21. マンディンゴ
《ネタバレ》 実はこの作品で一番凄いのって、美術部門の屋敷の作り方ではないかと思うのですよ。庭先は「何となく」草が濃く繁っていて、綺麗に手入れがされているとは言えないけど、荒れ放題というほどでもない。玄関先なんかも、微妙に散らかっている。そして、家の中がやたら暗いです。もうこれで、家全体に圧倒的な負のオーラが漂っていますし、崩壊の予兆を感じさせます。そしてこの時点で、あのラストは必然です。●だから、奴隷への支配や抑圧や虐待をゴリゴリ描写しても、作品がそれに溺れていない。登場人物がそれに負けないほどに立ち位置を確保して踏ん張っている。この作品が後世まで語り継がれることになった要因は、そのような制作側の突出したセンスの鋭さにあったのではないかと感じています。 [DVD(字幕)] 7点(2023-04-06 00:54:07) |
22. ルートヴィヒ(1972)
《ネタバレ》 観光で、ノイシュヴァンシュタイン城に行ったことがある。もう19世紀も後半という時代に、国防にも外交にもまったく何の役にも立たない美しいお城を、中世への憧れというだけの動機で、国金をさんざん浪費して作った代物であった。しかしそれだけに、その城は、向こう何百年にもわたって時の検証に耐えるであろうオタクの異常な執念を感じさせた。また、ルートヴィヒ2世という人は引きこもりの人嫌いだったのだが、そうであるがゆえに建築されたこの城が、今では世界中から観光客が詰めかける重要スポットになっているというのも、歴史の楽しさを感じさせる。つまり、ルートヴィヒ2世こそ、世界史上有数の最強の引きこもりオタクなのである。最後は臣下から廃帝扱いされて、その後間もなく謎の死を遂げたというのも、その末路にふさわしい。●で、その前提でこれを見ると、その辺が全然表現されていないのです。主人公はあれこれ悩んだりはしていますが、何かそれはハムレットかウェルテルみたいで、まっとうな悩みの域を脱してはいません。その程度では、あんなお城はできなかったはず。また、脇役にもほとんど個性がありませんし、すべてが美術負けしてしまっています。 [DVD(字幕)] 4点(2023-03-10 01:09:08) |
23. 帰って来た女必殺拳
《ネタバレ》 前2作とほとんど同じパターンの同じ内容で、そして中身はしょぼくなっている・・・。そもそも、私はこの人を守る!と言って立ち上がったはずのその人がことごとくまったく守れていないのですから、正義の味方にすらなっていないのですよね。それで最後は無理矢理、何か哀愁を漂わせたまとめ方をしようとしているんですけど、この終始軽い運びでそれは無理でしょ。 [DVD(邦画)] 2点(2023-02-27 22:58:26) |
24. ピラニア(1978)
どこをどう切ってもB級なのは、もともと予想どおりだからいいのですが・・・それでもやはり、肝心のピラニアがほとんど「見えない」のは、モンスター・パニックとしてはいかにも不十分ではないか。せめて、どこか途中で一匹だけでも回収し、生態の観察とか何とかいう口実で、そのディテールを見せる、ということはできなかったのかな。みんなが都合よく騒いでいるだけに見えます。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-02-23 00:10:16) |
25. 女必殺拳 危機一発
《ネタバレ》 前作とほとんど同じような作り方なんですけど、やっぱり前作よりしょぼくなっています。ほぼ全部が、「やってきた敵を悦ちゃんがやっつける」→「ぐぬぬ、あの小娘、今度こそ生かしてはおかん!」→「次にやってきた敵を悦ちゃんがやっつける」のループだし。それでも前作はサポーターで千葉ちゃんがいたりして、まだまともなストーリーっぽかったのですが、今作ではそれもありません(一応倉田さんがその役回りなんだろうけど、出番は少ない)。あと、医者っぽい敵の「腕切りシーン」で、折り曲げている本当の腕がしっかり映っているのはちょっと笑いました。誰か気づけよ。 [DVD(邦画)] 3点(2023-02-18 00:29:06) |
26. 女必殺拳
いや、うん、とりあえず悦ちゃんのアクションが最初から最後まで堪能できるのはいいんですよ。しかしやっぱり、悦ちゃんのアクションが輝くのは、日本時代劇ですよね。こんなにひたすら「キエーッ」とか叫びまくる香港流は、悦ちゃんの魅力を十分に引き出しているとはいえません。もっとも、歴史的には、悦ちゃんの存在を世に知らしめて、後の1人の名女優(この時点では演技力はほぼ感じられませんが(笑)。当時19歳ですか・・・)の存在の礎となったという偉大な功績はあります。 [DVD(邦画)] 4点(2023-02-17 00:26:53) |
27. 0課の女 赤い手錠
《ネタバレ》 登場人物がことごとく全員ぶっ飛んでいる。それも、いかにもな感じでぶっ飛ぶのではなくて、真剣に前向きにネジがずれているのが怖い(特に、室田のオッサンのあの楽しそうな狂気演技!)。そして制作側は自信満々で前に進んでいく。そんな感じで、ターゲットの2人目くらいまでは、はっきりいって最高でした。ただ、その後が妙に拡散してダラダラしてしまって・・・大体この主人公、後半はほとんど何もしてないのでは?主役がほとんど郷&室田になってしまってますよ。やはりここは、当初の設定どおりに、主人公に粛々と任務を遂行していってほしいところでした。ぶっ飛び映画だからこそ、ホネは大事です。 [DVD(邦画)] 6点(2023-02-14 10:28:00) |
28. 新・明日に向って撃て!
「若かりし頃」なんだから主人公2人が何か未成熟なのは別にいいし、ウエスタンというよりも裏街道青春モノではないかというのもまあいい。ただ、結局は一本の筋が見えない継ぎ接ぎ感満載の内容だし、ところどころ笑わせにかかっている箇所も、かえって浮いている。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-02-10 00:10:06) |
29. 三匹の牝蜂
《ネタバレ》 主役の3人がズベ公(←死語)設定で、「一丁やったるか!」のノリだけであれこれ突破していくという作品。という時点で予想されるとおり、何とも暑苦しくてアナーキーな内容。大体、その3人の活動のクライマックスは、「万博にやってくる客を当て込んで、女性を調達して売春管理稼業に精を出す」というものである。そして、登場人物にも制作者にも、その行動に何の迷いもない。むしろ天晴れである。もっとも、登場人物で一番安定していて、かつ一番要注意なのは、金の力で平和にお姉ちゃんを買って、満面の笑みでハッピーに去っていく左卜全爺さんだったのではという気もしないでもない。あと、和田アキ子が歌う主題歌は、隠れた名曲だと思います。 [DVD(邦画)] 6点(2023-02-03 01:16:27) |
30. 明日なき追撃
《ネタバレ》 何とも不思議な作品。主人公の保安官は、とにかく手柄を立てて、かつそれを世間にアピールしようとして、あれこれ画策します。話が進んでいっても、まったくまともにもなりませんし、格好良くもなりません。そうしているうちについに宿敵を捉えて護送するのですが、今度は着々と脱走する流れになります。あれ?これってどっちが主人公だったっけ?と思っていたら、ある意味衝撃的というか、不条理系のラストに着地します。主人公が全然格好良く描かれなかったのも、そこでやっと分かります。ただこういう定石外しのひねりを入れてくるのだったら、宿敵についてはもっと丁寧に描き込むべきでした。単に外しただけに見えてしまいます。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-12-13 01:29:38) |
31. オルカ
シャチの動きとか撮り方などは、制約の多い環境の中で頑張っているとは思う。ただ、肝心の進行の部分が、攻撃も単調で人間側の反応も平坦なんですよね。尺の割に、えらく長く感じました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-12-03 21:31:58) |
32. 人間の証明
《ネタバレ》 まあ、突っ込みどころは一目で満載なんだけど、とりあえず、ストウハネタとか、恭子の過去とか、シュフタンの過去とか、結局の真相とか、そういうネタ割の数々を序盤から次々にあっさりと流してしまっているのは、見る側をなめていると思われても仕方ないのではないか。小山田と新見の側から見たストーリーがばっさり落とされているのも、手抜き以外の何物でもない。つまり、出来としては原作冒涜でしかないということです。映画的な見どころは、結局、最初のところでの刑事衆の揃い踏みくらいでした。あとはやっぱり、ホテルマン役で登場、昔取った杵柄の森村先生でしょうか(笑)。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-11-22 00:24:38) |
33. ボルサリーノ
とりあえず主役の2人を画面に立たせたらそこで力尽きてしまったのか、すべてが中途半端なのです。2人が何がしたいのかも定まってなくて筋がフラフラしている上、何か能力を発揮するわけでもないので、実は格好良くもありません。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-11-19 01:02:23) |
34. ジャスティス(1979)
ストーリーがどうこうという以前に、そもそも法制度自体(手続関係とか倫理面も含む)の描写が滅茶苦茶で(あれが実態に即しているとすれば、実態が滅茶苦茶でしかないということ)、これはコメディ映画かと思ってしまうくらいでした。しかし、制作者は真面目な作品にしようと思っているっぽいので、主演がパチーノでなければ、悲惨なことになっていたのではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-11-03 23:19:51) |
35. キング・オブ・マーヴィン・ガーデン -儚き夢の果て-
《ネタバレ》 ジャック・ニコルソン扮するDJが、兄からハワイでの事業に誘われて・・・という設定。派手な事件や展開が起こらず、地味に淡々と進んでいくのは、この年代ならではという気もするが、それにしても何も起こらなさすぎ、というか話がさっぱり前に進まない。兄が言っていることが胡散臭いのは、最初の段階で誰にでも分かっているはずで、そこで延々と立ち止まられても、と思ってしまうわけです。最後だけは当時のニューシネマっぽくて味わいがありますが、そこだけでした。バースティンとその娘という特徴的なキャラも、もう少し使いようがあったのでは? [DVD(字幕)] 4点(2022-10-31 03:15:14) |
36. スーパーマン(1978)
《ネタバレ》 みんなが知っているスーパーヒーローが、悪と戦って大活躍!みたいな単純な内容を予想していたら、どこかの星のウダウダから始まって、その後も話がまったく前に進まない。それにしてもこの前置きは長すぎる上に、本体の展開にもつながっていません。一方で、ジーン・ハックマンの悪役も、コメディキャラっぽくしようとする演出と、無限の悪でも表現できるハックマンの持ち味がかみ合っていません。結局、センスを感じさせたのって、路上強盗を撃退する一幕だけでした。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-10-15 00:37:48) |
37. 炎の舞
《ネタバレ》 戦時中の若い男女の悲恋話。のはずなのだが、切なさもなければロマンスもない。ヒロインは因習のある平家の落人村育ちという設定なのだが、それならば俗世間を離れた超越感みたいなものを出してくれなければなりません。百恵ちゃんのような王道国民アイドルそのものの人に合うわけがないですね。友和は友和で、召集されたり負傷したりまた召集されたりと、設定に埋没しているだけ。その割には、能のシーンとか何とかの本筋とあまり関係ないところにもウェイトが置かれているので、結局、制作者は2人に何をさせたいのかが不明なまま終わってしまいました。 [DVD(邦画)] 2点(2022-09-27 23:42:12) |
38. 泥だらけの純情(1977)
お嬢様の女子大生が百恵、孤独な一匹狼ヤクザが友和。という初期設定だけですべてが終わっていました。百恵は落ち着きすぎてて19歳の女子大生にはとても見えません、と書こうと思ったら、当時の実年齢は18歳かい!そっちの方が驚きだ!そしてもちろん友和はヤクザには見えません。二人がどう惹かれあったのかも不明ですし、途中からはストーリーもネタ切れ気味で、形だけのシーンを重ねて最後まで行ってしまっています。 [DVD(邦画)] 4点(2022-09-22 00:13:06) |
39. キャッチ22
常道を外した路線コメディを狙ったのかもしれませんが、各登場人物がわーわー騒いでいるようにしか見えず、結局面白くない。つまり、型があってそこから外すから笑いになるのであって、すべてについて外しっぱなしだったら、意図的なものしか感じません。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-07-14 01:55:16) |
40. リオ・ロボ
《ネタバレ》 列車の護衛者と襲撃者がその後タッグを組む話というから、どんな複雑な心理劇が、と思っていたら、まったくその真逆でした。つまり、単に分かり合って結束するだけです(笑)。体育会系学園青春ドラマばりの単純さです。そのご都合主義はその後も一貫しており、お約束のように美女が絡んできて、しかも目的地に潜入後はキャラかぶりも恐れずにその美女は3人になって、途中から加わるオッサンも、老化に伴うミスなどまったく起こしません。というわけで突っ込みどころは満載なのですが、力を抜いて楽しく見る分にはよいと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-06-16 23:41:16) |