241. 男と女(1966)
《ネタバレ》 とても面白かった。人間の行為が、かなりあやふやな要素の連続で成り立っていることが良く分かる。ラストシーンはそんな人間の気持ちの柔軟性(あやふやさ)をうまくすくいとっている。『春の日は過ぎ行く』の韓国人青年は、この映画を観ていなかったにちがいない。子持ちのフランス男性、あなどれない。だだ、レーサーに付きまとう事故による死別という不安を、スタントマンの夫を事故で亡くしたアヌーク・エーメがどう乗り越えたのか、ちゃんと描かれていないので少し減点。レーサーの男の、自殺した妻にたいする思いがイマイチ伝わってこないのも少しマイナス。ただし、レストランでの子供の扱いかた、表情の追い方、最後の20分ぐらいのテンションはすごい。 7点(2004-07-01 20:55:37) |
242. お早よう
小津監督のコミュニケーションに対する考えがよく分かって面白い。挨拶や天気の話は大事な情報をやり取りしていないという点では無駄といえるけど、コミュニケーションの潤滑油としてとても有効なのは誰もが経験的に知っているところ。外交の場面でも天気の話してるのかななどと、ふと思った。アメリカとイスラムもやってみればいいのに。 映画自体は小津映画の中でも特に笑える一本。特に、「兄貴といさむちゃん」は最高である。この兄弟は少し大きくなって『秋日和』に再登場する。「のりこさん」も、小津映画では常連のお名前。ご近所のおばちゃん同士のやり取りも、ドロドロにならず、上品にまとまっていて観やすい。 [映画館(字幕)] 9点(2004-06-28 13:23:16) |
243. アフガン零年
《ネタバレ》 「そんなことを言われても、僕には何もできない」という思いと、「こういう大事な問題を、自分の問題として受けとめ、共感するべきなのかな」という思いが葛藤しました。この手の映画にはこういう葛藤が付き物なので、僕は映画代金を募金したと思うことにしていますが。なにはともあれ、僕とアフガンの前にはスクリーンという壁があって、これはどうしても乗り越えられないんだと痛感させられました。映画自体としては、「私の人生最悪よ」とブーブー言いながらも、しっかりと生きている女性たちの姿が印象深かったです。このようなたくましい女性たちがいる限り、人類滅亡の危機はやってこないでしょう。 6点(2004-06-27 18:49:47)(良:1票) |
244. 美しい夏キリシマ
監督の実体験がもとになっているというこの映画のテーマは、そのまま「鎮魂」である。自分が助けなかったことによって死んだ級友を、どうやって弔ったらいいのかという、本当にストレートで重い問いかけだ。死んだ級友は決して戻ってこないし、恨み言を言ったりもしない。だからといって級友のことを忘れることもできない。自分を責めつづけ、級友への負い目を感じながらこれからの毎日を過ごさなくてはならない。この負い目は米兵に殺されるという、級友と同じ死に方によってしか解消されない。しかし、終戦を迎え、少年の願いはかなわないまま。結局この映画では、級友の弔い方について何の解決もなされていない。しかし、答えの出ていない問いに対しては、その問いを叫ぶ(問いつづける)という態度で臨んでいくしかないのだ。この至極単純な人類の経験則が見事に描出されている。 7点(2004-06-24 20:51:25) |
245. 有頂天時代
個人的にはアステア&ロジャーズ作品の中で一番すき。はじめてみたとき、「Never gonna dance」で、「君以外の人とはもう踊らないよ」と歌うアステアと、指揮者と結婚することになっているロジャーズのダンスシーンに涙が出た。ダンスシーンで泣いたのは後にも先にもこの映画だけだが、二人の気持ちの微妙な部分がダンスとして表現されていることへの猛烈な驚きは今でも変わらない。ミュージカルってストーリーは二の次で、音楽とダンスだけ楽しめればいいと思っていたが大間違い。この映画の二人のダンスには、台詞によるシーンよりもずっと濃密なストーリーがはいっている。もちろん、アステアのソロダンスなど、他のシーンも充実。邦題については賛否両論だが、名づけた人がこの映画をみて有頂天になってしまったことは想像に難くない。 9点(2004-06-24 18:10:20)(良:1票) |
246. 荒鷲の要塞
アクション映画といっても、アクションのたたみかけには限界があって、少しサスペンス的な謎解き要素を入れたほうが、グンと面白くなるというのは、「ダイハード」シリーズやら「ザ・ロック」なんかで証明済み。でも、ずっと前に同じ手を使ってたのがこの映画。個人的には「ナバロンの要塞」よりも好き。クリント・イーストウッドがちょっと浮き気味のキャラなのも面白い。 8点(2004-06-23 14:34:42) |
247. バタアシ金魚
今ではすっかり「お宝映画」になっている感があるが、映画そのものもとっても面白い。なんといっても、行動の脈絡のなさ(正常な感覚に比べてってこと)、ぶっ飛び度がいい。快感だ。これぞ漫画の醍醐味。とくに、筒井道隆やばい。声変わってねぇ。この人演技してないんじゃないかと思うぐらいはまってる。おまけに、歩く時ちょっと右側に傾いてるし。大勢で見てもおもろいし、一人でこっそり見るのもいいとおもう。 7点(2004-06-23 14:26:08) |
248. フィオナの海
これは神話。といっても神が死ぬ前の神話。ギリシャ神話のような「とっても人間的な神」じゃなくて、「まったく人間的な要素がない」=「神が生きている」神話。映画は、エロス(愛)とタナトス(死)を描きつづけてきたけれど、最近エロスが中心になりすぎてないか? 愛なんてなくてもいいじゃないか、恋なんてしなくてもいいじゃないか! ドラマチックに生きなくてもいいじゃないか! ま、そいうのも確かに大事だとは思うけどさ。でも、そういうのがなくても自分が生きていることには何の変わりもないはず。本来、愛やら恋やらの感情が成立する以前に、世界と自分が「凛」として成立している。そこに生ける神がいる。この映画は、その根源的な状況を想いださせてくれる。すうっと流れるストーリーには、人間くささがなく、ただ清冽な暖かみがある。物語をつむぐのが少女という点も、考えさせられる。僕の心の隅にずっと残っている映画のひとつ。 10点(2004-06-23 14:16:07) |
249. 恋愛準決勝戦
アステア52歳って…。すごいのひとこと。お部屋回転ダンスで、アンの写真がどうして落ちないのかが分かりませんでした。どうしてるんだろう? 7点(2004-06-23 13:43:17) |
250. 艦隊を追って
ロジャーズのソロでタップするシーンが観れて良かった。衣装がかなりセクシーで、ちょっとビビれます。アステアと海兵さんのダンスシーンもさすがの迫力。アステアがピアノを弾くシーンも珍しくてお得。「トップハット」や「踊らん哉」にくらべて有名な曲が少ないのが残念だけど、アステア&ロジャーズfanの僕としては大満足でした。 7点(2004-06-23 13:36:24) |
251. 黒い雨
日本に起きた出来事を描いているから完全な他人事ではないとはいえ、原爆被害者と、被害を受けていない人の間には決定的な体験の差(断絶)があり、安易に共感することが許されない映画だと思った。この映画を、北村和夫や田中好子に自分を重ねて鑑賞する人はほとんどいないだろう。それだけに、この映画は「第三者」としてどのように鑑賞するかが問題になる。ひとつ興味深かったのは、「正義の戦争」をするのが当り前なアメリカと、「不正義の平和」を当り前と考える「おじさん」のちがい。そして、原爆反対運動を少し遠くから見つめている原爆被害者。原爆反対運動は、結局の所、両者の「正義」の押し付け合いだという点では、世界大戦と構造上まったく一緒だったのではないか? そのようなジレンマを避けるには、「おじさん」のように、そっとアメリカを「わかってねぇな」と馬鹿にする以外にはないのではないか? 「おじさん」にとっての最大の関心事が、朝鮮戦争での原爆使用問題ではなく、姪の奇跡的な快復を願うことなのが、一個人の精一杯の態度のように思えて涙が出た。大滝秀治が全然変わってないのと、市原節子の声が「日本昔話」を連想させるところが少し笑える。 8点(2004-06-23 06:21:05)(良:1票) |
252. デイ・アフター・トゥモロー
見ものは、すごい天変地異が映像になっているところ。海水に飲み込まれていったり、瞬間的に凍り付いていくNYをみてると、こんなことも映画ができちゃうんだと思ってしばし呆然。迫力があった。いただけないのは、あまりにも間違っている日本の描き方。完全に中国とかベトナムとかと混ざってる。ラストサムライとかでは比較的日本のこと勉強してるなと思ったけど、この映画を見ると日本のイメージが相変わらずなのにはうんざり。ストーリーは人間賛歌とも言うべき、この手の映画のお得意パターン。でも、ここまで生命力が強い人間像を見せられると、「生きていく強い意志」をもっていることが、人間にとって素晴らしいことなのか、それとも宿命的なのかちょっと考え込まされる。 4点(2004-06-22 08:24:29) |
253. オン★ザ★ライン 君をさがして
映画館で1800円払うのは気が引けるけど、レンタルなら全然OK! 話やら小ネタやらの使い方があまりにも普通なので、映画らしさをまったく感じない点はいただけない。そうはいうものの、往年のソウルfanならびっくりの「アル・グリーン」+「イン・シンク」の共演が映像で見られるので、それだけで楽しめる人も結構いるはず。映画というよりはプロモーションビデオの長い奴という感じで見れば結構いけてます。さらに、向こうのアイドルの歌唱力がSMAPの1000倍ぐらいあることの確認するためと思えば、一週間レンタルでもいいぐらいです。 5点(2004-06-20 18:10:39) |
254. タイムトラベラー/きのうから来た恋人
こういうの好きな人って必ずいます。むしろそういう人のほうが多いかも。僕もその一人です。原色のシェルター、精神いかれそうです。こういうテンションこそアメリカ映画。面白かった。 8点(2004-06-20 18:02:33) |
255. 奇跡(1955)
主題が間違いなく宗教なので、人によって評価が分かれそう。印象としてはラース・フォントリアー監督の「奇跡の海」によく似ているが、細かい所で比較していくといろいろと興味深い相違点も見つけられるだろう(特に、子供の役割、主人公の性別、祈りの描写など)。そもそも宗教には「神を信仰すること自体が、神を裏切っている」という逆説がある。神はわざわざ信仰によって確認されるべきではなく、むしろ、信仰しようなどと思えないほど神の存在を「自明」として捉えていることこそ真の神への態度ではないだろうか。この真の態度とは狂ってしまったヨハネスの態度である。だが、全員がヨハネスのようになると世の中の現行秩序は崩壊することになる。そんな心配すらヨハネスはしないのだろうが…。少なくとも宗派の違いなどは、トリヴィアルで取るに足らない問題であるようだ。 考えるネタは尽きない。 9点(2004-06-17 22:07:01)(良:1票) |
256. さよなら、クロ
《ネタバレ》 撮影で使われている松本深志高校出身の後輩に勧められて見ました。こういう校舎で勉強するってうらやましいなぁ。そんなことはさておき、最大の見所はなんといっても妻夫木聡の七三分けではないだろうか。やたら雰囲気出ている。一方、ストーリーはいたって普通の展開だが、伊藤歩演じる雪子の友人の死を背負って生きていく姿がいい。人は誰かを見送るという形で生きていくわけで、見送った死者をどうやったら弔えるのかという問題は、(何も人間だけでなくクロでもそうだが)だれもが考える必要のある問題のはずだ。その意味で、この映画の問いかけはとても共感できるし、ラストの田んぼの間を走る農業道路(地味!)のシーンがなぜか絵になっているという不思議さもおもしろく、一見の価値はあると思う。 6点(2004-06-17 21:30:20) |
257. 深呼吸の必要
《ネタバレ》 日本人のもつ、最良の部分がにじみ出ている映画。短い間、一緒にきびを刈り、ひとつ屋根の下で過ごしたことで生まれた一体感。きびを期限までに刈り終えた達成感。ものすごく感動的なのに、あっという間に終わってしまう。みんながそれぞれ、社会に戻っていく。みんなこれからも生きづらい世の中で生きていく…。最後の集合写真の笑顔がずっと続きますように。そう願わずにいられなかった。いつか終わってしまうからこそ、とっても大事な瞬間。そんな瞬間がちりばめられていて、素直に頑張ろうと思わせてくれる映画。音楽もとても素晴らしい。どうもありがとう! [映画館(字幕)] 9点(2004-06-11 20:09:28)(良:2票) |
258. 心の旅路
元祖めぐり逢い系の名作。運命的な愛って、感動的でもあるけど、運命に翻弄されて大変だなぁと思いました。メロドラマというと、日本の昼メロのようなドロドロコテコテと思われがちですが、この映画はそういうのではありません。ひたすらまっすぐに愛を貫く女性の話です。主人公の女性を演じるグロリア・ガースンがはまり役で、何度観ても涙です。 8点(2004-06-08 01:34:51)(良:1票) |
259. 切腹
テレビの深夜枠でやっていて、ビデオの録画セットのために最初のところだけ見ていたら、テレビを消せなくなり、そのまま最後まで見てしまった。あまりにも強烈だった。ぎらぎらしまくっていて、「白黒映画」というよりは「白真っ黒映画」って感じです。仲代達也の存在感は抜群。声だけで井伊藩の家臣の足を止めるシーンは一生忘れないだろう。だが、子供をあやすシーンでの子煩悩ぶりは、ちとやりすぎという噂も…。音声だけで描かれる戦闘シーンも斬新だし、こんな映画が日本で作られていたというのが新鮮な驚きだった。おまけに武満徹の旋律がものすごく映画にあっている。デモ、『黒い雨』や『東京裁判』のときの武満音楽とかなりにてるような気もする。三国連太郎のちょんまげ姿がかなり似合ってなくてニヤリ。 10点(2004-06-07 09:16:43) |
260. 日本の夜と霧
面白い映画ではない。でも大切な映画だと思う。学生運動に関わった人の中には、そりゃただのマルクスかぶれやら、意味もわからずにただ面白そうだから参加していた奴とかもいただろうが、真剣に社会や権力について考えていたやつもいたはずだ。そういうスタンスがいいとは言わないが、彼らみたいな真剣さが、真剣じゃない奴らに利用されていく姿を見るには、この映画は役立つ。あっぱれ、大島渚。 7点(2004-06-07 09:02:30)(良:1票) |