181. 第三の男
ジャンルとしてはサスペンスだと思うのですが、とても内面的に鋭い作品。特に女性心理の描写がえぐい。アンナに対して「ヤな女だなー」と途中までは思っていたのですが、結局アンナは、ハリーを愛していたのではなく、強すぎる自己愛から来るプライドを満たしてくれる男を要求していただけの、人を愛せない寂しい女なのだな、と哀れに思えた。 9点(2004-03-07 02:11:33) |
182. シティ・オブ・ゴッド
演出面はタランティーノやガイ・リッチーでよく見かけたようなものが多いのでさほどの衝撃度は無い。好きだけど。この映画の肝は、子供。可愛いだけが子供ではない。罪の意識もなく、ただ欲求に従って生きる残虐な子供たち。それを叱れる大人もいない。そんな救いようの無い世界にブスカペの満面の笑みだけが輝いている。 9点(2004-03-06 21:27:53) |
183. ストレイト・ストーリー
見る前のイメージをまるで覆さない映画。それでも節々のエピソードに深みは結構あった。進み方はゆるい方だけど、その割りには退屈しない。途中出てくる鹿を轢く女には、「俺はデヴィッド・リンチだ」という主張を感じた。 8点(2004-03-06 04:33:56) |
184. メルシィ!人生
笑いってのは、まず対象を冷ややかに突き放して観察することが必要で、この監督は実に人間をよく見ているなと感じた。社会に対する皮肉もある。笑わすための無理やりなシーンはあまりなく、あくまで自然な流れの中で笑いのツボをつかんでいる。実に緻密で計算され尽くした笑いだ。一つ気に食わないのは、同僚をからかって楽しんでたスカしたエリートっぽい男が何の災難もないところ。できれば世渡りのうまいやつに対する皮肉も盛り込んで欲しかった。 8点(2004-03-06 04:30:01)(良:1票) |
185. 天井桟敷の人々
昔の名作ってことで、前衛的でわけわからんかったらどうしよう、という不安を抱きながら見ましたが、かなり面白かったです。いかにもフランスらしく、自分の内面を理屈っぽく皮肉やユーモアを絡めてしゃべるしゃべる。白い男バティストの芝居、ギャランスの男に精神的に甘えず余裕を持って袖にする成熟した女っぷり。これらももちろん良いのですが、一番のシーンは2部で親分が伯爵に会いに風呂場に行くところ。傍観者である子分の顔にゆっくりと近づき、その表情で何があったかを伝える表現手法にしびれました。脇役にもそれぞれの味があり、時間の長さを感じさせない名作です。 10点(2004-03-06 04:23:07) |
186. 惑星ソラリス
作品全体に流れるひんやりした空気はとても好きですが、ムダなシーンが多いなーというのが正直な感想です。最初の方の道路のシーンとか。「2001年宇宙の旅」でもそうなのですが、なぜSF映画って、冷たい表情で乏しい感情表現をしながら愛や哲学的なことを語りたがるのでしょうか。感情あってこその人間だと思うんですが。こういう疑問が浮かぶこと自体、SFは性格的に向いてないんでしょうね。 3点(2004-03-06 04:15:13)(良:1票) |
187. サンセット大通り
ただただ哀れ。狂った女優が唯一救われたように見えるところがまた黒い。ジョーは自業自得かなという気もするけど、一番救われないのはアーティー。その後の結婚生活がうまくいくとも思えず、何気にひどい扱いだ。 8点(2004-03-03 18:13:30) |
188. 椿三十郎(1962)
殺陣が意外と少なくて驚いた。その分頭脳的な駆け引きが話の中心になっていて、じっくりと楽しめる。三船敏郎は立ってるだけで絵になる稀有な役者さんですね。 9点(2004-03-03 18:05:41) |
189. 街の灯(1931)
セリフが無くても、顔と動きに想像を付け加えるだけで全てが伝わる。ジーンとくるストーリーも、完璧なボクシングシーンも素晴らしいですが、やはりこの作品を名作たらしめているのはラストの娘の表情。あれこそ女性であり、人間だと思う。 10点(2004-03-03 01:52:23) |
190. チャンプ(1979)
子役のための映画。可愛すぎる。感動ボクサーものというイメージからは少し違った、情感たっぷりの細やかなドラマ。満点には何かが足りない気がするけれど、思う存分泣かせてもらいました。古い方も見たい。 9点(2004-03-03 01:47:39) |
191. マルホランド・ドライブ
《ネタバレ》 現実に絶望した女の、自殺間際の妄想だろうか。全部理解するのはあまりに難しい。 6点(2004-03-03 01:40:47) |
192. ボーン・アイデンティティー
前半の盛り上がりに比べてどんどん尻すぼんでいった印象。俳優たちが良かっただけに残念。特にヒロインの使い方が中途半端。早朝のパリのシーンは、張り詰めた寒さが伝わってきた名シーンだと思うけど。 6点(2004-03-03 01:38:52) |
193. レナードの朝
《ネタバレ》 このエピソードをわざわざ映画化しようとした動機が分からない。一度与えた希望を奪い絶望に叩き落すという厳しい現実。「アルジャーノンに花束を」にとても近いと思った。とても印象深かったのは、患者の気持ちを理解して投薬したはずなのに、目覚めた後の患者の気持ちに困惑する医者のジレンマ。それにしてもロビン・ウイリアムスの笑顔は反則だと文句言いたいほど良い笑顔だ。 6点(2004-03-03 01:35:26) |
194. 点子ちゃんとアントン
登場人物を単なる善人にせず、良い面も悪い面も両方持ってて色々悩んで生きているのだ、という視線がとても温かく感じられた。懐が深い。ラストの一言をあのタイミングで言えるバラック似の点子ちゃんに拍手したい。 8点(2004-03-01 03:31:13) |
195. 2001年宇宙の旅
眠くなる映画だという話を聞いていたのですが、そうでもなかったです。映像がやたらと綺麗なので、ぼんやりと眺めていたら宇宙にいた、という感じで。途中からはストーリーを追うのも考えるのもやめて、ただ「よくこんな変な映画が商品として世に出たものだ」と感心しながら見ました。とりあえずテーマらしきものを探るなら、同監督のいくつかの他作品にも見られる「狂気」かなと解釈しました。 9点(2004-03-01 03:25:33) |
196. ハンナとその姉妹
タイトルだけ見ると女たちのドラマかな、と思ったのですが、むしろ男のドラマでした。ウディ・アレンの映画のパターンである「男の情けなさ、だらしなさ、女のいやらしさ、計算高さ」がこれでもかとちりばめられています。中でも最高の人物は、リーのパートナーの男。あれほど情けない男はなかなか見られません。 7点(2004-03-01 03:15:50) |
197. バグダッド・カフェ
形容する言葉がなかなか見つからない不思議な映画。人が変わるためにはほんのちょっとしたきっかけが必要で、それが新しい友人との出会いならなお良いということかな、と。好きなシーンは、娘がおばさんの部屋に遊びに来るとこです。 8点(2004-03-01 03:08:41) |
198. リベリオン
設定の詰めが甘く、練りきれてない感が満載。しかしバトルシーンはかっこよく、甘いなりにも感情が規制された世界、という設定はとても面白いと思った。主人公が感情を取り戻していく描写も意外に細やか。組織内最強の男が裏切る、という展開も燃えるものがある。セーラー服反逆同盟を思い出させる白い制服が渋い。 7点(2004-02-27 22:16:21) |
199. 自転車泥棒
《ネタバレ》 見た後落ち込む、という予備知識を持って見ましたが、それほどではなかった。むしろ理不尽な社会に対する怒りや絶望をこんな昔から分かってくれてた人がいたんだ、と癒された。盗もうかやめようかを葛藤する終盤の演技が秀逸。 8点(2004-02-27 21:48:17) |
200. ブラス!
最底辺の人々が見る小さな夢。イギリス映画でこの手のものをいくつか見ましたが、何か好き。映像に凝り過ぎず自然に見せてくれるというか。内容で一つ気になったのは、結局男の理屈で女をねじ伏せて生活とか大事な問題をうやむやにしてしまっている印象を受けたところ。 7点(2004-02-27 21:44:27) |