201. 銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
どことなくひねくれた「ギャラクエ」ってところでしょう。あそこまで冴えた作品じゃないんだけれども、そこもまたいいアクセントになってます。オープニングの「魚をくれてありがとう!(ですっけ?)」の歌が豪華で非常にユーモア溢れてて大好き。中に人間の入ったクリーチャーがもごもご動いてる風景も可愛らしい。でも、こんなエンターテイメント作品はやっぱりアメリカ風味が好みらしくて、哲学的な答えを求めるあたりでちょっとだれちゃいました。それにあまり「ヒッチハイクガイド」活用されてなかったような気がするなァ。あのアニメーションポップでステキだったのに。ま、紅茶紅茶とうるさいだらしない主人公も含め、こんなスカーンと行かないところがイギリス風味なんでしょう。しかしイルカはどこへ行ったやら…。 [DVD(字幕)] 7点(2006-03-18 22:26:08) |
202. 七人の弔
《ネタバレ》 作品としては未熟なものを感じる。ミステリーにもブラックコメディーにも社会派ドラマにもなりきれていない宙ぶらりんな空気。所々荒いプロット。名の知れた役者さんが数多く出ているのに、個性も生かされていない。ただ一人、胡散臭い移植コーディネーター(?)役そして監督であるダンカンくらいしか印象に残らなかった。脚本、演出ともまだまだもっと頑張って練り上げて欲しかった。しかし、この物語のテーマは良いと思う。賛否両論が起こるほどの強烈さは感じなかったが、今の時代に見ておくべきものだと思う。救いようのない大人なんぞは踏みつけて、子どもよ前に進んでいけ。その胸の痛みは一生癒えないだろうけど…。 [DVD(字幕)] 6点(2006-03-05 00:14:28) |
203. ポゼッション(1981)
《ネタバレ》 いろいろ映画を観てきたけれど、群を抜いて狂っている。人間の中の狂気を、包み隠さず非常にポジティブに押し出している。登場人物どいつもこいつも狂っていて気持ち悪い。なんとショッキングでストレスフルな映画なんだ、本当に今も気持ち悪い。でも、悔しいことに面白くて2時間食いついてしまった。スタートからぐいぐい引っ張って離さない力を持っていた。アジャーニが七転八倒苦しみ抜いて吐き出したものは、どの人間の中にも流れているのかな。「善と悪」と表現されていたそれは、「陽と陰」「表と裏」くらい、ごく近いところに潜んでいそうで…一見の価値はある、しかし二度と見たくはない、近寄りたくない世界を描いた映画。 [DVD(字幕)] 8点(2006-02-19 23:45:15) |
204. 真夜中のピアニスト
《ネタバレ》 うーむ、消化不良気味。前評判で想像していたサクセスストーリーとは違う。ただピアノが好きで弾きたくて、その欲求を胸の泉にいつまでも貯め続けている男の話なんだけど、どうもその情熱が見えてこない。うらぶれた生活とピアノのレッスンシーンの二面から主人公の生活を映しているけれど、そこから何を表現したかったのかよく見えない。主人公の中の葛藤もピアノへの執着も案外さらっと描かれていて、映画の中に一本通っているはずの軸が私には見つけられなかった。夜の暗いバックに光の粒を落としたようなシーンがたびたびあり、なるほどこれで「真夜中のピアニスト」…ちょっとこじつけかなあという気がしてこれも消化不良。ヘタレピアノ弾きとしては「簡単そうだけど弾けないの…」と言う、録音されたお母さんの言葉に深く深く頷いたのだった。 [映画館(字幕)] 6点(2006-02-13 22:43:34) |
205. オルランド
《ネタバレ》 背景、衣装を含めた美術が豪華で、画の美しさは一級品。後で調べたら監督は女性だそうで、なるほど納得です。あの世界観の中にT・スウィントンがストンと治まり、妖精のような佇まいでさらに美しさが益しています。ストーリーもとても不思議ですが、起伏が無きに等しい。主人公は君主エリザベスに言われた命令には異常に執着するものの、人生にあまりにも起伏がないので面白い映画ではないのです。確かに実際400年も生きるとしたら、あれくらい淡泊でないとやっていけないでしょうが。TVドラマのほうが向いている話のような気がしました。魅惑のファルセット、ジミーの歌声は嬉しいオマケでした。 [映画館(吹替)] 6点(2006-02-05 22:22:03) |
206. フューネラル
《ネタバレ》 クセの強い俳優が何人も出てくるマフィア映画。ただ、犯罪行為の起承転結を映しているのではなく、命のボーダーラインのあたりでフラフラと悩み苦しむマフィアの姿を追っている。「葬式」という意味の題名のとおり、黒っぽい画面と湿っぽいストーリーの中で悩む男たちがとにかく渋い。死と隣り合わせの立場にある恐怖感が、強面たちの顔の中で鈍く光っている。命について深く想うC・ウォーケンが秀逸だったが、凶行に及んだ後、子どもみたいな表情で泣きつつ微笑むC・ペンの姿には涙が出てきた。なんて貴重な俳優を失ってしまったんだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2006-01-31 01:37:33) |
207. ヴァイブレータ
まず、よくこの題材を映画に仕上げたなと感心。全く違う人生を送ってきた男と女、見ていて何だか突飛に感じる二人が、短い間ながらも心の波長を合わせて旅する。一見無茶苦茶で痛い寺島しのぶと、それを驚くほど大きく優しく包む大森南朋。ほぼ二人しか登場しないので途中少し飽きもしたが、二人の会話、田舎の風景などをあるがままの美しさで捉えているし、音楽もその雰囲気に合っていて全体的な優しさが心地よかった。別のレビュワーさんが書かれているけれど、たしかにこれは女側の一方的な願望かも知れない。痛くて鬱陶しいあの女性を、どうも嫌いになれずにいるからこそ心地よかったのかな。 [DVD(字幕)] 6点(2006-01-28 14:56:18)(良:1票) |
208. エニグマ
《ネタバレ》 第二次大戦がテーマでも派手なドンパチはほぼ無いし、ヒロインたるケイト・ウィンスレットは体もメガネも丸々としているし、観る前の期待を裏切る地味さは否めません。しかし、劇中モールス傍受の女性兵士が言った「これって重要ですよね。」がテーマの底にあると思います。こんな地味な面も戦争の一部に違いない。暗号解読のプロセスなどは私のニブい頭では追いつけませんでしたが、サスペンスとして興味深い作品になっていると思います。終盤、主人公が急に勇敢かつ雄弁になったり、女スパイに翻弄されるヤローどもはちょっと情けないんですけど…。戦争がテーマなのにイギリスの美しい田園風景がたっぷり見られるなんて、珍しい映画ではないでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2006-01-21 16:43:56)(良:1票) |
209. プライドと偏見
古典の原作があるようですが、女性に夢を見せるハーレクィン・ロマンス的な作りの映画です。男性とのお付き合いや結婚などで想うところアリの女性が観たら、何かヒントを得られるんじゃないでしょうか。面白いカメラワークのところもあります。でも、イギリスの田舎やら古城やら素敵な風景を使った画も、美しさの面で言うとイマイチのような気がしました。素材だけではなんともならないのですなあ。でもって割と高得点なのは…Mr.ダーシーがすごくカッコ良かったからです。良い夢見させてもらいました。 [映画館(字幕)] 7点(2006-01-19 19:07:50) |
210. あらしのよるに
山羊と狼という立場には置き換えているけれど、人間でも設定できそうなドラマ。まず、ちょっと時間が長すぎたかと思いました。80分くらいで充分まとめられる内容では?だから必要ないエピソードもちらほら。なかなか深いところを突いていて良いお話だとは思うのですが、問題解決をせず、ザッとあさってのほうに流してしまった感もあります。それでも年かさが益して涙腺が緩くなった私は、子どもに観られないように素早く目頭を拭いていましたケド。あとは、サンリオキャラクターのような山羊の声が大人の男性の声そのものだったのに違和感を感じました。お芝居は悪くないんだけど…。 声優さんの持つ「声の力」って必要なんだなと再確認しました。だがしかし“漢”竹内力は手放しで褒めたいです。 [映画館(字幕)] 6点(2006-01-16 00:28:17) |
211. アワーミュージック
《ネタバレ》 色遣いはとても美しいのですが、やっぱり難しいです。この点数で精一杯。ならばレビューなんぞ書かなくてもいいんだろうけれど、こんな凡人の意見があってもいいかと思って…。時間が短いのでだいたいの流れは捉えられました。映画と実録を交えた「戦」の映像を延々と流し地獄を表現した後、今まさに再生されつつあるサラエボを舞台として争いの歴史を語る物語、そして天国をイメージするラスト。人間の営みのなか、途絶えることのない争いに対するゴダールのメッセージの映画、だと思います。が、ひとつひとつの言葉やシーンの意味がスッキリ頭に入ってくることがなく(映画の中の学生も飽きていた)、やっと大きな展開があったかと思ったらラスト…。細かい疑問は書き出せば山積みになるでしょう。ただひとつ、女学生が天国に行ったことが告げられるシーンで画面いっぱいの花が映された瞬間は、映像表現の深さ、美しさに感心しました。 [映画館(字幕)] 5点(2006-01-08 20:39:14)(良:1票) |
212. 千年の恋 ひかる源氏物語
天海祐希、この映画のことは素早く忘れたほうがいい。な。 [地上波(字幕)] 3点(2006-01-03 14:38:02)(笑:2票) |
213. コーヒー&シガレッツ
画も話も小気味よく楽しい。師走に片付けものしながら見てはいけませんね、コーヒーを飲みながら登場人物に付き合う感じで観るのが正解です。監督、この映画に関しては創作の苦しみとは無縁で愉快な気持ちで作ったんじゃないでしょうか。個人的には1時間丁度くらいで切り上げて、もっと観たいな、という気持ちを残しながら終わった方がこんな洒落っ気オムニバスには向いているような気がしました。「色も温度も丁度良かったの」なんて、言ってみたいわぁ。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-31 21:16:50)(良:1票) |
214. ロバと王女
これは女の子のための映画ですね。衣装の豪華さは今まで見た映画の中ではナンバーワンです。それがまたドヌーヴに似合ってましてとっても美しい。美術の色遣いも虹色のきらめきでございました。この豪華な映像というのも映画ならではの楽しみです。たっぷり堪能させていただきました。エピローグで「子ども、母、祖母が居る限り語り継がれる話だろう」という語りがありましたが、もう仰るとおりスタンダードなお伽噺です。でも女の子はこんなのに弱いんですよね、だから語り継がれちゃうのよね。 [映画館(字幕)] 7点(2005-12-31 21:03:48) |
215. カンフーハッスル
《ネタバレ》 チャウ・シンチーでは連続馬鹿笑いを希望しているので、ほの暗い綺麗な映像と素敵なラストにガックリ。「サッカーはもうしない!!」って、お馬鹿は抑えるって事だったのかな…寂しい。英名ステファン・チャウには笑えた。 [DVD(吹替)] 6点(2005-12-31 14:19:51) |
216. 阿修羅城の瞳
舞台で観るべきだったなぁ、こりゃ。小日向文世の「つまんね!」が頭の中でずっと繰り返されていまして…。役者さんそんなに悪くなかったです。特に市川染五郎は意外と健闘していた。一番の原因は、舞台をそのまま撮影したような作りだと思います。舞台も映画もどちらも高い評価を受けている作品は沢山あると思いますが、映画は映画、舞台は舞台で場面設定もセリフももっと練って作っていると思うんですが…。りえちゃんは前髪を下ろすとすごく幼く見えて、30越えてるなんて嘘みたいですね。 [DVD(字幕)] 4点(2005-12-23 02:41:21) |
217. 茶の味
《ネタバレ》 最後の逆上がりで不覚にもポロリときたのでおまけ。まさか石井監督に泣かされると思わなかったな。今までどうもバイオリズムが合わなかった石井作品だったけれど、いつもと違って綺麗に静かに作ってあったのが良かったらしい。でもいつもどおりサラリと暴力が添えてあるのはやっぱり好きじゃない。風景シーンや女の子の容姿も美しすぎて反って計算を感じたが、まあ美しいのは悪いことではないし…。どうでもいい小さな会話の描写が昔懐かしい「スネークマンショー」を思い起こさせたので、個人的にジイさん役は小林克也が良かった(笑)。「三角定規の歌」はこれから時々口ずさむと思う。イロイロ書いたけれど結構楽しめた作品。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-13 02:40:11) |
218. いつか読書する日
《ネタバレ》 30年もの間、たった一人の人を想い続ける…主人公美奈子の場合はその間独身をとおし、両親もいないのに育った町でずっと暮らしながらひたすら静かに想い続けているのだ。30年という途方もない時間の中に紆余曲折が無いはずがない、という考えが私の中にあるので、何だか夢物語でも見ているような感じがした。反面羨ましいような気持ちも…。明るい坂の町の情景と脇の登場人物が魅力的で、認知症の男性のエピソードなどとても気に入ったが、いきなり現実に引き戻されるようなシーンも混ぜられていてちょっと苦みもあった。ラストまでのあの流れも呆気に取られたが、彼女にとっては30年囚われていた想いから脱した感覚があったのかな、それがあの笑顔ではないかと思う。田中裕子は格好良さと鈍臭さを一緒に表現できる稀な俳優だな、と感心した。 [映画館(字幕)] 7点(2005-12-06 17:54:25)(良:1票) |
219. ウィスキー
《ネタバレ》 うん、噂どおりカウリスマキの映画に似ていますね。すごく静かな流れの中で、人々の微妙な感情を丁寧に映しています。ラスト20分くらいは、こんなおっとりした映画を目を剥いて見つめてしまいました。「ウィスキー」の掛け声無しには揃わないハコボとマルタの笑顔がもどかしくて寂しい。タクシーの中のマルタの表情、マルタが抜け落ちてしまった日常でのハコボのセリフにひどく強い孤独を感じました。監督は若干30歳だそうで、間や空気で事を運ぶこんな映画をその年齢で作ってしまうとは驚きです。この先どんな作品を作っていくのだろうな、とちょっと余計な心配も…。でも良くできた映画です。7.5点のところをこの点数で… [DVD(字幕)] 7点(2005-12-01 19:38:44)(良:2票) |
220. オペレッタ狸御殿
スイマセン、あまり楽しくなかったのです。邦画のいい香りがプンプンして、平幹二朗の顔が出た瞬間のたまらなくいかがわしい感じは最高だったのに。チャンちゃんは笑顔や身のこなしがとっても可憐で、この訳わからん設定の中でよく頑張っていたと思います。だからオダギリジョーにはもう100倍はじけて欲しかった。中国語で喋る彼女の受け皿になってフォローし支えてくれたら、私ももっとこの映画の空気に乗っていけたかなと思います。役者さんは彼以外はみんないかがわしくて良かった。だからお人形のような表情をもっと変幻させて活躍して欲しかったです。でも鈴木清順翁はそんなこと望んではいないのでしょう。高齢になってもこういったパッションを持ち続け、立派過ぎる絵空事を描ける力はすごいと思います。 [DVD(字幕)] 5点(2005-11-24 01:53:45) |