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目隠シストさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2251
性別 男性
ホームページ https://twitter.com/BM5HL61cMElwKbP
年齢 52歳
自己紹介 あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

2024.1.1


※映画とは関係ない個人メモ
2024年12月31日までにBMI22を目指すぞ!!

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341.  トロール・ハンター 《ネタバレ》 
本作を観て、『クローバーフィールド』で私が抱いた違和感の正体が判明しました。それは“モキュメンタリーは、リアリティを増す手法である”との“勘違い”です。例え話をします。金色の仏像があったとしましょう。一人は金で出来ていると主張し、もう一人は真鍮製だと白状しました。どちらの話が信用できるでしょうか。答えは後者。だって私は仏像が真鍮である事を知っているのですから。ニセモノを本物だと主張する行為には“嘘”がありますが、ニセモノをニセモノと白状するのは“真”ということ。つまり『クローバーフィールド』は真剣に嘘をつき過ぎたのだと考えます。結果、かえって嘘が協調されたと。ところが本作はどうでしょう。着ぐるみ感タップリの熊に、即死と思しき攻撃を受けてもピンピンしているハンター。嘘がモロバレなのです。最初からバレている嘘は、もはや嘘ではありません。観客が騙されていないから、素直にエンターテイメントを受け入れられる不思議。というワケで、『クローバー』よりも高い評価をつけさせていただきます。モキュメンタリーにこそ、茶目っ気が必要なのだと思いました。そういう意味では、ダチョウの上島を主役に据えた嘘ドキュメンタリーシリーズは、正しいモキュメンタリーの在り方なのかもしれません。
[DVD(吹替)] 8点(2013-02-09 19:58:22)
342.  ロボット 《ネタバレ》 
『マトリックス』『マスク』『スターウォーズ』等、元ネタと思われる映画は数知れず。エッセンスの拝借やオマージュは満載です。しかしながら総体的には、唯一無二のオリジナリティを感じさせてしまうのが凄いところ。コメディかと思えば、格闘アクション。はたまたラブロマンスと見せかけてのバイオレンス。最終的にはヒューマンドラマですか。彦摩呂なら「映画の幕の内弁当や~」と叫んでしまいそう。目まぐるしく変わる物語のテイストに頭がクラクラしてきますが、一貫しているのは馬鹿映画だということ。凄まじい熱量が映像を通じて伝わってきました。インド映画恐るべし、です。二の腕逞しいヒロインも気に入りましたが、やはり主演のラジニカーントの存在感は抜群です。サングラスにメッシュ入りの色黒中年親父が徒党を組む画のシュールなこと。こりゃ夢に出てきますな。日本でリメイクするなら、松方弘樹か梅宮辰夫にお願いするしかありませんね。
[DVD(吹替)] 8点(2012-12-01 19:54:52)(笑:1票)
343.  ライフ・イズ・デッド 《ネタバレ》 
スーパーの店内でごみを持ったまま立ち話をしてしまった消子が、店長から呼び出されて注意を受けるシーンがあります。この場面は何の為にあるのでしょう。後に消子に解雇を言い渡す店長の性格を表現しておく伏線?あるいはゴミをUDVに感染している兄に見立てたメタファー?いいえ違います。単なる日常の一コマです。それが素晴らしい。料理で例えるならパセリ。料理を引き立てる名脇役。このシーンも同じです。例えばドラマの中に知人や地元の風景が出てきたらテンションが上がるでしょう。普段目にする(見た気がする)光景は、観客を作品世界に引き込む力を持っていると考えます。画面の中の世界と、自分の世界が繋がる感覚。荒唐無稽な設定でありながら、現実の社会問題を扱っている作品にとって、リアリティは生命線です。あっても無くても構わないような、些細な1シーンがそんな役目を担っているのは凄い事じゃないでしょうか。終始緩めのコメディの空気を纏いながら進む物語に、起伏はありません。淡々と、粛々と、予想通りの結末へ向かいます。正直、娯楽作品としての面白さはありません。でも悪くないのです。本気の家族愛が其処にはありました。いい映画だったと思います。キャストも好評価。吉高由里子と見紛うルックスの消子役・ヒガリノはこれから要注目。化ける可能性大です。お母さん役の円城寺あやも良かったです。しほの涼もハマり役。病的なまでの極細ボディが役に立ちました。そしてお父さん役の小林すすむ。大ヒット作『踊る大捜査線』にも出演していますが、正直印象に残っていません。自分世代にとってはヒップアップの“目立たない人”。でも本作は違いました。上手いとは言いませんが、渾身の演技だったと思います。氏の代表作だと胸を張れる映画かと。最高のパセリ俳優に敬意を表し、謹んで+1点献上いたします。
[DVD(邦画)] 8点(2012-11-06 20:26:06)
344.  デイブレイカー 《ネタバレ》 
“太陽で焼かれる”、“人血を求める”等、ヴァンパイアのメジャーな性質だけでなく“鏡に映らない”という極めてオカルトな特徴まで押さえているのはポイント高し。通常物理攻撃が無効だから、銀の矢を放てるボウガンなのですね。ハイテクノロジーを誇る近未来社会の中で描かれる正統派のオカルトホラー。えも言われぬ魅惑の世界観が広がります。一匹のコウモリから始まったという吸血鬼病。奇しくもそれは、人間にとって究極の夢“不老不死”を叶えるものでした。“人間を辞める”という犠牲を払ってでも、手に入れる価値のあるもの。製血会社の社長のように、自ら望んでヴァンパイアになった人間も少なくないはずです。また、ヴァンパイアが一定数(駆逐不可能な数)を超えた途端、人間を辞める決断をした者が多数いたであろうことも想像に難くありません。食物連鎖の頂点にいる事の重要性を、マジョリティであることの恩恵を、その座を脅かされて初めて人間は気づく。この設定にはリアリティを感じました。あなたにとって一番大切なものは何ですか。あなたが人間である証はありますか。冒頭、自らの命を絶った“老いぬ少女”の絶望を感じ取れるかどうか。観る者の価値観が問われます。ラスト、ただ吸血鬼病治癒の希望だけでなく、人類再生への具体案(自爆テロ方式ですが)を提示した点も評価させてください。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-24 17:56:34)(良:1票)
345.  ゾンビ処刑人 《ネタバレ》 
(本文で結末に触れています。未見の方はご注意ください。)邦題の元ネタとなったのは、言わずと知れたトロイ・ダフィー監督の『処刑人』。人気作品あやかり系(パクリ系)邦題は、セールスポイントの無いB級映画を売り込むための常套手段。駄作臭プンプンです。ところがナメてかかるとカウンターパンチを食らうこと必至の快作ゾンビ映画でありました。DVDパッケージにずらりと並んだ映画祭受賞歴も納得。さて、物語は戦場にて命を落とした主人公が、人間ならざる者として再び戦場に戻るまでを描いています。“人間ではなくなった”主人公が“人間の倫理観”で生きよう(?)と足掻く姿は、まるで峡谷の綱渡りの如く危ういもの。でも当人はその事に気づいていません。踏み外したら最後、ただ落ちるだけなのに。人なら死ぬ高さ。でもゾンビだから死にません。いや、死ねません。これが何を意味するのか。生きるのは義務。死ぬのは権利。権利を行使するためには、まず義務を果たす必要があるのだと思います。アウトサイダーである主人公の眼を通じて“世界の理”が、そして“人間の業”が浮かび上がってくる仕組み。後味は決して良くありませんが、観終えてこの結末しかないと思えます。時に可笑しく、時に哀れで、時に醜悪な主人公に我が身を重ねる事で、自分自身と向き合ってみては如何でしょう。ゴア描写も容赦ない真っ当なゾンビ映画ですが、この切り口は新鮮。『ゾンビ』という概念の秀逸さと奥深さが味わえる一作だと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2012-10-12 18:52:20)
346.  夢売るふたり 《ネタバレ》 
物語は主人公夫婦の市場での仕入れシーンから始まりました。そう、モノを売るためには、まず仕入れなければならないのです。それがままならぬモノならば、今手にしている分を手放すしかありません。タイトルは『夢売るふたり』。夫婦は自らの夢を切り売りしました。夢を叶えるためのお金を手に入れるために。この矛盾。鮮度の落ちた魚を調理したくないと言った主人公が、職人の命ともいえる包丁で、刺青魚を捌く羽目になる皮肉。清々しいほどの因果応報の物語でありました。大人のための寓話でした。主演を務めたのは、今や連ドラの主役も張るほどの人気者、阿部サダヲと、今最高に脂が乗っている映画女優、松たか子。人気実力を兼ねそろえた2人をキャスティングした時点で、本作の成功は5割以上約束されたようなもの。事実、期待通りの演技を披露してくれました。もっともこの成功を10割にまで引き上げたのは、やはり監督の手腕なのだと思います。これほど“手堅い”映画を観たのは久しぶりでした。それにしても『告白』といい、『ヴィヨンの妻』といい、ここ数年の松たか子の充実ぶりは驚異的です。今、怖い(そして強くて弱い)女を演らせたら、彼女の右に出る者はいないでしょう。黒目パワー恐るべし。以下余談。初めて札止め満員というものを体験しました。先に『鍵泥棒のメソッド』を観ていた自分は出足が遅く、自由席の前から2列目に。字幕でなかったのは助かりましたが、流石に疲れました。でもビッグなおっぱいはなかなかの迫力。これなら『ヘルタースケルター』も…
[映画館(邦画)] 8点(2012-09-21 18:28:27)(笑:1票) (良:1票)
347.  大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇 《ネタバレ》 
血の池も針の山も、あくまで空想の産物。さて、本物の地獄はどんな場所だったのか??地獄へのハネムーンという着想は実にユニーク。血の池じゃなくて、ビーフシチューの温泉。赤鬼も青鬼も角を切り落とすのが流行とは。この荒唐無稽なブラックコメディを成立させたのは、見事なキャスティングに拠るところ大かと。竹野内、水川コンビの力の抜け具合は絶妙でしたし、樹木、片桐、荒川の役作りは完璧でした(樹木希林なんて日野日出志の漫画のキャラクターそのまんま。)また最近大活躍の橋本愛も好印象。顔面真っ青でもその美少女ぶりが全くスポイルされないとは、いったいどれほど美人なんじゃい!物語に起伏があるわけでもなく、笑いも感動も大した事は無いですし、結構つくりは安普請だったりもするのですが、“この映画何となく好き”と言いたくなる不思議な魅力がありました。そうそう、音楽も気に入りました。本気でサウンドトラックを買いたくなったのは『嫌われ松子の一生』以来かも(注:サウンドトラック売ってないじゃん!)。本来の自分基準では6点が妥当なのですが、思い切って8点付けます。決して8点級の完成度ではありません。でも好きなものはしょうがないので、ご勘弁を。
[DVD(邦画)] 8点(2012-08-22 18:15:12)(良:2票)
348.  アンノウン(2011) 《ネタバレ》 
(ネタバレあります。未見の方はご注意ください)物語を味わう上でポイントとなる部分。それは、“何故主人公は危険を冒してまで、暗殺計画を止めようとしたのか?”だと考えます。そもそも自分が携わっていたミッション。阻止する必然性はありません。それに未だ口封じされる危険性が残る中、余計な事はせず速やかに雲隠れするが得策のはず。しかし、彼はそうしませんでした。其処に意味があると考えます。ジーナは言いました。「大事なのは、今何をするかよ」と。過去を捨てるため、新たなアイデンティティを獲得するため、マーティン・ハリスという名の男(=かつての自分自身)と決着をつける必要があった。果たして結果は爆発炎上。彼の過去も綺麗に吹き飛んだ様子。生まれ変わりを望む人間にとっては、これ以上ない結末でした。アイデンティティを失った男と、IDの無い女は、新たな人生を手に入れました。『96時間』のリーアム・ニーソン主演。“頼れる男”が本作では散々な目に合います。彼の枯れた風貌は、所謂アクション俳優に比べ親しみ易い。感情移入が必須となるサスペンスでは大切な要素です。オチに新鮮味はありませんが、よく練られた脚本が心地よい作品でした。シュワルツェネッガー主演の某SF映画と類似点が多くありますので、比較してみるのも面白そうです。
[DVD(吹替)] 8点(2012-07-14 09:08:26)
349.  ストーン 《ネタバレ》 
「人生に首根っこ押さえられたか」ジャックに放たれたストーンの言葉が胸を抉ります。チンピラに見透かされる屈辱。でもジャックにはどうする事も出来ません。図星だから。自分でも薄々分かっていた事だから。自分の中に生きるための“基準”が無いこと。そんな空虚な人間が、偉そうに罪人に指導する滑稽さ。気付いてしまったら、もう元には戻れません。彼は絶望したに違い有りません。終着点が見えてきた残りの人生、このまま逃げ遂せたかもしれないのに。ところが最終18番ホールにきて、アドレスにさえ入れぬ大醜態。そんな時、彼の耳に聞こえてきた神の音叉は、ハエの羽音。ジャックはこれから自身の“基準”を手に入れるつもりでしょうか。これは痛い物語でした。ジャックが陥った“熟年男性の危機”は、他人事とは思えぬリアリティを持って自分の心を捉えました。仕事と家庭。積重ねてきた“真実”の価値に自信が持てるかどうか。そういう意味では、紛い物だろうとペテンだろうと、基準を手に入れたストーンは間違いなく強い。羨ましいとは思いませんが。実際に人生の土壇場で躓くとしたら、きっとこんな“小石”なのだろうと思います。今のうちから、足腰をしなやかに鍛えておかねば。くわばらくわばら。宗教色が強いため、自分にとっては少々敷居が高い作品ではありましたが、本筋は実にオーソドックスなヒューマンドラマであったと思います。ミラが予想外に上手くてビックリ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-07-10 20:14:16)(良:1票)
350.  さや侍 《ネタバレ》 
妻に先立たれた野見は、抜け殻でした。それは本身を持たない鞘と同じ。だから“さや”侍。辛い現実を耐えかねた男は、あらゆることから逃げ続けます。背中を斬られ、頭を撃たれ、首の骨をへし折られても、なお死ななかったのは、死という現実からも逃避していたから。しかし30日の業を終えた彼は、自分という刀を取り戻します。愛娘や門番たちと芸を考案し続けた日々。何かを生み出すパワーが、あるいは奇妙な友情が、親子の愛情が、男を甦えらせました。現実と向き合った侍が、逃げ続けた日々の清算をしようとするのは当然の流れ。斬られたら、撃たれたら、へし折られたら、死ぬ。その摂理に、遅ればせながら従います。切腹は必然でした(劇場版『クレヨンしんちゃん』の某作品と同じと理屈と考えると分かり易いです。あるいは『ジョジョ』のブチャラティ)。鞘は大切なものを守るためのもの。娘を守る父親は鞘と言えます。最期に父は、托鉢僧にメッセージを託しました。それは娘に対する全ての父親共通の願い。精一杯の恋文です。竹原坊主の歌声が沁みました。若君を笑わせるため、罪人に課された30日間に及ぶ1日1芸の笑い。大衆から日々新たな笑いを求められ続ける天才芸人・松本人志と、さや侍・野見の姿が否応も無く重なります。ポイントは、本作で要求されているのは爆笑ネタではないという事。かといってセンスが無ければ、観客から容赦ない批判を浴びてしまいます。監督松本が芸人松本に課したハードルはかくも高い。本作で披露された“決して笑わせてはいけないネタ”の数々、自分はお見事だと思いました。監督自らが主演をこなした前2作と体裁は違うものの、一貫しているモチーフは“笑い”です。本作では松本氏のお笑い構造論と観客論を窺うことが出来ました。何をしゃべってもOKな、完全に出来上がった空気の中、一言も口にせず果てた野見。そこに松本人志の求める笑いの美学が、あった気がします。
[DVD(邦画)] 8点(2012-03-16 19:58:10)(良:2票)
351.  ミスター・ノーバディ 《ネタバレ》 
“右のお菓子と左のお菓子、どちらを買う?”悩ましい選択です。結局、少年はどちらも買いませんでした。確かに今買わなければ“可能性”は残ります。“希望”と言い換えてもいいかもしれない。でも悩んでいる間にお金を無くしてしまったら、元も子もありません。これは人生における課題を端的に表しているエピソードでした。そして本作で伝えたかった事の全てだった気がします。父の元に残る選択、母と共についていく選択、どちらが正しかった?ニモ老人の回想はどれが本物?あるいは全部ニモ少年の空想?この答えを探すことにあまり意味は無いと考えます。大切なのは、自分の選択が正しいと信じること。いや、受け入れること、でしょうか。モラトリアム(執行猶予)も結構だけれど、残された人生の持ち時間を消費していることも忘れてはいけない。ミスター・ノーバディは、誰でもありません。それはすなわち、命ある全ての人間の事でもあります。宇宙が収縮を始め、時間が逆行するとしたら、それは希望でしょうか絶望でしょうか。
[DVD(字幕)] 8点(2012-03-13 18:28:39)(良:1票)
352.  少女たちの羅針盤
話下手な人の話は、とかく長いものです。それは伝えたい事を全て語ろうとするから(自戒を込めて)。思いが強いと説明過多になってしまう心情は理解できますが、実際は逆効果です。相手の心に届けるためには、ポイントを絞り、相手に考えさせ、想像させる余裕を与えることが肝要と考えます。自身の思いを相手の心で再現してもらう余地を用意するのです。それは映画にも言えること。本作の脚本には、その心得が在りました。まるで程よい間隔の庭園の飛び石を踏む心地良さ。肝となるエピソードは丁寧に描きつつも、省略できる説明は大胆にカット。観客は見えない部分を、自身の頭で補足します。観客の想像力を信頼している良い脚本でした。ミステリーとしては真相部分が弱いものの、謎解きのヒント・伏線・ミスリードは存分に織り込まれているので不満は感じません。本格派ミステリーの風格でした。もっとも本作の見所はミステリーパートにあらず。少女たちの心の内を描いた青春ドラマにありました。対立、葛藤、混乱、そして模索…。彼女らは、その未熟な心と体で、もがき苦しみます。でもそれは何かを創造するために必要な痛み。自分の居場所を確保するための試練。決して無駄な苦しみではありません。現状維持に四苦八苦しているおじさんからすると、それはとても眩しく、羨ましい光景に思えました。人間、若いときに、動けるときに、行動しておかないと後悔しますね。忽那汐里や成海璃子ら実力派の若手女優の熱演が観る者の心を打つ、青春ミステリーの佳作でありました。
[DVD(邦画)] 8点(2012-03-10 18:59:11)(良:1票)
353.  HUNGER ハンガー(2009) 《ネタバレ》 
犯人は、かつて生き延びるために母親の肉を口にした経験を持つ男。幼心を襲った衝撃は少年を狂わせるに十分なものでした。彼は自身の行動が正当であった事の裏づけを求めて、拉致監禁という名の“実験”を繰り返します。しかし何度共食いの現場を目の当たりにしても、彼の気は晴れません。それはそうでしょう。“反駁”を受けぬ理論に自信など持てようはずが無い。彼が欲していたのは、極限の飢餓状況においてもなお「人の肉は食べない」という選択をする者の反証です。そんな中、ついに現れました。犯人が捜し求めていた答えを持つ者が。女医がドラム缶の蓋に書いたメッセージは、明らかに犯人をおびき寄せるための餌。それは彼とて承知のこと。だからメッセージを確認するまで、実に3日間を要しました。でも、もう抗えない。長年捜し求めていた答えが其処にあるのです。蓋に書かれていたメッセージとは「太陽に会える」。それはまさしく一つの回答であったと考えます。太陽とは希望。生きること、そのものが希望。生きるために絶望を手にした犯人の胸に、この言葉はどう響いたか。彼がその思いを口にするのを遮るように「私の勝ち」と女医。そう、犯人には心情を語る事すら許されないのです。多くの人の命と尊厳を踏みにじってきた事への報い。極論を言うなら、彼は自動車事故で死ぬべきだったのだと思います。絶望するために生きるくらいなら、希望を抱きながら死ねばよかった。そうすれば無駄な血が流れずに済んだのに。井戸から這い出た女医が目にしたのは眩い陽の光。勝者の頭上に希望が降り注ぎます。倫理も観念も吹き飛ぶ極限状態の中、人が狂っていく様を見事に描いてみせた本作。肝となる人肉食の描写はグロテスク過ぎず、かといってヌル過ぎもせず、的確な表現方法であったと感じます。ワンシチュエーションで100分のドラマを成立させた監督の手腕はお見事。設定に若干の不具合はあるものの、この完成度なら文句はありません。ただ、犯人の動機説明については明らかに過多であったと思います。本来得られるはずの深みと余韻を目減りさせるほどに。其処だけが惜しかったです。
[DVD(字幕)] 8点(2012-02-12 20:59:13)
354.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 
監督の処女作『その男、凶暴につき』への原点回帰とも言える超バイオレンス映画を想像していたのですが、予想は大きく外れました。ブラックユーモアなんて生易しいものではなく、完全なるコメディでした。THE・ヤクザコント。口を開けば「バカヤローこのヤロー」って、お前ら荒井注か!って、何度ツッコんだことやら。今どき居るはずもないステレオタイプな旧式ヤクザを、オールスターキャストがノリノリで演じています。よくもこれだけ味わい深い顔の役者を揃えたものだと感心します。(何故寺島進ちゃんがいない?きっと出たかったでしょうに。)殺したり殺されたり(椎名の殺され方のみちょっとエグいので×ですが)みんな本当に楽しそう。大いに笑わせてもらいました。『みんな~やってるか!』より遥かに完成度の高い“笑い”があったと考えます。キャッチコピー『全員悪人』は勿論ブラフ。本当は『全員馬鹿』が正しい(あるいは『全員荒井注』)。これほどまでに、ヤクザを格好悪く描いた映画を自分は知りません。何なら、教育映画として不良高校生たちに見せたらいいと思います。自分達がいかに滑稽か気付く事でしょう。こんな変化球を投げてくるとは、さすが北野監督。素晴らし過ぎます。続編を作る気になったのも頷ける快作でありました。この出来なら大御所から人気俳優まで続編のキャスティングに困る事は無さそうですが、個人的には死んだはずのキャストを再度起用して欲しいです。それがコントの流儀。石橋蓮司のヘンテコマスクと國村隼のベロチョンパは天丼でお願いしたい。以上、皮肉でも冗談でもない、マジ感想でした。
[DVD(邦画)] 8点(2012-02-09 19:28:22)(良:5票)
355.  必死剣 鳥刺し 《ネタバレ》 
兼見と別家の対決、及び多数の家臣たちとの中庭での戦い。剣捌きの良し悪しは素人には判別できませんが、兼見の気迫は伝わってきました。執念が、兼見を家老の下まで辿り着かせたのだと思います。下げ尾を切り落とし、口に咥える演出も冴えていました。必死を表現し、かつ鞘も必要無いという覚悟の表れ。“鳥刺し”とは相手の柄に切先を差し込む技術をさし、“必死剣”とは自らの命と引き換えに相手を絶命せしめる剣と理解しました。兼見という捨て駒を上手く利用しようとした家老。キレ者です。思惑通りに兼見は別家を退けました。しかし家老は人間の心を軽んじ過ぎました。組織にとっては駒であろうと、一人の人間。その矜持の高を見誤ったが故に、家老自らも命を落すハメに。保科は言います。連子が居なくなっても藩政に改善はみられないと。連子を殺めた時点で兼見は命を捨てる覚悟だったのですから、最期に藩最大の癌を取り除く事が出来たと考えれば、救われるというものです。あとは無能な君主が早期に隠居することを祈るのみ。人の命を奪うという事は、自らも同じ事をされても構わないということ。その覚悟は必死剣の理念にも通じます。道理を無視した連子と家老は報いを受け、兼見は道理に従ったという結末でありました。気がかりは里尾。傍からみれば縁談を進めていた方が幸せだったように思えますが、果たしてそうでしょうか。幸せの価値は本人が決めることです。少なくとも里尾はその意思を持っている女。兼見が迎えに来るとの約束を果たせぬであろう事は、最初から分かっていたはずです。でもその思いが嬉しくて、でも切なくて、彼女は泣いたのだと思いました。兼見の忘れ形見と共に、彼女は生きていく。ただ願わくば、思い出の中を生きるのではなく、今を、これからを、生きて欲しい。兼見もそう願っているはずです。正直トヨエツがこれほどやるとは思っていませんでした。殺陣もさることながら、実直な侍役がよく似合っていたと思います。トヨエツは現代劇よりも時代劇の方が向いているのでは。鑑賞済みの藤沢周平原作映画の中では『たそがれ』以来久々に満足できた作品でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2012-01-25 18:59:04)
356.  リトル・ランボーズ 《ネタバレ》 
国を愛したように、国からも愛されたいと願ったランボー。本作の小さなランボーたちの気持ちも同じです。愛する家族から愛されたいということ。家族が機能していないウィルとリー・カーター。似通った境遇にある2人が惹かれあったのは必然だった気がします。フランスのインチキモテ男とその仲間をも巻き込んで、2人のアウトサイダーが作り上げた『ランボウの息子』は、神編集ながらも客観的にはダメダメでした。もしコンテストに出品していたとしても賞は取れなかったでしょう。しかし心に響きました。その映画には愛がありました。少年たちが心の底から欲していたもの。劇場のスクリーンを前に涙を流すリー・カーターにもらい泣きしました。「今日はオレの人生で最高の日だ」そんな言葉が言える日に、そんな言葉をかける相手に出会えたことに、2人とも感謝しなくては。おめでとう、ランボウの息子とトラウトマン大佐。実を言うと、観始めた当初は楽しめるかどうか不安でした。子供の喫煙とか、頭上の貯金箱をボウガンで射る件とか。でも中盤のデフォルメ表現(撮影中のハード過ぎるアクション、フランス野郎関連のエピソードの数々)が、現実感を少なからず緩和してくれていたと思います。おかげで純粋に物語と向き合う事が出来ました。それにしても主役2人のキャラクターは最高。特にリー・カーターが素敵でした。顔つきが、もう憎たらしい。でもそれが次第に愛おしく思えてくるから不思議なものです。見事な子役たちにやられた映画でありました。
[CS・衛星(吹替)] 8点(2012-01-10 18:26:11)(良:1票)
357.  96時間 《ネタバレ》 
シュワルツネッガー主演の『コマンドー』と同じフォーマットながら、かの作品がシュワの大味な演技とバカアクションで深刻さを打ち消してしていたのに対し、本作の方は至ってシリアスです。同じく娘を持つ父親として感情移入しまくりで、手掛かりが途切れそうになる度に胸が潰れる思いをしました。娘のためなら「エッフェル塔も壊す」と言い放つ主人公。その言葉に嘘偽りはありません。常軌を逸した行動をとり続けます。でも目には目を、違法には違法で対抗するしかないと思わせる脚本が上手いです。例えば元同僚の妻を撃つ件。彼女に非はありません。完全に遣り過ぎ。しかし元同僚は汚職について関知しないと言いました。家族のためなら金の出所は気にしないと。その理屈が通じるなら、主人公も娘を救うために手段を選ばずとも問題ない事になります。少なくとも元同僚は主人公を非難する資格がありません。彼の役名が、また気が利いていました。ジャン・クロード。言わずと知れたハリウッドアクションスターと同じ名前。窮地にヒーローは助けてくれないという皮肉。しかもあれだけの殺人を犯しておいて、主人公にお咎め無しとは。元同僚の罪滅ぼし?あるいは友情?いや保身のための事件隠蔽でしょう。悪のヒーローはとことん悪い。ご都合主義と揶揄されてもオカシクない展開の連続も、全ては主人公の実力と執念が起こした奇跡。納得出来ました。ハッピーエンド、万々歳です。エピローグは馬鹿親丸出しで、ちょっと苦笑い。でもこんな幸せな苦笑いなら、いくらでも!
[DVD(字幕)] 8点(2012-01-07 19:58:25)(良:1票)
358.  ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い 《ネタバレ》 
ハメを外し過ぎたラスベガスでのバチェラーパーティー。消えたのは花婿と昨夜の記憶。小さな手掛かりから次の手掛かりを見つけ、次第に明らかになっていく失われた12時間の謎。体裁は完全なミステリーです。それも結構良く出来ています。伏線の張り方は丁寧ですし、トラブルとその解決のテンポが小気味よく、退屈しません。8万ドルを工面するエピソードと花婿の居所の処理がやや雑な気がしましたが、物語の整合性を問題にする映画では無いので気にしなくてOKでしょう。爆笑タイプのコメディではありませんが、ジャブ的な笑いを絶え間なく入れてくる感じです(エレベーターでイチャついてた親父がヅラっぽいとか、どうでもいいよ!)前述の物語の進行のテンポと相まって、実に観易いと感じました。そして何より、キャラクター造形が気に入りました。イケメン風、歯もげ医者、髭デブ。まずルックス面でキャラを際立たせます。コレは意外と重要なポイント。特に洋画では人物の描き分けが弱いと判別に手間取り、物語に集中できません。もちろん人柄もいい。憎めない奴ばかりだから、素直に笑えます。ストリッパーちゃんも良い娘でしたが、個人的にツボだったのは仮名カルロスくん。基本「笑う」「泣く」「凝視する」だけですが、釘付けでした。病院で聞き込みをしている時の顔が超キュート。なお劇中で語られなかった部分は、エンドロールで謎解き。最後の最後まで観客を楽しませてくれます。このフォーマットは使いまわしが効く(いい意味でマンネリが通用すると思う)ので、続編も期待出来そうです。いや~楽しかった!
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-10-31 19:57:09)(良:1票)
359.  カラフル(2010) 《ネタバレ》 
『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』等の演出、監督で高い評価を得てきた原恵一監督。完成されたパッケージを離れて挑んだオリジナル作品『河童のクゥと夏休み』は、“原恵一とは何者か”が垣間見える映画ではありましたが、一作品としての完成度は十分なものではなかったと考えます。そこで本作。原作本はあるそうですが、冒頭に上げたシリーズ作品と比べれば制約は無いに等しい。“原恵一色”がどれほど出せるものか、興味を持って拝見しました。まず気付いたのは、作画部分が改善されたこと。アクの薄いキャラクターデザインという点では変わらないものの、洗練された印象を受けました。また、『クゥ』ではある種の苦味として認知されたリアルな描写(例:血飛沫など)が、本作では物語と遊離することなく表現出来ていたように思います。感心したのは真がひろかをラブホから連れ去る場面。2人が息つくまで、実に20回近くカットを割ります。それは長い。しつこい程に。でも、この長さは主人公が現実から逃げた距離。ちゃんと意味があります。そしてこれが原映画のリズム。“原恵一アニメのかたち”を本作でしっかりと打ち出せたことは、素晴らしいと思います。メインキャストに非声優を起用しながらも、違和感なく仕上げたキャスティングセンスも評価させてください。みんなオカシクて当たり前。いろんな自分が居ていいんだ。自身を肯定することが、生きる力になる。良い映画でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-10-10 21:22:09)(良:2票)
360.  宇宙人ポール
『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』の主演コンビには絶対の信頼を寄せているものの、監督がエドガー・ライトでは無いという1点において、いくばくかの不安を抱いて鑑賞に臨みましたが、杞憂に終わりました。いつもの映画愛溢れるパロディ&オマージュに嬉しいやら胸を熱くするやら、大変楽しいひと時を過ごす事が出来ました。特に素晴らしかったのが脇役たちです。宗教女にお馬鹿エージェント2人組。愛すべきサブキャラクターが活躍するコメディにハズレはありません。『僕らのミライへ逆回転』もそうでしたが、こういうお遊びに付き合ってくれるシガニー・ウィーバーには本当に感謝します。そしてお疲れ様でした。ただ、冒頭に挙げた2作品と比べるとやや物足りないと感じるのも事実。ポールとの友情、グレームと宗教女のロマンス等、ドラマパートの処理が淡白だった気がします。喩えるならそうめんのようなアッサリ感。もちろん悪いワケでは無いのですが、観る者の心に楔を打ち込むような“引っ掛かり”が欲しいと思ってしまいます(当日の夜初めて食した某○古タンメンのような忘れられない何かが欲しい。好みではなかったけれど、あの味は忘れません。)そういう意味では、みんな“物分りが良すぎ”でした。『E・T』未見。『未知との遭遇』はどんな話か忘れた。そんな自分でも楽しめたのですから、意外と間口の広い作品かもしれません。本作がキッカケで『ショーン~』や『ホット・ファズ』を観てくれる人が増えると嬉しいです。(2011年9月18日。したまちコメディ映画祭in台東『映画秘宝まつり』・浅草公会堂にて鑑賞)
[映画館(字幕)] 8点(2011-09-19 21:28:38)(良:1票)
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