241. 抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より
《ネタバレ》 ただただ脱獄に至るまでの経緯とその間の行動を淡々と撮っていくだけの映画にも関わらず、他の脱獄映画に負けないくらい緊張感がありアクション性の高い一本と呼べるのか、それは監督ブレッソンの演出スタイルによるものなのだろう。無理に音楽をつけずとも、俳優のおおげさな演技がなくとも監督の演出次第で作品は変わるということを私に教えてくれた一本。 [映画館(字幕)] 9点(2007-05-20 00:30:34) |
242. ロッキー・ザ・ファイナル
《ネタバレ》 そこまで過去の名シーンを取り入れる事はないのでは(特に亡き妻エイドリアンの描写)とも思ってしまうが、「ロッキー」シリーズに思い入れのある私はよくあそこまで捻じ曲がってしまったシリーズの流れをまともな物に戻してくれた、と感謝の念でいっぱいである。2~4まではある意味熱い話だったが「強いアメリカ」みたいで燃える感情は無かったし、5作目はロッキーの頑張りが見えずに尻すぼみであった。が、この話はまさに1作目の「自分の進むべき道を、愚直でも突き進み困難に向かう」主人公の想いが溢れたストーリーに原点回帰しており彼の老成も加わって胸にグッと来てしまう。そしてそれが周りの人々まで(ボクサーとして行き詰まっている対戦相手の無敗のチャンプにも)生きていく希望や活力を与えてゆくという展開に泣けてしまうのだ。そして主人公の頑張りを生み出すのは亡き妻への愛。感動するではないですか!最後にこの映画はフィラデルフィア市民への感謝に溢れたお礼状であった、ともいえる。おじさん方、スクリーンへ急げ! [映画館(字幕)] 6点(2007-04-28 23:15:52) |
243. 北国の帝王
《ネタバレ》 この映画で描かれるのは「暴力」ではなく「心意気」である。ホーボーも車掌も絶対悪ではなく、ただ不況下の中で生きていく事に全力を傾けた漢達の熱い話なのだ(それにしてもボーグナイン史上最高の悪役!)そしてエースの叫び。「お前には人の心がわからねぇ!」男なら必見の一本。やっとこさDVD販売。長かった~ぁ。 [ビデオ(字幕)] 7点(2007-03-11 15:58:45) |
244. スタア誕生(1954)
この映画によってジュディ・ガーランドは「スタア『再』誕生」を果たすはずだった。にも拘らず彼女のパフォーマンスは評価されず。人によって「鑑賞するのに辛い映画」というのがあるだろうが私にとってはまさにこれ。点数はすべて彼女の最後の熱演によるもの。アカデミー賞協会のバカ!(ちなみにこの時の場景を描いた本として心に残るのはサミー・デイヴィス・ジュニアの本「ハリウッドを鞄に詰めて(早川書房)」。本当に切ない) [ビデオ(字幕)] 7点(2007-02-25 19:59:30) |
245. バルタザールどこへ行く
《ネタバレ》 人間の「罪」を見つめながら最後は羊の群れの中で生涯を閉じるロバの姿に、殉教したキリストの姿が重なり静かな感動を覚える。人間と言うものは元来「性悪説」的な生き物だけど、だからこそその中で行う「善意」の行動に胸打たれるのだ、と思う。このロバもそんな愚かしい人の行動を見据えつつ、その罪を背負い人間の持つ「愛」(としか説明できん)の可能性に殉じたのではないか、という感想をもちました。ただこの映画、非常に厳しい。またキリスト教徒でない私には本当の意味をわかってないかもしれません。よってこの点数。 [映画館(字幕)] 9点(2007-02-11 18:13:54)(良:1票) |
246. 赫い髪の女
久方ぶりにDVDで再見しこれは「ロマンポルノ」という範疇を超えた、素晴らしい名画であることを再認識した次第。ブックレットには「体を貪り合う事でのみ結ばれた男と女の澱んだ関係」とあるが個人的にはまったくこれ、澱んでいない。彼らは体を求め合う事でのみ自分の生を実感している、寂しさを抱えた男女なのではないか。それには「澱んだ」という言葉よりも傷ついた心そして体をいたわり合っている「優しさ」が垣間見える気がする。もちろん主演の二人の好演もさることながら、憂歌団の音楽もまた良い、監督神代の名作。 [映画館(邦画)] 9点(2007-02-03 19:41:48)(良:1票) |
247. ダンシング・ヒーロー
《ネタバレ》 「ミュージカル・スター」というのは全身を映されてナンボだというのに、足のクロース・アップを映されてはな~んもならん。申し訳ないのですが私はこの一本でこの監督の映画に見切りをつけました。古い人間と、お思いでしょうが。 [映画館(字幕)] 3点(2007-01-22 23:03:58) |
248. 虎の尾を踏む男達
《ネタバレ》 義経一行の奥州平泉までの旅はある意味死出の旅であり、「勧進帳」が愛され続けた理由のひとつに一種の古き良き伝統的な「荘厳さ」を感じられるからというのが私個人の解釈です。でその雰囲気を現実的な感覚から壊しているエノケン。相反する感覚が一瞬だけ触れ合う時=危機を脱した酒の席があったものの最後は受け入れられないものとして扱われ荒野に取り残される彼の姿は当然の帰結とはいえ寂しさを感じてしまいます。この映画の印象が薄いのは「荘厳感」と「現実感」のバランスが中途半端(撮影時期が時期だけに環境的にも制約があったとはいえ)だったからではないか、と。それでもこの話、大好きなんですよね、エノケンのクリクリ、大河内の据わった、そして藤田の優しいまなざし。「眼」の印象が強い映画。(DVD字幕付きで見るべし!) [DVD(邦画)] 6点(2007-01-20 08:40:52) |
249. プラトーン
何というのかなぁ、良い食材と性能の良い道具を使用しているのにもかかわらずシェフの腕が悪いから不味かった、そんな感じの映画だな。(悲しい音楽とスローモーションを使用してというのはある意味映画人としては芸がないと思うのだがいかがなものか。役者が頑張っている分逆に力量のなさが目立つ)しかもこのシェフ、「店内は私語厳禁」位の押し付けを平気でかましてる分だけ逆に腹が立ってくる。ある意味アカデミー賞を取ったんだから、宣伝は一流なんだろうけど。 [映画館(字幕)] 2点(2007-01-11 23:59:00)(良:2票) |
250. 天空の城ラピュタ
スクリーンで鑑賞した妹(今にして思うとなんと羨ましい!)に「どうだった?」と聞いたらすんげぇ切ない顔をされた。そうか、そんな映画なんだな。書きたいことは多々あるが、この点数で勘弁してください。 [DVD(邦画)] 10点(2007-01-07 22:32:29)(良:1票) |
251. 祭りの準備
《ネタバレ》 最初この映画を見た時、私は東京近辺から外へ出たことのない大学生でこの映画の登場人物が思いをはせる「田舎の閉塞感・都会への憧れ」という概念はこれっぽっちも感じずただ役者の演技(ある意味江藤潤の最高傑作だろう)にうまいなぁという考えしかなかったのが事実であった。ただ時が経ち外へ出るようになりこの映画を再見し、たまらない気持ちになる。大都会へ出たからといってそこには希望があるかと言われれば実際そうではないだろうがそれでも何かがあるはずだ、何かを成し遂げたいという想いは誰もが皆持っている感情なのではないだろうか。殺人犯となった幼馴染原田芳雄が街を離れる主人公に送る「万歳!」のエール。「青春・旅立ち」を描いた邦画の中でも抜群の出来栄え。 [映画館(邦画)] 7点(2007-01-07 19:31:14)(良:1票) |
252. ザッツ・エンタテインメントPART3
《ネタバレ》 このシリーズを順番通り見た者がたどり着ける幸せ、というのか。ある意味前2作よりも質は落ちるかもしれないが、「わかる人にはわかる」事にここまで徹してくれるとありがたい。特にジュディのアウトテイク。これ見て何も感じない人はとりあえずミュージカル映画は合わないな、と考えていただければいいのではないだろうか。映画館のスクリーンで見る「Mr.Monotony」、胸いっぱいの感激でありますよ。(といいつつ私のベストはなんと言ってもデビー・レイノルズ!)最後もちゃんと「ザッツ・エンタテインメント(バンド・ワゴンから)」で収まるのも好印象。吹き替えの歌手に光を当て、ショウビジネス界の人種差別に反省の意を示し自分の中では三部作中一番のお気に入り。 [映画館(字幕)] 9点(2006-12-29 23:55:41) |
253. ザッツ・エンタテインメントPART2
《ネタバレ》 第二作目は「MGM」という会社の功績にスポットを当てた構成になっているのでアステア&ケリーのダンスを挟みつつも、なんとなく散漫になっちゃったかな、という気がしないでもない。(スペンサー・トレイシーやキャサリン・ヘップバーン「アダム氏とマダム」マルクス兄弟「オペラは踊る」まで使われているもんな)それでも使用されているミュージカル・シーンは目を見張り特に「I Like Myself」(「いつも上天気」ジャン・レノ=レオンが見てたあの映画。DVD化切に希望)」などはアクロバティックなケリーのダンスの集大成である気がする。(だから「ブリガトーン」のダンスはなんとなくアステアと比べてしまい、物足りないんだよなぁ。ま向き不向きの問題なんだけど) [ビデオ(字幕)] 8点(2006-12-29 23:38:37) |
254. ザッツ・エンタテインメント
《ネタバレ》 MGMミュージカル・アンソロジー第一作目のこの映画のポイントは誰がなんと言っても「スター」これに尽きる。アステアはある意味別格なのだがやっぱりこの映画会社を支えていたのはケリーとジュディだったのだなぁ、と胸が熱くなる(特にジュディの「愛しいクラーク・ゲイブルさま」は本当に嬉しい)テイラーやシナトラはここではおまけ。やっぱり特筆すべきはエスター・ウイリアムス(水中ダンスのあの絢爛さを見よ!)とかミッキー・ルーニー(ジュディとのお約束「音楽をやるんだ!」カッティングの連続には笑ってしまう)を見て幸せに浸ろう。DVDは私の宝物。でなぜこの映画が9点か、といえばそれはラスト、なぜ「巴里のアメリカ人」なぞを持ってくるんじゃ~!これこそ本当に「ザッツ・エンタテインメント(from バンド・ワゴン)」だろうが! [ビデオ(字幕)] 9点(2006-12-29 23:22:53)(良:2票) |
255. 直撃!地獄拳
《ネタバレ》 いい意味でもこちらの予想を裏切り続ける突っ込みどころ満載の快作として、面白い。(特にサニーの死闘と佐藤の運転をカッティングさせるところや、力也との「綱引き」)そして倉田保昭大先生に対してのあの扱い!「先輩!~」は反則でしょ。もちろん「二枚目半」サニーの魅力もあるがやはり石井輝男のエログロワールドにはまりっぱなし。なぜそこで女の裸やねん、っていいよな、輝男の映画だもの! [DVD(邦画)] 6点(2006-12-27 21:20:43)(笑:1票) |
256. 明治侠客伝 三代目襲名
《ネタバレ》 「加藤泰節」はここでももちろんやっちゃってくれていますが何よりも素晴しいのは藤純子演じる初栄の存在につきる。男の秘めた想いを描き出すだけでなく、女の抑えた情念というのか情熱的な気持ちをうま~く映しているのには本当に感心する。(もちろん「わいはこんな男なんや」という、鶴田浩二も良いのだが。)ラスト、連行される男の足にすがり付いて号泣する姿。そして桃。 [映画館(邦画)] 8点(2006-12-03 02:42:39) |
257. 攻撃
《ネタバレ》 映画の宣伝担当者様、よく『熱演』という言葉をお使いになってますがジャック・パランスの域までいってるんでしょうね?熱いエネルギーを感じる、アルドリッチの名作。(だからこそ型に落ち着いたオチだけが痛いのでこの点数。) [ビデオ(字幕)] 9点(2006-11-12 22:31:08) |
258. テオレマ
《ネタバレ》 人が「自己の存在感」を感じる要素、つまり地位や名誉、容姿や金銭の存在というのは地球上に存在する生物の価値観からすれば砂上の楼閣であり、ただ清らかな心=純粋な宗教心のみが人が人として存在できる最大の要素たるものなのだ、とパゾリーニは述べたかったのかなと感じたのですが如何なものでしょう。「コレクター」もそうですが透明感のある青年(しかも性的魅力に溢れた)を演じたテレンス・スタンプはまさにはまり役。レンタルビデオでみる機会が無かったこの映画を見る為だけに私は東京-名古屋間を移動する、というアホな事をしたものだが今ではDVDが発売中。世の中変わったなぁ。 [映画館(字幕)] 8点(2006-11-11 07:16:03) |
259. CUTIE HONEY キューティーハニー
《ネタバレ》 知り合い宅で見なけりゃ多分見る機会の無かったであろうこの映画、率直に言うと思ったよりも悪くなく特に「熱演」というくらいの出演者の頑張りがある意味この映画を支えているのかな、というところか。(佐藤江梨子も与えられた役柄を何とかこなそうとしているのはわかるし)だから肩の力を抜いて、ボーっと見てる分にはいいでしょうと。個人的にはこの映画のマイナスポイントは2点ほど。1つはアクション映画における重要な点は「いかに観客の緊張感を高めるか」にあるのに監督の演出が妙にだる~いのでメリハリを付けられずに最後まで続いてしまったこと。あとはいろんな意味で奥が深い永井豪先生の作品を「映画で表現する」という企画自体の間抜けぶり、これにつきる。(個人的には永井先生作品の映画化で最高と思うのは馬鹿馬鹿しすぎ、という意味で「けっこう仮面」と思っているくらいだからね)「ススムちゃん大ショック」なんか見てみなさい、驚くよ。あと永井先生、お願いですから御自作の価値を下げるような企画に関しては駄目だしして下さい。ゲスト出演してもらっても困っちゃいますよ。 [地上波(邦画)] 4点(2006-10-31 22:15:10) |
260. 侠女
《ネタバレ》 改めて見直すと少々のかったるさも感じてしまうけど、ラストの竹林での死闘は世界アクションシーンの中でも屈指の名場面でしょう。京劇と映画の幸福な結びつき。グリーン何チャラより30年前にはキン・フーがアジアの剣戟の素晴しさを世界に伝えていたんだぞ!これだからハリウッドってのは。 [ビデオ(字幕)] 9点(2006-10-29 13:00:10) |