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ドラえもんさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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281.  ファインディング・ニモ
鮮やかな珊瑚に彩られた海底のオープニングから冒険の旅へと展開されるこの物語は、主要なキャラクターたちが魚ということもあって、その舞台のほとんどが海に限定されている。それだけに視覚的にはどぅしても単調になってしまいがちだが、光が射し込む明るい海の中と暗黒の深海とを対比させたり、遠くかすかにしか見えない薄ぼんやりとした海底などといった、様々なバリエーションを用意して見せ方に工夫を凝らしているのが良く解かる。そして水槽といったもぅひとつの“海の世界”を用意する事で、遠く離れているという距離感を感じさせると共に、ドラマに振幅をもたらせている。さらに終盤活躍するペリカンの登場で、海から空へと空間的な広がりをも感じさせてくれ、実に贅沢なヴィジュアルと見事な構成力で堪能させてくれる。それぞれのキャラクターたちの自然な動きの滑らかさも、これがアニメーションだと感じさせないほどリアルで完成度は高い。ただ余り必要性を感じないキャラも多く、またマーリンとドリーとのシーンになると、話の流れが止まってしまうような印象を受けるのは残念だ。「モンスターズ・インク」のような感動味は薄いが、それでも、溜息の出るような海の中の物語を見せてくれ、これはこれで満足のゆく作品ではないかと思う。
8点(2003-12-15 18:17:39)(良:2票)
282.  g@me.(2003)
インターネットと携帯電話という通信手段を巧みに利用した、まさに現代身代金略奪物語といったところだが、金銭が本来の目的ではない事は明らかだ。復讐という共通の目的の為にこの偶然が招いた(かの様な)狂言誘拐劇を利用して「勝つか負けるか」といった、いかにもゲームを楽しむように実行していく主人公カップルは、あたかも現代の都会に生きる若者の象徴のようで、テンポ良くそしてスリリングに描かれていく様子は、壮快ですらある。誘拐される側が必要最小限もしくは想像上の描写しかされないのがミソで、話は二転三転と予測がつかない展開をみせる。結局ゲームは本当の決着がつくまで「やられたら、やり返す」という精神に徹している点、昨今の変な物分かりの良さでかえって不満を感じるといった作品が多い中、これはむしろ潔いし溜飲の下がる思いだ。しかし話はまだある。このクールな二人が果たして本当に愛し合っていたのだろうかという疑問が残る。再三出てくるハッとした表情も実は演技だったのかと考えると、恋愛ゲームとしての面白さも見出せる作品と言える。ラストの締めくくり方は少々カッコつけ過ぎかとも思えるが、終盤の映像トリックの面白さも十分効いていて、昨今流行りのトリッキーな作品群の中ではかなり良く出来た一本である。
8点(2003-12-10 00:44:36)(良:1票)
283.  ロイ・ビーン
舞台は19世紀末の西部。町の治安を守るため、私刑により犯罪者たちの所持金を巻き上げ、私腹を肥やしていたのがこの物語の主人公“自称”判事=ロイ・ビーンだった。この男、相手を倒す為なら背中から撃つことも平然とやってのけ(S・キーチ演じる悪党のどてっ腹に、デフォルメされた風穴が空くという、劇画チックなシーンが用意されている)、そうかと思えば、未だ見ぬ舞台女優リリー・ラングトリーに憧れを抱きつづけるという、従来の“西部の男”というイメージからは程遠い存在である。このユニークなアンチ・ヒーローとしてのキャラは映画的には格好の素材で、J・ヒューストン監督が珍しくアメリカン・ニューシネマ的手法を取り入れ、エピソードの各シーンごとに演出スタイルを変えるなどケレン味たっぷりに描き、ロイ・ビーンを無邪気で人間味溢れる男として見事に浮び上がらせている。劇中、熊と戯れるシーンにA・ウイリアムズの歌を挿入させるなど、明らかに「明日に向かって撃て」を意識した作りとなっているが、言わんとするところは同じで、古き良き(西部)時代の終焉とそれに対するレクイエムであろう。クライマックス、彼の姿が夕陽に煌めきシルエットとして浮び上がるショットは、映画的高揚感が最高潮に達した瞬間として、忘れられない名シーンであった。
8点(2003-12-05 00:09:14)
284.  ヘヴン 《ネタバレ》 
冒頭、いきなり高層のエレベーターの爆発から物語は始まる。夫を失った悲しみとその恨みから、或る麻薬密売人に復讐する為に爆薬を仕掛けたのだ。覚悟の上での犯行だったが、しかし恨みを晴らすどころか、関係ない人たちを爆死させてしまう結果に。この時のヒロインの英語教師を演じるC・ブランシェットの凍りついた表情が印象的だが、普通の一般市民のテロ行為がまかり通る国家の恐怖を感じざるを得ないエピソードではある。この後、取調べに通訳として立ち会った若き憲兵が、彼女を助けながら思いを遂げさせるという展開となるが、何故彼はそこまでして彼女に想いを寄せるのかは、あまり多くは語られないので、やや唐突な印象を受ける。絶望感に打ちひしがれ、もはや生きていく気力も失いかけていた彼女だが、青年の純粋な愛に応えるべく、共に逃避行を決心するのが物語の後半。それはまさに絶望に向かってのものだが、サスペンス・タッチの前半から舞台がトスカーナ地方に移ったこともあって、陰惨さというものが徐々に薄れていき、いつの間にかピュアで詩情溢れた画調に変転している事に気づく。極度にセリフを抑え、表情だけで純粋な愛の形を描出したT・ティクヴァ監督の、この流れるような演出の手際の良さは実に見事である。ブランシェットと相手役のJ・リビジは共に本作のイメージ通りの透明感溢れる好演を見せているが、既に「ギフト」で共演していた事もあって、さすがに息がピッタリであった。二人を乗せたヘリが上空高く舞い上がり、やがて小さく小さくなって空に吸い込まれていくラストは、まさしく天国に召されていくという象徴的なイメージで、近年における名場面だといえる。
8点(2003-11-25 01:02:45)(良:1票)
285.  マグダレンの祈り
この映画ばかりは、なんの予備知識もなく崇高なタイトル(邦題)だけで鑑賞に臨むと、その余りのイメージの落差に愕然としてしまうだろう。もちろん修道院での女性たちを描いていることには違いないのだが、このマグダレン修道院は更生という名の強制収容所で、まさにここでの女性たちは徹底して罪人のように扱われる。人間として本来あるべき自由を奪われ、永久にともとれる外界からの断絶から、希望を失い、生きる気力すら奪い去られ、虐待と屈辱の日々を送り続ける女性たち。いったい彼女たちがどんな罪を犯したというのだろうか。レイプされて本来なら被害者であるはずの女性が、不貞な女としてのレッテルを貼られこの修道院へ送られるように、映画は終始、こういった理不尽さで貫かれていくが、要は彼女たちは十九世紀からの古い因習と歪められた信仰の犠牲者なのである。権威というものは長きに続くと堕落したものになりがちである。カトリックもまたそうであるが、腐敗させているのは他でもない、盲目的な信仰心を持つ人間そのものなのである。そしてその古い価値観に目覚め抗する女性たちが出現し、自分たちの権利を主張し始めたのも、この映画の時代以降だというから驚きだ。
8点(2003-11-24 16:47:25)
286.  リード・マイ・リップス 《ネタバレ》 
仕事はこなせるものの難聴というハンデの為、会社ではなにかと苦々しい思いをしながら日々を送るヒロイン。そんな陰鬱でストレスの塊のような彼女に、ある日ひとりの助手が充てがわれる。この見るからに風采の上がらない男は、務所帰りのチンピラで、更生を誓っての職探しの結果、彼女のお眼鏡に適ったという訳。しかしどこが気に入ったのだろうか。お互い社会に爪弾きにされている孤独な者同士という、まさに“類は類を呼ぶ”であり、この女と男の愛称の微妙さを、少ないセリフながら表情の変化で積み重ねていくプロセスが見事で、とりわけ男に恋心を抱くヒロインの変貌ぶりが心地いい。映画はやがて、難聴のため読唇術に長けたヒロインとこの盗みのプロとが大金強奪を決行するや、物語は一気にクライム&サスペンスの様相を呈するようになる。そして捕われの身となり窮地に追い込まれた男が、咄嗟に思いついた或るアイデアを、遠く離れた彼女に読唇術を使って自分の唇を読ませ、一発大逆転の行動に出るというシークエンスが実にスリリングで、この映画の最大の見所となっている。このあたりのヒヤヒヤ感は「バウンド」と酷似しているが、キッチン・ルームの使い方など、むしろ一連のタランティーノ作品に近いものがある。ハンデを持ったヒロインが活躍する作品に「暗くなるまで待って」という秀作もあるが、本作の場合には動機が不純ということもあって、あくまでもダークなイメージで描かれている。そこがまさにこの時代の女のしたたかな生き様であり、本作の狙いの面白いところ。まさに映画は時代を映す鏡なのであります 。
8点(2003-11-21 00:37:55)(良:2票)
287.  少女の髪どめ
M・マジディ監督の新作は今までとは趣が違い、貧困に喘ぐアフガン難民の問題に深く切り込んだ作品である。しかしその語り口はあくまでも静謐で詩情溢れるものであり、決して声高に主張したりはしない。いかにもマジディらしい暖かい眼差しを感じさせる作品である。少女へ無償の愛を捧げようとすることに懸命になるラティフ。何かを語るすべも知らぬ少女は、ただ日々生きていく事に懸命であり続ける。彼の一途さに応える気持ちの余裕などあろう筈もない彼女の姿に、ラティフの苦悩もまた深まる一方なのだが、純粋な淡い恋心というよりも、もはやこれは人間愛にまで昇華しているのである。少女との刹那的な出会いと別れ。アフガン難民の象徴が彼女なら、ラティフは監督自身ではないだろうか。「一日も早く平和が訪れますように・・・」 マジディ監督の祈りにも似た切ない願いが心に重く響く秀作。
8点(2003-11-18 00:19:23)(良:1票)
288.  クジラの島の少女
本作は、島の族長を男が継承するという伝統と古い因習の残る島で、女として生を受けた少女パイケアの「男として生まれたかった」ことへの苦悩と反撥を描くと共に、自ら運命を切り開いていき、やがてアイデンティティーを確立するまでの闘いの物語と捉えたい。ここでの女性たちは皆それなりに自己主張を貫き、決して男尊女卑といった単純な図式としては描かれてはいない。あくまでも島の伝承にのみ拘っているのだが、パイケアが島の他のどの少年たちよりも、族長を継承する能力に優れているかが痛快なほどに示される。それだけに「男として生まれてきて欲しかった」と、孫娘パイケアをこよなく愛する祖父の無念さもまた胸に迫るものがある。映画は島の人々の生活を現実感溢れた描写をする一方で、ファンタジックな味付けをも施している。終盤のエピソードがそれなのだが、このあたり宮崎アニメにでもなりそうなドラマツルギーではないだろうか。まさに1000年の時を経ての「鯨への恩返し」と相成った訳で、島の人々の思いと願いとが十分に伝わってくる感動的な幕切れであった。
8点(2003-11-13 23:54:55)
289.  ドッペルゲンガー
剥き出しの欲望とその大胆な行動力。曖昧さというものが無い分身たち。社会の様々なしがらみの中でもがき苦しみひたすら正常さを保とうとする我々だが、果たして自分らしさとは、そして自分らしく生きる事が出来たなら・・といった事は万人の久しき願望である。人間の二面性というものを、ドッペルゲンガーという具象化された分身を登場させる事によって、作品は寓意に満ちたものとなっている。何かと深読みしたくなるようなテーマ性を感じるが、黒沢清流ナンセンス・コメディといった趣の作品だ。しかし見所はたっぷりで、何と言ってもまったく違う性格を匠に演じ分ける役所広司の上手さ。この人が演じる狂気には他の誰とも違う凄味があり、迫力をも感じさせるのはさすがだ。同一画面に登場させる特殊技術のみ頼ることなく、分割画面を多用するなどのアイデアで、単調になりがちな画面にひとつのリズムを生み出している。その撮影技術の見事さ。そして薄暗がりの部屋の片隅にぼんやりと立っているだけで、得体の知れない恐怖感を味あわせてくれる、お馴染みの黒沢流ホラー演出は今回も健在で、まさに恐怖の極致といえる。永作博美や柄本明といった登場人物たちの前半部分と後半とでは、性格やその行動力が微妙に違うと感じたのは私だけだろうか。“彼らもひょっとしてドッペルゲンガーか?”“だとしたら本人たちは・・・?”“本音剥き出しの分身たちばかりの世界になったら。”・・・などと考えたら際限がないが、しかしそんな事は所詮どうでもいい事であって、要は確りとしたアイデンティティーを維持していく事の大切さと難しさを、試作ロボットが叫んでいるようだ。
8点(2003-11-13 18:17:39)(良:1票)
290.  ハリウッド★ホンコン
香港の下町で暮らすチュウ一家は、男やもめの父に二人の息子がいて、焼き豚屋を営んでいる。三人ともおデブという似た者親子で、この実に愛嬌のある風体がむしろ強烈な印象を残す。商売は繁盛しているようだが、男たちだけの何とも侘びしい生活は、かなりの閉塞感をも伴っている。彼らの住む下層階級の迷路のような雑然とした風情は、日本の昭和三十年代初期の頃に近いものがあり、懐かしく感じるところ。一方で高層の建物が林立する、いわゆる我々の良く知っている近代化された香港の姿があり、彼らは空を見上げるように憧れを抱いているのだが、ここにも近代化の波に押され、解体の危機に瀕してもいる。映画はそんな彼らの前にひとりの少女が現れた事から起きる、ひと騒動をコミカル描いていくが、下町の人情話としてはかなりブラックな部分もあり、一筋縄ではいかないといった趣向がある。やがて、素性も知らないまま風のように去っていく彼女だが、彼らにとってはまさに至福の日々だったに違いない。なんとも殺風景だが実に爽やかな印象の残る不思議な作品である。
8点(2003-10-20 00:30:38)
291.  パンチドランク・ラブ
早朝の車道でいきなり横転する車があったと思えば、その後からやって来た車は古びたピアノを道路端に棄て去って行く。そして車の修理にキーを預けに来た謎めいた美女・・・。この唐突かつシュールな出来事で、我々は一気に物語に引きずり込まれてしまう、実に見事なオープニングだ。女姉妹ばかりの中で育ってきた主人公バリーは、自分を表現するのが苦手な為、俗に言うキレやすい性格だが、年頃の彼の事が何かと心配のタネでもある姉たちには、気後れしてしまうという小心者でもある。劇中の大半を青色のスーツ(決して紺色ではない)に身を包んでいることで、バリーの風変わりな性格が端的に表現されていて、面白い。そんなオクテの彼の前に現れたのが、やはりE・ワトソン!こういった一風変わった男を優しく包み込む女性という役どころは、現段階において彼女しかいないのでは・・・と思わせるぐらいハマっている。オーソドックスのようでいて、やはりどこか新鮮味を感じるラブ・ストーリーで、後味は最高。
8点(2003-10-17 00:33:14)
292.  パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
これが噂のパイレーツ・ムービー!夏休み映画の中で、洋画としては群を抜く人気と興行成績だとか。「“海賊モノ”は日本では当たらない!」などという記事が、どこかの雑誌に書いてあったが、こういうジャンルは近年ではむしろ珍しいほどで、ほとんど記憶に無いほど最近ではお目にかかったことが無い。だからヒットしたのも、その新鮮さに拠るところ大だが、やはり当代人気俳優J・デップの怪演と、人気急上昇中のO・ブルームの美男子ぶりを忘れてはならない。一見CGとは解からないような、かなり細かい作業の映像表現も素晴らしい効果をあげているが、吸血鬼が太陽光を浴びると消滅してしまうという設定を逆手に取ったような、海賊たちが月光に照らされると骸骨に変身するシーンがやはり凄い見せ場となる。(ただし「ハムナプトラ」以降、かなり使い古された手法といった感は免れないが・・・。)本来ならもっと過激でエグい描写になりそうだが、さすがにG・ヴァービンスキー作品だけあって、抑制の効いた節度ある作劇法はさすがで、バランス感覚の良い登場人物の描写ともども、好感が持てる作品となっている。
8点(2003-09-28 18:31:46)(良:2票)
293.  ローリング・サンダー(1977)
この時期に多く製作された、いわゆる“ベトナム後遺症モノ”の中でも異色中の異色作。主人公は空軍将校。長く苦しい捕虜生活から解放され帰国した彼を待ち受けていたのは、お座なりの歓迎と待っている筈の妻の夫への裏切り。失意の中、やがてならず者に妻子を殺され、自らも右腕を失ってしまう運命に。ベトナムで負け戦を強いられ、帰郷しても生きる気力を無くしかけていた彼が、復讐を果たすことで見せる男としての最後の意地。それは自らのアイデンティティを確かめる闘いでもある。脚本が「タクシー・ドライバー」のP・シュレイダーということもあり、本作もクライマックスの凄まじいバイオレンス・シーンに力点が置かれていて、我慢に我慢を重ねやがて怒りを一気に爆発させるというシチュエーションは、まるで日本の仁侠映画のようであり、かつての戦友(若き日のT・L・ジョーンズ)を従え、売春宿へ弔い合戦に向かう姿などはまさにそれ。軍服に身を包み、義手に銃身を短くカットしたショット・ガンを構えたW・ディベインには強烈なほどの凄味を感じたもので、そういう意味でも彼の代表作だと言える。
8点(2003-09-28 17:29:05)
294.  エデンより彼方に
舞台はニューイングランドのハートフォードという片田舎。エリートの夫には貞淑な妻であり、子供たちには賢い母親として、何不自由ない暮らしを送る美貌のキャシー。周囲からは憧れの的であり、理想の主婦ともいえる彼女が迎える人生のターニングポイント。これは様々な意味合いを込めて、50年代と言う時代背景を意識した作品だと言える。それはまさに偏見と言うものが、人の生き方をも大きく変えてしまうという哀しい時代。昨日まで仲の良かった親友でさえも、手のひらを返したような排他的な態度。このまやかしの楽園である見せかけの世界に、真の自分というものを失わずに生きていこうとする彼女の姿には、やはり共感せずにはいられない。大メロドラマのスタイルをもったこの作品の魅力は、ストーリー以上に、見事なカメラワークによる色彩の美しさ、この時代の男と女のエレガントさ、女性たちが身に纏うコスチュームの素晴らしさ、そして何よりもヒロインを演ずるJ・ムーアが魅せる眩いほどの美しさ。そう「めぐりあう時間たち」と錯覚するほど、この作品での彼女と酷似しているのは単なる偶然だろうか。そしてこういった役どころは、もはや彼女の独壇場と言っていいかも知れない。夫フランク役のD・クエイドにはこういった役柄はむしろ不似合いな気もする。黒人の庭師レイモンドを演じたD・ヘイスバードは今後の注目株。
8点(2003-09-07 16:46:34)(良:2票)
295.  トレジャー・プラネット
フルCGによる立体アニメが幅を利かせている昨今、本家ディズニーの最新作は、まさにその伝統からくる自信を誇示した冒険活劇の王道をいく一級品だ。登場する様々なキャラクターたちの魅力も然ることながら、スペクタクルな視覚効果とイマジネーション、そしてスピード感溢れる見せ場の連続など、海賊船などの乗物のデザインにレトロな部分を残しながらも、全体的な創りは今風の味付けが施してあるのは、やはり時代の要求ということだろうか。ただ、今回舞台を海ではなく宇宙にしているのだが、その空間的な広がりをも含めて、宇宙をまったく感じないのは何故だろうか。
8点(2003-08-28 00:27:37)
296.  メカニック(1972)
殺し屋としての殺しの美学と言うよりも、男の行動の美学というものがより顕著に表現された作品だったのではないだろうか。そのテクニックは大掛かりなものから、小手先だけのものといったものまで、多岐にわたる。しかし頭脳明晰で完璧な計画の下、黙々と遂行されるプロセスはスリリングですらある。才能ある若者を一人前の殺し屋に育て上げる事をサイドストーリーにして、殺し屋の世界の非情さを描いてはいるが、カーアクションや銃撃戦、クルーザーの大爆発など、エンターティンメントとしてド派手な見せ場にも事欠かない作品だった。ブロンソンの映画である以上に、やはりこれは監督M・ウィナーの作品だと言っていいのではないだろうか。
8点(2003-08-24 23:06:10)
297.  ブルジョワジーの秘かな愉しみ
巨匠L・ブニュエルが、6人の男女の遭遇する奇妙な日常を寓話的に描くことで、ブルジョア社会を痛烈に皮肉るという怪作。ここでは晩餐会(もしくはパーティ)というブルジョアジーの典型例をモチーフとして描かれていくが、なにやらボタンの掛け違えのような様々なエピソードを挟みながら、何故か終始食事にありつけない彼等の人間本来の姿が炙り出されていく。愛欲も食欲も普通の人間そのものだが、彼等はあくまでも見かけに拘る。体裁に構う。表層的なもので身を覆う。そしてその事により悪夢にうなされ続けるのである。繰り返し挿入される、着飾った正装姿でなぜか車にも乗らずに田園の一本道を歩く彼等。しかし何処へ行こうというのか、定かではない。あたかも夢の堂々巡りを象徴するかのようなエンディングに、ブルジョアジーの傲慢さと退廃の臭いを感じさせる。素人の批評など挟み込む余地の無いほど、ブニュエルの偏屈ぶりとイメージの奔放さは、本作でも独特のブラックな作品世界を築き上げ、異彩を放っている。
8点(2003-08-14 00:27:25)(良:2票)
298.  WATARIDORI
時折挿入されるナレーション以外、鳥たちがひたすら飛んでいるシーンで占められるというユニークな作品。俳優でありこの作品の監督でもあるJ・ペランは「決してドキュメンタリーではない」と言い切る。懸命に羽を動かして飛翔する鳥たち。その“被写体”に接写し“彼ら”と並列しての撮影技術の素晴らしさにより、我々人間が抱く空を飛ぶという感覚を存分に味あわせてくれる。決して大空高くというのでなく、海面すれすれ、あるいは木立の間を縫うようにして飛べるということが素敵なのだ。この作品を作るにあたって、あらかじめ沢山の鳥を調教・訓練し、膨大なカメラテストを経て撮影に臨んだとか。そういう意味においてもドキュメンタリー作品ではなさそうだが、労作である事には違いない。金と時間をかけて作る映画にも、こういうジャンルもあるのだという事を知りえただけでも、観た価値があろうというもの。
8点(2003-07-26 23:31:02)
299.  バティニョールおじさん
舞台は第2次大戦中のドイツ占領下にあるパリ。愛や希望を失ってしまった不幸な時代にあってなお、それらに押し流されまいと人々は必死に生きようとしていた。そんな中でも、ユダヤ人を強制収容所送りにする為ナチスに密告するといった、人間の最も醜い姿がある一方で、彼等を匿ったり逃がしてやったりと、正義感を伴った人間本来の美しい姿がある。本作はこういったまさに庶民レベルでの両者の戦いの物語とも採れる。主人公を冴えない中年の肉屋の親父(=バティニョール)にしたことで、この悲劇的なテーマがユーモラスで人間味溢れる作品になり得たのだが、このあたり自作自演のJ・ジュニョは、その風体からしてまさにハマリ役。ひょんな事から匿っていた子供たちをスイスへ脱出させるという、コミカルさからスリリングさへと場面展開していくが、その筋運びには些かの誇張もないだけに、十分に説得力があり面白い。結局、人間の尊さや人間の良心への問いかけをすると共に、この愚かしい大人たちの現実世界から、未来を子供たちに託すという、祈りにも似た気持ちを感じさせる作品だと言える。陽光と緑に包まれたエンディングも実に爽やかである。
8点(2003-07-26 00:19:01)(良:1票)
300.  メルシィ!人生
リストラを回避する為に“ゲイ”を偽装した主人公の顛末や如何に!彼の勤めているのがコンドームの会社というのがミソで、噂が噂を呼んで社内中が大騒ぎにはなるものの、話の進展は意外な方向へ・・・。うだつの上がらぬ主人公の人生巻き返し物語といった、至ってありきたりなテーマではあるが、F・ヴェヴェール監督が描く独特のエスプリの効いた本作は、少々大袈裟に言えば、我々観客に生きていく希望と勇気を与えてくれる。差別問題をも孕んで重くなりそうな展開を、からっと明るく、いかにもフランス映画らしいウイットに富んだ笑いに包み、さらに極めて鋭いその人間観察により、見事な人生賛歌となっている。
8点(2003-07-24 23:45:01)
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