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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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301.  新・幽幻道士 立体奇兵 《ネタバレ》 
本来は3D映画として制作されたそうで、原題の「立體奇兵」とは終盤に出た赤青の連中がそうだったらしい。確かに、3Dの効果を出すためかカメラに向けた前後の動きが目立つようだった。 今回は設定が初期化されたようで、金爺爺がもともといた「義荘」(第3話冒頭場面のナレーションで説明があった)に最初から少年2人と美少女がいる形になっている。親方と孤児連中の旅という設定はないものの、町内でキョンシーによる殺人事件が起こって疑いをかけられるなど、このシリーズとしてはオーソドックスな印象がある。  内容としてはちゃんと子どもら主体の物語ができており、前回とか前々回のように大人が悪ノリしている印象はなく、コメディ要素にも抵抗なく笑える映画になっている。ベビーキョンシーが敷居につまずいたのに笑わされ(子役は痛くなかったか)、また痒みの素?とか八卦ボックスのようなアイデアも面白かった。最後は残念ながら悲劇に終わっていたが、まずは笑って泣いてという普通の娯楽ドラマの範疇と思われる。 また決戦時の人形の館がファンタジックな作りなのも楽しい。伝統色ある異形の兵団が次々襲って来るのはイマジネーション豊かで、小さい子ならこういうのを喜ぶのではないかと思った。獅子舞が出現したのは変だったが、幇間のようなキャラの坊主頭が青いのがまた可笑しい(気色悪い)。奇兵が消える時のワオンという効果音も面白かった。 このシリーズは初回が好評で第二作を作ったあたりが頂点で、三作目からは低落するばかりというパターンかと思ったが、この新作は子ども向けという基本姿勢を守ったことで、かえって大人も安心して見られる(笑える)佳作になっている。大人の立場としても、子をもって初めて人の道の何たるかを知る、という程度のドラマはできていたかも知れない。  登場人物としては、前回の孤児役5人が少し役どころを変えてまた出ており、前回はグループ中の一人だった美少女が今回はテンテンの地位に昇格したのは順当に見える。もとのテンテンより少しきつい顔に見えるが基本的にかわいいので問題ない。また前回の監督の娘も再登場しており、かなり特別扱いの役をやっている。前回と違って大人の女性の面での見どころはなかったが、子役が微笑ましいので結構だ。ベビーキョンシーも相変わらず愛嬌のある顔を見せている。
[インターネット(吹替)] 6点(2021-11-27 11:27:46)
302.  あなたを、想う。 《ネタバレ》 
監督は台湾出身で主に香港で活動した著名な女性俳優、主演(妹)はマカオ出身、母親役はマレーシア出身(華人)とのことで、中華圏的な広がりはあるが映画自体は台湾限定の話である。撮影は東海岸の緑島と台東、及び台北の3か所にわたっているが、現地の風景として個人的にはそれほど印象に残るものはなかった。  物語としては、青年期の後半になった兄と妹と妹の恋人の3人が、それぞれのきっかけで親へのわだかまりを解消する話のようで、夜の幻影とか白昼夢とかでファンタジックな印象を出している。原案(脚本)は日本人だったとのことで、この映画のように、一般的な人間ドラマに心霊現象とか超時空展開を平気で入れ込むのが台湾でも普通なのかはわからない。 解説によると本来3つの短編だったとのことで、3人の男女それぞれの物語を1本にまとめた形になっているが、しかし1人だけ親が別なので、構成上の均衡を失している感はある。ラストは4年後くらいだったようだが、その間に目の治療とか仕事をどうしたのかといったことは捨象され、また兄の心の変化も不明瞭だったため、3人それぞれの物語としては不全感が残った。また終盤を(バス以降)適当に都合のいい展開にして、取ってつけたような結末に飛んだのも感心できない。 ほか単純に意味が取りにくいところもあり、特に台北にいた金髪オヤジに関しては、父親が娘と息子に言いたいことがあって来た、という意味かと思ったが(妹の恋人の方はそうだったと思うが)、演者(※)が違うのでそうともいえないのは変だった。あるいはこれが母親の語った天使かも知れないが、何にせよ超自然的なものに頼りすぎではないかという気がした。 ※酒吧調酒師:瞿友寧、役者というより映画監督・TVドラマ演出家らしい。  個別の場面としては、台風の夜に兄が実家で「母さん」と呼びかけたところは感動的だった(ホラーっぽいが)。また妹の恋人が突堤で出会った釣り人がニヤリとしたのも悪くない。終盤では、妹がたまたま立ち会った出産が本物のように見えたのが強い印象を残した。大事な場面の直前で、過去の記憶を断片的な映像として蘇らせるのは効果的だったかも知れない。 自分としても、当日の夜に見た夢がこの映画の影響だったらしいので、心を動かされる映画だったというのは間違いない。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-11-13 09:29:24)
303.  屍憶 SHIOKU 《ネタバレ》 
台湾と日本の合作ということになっている。台北市の警察が出ていたので場所は普通に台北らしい。 ホラー要素としては、台湾で有名な(多分)「冥婚」という風習を使っている。これは日本にもあると書いてあったが、しかし山形県内陸地方にある「むかさり絵馬」は亡くなった人物に架空の相手を結び合わせる形なので、この映画のように生きた人間を犠牲にするものではない。劇中で過去に事件のあった1930年は日本統治時代であり(映画「セデック・バレ」の霧社事件と同年、映画「KANO」の前年)、また何か日本がからむのかと思ったら何も関係なかった。関係なくて結構だ。  物語としては中心人物の男と女子高校生の話が別々に進んでいき、最後に一本にまとまって終結する。途中の展開が緩くて長いと思ったが、終盤に至ってまとめにかかり、それまでの断片が次々つながっていく展開は意外感があった。 また日本が参加しているだけあって邦画ホラーっぽい雰囲気もある。しかし貞子でも伽椰子でもないゾンビ風の亡霊が、霊能者の前でしおらしくかしこまってうなだれる姿は珍しい。またその霊能者が「他に方法がない」と新人らしく自信なさげに言っていた様子も好感が持たれる。 ほか女子高校生を水泳部の設定にして水着姿を水中撮影するなどは、日本でも以前に盛んだった(今も?)ロリコン趣味丸出し映画のようだった。ただし出演者は20代だろうから未成年者はいないと思われる。  出演者としては日本人も二人出ており、うち田中千絵という人(「王依涵」役)は他の台湾映画にも出ている有名人である。もう一人の池端レイナという人も日台両方で活躍中とのことで、今回出番は多くなかったが、かわいいまま終わる役でよかったとはいえる。 ほかの登場人物として、中心人物の女子高校生は16歳(昨日まで15歳)の設定で、見た目は素朴で幼い感じの普通に可愛い少女だったが、演者のVera Yen/嚴正嵐という人は実は1989年生まれだそうで、この映画の頃には26歳くらいだったことになる。10歳ごまかしても通用するのは元がよほど童顔で可愛い人だということらしく、この人にもちょっと意外感があった。特に病室で見せた情けない顔は極端に可愛い(かわいそうだ泣くな)。 また中心人物の男に「イーハン」と呼ばれていた女性役(Nikki Hsieh/謝欣穎)も忘れがたい魅力的な風貌だった。出演者の面でも見どころがあるのはいい映画というしかない。
[DVD(字幕)] 6点(2021-10-30 13:27:37)
304.  KANO 1931海の向こうの甲子園 《ネタバレ》 
台湾では大好評だったようだが媚日映画との批判もあったようで、また台湾の有名な映画賞を受賞できなかったのは審査委員会の大陸関係者に妨害されたからだとの噂もあったらしい。そういうのも台湾社会の様相の一端と受け止めるしかない。 一方で日本では概ね好意的に扱われたらしく、当然ながら朝日新聞も協力している。個人的に不快だったのは、当初あからさまに先住民を侮蔑していながら、風向きが変わると簡単に転向する軽薄な記者が出ていたことで、こういう人格低劣な日本人を毎度見せなければ済まないのなら日台関係の映画などもう見なくていい気がした。多くの日本人の感覚では、無名の三民族混成チームが頑張っているというだけで応援せずにはいられない気になって当然であり、そういう一般民衆の姿も映像に出していたのは間違っていない。 なお台湾の大作映画は2時間に収めるつもりがないのが時々あるようだが、さすがに3時間は長いのではないか(それをいえば「セデック・バレ」は本来4時間超だったわけだが)。札幌の投手の後日談など必須だったのかという気はした。  その他の事項として、八田與一という日本人は野球に関係あるのか疑問に思ったが、それを含めてこの時代を表現すること自体が製作目的の一部だったのなら変ともいえない。「嘉南大圳」というものが、現地の人々の暮らしの向上に役立ったのであれば日本人としても喜ばしい。 また外国映画なのに台詞がほとんど日本語なのは顕著な特徴点である。正直聞きづらいところもあったが、しかし当時の日本語が、現代で事実上の世界言語になっている英語のように、三民族の意思疎通と相互理解の基盤だったことの表現ではあるかも知れない。 野球に関しては、王貞治氏が顧問について演者も経験者を揃えたとのことで、試合の時間も長いが苦にならず、また決勝戦でも惜しかったが悔いは残らない感じをうまく出していた。ここでの選手からは、その後に日台の野球界で活躍した人物が多く出たとのことで大したものである。 ほか個別の場面では、「アウト!」を言い合って大笑いしていたのと「髪型崩れる」というのは笑った。なかなか愛嬌のある連中だった。  [雑記] 映画自体と直接関係ないが調べたので書いておくと、映像に出ていた嘉義市街地のロータリーは日本統治時代の都市計画でできたものらしい。噴水がいつ作られたかはネット上で探せなかったが、地元出身の陳澄波という画家の「嘉義中央噴水池」(1933)という絵に描かれているので劇中年代にも存在したと想像される。 現在は、この映画に出た呉明捷投手の像が建てられていてストリートビューでも見られるが、噴水の方はしばらく止まっていたのが2021.7.27に再稼働したとのことで、その際に嘉義市長が、彼の決して諦めない精神が新型コロナウイルス感染症予防の精神にもつながる、と述べたとのことだった(「自由時報」の記事より)。だから何だということもないが地元ではそのように思われているらしい。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2021-10-23 08:58:23)
305.  セデック・バレの真実 《ネタバレ》 
台湾の先住民(台湾での呼称は「原住民(族)」)であるセデック族に関し、1930年の「霧社事件」とその後の経過を扱ったドキュメンタリー映画である。日本人が見る場合、この事件について事前にそれなりの理解があるか、または劇映画「セデック・バレ」(2011)を見ていないとわかりにくい。逆にその映画を見てからだと、このドキュメンタリーが製作の背景になっているのがわかる。 題名の「餘生」とは「生き残った者」の意味だそうだが、現代で存命の人は基本的にいないので、子孫が何組か登場して当時の言い伝えや自らの思いを語っている。うち親子3人はセデック族の発祥地とされる「プスクフニ」(Pusu Qhuni)を訪ね、自分らが何者なのか探る旅をしていた。  この映画を見た限り、現在のセデック族は漢人社会に同化しつつあるようで、若い世代は言葉も話せず、今後もエスニック集団としての実質を維持していけるか難しいように思われる。さらにいえばセデック族というものが、いわゆる民族自決的な考え方を適用する以前の、今やっと民族意識を形成しかけた段階にも見える。事件の頃にあった集落間対立がすでに解消されたことを見せようとした場面もあったが、ここは正直ちょっと会話が微妙だった(笑)。 しかしこの映画としてはとりあえず、各人が民族としての自覚を劣等感ではなく誇りとし、他人に見下されたりしないよう、それぞれ子どもを立派な人に育てていかなければならない、という意味の言葉で締めていた。かつて彼らを見下していた日本人はもういないので、この映画では字幕でいう「台湾人や中国人」(本省人と外省人のことか?)に対して彼らの立場を訴える形になっている。 日本人としては今の彼らと立場が違うので、この映画から直接何かをメッセージとして受け取るのは難しい。しかし未来のことを考えれば、例えば日本国が近隣大国に併呑されるとか、グローバル社会の中で解体させられようとした時にどうするのかが問われているといえなくはない。  ほか特徴点としては、民族としての存在について外部からの勝手な意味づけを排する意図があったようである。日本統治時代には文明化すべき未開人の扱いだったわけだが、国民党政権下では反日宣伝のため一転して「抗日英雄」として賞揚され、それでかえって人々の実像が歪められたところもあったらしい。邦題の「真実」にはそういう意味も込めてある。 また教育はやはり大事だという考え方も出ていたように見える。日本統治時代の教育政策はかえって悲劇を生んだ面があったとのことだが、しかしその後の子孫も教育には熱心だったらしく、最後の締めのナレーションでも、他人に見下されないためには教育が必要だということを述べていた。実際に登場人物の一人で、子育て後に大学院に入ったという女性はいかにも知的な人物だった。 ほか女性というのは本当に強いと語る人物もいて、勝手に死んでいった男連中ではなく、女性こそが生命を後世につないだのだということも表現されている。見て面白い映画ともいえないが(時間も長いが)、劇映画と違って実在の人物の語る言葉は重かった。
[DVD(字幕)] 6点(2021-10-16 14:28:53)(良:1票)
306.  海角七号/君想う、国境の南 《ネタバレ》 
台湾の高校(高級中学)の歴史教科書(2018年版)を日本語訳した出版物を読むと、文化の発展に関する記述の中で、「悲情城市」(1989)の後にいったん低迷した台湾映画界を再興した映画として特記されている。 しかし教科書に載るほどの歴史的映画にしては軽めの映像・演出・展開で、時間は長めだが重苦しさがないので一般受けするのはわかる。笑わせて盛り上げてから泣かせるタイプの娯楽映画であり、ジャンルには「コメディ」がないが入れた方がいい(IMDbではComedyが最初に出ている)。自分としては三つ子が別々の方向に走ったところは笑ったが、しかし黒人女性に関するギャグは現在だとポリコレ違反の恐れがある。  物語としては、台湾島南端の屏東県恒春鎮(劇中では単に「恒春」)の周辺住民で無理やり作った速成バンドが、各種問題を適当に乗り越えて最後にライブを大成功させる展開になる。そこに第二次大戦時と現代の二組の男女の恋愛を重ね合わせ、かつての悲恋が時を隔てて成就した形を作ったらしい。 登場人物には老若男女を揃えてあり、またエスニックグループとして先住民や客家人も入っている。そのように、いろいろな人々からなる台湾の住民が最後に皆で一体感を出していたのはいいとして、何でそこに日本人がいなければならないのかは不明である。日本人の立場からすれば、そういうのは内輪でやってもらえばいいのではと思うが、しかし虹でつながった日台間をここで再び結ぶ意図が初めからあったようではあり、また例えば、かつて外から来た日本人が台湾の人々をまとめるきっかけになったのをここで再現しようとしたとも取れる。 ただし劇中日本人が変な奴ばかりなのは何かと苛立たしい。感情が激昂してなお言語明瞭に相手を罵倒し続けるのは日本人的とは思われず、これはヒロインがすでに現地に同化しつつあると思うしかない。ちなみに日本人が面倒くさい連中だと思われていることはわかった。 台湾の人々にもいろいろ考えはあるだろうが、少なくともこの映画では日本がわりと肯定的に扱われているようではある。特に悪気もないらしい。  ほか個別事項として、披露宴の場面で壇上の美女が歌い始めたのは、「熱帯魚」(1995)でも聞かれた日本の昭和歌謡「恋をするなら」(1964)のカバー曲だった。よほど台湾で人気の出た曲らしい。また夜の海辺で酔っ払いの男が思いがけず優しくされる場面があったが、こういうことをされたらおれでも泣く。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-10-09 11:50:09)
307.  青島要塞爆撃命令 《ネタバレ》 
第一次世界大戦に日本が参戦した時の映画であり、また日本初の水上機母艦「若宮」(劇中の時点では運送船若宮丸)が出ているのが珍しい。貨物船を改装して水上機を載せただけのものだが、水上機とはいえ偵察のほか攻撃もしているので実質的に航空母艦の役目をしている。劇中では最初にとりあえず出てから相手の様子を見て、次回は爆撃と護衛を2機で分担し、後には爆弾の投下装置(筒)も付けるといった現場力での進歩を見せていた(どこまで史実かは不明)。 物語としては、青島の攻略を担当した日本陸海軍が焦って総攻撃をかけて大苦戦したが、若宮の飛行隊が要塞を破壊したことで大勝利を収め、それによって航空機の有用性も見事に実証した、という筋書きらしいが、それはこの映画限定のお話なので真に受ける必要はない。現実にはこんな大活躍などしていないが、地道に相応の成果を出してその後の海軍航空の発展につなぐ形になったと思われる。 ちなみに第二艦隊旗艦「周防」の艦上の場面は横須賀の戦艦三笠で撮影したようだが(背景に猿島が見える)、この周防というのは日露戦争での鹵獲艦(旧名Победа)であって三笠と同時代の戦艦なので、本物も大体こんな感じだったろうとはいえる。  映画全体の印象としては、評判通り力の抜けた軽妙な作りで笑わせる場面も多いが、現地住民に関する部分が笑えないので異物感がある。 「外国で勝手に戦争を始めて…」というのはその通りとしても、寛容な態度を見せたとたんに諜報活動や破壊工作が露見するなど、必ずしも無垢で善良な民ばかりといえないことはしっかり表現されている。そうすると序盤の「許可してやって下さい!」「いかん!」という意見対立は、前者優位ではなく両論併記または後者優位と取るべきだったのか。恐らくこの映画の意図としては、終盤に意外な助けが得られた展開をもって、ちゃんと誠意が通じる相手もいると言いたかったのではと思うが、徹底せずに曖昧なままで終わってしまったのは変だった。チャイナ服のスパイがその後どうしたかの説明もなかったので、何かの理由で短縮したため意味不明瞭になったと思えばいいか。 ほか劇中のドイツ軍に関しては、人間味は一応出ているが基本的にはよそよそしい感じの敵である。この第一次大戦で日本は勝ち組になって国際的地位も向上したわけで、その後はかえって多事多難でもあったが、何にせよドイツとは同じ組にならないのが無難という気はする。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-09-18 09:58:17)
308.  私の少女時代 Our Times 《ネタバレ》 
主演のビビアン・ソン(宋芸樺)は知らなかったがこの映画で人気が出た人らしい。2018年にはSNSでのちょっとした発言が大陸側で大々的に非難され、火消しをしようとしたら今度は台湾側で叩かれて、総統府の報道官がとりなしのコメントをした事件があったとのことで、やはり大陸での営業はリスクが大きいということだ。  それはそれとして映画そのものは青春恋愛映画であって、邦画なら少女マンガ原作かと思うがオリジナルらしい。主人公が90年代を回顧する話なので懐古趣味的なところもある。 時間が140分もあるのはさすがに長いが、前半のラブコメ部分にはけっこう笑わされる。恋愛に関する格言のようなのは日本の青春モノにもあるかも知れないが、日本にはなさそうな「水風船」の話もなるほどと思って感心した。また終盤の「順風満帆 一獲千金」(字幕)のところは笑い泣きさせられた。 ただ途中で嫌な感じだったのは、転任してきた指導主任の態度(と顔)を見て、これが中華圏の抑圧手法なのかと思わされたことだった。劇中では民衆側が勝っていたが、現実社会の政治問題なら権力側の実力行使もありうるのではという気もして、こんな映画で思うのも何だがかなり危なっかしく見えた。まあ今は台湾でも自由で公正な社会が実現しているはずで、劇中のイケメン優等生のいうとおり、誰が言ったかで正不正が左右されない世の中であってもらいたいと思った(日本もそうでなければと思った)。 登場人物として、主人公の林真心(英語版ではTruly Lin)という人は、中盤で髪型を変えてからいきなり可愛くなったように見せていたが、個人的感覚としてはそれ以前からちゃんと可愛く見えていた。自分としても大人の場面は同じ演者にして、最後に昔のままの笑顔がよみがえった形にしてもらいたかった。  ほか雑談として、主人公のプロフィール帳に「喜歡の人:??」「討厭の人:我哥」(私の兄)と書かれていたのは目についた。話によると台湾では「の」という字が変に好評で(形がカワイイか何かの理由で)、特に必然性なくやたらに使われているそうで、現地を知る人々には常識かも知れないが個人的には初めて見た。 また原語は全く知らないが、「私、かわいい?」という字幕のところは「我可愛嗎?」と言ったように聞こえた。「可愛」は漢字圏の共通語なのか。ちなみに「真心」は日本語のまごころというより“誠実”というような意味らしい。  [2022/06/04追記] 上では劇中の抗議行動が「危なっかしく見えた」と書いたが、その後に「私たちの青春、台湾」(2017)という映画を見た結果、この映画も劇中年代というより製作当時の社会の雰囲気を反映していたのかも知れないと思った。ただしその後のことを考えると、やはり場合によっては危ないというしかない。
[DVD(字幕)] 6点(2021-08-07 08:25:37)
309.  パンダ・コパンダ 《ネタバレ》 
時代背景からいえば、第二次大戦後の国共内戦で大陸を追われた国民党勢力が、台湾島と附属島嶼だけの状態で国連安全保障理事会の常任理事国として「五大国」の扱いを受けていたが、1971年に諸国の思惑がらみで代表権を失って国連を去り、1972年には日本も国交を断絶した(来年で50年)。代わりに国交が生じた大陸側から記念としてパンダ2頭が送られて来て、1972年11月から上野動物園で公開が始まり大人気になったが、そのような情勢のもとでこのアニメが作られたことを今回再認識した。 明らかに国家戦略のために使われているにもかかわらず、パンダ自体は現在も絶対善のように思われているようだが、それはこの時代に形成された国民意識の影響かも知れない。国民一億総panda huggerということだ(言いすぎか)。  当時は自分も見たのかどうかわからないが、3つ下の従妹が見て大喜びして、歌の冒頭部分をやかましいほど繰り返し歌っていたことは憶えている。何が面白かったのか不明だが、部外者なりに考えると、主人公の少女が父親に甘える立場と、小さい子に甘えられる立場の両方を兼ねるのが豪華な設定だったかも知れない。 序盤の幸せな時間も長くは続かず(全体で30分しかない)、やがて大人社会からの脅威が及んで来て、最後は別れの寂しさを残す終幕だろうと予想していたら、意外にも奇想天外な結末だったのには驚かされた。完全に現実を度外視してでも、見ている子どもらの期待を裏切るまいとする制作姿勢だったらしい(感動的だ)。 そのようなことで、今回見てもそれほど悪くない映画だとは思った。なお主人公の少女が、昔のアニメにしては表情豊かで躍動感もあるのはさすがということか。得意の逆立ちをする時に、ちょっと溜めてから伸びる場面があったのは芸が細かい。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-05-01 08:50:36)(良:1票)
310.  ダブル・ビジョン 《ネタバレ》 
1000年前の道教の予言がもとで現代に起きた連続殺人事件を、台北市の刑事とFBIの捜査官が協力して解明していくミステリー調のホラーである。 全体的に陰鬱で不穏な劇中世界ができており、一応は21世紀なので大企業のオフィスなどはそれなりに現代的だが、特に警察署内が日本でいえば昭和の刑事物のようで20世紀色が濃厚に見える。若干くどい感じの背景音楽が流れるのも古風な印象を出している。 ホラー要素としては、不気味な死に方が連続するのは予告の通りだが、そのほか突然の壮絶な殺し合いもあったりして驚かされた。また「双瞳」というものの見せ方はうまくできている。  謎解き部分は実はよくわからなかったが、主人公も犠牲者になるのかと思わせておいて、実は別の役割だったという意外な展開だったらしい(よくわからない)。永遠の命を求めていた真犯人は、最終的には主人公のせいで目的を達せられなかったのだろうと思うが(よくわからない)、実はそのことも含めて予告されていたと思えばいいか(よくわからない)。また同時並行で主人公の家族物語が展開し、これもすっきり納得はできなかったが、ラストはしみじみした印象で悪くなかった。 また個人的に面白かったのが主人公とアメリカ人の異文化交流だった。自分としては「レッドブル」(1988)を思い出したが、人物の関係性は当然違っており、この映画では科学捜査と俗信の対比を見せる形になっている。御守りなら日本の警察にもありそうだが、本来は赤い守り袋でなければならないらしい。「アメリカにも悪霊…」「科学捜査は…」「長年FBIで働いてれば…」には笑った(共感した)。 そういった感覚のギャップを含めてコミカルな場面が実は結構あり、これは日本でいえば呪怨シリーズのようなものかも知れない。笑わそうとする意図を前面に出さず、真面目な顔で可笑しいことを言ってみせる印象なのは結構好きだ。ただ「ママに感謝」がわかりにくく、終盤ではこれが主人公の妻に向けた言葉になっていたらしいが意味不明瞭なのは残念だった。現地の言葉は全く知らないが謝謝你媽と言ったのか。  出演者については主人公役が香港、他は台湾の役者のようである。怪しい少女役は林涵Hannah Linという人で、当時本当に17歳くらい(16歳?)だったらしいがなかなかの迫力を出していた。また個人的にはショートヘアの監察医や主人公の妻が(年齢はともかく)なかなか可愛い感じで好きだ。
[DVD(字幕)] 6点(2021-04-24 11:29:19)
311.  死命 ~刑事のタイムリミット<TVM> 《ネタバレ》 
先に原作を読んだがあまりいいとは思わなかった。このドラマもかなり原作準拠のようで、不自然だとかちょっと無理がある感じの設定は大体が原作由来である。ただしTVドラマ化に当たって、見てわかりやすいよう予告を入れたり言葉を足したりの工夫をしており、またラストに少し救われる場面も加えている。有名なクラシックの曲が使われていたのは別にいいとも思わなかったが、これは亡き妻のためのテーマということだったか。  登場人物には共感しにくいところがあるが、主人公に関しては仕事自体が妻への献身だったという事情、及び最終的に死への恐れを解消できた理由はわからなくはない。犯人の方は人格的に理解不能だが、主人公が死を恐れなくなった理由がそのまま犯人に死を恐れさせたということではあるらしい。過去を切り捨てようとしても結局いわば最後の審判があるということで、自分のこととして考えてもこれは実際に不安要因かも知れないと思った。一瞬ホラーのようで怖い場面もある。 犯人もそれなりの事情があったわけなので、嘘まで言って恐れさせる必要はあったのかとは思うが、しかし社会に一定数いると思われる「死ぬことさえ恐れていない人間」を強いて恐れさせることが本当の罰だという主張かも知れない。地獄が実在するとはいえないが、パノラマ視現象というのは実際あると言われているので、このドラマがオカルトに依存しているわけではない。  登場人物に関してはそれほど違和感がない。若い刑事はコミカル寄りでこの役者らしいいい味を出している。また主人公の娘については、ダンサー志望の印象が少し弱まっているのが残念なのと、目が大きいので両親には似ていなかったが、父親に対しては反発するだけでなく、ちゃんと親子であろうとしていることが表現されていた。原作のディズニーランドはみなとみらいの観覧車になっていたが、この場面での娘の様子には和まされる。終盤でもこの娘との関係で少し泣かされるところがあり、視聴者の目からはこの人が一番いい役に見えた。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-03-27 11:34:08)
312.  フェイクプラスティックプラネット 《ネタバレ》 
ネットカフェ住まいの風俗嬢の物語だが、殺伐とした世相の一部を切り取って社会への怒りや憎悪を煽りたいわけでもなく、人間の心を縛るもの(いわば縄)を解いて前へ行かせようとする、意外に良心的な映画だったようである。 ただし素直に受け取れない箇所が多いので絶賛はできない。不思議な偶然が起きるというのは予告されているので意図的なわけだが、あまりに話が出来すぎていてさすがに偶然の範疇から外れてしまい、「シンクロニシティ」が単なる言い訳のようでもある。また消火器で殴るとか露天の場所に電気器具が置かれているとか拳銃が出現するなど、表現の自由度が高すぎるのは突っ込まずにいられない。これは舞台演劇風ということか。 ほか「占い客」(役名)の再登場の場面では、感謝するなら3万円くらい置いていけ、と言いたくなった。  終盤の占い師の場面も言葉でまとめ過ぎのように感じられる。目で見えるものは信用できないなどとは独り善がりな偏屈者の言いそうなことで、主人公も困惑気味の顔をしていたが、ただし物事には表に出た部分だけでなく必ず裏があるというか、背景事情を含めて全体像を掴めといえば一般的な教訓ではある(実際よく思う)。主人公もそのうち同じように思う機会があるかも知れない。 また「今を大事にする」というだけでは抽象的だが、未来を決めるのは現在だというのは当然といえる。ラストの雨は、未来が過去から現在の延長上にあるとも限らず、これから何が起こるか本当にわからないという意味なら悪くない。 そのほか宗教的なものに関しては、日本では頭ごなしに全否定する人々も多いと思うが、この映画はわりと柔軟な態度だったらしい。神の存在など当てにすべきものでもないが、悪いことを悪霊のせいにするよりなら、よかったことを神様のおかげと思うのは健全とはいえる。またキリスト教の聖書をまるごと受け入れろともいえないが、その時々で役に立つ/心に染みる言葉を抜き出してかみしめるのはいいかも知れない。  出演者については「劇団青年座」の役者が中心らしい。主演の山谷花純さん(エイベックス)は一人の人間のさまざまな様相を幅広くカバーしており、結構いろいろな顔が見られたが、特に黒縁メガネは新鮮だったかも知れない。 ちなみにどうでもいいことだが、劇中で印象的だったスカイツリーの見える場所は足立区ではなく、台東区浅草の言問橋の近くのようである。
[DVD(邦画)] 6点(2021-03-20 14:53:41)
313.  N.Y.マックスマン 《ネタバレ》 
イケメンで固めた特撮変身ヒーロー物のようで(一応大人向け)、アメコミのヒーローが実体化したようなものらしい。同じシリーズの3作目だが、続編はなかったようなので三部作の最後ということになる。 初代と二代目のヒーローは東京で同じTV局に勤める兄弟という設定だが、今回の三代目はなぜかニューヨーク在住ということになっている。つまり題名の「N.Y.」とはアメリカのニューヨークのことで、冒頭では本物の空撮映像なども出ていたが、舞台挨拶によると撮影は全て東京の100m以内で収めたようなものらしい。実際見てもほとんどTV局の屋内で撮っている感じだった(テレビ朝日の中?)。  内容としてはヒーロー物ながらコメディ調で笑えるところもなくはない。またレギュラーで出ている悪者のせいで起きた事件の謎を、主人公の探偵が解明していくミステリー調の展開のようだったが、結局最後はありがちな結末で終わってしまう。敵が普通の人間なので、変身ヒーローとしての活躍があまりないのも不足感がある。 ただし終盤で、今回の主人公だけが持つ特殊能力が初めて明らかになり(ほとんど反則)、そこまでの間で不可解に見えた場面の真相を明らかにしていくのは少し意外で面白かった。どうせ安手のしょうもない映画だろうと思っていたが、いかにも低予算でTVドラマ風ながら、最終的な印象は意外に悪くなかった。  なお若手の顔ぶれを見ると、仮面ライダー/スーパー戦隊の出演経験者に出番を用意するための映画のようでもある。自分がこれを見たのは「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015~2016)の「かすみ姉」(百地霞/モモニンジャー)が出ていたからで、この映画では印象の全く違う役どころだが、演者の山谷花純さんはもともとこういう感じの役が多い気がする。今回は「許さない」と「キモ」の表情が見どころか。 ちなみに二代目ヒーローの相手役の内田理央という人は今回も主要人物で出ているが、初代ヒーローの婚約者役である山本美月という人はほとんど見えなかった。またどうでもいいことだが、千葉雄大という役者はいつ見ても年齢不詳だ(この時点で28歳と本人が言っていた)。
[DVD(邦画)] 6点(2021-03-13 20:22:33)
314.  劇場版 動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー 未来からのメッセージ from スーパー戦隊 《ネタバレ》 
スーパー戦隊恒例の“VS”シリーズとのことで、その時点での現役戦隊(動物戦隊ジュウオウジャー)が前任戦隊(手裏剣戦隊ニンニンジャー)と共演し、そこに放送開始前の次の戦隊(宇宙戦隊キュウレンジャー)が予告的に姿を見せる形になっている。 また今回はスーパー戦隊シリーズ通算40作記念が謳われており(ジュウオウジャーが40番目)、ドラマ的にもここで戦隊の歴史が途切れそうになる状況をわざわざ作っておいてから、メンバー同士のつながりと、歴代戦隊の応援のおかげで未来につなぐことができたという形にしている。結果としては「スーパー戦隊恐るべし」ということで大変結構なことだった。 ニンニンジャーは今回ゲストの扱いだろうが、アカニンジャーとその息子と父親の3世代が揃って親子のつながりを見せつけるので、現役戦隊よりかえって強い印象を残していた。主役のはずのジュウオウジャーが荒唐無稽な忍術で振り回され気味に見えるところもあり、現役戦隊もまだいろいろ学ぶべきものがあるのだろうと思わせる。 なお序盤の段階で、次の日に死ぬ運命だった男に息子がいるのはなぜか、という疑問を持たされたままラストに至る映画だったが、最後に真相が明らかにされた場面では、本当にこんな話でいいのかと唖然とさせられた(あまりにいい加減)。しかしニンニンジャーの最後を飾った前回のFINAL WARS(2016)のあと、メンバーがそれぞれの道を歩み始めてからの後日談のようなものとすれば、その間に意外な事情の変化があっても不思議でないといえなくはない。それにしてもこのオチにはかなり呆れた。  主役のジュウオウジャーは前回のVS映画で姿を見たことがあるが、今回はトラの人が色っぽいのが目についた。サメの人は性格がきつそうな感じかと思ったら、女子だけ(スーツアクター)の場面では女の子っぽい動きを見せていたのが微笑ましい。 またニンニンジャーは人格的な軽さが目立つようだったが、この緩い感じがやはり結構心地よく、本放送開始から6年も経って今どきこのニンニンジャーが好きになって来た。個人的にはかすみ姉のファンだが、この人の出番としては「ずっとあなたのことを疑っていたんです」の微妙な表情が面白かったのと、「ナーイスです!」がかわいい。 ほか未来のアカニンジャーの子役はけっこう凛々しい顔を見せていた。父親よりよほどまともな人物に見える。
[DVD(邦画)] 6点(2021-03-13 20:22:30)
315.  ゼロポイント 《ネタバレ》 
高校生(男)を主人公にした若者向けの物語で、同名の原作小説がある。劇中高校は仮名だろうが原作者の母校がモデルのようで(Gustav Adolfi Gümnaasium)、原作者の実体験を反映しているらしいが、本人は映画公開後の2017年に32歳で死去したというのが悼まれる。 映像的にはわりと現代的であか抜けた感じで、登場人物の心理を明暗で表していたのはわかりやすい。題名は高層住宅の窓から身を乗り出した時点のことだと思えばいいか。  主人公はもともと家庭に問題があったのに加え、転入した学校では同級生に迫害され、さらに学校外でも踏んだり蹴ったりの目に遭わされるので、見ている方も嫌になって途中でやめたくなる。それでも我慢して見ていると、終盤に至って事態が次々好転していくのは都合良すぎだったが、そこにこの映画のメッセージが詰まっていたらしい。 まずは言うべきことを言って自分の意思を示すとともに、周囲に理解者を作ることが重要になる。一方で攻撃に対しては適切な反撃が必須であって、暴力に対しては実力行使で、悪意ある虚言には公明正大な反論で対抗するが、陰湿な相手には悪をもって悪を制する手もある。さらに違法なことには法的な対処もありうるるわけで、そのようにして自分の立場を確保することで、自分で自分を支える自信が持てるということだと思われる。 当初は学校内のいじめがテーマかと思ったが、最終的には今後の人生を賢く生きるにはどうするか、主に若年層向けの処世訓を語る映画のようになっていた。極めて真面目な映画で結構だったが、ただし最後の一言は言い過ぎかと思った。あるべき姿を示すというよりは、自分ならどうするかを考えるきっかけにするための映画かも知れない。 ほか「エリート学校」の実態(卒業生含む)などこんなものなので信用するな、という皮肉もあったように見える。また終盤で差別的な発言(恐らく現地感覚で最高度の)があったのは必然性が不明だったが、世界に蔓延するポリコレに対抗しようとする反骨精神の表れかと思ったりした。  登場人物に関しては、主人公が走ることで精神状態の更新を図っていたようなのはいい習慣かも知れない。また主人公の仇敵(嫌な顔だ)が、多数派工作で主人公を孤立させ攻撃を集中させようとした卑劣な行動は嫌悪するしかない(よくあることだが)。 ほかどうでもいいことだが、スウェーデン語のjagのgは発音しないことを思い知らされた。また字幕に関して、舞台になったエストニアの首都Tallinnは「タリン」と書くのが普通だろうが、字幕ではそのほか「タルリン」「タリーン」などと書いて一定しないのは間抜けな印象だった。翻訳ソフトにでもやらせたのか。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-02-27 11:05:10)
316.  みかんの丘 《ネタバレ》 
製作国はエストニアとグルジア(今でいうジョージア)とのことである。エストニア人の登場人物はエストニアの役者が演じており、エストニア人同士ではエストニア語だったらしいが、他の民族と話すときは、いわば広域の共通語としてロシア語を使っていたように聞こえた。  この周辺については馴染みがないので、劇中の紛争に関しても、例えばグルジア対ロシアの関係と、アブハジア対グルジアの関係は相似形ではないのかといったことはよくわからない。しかしこの映画の立場として、要はロシアが背後で煽ったから紛争が起きたのだという前提なら、とりあえずロシアを悪者にすればいいのでアブハジアは敵扱いしなくて済む。登場人物としてアブハジア人も出て来ていたが、危険人物のようで実は何気に話の通じる地元民らしかった。一方でロシアに対しても、あからさまに名指しで反感を煽る形には見えなかったので、基本は融和的な姿勢の映画だったらしい。 それにしてもいまだに紛争が解決しない状況で、グルジア政府も支援してこういう映画ができたということは、グルジアとしてアブハジアを奪還する意志はもうないということなのか。紛争の頃には金がなくて映画も作れなかったそうだが、この映画は今やEU加盟国(NATOも)になったエストニアと共同で、欧州評議会の文化支援基金の支援なども受けて作られており、ロシアなどはさておいて、今後はそういう方面との関係を当てにしていける情勢なのかも知れない。 以上に関して、別に現地情勢に詳しくはないのでこの映画から勝手に思っただけである。  映画自体のテーマとしては、国家や民族に関わりなく人間同士はわかりあえる、ということだろうが、基本的に素直でストレートな作りのため、あらかじめ思っていたことを再確認して終わりという印象だった。新しい発見があるかどうかという面からすれば、今までこういうことを考えたこともない素朴な人々(登場人物の若者のような)向けに、西欧感覚で教え諭す啓蒙映画のようでもある(または西側への勧誘映画とか)。ちなみに歴史教育の害悪などは嫌になるほど思い知らされている。 なお主人公が現地を離れないでいた理由ははっきり言わなかったが、「自分たちの土地を守る」と言った息子のために、その土地に縛られてしまった状態だったのか。誰かが埋まった場所からはもう離れられないという感覚が、当事者にはあるのかも知れないがよくわからなかった。ほか「全部作り物だ」という台詞は一般的な戦争映画への皮肉だったかも知れない。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-02-13 08:58:07)
317.  デス・レター 呪いの手紙 《ネタバレ》 
大まかにいえばサスペンス調の展開が面白かった。主人公の男だけだと本人の精神状態の問題かという疑いが生じて読み取りが面倒になるが、都合よく好奇心旺盛で強気の刑事が相棒についてくれて客観性が保たれたので安心できる。また「本当の罪は、逃げたこと」というのも道徳的・教育的観点からは好印象で、ロシアにも普通に倫理や良心といったものがあるのだなと思わされた。ラストの巻き戻しは都合良すぎに見えたが、時間が前後すること自体は序盤から予告されていたので許容範囲ではあり、結構後味のいいエンディングになっていたのは悪くない。 また映像的には、ロシアといえば寒々している、という勝手なイメージそのままの寒色系の世界ながら、現代モスクワの都市景観が美しく映像化されており、壮麗な摩天楼群(「モスクワ・シティ」というらしい)と孤独な登場人物が対比されていたようだった。  問題点としては、どうも結果として統一感に欠けていた気がする。最初と最後はつながったようでもあるが、単純にわかりやすく感動的な「本当の罪」の部分は別系統の話だったのを、少々細工して付加しただけのように見える。 また納得感の得られない箇所も多い。例えば受取人の元夫は単なる連絡役のようだったが、そういう役職のようなものを置く必然性はあるのか、また配達人でもないのに呪われたのはなぜかといったことが不審な点として残る。また少女はいわば告発人らしいが、そのように都合よく罪人を発見する仕組みがあらかじめ準備されていたのかも疑問に思われる。そもそも配達人が手紙を見てしまうというのが何か宿命的なことのように捉えられていたのも不自然だった(18世紀の男は一応「金目の物」目当てだったと説明していたが)。 見る側のせいかも知れないが詰めが甘いようでもあり、それでも結局は後味のいいエンディングでごまかされた気がした。  その他細かい点では、主人公がパーティ会場前でタクシーを降りた時、車の窓に悪役の顔が映ったのは怖くはないが少し驚かされた。同じように序盤でPCのディスプレイに刑事の顔を映した場面もあり、こういうのが好きなのかも知れない。 またこの映画で特に忘れがたいのはその刑事が非常に魅力的に見えたことで、これで「女だったのか」などとは冗談でも言えない。この人のかわいい+きつい顔を最後にもう一度見ることができ、切ない感覚を残したのも後味のいいエンディングに貢献していた。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-02-06 11:17:53)
318.  ハイサイゾンビ 《ネタバレ》 
沖縄の映像関係者が地元で撮ったホラーである。場所はかつてコザ市と呼ばれた沖縄市だが、今も中心街はコザというらしく、「コザ花園(かえん)」の看板とか「ゴヤ中央市場」の表示が見えたのがご当地感を出している。ちなみに「ゴヤ」とは、米軍のキャンプ・コザが置かれる前からあった「胡屋」という地名を残しているものらしい。 市や観光協会も協力している地元PR映画だが、最初の公園だけが明るい雰囲気で、市街地に入ると人もいなくてゾンビばかりの寂しい街ということが印象づけられてしまう。しかし商店街がゾンビであふれかえる場面がかつての賑わいを想像させ(そういう意図か?)、また横丁のような所でエロいゾンビが登場して(「踊るゾンビ」演・水井真希)男ゾンビの股間に何気に触っていたりしたのは、こういう風俗面でも栄えた過去を偲ばせるものがあった(そういう意図か?)。  内容的には「カメラを止めるな」(2017)と比較されているが(制作年はこっちが早い)、別にワンカットで撮っているわけではなく、映画撮影中に本物のゾンビが現れたという設定が共通している。一応は本物のホラーだがコメディ色が強く、人がゾンビにやられて血が飛んで、登場人物の衣服が(レフ板も)どんどん真っ赤になっていくのは笑ってしまう。とにかく血が飛ぶ映画という印象だった。 物語としては、崩壊の兆しが見えた自主映画制作グループが、千載一遇の機会を得て再び映画への情熱を燃やす話になっている。人でなくなってもなお映画を撮ろうとする(生きようとする?)執念を描いており、最後はいわばゾンビの、ゾンビによる、ゾンビのための映画になってしまったかと思ったが、一応は人間ドラマとして、いわゆる映画愛のようなものも感じられた。いかに低予算に見えても嫌いになれない/好きにさせられるという点でもカメ止めに近いかも知れない。 キャストはみな沖縄在住の人々のようで、当然ながら地元市民もエキストラとして大挙出演している。劇中劇のヒロイン役の人(演・川満彩杏)がなかなか可愛いと思ったが、途中でいったん退場してしまったのは残念だ。この人がゾンビに噛まれて意識が薄れていく表情は好きだ(少し惚れた)。
[インターネット(邦画)] 6点(2021-01-23 08:59:12)
319.  花嵐の剣士~幕末を生きた女剣士・中澤琴~<TVM> 《ネタバレ》 
NHK・BSプレミアムで2017/1/14に放送したドラマである。現在はNHKオンデマンドで見られる。 主人公の中澤琴という人は幕末に剣士として活躍した実在の人物である。出身は上州(現在の群馬県沼田市)で、このドラマ製作の前年には地元で「お墓が建立されました」とのことである。剣も強いが長身で美形の“男装の麗人”的人物だったようで、ひところ言われた“歴女”好みのキャラクターということかも知れない。伝えられているとおり薩摩屋敷で踵を斬られる場面が入っており、また一生独身だったとされることの背景も何気に語られていたようだった。 この主人公が参加した「新徴組」というのは、京都の新撰組と並ぶ江戸の浪士組だというのは知っていたが、それをまともに取り上げたドラマは初めて見た気がする。鮮やかな紅色のかたばみ紋が見えたほか、「おまわりさん」の語源だったことにも触れられていた。  物語は、幕末に京都に集められた浪士組が後の新撰組と新徴組に分かれたところから始まる。主人公が兄とともに新徴組に加わり、江戸で活動してから戊辰戦争を経て上州へ帰郷するまでを扱っており、三田の薩摩屋敷への討ち入りが全体の山場になっている。なお開墾に従事する場面はない。 ドラマ的には、主人公が自分と剣とを切り離せない状態から、自分が何のために剣を生かすのかを悟る過程になっていたらしい。薩摩方が起こした騒乱で、庶民が泣かされるのを見かねて参戦したのは心正しい人物像の表現になっている。「剣は、いつかそれを捨て去る時のために使う」という台詞もあったが、少なくとも国内的にはそれが実現して終わったことになる。 なお浪士組を集めた清河八郎という人物のことは実はよく知らなかったが、「攘夷とは…暮らしだ…」という台詞からすると立派な人物だったらしい。攘夷というと過激なようでも、本意はそのように解されるということなら共感できる。その意図が兄を介して主人公に引き継がれたようで、それがまた上州に伝わる「法神流」にも通じるところがあったのかも知れない。  登場人物としては坂本龍馬なども顔が出ているが、沖田総司の兄に当たる人物も新徴組にいたとのことで重要人物の扱いになっている。主人公はきりっとして嫌味のないのが好印象で(少女時代から強そうだ)、「見とれてしまった」という台詞は意味不明だが少し笑わせた。ほかにも葭町の姐さんとか訳ありの女とか千葉道場の娘とか人物が多彩で楽しめる。終盤で出た甥の表情も面白かった。
[インターネット(邦画)] 6点(2020-12-26 15:29:55)
320.  ファンタスティック・プラネット 《ネタバレ》 
最初のうちは嫌悪感が勝るが、見ているうちにこの世界の変な描写自体が最大の見所かという気はして来た。変な生物や変な現象を変なキャラクターが自然に受け入れている変な世界ができている。明瞭な地形のない平原に変なものが散在している風景は、自分としては諸星大二郎の異世界ファンタジーを思い出した。 特に変な生物描写にはストーリー上の必然性もなく力が入っていたようで、粘液を落とすとかハサミをガチガチするとかハエ叩きのようなのとか、危険そうでいて危険なのかわからないのが多いのは笑う。普通に他の動物を食うのもいたが、食虫植物のように見せておいて実は捕えて殺すだけなど、こんな連中で生態系など成り立つのかと思った。アニメながらも可愛いものは出て来ず、また死んでいく生物を可哀想と思うまでもなく、ただ無心に生きて死んでいくのは現実世界と同じだろうから、悪趣味に見えても特に悪気はないようでもある。 青い巨人も基本的に気色悪い連中で、最初に主人公を救ったのは一応可憐な少女だったのだろうが(ナウシカ?)、そのうち可愛く見えて来るかというとそれほどでもなかった。科学技術も奇想天外だが、人間絶滅作戦のためにいろいろ考案していた新兵器は、害虫駆除を目的としたものとしては大変よくわかる。ちなみに各種動植物のサイズを見ても、この世界の人間は本当に昆虫のような存在だったらしい。  物語としては、要はかつての植民地の住民をフランス人に置き換えた話ではないかと思った。最初は昆虫のように扱われていたが、やがて教育を受けた者が中心になって植民地支配を離れたという、実際の世界史的な流れを背景にした展開に見える。わりと素朴なヒューマニズムが背景のようでもあるが、逆に植民地時代には本当に住民を昆虫のように思っていたのか、と突っ込まれそうではある。その後も巨人と一緒に住む人間もいたとのことだったが、後々トラブルを生じないよう共存してもらいたい。 なお人が戦う代わりに「闘獣」に戦わせるのは人道的かと思ったが、結局人は殺されてしまい、残った獣までも殺されていた。生命あるものを全て大切に、という文明的な状態には至っていないらしい。
[ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 6点(2020-12-05 08:29:49)
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