21. チャイナ・シンドローム
福島の原発事故が起こった頃は、日本での原発事故は巨大地震や津波など想定を超える大規模な自然災害によって起こるものだとばかり思っていた。しかしこの映画では、人為的災害によっても起こりうると改めて感じさせられた。原子炉を構成するほんの一部の部品にも粗悪なものが紛れ込むと大変になる。最近の日本では名の通った一流大企業の品質検査データ改ざんが起こっていて、大変恐ろしいことだ。映画は発電所内の対応がとてもリアルなのに対して、TV側の対応はちょっと現実離れしているように思った。 [DVD(字幕)] 7点(2017-12-12 21:13:44) |
22. ニューオーリンズ・トライアル
米国の銃社会と陪審員制度を知る上では大変興味深いし、映画自体も結構おもしろいのだが、この映画には「いや待てよ}という部分が多すぎるように思う。裁判は公正でなければならないのに、陪審員コンサルタントという制度があればどう見てもお金持ちや大企業が有利になる。その有利な条件で、勝つためには手段を選ばない悪徳コンサルタントが票を大金で買うというのは納得いかないし、陪審員もまた法律で裁くのではなく、感情(同情)で裁いている。それに偽名でで陪審員になれるというのも変だ。 [DVD(字幕)] 5点(2017-12-05 21:53:23) |
23. 赤ひげ
船越英一郎主演のNHKドラマが始まったので、再度黒沢監督の映画「赤ひげ」を見直した。さすがに赤ひげ三船敏郎は堂々とした貫禄で文句のつけようがないが、ならず者相手に腕をへし折るとは少々行き過ぎかも・・・。加山雄三もこの頃は若大将としてのイメージが強く、演技力はまだまだという感じが強かった。ところがどうしてどうしてこの映画では、三船に決してひけを取っていない。香川京子、山崎努、杉村春子など他の出演陣も超豪華だし、二木てるみはさすがと思う。 [映画館(邦画)] 7点(2017-11-28 08:57:36) |
24. 殿、利息でござる!
タイトルと銭のちょんまげ姿の主人公から、安っぽいコメディとばかり思っていた。見るきっかけとなったのは監督が中村義洋だったからである。他の作品を見てこの監督ならば間違いないだろうと思って見たが大当たりだった。単に宿場を救った実話物語だったら平均点並だったが、冒頭のシーン再現から親子兄弟の感動物語なったのは大変良かった。それにしても、殿様相手に金を貸して利息を取るとはどこからどうやって出てくる発想か。おまけの羽生結弦にはとんだびっくり。 [DVD(邦画)] 9点(2017-11-27 20:55:30) |
25. アメリカの悲劇
セオドア・ドライサーの小説で1951年制作の「陽のあたる場所」より先に映画化された作品。原作と同名の「アメリカの悲劇」となっている映画なのだが、どこがアメリカの悲劇なのかこの映画では分かりづらい。これでは米国資本主義の悲劇を描いた原作者が怒るのも無理はないだろう。物語の中心となる主人公と女性二人も後年の映画と比べて魅力がない。ただ、裁判シーンは迫力がある。 [DVD(字幕)] 4点(2017-11-10 17:09:00) |
26. シンデレラ(1976)
シンデレラ物語というとシンデレラ自身が主役で王子は脇役なのだが、この映画ではシンデレラと王子が対等というかむしろ王子の方が主役といった感じがする。王室内も描かれ、国王や皇太后など他の映画ではあまり見られない役もコミカルに登場する。そして重要なテーマとなるのが政略結婚、王子の結婚は国と国の争いを避けるための問題として扱われる、つまり単純なロマンティックなファンタジーでないのが他の映画と違うところだ。しかし何だかんだといっても、シンデレラと王子が踊るダンスシーンは印象に残る。ところで主役のジェマ・クレイブンだけど、この映画で突然現れてその後どうなったのだろう。まさにシンデレラだ。 [DVD(字幕)] 6点(2017-10-21 17:41:33)(良:1票) |
27. メリイ・ウィドウ(1952)
カラーのMGMミュージカルもルビッチにはかなわない。大好きなメリイ・ウィドウだけにこの映画に期待したのだけど・・・。 [DVD(字幕)] 5点(2017-10-16 16:54:05) |
28. 日の名残り
カズオ・イシグロ氏のノーベル賞受賞で改めて鑑賞したが、やはり名作だと思う。この映画では英国貴族の執事という仕事が何たるのかを具に理解できるし、これほど忠実な人物を表せるのは小説ならばこそだ。だが映画では父親が亡くなったときの動揺など、主人公もやはり人間なのだなとかんじさせてくれる。そして私が一番印象に残ったのが、ミス・ケントンから何の本か詰め寄られたシーンだ。 [DVD(字幕)] 8点(2017-10-13 19:46:17) |
29. ミシシッピー・バーニング
冒頭の水飲み器の映像が印象的だ。元は1つなのに、2つに分かれた一方のWHITEは冷却水、他方のCOLOREDはそのままの水道水、予備知識がなくても人種差別を扱った映画だとすぐわかる。事実、映画は1964年に起きた3人の公民権運動家が殺害事件を基にしていて、米国南部に根強い黒人差別やKKKの恐ろしさを肌で感じることができる。だが、映画はこうした問題を真正目からとらえたノンフィクションものというより、たたき上げのベテラン捜査官と大学でのエリート捜査官の捜査が中心で、理論より実践が優るということか。あとで知ったのは、実際はFBIが差別問題には消極的だったということ。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-05 20:38:39) |
30. 悲しみは星影と共に
切なく美しく流れる主題歌はとても印象的で、見る前からおおよその結末が分かるほどだ。映画はシンプルで淡々と進むが、それがリアルにユダヤ人迫害の非道さを感じさせて心を打つ。イタリア映画には純真な男の子が出てくることが本当に多い。 [DVD(字幕)] 7点(2017-09-08 19:22:42) |
31. 息子(1991)
私の大好きな山田洋次監督、好きな映画はたくさんあるが、そのなかでも「遥かなる山の呼び声」とこの「息子」は最高である。親は子供が成長し何歳になっても心配し世話を焼きたがるものだが、本当にありがたいものだとこの映画を見るたびに思う。長男は孤独になった父親を案じ嫁と共に気遣うまじめな男で、人間としては平均以上だろう。しかしそれでも親との同居生活は思うようにはならないのが現実で、前半のストーリーはそれほど感動的でもなかった。だが中盤次男のロマンスが芽生えたあたりから映画は断然面白くなる。和久井映見、なんてかわいいんだ。朝ドラ「ひよっこ」のイメージが強かったので大変驚いてしまった。あれだけかわいければ、次男同様私も聾唖者が何なんだという気持ちになるだろう。次男の真剣な思いはすぐに父親に伝わるが、このアパートでの一件は実に感動的、征子に対して父親が「あんた本当にこの子の嫁になってくれますか」と尋ね、「息子をよろしくお願いします」と言うあたりでは涙が出てしまった。 [DVD(邦画)] 10点(2017-07-30 11:04:53) |
32. サンドラの週末
ボーナスか解雇かという非情な選択も小規模な会社が経営難に陥ればあり得ないことでもないと思う。だがその選択を従業員の投票で決めるのはとんでもない話だし、解雇の当事者が他の従業員の家を説得に回るということは到底考えられない。たとえ職場復帰できたとしても人間関係がぎくしゃくしてうまくいかないだろう。そんなありえない設定にも関わらず、人物描写もいろいろで堂々と映画にしているのには恐れいる。これで何も得るものがなかったらつまらない映画になっていたかもしれないが、再投票の結果サンドラは何かをつかんだと思う。少なくとも鬱病は克服できたのでは・・・。 [DVD(字幕)] 6点(2017-07-25 16:35:38) |
33. サンチャゴに雨が降る
《ネタバレ》 9.11といえば米国の同時多発テロを指すのが普通だが、中南米諸国では1973年に起こったチリクーデターを指すらしい。世界で初となる自由選挙で誕生した社会主義政権が、米国の支援を受けた軍事クーデターによって倒されたのだ。「ミッシング」などの映画を通じてチリクーデターについては大方知っているつもりだったが、この映画はクーデターそのものを描いており、生々しさは半端ではない。また外国人記者の目を通して、アジェンデ政権の誕生から軍事政権の弾圧迫害までもつぶさに伺うことができる。なおチリ国民に呼びかけたアジェンデ大統領最後の演説は本人自身のものであり、映画を見る者にも感動を与える。映画を見るまでは、クーデター当日は大雨だとばかり思っていたが、危険が迫ったことを知らせる放送局の暗号だとは知らなかった。 [DVD(字幕)] 7点(2017-07-18 13:18:12) |
34. 終電車
実在のをモデルに、ナチス占領下のパリでの演劇界を描いた名作。演劇を上演する大変さはよくわかるが、ドヌーヴ演じるマリオンと演出家の夫ルカ、相手役ベルナールとの三角関係は微妙。どこまでが芝居でどこからが本物か、特にラストは騙されてしまった。冒頭のシャンソン「サンジャンの私の恋人」も印象的。 [DVD(字幕)] 7点(2017-07-14 17:18:08) |
35. モスクワは涙を信じない
トリュフォーの「終電車」か黒沢の「影武者」かという戦前の下馬評を見事に裏切ってアカデミー賞外国語映画賞を獲得した映画。見る機会はなかなかなかったが、HDマスターDVDの登場によって鑑賞。まずは「アレクサドラ、アレクサドラ」と何度も繰り返される主題歌がすごく印象的だ。てっきりアレクサドラという名の女性が主役かと思うと、田舎からモスクワに出てきた三人娘を中心に物語が進む。まじめで働き者のエカテリーナ、軽薄だが行動力のあるリュドミーラ、地味でつつましいアントニーナ、前半はこの三者三様の生き方が巧みに描かれ、とても鉄のカーテンで覆われた共産圏ソ連というイメージはない。前半の最後で目覚ましをかけて眠りに着くが、目覚ましで起きた後半は20年後というのもうまくできている。 [DVD(字幕)] 7点(2017-07-11 14:19:07) |
36. ホテル・ニューハンプシャー
家族を扱った小説の映画化というのは好きなはずだがこの映画はちょっと例外。前半はコミカルでほのぼのとした部分もあるのだけど、フラニーがレイプされたあたりから少しずつおかしくなり、後半ウィーンに移ってからはまったくおもしろくなくなった。たくさんの人が死んでいくのがあまりにもあっけない。 [DVD(字幕)] 5点(2017-07-05 10:42:26) |
37. ガスパール/君と過ごした季節
母親に捨てられた男と妻に逃げられた男、廃物利用の倹約家と思いきや夜はちゃっかり食糧を頂いていたんだな。この二人のぎくしゃくしながらもユーモラスに進む関係が何ともほほえましい。また二人の間に入りこんだ老婆もコミカルな一面もあっておもしろい。娘をつれた未亡人の登場によって立ち去る男、こっちの方はどこに行ってもどうにかなるだろうが、残された男の方は新しくできた家族関係は・・・。誰も来そうにないレストランはうまくいくのだろうか。不安が残った。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-27 13:53:48) |
38. タバコ・ロード
お金がない、汚い、はしたない。ないない尽くしでおもしろくない映画なのかと言うとそうでもない。ポンコツ車のパンクから始まって、義理の息子のカブ(なぜ持って来たのかわからないが)をかすめ取る浅ましさ、逃げた娘の夫に別の娘をあてがうあつかましさも笑って見過ごせる。情感豊かな作風はやはりジョン・フォード。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-20 21:42:55) |
39. 映画 ビリギャル
いくら実話に基づく話であっても、非常に嘘っぽいタイトルのこの映画は最初は見る気がしなかったが、主演が有村架純と知って軽い気持ちで鑑賞。朝ドラ「ひよっこ」の田舎娘が金髪へそ出しミニスカートのビリギャルを好演して惹き込まれてしまった。娘を信じる母親役の吉田羊もすばらしいし、塾講師の伊藤淳史もとてもいい。「ダメな教師はいてもダメな生徒はいない」のことばは衝撃的だった。学習塾の個別指導はどこにもあるが、ここの塾は子別指導、人を育てるにはその子にあった指導が欠かせないことがわかる。感動的な映画だったが父親と息子の扱いが少し不満。 [DVD(邦画)] 8点(2017-06-12 16:10:09) |
40. ねえ!キスしてよ
「アパートの鍵貸します」をはじめとして、ビリー・ワイルダー監督と脚本家I・A・L・ダイアモンドがコンビを組んだ映画はどれもおもしろい。色気があって風紀的には「ん?」と思えるシチュエーションでも、明るくユーモアたっぷりに描いているからだ。この映画は知名度は劣るかもしれないが、やはり外れではなかった。練り上げられたストーリーの上に出演者の演技がとてもいい。本妻と一日妻が入れ替わった夜に何事もなかったのか気にはなったが、DVD特典の未公開映像を見て安心した。 [DVD(字幕)] 8点(2017-06-06 14:50:45) |