201. アメリカン・パイ
《ネタバレ》 やー、馬鹿ですねえ。青春のエロバカを全肯定した清々しさ。明るく単純で屈託ゼロ。こうまで健康に振り切れるのがアメリカ文化の強みですなあ。 彼らも”デキれば誰でもいい”わけではないのだけど、女の子を値踏みするような目線が無いのが良いです。かつて自分も通ったボーイズ期の懊悩を正しく理解し、継承しようと心を注ぐ主人公のお父さんの配置が絶妙です。いや笑った。 個人的には全員目標未達成で終わってほしかったな。ドンマイ次頑張れ、とめげずに先へ繋げる方が幕の引き方としては好み。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-01-30 23:12:32) |
202. メイフィールドの怪人たち
近所に「怪しいやつ」がいたら恰好の噂になっちゃうてのは洋の東西問わずですな。人類皆詮索好き。舞台がご近所に限られるのでスケールが小さく、大の男が何やってんだか。とりあえずこちらとしても謎の家の正体には興味が湧くので、ヒマな3人のやんちゃぶりを生温かく見守ることになりましたが。 爆笑には程遠く、トムたちのから騒ぎに失笑するレベルですが、仕事で疲れた後などにダラーっと鑑賞するにはうってつけです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-23 23:35:48) |
203. 暗くなるまで待って
《ネタバレ》 人類皆の可憐なヒロイン、オードリーヘップバーンが盲目のハンデを負っている、そこへ男どもが3人がかりで(相手の目が見えないのをいいことに)奸計をめぐらすって図がもうヒキョーの極みでわなわなと震えます。果敢に立ち向かうオードリー、メガネの子との作戦も功を奏したりと、弱者側の思いもかけない健闘ぶりも否応なく物語を盛り上げます。 舞台劇の手法がスクリーンにも有効でしたね。鑑賞者から見えるものの範囲はほぼオードリー(が知覚できるエリア)と同じで、とても狭いのですがその分自由がきかなくて、もどかしくてどきどきしました。 ところで最後の最後にようやくやってきた亭主の「よく頑張ったね。こっちへおいで」とは何たる台詞か、と腹を立てたのは私だけですか。暴漢と闘って心身ともに疲弊した盲目の妻に、いろんな物が散乱した足場を歩かせようとは何事か。お前が行けよ。私が監督ならココ脚本のやり直しを指示しますね(怒)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-01-20 23:53:46) |
204. ワイルド・バレット
《ネタバレ》 2分で考えついたような安易な邦題が「どうせB級」という不当な先入観をもたらしている感があります。B級はB級ですけども、かなり一生懸命に練られた脚本で面白いですよコレ。 一丁の銃が次々と人の手に渡っていくにつれ広がる騒ぎと予想不可な展開。場面の一つ一つが手抜き無しに緊迫するし、次に繋がる伏線にもなるしで目が離せなくなります。少年が出会う娼婦の情の厚いこととか、チャズ・パルミンテリ扮する悪徳刑事の狡猾な存在感とかDVロシア親父がJ・ウェインに心酔のオタクぶりをまさかの場で発露するとか、脇キャラに至るまで強烈な個性を放ちます。 秀逸エピソードがベラ・ファーミガvsサイコパス夫婦の一幕。本筋とはほぼ無関係なこのくだり、無関係にもかかわらずしっかり作り込んでいてセットも役者も完璧に不気味。なぜここにこれだけ情熱を注ぐのか。良いなあ。ベラ姉さんの気っ風も麗しい。 ラスト直前の数分には複数回のひっくり返しがあります。わたしはどれも読めなかった。最後まで驚かせてやろうという気概を感じる気持ちの良い映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-01-17 23:21:49) |
205. ドニー・ダーコ
《ネタバレ》 十代の生き辛さ全開のドニー君。ジェイク・ギレンホールが天才的な仕事をしてる。彼はドニー・ダーコそのもの。常に不機嫌な鬱屈を抱えた顔で、やや猫背気味に歩く。ドニー君は受難だもんなあ。ちょっと逸脱したら無駄なカウンセラーに付き合わされ、秀才の姉とアイドル気取りの妹はどう見てもリア充だし。 世界の終わりを予告するウサギ、アイツはティーンエイジャーの心象風景の一つと思う。自分だけが見られる絶対的な存在、ハタチを過ぎたらもう見られない。 ドニー君の通う私立高(制服なんだよね アメリカにも増えてきてるとか)は妙なスピリチュアルな道徳授業を強制する、変な学校。ドニー君ははっきり言ってしまうんだ教師や外部講師に、その欺瞞と自己陶酔を。図星ゆえにニラまれる。おかしな犬の銅像、そりゃ斧をぶっ刺したくもなるよね。ウサギは背を押しただけ。 暴走気味のもやもやを抱えて生きる本人だってつらい。終盤、ドニー君が笑顔を見せるのはやるべきことを発見したからかな。恋すら霧消する切ない青春奇譚でありました。ちょっと忘れ難い一本です。 [DVD(字幕)] 7点(2023-01-13 17:53:05) |
206. 窓・ベッドルームの女
《ネタバレ》 ヒッチコックへのオマージュと巷では評されているようですが、S・グッティンバーグがどうしても醸してしまう能天気なオーラや、かなりご都合的に進む後半の捕り物帳など全体的にB級寄りの仕上がりです。 ちょっとした男気というか、社会正義を発揮したために巻き込まれる暴行事件。当初暴行事件だったはずが殺人事件へと事は大きくなるし、警察は疑ってくるし、計画仲間だった不倫相手は突き放してくるしで「こんなはずでは」な案件が妙にリアルに主人公に迫ります。中盤までのこの展開はなかなかスリリング。まあここまでが一番の盛り上がりに感じるのが残念といえば残念。 若き頃のイザベル・ユペールってこんな当て馬的な仕事もしてたんだね。脱ぎっぷりの良さが買われたのかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-01-11 23:45:38) |
207. 怒りの日(1943)
《ネタバレ》 恐ろしいことこの上ないお話でした。体調が万全の時に観ることをお勧めします。 中世に吹き荒れた魔女狩りの恐ろしさは人類皆周知のところかと思います。この映画、人類史の暗黒出来事のすべてがつぶさに描かれていてしんどい。 人が人に不信を抱く連鎖の怖さ、嫌いな者を魔女と決めつけて処罰しようとする人間の心の狭隘なこと、いつ自分が指差されるかもしれないという陰鬱な社会の空気や拷問を受ける老婆の断末魔。気分が落ち込むこと必至です。 舞台となるのは牧師館。若い後妻と彼女と年の近い息子の帰還によって生じる家庭のひずみを、魔女狩り社会の暗い空気と連動させていることがエグさ倍増たらしめています。 元々そりの合わない姑と嫁の間にたつ波風のなか、若い二人の不倫が惨劇のトリガーに感じられて観ていておっかなくて、もう。 通常の時代であればモラルを逸した不倫は男女両名の責任であるでしょう。しかし魔女という烙印は女一人を徹底的に悪たらしめ、男は責任逃れをしてのける。その心変わりの酷薄なこと、姑の老獪なこと。絶望した若い女の表情、こんなに恐ろしく心の冷えるラストは他に数本しか思い浮かばないですわ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-01-10 16:29:17) |
208. ブレックファスト・クラブ
《ネタバレ》 青春モノってそれこそたくさんの切り口があるけれど、本作は図書館という一か所に人物を留め置いて、互いのおしゃべりで高校生の心理に分け入っていく会話劇なのでした。18歳という季節の微細な揺れを忘れず記憶していないと書けない脚本だと思います。 キャラ配置はクラスカースト上位の男女2名・ガリ勉・不良・不思議系、とうまく散らしています。80年代の作品だけどこの構図は大きく変化してはいないのではなかろうか。現在の10代でもきっと共感しうる感受性が備わっています。 高校生ってのは家と学校が世界の全てだったりします。大人の目から見たら他愛のない悩みが、彼らのリアルな演技で懐かしく思い出されました。 たぶん月曜からはまた彼らは元に戻るような気がする。他の友人たちの手前、劇的に関係が変わることはないのではないかしら。でもきっと卒業してしばらく経った時、高校生活で鮮やかに思い出すのは何よりもあの図書館での半日なのだと思う。青春てやっぱり綺麗だな。綺麗であってほしいな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-01-03 17:57:44) |
209. ジェントルメン(2019)
《ネタバレ》 初期のガイ・リッチー作品好きな方にお待ちかねの一本。わたしもその一人。 ちょっと真っ当じゃない色んな職業や立場の連中が次々関わりあって事態をくるくるとあらぬ方向へ転がしてゆく。先の読めなさとお話の饒舌ぶりは初期のガイ・リッチー味健在で楽しいです。語り手がヒュー・グラントってのもまたぴったり。無責任にじみ出るチャラい演技は、彼のお手の物ですからね。 ギャングものですので物騒な話には違いないのだけど、ガイ・リッチーはいつもトボけた筆致なのでそこが好き。強面のおっさんたちも脚の速さでは悪ガキに翻弄されてしまって、スーツと革靴で汗だく。一見正義の人に見えるコリン・ファレルは困惑顔しながら、やってることはエゲツないし。相続した建物の莫大な維持管理にいっぱいいっぱいの現代貴族事情もシナリオに織り込んでるあたり、英国の香りがふんぷんとしますね。 鑑賞者にとって生き残ってほしいキャラがきちんと勝ちを収めるのも大変喜ばしいです。勧善懲悪では決して無いですが。 最後にどんでん返しが2,3あるのですが個人的にはちょっと返しすぎに感じてしまったな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-27 15:02:54) |
210. ボルサリーノ
《ネタバレ》 フランスの二大スターによる暗黒街成上り物語。ギャングにつきものの血なまぐさい描写も少しあるけど、全体的に軽めです。 中盤の食肉倉庫での一戦が一番の見どころ。このくだりの緊迫感は一級の演出力を見せます。 が、本作は全体として見ると展開がやや安易で、描きこみの浅さが2時間もののTVドラマに近い印象を受けます。警察までが「君らのことだから証拠を残していないだろう」とヨイショしてどうする。魚市場で狼藉を働くチンピラレベルならまだしも、公共の場でマシンガンをぶっ放して殺しをやっておいて捕まらんとはあまりに主人公びいきが過ぎる脚本に感じます。 ドロンはいつものドロンだけど、ベルモンドは序盤の抜け目ない小チンピラが板についていて、芝居の幅広さを見せます。彼らの置かれた背景がもっと丹念に描かれていたら、ラストのベルモンドの散り際も一層劇的な場面になったのにな。なんか性急な終わり方でしたよね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-12-25 22:40:18) |
211. ダークマン
《ネタバレ》 わー、サム・ライミ楽しそうだなあ。○○マンってタイトルからして無邪気だし話が小学生男子の書いた脚本みたい。 悪者は極限まで凶暴で一切の酌量の余地なしレベル。ラリー・ドレイクの面構えが大変良いし、”指を折るためのオリジナル器具”を携帯しているという細かい描写も良いです。 「相手の顔を手に入れることができる」というのは攻撃において非常に有用性が高いですから観てる方のわくわくも高まるわけで、そんな中ニーソンは敵顔で防犯カメラに名乗るとか小技を繰り出して楽しいのでした。 強すぎてもツマラナイので人工皮膚の保持時間を制限して主人公にもハンデ付け。ダークマン、腕力は超人的でも高所鉄筋上でのバランス取りは常人レベルなのでむしろ敵の方が上手、とラストの対決場面にも力を均衡させているのが微笑ましい。 キャリア序盤のリーアム・ニーソンが初々しいです。それに今や硬派な演技派女優イメージのF・マクドーマンドもこんなにベタな悲劇のヒロインをやってたんですね。何か強めのしっぺ返しをするものだと勝手に期待してしまった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-20 16:29:42) |
212. 王になろうとした男
《ネタバレ》 この話実在のモデルがいたのですね。「○○王に俺はなる!」を地で行く英国人がいたとは。 いい年をしてボーイズドリームを追求するコネリーとケインの二人がいい顔してるんですよ。あ、もちろん純粋でキラキラしているのとはちょっと違って世知の長けたどっちかというと詐欺師顔ですね。それでも命がけの行程をやり遂げるんだから大層な根性であります。 Dreams come true のそのあとにやって来る驕り、読み違い、悲劇、と冒険の結末はシビアで切ない。追い求めているうちが一番楽しいのかもしれないですね。 ところでお話はコネリーとケインの軽妙な演技もあって楽しい雰囲気なのですが、作品に通底しているのは大英帝国の威光を纏った白人の”上から目線”なのですな。文明人たる自分たちがアジア人を教え導いてやる、という態度を包み隠しもしてません。 19世紀の帝国主義を感じ取ってしまうと、無邪気な冒険野郎のお話もやや鼻白んでしまうのが玉に瑕でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-12-18 14:30:50) |
213. ザ・ドライバー
《ネタバレ》 わあ、これはカッコ良い映画ですね!わたしはハードボイルドの自己陶酔成分が苦手なのだけど、この作品は酔っぱらう隙が無いほどに無愛想です。へらへらと人を小馬鹿にした表情の刑事ブルース・ダーンを除いては誰も笑わない。口角すら上げない。紅一点のアジャーニすら。 ”男は黙って○○”式の美学。ライアン・オニールのストイックさが夜の街の画とぴったり合って、心ときめく素敵さです。 カーアクションも元祖作だけあって迫力あります。今ほど派手に画がブレない分、むしろ観易い。後続作品のお手本になるだけあります。 クルマの一台一台に個性と存在感があって70年代ぽいですね。オレンジのベンツが素敵!(なのに壊された。ショック。) 濃い目のコーヒーにテキーラを垂らしたようなガツン、とくるハードでクールな一本。好きです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-13 16:43:06) |
214. オキュラス/怨霊鏡
《ネタバレ》 ざっくり言うと怖い鏡による幻惑系ホラーです。血しぶきがやたらと飛んだり、音とカメラ切り替えでわっと驚かす系ではないので格調は低くないです。”ヘレディタリー”ほど胸悪くもならないのでその辺も安心です。ああ、でもバッドエンドではありますが。 鏡、強いなあ。こちらの認知に作用してくる上、物理攻撃も効かないのではお手上げではないですか。設定がそうなら、そこをね、そこをなんとか人間の知恵で上回ってくれる展開を期待したんだけどね。脚本の力及ばず、といった感じで残念。 過去編の子どもらも上手いし、現在と過去を交互に見せる工夫は感じられるけど、話の進み方にたるみが生じて途中飽きが来ました。元は短編映画だったと聞いてなんか納得です。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-11 16:57:48) |
215. ザ・メニュー
《ネタバレ》 すごく変わったテイストのサイコパス奇譚であります。 供される高級料理の華美なこと、セレブ客らの装い、日常世間と切り離された島という隔絶空間、と舞台装置は満点。こういうのは徐々になんか変、となっていくのがセオリーですけど(ミッドサマーのように)、本作はアニヤ・テイラー=ジョイの目線を借りてシェフの「やべえ奴」具合がわりと早めに露見します。 レイフ・ファインズシェフは初手からかなりの居丈高でクセが強いなどというレベルをはるかに超えてて、なかなかの高サイコ度。アニヤの連れの男がシェフに心酔する塩梅も気色悪く、我々もヒロイン同様げんなりできるようになっています。 崇めるシェフに酷いイジメを受けて自死する哀れな男をニコラス・ホルトが表情も絶妙に演じます。”怒りのデスロード”のニュークスなんですね、彼。どうしたって重なってしまうわ。 かなり粗く、力技で押してくる脚本なので細部はあちこちおざなりではあります。設定に矛盾が生じるほどでない、ギリギリのところ。ですけども、シェフが復讐のために呼んだメンツをもっとキレイに揃えてほしいですよね。浮気された妻や映画スターのマネージャーらはちょっと殺られる資格(?)に足りない感じ。映画スターに至っては”つまんない映画に主演したから”という同情を禁じ得ない理由です(笑)。「俺は監督じゃない!」って叫んでたけど、そりゃそう言いたくもなるよね。 [映画館(字幕)] 6点(2022-12-09 17:23:22)(良:1票) |
216. 110番街交差点
《ネタバレ》 全体的にくすみがかっていて(フィルムのせいもあるのだろうけど)この重たさ、やるせなさ。70年代の映画作品の香りが炸裂です。たくさん人が死ぬ、その場面ひとつとっても西部劇のようにカラりとしていなく、80年代のように記号化されてもいない。リアルで1件1件がショッキングなのが70’sフィルム。 マフィアの金を横取りするなんてもうハナっから死亡確定な黒人3名。やはりといいますか凄惨な人生の幕切れを迎えてしまいます。じりじりとマフィア包囲網が狭まるヤバイ感じ。タクシーで駅に逃げようとして手中に落ちるクリーニング店主のくだりは手汗ものの演出でした。ああおっかない。 黒人側の描写は情感高めで見せますが、警官サイド特に犯罪者とつかず離れずの癒着状態にあるベテラン刑事の話をもう少し掘り下げてほしかったです。ラストの衝撃度を上げるためにも刑事と裏社会との因果をもう数エピソード。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-04 17:25:00) |
217. 心の旅
《ネタバレ》 善い人の愛のあるお話って皆好きだけど、上手くやんないとクサくなりがち。その点本作はベタではあるけど、心地よいハートウォーミングな出来となっていると思います。 オリジナル脚本を手掛けたJ・J・エイブラムスの力量もあるし、ハリソン・フォードの一本調子な表情が意外にも性格激変後のおっとりヘンリー像にハマった、とも言えます。 ヘンリーの性格変化に伴う人間関係の地殻変動描写がいいとこ突いてんなー、と思うのです。家族、特に娘ちゃんとのやり取りが図書館での小学生レベルのイタズラなど微笑ましくて巧いし、職場では良い味出す秘書のおばさんが好感度高いですし、家政婦さんもなかなかの存在感です。たくさんの周囲の人たちとのエピソードを描ける、これはやっぱりエイブラムスの人間観察力の賜かと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-03 23:01:45) |
218. 赤い河
《ネタバレ》 ああこりゃ名画ですねえ。映画「シティ・スリッカーズ」で都会暮らしに疲れた現代の男たちが熱く語るのがこの「赤い河」でした。 もう、広大ですもんね空も大地も。アメリカが夢を抱いていた頃の人間の希望、ひたむきさがスクリーンに迸る西部劇のマスターピースというのも頷けます。 映像が圧巻。スクリーンいっぱいの牛牛牛。この大暴走を止めるべく疾走する男たち。この迫力、男くささ。ジェンダーだなんだとかまびすしい現在ではちょっと口にしづらいけど、これは真に男の仕事、男にしか成せない事業と思いました。いやシビれるなあ。 で、当然主人公はジョン・ウェインだから正統にかっこ良いのだろうと予想していたら、裏切られましたまさかの。よもや老害と部下らに反駁され、解任される展開になるとは夢にも思わなんだ。オイオイ、大丈夫かアンタらジョン・ウェインやぞ? それに、ワタシ的にはダンスンがさほど理不尽に横暴とは思わないんですよ。契約違反と盗みをしでかした奴はシメないと組織がばらけるでしょ。私刑はよろしくないですが。あのドロボー二人の処遇を養子モンゴメリーがどうしたのか描かれてないのがちょっと不満。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-02 23:32:21) |
219. マップ・トゥ・ザ・スターズ
《ネタバレ》 クローネンバーグフィルターを通して見たハリウッドはエグくてグロテスクの極みでした・・。 理解に苦しむなんてレベルを超えてエゴと自意識に過剰に振り切れた群像劇。付き合うのがなかなかキツくて、なので凄惨なラストにはむしろちゃんとオチた感がありました。 嫌な子役、嫌なセレブ家族、痛々しいまでに自己承認に追われる女優。ジョンキューザック演じるセラピストの自己中な冷酷ぶりには背筋が冷えるし、病んでるジュリアン・ムーアの”ただれた感じ”には胸が悪くなりました。火傷痕の残るヒロイン、ミア・ワシコウスカを応援したくなるのですが彼女もまた近親愛に囚われてて、不気味でよくわからない人なのでした・・。 「そして誰もいなくなった」的終幕はこんな狂った業界を丸ごと焼き払ってしまいたいという監督の願望なんでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-27 16:38:53) |
220. モード家の一夜
《ネタバレ》 ロメール監督は女の子の描写も上手いけど、男性の心理を捉えるのも達人級なのですな。ジャン・ルイ・トランティニャン演じる主人公がね、ちょっと複雑で屈託ありまくりで女から見ると興味深いのよ。 ロメール作品の人物は大量の会話を強いられますから(ホント役者は大変だと思うよ)、本作のジャン・ルイも道徳がどうの宗教がああだのとよくしゃべる。よくしゃべるとこ見ると全くの奥手というわけでもないんだろうけど、モードが露骨に誘っても据え膳食わないので女に怒られるという下手打ち。 意中の女の子に声をかけてみて、ちょっと上手くいったものだからモードに対してもなんか急に積極的に出るんですよね。結婚するのはどう?とか言っちゃってこの辺りの、事がうまく進んでいる時の気の大きくなっちゃうメンズの心理状態よ。ロメールさすが。 ラストもまたなんとも皮肉です。最後に知るのは男なのね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-24 23:34:51) |