241. ムーラン・ルージュ(2001)
正直バズ・ラーマン監督の安っぽいキッチュ趣味はには、かなりの軽蔑感を持っていたんだけど(『ロミオとジュリエット』なんか、あの安さにゃ殺意すら抱いたね)、ここまで徹底されてしまうと、これはもう一つの”美学”として認めなくちゃ仕方ない。『椿姫』をモチーフに、喧噪と感傷に満ち満ちた金ピカ映像の洪水の中に、崇高な瞬間がいくつも現われる。ニコール・キッドマンも最高だし、おのれの不明を恥じましたです。許せ、ラーマン! 9点(2003-06-30 13:05:12) |
242. 愛の世紀
前半の美しいモノクロで撮られた恋愛(について)の考察は、メランコリックで本当にうっとりするくらい素晴らしい。一転してデジタル映像で撮られた後半の、色彩の洪水の中で演じられるノーテンキなアメリカ(映画)批判にゃ大笑い。ますます「映画」そのものから自由になっていくゴダールに、ただ羨望と憧憬あるのみです。 9点(2003-06-30 11:59:58) |
243. ハイヒール(1991)
一種の母娘による近親相姦(!)的愛憎劇として、この頃のアルモドバルらしい辛らつな「女性観」全開。男としちゃ他人事としてフフンと笑いながら見ていたら、最後にはどよ~んと重苦しい感情にとりつかれちまった。この映画のビクトリア・アブリル、実に”イタイ”です。 9点(2003-06-25 18:49:51) |
244. リサの瞳のなかに
モノクロの小品ですが、とにかくインパクトのある作品です。異常な潔癖症ゆえにとある思春期病棟に入れられた青年デイヴィッドは、そこでリサという不思議な雰囲気を持った少女と出会います。心を病んだふたりが、その病んだ心を触れあわせる過程が、切なく、痛ましく、そして美しい、ホント清冽な映画でした。青年を演じるのは、後に『2001年宇宙の旅』のボウマン船長を演じるキア・デュリア。リサを演じるジャネット・マッゴーリンの黒い瞳も、忘れられません。1998年にテレビ映画としてリメイクされ、そちらの方ならビデオで見られます。『刑事ジョン・ブック/目撃者』のルーカス・ハース坊やが、確かデイヴィッド役のはず。もしよろしければ、ご覧になられては。 9点(2003-06-12 16:11:52) |
245. I love ペッカー
社会のアウトサイダーに対する愛情の豊かさに関して、ジョン・ウォーターズの右に出る者はいない。そんな男が、芸術と変人に捧げた最高の賛歌。あまりのハッピーさに、後半はほとんどナミダがとまらなかった…。彼を単なる「ヘンタイ映画の奇人監督」としか考えていないアンタ! この映画と『ヘアスプレー』を見て反省しなさいっ! 9点(2003-06-11 17:24:01) |
246. ROCK YOU! ロック・ユー!
言いたいことは山ほどあるんだけど、何か、もういいや。ただひとつだけ言うなら、最良のポスト・モダン映画として、みかけの軽薄さとは裏腹にこれほど「知的」な映画はないってこと。アメリカじゃコケたっていうけど、フン、そりゃそうだろ! 9点(2003-06-11 15:58:35) |
247. ルナ・パパ
かなり悲惨な悲劇的ストーリーを、ここまで元気良く、ハチャメチャに、でも決してある種の品位を失うことなく、とびっきり楽しい映画に仕立て上げてしまった作り手のセンスに拍手! 公開当時、某キネ旬で「エミール・クストリッツァの亜流」とクサされたけど、あんな映画賞狙いの野心家の映画なんぞよりよっぽど素晴らしいやい。いつもビックリしたような瞳のヒロインも、実に健気なコメディエンヌぶりで素敵だしね。満点でも良いンだけど、ラストの「マジック・リアリズム」的処理は、もうちっと違うカタチの方が良かったんじゃ…というのがあって。 9点(2003-06-11 14:15:52) |
248. ミリオンダラー・ホテル
決して全てに成功しているワケじゃないけど、ここしばらくのヴェンダ-ス作品では最も愛しい、そして美しい映画じゃないでしょうか。あまりにナイーヴな眼差しの中に語られる、「人間とは生きるに値いするか、そんな価値のない罪深き存在か?」という問いは、おいおいそんな恥ずかしいメッセージをわざわざ映画にすんなよ、と赤面させられもする。が、こんな時代であり、こんな世界だからこそそんな“問い”を自問し、本気で考察することも、きっと必要なのだ。ペシミスティックではあっても、決してニヒリズムには陥らないという、まさに『ベルリン・天使の詩』以降のヴェンダースの決意がひしひしと伝わってくる。やっぱり、彼って「天使的存在」なのかもしれないなあ。そして間違いなく「天使」に他ならないこの映画でのミラ・ジョヴォビッチ、最高です。 9点(2003-06-06 16:03:45)(良:1票) |
249. まわり道
人生の目的なんてあるのか…という問いそのものを抱えて彷徨する主人公の”さすらい”ぶりと、その屈折感が画面から切々と伝わってくる。少しでも挫折を知る人間にとっては、何よりも共感と後ろめたさ(あれは自分自身だ…と、主人公の姿にどうしても自己を重ねてしまうから)を感じさせる、そういった意味で実に”重い”映画。青臭くってかなわん、とおっしゃる向きがあるだろうけれど、生きること自体がそもそもいつまでも青臭く、みっともないことの連続でしょ? 少女時代のナタキンが重要な役で登場し、真正ロリータぶりで見る者を狂わせてくれます。 9点(2003-06-06 13:33:42) |
250. マイ・レフトフット
いやあ、素晴らしいなあ。この手のストーリーにありがちなお涙頂戴的な作為や、深刻ぶった偽善調もなくて、まるでジョン・フォードの『我が谷は緑なりき』なんかのアイルランドものを思い出させる名調子。障害者の弟に対する家族…なかんずく兄たちのさり気ない心配りに、いや~泣けました。それにしても、何て恵まれた奴なんだ、この主人公って! ダニエル・デイ=ルイスはもちろん、主人公の少年時代を演じた子役の見事さにも拍手を。 9点(2003-06-06 12:41:13) |
251. マチネー/土曜の午後はキッスで始まる
ジョー・ダンテらしいB級映画への偏愛とノスタルジア趣味が、もうこれ以上ないくらい美しく結実した奇蹟のような傑作。相変わらず、ガキッぽい体裁でありながら、実は『13デイズ』なんぞより、いっそう切実に「キューバ危機」を頂点とした冷戦時代のアメリカ市民のメンタリティを描ききっていて、鋭い社会派映画にもなっているし。それに、あの、ヘンテコな巨大アリ映画をわざわざ作っちまう邪気も、いつもなら悪ノリに陥りがちなのに、気持ち良く笑って楽しめる。はじめてダンテを「好き」になりました、ワタシ。 9点(2003-06-05 18:44:34)(良:1票) |
252. ホワイトハンター ブラックハート
これは、イーストウッドにとって監督というより役者としての「野心作」じゃあるまいか。ジョン・ヒューストンをモデルにした破天荒な映画監督役を、これまで彼が見せたことのなかった腹芸たっぷりの演技で喜々としてこなしている。特に、あのセリフの多いことったら! まるで自らイーストウッドという偶像破壊を楽しんでいるかのような、と同時に、”映画というものの業の深さ”をかくも優雅に描き出すという、まさに円熟の境地。『真夜中のサバナ』でケビン・スペイシーが演じた役も、本当はこの頃のイーストウッド本人が演じていたなら、もっとスリリングだったろうなあ。 9点(2003-06-05 12:35:34) |
253. BROTHER
このところ、妙に批評家受けというか、映画賞狙いというか、つまりは世間的評価に「応えよう」とする意識が見え見えの作品が多くて、それはそれで見ごたえのあるものではあるんだけど、やっぱり北野武には「好きな映画を好きなように撮る」ことの方が良く似合う。…と思っているファンにとって、これは久々に「らしい」快作だった。たぶん、海外との合作という周囲の期待に対して、逆にデタラメやっちゃう”やんちゃ”ぶりが、良い方に出たんじゃあるまいかと。つまり、『ソナチネ』のテキトーなリメイクみた展開に、派手なドンパチと日本的な精神性(ヤクザの様式やストイシズムってやつね)を盛り込めば、ガイジンは喜んでくれるだろうって。このいい加減さとデタラメぶりこそ、キタノ映画の真骨頂! 小生、大好きです。 9点(2003-06-02 13:42:52)(良:1票) |
254. ピンポン
意外にも賛否両論なんで、ビックリ! 全体的に、この映画は受け入れられ、評価されているんだろう…と、勝手に思い込んでいたので。映画見てから原作漫画を読んで、見事にハマリました。その後、映画のDVDを買って、やっぱり何度も見直してしまいました。つまり、どっちがというんじゃなく、どっちも好きなんです、ぼくは。何故? コミックも、映画も、「性」を介在させない、見事に少年期そのものの「清潔さ」を見事に、鮮やかに表出し得ていたから。高校生とはいっても、ペコもスマイルも、出会った頃の小学生時代からずっと彼らの”内なる時間”はとまったままだった。それがあらためて動き出すまでの「試練・葛藤」こそが、コミックの、そして映画のドラマの骨子だったのではないでしょうか。どちらも、そういった部分を、これ以上なくピュアに、古臭い”汗と泥と涙”の熱血スポーツもののパターンから程遠い「新しさ」で描いたものとして、ぼくは高く高く評価する者です。素ッ晴らしいじゃん、これ! 9点(2003-06-02 13:01:46) |
255. ペイルライダー
いやあ、「なるせたろう」さんのコメントに感動しました。アナタこそ映画ファンの鑑です。とにかく、少女の祈りに応えるかのように山上から参上する(すいません、つまらないダ洒落です)イーストウッドの幽霊(?)ガンマンには、魂が震えました。あの『シェーン』が元ネタだなんて、ぜ~ったい間違ってる。だってこれは、むしろイーストウッド自身の『荒野のストレンジャー』のリメイクだもの。素晴らしい! 9点(2003-05-31 18:00:47) |
256. フューネラル
映像のすべてに不吉な”死の影”がまとわりついているかのようで、見終わった後もドス黒い固まりを背負わされた感じ。…いやあ、アベル・フェラーラって、やっぱスゴイわ。決して単純に「面白い」とかいう映画じゃないけど、なにかにとりつかれた男たちの姿を、ここまで見せきったものもないんじゃあるまいか。役者たちも豪華だし、万人向けとはお世辞にも言えないけれど、ディープな傑作です。 9点(2003-05-31 13:26:14) |
257. フォー・ウェディング
モラルうんぬんというより、現代人の一面を皮肉と愛を込めてスケッチしたカリアチュアとして、出色の作品じゃないでしょうか。この映画に出てくる登場人物のきっと誰かに、「ああ、こういう奴っているいる!」と思いあたるフシがあるのでは。そういうぼくたちの”隣人”たる群像劇が、これまたちょっぴりの皮肉と愛を込めて描かれるあたり、イギリス映画の良さだなあ。4つのウエディング以上に、1つのフューネラルの方が心に残る構成も、実に巧いです。 9点(2003-05-31 12:00:50)(良:1票) |
258. ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場
小生の大好きなイ-ストウッド映画。いわば軍隊ものの定番というか王道的ストーリーが、世代間、男女間のコミュニケーションをめぐる極上のドラマになっております。それにしても、メリル・ストリープの時もそうだったけど、いわゆる名女優と呼ばれる相手役を得た時の役者イーストウッドは、つくづく良いなあ。監督としてはもはや巨匠扱いだけど、今一度”演技者”としての彼を再評価する向きが出てこないものか…。 9点(2003-05-30 15:27:27) |
259. 20世紀ノスタルジア
この映画の監督さんにはちょっと個人的にあって(…)あまりホメたくないんだけど、くやしいことに映画は良いんだよね。クソ~! あまりにナイーヴな外見を装いつつ、20世紀への愛憎こもったレクイエムと再生の歌をうたう、しかもそれを「アイドル映画」として作ってしまう大胆さに参りました。でも、やっぱりくやしいから1点減点(笑) 9点(2003-05-30 13:03:54) |
260. TOKYO EYES
フランス人監督が日本で撮った『勝手にしやがれ』のひそやかな変奏。ここにも、『ラストサムライ』に優るとも劣らない現代ニッポンに対する、極めて分析的・批評的な“正しい”異邦の眼差しがある。ともあれ、「ワタシは”新品”よ」という吉川ひなののセリフに1票!! 9点(2003-05-29 15:10:39) |