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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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181.  この世界の片隅に(2011)<TVM> 《ネタバレ》 
日本テレビの2011年の終戦記念番組として8/15に放送されたものである。 原作の情感などは特になく、普通のTVドラマのように見える。安っぽいところや変なところは当然のようにあり、方言も恐らくアクセントが徹底していない。ただ「東京物語」(1953)以来の「ありがとう」だけは全員がそれらしく言っていたようである。 また原作の顕著な特徴である笑いの要素もそれほど目立たないが、「ミヨセンセーノハゲアタマ」はしっかり再現していた(細かく見ると「ネコ」が可笑しい)ほか、時計の「ボーン」という音をコミカルに使うなどの趣向はあったようで、また軽快な背景音楽が気分を和ませていた面もある。なおこのドラマ独自のユーモラスな場面として、周作とすずが二人でいるのを上官に冷やかされたのは微妙に可笑しかった。海軍さんはスマートで結構だ。 主要人物で省略されたのは「鬼いちゃん」くらいのものと思うが、このドラマで問題なのは、すずさんが原作のイメージと全く違うことである。それをいえば周作も水原も原作の面影がなく、そもそも似せるつもりがないのでこれで納得しろということかと思ったが、それにしても基本的に原作のキャラクターを前提としているため「ちいと足らん」とか「温いのう…」といった台詞に全く説得力がない。これは最終段階の人物イメージがこの女優ということだと思うべきなのか。ちなみに個人的には劇中のリンさんが好きだ。  物語の面では、「居場所」「見つける」「記憶の器」といった話題を2時間でコンパクトにまとめた形に見え、もっと独自性を出さなくてよかったのかと思うほどである。最初に重要事項を提示してしまうとか、回想場面などで原作の素っ気ないところを適宜補足しながらTV向けにわかりやすく作っており、意味的な部分の表現という点では文句をつける気にならない。なお玉音放送のところで天下国家に関わる台詞を義父に言わせていたのは自然で、ここは原作よりもこのドラマの方が好きだ(何を言わせたいにしても劇中人物1人に集約する必要はない)。 原作未読の人や原作ファンの人が見てどう思うかわからないが、個人的感覚としては意外に誠実に作られたドラマに見える(終戦記念番組なので真面目で当然だが)。原作に比べれば簡易版のようなものとはいえ、やはりこの原作者の作品を好き勝手にアレンジすることなど許されない、とこの時点で関係者も思っていたのかも知れない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-01-03 19:58:16)
182.  野菊の墓(1981) 《ネタバレ》 
原作では、政夫の家は矢切村(松戸から二里)、民さんの自宅は市川の町場にあるとされており、要は現在の千葉県松戸市~市川市内の話である。この映画では高い山が見えるので場所感がかなり違うが、そこは映画としての見栄え優先ということで構わない。 ヒロインはいま見ても非常に可憐で可愛らしく、こんな時もあったのだと遠い目になる。自分としてはデビュー曲(裸足の季節)以来のファンだったので当然のように劇場に見に行ったが、アイドル映画ということで中身にはほとんど期待していなかった。実際に序盤の雑巾がけのあたりで、ああこれはもう駄目だといったん観念したのだが、そういうファンサービス?はここまでで終わりになったのが意外だった。改めて見れば、演者の初々しさを笑いに転化して導入部のほのぼの感を出していたとも思われる。 物語としては原作と比べても純愛要素が増幅された感じで、互いに花を贈り合う趣向は泣かせるものがある。また特に婚儀と騎馬戦の同時並行から一挙に距離を縮めて花嫁行列へ至る展開が印象的で、生木を裂くとはこういうことかと思わされた。婚家先の場面では、採ったばかりの果実を剣山の上に置いたかのような過酷な環境が痛々しく、ここで姑役の役者(北城真記子という人らしい)は全国のファンの憎悪を集めたはずだが、夫の姿を見せなかったのはせめてものファンへの配慮だったと思えなくもない。  ところで今回この映画を見ていて、うちでオスメス2匹の子ネコをもらって来たときに、近親交配などしないうちに処置しておかなければと考えたことを思い出した。そういう点で劇中の母親の行動は基本的に理解できる。 しかしその母親が、全てが終わってしまってから「そんなに好きだったら一緒にさせてやった」などと泣きごとを言って、少しでも自分が楽になろうとしていたように見えたのには怒った。年上なのも従姉弟なのもどうでもいいことだったというならこれまでのことは一体何だったのか。そもそも自分の甘さが事態を悪化させた面があったはずだが、それでも「不承知」と決断したのなら最後まで「情け知らず」のままで通すか、あるいは自害でもして果てるのが責任の取り方だろうと言いたくなったが、まあ女親にそんなことをいっても仕方ないか。若い二人の悲恋物語であると同時に、親たるこの人物の晩年の悔恨の物語という印象がなくもなかった。 なお個人的な思い入れが大きい映画なので逆に点数は控え目につけておく。
[DVD(邦画)] 7点(2016-12-31 23:06:13)(良:1票)
183.  海賊とよばれた男 《ネタバレ》 
何の予備知識もなくほとんど偶発的に見たので、どういう映画かわからないまま最後はどうなるのかと思いながら見ていたが、エンドロールに実在の社名が出てやっと何のことかわかった。原作は長編小説とのことだが映画としてはダイジェスト感が強く、特に登場人物については観客側の自主的補完にかなり頼っている気がする。 また全体として石油元売会社の社史なのか、創業者の一代記なのかが不明瞭である。実在する会社の沿革であれば「日章丸事件」(劇中では日承丸)で意気を上げたところで切り上げてもいいはずで、その後の後日談の意味がよくわからない。原作のどこを取り上げて構成するかの問題だろうが、少なくともこの映画ではせっかくの女優陣(綾瀬はるかと黒木華)が半端な登場人物に終わっていたようで残念である。  ところで個人的に「日章丸事件」のことは知らなかったが、これは憶えておいてもいい話だという気がした。巨大資本の脅しに一歩も引かず、また映像的な誇張はあるにせよ、横暴なイギリス海軍を相手に真っ向勝負というのは非常に痛快だった(単純に気分がいいだけでなく歴史的意義もあったようだが)。昨年は日本が関わる国際的美談の映画が同時に2つ公開されて両方とも微妙な印象だったが、今回のこれは日本人の心意気を示した点が素直に心地いい。 また個人的には船の映像が多いのがよかった。手漕ぎの舟から発動機船、復員輸送艦(駆逐艦神風)、大型タンカーに英軍艦(ベイ級フリゲート?)が映り、タンカーの進水式もそれらしい感じを出していた。どこまで特殊効果かわからないが素人的には出来に文句をいう気にならず、こういった映像面での印象が映画の価値を高めていた気がする。 ちなみに主演俳優の老け顔には特に違和感がなく、これはこういう男だ、という雰囲気は出ていたように思う。  追記:社歌の背景に必ずBGMが入って邪魔していたのは確かにわけがわからない。これはサントラCDを買って聞けということか。
[映画館(邦画)] 7点(2016-12-24 09:45:08)
184.  トロール・ハンター 《ネタバレ》 
けっこう面白い映画だった。 まずはまともな理由の説明もなしに政府が隠蔽していると説く陰謀論的世界観がとぼけた感じである。劇中の説明によるとノルウェーではそこら中にトロール実在の証拠が散在していたようで、谷間に散らばった岩などは実際にトロールのせいだとする伝承が残っている可能性もあるが(本当は氷河のせいだろうが)、そのほか倒木とかジャコウウシとか送電線など、その辺にあるものにいちいちこじつけて語る妄想気味の態度が可笑しい。またキリスト教徒かどうかを真顔で問うのもかなり変だが、実際に隠れキリシタンがカミングアウトした途端に死んでしまい、その後にいきなり代わりが来る流れは都合よすぎで笑った。 笑いの面では送電担当者の「美しい景色」が頂点だったが、ただし全編笑い通しだったわけでもなく、特に前半などはかったるいところもないではない。しかしそれを現地の秋の景観が十分に補っており、地元民にとっては珍しくもないのだろうが、外国人としてはやはりフィヨルドやU字谷のスケールの大きさに目を引かれてしまう。特に巨大な岩山を滝が滑り落ちる豪快さをカメラが捉えていたのは印象的だった。  ただし地方色豊かな映画のため、外国人にはわかりにくいところもあるのは残念である。 まず劇中でトロールの生息地とされていた「ドヴレ」は、ノルウェー国内のオップラン県に実在するDovreという場所を想定していたようだが、トロールとの関連でいえば「ペール・ギュント」にも出る魔の山のことになるだろうから、これは架空の場所を実在の地名にこじつけたと取ればいいのか? ちょっとよくわからないが、とりあえずエンディングの最後に流れた劇音楽「ペール・ギュント」の「山の魔王の宮殿にて」(I Dovregubbens hall / In the Hall of the Mountain King)は、この架空のドヴレに関わる曲であり、終幕に際してユーモラスな印象を残していた。 もう一つ、ラストで出た首相の話は、ノルウェー人であれば実在の「トロール油田」に関するものであることが何となくわかり、うまく編集したな、と思うのだろうが、知らなければ単に話のわかる首相が特別出演したのかと思うところである。 そもそもトロール自体に馴染みのない人間も世界には多いわけだが(自分としてはムーミントロールしか知らない)、それでも一応は制作意図に乗って楽しめる映画になっていた。
[DVD(字幕)] 7点(2016-12-17 10:51:18)
185.  エイプリル・ソルジャーズ ナチス・北欧大侵略 《ネタバレ》 
1940/4/9にデンマークがドイツ軍に占領された時の話である。ドイツ側は装甲車や軽戦車で侵攻し、デンマーク側は自転車部隊やバイク部隊が応戦して兵も死亡しているので戦争映画だろうが、しかしどこまで戦争する気があるのかわからないのが特徴である。 前半でこそ開戦前の緊迫感や最前線の恐怖感があるが、そのすぐ後に20年前の話を持ち出す住民が出たのはかなり拍子抜けで、その後も一般国民に危機感というものが感じられず、国防の任にあたる者としては梯子を外された形になってしまう。それでも主人公は任務を忠実に果たそうとしたが残念な結果に終わってしまい、正直者が馬鹿を見た(死んだ人間は単純に損した)という印象が残る。 最後のインタビューは別々の述懐を並べたものだが一応の流れはできていたようで、様々な思いが交錯しながらも、結局は歴史的事実を受け入れるしかないという諦観があるようにも見えた。  その一方では国民国家の軍隊など無意味と主張しているかのようでもあり、日本国内でいうと例えば「無防備都市宣言」運動の推進者を元気づけそうな映画になっている。しかし無抵抗が有利になるのは相手が誰でも同じではなく、例えば基礎的な文化を共有しているとか、また特に占領側の倫理水準が低くないことが条件になるのではないか。加えてこの映画の場合、デンマーク人はドイツ人と同じくゲルマン系であり、小国ということ以外にドイツ側が見下す理由もなかったはずで、最初から一定の寛容さも期待できたのだろう。条件の違う他国がこの映画から学ぶことなどどの程度あるかという気はする。 またデンマーク王国は今でも徴兵制を維持しているとのことで、その本来の意図としては、他国の侵略に対して国民挙げて抵抗するという意思表示が含まれていたはずである。今になれば隣国(ドイツ・スウェーデン)が攻めてくるとは誰も考えていないにしても、戦後以来のNATOへの参加や近年の平和維持活動を通じて、実力保持が重要との意識は根付いていると想像されるので、やみくもに軍隊不要などと言っているのではないだろうと思うが。  結局何を受け取ればいいのか困る映画ではあるが、とりあえず世の中こういうこともあると思わせる内容にはなっており、邦題に騙されさえしなければ見ごたえのある映画かと思われる。なお少年が撃たれる場面をうちの老母が見れば、「こんなところに子どもを連れて来る親が悪い」と切り捨てることは間違いない。
[DVD(字幕)] 7点(2016-12-09 00:15:58)
186.  太秦ライムライト 《ネタバレ》 
京都・太秦といえば個人的には大映の「大魔神」三部作(1966)だが、この映画は東映である。劇中で大御所役の松方弘樹氏も、大魔神と同時期の東映特撮時代劇「怪竜大決戦」(1966)に出ていたが、これは映画自体がそれほど知られていない。 この映画では冒頭から現代的な映像で斬新な印象を出しており、また特にラストが非常にすっきりした形で終わったのは感動的で、続くエンディングの曲も騒がしくなく素直な余韻を残していた。主人公は非常に謙虚な人物に見えたが、その場になれば大御所でも挑発してみせたりして、大御所の方もまたそれなりの顔で応じていたのはベタなようだが盛り上がるのは間違いない。  全体としては福本清三氏の時代劇への貢献を顕彰し、いわば記録保存する映画のように思われる。終盤、川島Pが突然変節したように見えたのは悪い意味で意外だったが、序盤でもこの人物は「人気のダンスグループ」の男の扮装を見て表情を曇らせた場面があったりしたので、別に時代劇を破壊するつもりだったのではなく、この人物なりに若者向け時代劇を再構築しようとしていたと思われる。この映画の監督は、年齢(と経歴)からすれば劇中の若手監督に相当するだろうが、実は劇中プロデューサーと同じ立場で先人に敬意を表する映画を作ったのかも知れない。 また本編の英語字幕が完備していて「北米劇場予告編」というのがあったりするので、時代劇というものを国内限定の文化遺産にせず、いわば人類全体で共有できる文化的価値として知らしめる意図があったとも思われる。実際この映画の監督が、このあと海外向けに「NINJA THE MONSTER」(2015)といった映画を作っているのは実践例かも知れない(が、中身を見ると少し心許ない気がしなくもない)。 ちなみに自分としては松方弘樹氏が、戦国時代を舞台にしたアイドル映画「ギャルバサラ -戦国時代は圏外です-」(2011、有村架純初主演)で織田信長役をやっていたのを見たことがあるが、これも前記の特撮時代劇と同じように、基本のところがしっかりしていてこそのバリエーションということだろう。その時代劇の基本部分(歴史的事実の尊重を含む)をどのように維持していくかも重要ではないかと思われる。  なお余談として、主人公の妻役で出ていた海老瀬はなという女優は京都の出身で、これより前の松竹映画「京都太秦物語」(2010)には主演で出ていたが、その相手役が著名ダンスグループのメンバーだったことが映画の価値を落としていた。また軽薄なアイドル女優役で出ていた中村静香という人も、京言葉を話す場面はなかったが実は京都出身であり、特に意味のないキャスティングのようでも一定の意図があったのかも知れない。
[DVD(邦画)] 7点(2016-11-24 22:22:33)
187.  私たちのハァハァ 《ネタバレ》 
宣伝写真の印象にはかなり騙された。公式サイトにあるような、穏やかな海を背景にしてそれぞれの思いを含んだ顔の場面とか、草原で自転車に乗っている場面(これはこれでかなり変だが)は劇中にはない。そもそも移動手段にもこだわっておらず、自転車で1,000kmなどというできそうもないことはしない話になっている。 またこの映画が見づらい原因としてはカメラの動きがせわしないこと、及び集団で奇声を発するのがとにかく物理的にやかましいことである。こんな音響で本人らの脳が破壊されたりしないのかと思うが、後半になってLINEのやり取りをしていた場面は静かで、最初からこれだけでやっていればよかっただろうと思わせる。  そのほかとにかく傍若無人のふるまいが多く危機管理の観念も欠落していて「この連中はバカ」と言い放って終わりにしたくなったがとりあえず黙って見ていると、神戸まで行ったところでやっと無敵集団が解体し、誰がどういう風にどの程度バカなのかもわかって来た。ミュージシャン志望の人物が一番のバカに「戦ってちゃんと!」と言っていたのは可笑しい。終盤に至るとまた少し意外性のある展開だったが、ここで以前に世話になったお姉さんに怒られたのを見ると、自分がこの連中に感じた反感は必ずしも性別の違いによるものでないことがわかる(当然だが)。 自分としては仮に同年代であってもこの連中には絶対共感できないという自信があるが、少なくとも自分以外の誰かにとっての青春を濃縮してみせた形になっているのだろうとは思われる。当然ながら本人らもまだ何とか許されるうちを狙ってやる小狡さはあるわけで、こういう連中の未来を信じてやれなければそれこそ「日本オワットル」ということになるだろう。 ちなみに、2回見ると初回よりは少し微笑ましく見られる。終盤でライブ映像に本人らの歌声が被さるところも少し感動する(やかましいが)。  なお劇中で未成年が煙草を吸う場面があったが、常習者はミュージシャンだけで(さすが不良少女)、もう一人は吸い方を知らなかった。 また広島での夜は「ナミキジャンクションの近くで野宿します」とのことだったが、原爆ドームの見える場所(平和記念公園)を“ライブハウスの近く”としか認識していないのは年配者とは明らかに感覚が違っていて笑ってしまう。少なくともこの連中にとってのいわゆる“聖地”ではないということである。
[DVD(邦画)] 7点(2016-09-23 19:58:09)
188.  君の名は。(2016) 《ネタバレ》 
見るつもりはなかったが、なぜか「シン・ゴジラ」と張り合っているかのような雰囲気が出ていたので見て来た。 印象としてはストレートな青春アニメであって、きれいに作ってはあるがあまり突出したものを感じず、映像的にもキャラクター設定もストーリー展開も至るところに既視感がある。SF的にも突っ込みどころが多そうに見えるほか、意外性の面でも弱いところがあり、時間のずれというのは観客としても想定の範囲内である。また突然の大災害も、冒頭の落下映像で最初から危惧を覚えていたわけなので、やはりそうだったのか(泣)という程度の衝撃だった。 最も意外だったのは、変に丸く見えた湖が火山に由来するもの(カルデラ地形など)ではなくクレーターだったということで、地球上でクレーターが2個接続した状態になっているのは珍しいのではないかと思われる(2個同時に近接して形成された事例はあるようだが)。もしかすると山上の聖地も恐山のような火口原ではなくクレーターであって、ご神体の岩塊は隕石というつもりだったのかも知れない。星の世界につながる特異点のような場所という設定とすれば科学考証的にはどうかと思うが、当方としては初めからファンタジーとして見ているので別に構わない。  ほかにも考えれば指摘すべき点はいろいろありそうだが、自分としては頭を使うのが面倒臭いのでそこまではしない。それよりも、若い登場人物に対して素直によかったねと言ってやりたくなる展開(見ている自分の境遇はさて置いて)だったのは当然ながら嫌いでなく、最終的には明らかにいい印象を残す映画になっていた。見ていてはっと胸をつかれるところが何か所かあり、特に終盤で並走する電車の場面では、一瞬の動揺を劇場内で隠すのが困難だった。 また「シン・ゴジラ」だけでなく、この映画でも何気なく先の震災が念頭にあったようで、今後起こりうる災害から目を逸らすことなく、まともに意識しながらしなやかな心で対していこうとする気構えが日本人の中にできて来ているとすれば心強いことである。 ちなみに、少女のオッパイが「転校生」(1982)だとすれば、ラストで記憶のない2人が再会できたのは「時をかける少女」(1983)に対抗したものではないか。切なさ優先で登場人物を不幸にするラストよりもこっちの方がよほどいい。(1953年のドラマのことは知らないので無視)
[映画館(邦画)] 7点(2016-09-19 16:55:43)(良:1票)
189.  鬼談百景 《ネタバレ》 
作家の小野不由美による同名の実話怪談集(全99話)から、10話を選んで映画化したオムニバスである。6人の監督が脚本を含めて担当している。 【追い越し】 原話の不思議さが不足、無駄話が多い。 【影男】 音そのものが神経に響く。異音が付随しているのも嫌な感じ。窓から見えた空も意味不明だが怖い。最初は睡眠時無呼吸症候群かとも思えるがそうともいえなくなって戦慄。 【尾けてくる】 作業着の男がいかにもそれらしい顔。女子高生~女子大生の見開いた目はいいが若干くどい。ラストの街角遠望は好きだ(渋谷二丁目、青山学院近く)。 【一緒に見ていた】 原話にない背景事情を大きく加えた形。一回やっただけというより人格低劣で因果応報。倒れた男子生徒、ぶつかった女子生徒のいた風景がいい。 【赤い女】 女子高生絶叫ホラー。怖いことは怖いが階段をドタバタ駆け上がるのはなぜなのか(笑)。登場人物が高校生にしては変に大人っぽく、加弥乃さんは可愛らしいがヒガリノ(比嘉梨乃)さんはひときわ色気がある。 【空きチャンネル】 普通。特殊効果はやりすぎだが一瞬怖い。 【どこの子】 小学生のくせに妙にエロい。取り残されるシチュエーションは怖いが方言の男には笑わされる。 【続きをしよう】 子役がいい感じ。出演は9人だが顔が見えるのは8人、声がするときに誰の口も動いていない。流血の連続で児童虐待のようだが、走り回る子どもらを見ていると、この監督は本当に子ども好きなのだろうと思った。 【どろぼう】 難解で意味深。果実の隠喩と時間の経過、スカートの下にジャージをはいていないなど。何にせよ流産監督らしいテーマと思われる。女子高生が美形なのはいいとして、子沢山の母親がこういう顔だとは原作からは想像していなかった。 【密閉】 原話の投稿者が隠していた真相はこれだ、という感じの話。主演女優の顔が好きだ。  第1話を除く各話が「こんな手紙が届いた」で始まるのは、夏目漱石「夢十夜」の趣向に倣ったものと思われる。基本的には全て原話の筋立てに沿っているが、映画的なイメージを膨らませたり独自の解釈を施したものもあり、必ずしも実話とはいえないものが多いと思われる。しかし本物の怖さを出したもののほか怖がりながら笑えるもの、ストーリーとして面白いなど多様であり、映像的にもいい出来のように見える。これまで見たオムニバスホラーの中では最も良質だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-16 22:30:45)
190.  ゆるせない、逢いたい 《ネタバレ》 
撮影場所は茨城県筑西市とのことで、馴染みのない地名と思ったら要は以前の下館市ほか3町が合併したところらしい。筑波山が大きく見えていたのが印象に残る。 物語としては「デートレイプ」の問題を扱っており、その中に主人公の精神的自立の過程を大きくからめた形になっている。自分としては年齢性別が違うため直接共感できるわけでもなかったが、主人公の表情や言動を通じて、劇中事件がもたらした複雑な感情の動きが表現されているようには見えた。ラストの決意表明は若干唐突な感じもあったが、それを含めて前を向いて生きようとする主人公を素直に応援したくなる。「対話」の場面で見せた賢明さを未来に生かしてもらいたい。 また主人公の母親に関しては、過干渉というのはその通りだろうが、母親としての思いを加害者に向けてまともにぶつけた場面はよかった(これは娘のいる所ではいえないだろう)。劇中で共感を寄せられそうな人物といえば実際問題としてこの母親だけだったが、父親が生きていれば父親の立場で見ていたかも知れない。  ところでこの話をラブストーリーとして見た場合、どう考えてもハッピーエンドなど望めない設定になっている。これから二人の進路が重なっていく見通しは基本的になく、そもそも生育環境が違い過ぎるため、最初から忌避すべき相手だというのが正しい判断である(つまりお父さんとしては賛成できない、という立場)。 後見人はご苦労と思わなくもないが、他人の立場からすれば本人の身の上など関係ないのであって、現に何をやらかしたか、これから何をやらかすか、ということだけが関心事である。この男の顔つき(目つき)など見ていると、以前に成功体験があったので今回も平気でやらかしたのだろうとしか思われず、こんな男に情けをかけるのはかえって危険という気さえする。ちなみに加害者側の弁護士というのも胡散臭い。  以上のようなことで、恐らく制作側が意図したことの半分程度しか受容できていないのではないかと思うが、全体的には極めて真摯な態度で誠実に、かつ美的に作られた映画に思われた。細かい点ではカエルに関する友人とのやりとりが和む。 なお主演の吉倉あおいという人は、他の映画で見たときはきついタイプの人かと思ったが、この映画では普通に弱さと強さを持った(可愛いところもある)高校生になっていて好印象だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-09 09:30:32)
191.  あさひるばん 《ネタバレ》 
「釣りバカ日誌」の原作者が監督したとのことで、ハマちゃん役の役者が渓流釣りに行く場面があったりする。また監督が宮崎県出身のため同県内が舞台になっており、県当局の全面的支援があったとのことだがそれほど露骨なPRもなく(細かく見るといろいろ出ていたようだが)、なかなか感じのいいところに見えた。娘の結婚相手が獣医だったのも畜産県らしくていい。 内容としては普通にほのぼの人情コメディになっている。いきなり脱獄はやりすぎだとかヒロインの娘の態度が不可解だとかヒロインの病状がどうなのか結局わからないというような問題もあったが個人的にはまあ許容範囲で、基本的に安心して見られる娯楽映画である。  ただしドラマとしては非常に割り切れない話になっており、これはやはり少し上の年代向けかも知れない。 “名を捨てて実を取る”というが、この映画の場合はどちらが名でどちらが実かわからない。表向きは3人組がパパ扱いでも実の父親はほかにおり、またこの父親が指輪の送り主という事実は動かせないが、現実にみんなと喜びを分かち合うことができるのは3人組の方である。また勝ち負けの問題でいえば、部活も恋も社会的地位でもはるか昔に負けが確定していて永遠に挽回できないが、しかし考えてみれば3人組はマドンナの娘やその結婚相手にまで名前が知れ渡っていたりして、関係者の間での存在感は絶大らしい。気持ちの問題としては最終的な勝者ともいえるが、ただ常に3人組が一からげの扱いなのが情けなくもある。 これは見ていて切なくなるが、しがない一般民としてはどうせこの3人組に感情移入するしかないわけで、とにかく何らかの意味で“実を取る”ため「もう一回戦」に挑んでいくしかないということか。それを死ぬまで続けるとなると厳しいものもあるが、まあこの監督が70過ぎて監督デビューというのも参考にしながら、ここはひとつ貴重なご意見として承っておきたい。  ちなみに登場人物の年齢設定にはかなり無理がある。関係者が揃って48歳とはとても思えず(劇中でも言い訳していたが)、またマドンナの娘も30近い年齢になるはずだがどう見ても20代前半である。まあこのあたりは笑って済ませるところだろうが、30年前のマドンナ役だけは劇中年齢とほぼ同年なので見ていて安心する。
[DVD(邦画)] 7点(2016-05-09 21:05:07)
192.  おんなのこきらい 《ネタバレ》 
自分(男)としては“かわいい”は“好き”を含むものと最初から自覚しているので、見た目だけでかわいいと言い切ることは基本的になく(外見的には可愛いが、というように限定して言うことはある)、また本心からかわいいと思ってもむやみに本人に言ったりはしない。それなりに抑制しながら生きているわけである。 この点で雑貨店の男の行動には若干問題があったかも知れないが、この男自体はそれほど悪い奴には思えない。救援要請があったのに行かないのも義侠心に欠けるわけで、レスキュー隊としてどこまでやるかの問題だろう。主人公が心安らかに寝られるようにするには部屋の掃除が必要と思ったかも知れないが、しかしその後は明らかに道を踏み外しており、この辺は良心派なりの狡さがあったかも知れない。 ただこの男の行動も決して単純なスケベ心ではなく、本心から主人公がかわいいと思ったからこそだろうから、そのことだけはわかってやってもらいたい。逆にいえば“かわいいは罪”ともいえるが、全般的に人間は感情問題を断ちきれない面倒くさい生き物ということでもあるから、この辺は人の原罪のようなものということで。 自分としてはこの通りの経験があるともいえないが、とりあえずごめんなさいと謝っておきたくなる映画だった。  ところで事前の予想としては、全編にわたって主演女優のカワイイが炸裂しているのかと思ったら実際はそうでもなく、いわばパステルカラーのおんなのこと黒のオンナのイメージが交錯し、最後はプレーンな状態に変わっていく印象があった。序盤の部分はこの女優ならではのカワイイ系女子ができており、わざとらしく無駄に顔を作る演技をやってみせるのが可笑しい。一方で黒のオンナは別にこの人でなくてもいいだろうという気もしたが、終盤になるとまたこの女優の素材感が前面に出た感じになる。 髪の長さはどうでも対応可能な女優だろうと思っていたが、この映画を見た結果として、どうも髪は短めの方が似合うような気がして来た。最後の顔など見ていると、自分としてもこの人はかわいい、と言い切ってしまいたくなる。そういう点で、自分にとっては高品質の森川葵映画になっていた。
[DVD(邦画)] 7点(2016-04-29 08:34:17)
193.  劇場版 零~ゼロ~ 《ネタバレ》 
ゲームが「原案」、小説版が「原作」であり、この映画は小説の方をもとにしている。原作小説の内容はゲームとかなり違っているようだが、これについては原作者が「あとがき」でちゃんと言い訳している(誰も読まないだろうが)。  映画化に当たっては小説の内容を若干簡略化し、結果として超自然的要素が減少してサスペンス風味が目立つ形になっている。それにしても、あまり長くない映画の割に謎解き部分が込み入りすぎに感じる。全体としては恐らく“呪いをといて、大人になる”というような感じのことが重要なのだろうから(正直よくわからないが)、そこに集中してほかはシンプルにしてもよかったのではないか(個人的には男の登場人物は不要)。 しかし個別の映像表現とか背景音楽の合わせ方は好印象で、問題の美少女が教室内に現れた場面や、聖堂での降臨場面は特に見どころだったかと思う。また映画のために作ったという劇中歌も非常に印象深く、最初の独唱と最後の合唱で曲の印象が違って聞こえるのもいいが、最後の歌がメリーさんの祈りに重なって、その後の巣立ちの場面につながっていくのは少し感動的だった。 この映画を見たのは基本的に男が多かったのだろうが、監督としては普段ホラーを見ないような女の子にも見てもらえるようにしたかったとのことで、ホラーながらもほとんど怖くはなく男目線のエロチックな場面もほぼ皆無であるから、ぜひ女子の皆さんにも見ていただければと思う。  ところで、男子の立場としてはどうしても美少女が多数出演という点を評価してしまうわけだが、文字通りの美少女なのは主演の人くらいで、ほかは単純な美少女という言葉で括れない個性的な面々が揃っている。ミチ役の独特の存在感は当然として、キャスト配列順では下の方にいるカスミ役が意外に目立っていたのも個人的には嬉しい。地味な服装で引き立てられた形の劇中少女の表情には目を引かれるものがあった。 ほかにメリーさんのすっぴん顔(すっぴんに見えるメイク?)は、暗闇の中に美少女の顔が浮かぶ場面と同じくらい衝撃的だった。美形女優といえども美少女にはかなわないという意味?かも知れないが、この女優本人はメリーさんの扮装を喜々としてやっていたとのことで他人事ながら喜ばしい。ほか美保純という人が意外な役柄で、あらかじめ知っていても本人には見えなかった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-04-29 08:34:08)
194.  通学シリーズ 通学途中 《ネタバレ》 
前作「通学電車」と同じ作者の携帯小説である。前作は「通学シリーズ」の1作目、これは4作目に当たるが、「通学」という言葉ばかりが目立って区別しづらい。劇中世界は前作と同じで時間経過もほぼ同じ、登場人物もかなり共通している。ストーリー中で「西高」「北高」「東高」が出るが、学力としてはこの順で高・中・低だったらしく、今回の主人公は西高であって進学校の生徒というのが人物像にも表れている。この辺は原作段階でいろいろバリエーションを出していたということらしい。  前作からの登場人物のうちナナちゃんは当然悪役だが、今回は意外にもユカちゃんがヒロインを迫害する人物になっている。学力面の劣等感丸出しで中傷するとか自分はバカだからといえば免責されると思っているとか何をやっても一目ぼれなら仕方ないと言い訳するなど目に余る勘違いぶりで、ヒロインとは人格レベルにかなり差のある設定になっている。 今回ユカちゃんのやったことは社会的な許容限度を超えていた(犯罪だ)が、それでも周囲の男連中や心優しいヒロインのおかげで全部許されて、最後はしあわせな世界へ導かれるのは著しく都合のいい展開であり、まるで悪の淵から救済されるユカちゃんが真の主役のように思われた。こういう人物を見ると自分などは同情する気も失せるわけだが、もしかすると本来の読者/観客からはこれで一定の共感を得られる人物像なのかも知れない。男は正邪を峻別したがるというだけのことで、女子ならこの悪役とヒロインの間で心が揺れ動くのだろうと想像する。立場や性格が違っても、女の子同士でわかりあえるはずというのが落としどころだったのかも知れない。  ところでヒロインに関しては、外見としては地味でも目の印象が非常に強く、部屋で彼氏と語り合う時の穏やかな表情は心の深みを感じさせる。彼氏の立場になってみれば、この人と心を通じあわせたい、人生を共有していきたい、と思える人物像がちゃんとできているのが感動的で、一緒にいると楽しくて悲しい、という言葉にも非常に共感できるものがあった。 そのような理由で、この種の映画としては異例だが、ヒロインと主演女優のためにここは少し高い点を付けておく。ちなみに個別の場面としては、黙って部屋に入って来て“わっ”と驚かそうとした場面が好きだ。また北極星からアイスにいきなり発想が飛躍するのもよかった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-03-27 00:25:25)
195.  チェスト! 《ネタバレ》 
劇中の小学校で、プールの向こうに錦江湾が広がり、さらに向こうの陸地(薩摩半島)の上に雲が立つ風景は雄大である。この小学校は実際にこういう立地だったようで羨ましい。遠方には喜入の原油備蓄基地や鹿児島市街地の南部も見えていたようである。 こういった個別の撮影地は別にして、映画の設定上は鹿児島市が舞台ということで、桜島も時々映るほか市内の名所も出ていた(ドルフィンポートにはたまたま公開同年に行ってきた)。遠泳大会の際に、どこからどこまで泳いだのか見てよくわからないのは少々つらいものがあったが、終わってみればどうやら桜島の方が出発地らしかった(実際は桜島小池町から磯海水浴場まで)。  内容としては、まず導入部の展開がけっこう可笑しい。個人的にこういう失笑ネタは嫌いでない。 テーマ的には児童の成長物語ということだろうが、特に転校生に関しては結構深刻なお話になっている。死んだ父親が息子を「太か男」にしたかったのか、それとも家族を捨てた勝手な男なのか、あるいは海に引きずり込もうとする怨霊なのかがわからなくなってしまったようだが、結局は主人公とその父親の全く違う助言を両方取り入れて、否定するものは否定した上で主体的に選び取ったということらしい。 また下痢気味の少年は極めて格好悪い存在だったが、実際は両親、特に父親の存在でかなり救われている。本人も成績は悪くないのだろうし、この辺は一面的なものの見方をひっくり返して相対化しようという意図かも知れない。 一方で主人公から好きな女子へのアドバイスは名言だった。表面上の理屈はつながらないにしても、自分の存在価値を認識し自信を取り戻すための方策とすればなるほどと思われる。主人公はこれを先輩に聞いたと言っていたが、示現流の道場(正確には、劇中に出るのは「野太刀自顕流」)でこういう知恵が伝わって来たということか。 それぞれに違う事情を抱えた子どもらに若手の教員も含めて、みな悩みながらも前に進んでいこうとするお話は悪くなかった。というか、少々の未消化部分はあるようだがいい映画だった。原作付きのため基本がしっかりしているということか。  なお主人公の父親は、こういうキャラクターが地元では普通というわけでもないだろうが、言っていることがよくわからないというのは地元住民らしい雰囲気を出している。もしかして転校生の母親は初恋の人だったのか。
[DVD(邦画)] 7点(2016-02-11 23:18:18)
196.  ヲ乃ガワ -WONOGAWA- 《ネタバレ》 
「山形県米沢市小野川温泉の全面協力で完成させた」とのことで、地元温泉街などから多大の支援を受けたものらしい。メイキングを見ると、2010年から準備を始めていたが2011年の震災で一時中断し、その後の2012年夏に地元での撮影を行ったようである。完成品を見ただけではどこが温泉の映画かわからないが、かろうじて女性2人が揃って入浴する場面があるのと、温泉の蒸気を動力源にしている??というのがそれらしい感じである。内容としてはストレートなSF志向のお話で、資金等の制約に臆することなく真っ向から取り組んだ感じになっており、アイデアはそれほど独創的とも思われないが文字デザインなどは面白い。 また場所が「スウィングガールズ」(2004)と同じ地方であり、劇中の各所で地元方言が使われているのが特徴的である。大した人口もいなさそうな場所で標準語?と地元言語(完全字幕)の2系統が並存していたのは変だが、標準語の方にも「おしょうしな」「オボゴナシ」(おぼごなす)といった地元の言葉が混じっていたらしい。地元言語を話す人物が、役所に行く際の身なりをどうすればいいか医者に相談していたのは可笑しかった。個人的にこの地方の言葉はよく知らないが、ほかにも人名や地名などで必然性のない地元の言葉が盛大に使われていたようである。登場人物が真顔で「ホダベシタ地区」などと言っていたのは明らかにおふざけだが、地元限定サービスのためそれほど羽目を外した感じはない。 物語の上ではラストがよくわからなくなっているが、これは映像特典の「幻のラストシーン」が種明かしと考えれば問題ないだろう。それまでの劇中人物の発言を総合または超克した結論だったと解すればいいかも知れない。ドラマ的には登場人物への共感がいま一つだったが、主人公が初めて主要人物に対面した場面では子役が可愛らしいのが印象的で、ここは全体構成から見てもポイントを押さえていたように思われる。 なお主演女優は他の映画で悪役女子高生をやっていたのを見たことがあるが、今回は清廉で一途な主人公役が好印象だった。話す相手によっては女の子っぽさが出すぎている気もしたが、温泉で年上の女優と一緒の場面では初々しさが際立って自然な愛らしさがある。こういう場面はどうしても若い方に目が行ってしまうのは仕方ない。 以上、正直絶賛するには至らないが、地元の人々の頑張りに若干加点しておきたくなる映画だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-01-05 21:55:21)
197.  ウォーターボーイズ 《ネタバレ》 
若い連中がバカをやらかす映画は嫌いなので、なんでこの監督はこういう面白くもないおふざけをやっているのか、と醒めた目で見ながら半分以上が経過する。ときどき突発的に可笑しいところはあるがその気分があとに続かず、こんな映画に時間を使っているおれはアホではないかと思っていた。 しかし転機になったのが桜木女子の伊丹弥生さん(演・秋定里穂)の登場である。この人はもう個人的に大好きだというキャラクターで、ここから気分が一気に好意的な方向に変わる。その後は男どもの大舞台であって、満場の女子に大受けというのは男子にとって最高の見せ場といえる。男子校と女子校を分けていたのはそういう意味だったかとここで初めて納得した。最初の方では何のためにいるのかわからなかったヒロインもこの場で俄然輝きを増し、バカな主人公を全面肯定してくれる存在になるのが嬉しい(:例のパンツは、本当は前の晩に用意していたのを当日になって渡すことができた、という話だったのか? 物わかりの悪い観客ですいませんが)。 上達の過程をろくに描かないのはスウィングガールズと同じだが(製作順と逆に見た)、クライマックスは映像+音楽の面でもかなりインパクトのあるものになっており、見る者をしあわせな気分で一杯にして終えるので細かいことはもう関係なくなる。監督はこの時点で30代前半だったわけだが非常に才気ある人物という印象だった。 なお関連して、「桜木の天使たち」3人組が出るサイドストーリー(監督・脚本:矢口史靖)も好きだ。この連中の漫才は腰が抜けるほど可笑しい。
[DVD(邦画)] 7点(2015-12-31 09:31:13)(良:1票)
198.  15歳、アルマの恋愛妄想 《ネタバレ》 
ノルウェー語は別に詳しくないが、少し調べると原題をほとんど直訳したのが英題のようである(つまり邦題は上品だということ)。 中身はどうしようもないお話で、苦笑はするが共感するどころのものではない。これが向こうの15歳の実態なのか(本当か?)と呆れていたが、どういう形で締めるのか見るまで態度を保留していたところ、ラストの学校~食事の場面で評価が急上昇した。その直前に出ていたパリ行きの件とあわせて全体がうまく収まった感じになっている。終わってしばらく笑いの衝動が止まらず、これはなかなかよかったと結果的に思わされる映画だった。  そのほか気づいたことを適当に書いておくと、まず劇中の場所が山間部のように見えながら、すぐそばに海面(多分)があったりするのはいかにもフィヨルドである。劇中の台詞からするとノルウェー南部のスタヴァンゲル市に比較的近い場所という設定のようで、首都オスロからもそれほど離れていなかったと想像される。首都まで行けばさすがにさばけた雰囲気だったようだが、日本よりはるかに少ない人口が分散して住んでいるからには田舎の人間関係が狭くなるのも仕方ないことで、劇中人物のうち役割の全く違う人々が実は1家族の成員だったりする。あるいは、家族であっても人の個性はそれぞれだ、というように解すべきことか。 また現地ではなぜかアメリカの存在感が大きかったようで、わざわざ国連本部まで行ってエレベータで交わる妄想というのは失笑した。この辺は当然ながら現地住民にとってもお笑いネタだろうが、15歳のレベルでは頭が単純なのでアメリカに憧れ、大人になればパリの評価が高まるということか。主人公が突然英語を話す場面は、アメリカ文化の権威で相手を圧倒しようとしていたのかも知れない(日本の田舎なら東京言葉でまくし立てれば済む)。 なおアルマ役の女優は多分この時点で18歳くらいだと思うが、それで15歳の役ということは、向こう標準ではこれでも童顔ということなのか。正直それほど可愛らしいとも思わないが、さすがにラストの学校の場面では相手の男ともどもなかなかいい顔を見せていた。
[DVD(字幕)] 7点(2015-11-19 21:53:33)
199.  14才のハラワタ 《ネタバレ》 
主人公はマイペースというだけあって他人との関係づくりにほとんど主体性が感じられないが、しかし決して他人と断絶しているわけではないらしい。自分をとりまく人々を否定的に扱わず、対立するものを含めて丸ごと受容しているから見守り役にもなれるのだろう。自分の両親に関しても、母親と父親それぞれの存在をちゃんと肯定的に扱っていたようで、またそういう自分を自分で肯定しているからこそ、少々何があってもこの子は大丈夫なのだろうと思われた。 ただ少し気になったのは母親が、身も心も自分で守れ、と忠告していたことである。これはもしかすると主人公が父親似であることを心配していたのかも知れないが、しかし父親などよりはよほどまともな出来だったようで、世間の枠組みもそれなりに受け入れていたように見える。単純なお人よしなら本気で将来が心配になるが、しかし成績はよくなくても決してバカではなく、いろんなことをちゃんと見ている賢い子だろうから、心配することはないかも知れないと思ったりする。  ところで主人公の絵は悪くない。事情を知らなければどういう意図かわからないだろうが、見れば本人が描きたいものはしっかり描いてある。劇中では残念ながら注目されていなかったようで、やはりどうしても色遣いの特徴とかファンタジックな表現の方が人目を引くのだろうが、それでも誰かは見ている(おれは見ていた)ので、まずは自分の光るところを大事にして、とりあえずマイペースで進んでいってもらいたい。 そのほか余談として、主人公が青木さんの発言を聞いて紙袋を取り落した場面は笑った。子ども相手に「ほう」などと言ってみせる感性も面白い。
[DVD(邦画)] 7点(2015-11-19 21:53:30)(良:1票)
200.  仄暗い水の底から 《ネタバレ》 
劇中の母親が痛々しいので見るのがつらい。これほど精神的に脆弱では保護者として心許ないと夫に思われるのも仕方ない気がする。また離婚問題を抱えた大変な時に、わけのわからない心霊現象にまで巻き込まれたのも基本的な運のなさを露呈した感じで、そういう面(本能的に危険を避けて通る素質がない?)でも先が思いやられるものがある。 そのままでは全てが母親の精神状態のせいにされかねないところだった(実際そういうオチかと思った)が、かろうじて味方の弁護士が事実関係をはっきりさせた上、不可解な部分にはこじつけ気味の説明をつけてでも、全てが理性の範疇に収まるよう計らったのは幸いと思われた。しかし自分だけで行動するなと言われたにも関わらず、予期しない事態に至るともう目先のことしか見えなくなって自分を抑えられなくなるのでは無意味になってしまう。この母親が娘を一人で放り出して現場に突撃していったことが、かえって悲惨な結末を招いたと思えなくもない。 結局のところ、この頼りにならない母親が身を棄てて娘を救うところまでを確実に行い、あとは父親の手に委ねたことで、娘にとっては最善の結果がもたらされたように思われる。心優しい人物だったらしいので気の毒だが、一人で子どもを守るには力不足だったということか。  ところで最後の後日談のようなものは、ここで新人タレント(水川あさみ)を顔見せする事情があって付加しただけに見えなくもない。しかし再会の場面を見ていると、娘が記憶していた唯一の言葉が母の愛情の存在を確信させ、それが娘の10年間を支えてきたと思わせるものがある。誰かに支えられなければ自滅するような母親でも、最も重要なこの点に関してだけは間違いなく立派な母親だったということらしい。それは自分の母親と同じ轍を踏まないということでもあったのだろう。 なお余談として、以前から水川あさみという人は美形かも知れないが可愛気がない人だと思っていたが、この年齢(18歳くらい)まで遡っても可愛くないのは同じだった。子役が可愛らしいのに比べ、10年後の姿としてこの人が出て来ると少し意外感がある。
[DVD(邦画)] 7点(2015-11-07 23:31:38)
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