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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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241.  イルマーレ(2006) 《ネタバレ》 
オリジナル版は随分前に観たので詳細は覚えていないが、結構よかったということだけは覚えていた。リメイクが創られると聞いて、ハリウッドもなかなか目の付け所はいいなと思い、しかも、キアヌとサンドラの二人が共演と聞けば、いっそう期待は高まる。しかし、リメイク作の肝心の出来栄えは、何かが足りなさ過ぎて、相当イマイチである。 まず、演出家に問題があったように思われる。全体的にかなり薄っぺらく、安っぽくなった仕上がりとなっている。「風邪に気をつけてください」と言って、直後にくしゃみをさせるなんて今日日、小学生でもやらない演出ではないか。 「時間」という障害に阻まれたラブストーリーというネタ自体は面白いのだけれども、このネタを上手く活かすことができておらず、ラブストーリーのよさも感動もなにも感じられない。 オリジナルを覚えていないけれども、この二人はしょっちゅう逢っているという印象がする。あまり障壁が感じられず、愛し合う二人が、運命の悪戯からか、なかなか会うことができない、もどかしさのようなものは感じられない。 人物の掘り下げ方も中途半端な印象だ。キアヌは父親との確執に悩む建築士、サンドラは医者という激務に対して、やりがいや意義を感じながらも、「このままでよいのか?」と人生に悩む女性である。父親の作品集を送り、キアヌが抱えた苦痛を取り除いてやるというのは、感動的な場面なのだが、演出が感動的ではないので、感動できない。 逆に、サンドラのキーとなる本「説得」も、ドラマティックで効果的な使われ方をされただろうか。自分にはそうは感じなかった。このアイテムがサンドラの気持ちを大いに揺さぶるとともに、観客の気持ちを揺さぶったとは思えない。 結局、二人の気持ちに対して上手く感情移入できない創りになっているので、ラストのクライマックスでも、やはり何も感じられなくなっている。「想い続けて待ち続けること」の素晴らしさが描かれていないのが残念である。
[映画館(字幕)] 4点(2006-10-02 21:57:26)(良:1票)
242.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
アメリカではシャマラン作品としてはかなり苦戦した興行収入となり、ブエナビスタ(ディズニー系)が製作に二の足を踏んだため、ワーナーと手を組んだという、あまりいい評判も聞くことはなかった本作であるために、まったく期待していなかったが、正直いってそれほど悪くはないと思う。 シャマラン監督というのは、意外と不幸な監督であり、シックスセンスの大成功により、「どんでん返し」や何か絶対に「裏」があるのではないかと、絶えず観客から変な期待されてしまう。本作には、そういった「裏」はまったくないし、自分もシャマランにはそういうものを期待しなかったから、本作を純粋に楽しめたのかもしれない。思い切って、冒頭にテロップで「本作は最後まで特別なことは起きませんので、期待しないでください」とでも流せばよかったのかもしれない。 酷評したくなる気持ちは分からないでもない。ストーリーは単純で「水の精をみんなで協力して、元の世界に帰してやる」というだけのものである。裏も何もない、本当に純粋な「おとぎ話」にすぎない。いい大人が見れば「クダラネェ」と思っても仕方がない。 しかし、自分は子どもに返ったようにワクワクしながら「マンションの住民」を応援できた気がした。「水の精」に疑いすら持たない住人たち、誰も彼も協力を惜しまない住人たちに普通ならば違和感を抱くかもしれないが、別にそれでもいいじゃないだろうか。このマンションは、シャマランの描く「理想郷」なのだから。人間はみな善良で、それぞれ役割を持ち、生きている意味や目的があるという、シャマランの理想がここには描かれている。シャマランが込めた願いとしては、子ども達にはこういう大人になって欲しい、大人には、子どものような気持ちに戻って、純粋で清らかな心を思い起こしてほしいということだろう。 個人的には、あんな狼みたいな生き物で、音や衝撃だけのコケオドシは止めて欲しかったが、人間の理想郷を描いた本作では人間の形をした生き物に「悪」を担わせることをしたくなかったのだろう。自分には、そういう理想はないので、あの狼を操る「悪者」がマンションの住人の中にいるという設定にした方が、より万人に好まれる作品になったのではないかと思う。 大人向けでもなく、だからといって子供向けの作品でもなくなってしまい、ターゲットを失ってしまったのが、本作の興行面の失敗の理由のひとつだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2006-10-02 21:19:39)(良:3票)
243.  ファム・ファタール(2002) 《ネタバレ》 
リンチの「マルホランドドライブ」をブライアンデパルマ風にアレンジしたという印象。 「現実」と「夢(妄想)」が入り混じり、「現実」の登場人物が「夢」において、別の役割を持つ登場人物として描かれる点は共通なものだろう。しかし、その評価は全く異なり、一方は「傑作だ。素晴らしい。」と賞賛され、もう一方は、「くだらねぇ、今どき夢オチかよ。ふざけんな。」と冷笑される。 この違いはなんであるかを考えると、本作においては「現実」と「夢」のリンクが上手く機能していないからなのではないか。「夢」と「現実」を描くことによる相乗効果が発揮されていないのである。本作における「夢世界」の描き方が、中途半端な印象を受けて、「夢世界」を描いたことに対する「意味」を十二分に付加することができていないように思える。 「夢世界(将来の自分)」のように、仲間を裏切り、夫を裏切り、裏切りを続けて「魔性の女」をさらにエスカレートさせていったら、未来においては自己の破滅(死)が待ち構えている。 しかし、リリーの運命を変え、自分の生き方を変えることによって、小さな出来事が巡り巡って、幸福な運命へと転化することになるということを本来描きたかったのだろう。 しかし、「夢世界」を体験したことによる「現実世界」でのロールの変化を観客は十分感じられないのが問題ではないか。単に、リリーを助けたことのみでは、延々と描いた「夢世界」が活きてくるとは思えない。 また、「おもちゃのネックレス」をラストのオチに用いるほど重要な小道具として扱いたいのならば、ラストで唐突に出すよりも、もっと前フリ的に序盤から登場させた方がよかっただろう。 例えば、ロールがリリーのフリをしてアメリカに旅立つ際には、トラックの運転手を邪険に扱い、彼に渡さないということや、悪事を働いた際にどこかで壊してしまうということで、運命の歯車が微妙に狂っていくということをもっと前面に出した方が面白かったのではないか。 それにしても、「溢れる水槽」を筆頭に、大量のグラスに水を注ぐウェイターなど「夢世界」において水のイメージをこれでもかというくらい細かく随所に散りばめられた描き方は、なかなか面白いとは思う。
[映画館(字幕)] 6点(2006-09-21 00:04:29)
244.  ミッション・トゥ・マーズ 《ネタバレ》 
サスペンスの巨匠ブライアンデパルマ監督がこんなSFも創れるんだと、まず驚かされた。映像からは、デパルマ監督特有の匂いは感じられない。CGを駆使した創り込みも丁寧であり、新ジャンルの挑戦への気合、既存の自己のイメージからの脱却も感じられ、それなりに好感はもてる。 しかし、映画自体は、「2001年宇宙の旅」をベースにして、「未知との遭遇」「アポロ13」「アルマゲドン」などのSF映画を何もかもごちゃ混ぜにして創り上げられた印象を受けた。「これはどこかで観たな」という既視感を感じさせる映画になってしまっているのが残念だ。 オチ自体は別に悪くはないと思うが、こんな骨だけで肉のついていない脚本でよくここまでの映画に仕立てたものだと少しは監督を評価したい。この地味なストーリーならば、アイディアを各所から拝借しないと、一本の映画としては、もたないだろう。 その他に本作の問題としてテンポの悪さが挙げられると思う。イライラするほどテンポが悪すぎる。おまけにシニーズが事故の際、酸素減少中にも関わらず、なぜかヘルメットを被らないという意味不明な行動をとるため、そのイライラが頂点に達する。 その宇宙船の事故も取って付けたようにしか感じない。脚本が貧弱なためか、ストーリーを膨らませるために「アポロ13」などを参考にしてやむを得ず描いたようにしか感じなかった。 また、それに伴うウッディの死も単なる感動狙いではないか。ストーリー上、それほど大きな効果や意味は感じられなかった。シニーズは病気で亡くなった妻の言葉「別の世界を観たい」や妻の失意がきっかけになって、地球に還らず宇宙船に乗るという決断を下したわけだが、ウッディの死が、誰かの気持ちや行動を変えたというわけではなく、単に火星に到着するための「犠牲」という形式上の効果しか生んでいないのは勿体無さ過ぎる。ウッディの奥さんにもっと大きな影響を与えないと、彼の死はあまり意味はないだろう。シニーズも妻の言葉だけでなく、ウッディからも大きな影響を受けたという風にした方がよりラストの行動の理由付けにも納得がいくのではないか。ラストにウッディのネックレスを渡す(=ウッディの魂も連れて行く)といったことはしているものの、ウッディの死を上手くストーリーに活かすことができなかったことが、本作が傑作にならずに多くのSF映画の中に埋没してしまった理由の一つのようにも感じる。
[DVD(字幕)] 5点(2006-09-13 20:40:57)
245.  ナイト・ウォッチ(2004) 《ネタバレ》 
悪くはないと思うが、やや物足りなさも感じる作品。 凝った映像は確かに凄いとは思うけど、ちょっと張り切りすぎた感もする。 また、意味不明な映像が流れて、「このシーンどういうことなの?」と思ったら、すぐにきちんと説明されてしまっているので、やや拍子抜けもする。分かりにくい映像なのだけれども、なんとか分かりやすく説明しようとしているので、中途半端に感じてしまう。才能はあると思うので、もっと観客を突き放してもよかったのかもしれない。本作は、「ついて来れる奴だけついて来い」というマニアックな映画ではなくて、凄い映画を作りたいけど全世界に向けた万人向けの映画にしなければならないという矛盾した方向性の基に作られていると思われる。 ストーリーは、バラバラになった複数の糸がラストでは一本に繋がるという展開を狙ったと思うが、セリフ(パラパラ漫画)や画像(ゲーム画面等)など方々で説明しすぎていて、単に緩んだ一本の糸の張りをラストで強くした感じしか受けなかった。 設定は、「X-MEN」そのままという感じがする。人間でありながら、特殊能力を備えた異種とは、まさにミュータントだと思う。光と闇の戦いは、X-MENとブラザーフッドの戦いに似たものだろう。闇のボスのサヴロンはマグニートー(雰囲気も似てるし、クルマをひっくり返すといったやることも似ている)で、光のボスのゲッサーはプロフェッサーX(どちらもハゲ)でしょう。どちらも二人の関係は親しいということも共通している。主人公はぱっとしないところがウルヴァリンに似ている。フクロウ女はジーン、デカイ男がサイクロップス(役に立たないところが似ている)で、金髪の女性はストームだろうか。それぞれの特殊能力もあまり活かされてなければ、使用する武器の貧弱さ、不幸な女のストーリーのあっけない幕切れ感などを踏まえると、原作・脚本がイマイチなのかもしれない。 本作は、ロシア映画ということもあり期待値も高く劇場で観ようと思っていたが、公開劇場の関係でDVDスルーしてしまった。次作が公開されればおそらく観るとは思うが、劇場で観るかどうかは微妙だな。
[DVD(字幕)] 6点(2006-09-11 23:42:02)
246.  グエムル/漢江の怪物 《ネタバレ》 
韓国で大ヒットしていることや、予告編がそこそこ面白そうだったので、鑑賞してみたが『この映画のどこに面白みを見出せばよいのか全く分からない…』と困惑するしかなかった。つまらない映画や駄作ではないと思うが、オチのないコントを延々と見させられる感覚に近いと思う。 「①モンスターパニックムービー」として観た場合、黄色の二人組の制服を襲撃した際はなかなか良いと思ったが、それ以外ではグエムルに対して、恐怖や畏敬といった感覚は抱かない。ジョーズやキングコングといった映画では感じた感覚はこの映画では感じられない。本作ではグエムルに対して「生命」を吹き込むことには失敗していると思う。 「②親子愛・家族愛」ヒョンソからは父親を信頼して助けを待っているようには感じられない。「ウィルス」という変なストーリーを織り込んだため、娘を助けたいというよりも、政府から逃げることが主題に変わったため、父親カンドゥの成長や家族の絆も上手く伝わらない。「殺人の追憶」同様に、娘がさらわれたり、父親ヒボンを死なせているのは自らの責任であるため、不条理感を感じにくい。 「③アメリカ・政府批判」モンスターより怖いのは、政府やアメリカなんだということを言いたいのかどうかは映画からは伝わりにくい。「ウィルス」の存在は決して悪くはないネタだと思い「これから面白くなるか」と期待したが、やはり効果的に利用することもできなかった。②で述べたように悪い効果も生じている。 「④現代の韓国に対する批判」賄賂、怠慢、浮浪者、両親のいない子ども達、無神経なマスコミ、デモ、環境問題等々、ボールは大量に投げてくるが、受け取り側のことはあまり考えてないようだ。これらは日本人にとってみればよく分からないことだ。 「⑤ラスト」ヒョンソが命を賭けてガキを守ったというのも観客への感情の揺さぶり方としては上手く演出されておらず、なぜ製作者がガキを助けて、ヒョンソを殺したのかはよく分からない。自分が製作者だったら、戦いの末に、グエムルはどこかへ消えて、行方不明にし、ヒョンソの生死も明らかにしないだろう。そして、新しい携帯電話を握り締めて、ただひたすらヒョンソのことを待ちつづける。カンドゥの姿を描いて、エンディングを迎えさせると思う。
[映画館(字幕)] 3点(2006-09-10 14:01:58)(良:4票)
247.  ワールド・トレード・センター
オリバーストーン渾身の一作。グリーングラス監督とは全く別のタッチで9.11を描いた誰にでも勧められる素晴らしい感動作だ。久々に映画を観て泣けた。 本作で描かれる「家族の想い、家族への想い」「生きる希望」「人々が協力して窮地を乗り越える姿」は、創りモノやフィクションではない、リアルな感情に本当に胸を打たれる。 マクローリン(ニコラスケイジ)とヒメノ(マイケルペーニャ)の家族が二人の安否を気遣う悲痛な叫びに呼応するように、マクローリンとヒメノの二人は「家族への想いや愛」を「生きる希望」へと変えていく。ヒメノ夫妻が、近々に産まれてくる娘の名前に希望を見出していく展開は実に感動的だ。次世代という未来に対する明るい希望を託しているように感じられる。 また、本作にはもちろん「テロへの批判」が十分込められていると思う。 罪のない者が味わう地獄のような苦痛、幸せな家族が突然襲われる不条理な悲劇、これらは二家族のみが味わったものではない。本作の背景には約3,000もの家族の姿があるということが忘れられない。そして、「テロに対する屈しない姿」がここには描かれている。これも本作に込められた強いメッセージだろう。 ただの感動作に終わらないのには、もう一つ理由がある。それはオリバーストーンとマギーギレンホールの存在だろう。最近「プラトーン」、「サルバドル」というストーン監督作品を見てみたが、「アメリカの欺瞞」がしっかりと描かれていた。また、ギレンホールはかつて「9.11テロはアメリカにも責任がある」と発言し問題になった。 アメリカもある意味では間接的、直接的に同様のことを他国の人々に経験させているかもしれないと分かっているはずだ。単に「アメリカ万歳」という思想の持ち主ではなく、「アメリカ」という国がどういう国で、どういうことをしてきたのかをしっかり考えている彼らだからこそ、この作品はより光を放つのではないか。 テロへの批判であるばかりでなく、罪のない人々が巻き込まれる全ての争いに対する批判となっていると感じた。アメリカ自身もこのようなことを他国に経験させてはならない。そういう意味では、間接的には「アメリカ批判」と捉えることもできるかもしれない。 ストーンが描くことにより、9.11を利用した商業的な映画でも、単なる感動作でもなくなった。彼が演出することで深みを増した映画になったと思う。
[試写会(字幕)] 9点(2006-09-07 00:07:04)
248.  マイアミ・バイス
制作費だけは大作以上だけれども、大作というジャンルに括っていいのか分からない本作のような映画は、見に行くかどうか悩む人が多いのではないか。総括的にいえば、駄作とコケおろすほど酷い映画ではないけれども、万人受けするとは思えない映画であり、手放しで高評価はできないという印象を受けた。 【お勧めできる人】①銃撃戦が特に好きな人、②熱狂的なマイケルマン監督信者、③面白みよりもリアルな世界を味わいたい人、④船とか飛行機とか乗り物が好きな人。 【お勧めできない人】①ありがちなハリウッド大作映画やハッピィーエンドを観たい人、②巨額な制作費が掛かっているから凄い映像が観れると思っている人、③ストーリーの顛末がはっきりと描かれていないと嫌な人、④中途半端なラブストーリーをだらだら見せられるのが嫌な人。 要するにマニア向けの映画である。ハリケーンの襲来など予想不可能な事情があったにせよ、マニア向け映画に巨額な制作費を投じたのはプロデューサーの読みが悪いとしか言いようがない。 <ネタバレ>銃撃戦は見事だ。容赦ない序盤の銃撃戦、ジーナ?のプロ技術をみせつけられた中盤の銃撃戦、迫力あるリアルで壮絶なラストの銃撃戦という三タイプの異なる銃撃戦を描いている。銃撃戦よりも印象に残るのが、銃撃前にソニーが銃の手入れをするシーンだろう。あのシーンのために、映画が相当引き締まり、気合が入り、緊張感が高まった気がする。こういうところがマイケルマンっぽいリアルさを感じられるところ。 また、「内通者は誰か?」という話はどうしたのかと思ったが、ソニー達にはあまり関係ない話であり、FBIの中に内通者がいるということだけでも分かれば、あとはお任せということなのだろう。大胆な展開であるが、その分ラブストーリーに振り過ぎたのは問題だった。「ラストオブモヒカン」を観ている人ならば、マイケルマンがまれにラブストーリーを中心に組み立てるので驚かないが、やや中途半端な仕上がりとなっているのが残念。ラストに繋げるために二人の関係を執拗に描いたと思うが、感情移入できるほどには至っていない。ソニーの微妙な表情などには見応えはあったのだが…もう少し別の角度からの一押しが欲しかった。相棒のリカルドはあまり輝きを放っていたとは思えない。恋人が瀕死の重傷を負うのも、出番を増やし、より感情移入させるための後ヅケ感がする。
[映画館(字幕)] 6点(2006-09-05 00:11:40)(良:1票)
249.  ターミネーター3 《ネタバレ》 
本作を映画館で鑑賞したときには、あまりの迫力と臨場感ある映像に驚いて、興奮させられたものだった。映画館で楽しむ単体のアクション映画としてならば、それほど悪くはない作品だと思う。 本作の方向性として、キャメロン作品とは離れて金を掛けたアクション大作に仕上げようとする結論には、賛否あるだろうがやむを得ないだろう。キャメロンが演出もしなければ、脚本も書かない。シュワは出演するといっても、ギャラが3000万ドル(30億円以上)掛かる。このような状況下で、10年ぶりの続編を作るという危ういビジネスを考えると、万人が楽しめるアクション映画にするという結論に達するのはやむを得ないことだろう。キャメロン作品を踏襲しようとすれば、コアなファンからそっぽを向かれるだろうし、本作から本シリーズを観る新規の観客にはウケないだろう。 作品的には、「Ⅰ~Ⅲ」を連続で観ると、あまりに中途半端な作品になっていると言わざるを得ない。「色」があまりにもなさ過ぎる。白地のキャンパスにあまりに薄い色を塗ったなという印象。黒でもなければ、赤や青でもない、グレイに近い印象。本作のストーリーを踏まえると、もっと悲壮感を強め、悲劇的な仕上がりにした方がよかっただろう。ラストのオチを重視し、「猿の惑星」っぽい落とし方を狙ったと思われるが、前フリが悪すぎるため、それほど上手くはオチていない気がする。 また、問題点としてキャラクターの魅力不足も挙げられる。ジョンはリーダーとしての資質を微塵も感じさせない、ただのマザコンに成り下がっている。目的を失い、悪夢に取りつかれた「悲しい男」として描けば、よりキャラクターとして深みが増したと思う。自分ならば「ジャッジメントデイ」を回避したいという思いと、その日を待ち望むという思い、両面を抱えた複雑な男に描くだろう。目的がなく死んだような人生を送っていたジョンが、目的を見出し徐々に生き生きとたくましいリーダーに変化していく発端を観たかった。 また、自分の印象としては敵キャラのT-Xの魅力はほぼゼロに近い。サーモグラフィーも装備されていなければ、起動に時間がかかる武器を使用し続け、ターゲットを逃がし続けている。さらに人間ばかりか、旧型のロボットにさえ、罠にはめられ続ける姿には知力がゼロに近い間抜けなロボットにしか映らなかった。「女性」キャラという特徴も全く活かされていない気もした。
[DVD(字幕)] 6点(2006-09-02 03:03:33)
250.  ゆれる 《ネタバレ》 
この映画を観て正直面白かったとは思わないが、「いい映画とはこういう映画なんだな」とは思った。観終った後の余韻に浸れる感じがよい。しばらくの間、頭の中で様々なことがぐるぐるとかけ巡る感じがした。 特に、観終った直後から「あの後、稔はバスに乗っただろうか。それとも乗らなかっただろうか。」ということをしばらくずっと考えていた。 意見は別れるとは思うが、恐らく稔はバスに乗って、猛の元を去ったのではないかと思う。 稔はこの事件を通じて猛に対して兄弟の関係を問いたかったはずだ。稔は「智恵子が付けた爪の傷跡(無罪を立証する物証)」というカード(信頼)を猛に委ねて、猛に対して執拗に兄弟の関係をぐらぐらとゆらしてみた。その激しい揺れに耐えかねて、そのカードを切らずに猛は稔を裏切ってしまった。 しかし、ラストでようやく稔は「兄」の存在の大きさに気づかされる。「今、自分がこうしているのも兄のおかげだ」と。 稔と猛の兄弟は、兄弟という関係に初めて真剣に向かい合って、ラストには真の意味で昔のような兄弟に戻れたと思う。それは猛の叫びと、稔の笑顔が証明している。 確かに兄弟という関係には戻れたと思うが、以前のような生活には戻れないはずだ。 やはり、弟の裏切りには、責めを負わせる必要があるだろう。兄は、なにもかも奪ってしまった弟から、はじめてなにかを奪われる責めを弟に負わせたはずだ。稔は猛から「兄」という存在を奪ったのではないか。だから、自分は最後にバスに乗ったと思う。 また、稔自身もリスクだけを背負ったわけではない。もし弟がカードを切らなかったとしてもよかったと思ったはずだ。この事件がなければ、田舎町でしがないガソリンスタンドを経営し、ボケた父親とともに一生つまらない人生を送っただろう。いっそのこと有罪になることで、彼なりに「つまらない人生からの逃亡」を謀ったのではないか。 そういう点からももうあの家には戻らないだろう。 猛がカードを切って無罪となれば、猛に対して語ったようにガソリンスタンドを改修して、田舎町で人生を送るつもりだったのだろう。弟からの信頼があれば、つまらない人生に対しても意義を見出せると思ったのではないか。
[映画館(邦画)] 8点(2006-09-02 02:48:59)(良:3票)
251.  ほえる犬は噛まない 《ネタバレ》 
ワンちゃんにあまり愛着もないので、まったく不快には感じなかったが、ただ単につまらないという感想しか抱かなかった。 自分には「本作を通じて、この監督はいったい何を伝えたいのか」ということが一ミリも分からなかった。韓国のことを知らないからなのかもしれないが、どこがブラックユーモアなのかのどうかも分からずに、何も笑えない。センスの問題でしょうかね。分かる人には分かるけど、分からない人には全く分からないという映画。 自分には、このセンスが分からないので、0点や1点でもよいかもしれないが、映画内で描かれているストーリーは大部分は理解できるし、画的には面白い構図もあったので、ちょっと点数をつけたい。 それにしても、本作のどこに面白みを見出せばよいのかが分からなかった(本作を高評価する人を非難するつもりはありません)。 ①キャラクターはユニークだし、ストーリーをもっと展開させれば面白くなると思うけど、本作では浅く描かれていると思う。ネタ的には面白いと思うので、演出に問題があるのかもしれない。 ②二人の主人公にこれといった成長が感じられないと思う。アパート管理事務所のヒョンナムには、彼女の性格が感じられたが、結局何をしたかったのか分からずに、ただ会社をクビになるだけである。 大学教授を目指すユンジュもこの事件を通じて何かが変わったわけではなく、空ポストになった教授枠に入るために、不足部分を妻の退職金で流用し、ワイロを渡して教授になるだけである。 彼らの苦悩なりが上手く伝わらず、おまけに劇的な行動の変化もないので、なんらの共感や感情移入ができないと思う。 ③ワンちゃんを殺した(間接的にはオバちゃんも殺している)ユンジュは結局罰せられることなく(愛犬を失った苦しみは体験させられることになるが)、犬を鍋にした管理事務所のおっさんも罰せられることない。また、良心の痛みといったテーマでもないため、道徳的にも倫理的にも深みがなく、面白みが欠けていると思う。
[DVD(字幕)] 3点(2006-08-29 00:10:37)
252.  殺人の追憶 《ネタバレ》 
犯人逮捕への執念、情熱、怒り、無念さが伝わってくる骨太な映画。 重厚感に溢れた創りになっており、雨の滴る中を這いずり回る男たちの姿や、ラスト間際の容疑者との緊迫感ある、やり取りには並々ならぬ迫力を感じる。科学的な捜査方法を多用し、拷問を反対していた冷静な都会から着任した刑事でさえ、物証が乏しいためあせりの余りに「自白させてしまえばいいんだ…」と呟いてしまう。あの刑事たちの無念さには多いに共感できる。 足跡等の証拠を捏造し、被疑者に対する執拗な暴行により自白を強要させたり、霊能者に頼ったり、銭湯で無毛症の男を捜したり、学校での噂を調査したり等…普通ならばあり得ない捜査とは思うが、それだけ彼らが追い込まれていることの現われに過ぎない。これらの一部が実際の捜査でも行われていたというから驚きだ。 ただ、あまりに過激な捜査だったためか、それぞれ因果応報的な結末に陥っているのも面白い。足蹴りを得意とした刑事は足を失うという結末。「書類は嘘をつかない」が信条の都会の刑事は、最後の最後には「書類」に裏切られてしまうという結末。「俺は人をみる目だけはもっている。犯人を見ればすぐに分かる」と言っていたソンガンホが最後には「もう何も分からない…」と呟くシーンをみると、犯人逮捕に掛ける「情熱」が失われていってしまったようにも思える。そのためか、「警官」を辞めるという結末を迎えている。 それぞれ報われなかった想いに対する代償の大きさが窺われるようになっている。 そして、ソンガンホが最後に再び用水路を覗き込むが何も見えない。「この事件を通じて我々は何を見たのだろうか。事件の闇の中に何かを見れただろうか。」という問いかけにもみえる。 また、「殺人」が起きる条件が揃ったにも関わらず、デモ鎮圧のために機動隊がこちらの事件に対処できなかったことや、夜間灯制のため犯人に好都合の状況を与えてしまったこと等の姿も描かれており、「時代」が事件に加担してしまった背景もきちんと描かれている。 初見は、アホな捜査を繰り返すことによって逮捕を逃した刑事たちに共感できないと思ったが、改めてみると、気迫溢れる演技に圧倒され、無念さが強く伝わってくるようになり、本作の印象が変わった。
[DVD(字幕)] 7点(2006-08-29 00:03:26)(良:1票)
253.  X-MEN:ファイナル ディシジョン 《ネタバレ》 
ブライアンシンガー版が好きな人ならば、本作はあまり好意的には受け入られないと思う。本作はシンガーがネチネチと作り上げてきた世界観をぶっ壊すほどの大胆な展開・世界観をみせている。まるで「ターミネーター3」のような作品。 自分は、シンガー作品のスケールの小ささや、根底にある暗さ、生真面目さにあまり馴染めなかったので、本作の思い切りのよい「潔さ」やふんだんに金を掛けた「派手さ」には十分満足できた。本作のようなメチャクチャなストーリーも意外とハリウッド大作としては珍しいだろう。「斬新さ」という点で評価したい。 「差別」や「共存」や「選択」とか、そういう哲学的なことを考えたい人には向いていないだろう。 分かりやすい「友情」や「愛」を中心に持ってきているので、万人向けの娯楽大作に仕上がっている。チャールズ(プロフェッサーX)とエリック(マグニートー)の複雑な友情も見所の一つだ。画像的な見所は満載すぎるほどで、「ウルヴァリンVSジャガーノート」や「アイスマンVSパイロ」といった、「この対決は観たかった」という宿命の対決がみられるのも心が躍る。 【鑑賞時のご注意】エンドクレジット後にも、とても大切なストーリーが続くので、絶対に最後まで席を立たないように。試写会では、驚嘆や疑問の声が織り交ざった声があちこちから発せられていた。色々な意味があるとは思うけど、やや「蛇足」かもしれない。 【ちょっとネタバレ】ある意味で、本作で強烈なインパクトを示したのは、スコット(サイクロップス)ではないだろうか。Ⅰから観ている者には彼には楽しい思い出が残っているはずだ。Ⅰでは「クソ」呼ばわり。Ⅱでは「チームのお荷物(いわゆるゴミ)」。そしてⅢでは…。この壮大で壮絶な罰ゲーム、彼の身体を張ったギャグに我々は戸惑うばかりだ。 いったい彼が何をしたというのか?いったい誰の逆鱗に触れれば、ヒーローのチームリーダーがこれほどまで不当な扱いを受けることになるのか?世の中の不条理を一身に背負わされてしまった気がする。しかし、我々は決してスコットのことを忘れることはないだろう。「彼が身体を張って我々に伝えたかったことはなんだったろうか?」ということを鑑賞後からずっと考えている。最近ではこう考えるようにしている。彼は遠い宇宙に行ってしまったのではないか。彼は「冥王星」という星になってしまったのではないかと。
[試写会(字幕)] 9点(2006-08-25 23:01:42)
254.  X-MEN2 《ネタバレ》 
「なんでストーリーがこんな地味なの?」「なんでリーダーと主人公がクソ弱くて全く役に立たないの?」というのは、前作から引き続き思うこと。前作と比較をすると様々な点で前作以上と思われる。 【技術面】格段の進歩を遂げている。冒頭のナイトクロウラーのホワイトハウス襲撃や、パイロの火炎ショー、マグニートーの脱獄シーンなどは他ではみられない相当の映像技術レベルだと思う。 【キャラクター】前作では各人の能力が完全に活かされていると思えなかったが、今回はサイクロップスを除くすべてのキャラクターにある程度、見せ場がきちんと用意されている。自己犠牲を図ったジーンを筆頭に、八面六臂の活躍をみせたミスティーク、新規参入したナイトクロウラー(原作ではミスティークの子ども?)も冒頭の襲撃、飛行機でのローグ救出、ストームを伴ったセレブロへの侵入などの著しい活躍をみせている。前作よりも影が薄くなったローグでさえ、パイロの暴走を止めるために、彼の能力を吸収して、炎を鎮火させるといった動きをみせている。全身を鋼鉄化できるコロッサスや壁抜けのシャドウキャットといった脇役ともいえないキャラにも見せ場をきちんと与えているのもなかなか凄いところ。それにも関わらずサイクロップスは…。味方としてもダメ、敵になってもダメって。存在としてそうとうヤバイと思う。非情になりきれない優しさがあるのか?また、ジーンを失った際に、サングラスのため表情が分からないのもなかなか感情が伝わらず、今回は損な役回りを演じることとなった。 【ドラマ】前回はイマイチだったドラマ部分も、今回は細かいながらもきちんと描かれていたと思う。ジーン、ウルヴァリン、サイクロップスの微妙な三角関係(「ジーンを選んだのはお前だった」)、ウルヴァリンとローグ(認証票のやりとり)、アイスマンの関係(キッチンでの会話)もなかなかよかった。ウルヴァリンはローグにとって、父親みたいな存在で、家族なんだときちんと感じられる。ストームとナイトクラウラー、パイロとマグニートーの会話には短いながらも深みがあったように感じられた。マグニートーは前作では人類抹殺の思想までは持ち合わせてなかった気がしたが、今回はミュータント抹殺という人間からの宣戦布告に対して、真っ向から戦いを挑んだ形となった。だんだん過激になっていくマグニートーの動きは次作以降にどのように繋がっていくだろうか。
[映画館(字幕)] 7点(2006-08-24 23:29:16)(良:2票)
255.  地獄の黙示録 特別完全版 《ネタバレ》 
カーツ大佐が、死ぬ間際に口にしたHORROR(恐怖)とは、いったい何であっただろうか。カーツ大佐は根っからの軍人だと思う。しかし、ベトナム戦争でのアメリカの戦い方は、キルゴア大佐を見てのとおり、圧倒的な強力の武器を背景に、緊張感の欠けたただの子どものシューティングゲームのようになっている。一方、前線では指揮官不在で命令系統が全く機能していない。「これではアメリカは勝てっこない」と、カーツ大佐でなくても、誰でも感じるのではないか。自分のキャリアを捨てて、グリーンベレーに入隊したとしても、戦況が変わるわけでもなく、軍人としての渇きを潤すことはできなかったのだろう。だからといって、軍を捨てて故郷に戻ることはできない。冒頭のウィラード大尉と同様にもうすでに故郷はなく、ジャングルに戻ることしかできなかったのだろう。「軍」を捨てて、「故郷」を捨てても、軍人である以上、「戦」や「ジャングル」を捨てることはできなかった。自分の頭の中は正常であっても、魂はどんどんと狂っていく。自分の魂が狂っていくさまを、カーツ大佐は冷静に客観的に自分の正常な頭で眺めていたのだろう。それこそまさに「恐怖」なのではないかと自分は感じた。 キルゴアのように「頭」が狂ってしまえば、「魂」までも狂うことはなく楽にいられたかもしれない。フランス人一家は、頭も魂も正常であるけれども、彼らが土地や家族という「根」を張っているから耐えられるのであり、根を張っていないものには、あの苦痛は耐えられないだろう。 だから、ジャングルの奥地に入り込み、自分の王国を創らざるを得なかった。「王」になったとしても、自分の渇きを潤せたかどうかは疑問だ。「たまにおかしなことを言ったり、度を越える」とデニスホッパーが語っていたように、ここにも彼の居場所はなかったのかもしれない。だから、カーツ大佐は「死」を望んだのだろう。自分の死と王国の後始末をウィラード大尉という、本物の「軍人」に頼んだのも、少しは理解できるような気がする。 以上は、自分が感じた全くの個人的な見解であるが、映画としてはあまり面白くないとは思うし、無駄に長すぎる。後半はベトナム戦争とはどんどんとズレていっているようにも感じるので、あまり高評価はしたくない。
[DVD(字幕)] 6点(2006-08-24 00:15:06)(良:1票)
256.  X-メン 《ネタバレ》 
丁寧に製作されているけれども、イマイチ盛り上がりに欠けるブライアンシンガーらしい作品となっている。欠点の一つは『①バトルシーンの爽快感不足』だろう。ラストもコンビネーションの悪さが際立っている。ストームが風を使って、ウルヴァリンをローグが捕縛されている場所まで運び、ジーンがサイコキネシスでウルヴァリンの体を安定させる。問題が起きたら、サイクロップスがオプティックブラストでカバーするという作戦だ。ラストにも関わらず、とてつもなく地味すぎる。とても連続コンボというような代物ではない。『②ウルヴァリンとローグの関係の曖昧さ』この二人の関係は、ストーリーの根幹を支えるものだが、関係を支えているものが観客に伝わりづらい。恋愛感情でもない、師弟関係でもない、友情でもない、社会や家族から爪弾きにされた寂しさは理解できるよ程度でしかない二人。自分の生命を賭けてまでローグを守りたいというウルヴァリンに共感できるほど、二人の関係は補強されていないと思う。『③Xメンの思想・哲学に対する動機付け』ケリー議員は、国民のプライバシー、思想の自由、安全な暮らしを脅かす危険な存在を放置せずに登録制度を導入しようというものである。決して「抹殺」ではなく、あくまでも「登録」制度である。私利私欲に溺れているわけではなく、上院議員としては、かなり立派な活動をしているのではないか。マグニートーは、ユダヤ人迫害の経験から、登録制度が必ず迫害へと繋がるだろうと考えている。人類の進化した「未来」であるミュータントがなぜ迫害されなくてはならないのかを憂いているのである。各国の首脳をミュータント化することによって、真剣に考えて欲しいと思っているだけで、本作では人類を根絶やしにしたいという危険な発想の持ち主ではない。しかし、プロフェッサーXを含むメンバーには、なぜ人類と共存したいのかということが明確に示されなかった気がする。家族から見放され、人類から拒絶されたミュータントが「恵まれし子らの学園」という逃げ場所を作って、静かに平和に暮らしたいという発想はとても理解ができる。なぜ自分を拒絶した人類のために戦うのか。なぜ人類を信頼しようとするのか。ストーム自身も「人間が怖い…」と述べている。電車の中で優しく触れ合う親子を見るローグの眼差しのような、元の平和な生活に対する憧れや希望を感じさせるシーンをもっと入れた方がよかった。
[DVD(字幕)] 6点(2006-08-23 23:56:58)(良:2票)
257.  スーパーマン リターンズ
約20年ぶりに復活したシリーズ最新作は、続編でありながら、原点回帰のリメイク的な内容にもなっている面白い造りだ。今まで観た事がない人でも十分楽しめる内容にはなっているが、「Ⅰ」とリンク(マーロンブランドの重要なセリフ等)する部分もあるので、事前に「Ⅰ」だけでも観ておくとより一層楽しめるだろう。 【評価とテーマ】なかなか評価は難しい。「なぜスーパーマンが必要なのか」というテーマを相当ねちっこく、かつ丁寧に創りこんだため、完成度は高く、スーパーマンに対する深い愛情も感じられる良作というジャッジもできるが、2時間30分という長尺と派手なバトルがあるわけでもないストーリーとのバランスを踏まえると「長い・飽きる・くどい」といった評価も聞こえてきそうだ。「初代」に思い入れのある人には高評価で迎えられると思うが、最終的にはあまり高い平均点は期待できないかもしれない。 【ブランドンラウスが演じるスーパーマンについて】見た目や雰囲気はクリストファーリーブを彷彿とさせる見事なチョイスかもしれない。しかし、肝心の演技ができるかどうかは別だ。彼のスーパーマンは「表情」が語っていない。鉄火面のような無表情、CGのような無機質さを感じる。「人類に対する慈悲深い無償の愛」が根底にあるのは分かるが、「表情が豊かではない」→「感情が伝わらない」→「行動に対して共感できない」→「さっきから同じことの繰り返しじゃないか」という思考が延々とループしてしまった。もっと人間くささを出してもよかったように思える。 【ケヴィンスペイシーが演じるレックスルーサーについて】「セブン」のようなゾクゾクするような悪役を期待していたが、やや魅力を欠いている。好意的な評価をしても初代のジーンハックマンと同レベルかなという印象。もっとはじけてもいいと感じたが、本作のテーマを踏まえて、キャラクターとしての存在感を抑えたようにもみえる。本シリーズは、悪役が目玉となる「バットマン」とは根本的に異なり、あくまでも主役はスーパーマンという方針なのかもしれない。 【その他】幼年期のジャンプシーンは「スパイダーマン」や「ハルク」、着地時には「ミッションインポッシブルⅠ」を思い出した。ルーサーの出獄理由は「ダーティハリーⅠ」と似ているし、「タイタニック」のようなシーンもある。パクリではなくサービス的な意味合いでなかなかユニークと感じた。
[試写会(字幕)] 7点(2006-08-20 11:48:59)(良:2票)
258.  マッチポイント 《ネタバレ》 
少し期待しすぎたのかもしれない。ぎりぎりで7点を付けたいと思うが、手放しで絶賛できる映画ではなかった。 ロンドンで新境地をみせたと言われており、確かに今までのアレン作品とは一風趣きが異なるような気もしたが、このストーリーならばどうしても「重罪と軽罪」を思い出してしまうだろう。しかも、苦悩する主人公が、そこにはいないはずの者と会話する手法も「重罪と軽罪」で使われている手法でもあり、なんら驚きもない。アレン映画が好きな人ならば、むしろ失望に繋がるシーン。「重罪と軽罪」という本作よりも素晴らしい作品を知っている者には、本作はあまり高い評価は期待できないと思う。 「重罪と軽罪」になかった要素としては、「運」というものがあったと思うが、あまり「運」が効果的なポイントになっていたとは思えない。 「オチ」には一役買ったとは思うが、「運」に翻弄される人々という感じには受けなかった。様々な偶然や運があったから、確かにこのような展開になったのかもしれないが、もっと「運」が効果的な使われ方をした方が良かったのではないか。「浮気」がばれそうになったときに「運」によって救われるとか、または「運」によって浮気がばれそうになり、窮地に追い込まれてるとか。「結婚」や「仕事」にも「運」がもっと関わってきてもよいだろう。 鑑賞前には、強い野心を抱く主人公が、「運」によって救われたり、「運」に見放されたりして、「人生」がどんどん転がっていく、そんな男の人生をみれるのかなと思っていたのだが、どうも本作の主人公のクリスという男の考えていることがよく分からなかった。確たるビジョンもなく、言われるがままに結婚し、言われるがままに仕事に就き、なんとなくノラに惹かれ、ただひたすらに身体を求める。「運」に賭けるというよりも、ただひたすらに流れに身を任せる平凡の男にしか映らなかった。もっと、クリスの人物像に深みがあれば、面白くなったかもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2006-08-20 01:55:12)
259.  おいしい生活 《ネタバレ》 
アイディアやテーマなどは面白いけれども、その素材の良さを活かさずに、全く面白く調理されていない作品。 捻りもなく、唸らされる深さもなく、アレン監督作としては物足りなく、彼の作品群の中で悪い部類に入るのではないか。 面白くない理由として、まず、テンポが悪すぎると思う。 動きのある銀行強盗ネタを開始30分ほどで早々に切り上げてしまったため、後半が完全に間延びしてしまっている。 銀行強盗は、本作のテーマとはあまり関係ないただの導入部分に過ぎないのかもしれないが、もう少しクッキー屋が繁盛するのと共に、銀行強盗が上手くいかない様子を対照的にじっくりと描いた方がコメディ作品としては動きが出て面白かっただろう。かなり端折ってしまったために、ようやくトンネルを掘り進めたのに、その先には…という面白さが感じられない。繁盛しているクッキー屋なのに、とんでもない音がしたり(クッキーを焼いている音とか誤魔化しているシーンはあったけど)、泥だらけのアレンが場違いなセリフを言って笑わせたりと、もっと展開を広げられそうだった。 また、中盤部分は、もっと金持ち成金主義を皮肉を込めて、さらに毒気を強めて描いた方が良かったのではないか。おぞましいほどのセンスのなさ、組み合わせの悪さ、教養のなさをもっとコミカルに描いた方が面白い。こういう場面では、甚だしいまでの勘違いっぷりを描かないと引き締まらないだろう。あの程度では全然生ぬるく、手ぬるいと思う。 そして、肝心の「お金ではなく、本当の幸せとは何か」ということにお互いが気づくまでの過程がイマイチすぎないか。 お金では品格もセンスも愛も買えない。でも、お金がなくても幸せな生活というのがあるんだよという強いメッセージが伝わってこなかった。 せっかくいいテーマだけにもったいない。オチは悪くはないとは思うが、そこに至るまでの過程がきちんと描ききれていないので、観客にはあまりピンと来ないと思う。 やはり、アレン作品としては、ストーリーに深みがなく、脇役もあまり活きていない。脚本も含めて、ちょっと手抜き作品に感じる。
[DVD(字幕)] 4点(2006-08-17 22:18:33)
260.  ユナイテッド93
本作は、美談満載、お涙頂戴の感動モノではない。また、テロリストを「悪」と位置付けて、乗客が「英雄」として戦う映画でもない。 ただ、あのとき何があったのかを丁寧に徹底的に描き出したにすぎない。ここにはエンターテイメント性や複雑な人間ドラマなどもない。だから、「涙」や「面白さ」を期待してはいけないだろう。 自分は、この映画は「問いかけ」なのではないかと感じた。 このような状況下におかれたら、あなたはどう行動しますか?という問いかけ。 ユナイテッド93の乗客もたまたまあの飛行機に乗り合わせたにすぎない。自分もよく飛行機には乗るし、誰でも彼らと同じような状況に陥る可能性はあるだろう。 軍は機能しない、管制塔も混乱している、そのような時に自分ならばどういう行動ができるだろうか。自分ならば誰に最後の愛の言葉を掛けるだろうか。自分ならばどんな感謝の言葉を伝えるだろうかというようなことを考えずにいられない。 そして、この映画をみて、「映画」とは何かを考えずにもいられない。 「映画の持つ意味」、「映画の果たすべき役割」とは何であろうか。 嫌な記憶を思い出したくないとアメリカ人の中には本作の公開を拒否する運動もあったかもしれない。しかし、あったことをただ風化させるだけでは何の解決にもならない。イギリスでもまたもテロが起きようとしていたばかりである。 映画は、人々に事件から目をそらすのではなく、事件に対して直視させ、何かを感じとってもらい、何かを考えさせるチカラがあるのではないか。 映画によって、何があったのかを伝え、自分たちに何ができるのか、なぜこのようなことが起きるのか、どうすればこのようなことを防ぐことができるのかを人々に考えさせるきっかけになると信じている。
[映画館(字幕)] 8点(2006-08-13 02:52:23)
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