361. ロゼッタ
嫌がらせのように役者のアップ以外見せないカメラ。完全な制作者の自己陶酔だけの世界です。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-05-03 00:20:31) |
362. 県警対組織暴力
《ネタバレ》 冒頭、ヤクザ以上にヤクザな菅原文太の刑事(取り締まるどころか、「さっさと殴り込みに行け!!」などと言って通用するのはこの人だけです)。さらには、ヤクザと交渉して(というか「相談を受けて」)誰を身代わり出頭させるかまで指南してしまう。一方で、川谷さんを一躍有名にした、取調室暴行シーン。と、前半ですでにお腹いっぱいでした。どちらかといえば、自然発生的に謎の熱量が炸裂していた「仁義なき~」よりも、むしろ制作者も出演者も半ば意識してその世界を再現しているっぽい雰囲気はあるのですが、それでもこれはすでに一つの芸術です。●ただ、後半はテンションが下がってしまうのですね。満を持して登場した梅宮さんのエリート警察官(という設定)が、まあ似合わないこと。私は、真面目一辺倒と見せかけておいて、実は中身は文太の役以上にヤクザだった、という展開を期待していたのですが。それ以外にも、終盤はみんなに見せ場を作ろうとして、逆に無理に詰め込みすぎた感じ。 [DVD(邦画)] 6点(2023-05-02 00:34:26) |
363. 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
《ネタバレ》 姉のわがままぶりと自己中ぶりが際立つ格好になっているが、実はそれ以外の3人も、人格の上では強力な欠点を有している。そしてそれがピンポイントで明確に定まっている。そしてそれを表現する演出の腕は妙に優れており、また役者も生き生きした自然な演技を展開しているため、見ていて実に腹が立つ(笑)。俳優のMVPは佐津川愛美ちゃんですよねー、一番若いのに、周りの人物の存在をきっちり受け切る「扇の要の演技」をしています。●でもやっぱり、最後は妹が立ち去ったところで幕閉めにすべきで、そこから後はすべて蛇足でしょ。何というか、お蔵入りになった別エンディングを無理矢理見せられた気分です。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2023-05-01 02:32:51) |
364. 眠狂四郎 悪女狩り
《ネタバレ》 とりあえず大奥っぽいところで、お世継ぎを誰が産むか争奪戦が行われている。ここでは、当時26歳の松尾嘉代が何とも麗しい。ただし、喋ってしまうと、声や節回しは後の嘉代さんそのものなのですけど(笑)。で、このお世継ぎ話に、狂四郎が見事に絡んでいません。そのうちどこかで筋がクロスして、と予想していたら、何と最後の方までそのまんまでした。そこで強引に隠れキリシタンがどうのこうのというのを入れ込んでいますが、無理矢理つなげるために入れたのが丸わかりで、過去作での宗教絡みエピソードほどのインパクトはありません。江原真二郎の顔をぎりぎりまで隠しているのもわざとなんでしょうけど、あまり効果はないですね。大体、偽狂四郎という手法自体、過去作にもありましたし。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2023-04-30 00:08:55) |
365. 嘆きのピエタ
《ネタバレ》 本筋から脇に反れない、余計なサブの人物も出してこない、清冽ささえ感じさせるシンプルな作り方が、常に緊張感を確保している。そして、主人公についてもその母についても、役者がその緊張に耐えうるほどの芝居を確保している。よって、無謀ともいえる展開にも、「そういうこともあるかも」と思わせるほどの説得力があります。ただその反面、突然、何でそこでそんな演出を?という場面もあるんですけどね。貸金の相手がなぜかみんな似たような町工場だったりとか、なぜか最後に登場する婆ちゃんとか。あと、ネタばらしが早すぎなのももったいないです。 [DVD(字幕)] 6点(2023-04-29 00:09:09) |
366. ウォーリアー
《ネタバレ》 根性系格闘技モノとは思えないくらい、画面は終始悪い意味で暗いし、肉体の躍動や技の切れもきちんと描かれていない。また、兄弟の対立軸が中心となるはずなのに、この兄弟って、描写にほとんど差がなくないですか?家族とかの周辺人物がいないと、人物的にはほぼ区別がつきませんよ。よって、最後の対決にも意味合いとカタルシスが発生しません。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2023-04-28 00:57:34) |
367. 盲目のメロディ ~インド式殺人狂騒曲~
《ネタバレ》 盲目を装っているピアニストが、レッスン先で殺人事件を目撃してしまうという、そこだけで作品を見てみたくなる出だし。はたしてその後も、次々にネタや新展開を仕込んで、スリルを維持している。初期設定からは一点集中のコメディ方向に進んでもおかしくありませんが、作り方は比較的本格派サスペンスっぽいです。もっとも、ネタを入れ込みまくるサービス精神のためか、最後の方はぎりぎり破綻寸前にまで行っているような気もしますが、ここぞというところで話を2年後に飛ばすテクニックとそのインパクトによって、何かうまくまとめられてしまいました。 [DVD(字幕)] 6点(2023-04-27 01:27:05) |
368. 洋菓子店コアンドル
《ネタバレ》 主人公の造形がどこまでも雑で、安直。蒼井優ちゃんの芝居がこれほど空回りしている例も珍しい。江口洋介は、登場時にはなかなかの寡黙な迫力があるのに、その後物語上まったく効果的に使われていない。実は一番場を引き締めているのは江口のりこだと思うのだが、途中からは放り投げられっぱなしのようなひどい扱い。というわけで、いろいろとグダグダな内容でした。唯一ドラマ的な面白みを感じたのは、公園での「別れただろ」「別れてない」のやりとりくらいでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2023-04-26 01:54:13) |
369. ポネット
《ネタバレ》 カメラはひたすら母を亡くした少女を追い続ける。最後までほとんどそのまんま。しかし、主演のヴィクトワールちゃんの類い希なる存在感によってなぜか品質を維持しているという、何ともラッキーな作品。カメラ負けしていないというだけではなくて、そこそこの長回しにもきちんと耐えていますからね。ただそうだとすると、大人(制作側)がそこまで一人の少女によりかかって作ってしまってどうする、と言いたくもなりますが。ただし、いざ母親を出すときに、変な小細工をせず、他の登場人物と同じようにそのまま自然に出しているというセンスは良い。そして主演の彼女は、後に「ショコラ」でジュリエット・ビノシュと一緒に帰ってきました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-25 23:14:02) |
370. 誇り高き男
どうも何か、主人公の雰囲気が終始じめじめしていて(気合の入った行動をしているはずの場面でも)、盛り上がりません。失明が迫るという珍しい状況も、設定のための設定という感じで、生かされていません。それと、ヒロインの彼女も、ただ出てきているというだけで、あまり機能していないのでは。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-24 23:54:58) |
371. 奇跡の2000マイル
《ネタバレ》 入口の訓練のところで、ラクダをしっかり撮っているのがいい。大きさ、質感、じっとしているからこその迫力。動きが少ないので、カメラを振ったりカットを割ったりしてごまかすこともできません。いざ旅が始まってからは、主人公はシンプルに「ただ進む」。あえて動機や心理状態を説明しないぶれのなさ。また、わざとらしい危機も起こりません。野生のラクダも出てきますが(本当に危険なのかどうかが主人公目線=観衆目線ではよく分からないのが、かえって怖い)、解決は一瞬。この広大な砂漠にいること自体がすでに十分危機なので、そこに何か人工的なものを盛り込む必要はないのです。それがかえって生々しい過酷さを伝えています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-04-21 00:55:45) |
372. 恋をしましょう
《ネタバレ》 演芸のえの字も知らなかった大富豪が、自分モデルの役に他人のフリをして入り込んでいく、という実に魅力的な設定。なのに、その設定を全然生かしていない。この出だしなら、実際は当の本人なのに周囲は誰もそう思っていない、という認識ギャップが笑いを巻き起こすはずなのに、そのポイントがありません。結局、身分違いの恋的な方向に収束していきますが、それならあえて最初にそう設定した意味がないですね。あと、こういった作品では、舞台制作のリアリティをきっちり出してくれないといけないのですが、稽古場で周りにいる人たちが「ただいるだけ」なので、それもありません。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-04-20 02:38:58) |
373. 幸福なラザロ
《ネタバレ》 いかにもそれっぽいけど、観念的で平坦な前半はあまり面白くない。突然大展開する後半の方が、近代的な風景と主人公の存在とのギャップに加え、前半との関係を何も説明しないからこそのインパクトも手伝って、見るべきものになっています。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-04-19 01:01:30) |
374. かけがえのない人
《ネタバレ》 若き日に恋愛関係にあった男女が、その後別の道を歩んで、中年になって再会して・・・となれば、もう王道ラブロマンスとして期待高まりまくりなのですが、そのレベルにはまったく達していませんでした。まず、キャスティングが失敗してますよねー、ミシェル・モナハンだけはきちんと繊細な演技をしようとしていますが、周りがそれについていけていません。あと、若き日のドーソン君はそもそも若く見えない上に、岸田森に似ているのが終始気になります。で、ドラマらしいドラマもないままに過去と現在の双方が進み、具体的にやっているのは、男女いずれもやたらと発情期のように盛っているというだけです。●唯一、挿入曲で"Sweet Jane"(それもカウボーイ・ジャンキーズのバージョン)を選んだセンスは褒めてあげたい。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-18 01:32:17) |
375. アンドレイ・ルブリョフ
何かすごく壮大なものを作ろうとしているのは分かるのですが、内容にはほとんどついていけませんでした。 [DVD(字幕)] 4点(2023-04-17 01:16:29) |
376. 眠狂四郎 人肌蜘蛛
《ネタバレ》 そこそこ正統派時代劇っぽくなった前作からさらに一転、今回は再びダークドロドロ路線です。とにかく敵兄妹の徹底した外道ぶりというか、ほとんど人間の皮をかぶった妖怪とでもいうべきキャラ設定が強烈です。これこそ死神狂四郎の敵として相応しいといえます。脚本上の展開自体はかなり場当たり的で、それぞれやっていることは思いつきの連続なのですが、それで映画として成立してしまっているほどです。何といっても紫役が緑魔子ですよ。この時点で制作者の気合と覚悟が見えます。川津祐介も普段あまりない役に新鮮味を感じたのか、演技が充実しています。目がいっちゃってます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-04-16 01:47:18) |
377. インビジブル・ゲスト 悪魔の証明
《ネタバレ》 ある殺人事件の容疑者と、弁護士の代理でやってきた女性との室内限定会話劇。タイムリミットは尋問開始の3時間後まで。という超魅力的な設定です。構成は、出だしから予想できるとおりの「羅生門型」であり、あるやりとりが終わって別のやりとりが始まると、今度はがらりと違った様相を見せる、というなかなか凝った展開です。また、会話劇が基本でありながら、回想や時系列操作を適切に入れ込んでおり、単調に陥ってもいません。オチ自体は、伏線の分かりやすさも手伝ってかえって分かりやすいともいえますし、また性質上話の広がりも期待できない(一定の枠からは外に出ない)わけですが、それでもサスペンスとしては手堅く焦点を絞ってまとまっています。 [DVD(字幕)] 6点(2023-04-15 22:36:26)(良:1票) |
378. 続・荒野の七人
とりあえず7人集めてどこかの村人を守って悪と戦う、ということ「だけ」しか考えずに作られてしまったのがよく分かる作品。肝心の7人に個性も技術もないし、しかもそのそれぞれの処理も中途半端だし。そもそも、敵からしてあまり強そうじゃないんだよな。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-14 01:03:34) |
379. 抜き射ち二挺拳銃
《ネタバレ》 最初のところではシルバー・キッドのスタートというか背景が描かれていたはずなのに、本編に突入するとどう見ても保安官が主役になっていて、キッドはオマケ扱い。視点がぶれぶれです。そして、ヒロインっぽい女が、実は黒幕で・・・ではなくさっさとネタバレするのはある意味斬新かもしれませんが、肝心の保安官がこの女に鼻の下を伸ばしっぱなしで作戦どおり騙されまくっている(しかもラブシーンっぽいところをそこそこ真面目に撮っている)ので、マヌケなことこの上ないのです。最後に敵のアジトまで行く流れからのまとめ方も、かなり無理矢理ですね。普通にキッド大活躍、でなぜ作れなかったのでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-04-13 01:33:36) |
380. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 いや、これはびっくりしました。テーマはずばり「カンニング」、その一点がどこまでもぶれない。その上で、当初はごく素朴でシンプルな日常の一幕だったのが、いつしか国際的な作戦(!)に発展していく。中盤以降などは、その辺のサスペンス映画など吹っ飛ぶほどのスリリングぶりです。あくまでも「カンニング」からずれていないにも関わらず、です。また、どこぞのベンチャー企業のプロモーションかと思うような作戦説明シーンなど、ハッタリを堂々とぶち込んでくる姿勢にも好感です。●そしてそして、やはり主演の彼女が素晴らしい。いかにもクラスに一人はいそうな、頭は良さそうだけどちょっと近寄りがたいという風貌。この子ならこういう作戦も考えつくだろうと無理なく思えるほどの自然な存在感。そして、追い詰められたときの焦った表情なんかもしっかり表現できています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-04-12 01:04:25)(良:1票) |