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261.  紀ノ川 《ネタバレ》 
家父長制度の色濃く残る明治時代に、和歌山の名家から大地主へと嫁いだ女一代を描く抒情詩。嫁にきたからには、その家の家霊となり、身命を賭して家を守株するという考えに疑問を抱かない女。が、時代と共に移りゆく価値観や家制度・土地制度の矛盾によって翻弄されてゆく姿を娘や孫娘たちとの対立や葛藤を交えて描く。四季折々の風景や地方の風習を織り交ぜており、全体的に好印象。神目線である俯瞰ショットや奥行きを強調した構図などカメラワークには工夫がある。冒頭の舟での嫁入り場面に10分も時間をかけるなど、ゆったりとしたカメラまわしの為、大作感はあるが、大作ではない。台風、洪水、空襲などの特撮やモブシーン(群集場面)はほんのささやかな演出で、そのため各時代の重石がなく、ドラマの総集編のような薄味の印象だ。このような作品は、女の身辺の日常や事件をじっくりと描けばよいのだが、時折理屈っぽさが顔を出すのが瑕疵。紀ノ川を人生に見立てているのは明白なのに、何度もそれを暗示する台詞が挿入される。家の守り神としての白蛇が、嫁入り後間もなくと、死の直前に現れるなど作為が露わだ。これらは鑑賞の妨げにしかならない。また女性を描くことに重きを置きすぎているために、男性陣の影が薄い。特に長男はひどい。娘の聟は登場もしない。女が最も感情を露呈するのが、自転車に乗った娘を折檻する場面。この場面だけが浮いている。甚だ反抗的で強気だった娘が、このときだけは弱い少女に成り下がっていて、矛盾を感じる。ただ、この場面で女の足元をアップで見せる演出は印象深い。内に秘めた興奮と怒りを十分に描いており秀逸だ。原作者の分身が孫娘だが、前二代と較べると見劣りがする。役者としてのオーラがないのだ。この孫娘に女(祖母)の意志が一部受け継がれていくので、女が亡くなっても観客は安堵できるのだが、それが台無しになってしまっている。何度も繰り返される終焉の場面は演出ミス。煙が出ての場面変換はギャグかと思うほどくどい。戦後、女はどうして家宝の骨董品を売却したのか。あれは「家の葬式」なのだと思う。戦後と共に家が滅んだことを認識した女は、心の中の「家という煤」を一掃する必要を感じた。自分が生きている間に家の始末は全部済ませておきたいという気持ちに駆られたのだろう。それが家宝の売却という行動となった。その心情に思い至ったとき胸が熱くなった。
[DVD(邦画)] 7点(2013-05-20 23:14:47)
262.  ガフールの伝説 《ネタバレ》 
ふくろうが高度な文明を営むという世界観だが、鉄器文化を持つことに大いに違和感があった。飛躍しすぎていないか。 鉄剣、鉄兜、鉄面蓋などで武装していては、人間の古代戦士と変わりなく、ふくろうである必然性がなくなる。各種ふくろうの特性を生かした肉体同士での戦闘場面が見たかった。 悪の王国の最終兵器である、砂嚢をしびれさせて動けなくするという「特殊金属」は説明不足の誹りを免れないだろう。何のことやらわからない。砂嚢は鳥類の胃の一部で、食物を砂で細かく砕くものであるので、「砂嚢を麻痺させる」とか「頭ではなく砂嚢で感じろ」といわれてもぴんとこない。心眼のようなものと察しはつくが、すっきりしない。極め付けは「月光麻痺」。月の光を真正面で受けると麻痺してマインド・コントロールされるという安直な設定にはげんなりさせられる。 物語は善悪の王国の対立を軸に、「ガフールの勇者たち」という伝説を盛り込んだ冒険戦記もので、これといった目新しい要素は見当たらない。何より不満なのは、前の戦争の契機と経緯、勇者伝説の詳細が語られないことだ。なので最終決戦場面でも感情移入できない。唯一意表を突くのが、兄がダークサイドに堕ちるという展開だが、どうしてそうなるのかが描写不足だ。弟とそりが合わないだけで、両親の愛情を得られており、心に傷を持つわけではない。妹を攫い、弟を殺そうとする心の闇が見えないので説得力がない。補助的登場人物の扱いもぞんさい。両親は途中で居なくなるし、弟と行動を共にする家政婦の蛇は大した活躍を見せない。旅の仲間はかろうじて合格点。ジルフィーは小さすぎて恋人役には不足。大臣ふくろうのみえみえの裏切りと、時を移さぬ退場は、急ぎ過ぎ。主人の成長物語としても不満が残る。危機はそこそこ描かれているが、幸運に助けられている面が大きい。兄殺しの葛藤が薄い。もっと子供らしい知恵を発揮しての活躍をみたかった。美点はCGの華麗さとアクションの優雅さに尽きる。感動することはないが、CG技術の発展には唸らされる。美術を見るような鑑賞法が最適だろう。
[DVD(吹替)] 7点(2013-05-13 13:06:10)(良:1票)
263.  乱暴者(あばれもの) 《ネタバレ》 
戦後の米国は経済的に豊かとなり、50年代にはティーン・エイジャーと呼ばれる社会集団が登場した。彼らはそれ以前のどの世代の若者より多くの余暇と小遣があった。彼らの一部が社会の退屈な枠組みや価値観に反抗を示し、暴れる若者、反逆児となった。ティーン・エイジャーはその後、カウンター・カルチャーとして数々の社会現象を巻き起こしてゆくが、この映画はその黎明期を伝えるもので、社会文化史的価値がある。音楽で言えば、この映画封切1953年の翌年にエルビス・プレスリーがデビューし、その翌年には映画「暴力教室」の主題歌「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が大ヒットし、ロック音楽が確立する。この映画でもリズム・アンド・ブルースでスイングする若者の姿が見られる。主人公はバイク集団だが、映画のヒットでバイク人気に火が付き、その後バイク集団が隆盛を極める。ちなみにヘルズ・エンジェルスの結成は1948年。ファッションではTシャツと革ジャン。それまで下着に過ぎなかったTシャツをブランドが上着として着てみせたことで、新しいカジュアル・ファッションとして流行した。黒の革ジャンは反逆児のイメージとして定着し、シルバー・ビートルズも愛用していた。ジェームズ・ディーンはブランドにあこがれ、彼のように演じようと努め、1955年の「エデンの東」の好演技につながった。スピルバーグ監督は「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」で、主人公にブランドと同じ格好をさせ、オマージュを捧げている。 さて映画だが、当時としては上映禁止措置がとられるほどショッキングな暴力描写と反社会的内容だったものが、今見れば、たいしたことはない。バイオレンスと呼ばれるほどのものはなく、ヒロインがレイプされそうになる場面に煽情的なものを感じる程度。低予算のため、ほとんどがチープなセットで演じられ、特撮も貧相だ。それでも主人公が大人たちのリンチに遭う場面は緊張感がみなぎるし、ヒロインとのひりひりするような恋のやり取りは見所となっている。ほとんど感情を現さない主人公が、ほんの一瞬泣き顔や笑顔を見せるが、そこが大変印象的だ。だが個人の内面の描写は一切無く、どうして彼らが暴れるのかはあかされないまま。そこが弱いところ。それでも一見の価値あり。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2013-04-10 01:09:01)
264.  秋津温泉 《ネタバレ》 
男は生きていたくなかった。空襲で家族と家を失い、天涯孤独の身となり、おまけに肺結核を病み、心は虚無に満ち、死場所を求めて秋津温泉にたどりついた。そこで出会った女はよく笑い、よく泣く性質だった。終戦の玉音放送のあと二時間も泣き続ける女を見て、男は生きる希望を持った。激しく深い感情の表出を目の当たりにし、人間の神秘さ、生命の奥深さを感じ取ったのだ。わが人生もすてたものではないと思えた。女の献身的な介護のおかげで、男は健康を取り戻した。二人は惹かれ合っていたが、互いに愛を告白することなく別れた。男は作家を目指したが、すぐに壁にぶつかった。周囲の勧めで結婚もしたが、心は満たされなかった。再び虚無の世界に堕ちた男の足は、秋津温泉は向いた。再会した二人。男は心中を持ちかけ、心根の優しい女は同意する。心中の直前に女がげらげらと笑い出し、心中は自然と取止めとなった。女の屈託のない笑いが男を救ったのだった。歳月が流れた。女は独身を通し、温泉旅館を経営していたが、田舎暮らしには飽き飽きしていた。時折訪れる男を待つだけの生活にも疲れ果てていた。永い孤独が精神を蝕んでいた。女は再会した男に心中してくれと頼む。男は世の中に不満を持ちながらも、それなりに順応できるようになっていたので、死は慮外の事だった。男を見送ったあと、女は自死する。男は女に二度救われたが、女を救えなかった。片思いと知っていながら一人の男を思い続ける女の愛の不思議、片田舎に埋もれた儚くも哀しい女の一生、虚しさと悔悟に苛まれる続けるであろう男の今後の人生。鑑賞後、様々な事がさめざめと想起された。原作は間違いなく良い。映画もほどほどに成功している。しかし何かが足りない。人を死へと突き動かす”魔の瞬間””心の闇”というものが描かれていない。美しい風景も心理描写も、どこか平坦なのだ。立体的で影のある「心の襞」が伝わらなければ、この手の死を扱った作品に重みがでない。男優には”影”がなく、その演技から「苦悩」が伝わってこなかった。顔も凡庸で、この役には不向き。この役には女の死に値するような容貌が必要。女優は健闘している。気になったのは桜の木の下で手首を切るという過剰な演出。それまでのさりげなさが台無しだ。最終場面は不自然なほど花びらが散っていた。花びらを散らしているADの姿が浮かんだほど。
[DVD(字幕)] 7点(2013-02-11 09:32:12)
265.  ザ・ドライバー 《ネタバレ》 
人物描写が極端に削ぎ落とされているのが特徴。主人公は強盗の逃走を手伝うプロの運転手。常にニヒルで、刑事からはカウボーイと呼ばれる。ヒロインは謎の美女ギャンブラー。お金に困っているらしい。二人は会っても笑いもしないし、恋にも落ちない。従来にない映画を作ろうという監督の意欲がひしひしと伝わってくる。犯罪映画だが、よくある刑事対犯人という構図より、男と男、プロとプロの対決という趣向が強い。一種の擬似西部劇で、そのため正義感や倫理感は緩く、アウトローの跋扈する世界となっており、ひと月で市内に銀行強盗が15件も発生する。刑事は相当なはみだし者で且つ自信家、犯人を挑発し、対決を楽しんでいる。カウボーイを逮捕するための方便として、スーパーマーケット強盗犯と取引し、取り逃がす代わりにカウボーイと組んで銀行強盗をさせる。無茶苦茶である。カウボーイの正体も居場所も分かっているのだから、張り込んでおけばそのうち尻尾を出すと思うのだが。カウボーイは気に入った相手とは組まないが、刑事の鼻をあかすため引き受ける。結果は、スーパー強盗犯が刑事を裏切り、カウボーイが射殺する。金を手にしたカウボーイは、札番号が控えられているのを知っており、暗黒街の人物に換金を依頼する。換金の代理を頼まれたのが謎の美女。駅で秘密裏に取引をする換金屋と美女。それを見つめるのは、美女を張り込んで現場に現れた刑事と仲介屋を脅して情報を仕入れた強盗犯の片割れ。結果は、換金屋は刑事に射殺され、片割れはカウボーイに射殺された。しかしカウボーイも換金屋に騙され、金を得ることはできなかった。だがそれが幸して刑事に捕まらずに済んだ。証拠不十分ということらしい。挿話のつなぎが粗い。カウボーイが美女の家を知っていたり、美女がカウボーイの家を知っていたり、強盗犯の片割れが仲介屋の家で待ち伏せしていたりする。最大の謎は、片割れが駅で美女からロッカーの鍵入りのハンドバッグを奪ったこと。片割れは美女も換金屋も知らず、カウボーイが来ると思っていたはず。よしんば換金屋を知っていたとして、それなら何故換金屋の持ったカバンを奪わない。遺憾なのは、カウボーイが拳銃を使ったこと。あくまで車と素手で勝負すべき。そして居丈高な刑事の鼻を明かせなかったこと。彼は二度も騙された。勝利感や爽快感はない。ヒーローとして描いてないので仕方ないが、工夫の余地はあった。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-20 13:08:52)(良:1票)
266.  ハート・ロッカー 《ネタバレ》 
ひと癖もふた癖もある映画だ。突き放して、結論を観客に想像させるタイプの映画で、好みが分かれそう。その手法は、さほど成功しているとは思えない。理由はいろいろあるが、主人公の感情が読めないことが大きいと思う。冒頭場面、3人の爆弾処理兵があまりにビビっているので笑ってしまった。爆弾処理兵たるもの常に冷静であるべきで、実際にそうだと思う。周囲に民間人がうじゃうじゃいるのに、警告もせず、避難・警戒線も張らず、X線透視カメラも無し。予想通り爆破したが、あんなに遠くで爆発したのにまさかの死亡はあ然。肉屋の携帯との関わりは不明のまま。次に芋蔓式の爆弾がでてきたけど、何のためのものなのか?米軍車が偶然にあの上を通るのを願うのか?万事この調子。どれも説明不足な上に、各挿話の結論が放りっぱなしだ。転機となったベッカム少年の挿話を例にとっても、何故少年をそんなに気にするのか。ベッカムそっくりさんの正体は?ベッカムのいた露天商の主に何故通訳をつけて質問しないの?人間爆弾のことを上に報告して、チームで調査すればいいのに、何故単独でベッカム家に乗り込んでいくの?何故おばさんにやられっぱなしだったの?ベッカムに再会出来て何故あんなによそよそしいの?など、すっきりしないこと甚だしい。「任務あけまであと何日」としつこく字幕を出しながら、その日を描かない。わざと難解にしているようにも思えるくらい。だから、いつまで経っても映画の方向性が見えてこない。戦争の狂気を描きたいのか、悲惨さを描きたいのか、主人公の英雄ぶりを描きたいのか、成長を描きたいのか、戦場での兵士心理を描きたいのか、友情を描きたいのか、イラクでの現状を知ってもらいたいのか。緊張感だけは伝わってくるが、手ブレカメラの多用は目に余る。主題が「戦争は麻薬だ」ということは序文にある通り。となれば、最後の場面の説明としては、「帰国して日常生活に戻ったものの、妻との会話は通じず、かえって孤独は増し、無力感に苛まれていったが、やがて召集通知が届き、主人公な嬉々として戦場に戻っていった」ということになる。この人、特に成長してないと思う。戦場でしか生きられなくなった自分を再確認したということ。それを戦争の悲劇の一面として描いた作品。戦争は兵士の精神を蝕む。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-20 05:52:48)
267.  ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
探偵役は二人。社会派で温厚なジャーナリストのミカエルと天才ハッカーのリスベット嬢。彼女は過去のトラウマから人を愛せず、コミュニケーション障害者で攻撃的な性格という設定。この設定が十分活かされている。ミカエルは追っていた悪徳実業家の罠に嵌り、裁判で有罪となるが、リスベットが無実を証明するのが副主題。ミカエルはある大物実業家から40年前の少女失踪事件の調査依頼を受ける。少女とミカエルは実は顔見知りであるという設定が巧み。リスベットは仕事でミカエルの素行調査を行っており、彼に興味を持った。失踪事件のことを知り、彼に事件解明のヒントをメールする。こうして二人の交流が始める。失踪事件は謎が多く魅き込まれる。事故で交通止めの孤島、生死不明、一族の内部抗争、犯人らしき人物から送られる押し花、残された日記の暗号らしき名前と数字、これらから一気に未解明の連続殺人事件へと発展する様相は見ものだ。これに聖書、ナチス、ユダヤ人虐殺、性的虐待、父殺しといったおどろおどろしい要素が加わるのだから重厚さは増す。性的虐待と父殺しはリスベットとリンクする。女を嫌悪する犯人を男を嫌悪する女探偵が暴くという構図の妙もある。リスベットは交通転落事故の犯人を見殺しにする。そして最後のサプライズ。少女は生きていた!これで終わりではない。リスベットはミカエルを嵌めた悪徳実業家の悪事の証拠を突き止め、ミカエルの無実をはらし、隠し口座から大金を引き出すことに成功する。ダークヒロインとしての新鮮味。彼女は人を愛せなかったが、ミカエルとは心を通わせ、ベットを共にし、音信不通だった母との和解も果たした。彼女の従来の探偵役からかけ離れたぶっ飛びぶりと成長ぶりも見所。細部まで理詰めで練られた脚本には好感がもてた。だが不満もある。ミカエルは部屋を荒らされたり、ライフルで命を狙われたりしているのに、安閑としすぎている。緊張感が足りないのだ。真犯人は直球すぎる。もっとミス・ディレクションやレッド・へリングを配すれば老練なミステリー・ファンからも大喝采を受けただろう。それと聖書、ナチスは古臭くないか?いやしくも題名はミレニアムだ。少女は連続殺人事件の真相を知りながら何故放置しておいたのか?警察に匿名投書するくらいはできたはずである。毎年生花が贈られてきて、それが犯人からのものと思うか?リベリットの貧相なヌードは不要。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-19 23:40:13)
268.  メンフィス・ベル(1990) 《ネタバレ》 
1943年5月の時点では、ドイツの防空能力は衰えておらず、連合軍にとっては大変な脅威だった。それなのに、真昼間に低空飛行で援護戦闘機も無しに爆撃しろというのだから無茶な話だ。損耗率が10%近かったので、25回も作戦に参加し、生還できたのは大変幸運だ。当時は無差別爆撃は邪道とされおり、専ら軍の基地や軍事関係工場だけを攻撃する精密爆撃だけがなされていた。だが、やがて勝利をあせる英国が無差別爆撃を主張しだし、米国も1945年には都市への無差別攻撃をするようになった。内容は史実に基づいたもので、戦闘場面はそれなりに迫力があるが、戦争映画としてみると底が浅い。これはどうみても勝者の作る青春アクション映画だ。敗戦国なら、ここに登場する若者の能天気な会話や次々と起る嘘っぽいトラブルの演出はないし、絵に描いたハッピーエンドにもしなかっただろう。戦争は、任務を成功させ無事生還出来たから喜ぶといった類の甘いものではない。勝っても、負けても悲惨なものだ。死に対する恐怖は描かれていても、戦争に対する苦悩が見られないのが残念。若者の勇気を称えても、戦争批判には到っていない。それでもいいじゃないかと言われればその通りだが、せっかくの実機を使っての映画なのに残念だ。アメリカでは全くヒットしなかったのに、日本ではそこそこヒットしたのは若手俳優の人気のせいだろうか。操縦席にトマト・ソースがあったり、敵機との応戦中に喧嘩したり、球面銃座から墜落しそうになったり、負傷者をパラシュートで落として敵国に救出してもらおうと考えたり、爆撃手でない者が勝手に爆弾を落とそうとしたりとやりたい放題である。無理に盛り上げようとするから、リアリティに欠け、こしらえ事に見えてしまう。史実を描くのに、虚構を交えて面白おかしく描く必要はないはずで、製作者の態度に問題がある。真摯に描けば、高射砲の砲弾の中を飛行するだけでも大変な恐怖が伝わってくるはずだ。ドイツ戦闘機との闘いは、全体の状況がよくわからないままに終了する。彼らは本当に勝者だったのだろうか?青春映画としてみると一定のレベルに達していると思うが、戦争の愚かさを描かない戦争映画は高評価できない。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-19 06:02:13)
269.  マグノリアの花たち 《ネタバレ》 
女性はおしゃべりが好きだ。何でも気軽に話せ、愚痴を言い合える友達は貴重な存在に違いない。だから多少気が合わなくても、憎まれ口を叩いても、喧嘩をしても、やがて何事もなかったかのように仲直りできるのだと思う。あるいは喧嘩、和解、悪口、仲直りを繰り返すことによって、より一層強固で奇妙な友情が生まれるのかもしれない。いくら無二の親友がいても遠くにいては心もとない。遠くの親友より、相談できるご近所様ということもあるだろう。更に竹馬の友だったり、宗教もからめば、「友情」の一言では言い表せない「絆」が生まれるのだろう。その絆が本作の主題。美容院を舞台に普通の女性の日常生活がいきいきと描かれる。祝日、式、パーティ等の場面が多いのは偶然ではなく、そこは女性が活動する場だから。裏方で準備するのはたいてい女性で、頭が下がります。男といえば、近所迷惑を顧みずに鉄砲で鳥の木を脅したり、いたずらをしたりで、役に立ちません。シェルビーは、出産と子育てに命をかける女性の象徴。彼女が死して天使となり、母や子や夫を見守るのは当然でしょう。祈りとは運命を受容すること。 米南部の文化が紹介される。カラーエッグやクリスマスの家の電飾は、今でこそ珍しくないが、公開当時の日本ではまだ一般的ではなかった。プールにマグノリアを浮かべたり、アルマジロの巨大ケーキを作ったり、花婿の友達が銃を鳴らしながら登場したりと興味深い。娘の死を嘆いて涙する女性を友人が無理に笑わせる場面があるが、これこそ日本にないブラック・ユーモアのセンスで、周囲が悲しみに沈んでいるときに、わざと馬鹿をやったり、ジョークを飛ばしたりて皆を笑わせると誉められるらしい。運命を受容し、何もかも笑い飛ばすことができれば幸せでしょう。 原題「Steel Magnolias」のマグノリアは南部の州花で可憐な花だが、鋼鉄のマグノリアとなれば、伝統的に農業に携わってきた南部女性の芯の強さを指すのだろう。「鋼鉄のように強いはずの男が…」の台詞があるが、男性批判ではなく、自分の強さに気づいたということ。その強さは、それは出産し、子を育て、死を見守るという女性の役割に基づくものだろう。女性賛美の映画だ。男性の影が薄いのは、焦点を絞るための演出の妙。出産しそうな妻を乗せた車をバイクで追いかける。それも男の役割。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-18 23:47:49)
270.  荒野の七人 《ネタバレ》 
「オールスター・キャストによる痛快西部劇」「西部劇の代表作」と言われているが、厳しい眼でみれば、随所に甘さが目につく。 ガンマン7人の人物像は個性があり、描きわけができていて合格点。特に若者チコは秀でている。彼は農民出身だが、銃に運命を変えられガンマンとなり、クリスに憧れて「7人」に加わったが、最後は村に留まる決意をする。未熟と大胆の共存する若武者ぶり、警戒する村人と7人とをつなぐ役割、村娘との恋など、おいしいところ取りで、この人がいないと面白みは半減するだろう。ベルナルドと子供達の挿話は文句ない出来。ナイフ投げの名人が、敵に対してナイフを使わないのは理解不能。あれだけの伏線をしておいて。山師ハリーは一旦袂を分かつが舞い戻ってくる。その心の機微を描いていない。戻ったものの瞬く間に射殺されてしまう。もっと活躍させてやるべき。賞金稼ぎのリーは最も影が薄い。腕に自信を無くしており、悪夢に悩まさせるのはよいが、どうやって立ち直ったかが判りづらい。山賊のボスはいかにもバカそうだが、もっと悪賢く、残虐な人物にしないと肝心の”正義””英雄行為”が際立たない。一網打尽にした7人を開放してやるなんて、甘い甘い。手下を何人も殺されており、手下に示しがつかないではないか。復讐が怖い?そんならボスなんてやめちまいな。銃の腕が立つわけでもなく、悪玉として魅力に欠ける。チコがメキシコ人に扮して山賊の元に潜入する場面があるが、安易すぎる。お互いの顔を知らないわけがない。脚本の工夫が足りない。死人が出るのを嫌った農民が7人を裏切って山賊を手引きするが、その直前の場面では皆で戦うと意思確認している。このあたりの物語の流れがスムーズでない。それに山賊が7人に気づかれずに戻れたのも不自然だ。ガン・ファイトはさすがに絵になっている。しかし注意深く見ると、7人に隙があるのに、敵方が撃っていない場面が散見される。村人が敵に農器具などを持って躍りかかるが、敵は何故か撃たないで、一方的にやられる。これは見逃せない瑕疵だ。折角の良い映画が絵空事に思えてしまう。村人にもそれなりの死傷者が出てこそ、現実味が増し、勝利の重さも違ってくる。犠牲があってこそ、最後にクリスが言う「勝ったのは村人たちだ」の台詞が活きてくるというもの。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-15 19:37:15)(良:1票)
271.  上海特急 《ネタバレ》 
お金持ちの男達の間を渡り歩いて、金を貢がせ、世間で”上海リリー”という悪名を頂戴している女が、昔の恋人である軍医と再会し、ヨリを戻す話。ディートリッヒは鉄面皮のように表情を変えず、その退廃的で人間離れした容貌には最後までなじめなかった。異国趣味、戦争、サスペンス要素を加えたメロドラマといった内容だが、脚本はかなりいい加減だ。サスペンスが第一で、恋愛は不可要素と考えていたのだが、あてがはずれた。従って、かなり退屈に感じられた。物語というか演出に問題ありでえ、ダイナミックな起伏が少なく、緊張が高まるところがないのだ。終始ゆるみっぱなしといった印象。リリーの感情も軍医の感情も伝わらない。この映画で泣く人はいないだろう。冒頭に出てくる「神」と描かれた巨大銅鑼からして意味不明。中国語もでたらめ。一等席の乗客のほとんどは噂話をする程度の役割でしかない。傍ら、線路にたむろし、列車の通行の邪魔になる牛や鶏の描写が妙にリアルで印象に残る。反乱軍のチャンは武力で列車を乗っ取り、政府軍に捕まった部下と交換できる有力者を探すが、結果軍医が人質となる。リリーは軍医を無事救い出そうとチャンと直談判する。このチャンが間抜けでいらいらさせられる。やることなすこと”ぬるい”のだ。挙句の果て、リリーの女友達にあっけなく刺殺される。その動機は不明だ。賞金目当てか、政治がらみか、リリーを助けるためか?女友達がいつ、どうやってチャンの部屋に忍び込めたのかも描かれていないので不満が募る。無事救い出された軍医はリリーの行動を知らず、リリーも何も語らずで、ここからはすれ違いメロドラマ。結論は見えているので、感情は動かない。ディートリッヒ演じるリリーを、時代を先取りする”強い女”と見れば、違った感興がわいてくるかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-11 17:48:53)
272.  赤い河 《ネタバレ》 
カウボーイの生活はよく知らないので興味深く見れた。9000頭の牛を青森から山口にあたる1400キロを100日かけてゆっくり移動させる。アフリカの200万頭のヌーの半年かけた大移動に比較すればおとなしいものだが、苦労は耐えない様子だ。牛の暴走シーンは白眉だった。南北戦争の影響で牛の価格が下落したので、隣の州に売りに行くのだが、そんなに価格の差に違いがあるのかという疑問がある。5セントと2ドルで40倍もの差がある。テキサスでは牛は五万といるのに、隣のカンザスやミズーリーにはいないのか?そのあたりの背景がわからなかった。主人公のダンソンは問題を銃で解決するタイプ。人の土地を奪っておいて、奪いにきた人は殺す。契約に反して隊から逃れようとした仲間も射殺する。現代の感覚からは理解しかねるところだ。14年の間牧場作りに明け暮れたわけだが、どうして結婚しなかったのか。亡くなった恋人に操を立てるタイプとも思えないが。養子のマシュウは演技力不足で、カウボーイに見えない。ライバルの若者と銃対決をしたときに、ダンソンの相棒グレートが「きっと二人は対決する」と言うが、伏線のまま終わる。あれだけ伏線を張っているのだから必ずインディアンに襲撃されると予想していたが、予想ははずれた。最大のサプライズは、ダイソンとマシュウが敵同士になること。ダイソンの逆襲をあれだけ恐るのなら、彼の馬と金を奪っておけばよいと思ったのは私だけだろうか。ヒロインの女は、インディアンに襲撃されている最中にマシュウに怒ったり、ひっぱたいたり、理解不能である。最後の仲直りの仕方を見ても、所詮絵空事のようにしか見えなかった。いちいち歴史書を朗読するのは不要。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-11 08:35:35)
273.  戦争と人間 第三部 完結篇 《ネタバレ》 
史実に基づいた戦争群像劇大作にしたかったらしいが、中途半端に終わっている。広義の日中戦争を多視点から描くという姿勢は称讃に値するが、如何せん、いわくありげに登場した人物の多くが途中からいなくなるようでは、脚本の未熟さ、企画倒れの謗りを免れない。一言でいえば「詰め込みすぎ」だ。ダイナミックな戦闘シーンは見れても、ダイナミックな人間ドラマは見られない。戦争の実態を暴き、振興財閥である伍代家の人達が、戦争という魔物に呑み込まれることによって、どのように変貌するかを描くことで、人間の本質を顕現させるだけでよかった。女情報屋、人妻とのよろめき、ベッドシーン、抵日朝鮮人とその愛、満州二世の医者、中国大商人の娘の抵日闘争、ナイフの名人などは、ばっさり切り捨ててよい。第三部が一部二部と較べて退屈しないで見れるのは、描く視点を絞ったからだ。恋愛パートが全体の三分の一を占める。お金持ちのうわついた恋愛を描いたところで、世間の実情とかけ離れるだけ。ベットに誘うのはみな女性からという共通点がある。農村の不幸な身売娘を登場させたのはお手柄。身売りせざるをえない不況の実態があったからこそ、武力をもって国外に進出すべしという世論が形成された。この娘が、最後に「兵隊さん、今度遊びにおいでよ!可愛がってやっからさ」と叫ぶが、これこそが生身の人間の痛切な心の叫びであって、感動するものがあった。「夢中になれるものを探しているの」という長女の言葉の何と薄っぺらいことか。お金持ちの恋愛は、虚構にしか見えない。歴史観は、戦争反対、陸軍批判、資本主義批判の立場で、共産党賛美のプロパガンダに彩られている。陸軍幹部はみな愚かで、資本主義は民衆を搾取し、死の商人である財閥は醜怪で、共産党員は当局の弾圧にも屈せず、常に貧しい人たちや労働者のために闘う正義の人らしい。 張作霖爆殺や柳条湖事件を再現したミニチュアは失笑レベル。明らかに人形とわかる死体を吹っ飛ばすのはやめてほしい。他方、ソ連と共同して撮ったノモンハンでの戦闘場面は迫力があった。当時の歴史認識では、ノモンハン事件では、日本軍が近代兵器を擁するソ連軍に一方的に蹂躙されたことになっていた。しかしソ連崩壊後の新資料により、ソ連側にも日本を上回る被害があったことが判明した。実質引き分けで、プロパガンダによるソ連の勝利である。不満は縷々あるが、見ておいて損はない映画だ。
[DVD(邦画)] 7点(2012-12-08 03:39:11)
274.  華麗なる一族 《ネタバレ》 
万俵財閥の領袖で、銀行のオーナー頭取である万俵大介が、政府主導による金融再編の機運が高まるのに危機感を覚え、小が大を喰う銀行合併を目論み、強硬におし進める話。大介の全てを財閥発展にかける偏狂さ、執念深さ、異常ぶりを描くとともに、日本の政官財癒着の歪んだ資本主義構造を浮き彫りにしていく。 長男鉄平が専務を勤める同財閥直系の鋼鉄会社を捨石にするのが最大のサプライズで、大介の冷徹ぶりが存分に表現されている。 高須相子という大介の愛人兼家庭教師兼執事の存在が、奇態な万俵家を表現するのに一役買っているとともに華やかさを添えている。残念なのは原作では39才なのに、本作では50才の二重あご女優が演じていて、ひたすら気持ち悪いこと。 ゆえに大介の長女の聟で大蔵省幹部役人の美馬が、相子に言い寄る場面が意味不明にみえる。 古い作品で当時としては衝撃的でセンセーショナルな内容なのだろうが、現代となってはたいして心が動く内容ではない。現実離れしすぎているのだ。 最大の瑕疵は、大介の銀行合併にかける行動の動機がわかりづらいことだろう。金融再編が避けられない諸事情が描かれていないのでは当然だ。”銀行員残酷物語”めいた挿話があるが、これくらい具体的に描かれてしかるべきだった。 鉄平の突然の猟銃自殺が一族の悲劇を嫌が上にも盛り上げるが、納得できる動機は描かれていない。会社が倒産したので、責任をとって自殺しましたでは弱すぎる。本作品のみどころであるはずの「父との確執」「出生の秘密」「経営方針をめぐる争い」「悪と正義の戦い」が中途半端に終っているのは遺憾だ。父を会社への背信行為で訴えるのはよいが、見通しが甘すぎる。死後、鉄平は大介の実子であったと判明するが、なぜそれまで違った血液型と思い込んでいたのかという疑問が残る。鉄平が生まれたとき、誰が父親であるかは、大介夫妻の最大の関心事のはずで、真っ先に調べたはずである。次女の行動にも首をかしげる。政略結婚は珍しくないが、「偽装婚約」とは珍しい。次女は父親の思惑に背き、純愛を貫いてこそ輝く存在になるはずである。アメリカに就職した恋人を追っても、純愛にはみえない。その他、高炉爆破の原因が不明のままだったり、「鎌倉の人」が名前だけしか出てこなかったり、華麗なる一族ぶりを披露する絶好の機会である次男の結婚式を省略したり、未消化の部分も多い。
[DVD(邦画)] 7点(2012-12-06 08:03:00)
275.  シャーロック・ホームズ(2009) 《ネタバレ》 
登場人物中、最も頭脳明晰なのはドワーフ(小男)だろう。電波受信装置、遠隔操作装置、防御システムなど、新発明ふんだんの青酸ガス発生兵器を完成させている。シャクナゲ毒の擬死薬や銅と反応するしびれ薬、石を繋ぎ止めておけるが雨で流れる蜜の接着剤、無味無臭で発火性の強い粉末、青酸ガスの解毒剤(本当にあったら大発明)なども作っている。まさに天才。対してホームズは、拳銃の消音装置は失敗。首吊実験は自力で降りれない。せいぜい或音階で蝿が回転飛行する習性のを発見した程度。その蝿を捕まえるのに6時間もかけている。小男なら腐臭を利用するだろう。大人と子供で比較にならない。こんなに利用価値の高い男を殺してしまうブラック・ウッド卿は愚者です。◆19世紀のロンドンを再現したセットやCGは見る価値がある。ハイスピード撮影された連続爆破場面が最大のスペクタクルだった。アイリーンの立ち位置が秀抜。ホームズの元恋人で盗人、男勝りでやたらナイフや拳銃を取り出す、敵であり、味方であり、ある人物に恐喝されている。演出を次第でもっと活きた。裸で手錠はかんべん。ホームズはやんちゃで、ワトソンと別れたくない甘えん坊。二人は共依存。探偵ものだが、謎解きや推理要素は希薄。例えば絞首刑で死なないトリックは、フックと隠しベルトとかの小学生レベル。服を調べれば判ることで、関係者全員を買収しないかぎり無理。アクション重視の娯楽映画だ。そのアクションだが、屠殺場の機械でアイリーンが屠殺されそうになり悪戦苦闘するが、電源を切ることを思いつかない。大男と対決する造船所の場面が最も大仰で華やかなのに、タワー・ブリッジでの最終対決はスケール・ダウン。前半あれだけ強調されていた、ホームズの相手の行動を予測して打ち負かす戦闘能力が中盤後半失われるなど、ちぐはぐだ。さりとてテンポが早く映像もスタイリッシュなので退屈はしない。【気になった点】①メアリーの事を知っていた女手相見はホームズの仕込み?②ブラックウッド卿が父トマス卿から指輪を抜き取った理由。家督継承の意味?③ホームズが医者に化けてワトソンを治療する意味。医療技術あるの?変装がメアリーに見破られてる!④自分の血を垂らしてまで、悪魔の儀式を再現する理由。⑤ホームズがワトソンに贈った婚約指輪のダイヤは、アイリーンから奪ったブレスレット?⑥警察所の遺体を自宅アパートに運んで調べる?論外。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-22 17:01:33)
276.  赤い風船 《ネタバレ》 
「こころあたたまる良質のファンタジー」のはずが……。野暮を承知でかくと、風船がしぼんでいく場面で操作線(細い線)が丸見えになり、少し鼻白んでいると、少年の空中飛行場面ではスタントマンに代わっている。体型が全然違う……。ああ、最も感動する場面で気分を削がれてしまった、途中まで佳い映画だったのに恨めしい。気を取り直して、少年が風船と出会う場面をチェックしてみると、少年が階段を降りる前は美しいパリの払暁風景だったのに、階段を降りると陽が高くなっている。延びていた影がなくなっているのだ。と、残念なことばかりが続いた。残念ついでにいうと、昔この映画にあこがれて風船でアメリカに渡ろうとした「風船おじさん」が消息を絶ったという事件もある。大人の視点で観ると、どうしても制作の側に目がいってしまう。風船は二本の線で操作されているなとか、風船はいくつ用意されたのだろうかとか、ちょっと大きすぎないかとか、ここはフィルム逆回転かとか。悲しい性です。 ◆街灯に引っかかった風船を少年が取る出会いの場面。少年はよじのぼって自力で取ってますね。これが良い。苦労して手に入れたからこそ愛着が湧く。これが風船との友情の萌芽となる。両者の間に友情が生まれ、風船は少年にまとわりつくようになるのですが、この不思議な風船を周りが放っておかない。大人達にとっては迷惑で、邪魔な存在、子供達にとっては不思議で、欲しい対象。風船にとっては受難のようなことになり、とうとう子供達に割られてしまう。そのときに町中から風船が続々と集まってきて、少年を乗せて大空へ飛び立ちます。奇跡が起こったのですが、どう解釈すべきか?風船は割れても風船の思念は残っている。風船は自分と子供を区別していない。同じ仲間と思っている。それで自分の家に招待したのでしょう。風船の国へ、それはたぶん空の上にある。少年にとっては友達の家にちょっと遊びにいく気分。子供っていいなって思いました。ここで問題、赤い風船は男の子?女の子? 男の子でしょうね。だって……。 追記:風船おじさんも風船の国にいったのかな。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-13 15:38:45)
277.  春琴抄(1976) 《ネタバレ》 
春琴は大店の娘だが、盲目故に甘やかされて育てられたせいか、自尊心、気位が高く、誰に対しても高圧的な態度を崩さない。好きな琴の修練には熱中し、師匠の跡取りと目される腕前だ。その身の回りをしているのが奉公人の佐助だが、その献身ぶりは度を過ぎている。春琴を思慕するあまり自ら芸の道に入り、春琴を師匠と仰ぐ次第となった。佐助は春琴を思慕しており、彼女の身の回りの世話をすることに限りない歓びを感じているのと同時に、彼女にわがままに命令されたり、いじわるされたり、痛い目にあわされたりすることに快感を覚えているようだ。それで春琴はますます増長し、佐助への指図、言動は苛烈を極めていく。サディズムとマゾヒズムの共依存関係が成立しているのだ。或る日事件が勃発、春琴が何者かに顔に熱湯をかけられるという災禍にみまわれる。醜くなった顔を見られたくないという春琴に対して、佐助は自ら針で目を付いて盲目になるという選択をする。ここが愛のクライマックス、純愛、献身、自己犠牲の極致というべきか。これにより、二人の更なる共依存関係が完成。二つの魂はひとつとなった。しかし、この異常な行動を驚嘆すべき愛の行動として肯うのには躊躇される。というのは、佐助が視力を失えば、春琴の世話を以前のようにはできなくなり、必然と第三者の介入が必要になるからだ。「健常者と盲人」という優劣の関係を「主人の娘と奉公人」「師匠と弟子」という関係を結ぶ事で逆転させていたのだが、このバランスが崩れる。もう一つ気に掛るのは、春琴が佐助の子供を産んでいるという事実。二人は否定するが、赤子の父親が佐助なのは疑いようがない。奉公人風情と性的関係を持ったことが春琴の自尊心をずたずたにした。だから佐助と示し合わせて赤子の父親については口をつぐみ、赤子を余所へやることに決めたのだ。だから二人の関係は純愛ではない。やがて二人の関係に綻びが広がってゆくのは目に見えている。奇異な形態の恋愛だが、明治というまだ封建制度が残る時代なら、成立する余地はあると思う。
[DVD(邦画)] 7点(2012-09-11 23:27:21)
278.  テス 《ネタバレ》 
類まれなる美貌の持ち主「超美人」というのはある意味罪作りな存在。異性を惹きつけて止まないのだ。恋愛の対象、欲望の対象、嫉妬の対象として情念の渦に巻き込まれてしまう。金持ちですけこましのアレックにしつこく追い回される主人公テスの様子は気の毒そのもの。拒絶できればよいが、父が怠惰な貧農で、弟妹たちの面倒を見てやらなければならないという負い目、足枷がある。結局強姦めいたことになり、アレックスの情婦となる。そんな生活に嫌気がさして逃げ出すが、お腹には新たな生命が宿っていた。赤子は短命に終るが、私生児故に洗礼も受けられず、教会墓地に埋葬も許されない。アレックスに何も知らせず、赤子を自分で育てるところに、気高く自立した女の側面がみれる。新たな働き先の農場で初めての恋をするが、相手はよりによって牧師の息子エンジェルで、厳格なキリスト教上の足枷がある。求婚されたとき、過去を告白した手紙を渡そうとするが、行き違いとなる。結婚後、彼女の過去を知ったエンジェルは痛撃を受けて、家を出てしまう。彼女も実家に帰るが、父が死亡して借家を追い出される。やむなくアレックスの援助を請うて、再び情婦に。そこへのこのこ妻の過去を許して受容できるようになった夫が迎えに訪れて、悲劇が起る。惨劇の場面は省略されるが、主人公の生きざまを赤裸々に描くのが作品の主旨であり、非常に不自然。逃亡する二人はストーンヘンジで逮捕されるが、これは興味深い。ストーンヘンジはキリスト教以前の古代遺跡で、太陽の運行など天文に関係する施設で、夏至には特定の石柱の間から太陽が昇る。彼女の魂が救済され、再生するためには、キリスト教という足枷のない場所が必要だった。朝日が石柱から昇りはじめる象徴的な場面で映画は終る。◆せっかく「自立する女」「紆余曲折を経て辿り着いた真実の愛」を描いても、殺人、絞首刑で終わっては後味が悪すぎる。彼女の不幸や悲運が心にもたれ、うまく消化できない。夫役の男優に魅力がなく、彼女と釣り合わないのも難点。監督は主演のナタキン15歳のときより性関係を持っていたというから、アレックスと被って見える。性的に早熟になった彼女は、その後恋多き女として浮名を流すことになる。それでも輝き続けるナタキンはテスそのもの。監督の妻が殺害され、一方で少女への淫行疑惑の十字架を背負うという人生も意味深なものだ。やはり美貌が罪を呼ぶのだろうか。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-11 13:11:28)
279.  浮き雲(1996)
ハリウッド映画の演出過剰、過激な映画を観慣れていると、この作品のようなあらゆる意味で抑制の効いた”つつましい”映画が新鮮に見えてくる。最小限の科白しかなく、表情は常に無表情、アクションも控えめで、これといった盛り上がりの無い日常を淡々と描く。結論を見せない演出も特徴のひとつ。職場をクビになったり、就職に失敗したり、賭けで負けたりする場面などは最後まで描かれず、次のシーンで結果が暗示される。顔の表情だったり、酒の飲み過ぎで倒れていたりと、笑える仕組み。省略の達人である。無表情キートンのように観客を突き放すのではなく、ほのぼのとした温かみが感じられるのも佳い。独特のセンスがひかります。どのジャンルにも当てはまらないような映画だが、しいて分類すればコメディ。それも大笑いや中笑いではなく、ペーソスの中に温かみのあるクスリ笑い。物悲しさと笑いの同居はチャップリンを彷彿させる。慣れてくると登場人物の飄々としたおとぼけぶりに笑いを禁じ得なくなってくる。味わいがあるんですね。あと意表を突く演出が多いのも特徴。例えば、アル中で包丁を振り回すシェフ。その存在だけでも笑えるのに、彼を取り押させるのに男性が失敗し、女性が殴って取り押さえる。その様子を一切見せない。科白もない。あっという間に何事もなかったかのように収まり、翌日シェフは怪我させた男に治療代を毎度の事のように払う。このシェフが失業してホームレスにまで落ち込むが、アル中更生施設を経て復帰するのも意表を突く。悪徳職業斡旋所で騙されたはずが職が見つかったり、結局そのオーナーがが悪徳経営者だったりと、どこまでもすっとぼけた脚本。これといった盛り上がりがないのに退屈しないのは”意表”の効用でしょう。この映画は監督の人生観や性格が強く反映されている思う。これだけユニークな映画はめったにないから。つつましく、引き籠り系の性格であることは想像がつく。物語は、共に失業して仲たがいした夫婦が絆を取り戻す話と、やむなく廃業したレストランを再開させる話。ハッピ・ーエンドで陽気な音楽がかかっても、あくまでも笑わない夫婦。感情を表に出さない国民性が下地にあると思いますよ。そんなことを考えてしまう奇妙な映画でした。この独特の世界観は癖になるかも。良作です。
[DVD(字幕)] 7点(2012-09-08 23:04:51)(良:1票)
280.  悪人 《ネタバレ》 
「人は善と悪の間を行き来する生き物、善人でもふと魔のさす瞬間がある」「善と悪は表裏一体、立場や関係によって変る」「殺人のあとに心から愛し合える女と出会った運命の悲劇」こんな感想を持ちながら鑑賞していたが、鑑賞後は、「貧しさに負けた、いいえ不器用さに負けた、祐一と光代の平成枯れすすき」と、少しちゃかしたい気分にもなった。重い作品だが、無口になる程ではない。一つの殺人事件を軸に、被害者と加害者、及びその家族や周辺の人たちを丁寧に描くことで奥深さがでている。被害者の加害者に見せる”鬼の顔”と親に見せる”天使の顔”の二面性を示すことで含みを持たすことに成功している。最初はサスペンス要素、次に恋愛要素が加わり、退屈はしない。犯人に感情移入できるかどうかが要諦。働き者で、病気の祖父の面倒を見るという善き面がある一方、実母に金をねだったり、出会い系で知り合った女の動画を撮ったりする面もある。母からの愛を受けられなかった成育歴からか、対人関係に不器用で、人間関係や恋愛関係を築くのが苦手。殺人の”弱すぎる動機”には目をつぶるとして、不器用な男女が出会って、本当に愛し合うようになる部分は説得力があった。女の背景や不器用さがそれなりに描かれていたし、出会い方やいきなりホテルへという展開はどうであれ、本当に愛し合える人とは、出会うときには出会うからだ。二人はコンプレックスを持つ似た者同士、出会った瞬間から愛が始まっても不思議ではない。祐一が警官の前で女の首をわざと絞めた”優しさ”は十分伝わる。◆”事故的な殺人”という悪に対して、”善人顔した悪(糾弾されない悪)”が対比される。置き去り大学生、健康商法詐欺者、マスコミなど。又加害者になりそうになった被害者の父も悪の一面として登場。しかし、これらは弱い。巨悪を持ってこないとバランスが取れない。マスコミが加害者宅にばかり押しかけて、被害者宅に押しかけない不自然さ。被害者父が大学生の居場所をどうやって知ったのか?犯罪映画として「警察が祐一を犯人と断定した理由」が無いのは難点。あの日祐一は被害者と会う約束をしていた。しかし被害者は大学生の車に同乗。これが祐一のアリバイ証明となる。電話連絡してない以上、会ってないと考えるのが普通。警察に知らぬ存ぜぬで通せば通ったろう。確固とした証拠を残すべき。善だ悪だと論ずるよりも恋愛映画として鑑賞する方が感動できる。
[DVD(邦画)] 7点(2012-09-08 14:32:45)
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