241. ウォーターワールド
う~ん、何なんだこの評判の悪さ…。別にアメリカでも大コケしたワケじゃなく、ちゃんと1億ドル以上の興行収益をあげてるんですけど。ただ、製作費が膨大だったんで、ちっとも儲けにならなかったということらしいんスけどね。…って、やっぱりアカンか。ただ、陸地が海に沈んだ未来世界を、セットや小道具に至まで、ここまで説得力豊かに描き出したディテールへのこだわりは十分”センス・オブ・ワンダー”たり得ている。それに、デニス・ホッパー演じる水上バイクの悪党集団”スモーカー”ときたら、1960年代にホッパー自身が出演していた暴走族映画(『続・地獄の天使』とかね)のセルフパロディになっている…といった、「遊び」の要素もふんだん。どうも、ケヴィン・コスナー主演作ゆえに叩かれている本作ですが、意外なほどアクションをうまくこなす彼を含め、決してバカにしたもんじゃない快作だとぼくは思っています。 8点(2003-11-14 12:34:45)(良:1票) |
242. キッスで殺せ!
《ネタバレ》 冒頭、いきなり夜のハイウェイをトレンチコート姿(その下は全裸っぽい)が逃げ、と思えばアッという間に殺される。このあたり、ほとんどデヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』のノリです。その後も、1950年代のハードボイルド私立探偵ものにしてはやたらファナティックな人物や描写(夜の階段を撮る、あのカメラアングル!)が連続し、息つくヒマもないまま、原爆ドカンの驚天動地なラストへ…。す、凄い。あれって、つまりは開けると地上に災いをもたらす”パンドラの箱”だってこと? 実はこの映画、核への脅威を訴えた「社会派ドラマ」だったの? …そういったあらゆる解釈だの疑問だのをうっちゃったまま、観客を取り残して映画は唐突(にもほどがある…)に終わっていく。こんなところに、リンチのルーツがあったとは! 8点(2003-11-13 15:50:22)(良:1票) |
243. キックボクサー
試合中に兄を残忍なタイ人選手に殺されたヴァン・ダムが、師匠のもとで猛特訓して復讐を果たし、ついでに師匠の娘(だか孫。美人!)ともデキるという、まことどうでもいい展開。でも、まだ若々しくて初々しいヴァン・ダムは、実に見事なキックと、ナイーブな演技で好感度大です。その美しいアクションは、フォトジェニック(!)ですらある。何でもっとブレイクしないんすかねえ。やっぱり、女癖が悪いってのが… 6点(2003-11-13 15:28:34) |
244. 奇蹟の輝き
前半、子どもが死に、奥さんが自殺するあたりまでは文句なしに満点! まったく、何というシンプルさと美しい語り口なんだと陶然となってしまう。…だのに、主人公が、地獄に堕ちた妻を助けようと”あの世”へ行って(逝って?)しまうあたりから、ほとんど「霊界観光映画」になってしまうんだよねえ。トホホ。もちろんそこには、西洋キリスト教の文化的背景や思想が込められているのかもしれないが、それにしても天国や地獄の何という子ども騙しなチャチさ! …本作の監督ビンセント・ウォードには、地下のトンネルを抜けると別世界に出る、といった映画(確か『ウイザード』だっけ。題名忘れました…)や、主人公が死ぬことでやっと愛を成就できるという『心の地図』という、それぞれにスピリチュアルな(そして、どちらも素晴らしい!)作品があったんで、題材的には合ってるとは思うんだがなあ。でも、くどいけれど前半部分には、この天才的な映像作家の真価が間違いなく見出せると思います。 5点(2003-11-13 15:15:51) |
245. キス・オブ・ザ・ドラゴン
娘のために街の女として生きるブリジット・フォンダが、安っぽさとその裏にある優しい母親としての二面性を出していて、なかなか。チェッキー・カリョの極悪非道を絵に描いたような悪徳刑事も、楽しい。ジェット・リーのアクションは、言わずもがなでしょう。でも、リュック・ベッソンてば、もういいかげんこの手の、ハリウッドもどきな”ごっこ”映画でお茶をにごすのやめにしなよ。 5点(2003-11-13 14:35:19) |
246. 史上最大の作戦
『プライベート・ライアン』を見せられてしまった現在の我々には、どうしてもこの映画で描かれるノルマンディー上陸作戦の一部始終が、緊迫感とリアリティ不足に思えてしまうのは仕方がない。でも、戦争映画というより、”20世紀の歴史のある瞬間の再現”というエピック(歴史もの)としては、連合国ードイツ双方の視点をそれなりに公平さをもって捉えているんじゃないでしょうか。それに、海岸線を兵士たちがうじゃうじゃ上陸するのを戦闘機からワンカットで撮ったシーンは、忘れ難い素場らしさ。戦争を賛美も非難もしない、まるでメッセージ性のないスタンスも、「ドラマのなさ」として否定する向きもあるでしょうが、スピルバーグ的あざとさの方こそにヘキエキさせられた者としてはずっと好ましいです。声高に、あるいはセンチメンタルに反戦を訴えるのは簡単だし、どんな戦争であれ肯定するのは論外だけど、この映画のような、一見アメリカを中心とした勝者の自画自賛に見えて、あくまで「再現=記録」に徹しようとするニュートラルさこそが実は難しいのだから。 8点(2003-11-13 13:06:54)(良:1票) |
247. 静かなる男
作品的評価をひとまず置くなら、ジョン・フォード監督の作品中でも最も好きな映画。緑、緑、また緑の風景の中、愛すべき人物ばかりが登場して、酒にケンカに明け暮れるこの映画の中のアイルランドは、まさに本物のユートピアじゃないか。有名な延々と繰り広げられる殴り合いシーンも、野を越え山を越え、酒場でお互いひと休みして、また再開…といった、おおらかにしてユーモラスな名場面。何回見ても、あまりの幸福感に思わず嬉しナミダがにじんでしまう、本当に本当に本当に愛すべき映画です。ハレルヤ! 10点(2003-11-13 12:41:55)(良:4票) |
248. 死刑執行人もまた死す
戦時下に作られた反ナチ・プロパガンダ映画なんだけど、それ以上に、何か異様な「悪夢」めいた雰囲気に包まれた群集劇といった趣き。ナチの司令官を暗殺したチェコのレジスタンスと、その報復のために市民が犠牲になる…という暗澹たる図式はもちろん、ハイキーなモノクロ映像とめまぐるしい編集が迷宮めいた印象を与えるためか? そういう中でもチェコ市民の勇気が称えられてはいるけれど、同じフリッツ・ラングがドイツ時代に撮った無声映画『メトロポリス』の群集シーンと同じ”誇張”と”様式化”が働いているようで、それがシュールな印象を与えているんでしょう…あそこまで表現主義的とまでは言えないとしても。で、個人的にこういうオブッセショナル(偏執的)な感触が生理的にダメなんで、いかに「名作」と言われてもちょっとツライ。ベルトルト・ブレヒト(『三文オペラ』!)が脚本に関わったことへの敬意を含め、実に興味深くはあったんですけどね。 7点(2003-11-13 12:03:09)(良:1票) |
249. 四月物語
「映画」として見たなら今イチ作り込み不足か…とも思わせるけれど、松たか子の「プロモーション作品」だと思えば、まあまあ満足できる(だって、ここでの彼女って、純で一途な”カントリーガール”という、男子にとって最も愛すべきキャラでしょ?)。ただ、岩井俊二って、つくづく「男の子」的視点と感性を映像に昇華するのが巧いなあ。それが最も素直に出た作品だとは言えるでしょう。同じシチュエーションでありながら、黒沢清監督の『ドレミファ娘の血が騒ぐ』とは180度大違い。見比べてみるのも面白いっすよ(笑) 5点(2003-11-13 11:08:26) |
250. シェーン
もう随分と前に、セルジオ・レオーネの『ウエスタン]と2本立てでリバイバル上映された時に見たのが、今思うと失敗だった…。まだガキだった自分にとって、レオーネ作品のインパクトの前ではいかなこの名作といえど、やはり霞んでしまったワケで。ただ、オジサンになって見直してみると、少年、母親、父親であり夫である農夫それぞれの視点・心情から”シェーン”というひとりの流れ者の存在を浮き彫りにする演出のきめ細やかさに、あらためて感心させられてしまう。シェーンに夢中になる少年に対し、やはり密かに「女」として心ひかれている母親が、「シェーンを好きになりすぎないでね。別れがつらくなりすぎるから…」というあたりの情感。そして、妻の気持ちを薄々感づいていながら、それを表に出さない夫の度量。それらの感情が絡まりあったダンスシーンは、さりげないけれどこの映画のハイライトのひとつでしょう。それが一転して、ガンファイトにおける強烈なリアリズムの衝撃! …ラスト、去りゆくシェーンを追うあの少年(と犬)に感情移入して、「シェーン、行っちゃいやだー!」と一緒になって叫んでしまったぼくなのでした。やっぱり、素晴らしい映画です。 9点(2003-11-13 10:48:53)(良:1票) |
251. グッドマン・イン・アフリカ
劇場公開の時には何か「感動作」っぽい宣伝していたんだけど、見てビックリ。ブラックジョークたっぷり(だけんど不発気味…)のコメディやおまへんか。 冒頭、アフリカの地と人間にとんと理解のない主人公が、てっきり性病にかかったかと慌てふためくあたりから、見ているこちらはこのボンクラ野郎に脱力しきり。ショーン・コネリーの医者は何だかゴルフばっかやってるし(アフリカのコースを回りたいために出演したんと違うんかい!)、死んだダンナの埋葬をめぐる現地女のエピソードは笑っていいのかシリアスなのか分からんし、ただ途方に暮れるばかりです。けれどまあ、作り手たちは、そういった「わけ分からなさ」こそが、イギリス人にとって(そしてこの映画を見ているぼくたち日本人にとっても)の「アフリカ」なのだといいたそうなフシもあり、それはそれで結構ご高尚な「異文化コミニュケーション」をめぐる映画とも言えそうなんだけど…。すみません、もう一度わざわざビデオ借りて見ようという気がどうしても起こらないんで。 5点(2003-11-11 19:57:57) |
252. 白銀のレーサー
ニューシネマ全盛の頃に作られた、冬季オリンピック映画。時代が時代だけに、爽やかというより相当シニカルでヒネくれてます。何よりレッドフォードが快演するスキー大回転の選手が、自信家で自分勝手な、イヤな奴なんですよ。で、ジーン・ハックマンのコーチと対立しながらも、アメリカチームを勝利に導いていく…かどうかは、ナイショってことで。マイケル・リッチーの演出は、淡々としたドキュメンタリー・タッチの画面とエッヂの効いたカッティングがめちゃくちゃクール! 主人公がアメリカの寂れた町にある実家へ立ち寄る短い場面に、この男の野心と孤独をさりげなく観客に分からせるあたりの語り口も見事です。何だか世間的には無名っぽい作品だけど、ガキ(や、その程度の精神年令のガキオヤジ)がはしゃぎまくるノーテンキなスポーツ映画にうんざりしている向きに、自信をもってご推奨いたしましょう。 9点(2003-11-11 12:42:44) |
253. 危険なめぐり逢い
物憂げな眼差しのマリア・シュナイダーが、何と言っても最大の魅力。彼女が少年の誘拐事件に巻き込まれ、被害者の男の子と少しずつ心を通いあわせていくあたりの展開が泣かせます。はすっぱな”悪女”を演じたシドニー・ロームも、ヌードにまでなっての大熱演。犯人役のヴィク・モローの凶悪な雰囲気もいい味だし。ルネ・クレマンの演出がとかく耽美的かつ詩的なムードに流されがちなところは、好みの分かれるところでしょうけれど、間違いなくマリア・シュナイダー好きにはたまらない、彼女が最も魅力的な作品として忘れられません。 7点(2003-11-10 17:37:39)(良:1票) |
254. 禁断の惑星
クレジットはされていなかったと思うけれど、”原作”はシェークスピアの『テンペスト』! 無意識(イド)が目に見えない邪悪な怪物となる、というあたりの設定にしろ、一見典型的な1950年代SFのようで、その知的かつ思索的な内容は、今見ても決して古びていません。愛嬌満点のロボットは、確かTVの『宇宙家族ロビンソン』にもレギュラー出演してましたよね。何より、超ミニスカート姿のアン・フランシスがラブリーだし、当時にしては本格的な電子音楽も、なかなかに新鮮だし…と、ほんと盛りだくさん。昨今の、精巧だけど味気ないCGによる紙芝居風映像にウンザリする向きにはぜひおすすめしたい、これぞセンス・オブ・ワンダーの真髄といった名作ですぞ。 9点(2003-11-10 17:25:00)(良:2票) |
255. ハートブルー
銀行強盗にはじまって、サーフィン、スカイダイビング、カーチェイス、銃撃戦、追う者と追われる者との友情…と、これでもか! の大サービスぶり。それをキャサリン・ビグロー監督は、流麗なキャメラワークで見せきってしまいます。めちゃくちゃ美人でこの才能…なるほど、ジェームズ・キャメロンも惚れるはずだわ。ただ、ともすれば一本調子になりがちで、そのためか迫力あるわりには印象が薄いとは言えると思うんだけど、それ以上に、不思議とスピリチュアルな《精神性》が漂っていて、その雰囲気にハマれる人には忘れ難い映画になるでしょう。キアヌも健闘しているけど、パトリック・スウェイジ美味しすぎ! 7点(2003-11-07 13:01:45) |
256. バード(1988)
(画面も、内容も)どこか曖昧な闇に満ち満ちている。それがこの時代と、チャーリー・パーカーの心象とダブッていくあたり、イーストウッド演出の真骨頂。汗にまみれながらも、バードたちのプレイはどこまでも「クール」で、映画を見、その演奏に聴き惚れるぼくたちは、冷たい熱狂に包まれていくのだ。…作品の出来はもちろん素晴らしいのだけど、それ以上に、ひたすらカッチョイイ映画であります。フォレスト・ウィテッカーの鬼気迫る演技は、時に作品そのものをすら凌駕する。こちらにも最大級の拍手を。 9点(2003-11-07 12:45:09) |
257. ナイト・アンド・ザ・シティ
ボクシングの興行でひと旗あげようっていうダメ男…って、いつの時代のハナシやねん! 現代ニューヨークを舞台にしていながら、ストーリーそのものはあきらかに1950年代風(そもそもこの映画、1950年製作の『街の野獣』のリメイクなのだった…)。デ・ニーロとウィンクラー監督のコンビは、やはり1950年代の”赤狩り”をテーマにした『真実の瞬間』を作っているけど、あの時代に対するこのこだわりは何? NYの夜の街並をとらえた映像は、見事だった記憶があるけど、ビデオじゃつたわるかなあ… 5点(2003-11-05 15:31:38) |
258. 今そこにある危機
ジャック・ライアンものでは、私見じゃ最も原作者トム・クランシーの世界に近づいた作品。現代社会の裏側で繰り広げられる熾烈な「もうひとつの戦争」、その政治的な駆け引きのダイナミズムを前面に出して、ライアンすらその”狂言回し”でしかないという…。他の作品じゃ、あくまでライアンはじめ人間たちのドラマこそが主で、国際政治の部分が従だもの。ただ、作品が何だかCIAのプロパガンダ(宣伝)映画みたいになっちゃったのは、いかがなものでしょうかねえ。前作同様、ライアンの娘(って、映画の題名みたい)として登場するソーラ・バーチが可愛いです。 6点(2003-11-05 14:57:45) |
259. 犬神家の一族(1976)
金田一耕助は、やっぱり石坂浩二に限るなあ。何よりあの”軽さ”がいいです。とにかくタイトルがやたらカッチョイイし、細かいカットつなぎなど、映像的にもモダニスト市川崑ならではの趣味の良さ満点。TVで見るぶんには、まあ文句ないでしょう。ただ、劇場でカネ払って見たなら、このペラペラな薄っぺらい画面が、ただおしゃれっぽく連続する中身のなさに失望させられただろうなあ。1970年代以降の市川崑カントク作品は、『細雪』を除いて(いや、あれすらも)ほとんどすべてカラッポです。”見た目”がよければいいじゃん、とおっしゃる向きにはよろしいんでしょうけど。 5点(2003-11-05 14:36:45)(良:1票) |
260. 怒りの葡萄
《ネタバレ》 こういう映画を、正真正銘ホンモノの名作と言うんです。大恐慌下の悲惨さを全面に出しながらも、類稀なる人間讃歌になっているあたり、まさにジョン・フォードの、そしてアメリカ映画本来の真骨頂。最愛の息子が殺人を犯し、逃亡しながらも、あくまで残された家族を支えて生き抜く決意をする母親役のジェーン・ダーウェルが、絶品中の絶品。オンボロトラックに家財道具を積み上げて、土ぼこりの荒野をヨロヨロと旅していく前半部分から、過酷なリアリズムを貫きながらも映像は息をのむほど詩的な瞬間の連続です。スタインベックの原作が20世紀の「ある真実」を直視した《叙事詩》なら、その映画化である本作にあるのは、祈りと憐憫に満ちた《叙情詩》的な眼差し、でしょうか。いつの時代にあってもその価値が失われない、これが「本当の映画」です。 10点(2003-11-05 14:00:29)(良:2票) |