261. 蜘蛛巣城
《ネタバレ》 序盤はやや冗長と感じたのだが、鬼気迫る終盤でささいな瑕疵など吹き飛んだ。これほど壮絶という形容がふさわしい作品はない。運命に絡めとられるように破滅へと突き進む武時の姿から一時も目を離すことができなかった。『七人の侍』などに比べるといささか寓話めいてはいるが、もっと知名度が高くてもいいはずだ。 森に棲む妖婆の怖さは『妖怪百物語』の置いてけ堀の下りを思い出させる。が、はっきりいって怪奇映画であるあちらよりも怖い。そして皆さん言及しておられますが、なんだかんだいっていちばん邪悪な奥方、山田五十鈴さん。あんた怖すぎるよ! 夢に出てきちゃうから! あんまり怖いので森の化生が憑依してるのかと疑ったくらいだ。 何の前知識も無しに観たために、三船敏郎が矢の雨のなかでの絶命する場面には口があんぐり。かっこいい決め台詞を言わせたり堂々とした態度をとらせたりせずに、みじめに悲鳴をあげて這いずり回るのが非常にリアル。すさまじい迫力だった。『俺たちに明日はない』のボニーとクライドが銃弾の嵐を浴びる場面に勝るとも劣らない名場面でしょう。 個人的には『七人の侍』よりも好きかも。登場人物に温かみがない分、白と黒だけで映される荒涼とした風景が胸に沁みる。なんともいえない虚無感が閉幕後もしばらく後を引くのです。 [DVD(字幕)] 9点(2006-01-06 15:43:27) |
262. ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
スピーディスピーディと言われているのでどんなに速いのかと思ったら、『スナッチ』を先に観ていたのでちょっと遅く感じたくらいだった。意外とゆるい感じ。ゆるゆると進んで、突然爆発する。悪党どもがドミノ倒しのようにパタパタ倒れていくのが笑えた。出てくるのは悪党ばっかりで暴力描写も盛りだくさんなのに、結末はほぼ勧善懲悪が完遂されるので後味がすごくいい。そしてなぜかいちばん迫力があったのは、バーを経営している主人公の親父。って、スティングじゃん! どうりで、目つきが只者じゃなかった… [DVD(字幕)] 7点(2006-01-06 10:03:15)(笑:1票) |
263. GONIN
山本英夫の漫画『殺し屋1』が好きな人は好きだろう(映画の方じゃなくて原作ね)。ていうか山本英夫はこの映画からインスピレーションを得たとしか思えないほど、主要プロットは酷似している。ヤクザを題材としたハードバイオレンスであり、戦いだけで紡ぐ超シンプルなストーリーがそのまんま。恋人を目の前でレイプされたシーンなんかどこかで見た気がする。でもどちらもそれなりに楽しめる作品となっているので、両作品に触れて損はないだろう(違いを挙げるなら、『GONIN』の方はリアルで銃撃戦主体、同性愛の空気が強く、『殺し屋1』の方はキャラクターの濃さが特化しているといった部分だろうか)。凄まじい暴力描写は受けつけない人の方が多数派なのではないかと思う。ビートたけしの演じるゲイの殺し屋にはしびれた。バイオレンス大好き、格闘技観戦にはわくわくするぜ、という血の気の多い方におすすめします。 [DVD(字幕)] 8点(2006-01-06 05:07:35) |
264. 双生児
感激した。江戸川乱歩という異世界を自分のものにして、原作に負けないくらいの映像にできる才能が存在するとは思わなかった。俳優、映像、メイク、美術、音楽、すべての要素において優れ、さらに全体として調和している。中でも美術班の功労は大きく、ねばりつくような耽美の世界を完璧に作り上げていた。本木雅弘がこんなに細やかで迫力のある演技ができる人だとは知らなかったし、眉毛を落としてもまったく見劣りのしないりょうの美しさには驚嘆した。浅野忠信も、ちょっと顔見せしただけなのに瞼に焼きつくくらいのかっこよさ(これも美術班の力かな?)。音楽は大好き。個人的にこういうぎゃんぎゃんしつつも綺麗な音、好きです。気持ち悪いような、心地良いような、日本的な妖しさ。だけど不思議に新しい感じもする、アヴァンギャルドな江戸川乱歩。素晴らしい。人を選ぶだろうが、選ばれた人にとっては最高の映画だ。 [DVD(字幕)] 9点(2006-01-06 04:33:02)(良:2票) |
265. ほしのこえ
わずか25分の掌編。新海誠も映画として作った気はさらさらないだろうから、この場で二時間前後の映画群と同じものさしで評価するのは少々酷な気がする。酷というか、ほとんど無茶である。映画を観るより軽い気持ちでさらっと鑑賞すれば、それなりに満足できるのではないか。状況を考慮して、サービスで6点付けときます。 アニメーションを見慣れている人なら大丈夫なのかもしれないが、年端も行かない女の子が巨大ロボットに乗って宇宙のモンスターと戦う、というリアリティのない設定にはやはり抵抗があった。しかし結末は悪くなかったと思うし、言葉の使い方や、とくに背景美術の美しさには息を呑むものもあった。透明感のあるきれいな映像は、一人で製作したからどうという意味ではなく、文句なしに素晴らしいと思う。脚本の力を伸ばすか、あるいは他の優れたクリエイターと手を組んだなら、将来は大傑作が生まれるかもしれない。 [DVD(字幕)] 6点(2006-01-05 13:36:11) |
266. バタフライ・エフェクト/劇場公開版
《ネタバレ》 タイムスリップという題材が使われる場合、たいていはすべてが収まるべきところに収まる完璧なハッピーエンドとなる。本作は既存の作品に比べてはるかにハードで、甘えのない展開を選んだのが功を奏している。オアシスの素晴らしいエンディングと相まって、ほろ苦さがいつまでも尾を引いた。あまり目を見張る映像がないのだけが残念だけど、脚本の出来がそれを補って余りあるほどに素晴らしい。 [DVD(字幕)] 9点(2006-01-05 12:59:02) |
267. シャイニング(1980)
初めて鑑賞したのはほんの小さな頃のことで、これが大きな間違いだった。いやおうなく"ダニー"として劇中に放り込まれ、半ばトラウマになってしまった。 怖そうな父親と、神経質で気弱な母親。まずこの配置がすごく嫌だ。男性なら想像がつくと思うが、あの年頃の少年は母親にべったりのマザコンで、父親にはエディプス・コンプレックス的な反感を抱いている。父親は家族を守ってくれる頼りになる存在でもあると同時に、非常に強くて恐ろしい存在でもある。男性にとって父親がもっとも大きな意味を持つ時期に、発狂した父親が襲ってくる。これ以上に恐ろしい怪物はいない。 キングが母子家庭に育ったことを思い出した。世界でいちばん安らげる場所であるはずの家庭が、この世界でいちばん恐ろしい場所になる。それは子供にとっては、文字通り世界がひっくり返る恐怖だ。そしてキング版とは違って、まがりなりにも親子の絆が回復することはない。父親は怪物となり、平和な家庭は崩壊したまま二度と元には戻らない。安心して眠れる場所は、もうどこにもない。 また、あの海となって流れてくる血の色が忘れ難い。おぞましく、それでいて不思議に美しい。上品さと下品さのどちらにでも転びかねない色。あんなにたくさんの血が流れるのは、人が死ぬときか生まれるときのどっちかだ。腐乱した女性の誘惑もまた性と死というありえない組み合わせであり、生理的に不愉快極まりない。 この映画は人間のもっとも根源にある、本能的な恐怖を刺激する。『シャイニング』は、幼い頃の筆者のむき出しの感受性に深々と突き刺さり、消えない痕を残した。今でもあの雪中の迷路の場面を思い出すと胃がぎゅっと縮こまるような恐怖を覚える。あの限りなく絶望に近い恐怖と、途方もない心細さ。個人的には今なお特別な意味を持つ作品であり、恐怖の原点ともいえる作品だ。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-01-04 09:31:05)(良:2票) |
268. バリー・リンドン
ロココ絵画の名作を思わせる、夢のように美しくて荘厳な映像。絵画を観るのが好きな人なら、これだけでも観る価値があると思う。脚本も恐ろしく完成されており、映像がそうであるように全体の構成が完璧なシンメトリーを描いている(前半は決闘に勝利したバリーが故郷を追われた後に富と名誉を得るまで、後半は財産を浪費したあげく名誉を失ったバリーが決闘に敗れ、故郷へ舞い戻るまで)。登場人物への感情移入を拒否するような作りも面白い。バリー・リンドンは間違っても善人とはいえないが、かといってとんでもない悪党と言い切ることもできない、ある意味ではすごく人間くさいキャラクターだ。エピローグの言葉を人間に対する否定ととる向きが多いようだけど、逆に救いを読み取ることもできないわけではない。ブロンテの『嵐ヶ丘』の結末にも似たような言葉があって、そちらは激しい生を全うした人物たちがようやく安らぎを得た、という慈愛の意味で使われている。栄光を求めて這い上がり、最後には己の欲望に足をとられて転落したバリー・リンドン。ひとりの人間の生涯を、綺麗な部分も醜い部分もひっくるめてまるまる映画にする。ただ「彼が生きた」ということをありのままに提示する。人間を描く方法として、もっとも実直で嘘のないやり方だ。いつものキューブリック作品には人間に対する皮肉や批判が見られるが、今回は趣きが違う。人間の愚かさを受容する、キューブリック流の人生賛歌を唄っているのではないかとも思えた。 [DVD(字幕)] 9点(2006-01-04 01:59:32)(良:2票) |
269. ビヨンド・ザ・マット
ピューク(げろ)というレスラーが登場した冒頭の時点で、レンタルするビデオを間違えたかと思ったのだが、伝説的スターのテリーやミックらが中心となってからは普通に楽しめた。中でもDDTの開発者であるジェイク・ロバーツのエピソードが強烈。リングに大蛇を持ち込むパフォーマンスをする狂犬みたいなおっさんなのだが、この人の生涯がまた不幸の連続なのだ。そして父親や娘との空虚な家族関係について語った後の、「理想の家族は?」という質問に対するあまりにもナイーブな返答。あれにはさすがに泣いてしまった。あのいかつくて、怖そうな連中の内面に、普通の人と何も変わらないナイーブな感情が隠れているのだ。プロレスに興味はないし、この映画を観る前には彼らのうちの一人として知らなかったのだが、充分に見ごたえのある作品だった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-03 11:40:45) |
270. 鮮血の美学
コアなホラーファン、あるいはその業界の人ですら「非常に不愉快」と評するこの作品。ドキュメント『アメリカン・ナイトメア』によればヴェトナム戦争の影響を多大に受けた作品らしく、現実のニュース映像の射殺シーンをなぞるような映像もある。生理的に気持ち悪いというのもあるが、何より脚本にまったく救いがない。罪のない少女が暴行されたあげく惨殺され、少女の両親がたまたま出会った犯人たちに常軌を逸した復讐をするというストーリー。名匠ベルイマンの『処女の泉』という神話的な作品を下敷きにしているとのことだが、宗教的な救済のもたらされる『処女の泉』に対し、本作は「この世に神なんているものか」という呪詛の言葉が聞こえてくるかのようだった。きっと監督は自身のトラウマ、狂気を消化するために、この奇妙な映画を製作せずにはいられなかったのだろう。心的外傷を受けた子供は遊びの中で辛い出来事を再現するというが、ヴェトナムという地獄を経験したあとではこんな形で世界に対する悪意を発散するほかなかったのかもしれない。内容にまったく合っていないコメディの要素を取り込んでいる辺り、正気じゃないなあと思う。 [ビデオ(字幕)] 5点(2006-01-03 06:46:32) |
271. アメリカン・ナイトメア(2000)
興味深いには興味深いが、もう少し掘り下げてほしいところ。これが一時間足らずのテレビ番組であったならそれなりに満足しただろうが、映画としてはいまひとつ物足りない。ホラー好き、あるいは逆にホラー映画を全然観ないという人にはちょっと面白いかも。 [ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-03 06:13:21) |
272. 鬼畜大宴会
グロいというよりかは、汚い。登場人物も舞台も、とにかく汚い。70年代の若者の不細工さが妙にリアルで、役者に演技力はないが、とにかく嫌なキャラクターばかりで胸がむかついた。狭い部屋にやり場のないどろどろとした鬱屈が溜まっていく息苦しさはひどく不愉快で、そりゃ学生運動で爆発しなきゃやっていけないだろうなと思わせる。映像にも音楽にも独特のこだわりがあって、なかなかどうして成功しているように思えた。とくに荒んだ空気の表現が非常に上手いのだ。しかし人間が狂気に囚われていく過程としては、さほど真に迫っているとは思えなかった。恐慌へ向かう集団心理のリアルな描写を期待していたのだが、細かな経過はすっ飛ばしていきなり発狂。「へ?」という感じ。これじゃ学生たちにもともと発狂する素質があったとしか説明のしようがない。狂気そのものを描くという意味ではすごいのだが、おかげで少し物足りなかった。もっともこんな題名の映画にドラマを求める方が筋違いなんだろうが…… [ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-03 05:41:51)(良:1票) |
273. 白い家の少女
サスペンスとしてはそんなに面白くはないが、ジョディ・フォスター演ずる幼い殺人者のあまりにも痛ましい姿が印象に残っている。エンディングを聴きながら、誰も彼女の側にいてくれない、この子を守ってくれる人はどこにもいないのだという実感が、きりきりと胸に食い込んでくるのを感じた。こんなにも淋しい、やりきれない結末はなかなかない。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-03 04:20:25) |
274. 自殺サークル
たぶん「レミングスみたいに人間がぼろぼろ自殺していったら楽しい(!)だろうな」という発想だけで作り始めた映画で、深いテーマは何もない。なにやら小難しい理屈や謎を散りばめているけれど、大失敗に終わっている。せめて余計な謎を省き、冒頭のシーンをクライマックスに持ってきて、後半に向けてエスカレートしていくような展開にすればまだ観られただろう(もっとも、それでも支持するのは一部のコアなホラーファンだけだろうが)。わけのわからない話を作るのは簡単だが、わけがわからない話を作品として成立させるのはものすごく難しい。リンチのような天才以外は安易に手を出してはいけない。後半に至っては失笑に継ぐ失笑。ギャグにしても寒すぎる、哀れな作品だ。 [ビデオ(字幕)] 4点(2006-01-03 03:50:56) |
275. キャメロット・ガーデンの少女
《ネタバレ》 少女のキャラクターのせいで素直に楽しめなかった。そもそもトレントが逃げ出す羽目になったのは主人公の少女のせいなのに、少女が助けてめでたしめでたしと言われても…。子どもだから仕方ない、というのが大人の解釈なのだろうが、こんな子は可愛いとは思えない。わざわざトレントを変態と誤解させるような言い方をして追いつめてしまうところは観ていて腹が立った。ちょっと頭が悪すぎるんじゃないの!? [ビデオ(字幕)] 6点(2006-01-03 03:17:47) |
276. モハメド・アリ かけがえのない日々
本作鑑賞後、興奮冷めやらず、酔っ払ってシャドウボクシングしていたことを白状します。【黒猫クロマティ】さんは観終えて疲れたとおっしゃってるんですけど、自分は逆にアリの溢れんばかりのエネルギーを分けてもらったような気がして、元気が出ました。ボクサーとしての強さというか、人間としての強さに魅せられた感じです。彼が残した世界一短い詩が今でも脳裏にこびりついています。誇りのために、自分が自分であるために全力で戦う。その生き様の力強さ、美しさは鮮烈でした。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-03 03:02:19) |
277. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
ここまで真っ黒なコメディに抵抗なく笑ってしまった自分の人格を疑った(自分の右手と戦う博士に爆笑)。それはさておき、キューバ危機当時の国防長官のインタビューから構成されたドキュメンタリー映画『フォッグ・オブ・ウォー』をこれと併せて観ると、また興味深い。『13デイズ』ではかっこよく描かれていたケネディらだけど、マクナマラ元国防長官は「核戦争を避けられたのは単に運が良かっただけ」と断言していた。「ケネディもフルシチョフもゲバラもみんな、理性的な人間だった。それなのに、もう少しで核戦争というところまで行ったのだ。理性は、あてにならない」。そう、この映画、実はまったく洒落になってない。このどうしもうもなく狂っていて滑稽な連中は、現実の人間とそう遠くないところにいる。米軍幹部には当然のようにソ連との全面戦争を主張した人物もいたことも思い出す。ここまで強烈かつ秀逸な風刺は、映画であれ小説であれ見たことがない。ラストシーンの核の輝きは、一度観たら絶対に忘れることのできない、人間性に対する最大限の皮肉だ。 [ビデオ(字幕)] 10点(2006-01-03 02:42:40)(良:2票) |
278. 男と女(1966)
いつも脚本を中心に映画を観てしまう方なので、初めはかなり戸惑った。脚本よりも映像が優位にあり、映像以上に音楽が物語を引っ張る。音楽とともに台詞のない場面を積み重ねるモンタージュは普通の作品でも一部では使われるけれど、ほぼ全編にわたってこの調子というのには驚いた。すごいのは、それでも退屈せずに引き込まれること。作りはプロモーションビデオ的なのに、映像感覚や音楽、少ない台詞のひとつひとつが瑞々しくて、心の奥まですうっと浸透していく。白黒とカラーの使い分けやロングショットの多用が美しいと思ったら、予算との兼ね合いで偶発的に生まれたものらしいですね。ううむ、ますますすごい。あとは、役者の力。子供も含め、最大限に魅力が引き出されていると感じた。この映画では、脚本がいちばん下にあるのかも。 [DVD(字幕)] 7点(2006-01-03 00:31:02)(良:1票) |
279. セルラー
人物設定が絶妙。敵役はロス市警のブルース・ウィルスっぽい強そうな刑事で、味方は軽い感じのお兄ちゃんと、W・メイシー演ずる勤続26年間人を撃ったことのないムーニー巡査(しかもスパへの転職を考えている)。このムーニーさん、わざわざ倒れた金魚鉢の中の魚を助けるんですよ。こんな可愛い警官初めて見た(笑)。味方が一見頼りないので、最後までずうっとハラハラしてた。 全体的に小味だけど、それが地味じゃなくて切れ味の良さにつながっている。90分足らずにまとめたのが高感度高し。舞台の明るさも手伝ってか、カラッとしてて後味もすごくいい。良質の娯楽作です。 [DVD(字幕)] 7点(2006-01-02 07:10:18)(良:1票) |
280. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 一市民の視点から宇宙人の侵略を描き、恐怖と混乱に焦点を絞ったSF大作をつくったという点では評価できる。ただ、原作ファンの方には申し訳ないが、このオチは完全に賞味期限が切れていると思う。小さな微生物が強大な存在を倒すという結末に、何かしら意味合いを見出そうとすればできないわけでもないのだろうが、やはり現代の感覚では薄っぺらく感じてしまう。スピルバーグにこれを言うのは酷かもしれないが、本作をパニックホラーとしてとらえたなら、人類の絶滅、あるいはそれを暗示する絶望的な結末にするのが理想的だったと思う(それじゃロメロのゾンビ映画だが)。一人の平凡な父親が、たいした悪人というわけでもない男を殺し、娘がただ耳を塞いで耐えているあの地下室の場面には素晴らしい。あそこまで極限状態に追い込まれた人間の醜さを活写したのだから、いっそ娯楽作のお約束は忘れて問題作にしてほしかった。ラストのナレーションには失笑してしまう。だってさ、天然痘やチフス菌を利用してインディアンを虐殺、侵略した連中がアメリカを作った訳ですよ。説得力ゼロ。やはりアメリカ人には9.11を体験してもなお、侵略される絶望感は想像もできないのでしょう。 [DVD(字幕)] 6点(2006-01-02 02:25:25) |