2601. 時雨の記
《ネタバレ》 熟年男女の不倫が描かれています。専務の要職にある壬生と彼の妻との絆が描かれておらず、壬生と多江双方、不倫であるが故の己の心を自ら縛り上げる葛藤が全く見えてきません。こんな子供じみた不倫ごっこを、美しい風景と日本伝統の美がちりばめられた舞台において肌を合わせる事のない二人の姿で、大人の落ち着き、しっとり感、上品さを表そうとしたところでウソ寒さしか感じません。キャストもミスキャストです。病が二人を別つというお決まりの展開も、それ以外に決着がつけられないのでしょう。白けるばかりです。 [ビデオ(邦画)] 3点(2006-05-02 20:34:35)(良:1票) |
2602. ツイスター
飛び去る牛とタンクローリーに計2点。迫力ある竜巻にストーリーと登場人物の印象もまるごと吹き飛ばされた模様です。期待ハズレでした。 [ビデオ(字幕)] 2点(2006-04-28 21:50:07) |
2603. 県庁の星
派遣先が三流スーパーという設定ですが、お弁当問題とバックヤード問題共に掘り下げが足りませんし、問題がこの二点だけというのも物足りなく、死活問題である競合店との競争など描いていただきたかったです。それと、柴崎コウ演じる二宮の内面から響いてくるものが感じられず残念です。ただ、民の再生と官の再生未だ道遠しという結末のバランスの妙は評価したいです。 [映画館(邦画)] 6点(2006-04-05 22:12:02)(良:1票) |
2604. キッチン・ストーリー
予備知識なく観ましたので物語の設定に面食らい、最後まで鑑賞できるのか不安でしたが杞憂に終わりました。クライマックスのない淡々とした展開でしたが、何故か目が離せなく、最後まで退屈を感じる事はありませんでした。ぬるいめの温泉で芯から温まったかのような余韻を残す作品でイザック、フォルケ、グラントの交流にスウェーデン、ノルウェーのみならず、国と国の関わりという事についても考えが及びました。何気ない「ありがとう」の一言が本作では値千金の響きがありました。 [DVD(字幕)] 9点(2006-04-02 01:29:56) |
2605. 蘇える金狼(1979)
《ネタバレ》 いろいろな点で懐かしさを感じさせてくれた作品です。学生時代、大藪晴彦にのめり込み、主人公達のような男性に憧れた一時期があり、その中でも朝倉哲也は今もって印象に残るキャラクターです。映画は初めて観ましたが、キャスティングの絶妙さに唸らされました。ラストは原作通りであって欲しかったですが、松田優作の強烈な最期もまた良しと言ったところです。 [DVD(字幕)] 7点(2006-03-12 23:58:14) |
2606. めぐり逢い(1957)
《ネタバレ》 前半のコミカルさたっぷりの浮世離れした恋のときめきと、後半の生活してゆく厳しさの中における愛情の深さ。対比が鮮やかです。彼に負担をかけたくないという一念は、愛する人に同情される事が彼女にとっての負担だったように思います。ラストの女々しさ漂う彼に対する、彼女の愛するが故に慰めを拒む姿は神々しいまでの美しさです。私の憧れの女性の一人です。安堵感で体の力が抜けてしまったエンディングでした。 [DVD(字幕)] 7点(2006-03-01 22:21:58) |
2607. 兵隊やくざ
《ネタバレ》 敵軍との戦闘シーンがない代わりに部隊内のリンチ、それに対抗する大宮の大立ち回りシーンが満載です。これらの理性のカケラさえない有様は、もともと狂った行為である戦争に輪をかけて狂った呆れるものです。大宮が一人でいくら暴れても白けてしまいますが、有田との二人三脚ぶりが絶妙で、筋の通らない事は断固受け入れない二人の姿は見ていて溜飲が下がります。ただ、ラスト走り去る二人を見ていて、切り離された車両に残った者のその後を思うと、小骨が喉にひっかかるようなすっきりしないものを感じ、諸手を上げて万歳という気分にはなれませんでした。 [DVD(字幕)] 6点(2006-02-06 23:44:27) |
2608. 酔拳2
味のある脇役の面々が忘れられない作品。とりわけジャッキー作品の敵役ではピカイチのボスの面構え、いでたち、足さばきは何度見ても見惚れます。まずまず練れていたストーリー。最後の最後でプッツリ終わるのが何とも惜しまれるところです。 [DVD(字幕)] 7点(2006-01-30 00:39:45) |
2609. ALWAYS 三丁目の夕日
懐かしい情景と「カイ・・カン」の薬師丸ひろ子の母親ぶりに、時の流れを感じました。観終わって、現代の暮らしの豊かさと、人の心の豊かさが比例していない事を考えさせられました。それは、便利で豊かな事を当たり前ととらえ感謝の気持ちが希薄になっているからではないでしょうか。自分が9歳の時、母にプレゼントした掃除機を今も母は使っています。自分が両親から感じた、生きている事に感謝する、自然の恵みに感謝する、家族に感謝する、ご近所に感謝する、道具に感謝する等々感謝する気持ちを思い出し、我が子へ伝える事が自分の努めであると自戒をこめて思いました。 [映画館(字幕)] 7点(2006-01-18 22:45:41)(良:1票) |
2610. 白いカラス
[消すことの出来ない心の傷を抱えて生きる」二人の様々な傷の部分より生き様が印象に残りました。傷がイタイイタイと喚くが如く疲弊した女と、自分の傷には敏感でも親兄弟の傷には目をそむけて生きてきた男が、偶然出会い結ばれる過程の、大人の分別のかけらもない様子はこの二人ならではでしょうか。当然そうなるであろう、もたれ合い、傷をなめ合う関係が展開されます。湿地帯の隠花植物のような二人を大御所が「これも一つの恋の形」と演じているので観るに耐える作品になっているように感じます。ところで、本作の邦題のセンス、良いのでしょうか、悪いのでしょうか、答えが出ないです。 [DVD(字幕)] 6点(2005-12-19 21:29:10) |
2611. 心の旅路
《ネタバレ》 記憶喪失に運命を翻弄される男女の物語というありがちな物語も、元祖と呼ばれるらしい本作の上質さには感じ入りました。記憶喪失ものの見所である、記憶を喪失した事による悲劇、記憶が甦った事が生み出す悲劇、如何にして記憶が甦るかが、本作は意外な展開で繰り広げられ強引さも感じますが、登場人物が、現実を受け止め恋する人の前では乱れまいとする凛とした人々なので物語にどんどん惹き込まれていきます。これは役者の魅力もありますが演出の妙によるところが大きく、ポーラの嘆き悲しむシーンを一切見せずにチャールズの前に登場させたシーンはとりわけ素晴らしく、このシーンあってこそ観客は彼女が「スミシィ」と呼べるのを今か今かと待ち望み、ラストシーンに心から「ああ、よかったね」と言えるのではないでしょうか。この締めの演出も冴え渡っています。あの場所での彼女のアップは私の忘れじのシーンとなるでしょう。 [DVD(字幕)] 8点(2005-12-14 00:14:38)(良:3票) |
2612. マスク(1994)
初めて観ました。マスクのスタンリーのハチャメチャさは、CGを駆使したとてつもないものですが、素顔のスタンリーの対比という点で決して度は過ぎておらず、正義のヒーローでもないので笑わされ通しでした。こういうキャラの受け手が重要で、相棒に犬のマイロをもってきたのは旨いというか反則です。大爆笑させられました。このコンビには及びませんが、とぼけた味の警部と部下の正味の人間キャラにも笑わされました。お話はスタンリーのティナへの想いから悪党たちの対決へという展開になりますが、ボスキャラが小悪党の割にワル知恵もなくセコさもなく変身しても対比の妙が無くといった具合で、受け手として弱かった所が残念でした。ラストはハッピーだけど面白くないという予想された結末に落ち着くのは止む無しかと思った途端のオチには満足できました。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-12 23:43:55) |
2613. ロープ
映画にとって厳しい制約を自ら課した中で、これ程の作品に仕上げる監督の力量はプロ中のプロだと感じます。フィリップが何時崩れるか、観ている方はハラハラするのですが、もしかしたら、ブランドンはそんなフィリップの様子を楽しんでいたのかもしれないですね。露見するシーンがもう一捻りきいてくれたらと思うのは贅沢でしょうか。見応え充分の作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-05 23:31:44) |
2614. 続・座頭市物語
兄との確執が見所でしょうが、兄のキャラクターが善人でもなし、悪人といっても悪の凄味も魅力も漂っていない中途半端さで、対決と最期を看取るシーンにも迫ってくるものがありませんでした。脚本が練れていないので、平手造酒の供養や軽薄さ溢れる飯岡の親分のシーンも空回りしているように感じました。何より、市が狙われる理由があんまりだと思いました。 [DVD(字幕)] 5点(2005-12-05 23:03:38) |
2615. 燃えよドラゴン
子供心に、肉体美の美しさと一撃必殺の凄まじさに唖然とし、ストイックな姿に惚れ惚れしたものです。30年以上経って、ストーリーを「考えず」に割れた腹筋と「アチャ、アチャ、ウォァチャー!!!」を「感じて」観ますと、今も色褪せない作品でした。 [DVD(字幕)] 7点(2005-12-02 22:10:01) |
2616. 仕立て屋の恋
「愛されずとも愛する」「愛されても愛せない」想いが描かれた作品が数ある中で、本作は私にとって最上です。愛した人が他の人を心底愛しぬいている。その姿を見せつけられ悲しみや苦しみにのたうつ時、その思いから逃れたいため憎しみが沸き起こってきそうな時、仕立て屋イールの生き様が思い浮かびます。彼はどんな状況であろうと愛する事を喜びと感じ、どんな結果になろうと「止む無し、悔い無し」と割り切れたのです。本作から最近考えさせられる事が、残りの日々を負の感情に支配されたまま過ごして生涯を閉じるのか否かという事です。やはり後者でありたい。ならば、どう生きるかであって、どう思って欲しいかではないのでしょう。 【前回の変更から4年が過ぎて思うこと】人を好きになる、なれないは理屈ではない事を達観できるには時間がかかります。イールを見て直ぐにイールにはなれないものです。 [DVD(字幕)] 10点(2005-11-30 15:30:25) |
2617. 女と男の名誉
《ネタバレ》 銃弾は外れナイフは喉を貫くシーンのみ記憶していた作品で20年振りに観ました。惚れたアイリーンが同業者だったという事が、チャーリーにとって決着をつけねばならない不運であり、かつ決着をつける決断ができた幸運だったようです。復讐の泥仕合ばかりが強調されがちなマフィア物の中では異色である粋なストーリーで、色気の漂うニコルソンとターナーの名演と相まって楽しい作品でした。当時はニコルソンにゾッコンでしたので、ラストはホッとしたものですが、今観てみますと、銃弾がかすりもしていないのは大いに不満です♪ [DVD(字幕)] 7点(2005-11-15 22:52:47) |
2618. 散り行く花
《ネタバレ》 笑いが皆無の暮らし、笑い方を知らないのか、あのような方法で笑顔を作る姿に胸が詰まります。目を覆うばかりの薄倖の彼女が大輪の花を咲かせて輝きました。それはほんの一瞬の事で儚く散ってしまいましたが、散り際に笑顔をみせようとした姿に、人がこの世に生を受けた価値を感じるのです。『死んで花実が咲くものか』自ら若いつぼみを絶たないでいただきたい。花開く時は来るのです。 [DVD(字幕)] 8点(2005-11-15 22:11:19) |
2619. ヴェニスの商人
《ネタバレ》 パチーノとアイアンズの共演。自分にとっては夢の共演です。圧倒的な存在感はさすがです。夢のひと時を堪能出来、大満足でした。興奮冷めやらずの状態で、今日の所は取り敢えずここまでで・・・・箱を選ぶ時の思慮深さにうっかり騙されそうですが、自堕落な生活を送るぼんくらバッサーニオの厚かましい願いを聞き入れ、借金を申し込み、常識外れの証文であっても、甘い見通しを根拠に応じたのはアントーニオであり、証文通りの要求をするシャイロックに非は無いのです。ユダヤ人であるというだけで、ゲットーに押し込め、蔑むという慈悲のかけらもない行為をしておきながら、その相手に慈悲を乞うとは何事かと思います。 シャイロックは、鬱積した怨念を晴らそうとしますが、証文の盲点を衝かれた途端、要求を取り下げてしまったのは、刺し違えても言うまでには至らなかったようで自分としては、残念に感じました。財産没収はまだしも、改宗を命じるとは、驕るのも大概にしろと言いたいです。指輪の件もぼんくら振りを心配しての事かも知れませんが、執拗過ぎて不愉快でした。パチーノのぶすぶす燻り続ける怨念が裁判で一気に燃え上がる様子、アイアンズの破滅を覚悟するも、命の炎が細くなって行く事を怯える様子、共に圧巻で絶妙なキャスティングです。原作を読んでいましたが、見ごたえのある作品でした。未読の方は、読む前に鑑賞される事をお薦めします。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-09 19:56:35) |
2620. 刑事コロンボ/仮面の男<TVM>
《ネタバレ》 犯人がテープ中の矛盾を警部に指摘され,観念したラストシーンのみ記憶していた作品で、子供心にコロンボの頭の良さを羨ましく思ったものでした。30年振りに観ました。警部は、おかしいと感じた事を、深く深く考える人物で、深く考えている故に、見た事、聞いた事から他人が気づかない新たな疑問や矛盾を感じ、その積み重ねで犯人を追い詰めてゆくのですね。極上葉巻を吸う犯人から押し付けられた10ドルを律儀に返す様子に、貧しても鈍しない心意気を感じました。CIAが警部の身に危険が及ぶような事してくれればワクワク出来たのですが、尾行だけだったのは物足りなかったです。 [ビデオ(吹替)] 6点(2005-11-06 15:52:16) |