなかったんですが、何も期待してなかった分お値ごろ感が高かったということでしょうか。こういう作品って前作の方が面白いのがお約束なので、前作はかなり凄いんだろうな、と思います。観よう観ようと思いながらもう10年以上たっちゃったんですけど。この手の作品が今だにDVD屋の店先から消えないっていうのはよほどの傑作ですね。ある意味凄いなあと思います。 8点(2004-01-04 12:29:28) |