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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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281.  黒人魚 《ネタバレ》 
邦題は読み方に困るが、原題は「ルサールカ、死者たちの湖」である。 ルサールカとはロシア限定というよりスラブ系民族に広く伝わる水の精だそうで、例えばドヴォルザーク作曲の歌劇「ルサルカ」はチェコを想定して作られたと思われる。その歌劇でのルサルカはアンデルセンの「人魚姫」のような役回りで、それが英題のmermaidや邦題の「人魚」につながっているが、基本はこの映画のような邪悪な存在と思われているようである。 水の精といっても大昔からいたトロールとか河童とかトトロのようなものとも限らず、死者が化けるものという考え方もあるらしい。この映画に関しては、1853年(ニコライ1世の時代、クリミア戦争開戦の年)に死んだ若い女性がその正体ということになっていた。ちなみに魚の格好はしていない。  そのような設定から、ファンタジーホラーというよりは心霊ホラーの印象が強くなっている。湖だけでは舞台が狭まるためか、広く“水”に関わる場所で活動する設定にしたようだが、水と無関係なドッキリもあったのは意外で笑わされた。また櫛や合わせ鏡はロシアでもオカルト的な意味づけがなされているのかどうか。 ホラー演出の面では、意外に邦画ホラーの感覚そのままで見られる映画になっている。まだ始まらないうちからの予兆や不吉感、音や人影で何かが来ている気配を感じさせるといった場面があり、また真相を知る老人を訪ねてから全ての発端になった場所に突撃し、渾身の策が成功したと思ったらそうでもなくて延長戦に入る、といった展開にも馴染みがある。終盤になると普通にモンスターホラーのようになり、映像効果が安っぽいとか弱点の設定が安易だとかいうこともあったが、全体的には少し前の邦画ホラーを真面目に作り直した感じで結構いい印象だった。 個別の場面としては、姉が弟にした思い出話はそれほど怖くはなかったが、今ではもうわけのわからなくなった昔の記憶としてはいい雰囲気を出している。エンドロールの水死者のイラストも素朴で和んだ。ちなみにヒロインは可愛い感じで結構好きだが、ルサールカももっと可愛い顔で出てくればいいがと思った。  [追記] 自分としては単純なホラーとしてしか見なかったが、他のレビューサイトを見ると(人数が多いので全部読んでいないが)人間ドラマの面で非常に参考になる投稿があった。そのように深読みもできる映画だということだ。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-10-03 08:29:13)
282.  ゆれる人魚 《ネタバレ》 
1980年代のワルシャワの話だそうで、ソビエト連邦を中心とした社会主義体制の終わりが近くなり、ポーランド社会にも大きな変化が生じていた時期のはずである。その時代設定にどういう意味があるかよくわからなかったが、ワルシャワは地味なようでもそれなりに華やかな都会に見え、かろうじてスターリン時代からある「文化科学宮殿」が社会主義の名残に見えた(今もあるが)。 劇中人魚に関しては、原語ではシレーナsyrenaと言っていたようだが、これは古代ギリシャのセイレーン(シレーヌ、サイレン)に由来するもので、もとからの生業である歌を生かして人間社会に入り込んだ形になっている。少女のように見せていながら序盤でいきなり全裸になったのは驚いたが、穴がないならボカシも必要ないわけだ(ヘソもなかった)。下半身が突然に巨大化するのはトーキョーグールのようでもあり、またお手軽な手術で他人と上下を交換するなどかなり適当な感じだが、そこはダークファンタジーだから突っ込むまでもないと思っておく。 なおワルシャワに来たのはヴィスワ川を遡ったのだろうが、海水魚と淡水魚の区別がないのかは疑問点として残った。肺呼吸だと関係ないのか。  全体的な印象としては、まずは人魚姉妹が蠱惑的で、躊躇なく裸体をさらすのに目を引かれる(魚だが)。また前半部分では歌とダンスで聞かせる/見せる場面が結構あり、唐突にミュージカルが始まるのも可笑しい。この調子で最後まで歌って踊って楽しくやってもらえばいいと思っていたが、結果的にはそうでもなかった。 後半になるとグロい場面も多少あり、それはダークファンタジーだからいいとしても、後になるほど陰惨な雰囲気で気分が落ち込んでいく。アンデルセンの「人魚姫」がベースとすれば悲劇で当然なわけだが、見る側として人魚連中に共感できるわけでもなく、ドラマ的に心を打つものがないまま終わったのは残念だった。 個別の点としては、短い効果音をいろいろ入れていたのが面白い。また男を誘惑した場面で焦点が一瞬緩むところは印象的だった。姉妹は違うタイプの人材を並べた形で、個人的には妹(ズウォータZłota)の方に目が行くが、牙を出すと顔の形が変わって見えるのは残念だった。人を食っても何していても人魚は可愛くなければならないのではないか。
[インターネット(字幕)] 5点(2020-10-03 08:29:10)(良:1票)
283.  ウィッチクラフト 黒魔術の追跡者 《ネタバレ》 
映画紹介の通り「黒魔術VS人身売買組織」である。 売春目的の人身売買組織と政治家・役人が結託しているという設定で、映画的な誇張があるのだろうと思ったら、現実にこういう根深い問題が存在するとの報道もあって全く洒落にならない。娯楽映画なので社会批判が主目的ではないのだろうが、逆にそれが常態化しているのを普通に背景にした映画のようでもある。 撮影場所はブエノスアイレスに近いサン・アントニオ・デ・アレコという小都市で、エンドロールに自治体のロゴが出ていた。市長が人身売買に加担する映画などによく協力したものだと思うが、逆に堂々と名前を出すことで、うちはそういう所ではないとアピールしていたのかも知れない(信用できないが)。当然ながらこういう映画ができているということは、アルゼンチン社会にも良心は存在するはずだと思っておく。  主人公は黒魔術の使い手ながら、あまりに弱く痛快な場面もないのは娯楽映画としては厳しいが、最後に知恵と気合いで乗り切ったのは立派というしかない。母の力にはどんな悪人も敵わないということだ。 周辺住民には忌避されていても、当人としては心優しく非情になり切れない人物だったようで、そこが最大の弱点だったのかも知れない。ヤギはともかく人は殺していなかったが、最後の炎上だけは女神様の許諾か勧奨があったのか、あるいは女神様が直接手を下したということか。いちいち代償を前払いするのが痛々しく、最後の捧げ物はかなり気の毒だったが、それでも娘(及び他の少女たち)を救えないよりはるかにましだという点で、持っていてよかった能力であることは間違いない。 なお想像だが、かつて主人公が流産しかけたのを救ったのは祖母だったかも知れない。  登場人物では、主人公はけっこう可愛気のあるおっ母さんで、女優は1974年生まれだが劇中設定としては30代と思われる(推定例:17+17=34)。魔女の乗物としては自転車を愛用しており、小汚い格好ばかりでなく、パーティーにはそれなりの服装(場違い?)で行っていたので世間並みを心掛けていたらしい。またその娘が魔術の力量を示すために母親に呪いをかけていたのは笑った。確かに携帯電話は不要だ。 ほか自宅の設えが魔女っぽいのはいい感じだった。ギター入りのテーマ曲も心に染みる。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-09-26 09:27:43)
284.  ウィッチ 《ネタバレ》 
アメリカ開拓時代の最初期に当たる17世紀という設定で、場所はニューイングランドとのことだがマサチューセッツを想定していたらしい。なお撮影場所はカナダのオンタリオ州とのことである。 エンディングの説明によれば、各種の記録に基づいて古い時代の魔女像を再現しようとした映画ということになる。時代設定からすると、先住民の社会で伝えられてきた魔物にヨーロッパ人が初めて遭遇したというような話かと思ったら全くそうではなく、出るのはヨーロッパ風の魔女である。イングランドから最初の移民が来た時点で現地在住の魔女が既にいたというのも変なので、いわばキリスト教徒(清教徒)と魔女が一緒に渡来したようなものだったと思うしかない。 監督インタビューによれば、主人公のモデルはエリザベス・ナップ(Elizabeth Knapp)という実在の人物だそうである。思春期の少女が悪霊に憑かれた話とすればありきたりなようだが、あるいは「セイラム魔女裁判」(1692~1693)のような事件の背景を表現した映画かも知れない。個人的には「魔女」(1922)の各論編という印象だった。  全体的には陰鬱で不穏な雰囲気の中で神経に障る出来事が起きていく展開で、ホラーとしては地味だが悪くない。魔女が出る場面は多くないが、妖艶な美女とか単なるババア(裸)とか夜会に集まった連中(裸)とかがいたようである。 物語的には宗教色が強いようでよくわからない。要は厳格な宗教で抑圧されていた少女が解放?された話かも知れないが、その辺は個人的に共感するものではない。部外者なりにいわせてもらうと、教義のようなもので固めた世界観は危機にかえって脆いというように見えた。母親のように、一神教を現世利益的に捉えるのは無理がある。また父親に関しては、旧約聖書の「ヨブ記」のように神の試練に耐えようとしたものの、それより一番大事なのはやはり家族だ、と思ってしまったことで罰せられたという意味なのか。最後に薪の山が崩れたのは物悲しく見えた。 ほかに哀れなのが健気な弟だった。姉をそういう目で見るなとは思うが、彼が罪人というなら人類など全て死滅した方がいい。  出演者に関しては、主演は可憐で個性的な美少女だが、裸になると少し肉付きがよすぎるように見えた(後姿)のは意外だった。また悪魔に欺かれて地獄に堕ちた子役の演技が印象的だった。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-26 09:27:39)
285.  1303号室 《ネタバレ》 
「ディレクターズ・カット版を逆輸入」(96分)というのを見たが、もとの94分とどれだけ違うのかわからない(例えば洗面所の場面を追加したとか)。そもそも何でこれがアメリカ映画かと思うわけだが、極端に陰気くさい和風住宅とか和室の押入れなどは海外向けに見せる日本像という意図なのか。わりと忠実にジャパニーズホラーなるものを作ろうとしているようには見えながらも、リングとか呪怨とか出所のわかりやすいネタをあからさまに入れ込むのでは真似事にしか見えない。 原作は読んでいないが、映画で見た限りでは母と娘の関係がテーマだったらしい。途中までは一応真面目にドラマを作ろうとしたように見えたので、せめて主人公とその母親の問題には区切りをつけて終わってもらいたいと思っていたところ、ラストがこれでは結局何だったのかわからない。とにかく最後は理不尽な結末にして、これこそがジャパニーズホラーだという安直な態度には納得できかねる。  キャストでは、個人的には中越典子さんに注目していたが、最初のうちは疲れたような顔ばかり見せられて不満がたまる。しかし終盤になって怒りを露わにしたあたりからちゃんと美貌が見られるようになり、若干ながら色っぽい場面もあったりする。また初音映莉子という人は地味ながらも味のある表情を見せているが、この物語でこの役柄ならこういうメイクはなしで済ませてもらいたかった。 ほか隣室の少女役は、後にアイドルグループ「私立恵比寿中学」で活躍した松野莉奈という人らしい。また他の映画で印象的な役をしていた荒川ちかという人が出ていたはずだが、幼少時の写真に写っていただけのようである。  なお雑談として、この映画では家庭の問題よりも悪徳不動産業者の告発が主目的に見えたが、今なら変に安い物件などとりあえず事故物件サイトで見てみるという手もあるのではないか。昨年ネットでたまたま見た怪談(体験談)で、著名な事故物件サイトの名前がごく普通に出て来ていたのでそういう時代になったのだと思ったことがある。ただ現実問題として、誰かが嘘を書き込んだのがそのままになっている場合もあるようなので要注意ということらしい。
[DVD(邦画)] 3点(2020-09-19 13:29:30)
286.  うめく排水管 《ネタバレ》 
冒頭から「新型のウイルス」の感染拡大が語られるので、そういうのは洒落にならないからもうやめろと言いたくなるが、別に2020年の事態に悪乗りしているわけではないので文句もいえない。劇中の潔癖症の人物が手洗いをする際に、指の間を洗っていたのはリアリティがなくはなかった。 しかしその潔癖症の人物が「歩くWHO」だとか、そのWHOが「国境なきヒーローたちの団体」などと無責任に宣伝するのは世界を欺いて破滅させようとでもいう意図なのか。この映画自体が、表側のきれいなものと裏側の汚いもののせめぎ合いの話だったとすれば、国際機関にもその話を当てはめろということになるだろうが、この時点でそういうことまで意識していたかは不明である。  そのウイルス関係を除けば意外に原作に近いので、これはこれでいいと個人的には思った。変にラブストーリーを作り込んでいるが、結果は同じというかさらに徹底させたようでもある。汚いものはさっさと死滅させてしまえという気にはさせられるが、同時に見ている側(男)の被虐嗜好を刺激するところもないではない。 映像的には、技術的なことはわからないが安っぽいのはわかるとして、わざとらしく作った色付き映像とか管内の視覚イメージとか美女2人のじゃれ合いなど退屈を紛らわす要素は入っている。タイトルのところで背景と一緒に、人物が媚を売るような姿でうねっと丸まるのはよかった。ちなみに途中で歌が入るのは、この頃のトンデモホラーでそういうのが流行っていただけのことと思われる。  登場人物としては、美女姉妹の容姿がこのレベルだと申し分ない(大変結構だ)。あの両親でこの娘では実子とも見えず、優良ブリーダーからでも入手したのかと思わせる。姉役は「歌う本格派女優」で妹役はグラドルという違いがあったらしいが、妹役の方は「口裂け女2」(2008)にも重要人物で出ていたのは知っている。ほかに母親役の播田美保という役者は、「口裂け女0 ~ビギニング~」(2008)では奇怪な女としかいいようがない容貌だったが、今回はわりと普通で超個性派女優という程度にとどまっていた。 この監督の作を褒めるつもりは全くないが、今回は特に気に障る箇所もなかったのでそれなりの点をつけておく。2点くらいかと予想していたが倍増した。
[DVD(邦画)] 4点(2020-09-19 13:29:20)
287.  幽鬼<OV> 《ネタバレ》 
もとは「妖恋歌は一陣の風に」という題名だったとのことで、「幽鬼」よりはイメージが広がる名前だがますます意味不明である。ちなみにドラマCDも出ていたらしい。 映画としてはよくある安手のホラーだが、全体構成がかなり特徴的である。芸能事務所のタレント売り出し企画によくあるオムニバスホラーのようだが、実際はオカルト雑誌の投稿の再現映像を並べた形にして、そのうち一本が本筋につながっていくので純粋オムニバスではない。なお芸能事務所のタレントとしては、藤江れいな(主演、公開当時はNMB48)、溝口恵さん(吉川妹役、2017年「人狼ゲーム ラヴァーズ」出演)、笹丘明里(吉川姉役)といった人々がイトーカンパニー所属というのを確認した。 以下、一応オムニバスとして個別に書いておく。  【霧の中の死人憑き】 実体験として語られているが、壊れたものがいつの間にか直っていたとか半端な後日談など、単に投稿者が見た夢の話と思って間違いない。不採用で当然だが、ちなみに共時性の話とも取れる(ずれた正夢、過去との決別)。 【おまじない】 中2女子の投稿ということになっている。いたいけな少女が「殺す」などと不穏なようでいて、ほのぼの感も出ているので嫌いでない。早々にガセ認定されたので笑った。 【アパートの怪】 その辺のものが次々倒れる/崩れるよう仕込んであるのは可笑しい。投稿者がニヤリと笑うのは、創作小話ならともかく実話の映像化としてはウソくさく、後日談も取ってつけた感がある。結果的に不採用。 【蛇女の姉妹】 これが本筋。最初は再現映像だが、取材に行ってからの部分は劇中現実になる。投稿文で読んでいた時の人物イメージと、実際に会った時の印象が全く違う(演者も違う)のは面白い。よくある“田舎の怖い話”のパターンのようだが、劇中ではあくまで現実であり、東京まで被害が拡大するので怖がるべきである。なお蛇女(妹)の造形は「蛇女の脅怖」(1966年英)を真似ている。 【ひとり舞台】本編でなく特典映像。本筋とは無関係に、同じ出版社の他部署の社員が語るサイドストーリーになっている。言うほど怖い話でもなく、同僚に突っ込まれて終わり。  以上、よくある安手のホラーだが楽しいところもあり、またオカルトライターのお仕事映画も兼ねている。オカルトなめんな、という気概をもって頑張ってもらいたい。
[DVD(邦画)] 5点(2020-09-12 10:23:22)
288.  雨の町 《ネタバレ》 
見ている間じゅう原作がどうなっているのか気になって仕方なかった。やむを得ず読んだが、それ自体は何とか成り立ちえていた短編を、長編映画にした段階で破綻したようでもある。 まず撮影地に関して、群馬県中之条町の中心街は原作の町に近い気はするが、実際の出来事はほとんど山間部(旧六合村?)で起きており、また序盤で申し訳程度に天気雨が降ったものの、基本は好天の日のため題名のイメージにかなりそぐわない。撮影の事情を観客側が斟酌してやらなければならない状態になっている。 またこの映画独自の趣向として、現代の都会では自宅に安心できる場所のない子どもがいる、という社会問題を最初に提示したのは特に悪くなく、主人公が劇中の子どもらに同情する理由にもなっている。しかし一方で「カッコウ」という言葉が原作のような侵略者的な存在を思わせるため、可哀想な子どもというイメージとの整合が取れない。最終的には侵略テーマの雰囲気が強くなり、当初の社会問題はどこへ行ったのかという変な印象を残す。 そもそもバケモノの基本的性質が整理されていないようで気分が悪いが、あるいはこの映画では少年と少女の性格付けが違っていて、少年の方は原作通りの侵略者だが、少女の方は当初の社会問題に対応した映画独自のキャラクターだったということか。それにしても少女の元の家庭環境に問題があったようでもなく、主人公の思いに直接つながる存在には感じられなかった。結果的に何を受け取ればいいのかわからない半端な作りで、どちらかというと見て損した部類の映画だった(感想もまとめにくい)。  その他気づいた点として、 ○根本原因は何なのかという疑問を持ったまま解消されずに終わる印象だったが、それは「あまんじゃく」などという言葉を半端に出したためである。 ○少年少女がモンスター化するのは安直だ。オカリナも安直だ。 ○内臓がないというのも映画独自のことである。「内臓がないぞう」というオヤジギャグを言いたくなる。 ○成海璃子という人は「妖怪大戦争」(2005)に続き変な役をしているが、小学生にしては発育が良すぎるように見える。こういう少女が「お兄ちゃん好き」では、その方面の愛好者を狙ったように見えるがそういうことなのか。内臓がなくても女の子といえるのかと思ったが、あるいは内臓がない方が純粋な少女愛の対象かも知れない(突っ込み過ぎか)。
[DVD(邦画)] 3点(2020-09-12 10:23:18)
289.  いつまでも一緒に 《ネタバレ》 
邦題に関して、「いつまでも一緒に」は原題そのままだが、Amazonプライムビデオではなぜか「息を止めて」に変えてある。 リトアニアの映画だが、いかにもそれらしい風景を見せるわけではなく、普通にヨーロッパの都市部の話になっている。場所はカウナスでないこと以外はわからないが、橋の上にいた母子の背景に映っていたのは首都ヴィルニュスにある大天使聖ラファエル教会のようだった。なお屋根の崩落事故は、隣国ラトビアで2013年に起きたものの映像を使ったらしい。  予想の通り娯楽性は皆無で、何が起こっているか説明もないので見るのがつらい映画だが、大まかにいえば主人公である女性の心理を中心に、家族関係の行き詰まりと打開?を描写した映画になっている。 最初は夫に振り回される妻子が気の毒に見えたが、実は妻の方がよほど周囲を振り回すタイプだったらしい。夫はまだしも歩み寄ろうとする様子が見えた一方、妻の方は終盤に大事件のようなものが立て続けに起こってやっと思い知らされたのだと思われる(多分)。しかし夫婦とも別に悪人というわけではなく、また題名からすれば家族の解体が予定されているわけでもない。今回の件で夫婦とも少し考え直すところはあっただろうが、今後は何より娘がまともに成長することが望まれる。 なお劇中では、妻が理想と考えていた家庭像が断片的にいろいろ見えていたが、特に強くこだわったのは家族が一緒の時間を作ることだったようで、その決まりを自分で破ったとたんにバチが当たったと思えばいいか。もしかすると現地のキリスト教(カトリックか)との関係もあるかも知れないがわからない。夫はロシア正教なのか無宗教だったのか。  余談として、家族同士で「こんにちは」と言うのは他人行儀でさすがに変だったが、ここで言っていたLabasというのはそれほど改まった言葉ではないようで、仕事仲間に軽く声をかけるのにも使っていたほか、家族同士の「ただいま」「おかえりなさい」という字幕のところもこの言葉だった。要は家族が無言になるのを避けるため、いわば家庭内のあいさつ運動として、とりあえず声をかけ合う決まりだったのかも知れない。 そのほか登場人物として、ソーシャルワーカーの人はしっかりした職業人かつ心優しい人物だったようで、リトアニア社会の全部が殺伐とした雰囲気でないことはわかった。警察と福祉の連携もできていたと思っていいかどうか。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-09-05 08:27:59)
290.  ナイトメアは欲情する 《ネタバレ》 
リトアニア映画である。研究者が話す英語以外はリトアニア語だったのだろうから、変な医学の実験がリトアニアの医療機関で行われたという設定だったらしい。物語的には正直よくわからない話で、個別の出来事を一つひとつ解釈していくのは難しいが、わかりそうなところだけ適当につなぐと次のようになる。 【ここから解釈】 女性に関しては、当初ただ寝ていたところに主人公が来て、「眠れる森の美女」のように目覚めさせたのが運命の出会いになったらしい。しばらくは相手が誰かもわからないまま過ごしていたが、やがて薬の作用で前の男を思い出し、その男を主人公がちゃんと殺したことで、昏睡に至った現実をしっかり受け止めたと思われる。主人公の献身によって人の心を取り戻し、主人公を恋人として受け入れた上で、ちゃんと現実世界で目覚めてから死んでいったというハッピーエンドかも知れない。 主人公の男は何を考えていたのか不明だが、女性の死期が近いことは初めからわかっており、それまでの間に、劇中で実際にやったことをやろうとしていたと思われる。研究者としての立場も恋人も捨てて、女性の魂を救うことに賭けたということか。あるいは自分が現実世界で得られなかった、心が直接つながる恋人を得る体験をしたのかも知れない。 【ここまで解釈】  ところで予告通りエロい場面は多少あったが(ボカシだらけだ)、観客が見るだけなのは当然として、もしかして主人公の男も性欲が亢進するばかりで充足していなかったのか(実験中に放出するとまずいので?)。物理的な行為を伴わない精神世界の性愛だったのかも知れないが、女性としてはこれで満足だったのかどうか。 またその精神世界の映像は結構面白い。女性の家は木材を積み上げた/崩れたような建物(障子窓のようなものがある)で、アートっぽい風景の中に変なグロいものが生成されているのがファンタジックな印象だった。また泳いでいる自覚はあるが周囲は見えていないとか、車で走っていた道がいつの間にか劇場の階段になり、その劇場で何を見たかはわからないがとにかく彼女と一緒にいた、といった、いかにも夢に出そうなことをまともに映像化していたのはよかった。 個人的には特に共感できたわけでもないが、妙な邦題からイメージされる軽薄なエロ映画では全くないので、少しいい点を付けておかなければ済まない。
[DVD(字幕)] 7点(2020-09-05 08:26:45)
291.  本当の目的 《ネタバレ》 
製作国は今でいう北マケドニアとコソボである。撮影は全てマケドニアだったそうだが、言語はマケドニア語のほかアルバニア語(コソボの主要言語)が使われているとのことで、終盤の男連中(コソボの役者)が話していたのがアルバニア語だったのかも知れない。なお景観が印象的な湖はマケドニア・アルバニア・ギリシャの国境にあるプレスパ湖だったらしい。 内容的にはミステリー調の物語で、最初は見ず知らずだった女性2人が、原題の「9月の3日間」を通じて互いに理解し共感し合い、最後に何事かをなす展開になる。初めのうちは人物像もわからず突き放した気分で見ていたが、その後次第に愛着もわいて来て、最後はそれぞれ納得のいくよう決着してもらいたいと願いながら見ていた。 ちなみにヘイトと言われるかも知れないが、個人的には普段から白人女性の外見をあまり魅力的に感じないことが多いので、この映画でも主要人物2人とも可愛くないのが出て来たなと思っていた。しかし後になるとそれぞれ外見的にも人物的にも格段に魅力が増し、特に「売春婦」と言われた人物が終盤いきなり清楚系に化けたのは意外だった。  ほか社会的なテーマに関して、まず元大臣が建設したホテルの件は、地元貢献なのか汚職による蓄財か、あるいは単に現地の歴史的習慣なのかも知れないがよくわからない。また女性への性的虐待に関する問題意識が根底にあったようで、主要人物の境遇もそうだが、特に引っかかったのが「この国自体が売春宿みたいなもの」という発言だった。 劇中では、警察官が反社会的勢力と結託して「売春宿」を作ろうとし、これを「質のいいやつ」にするために、「放浪してる女」ではなくロシア人を使うつもりだと言っていた。ここでロシア人が上物扱いというのもどうかと思ったが、下に見られた「放浪してる女」という字幕のところで、原語の台詞ではЦиганки(ロマまたはアッシュカリー?の女性)とかМолдавки(近年ヨーロッパで最貧国扱いされているモルドバ共和国の女性)と具体的に特定していたらしいのはかなり侮辱的に聞こえた。これが現地の実態なのだとすれば結構厳しい告発になっている。 ちなみにネット上にあったモルドバ人女性の人身売買の記事(マケドニア語、2004.10.17)によれば、売られる先は主にロシア・トルコ・バルカン半島だそうで、マケドニアでも警察官が仲介した事例があったとされていた。この映画も適当な作り話ではなかったらしい。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-08-29 08:25:06)
292.  ビフォア・ザ・レイン 《ネタバレ》 
今でいう北マケドニア共和国の映画である。見えていた湖がオフリド湖とすればアルバニア国境に近い場所ということになる。 劇中で「500年の恨みを晴らす時だ」という台詞があったが、15世紀末に何があったのか部外者にはよくわからない。この辺はかつてイリュリア人(アルバニア人の祖先?)などが住んでいたところ、6~7世紀に北からスラブ人が押し寄せて、さらに東からブルガール人が攻めて来てブルガリアの一部になり、その後14世紀のうちにオスマン帝国に征服されてから19世紀まで大きな動きはなかった感じではないかと思うが(そんな簡単ではない?)、この地方で見れば何か500年前に大事件でもあったものか。 20世紀末に関していえば、マケドニアでは1991年のユーゴスラビアからの離脱はわりと平穏に行われたが、人口の約1/4を占めるアルバニア人の処遇には苦慮したらしい。映画の撮影は1993年とのことで、映像で見えた国連部隊が1992年12月から派遣されていた国連保護軍だとすると、当時の現地情勢と同時進行の映画だったことになる。実際はこの時期にマケドニアで大規模な騒乱はなかったようだが、その後は90年代末のコソボ紛争の影響もあって、2001年にはマケドニアでも紛争が起きたとのことで、現在ではマケドニア人とアルバニア人の連立政権という形で各民族に配慮した国家運営がなされているとのことである。  ところで劇中で印象的だったのは現地の村で、銃器や小物以外に近代を思わせるものがほとんど見えない。村中が知り合い、親戚だらけなのは非常に息苦しく、またカメの火刑とかネコへの執拗な銃撃を見ると、言っては悪いが地域社会の文明度が疑われる。いきなり復讐団ができたのは、紛争のせいというよりこの周辺(どちらかというとアルバニア側?)にあったという“血讐”の風習のせいではないのか。カメラマンの男がロンドンにいると野蛮人のようだが、地元ではジェントルに見えたというのも意図した対比と思われる。 物語としては循環構造だそうで、パート単位で並び順をずらしてあるほか、明らかな矛盾が生じている箇所がある。面倒くさいので厳密に考える気にはならないが、とりあえず人も社会も永遠に同じことを繰り返すのではなく、少しずついい方に向かうものだと一応期待したい。 ちなみにレストランで騒いだ男は、アイルランド人でないとすれば何人だったのか。どうも何かと不快な場面の多い映画だった。
[DVD(字幕)] 5点(2020-08-29 08:25:04)
293.  ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵隊 《ネタバレ》 
15世紀のオスマン帝国の精鋭部隊が、現在のルーマニアにいたワラキア公ヴラド3世に戦いを挑む映画である。原題のDeliler Fatih'in Fermanıは「デリラ 征服者(=メフメト2世)の勅令」の意味らしい。デリラという騎兵隊は本当にあったようだが、delilerは複数形であって単数はdeliのため、ウィキペディア日本語版には「デリ (騎兵)」で出ている。 悪役のヴラド3世は「ドラキュラ」のモデルになったとされる人物であり、串刺し刑を好む残虐な君主として知られているが、近年のルーマニアではオスマン帝国の支配に抵抗した英雄として評価されるようになっているはずである。しかしこのトルコ映画では「正義の者」であるオスマン帝国と、「残酷なる者」である非道な領主との「善と悪の戦い」の話にしてしまっていたので笑った。串刺しはともかく「細菌兵器」まで持ち出すとさすがに荒唐無稽だが、疫病がらみの話は実際に伝えられているらしい。 ちなみに雄大な景色が印象的な映画だったが、撮影地はカッパドキアのアクサライという場所とのことで、見えていた高い山はハッサン山(3,253m)と思われる。またヴラドの城はポエナリ城のイメージかも知れない。  戦士の大活躍は主に終盤にまとまっており、そこを期待して見ると途中で延々待たされる感じになる。いろいろ非現実的なところのある戦闘場面だったが、やたらに干草の山が爆発していたのはユニークだった。 またオスマン帝国がキリスト教徒や「ジプシー」(字幕)やユダヤ人に寛容だったというのは、おおまかにいえばそうかも知れないが、映画として話を作り過ぎではないかという気はした。しかしローマ教会や「ナザレのイエス」まで否定して、自分こそが神の子と称する不遜な君主をイスラム教徒とキリスト教徒が協力して滅ぼす展開は、この映画としても宗教間の融和に配慮していたと思わせる。 ほか単なる非情な殺人集団でもなく、つかの間の恋や「無口な者」や笑う男のエピソードなどで人間味も見せている。映画の制作上も、串刺しといいながら人を杭に縛りつけただけに見えるなど、直接の残酷描写が抑制気味のようなのはかえって悪くなかった。 最終的にはあまりにも正義の英雄として美化しすぎに見えたが(日本でいえば正義の忍者のようなもの)、トルコの観客には気分のいい映画だったかも知れない。今度はルーマニア側でも、軽薄なアメリカ映画「ドラキュラZERO」(2014)などに任せておかず、堂々とヴラド3世を英雄にした映画を作ってもらいたい。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-08-22 08:42:18)
294.  海底軍艦 《ネタバレ》 
名前は海底軍艦だが実は陸海空の万能戦艦で、かえって普通に海上を航行する場面がない(黒と赤の塗り分けが無意味)。見た目は昭和じみて古風な気もするが、劇中の雄姿を見ればシンプルで精悍なデザインだと思わされる。 また怪竜マンダは目がネコなので、大写しの顔が出るとニャンといいたくなった。  物語に関しては、この当時なりに戦争を扱ったものになっている。愛国心など今の若い者には理解できないだろう、と言われた神宮司大佐の娘は、女優が1941.12.17生まれ(開戦のすぐ後、戦艦大和の竣工の次の日)とのことで、戦争中に生きてはいても、戦争自体は覚えのない人々が成人する年齢になって来たという感慨が当時の人々にあったのかも知れない。 それでも戦わなければならない場面というのは依然としてあるわけで、この映画に関していえば、まるで帝国主義時代の感覚で世界に覇権を拡大しようとする悪の帝国を国際社会は許さないということである。海底軍艦は国際連合の要請を受けて出動した形になっており、かつての日本海軍が世界平和のために役立ったというのはまことに喜ばしい。 ただし、ムウ帝国というのは人口何人だったのかわからないが、結局全滅してしまったらしいのは悲惨だ。再生可能エネルギーである地熱を高度に利用していたらしく、技術面で協力できれば人類社会に貢献できたはずだが残念なことだった。  人物の関係では、ヒロイン役の藤山陽子という人は正統派の美人女優のようで、特撮関係では「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964)にも出ている。知らない間に娘がこんな清楚な美女になっていたのを見てもっと驚け、と神宮司大佐に言いたくなったが、その娘に大嫌いと言われてしまって大ショックという気持ちはわかる。 また皇帝陛下は小林哲子という女優で、劇中では高貴で高慢な顔をしているが、頬が結構ふっくらして、男と並ぶと小柄だったりして可愛く見える。終盤この人を連れ回して帝国の滅亡を見せつけるのは酷ではないかと思っていたが、やはり悲しい最後だったのは心が痛かった。 ほかに水着モデル(リマコ)役は北あけみという女優で、端役だがなかなかいいキャラクターになっていた。  ちなみに全く関係ないことだが、「ムー」といえば個人的には昔懐かしい雑誌の名前である。今も続いているとは知らなかったが、先日創刊40周年とのことで記念号を買ってみると「読者投稿 ムー民広場」というのがあって笑った。おれもムー民と名乗ってみたい。
[DVD(邦画)] 6点(2020-08-16 09:52:52)
295.  妖星ゴラス 《ネタバレ》 
企画段階で当時のSF作家がアイデアを出した、と小松左京氏が書いていたのを読んだ覚えがある。黒色矮星という言葉は実際にあるようで、劇中でも「老年期に入った太陽」と説明されており、造形物の印象と違って表面は気体(水素)という設定だったらしい。半径は地球より小さくても質量が6千倍というのは、当時の一般人の感覚からすれば意外な設定なのではないか。 こういう場合に最も現実的なのは逸らすことではないかという気がするが、劇中の人々もそのような考えではあったらしい。しかし質量が大きすぎて不可能だったため、結果的に逃げるというユニークな方法になったと見える。対策の開始から結果が出るまで時間がかかり、途中で正月が挟まるのがいい雰囲気を出していた(決戦前の小休止のような)。 特撮に関してはそれなりだが、南極の工事現場はかなり本物っぽいので感心させられる。また本邦初公開のジェットビートルが、ちゃんと怪獣を攻撃できる仕様だったのは安心した。この映画が1979~82年、「ウルトラマン」が90年代の話とすれば、これの改良型を科学特捜隊で使っていたと考えても変ではない。  政治面ではリアリティがあるともいえないが、隼号の尊い犠牲(万歳!)に応えられない政府や国民でなく、科学者主導で地球を救うというのが昔のSFらしい理想論かも知れない。偉い学者が徒然草を引いて、人間はいつの時代も目先のことに追われている、と語ったところで街の風景を映したのは「日本沈没」のような悲哀感を出していた。理系だろうが古典にも親しんでいるのは本物の知識階層である。 また宇宙省の長官(大臣でなく?)が、突然押しかけた若い連中を座らせて、ちゃんと話して聞かせたのはさすが人間が大きいと思わせる。「話せばわかる」とはこのことだ。しかしその「宇宙のパイロット」に関して、隼号はともかく鳳号はあまりにいい加減な連中なので呆れた。軍隊でないから規律が緩いのかも知れないが、今後は宇宙省も採用方法を見直した方がいいのではないか。  ほか女優陣では、ダブルヒロインの白川由美さんと水野久美さんが、冒頭で何と服を脱ぎ始めるのでドキッとしてしまう。いつも清楚な印象の白川由美さんも、この場面では女の子っぽく見えたのは和まされた。水野久美さんはお色気場面もあったりしたが(これ見よがしなので笑った)、幼馴染に見せる気安い表情が可愛いのは感激した。
[DVD(邦画)] 6点(2020-08-16 09:52:44)
296.  ふたりの旅路 《ネタバレ》 
ラトビア・日本の合作だそうだが、まとまりが悪い。 まず、場所がリガである必然性が感じられず、要は神戸市とリガ市が姉妹都市だから、ということで感覚的に正当化するしかない。観光映画という意味もあるようだが、ピンポイントの観光案内的で街全体としてのイメージが得られにくい。なお「ルンダーレ宮殿」は美麗だがリガにはない(南方約80km、リトアニア国境に近い)。 また着物の話かと思っていると、そのうち料理にテーマが移ってしまうのは変だ。着物+和食ということなら、ラトビア側からすれば要は「日本」だからと一括して問題ない??と思うかも知れないが、実際作っていたのは和食でもない。握り飯でも作ってみせればよかっただろうが米がないか。 ほかラトビア側からは人間の鎖(1989年)、神戸側は震災(1995年)の話題が出ていたが、6年も時間差があるものを同時期のようにごまかして語っていたのは無理がある。さらにいえば、日本側関係者が全て神戸の人間なわりに、誰ひとりとして関西弁を話さないのも何だとは思うが、まあそこまでは言わなくてもいいかも知れない。  監督・脚本はラトビア人とのことだが、悪い面で邦画くさいのが鼻につく。ドタバタじみた展開で見ている方が気まずくなり、またzutisだと何度言われても聞き取れないのは非常に苛立たしい。深夜の旧市街で、変な日本人が一人でしゃべっているなど近所がどう思うかと気が気でなく、また噛み合わない会話からとんでもない事態に発展していくのも素直に受け取れない。これは昭和の喜劇映画でも志向しているのか。 物語の本筋に関しては、何が表現したいかわからなくはない。主人公が独り言をいうようになった事情を聞くと心が痛いが、今回の旅行でやっと心の中の夫に向き合えるようになったらしい。また気に障るから怒鳴るなというあたりは、古い日本式の夫婦関係が表現されていたように思われる。「理屈っぽいかも知れないけれどもいつものようにね」というのは万国共通かどうか。 そのほかこの映画の最大の特徴は、日本を代表する名優の表情を大写しでじっくり見せることだった。良くも悪くもこの役者ならではという登場人物になっていて、人によってはこれが何よりの見どころかも知れない。あんな台詞が初めから書いてあったわけはないが、あとでからラトビア語に訳したということか。
[インターネット(邦画)] 5点(2020-08-08 08:57:27)
297.  柔らかな泥 [ヤワラカナドロ.] 《ネタバレ》 
ラトビア製の生真面目な人間ドラマである。娯楽性はない。 撮影場所は主に東部のラトガレ地方で、主人公の住所地はカウナタ(Kaunata)という村の付近ということになっている。また英語大会に出かけた先は近くの都市レーゼクネ(Rēzekne、人口約3万)で、会場施設の隣にある古城址も映っていた。 英題と邦題に「泥」が出ているが、前記の村がどうかは別として、少なくともラトガレ地方の北部は低地で湖が多いとのことで、映像的にも低湿地を思わせるジメジメ感を出している。これが主人公の現状を暗示していたようで、特に若い教師と這い登った柔らかい土の山が視覚的イメージの提示だったかも知れない。  物語としては、家族の崩壊に直面した17歳の主人公が、何とか現状打破して這い上がろうとする話らしい。しかし行動力があって賢いようでも視野が狭く感情的で無分別で、終盤の冒険も結局その程度のことだったのかと落胆させられる。 個別の要素としては「万引き家族」(2018)かと思うところがあり、また意外にクライム・サスペンスのように見えたりする。まさか邪魔な弟まで死なせるのではと心配になったが、さすがにそういうことにはならなかった。弟に靴を買ってやる場面が2回あるのは意味不明だったが、例えば泥で靴がすぐ汚れてしまう土地柄で、弟を思う気持ちがこういう形で表現されたと思うべきか、あるいは2回目に関しては、泥まみれでも負けないように歩いてもらいたいということか。 ラストがどうなったのかもわからなかったが、原題のEs esmu šeitは「私はここにいる」(逐語訳そのままでI am here)という意味であり、別に存在感を声高にアピールしたいのではないだろうから、自分の居場所を自分で確認した、と取るべきかも知れない。周囲の人々も別に悪人ではなかったようで(警察も甘い)、頼れる人はちゃんと頼りながら、ぬかるみに足を取られずしっかり歩いていこう、ということだと思っておく。よくわからないが奨学金で進学というのはまだ間に合うのかどうか。 なおラトビアでは18歳が成人年齢のようなので、未成年から成年への境界を越える青春物語になっていたようである。  ほか人物に関して、主演のエリーナ・ヴァスカElīna Vaska(b.1994.6.13)という人は、知っている者にとっては有名なラトビアの作曲家ペーテリス・ヴァスクスの孫だそうである。なかなか感じのいい若手女優だった。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-08-08 08:57:24)
298.  ファブリックの女王 《ネタバレ》 
独創的なデザインのファッション製品・バッグ・インテリア・雑貨類を世界に提供するフィンランド企業「マリメッコ」の創業者であるアルミ・ラティア(1912-1979)の映画である。邦題の「ファブリック」とは会社の原点になった布を意味しているようで、今も商品ラインナップに載っている(テキスタイルとはニュアンスが違うらしい)。なお個人的には衣類には縁がないが、ウニッコ(Unikko)柄のマグカップが一個だけある。 ちなみに創業者の死去後、経営が悪化していた会社を1991年に買収して再建したキルスティ・パーッカネンという人物のTVドキュメンタリー「マリメッコの奇跡」というのも見たことがある。この人物も創業者を評価し、その方針を引き継ごうとしたとのことだった。  マリメッコの映画であるからには、鮮やかな色彩感で見せる映像(ポピーのお花畑イメージ)が豊富かと思えばそうでもない。また監督インタビューによれば「お決まりの伝記的な形にはしたくはなかった」そうで、この人物を語る際に必ず出そうなケネディ大統領夫人の話などは出て来ない。 それより基本的には人格の表現に重点が置かれていたらしい。DVD特典のTVドキュメンタリーでは本人の理性的な面が見えており、有無を言わさず周囲を引っ張る豪傑のような印象もあったが、しかしこの映画ではどちらかというと、監督の言っていた「非理性的なところ」や人間的な弱味が強調されていたようである。 また当然ながら、男社会で苦闘する女性への共感も制作の動機だと監督は語っていた。ちなみに監督は主人公の元友人で、マリメッコの役員を務めたこともあるそうである。  映画の作りとしては、主人公を扱った演劇の稽古の場面を映画にした劇中劇の形になっている。その理由としては、主人公のいた世界をまともに再現しようとするよりも、舞台装置の形にした方が安価でシンプルかつ芸術的に表現できるからか。また演出家との会話で役者の迷いが語られていたりするのは、一人の人間の本質に迫ること自体の難しさが表現されていたようでもある。映画化にあたってまとめ切れていないというよりは、それが人間というものの実態だということかも知れない。 以上のようなことで、評価すべき点はあるだろうが娯楽性は高くない。個人的には大変よかったともいえないが、個別の場面としてはアメリカで、主人公の側近が舞台裏から覗いていたのが面白かった。変人風だが重要人物だったらしい。
[DVD(字幕)] 6点(2020-08-01 08:49:50)
299.  365日のシンプルライフ 《ネタバレ》 
自伝というかドキュメンタリー調のようだが、積雪のある時期にわざわざ全裸で倉庫へ走るなどはいかにも作為的である(前日は倉庫から全裸で帰ったということか)。全体的にストーリー性が弱いので退屈に耐えながら見たが、最後には少し和ませる仕掛けがなくもなかった(祖母に似た感じだったような)。男連中の顔などは見なくていいが、上から目線の従弟のど素人っぽい顔には笑った。また風景映像の印象は悪くなく、背景音楽の北欧ジャズもいい雰囲気だった。  実験の内容に関しては、日本でいう高度成長期でもなかろうに、モノがあるほど幸せと思う人間など今どきどれだけいるかと思うわけで、前提からしてちょっと違うのではと思わせるものはある。そもそも実験を始めたきっかけがそれなら結局どうすればいいかは最初から見えており、弟や友人などの好意もさんざん当てにしておいて、結局何が一番大事なのかというのもありきたりな結論というしかない。ただ公式サイトによれば、公開時には「多数の“実験”フォロワーが生まれ」たとのことで、別に主人公と同じ結論を得る必要はないわけなので、真似してみること自体はいいかも知れない。 個人的に真似する気はないが思ったこととしては、自分としては今あるものを全部捨てて家を空にしてから墓に入りたいという願望が昔からあるので、それが終活の大きな課題になることは改めて認識した。その一方で映画に関することでいえば、動画配信サービスなどで見て終わりにしておけばいいものを、形あるものとして手元に置きたくなってDVDなり何なりを買ってしまうということがある(最近の例では「地獄少女」)ので、そういう欲求を抑えるのが生きている間の課題かとは思った。  なお真似するにしても全裸になる必要まではないだろうが、ちなみにフィンランド人はサウナに入った後に全裸のまま外に出て湖に飛び込んだりする人々だそうで、全裸で走るのにも抵抗がなかった可能性はなくもない。以前にNOKIAの日本支社長が、社内のサウナに入ってから屋上で涼むのが周囲のビルから丸見えになるので日本人社員が困ったという話を読んだこともある。映画と関係ないが。
[インターネット(字幕)] 5点(2020-08-01 08:49:48)
300.  空母いぶき 《ネタバレ》 
公開前から叩かれていたので笑ったが一応見て来た。 原作に含まれている各種要素のうち、この映画では「戦争」と「人命」に絞って基本的なところを表現していたようで、うち「戦争」については敵に関する設定との関係なのか独自の定義をしていたらしいが別に悪くはない。ただ戦争映画として面白いかは何ともいえないものがあり、侵略された島に行こうとしたら途中で敵が攻撃をしかけて来て原作にある出来事が起こったというだけで、戦術的な駆け引きのようなものは特にない。また自分としては原作12巻までの間で3回くらい出た「当事者として」という言葉がなかったのは不満だが、それは日本国民にはまだ早いという判断か。  そのほか映画独自の部分として、ネットニュース記者の「燃えています」の場面は、意図はよくわからないが少し泣かせるものがあった。この人物はジャーナリストというよりも、戦闘の現場をじかに見てしまった一般人の位置付けのようでもあるが、あるいはこの映画としても既成のマスコミに期待するものはないと考えているのかも知れない。 また人命に関わることとして、救助された敵兵が逆上して自衛官を殺害してしまい、同僚が報復しようとして止められるエピソードが入っている。ここは敵とはいえ未来のある若者を、殺してしまうのでなく改心させるのが大事という意味かも知れないが(いわば少年法の精神?)、しかしそういう目的のために柿沼1尉を犠牲にしたのは絶対に許せない。自分がこの場の責任者でも止めるだろうからそれは仕方ないにしても、こういう話をわざわざ入れるこの映画を憎まずにはいられない。本当に守ろうとするのは誰なのかを厳しく考えることもなく、八方美人的に綺麗事を言ってみせる映画など全く求めてはいない。 なお最後に紛争を終結させた驚愕の出来事は、もしかすると日本国憲法前文でいう「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持」するとの理想を表現したものではないか。ここは専ら憲法を愛する人々へのサービスのようでもあるが、そもそも敵に関する設定が原作と違って荒唐無稽なため現実的な切迫感もなく、何か異世界ファンタジーのようなものを見せられた気もした。  そういうことで原作読者として満足できるものでもないが、最低限、原作の存在を世間に知らしめるという意義はあるので、世間の評価はどうでもいいからとりあえず話題にはなってもらいたい。ちなみに原作は今年中に完結とのことで期待している。   [2019/12/07追記] DVDで再度見たが、やはり柿沼1尉の件は許しがたい。わざわざ妻子の顔を見せて「替えは利かない」と言わせておいてから死なせるなど極めて悪趣味で、制作側には人の心というものがないのかと疑わせる。 また公開中は少し遠慮していたがあえて書くと、最後に取ってつけたように外交の心得だか極意のようなものを説明するのが煩わしい上に、大きい国が小さい国を追い込むな、などと突拍子もなく語らせるのは不快感を催した。こういう誰の意向を斟酌したのか不明な主張で話を逸らしてしまうのは、映画というメディアの不自由さなのか作り手の独善性なのか。 もう一つ、公開時に見て気になっていたのは、ラスト近くの「こんな時間に開いてる店あります?」「何でもありだよこの街は」というやり取りである。これがどこまで現実味のある話なのかわからないが(東京だとあるのか)、そういうのこそが世界に誇れる日本の底力だ、と言いたいのなら話はわかる。 [2020/02/13変更] ニュージーランド映画「米中開戦 20XX年:悪魔のシナリオ」(2019)との相対関係でマイナス1点とする。 [2020/07/27変更]「みんなのコミックレビュー」に原作のレビューを掲載したので、この機会に映画の方をさらにマイナス1点とする。
[映画館(邦画)] 3点(2020-07-27 22:50:12)
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