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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2385
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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461.  ガメラ 大怪獣空中決戦 《ネタバレ》 
正直言って公開当時はまさかガメラがリメイクされるとは想像すらしていませんでした、それも日本怪獣映画の新境地を開くようなアプローチで製作されるとはね。 いきなり東宝のマークが映り続いて懐かしの大映のマークが出てきて、時代の移り変わりをひしひしと感じさせてくれたオープニングです。冒頭のシークエンスでは巡視艇のじまの船長に本郷功次郎、海竜丸の船長には久保明とオールドファンには感涙もののキャスティングです。そもそもガメラは日本怪獣映画史上もっとも理屈に合わない生物で昭和のシリーズではそこには全く拘りがなかったのに、超古代文明が遺伝子操作で作成した人工生物という斬新かつ妙に納得がゆく設定です。対するギャオスも超古代文明がガメラに先駆けて開発した生命体で、進化を経ないで誕生した完璧な遺伝子を持つ雌雄同体の化け物という痺れるプロフィール。オリジナル通り人間食なんですがギャオスのデザインがオリジナルより生々しくて、そのお食事作法は東宝特撮のガイラを彷彿させます。そういえばギャオスが中央線の快速電車をかっぱらって中の乗客を食べるシーンは、『サンダ対ガイラ』の羽田空港での食人シーンとカット割りが同じでしたね。 「神は細部に宿る」と言われますが、この映画の怪獣が出現することによっておこる社会的混乱を織り込んだストーリーテリングはそれまでの特撮映画になかった画期的な脚本で、この視点こそが『シン・ゴジラ』で昇華したと言えるでしょう。株式市場や為替相場が怪獣のために暴落するなんて描写は、それまでいろいろ怪獣映画を観てきたけど初めての遭遇した気がします。ガメラとギャオスが暴れるシーンでは徹底的にローアングルに拘り、それまでの怪獣映画で使われていたいわゆる“神の視点”のカメラアングルは基本的には排除されています。画造りにも拘っていて、ギャオスが崩壊した東京タワーに沈む夕陽をバックに巣作りをしているところは、まるで実写のようで怪獣映画史に残る名カットじゃないでしょうか。都市破壊シーンも精巧なミニチュアを作成して着ぐるみが破壊するというCG登場以前のテクニックの集大成が披露されていますが、公開されたのが阪神淡路大震災の直後でリアルな都市破壊を散々TVで見せられた後だけに、自分には観ていてなんか辛いものがありました。とくにガメラが東京に出現するシークエンスでは、なぜかガメラが東京まで地下を掘り進んで来て、地上はまるで地震の様に揺れるところがますます大震災が思い出されてゾッとさせられました。 ガメラにつきまとっていた「子供の味方」という臭いイメージを払拭させる意図もあってのリアル指向だったかもしれませんけど、尺も程よい長さになって見応えがある一編だったと思います。でもやはり文句が言いたいのはあのセガールの娘の大根演技だけはねぇ…彼女は最近日本じゃ見かけませんが、いまどうしてるのかな。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-07-18 22:17:56)
462.  ショーン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
ゾンビ・コメディの草分けにしてこのジャンルの金字塔です。劇中でゾンビという単語が発せられるたびに「Zワードを使うな!」とショーンとエドが向きになって怒るのがなんか可笑しい。ゾンビが蔓延し始めているのに、まったく気づかずに恋人との別れ話やエドとのしょうもないやり取りを続ける前半がとくに秀逸です。ゾンビの存在を認識してからパブへの逃避行を経てのクライマックスになだれ込む展開ではどんどんシリアスに傾きますが、デヴィッドの最期などグロ要素もしっかり盛り込んでいるのでちゃんとゾンビ映画のツボは押さえています。クライマックスの銃で自殺をとまで追い詰められてからの急転直下の解決は、まるで『ミスト』のパクりというかパロディみたいな感じすらしました。ラストのオチはこれしかないというところですが、笑ってしまいます。できればビル・ナイにもっと活躍して暴れて欲しかったところですが、フィリップがゾンビ化したときのバーバラとの車内でのやり取りは傑作です。 ロンドン上空で人工衛星が爆発して散布されたゾンビ・ウィルスがゾンビを生んだという設定みたいですが、ウィルスに感染してゾンビになった人たちが街をさ迷っている光景は、コロナ・ウイルスにロック・アウトされた時のロンドンを見せられているような感じで、ちょっとゾッとしました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-15 19:43:47)
463.  マネー・ショート 華麗なる大逆転 《ネタバレ》 
この手のジャンルの映画を観るたびに実感するのは、複雑な経済事件を判りやすく映画化することにかけてはハリウッドはほんとに上手いということです。リーマン・ショックについては、日本人はおろか最大の被害を被ったアメリカ庶民ですら良く理解していないのが現状ですからね。とは言っても、リーマン・ブラーザースやベア・スターンズと言った投資銀行の名前とヘッジファンドというものの存在などを最低限知っていないと、ちょっときついかも。 物語はサブプライムのインチキに気が付いた三組のヘッジファンドが軸になって進行します。この中でもクリスチャン・ベイルの怪演が光りますけど、やはり軸となるのはスティーヴ・カレルだということには皆さん異存はないでしょう。劇中ずっとキレまくっているかのような迫力、そういや彼が笑うシーンはなかったんじゃないでしょうか。彼らはけっきょくリーマン・ショックで大儲けするのですが、三組とも後味が悪い勝利で『華麗なる大逆転』なんてカタルシスはどこにもないエンディングです。「俺たちが勝つということは沢山の人たちが破滅することを意味するんだ」と説教するブラッド・ピットのセリフには、製作者の思いが込められていると思います。それにしても、脇役ながらも劇中でもっとも無欲そうでこんなカッコよいセリフを宣うブラピ、これもプロデューサーとしての特権行使なんでしょうかね(笑)。 恐ろしいのは、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のディカプリオが演じたジョーダン・ベルフォートが特異な人物だったわけではなく、実はウォールストリートはジョーダン・ベルフォートだらけだったという事実でしょう。そう考えると、日本の金融業界はほんと甘ちゃんです、ウォールストリートに食い物にされるわけです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-12 19:43:31)
464.  トランス・ワールド 《ネタバレ》 
予備知識は最低限で鑑賞。このプロットだけからすると、ルイス・ブニュエルの傑作『皆殺しの天使』のパクりかなと思っていたら、プラス『バタフライ・エフェクト』という凝った構成の拾い物でした。 最初三十分は正直いって退屈な展開。でも三人が認識していた自分の現在いる場所がバラバラだと判ったあたりから、俄然面白くなってきます。そして明らかになってくる驚愕の三人の関係性、ここまで来ると正直「そんなのありか?」と唸ってしまいました。なんせ低予算を逆手にとって説明や謎明かしはほとんどなしで通し、これぞまさに神様の悪戯としか思えないような展開です。この三人のキャスティングがまた意味深です。イーストウッドの息子にサム・ウォーターストンの娘、それにピル・パクストンの(遠い)親戚というひねり具合、これは劇中の三人の関係と作品のテーマを考えると、けっこう粋な遊びごごろを感じてしまいます。スコット・イーストウッドはまさに若き日のクリントそのままというルックスで、感慨深いものがありました。 ラストの展開はハリウッドお得意の“未来は変えられる”といううんざりさせられるテーゼの登場ですが、登場キャラがどんどん消滅するところはちょっと新鮮かなとも思います。でもあの人だけが生き残ったことでハッピーエンドになるという理屈は、ちょっと理解するのが難しいところです。ラストの空爆シーンのCGのショボさはやっぱ低予算だよなと再確認ですが、作品の評価を落とす要素ではないと思います。冒頭とラストに登場するお店のオーナー、なんか謎めいたキャラで印象に残りますね。それにしても、あの金庫の中には何が入っていたんだろうか?
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-09 19:57:22)
465.  4匹の蝿 《ネタバレ》 
初期アルジェントのいわゆる“動物三部作”の三本目という位置づけ。「幻の傑作」なんてコピーを臆面もなくつけて40年ぶりにリバイバル上映されましたが、「幻」になったのは権利関係の揉め事が原因で、よくある話です。そして「傑作」は明らかに誇大広告で、これにはアルジェント自身もさすがに恥ずかしいんじゃない? はっきり言って70年代に流行ったイタリアン・ジャーロの中でも多少出来が良いという程度のお話し。あのストーリーテリングでは犯人は予想外の人物ということになりますが、私の様にぼんやり観ていなければ大概ホシの目星は付きますよ。でもこの犯人の行動はツッコミどころが満載で、ご都合主義が目につきすぎます。警察の方もたいがいで、“被害者の網膜に最後の映像が焼き付いている”というトンデモ科学を大真面目に見せられるとはねえ。その残像が“四匹の蠅と言うわけですが”、ここのタネ明かしの説明も無理筋すぎるでしょ。今や昆虫好きと言えば香川照之かダリオ・アルジェントかというぐらい有名になってしまいましたが、その隠しきれない性癖を映画作りにぶつけ始めたのはこの頃からだったということですかね。 ちょうど本日エンリオ・モリコーネの訃報が配信されました。本作はアルジェント作品としては珍しいモリコーネ起用ですが、“来る仕事はすべて引き受ける”がモットーのモリコーネらしいです。音楽自体はオーソドックスないかにもイタリアン・ジャーロと言った雰囲気ですけど、やはりアルジェントの作風とは合わなかったみたいですね。合掌。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2020-07-06 22:44:25)
466.  眠狂四郎無頼控 魔性の肌 《ネタバレ》 
なぜかシリーズ中で唯一「無頼控」がくっついているタイトル、どうしてなんでしょうね?でも観てみればわざわざ「無頼控」となったのも納得できる気がする、狂四郎のニヒルぶりはシリーズ中で最高レベルでした。成田三樹夫が率いる黒指組、天草四郎一派の末裔なんてキャラ付けはどこかに吹っ飛んでもうキリスト教とは関係ない邪教の新興宗教集団でございます。宗教集団と言うよりも忍者集団と言った方が相応しいぐらいです。「狂四郎にも弱点はある!」と女には見境がないと正しく見抜いてシリーズ恒例のハニートラップ攻勢、でもこれもお約束ですべて狂四郎はお見通しで全部返り討ち。本作で凄いところは、善玉・悪玉・善玉と見せかけた悪玉、登場する女性キャラが全部死んじゃうという展開でしょう。これこそ「俺と関わった女はみんな死ぬか不幸になる」と嘯く狂四郎の決めセリフ通りでした。成田三樹夫も頑張ってるんだけど黒指組リーダーとしての行動が穴だらけで、前作の天知茂には到底及ばずという感じでした。あの穴蔵に狂四郎を閉じ込めて爆薬で吹っ飛ばそうとしたシークエンス、バカみたいに簡単に逃げられたのには「これはギャグか」と悶絶させられました。金子信雄が善玉っぽいキャラで登場してきたのには?でしたが、ラストのネタばらしにはちょっとびっくり、まさに「そんなのって、アリ?」の一言です。でもロードムービー仕立てであの手この手のエピソードがテンコ盛り、全盛期の鰐淵晴子の美も堪能できたし、やはりシリーズ中でいちばん愉しめたかな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-07-03 21:34:25)(良:1票)
467.  結婚相談 《ネタバレ》 
「結婚相談所が実は売春組織だった!行き遅れた三十路女・鶴川島子の運命や如何に!」というのが私がその立場だったらこの映画につけるコピーですかね。当時の日活の看板清純派だった芦川いづみが驚天動地の汚れ役に挑戦というわけで、ポスターを見るとなんと成人映画指定になっています。もちろん芦川を含めて誰も脱いでませんし、せいぜい芦川が色っぽい表情を見せるぐらいで、当時の映倫の基準が良くわかりません。でもこの映画の芦川いづみは表情がエロいんです。なんというか、AKBの柏木由紀をすっきりさせたような雰囲気で、これは見入ってしまいます。でもついさっきまで清純派だったのにコールガールに身を落とす女を演じさせる、この日活のドラスティックな彼女に対する方針転換、三年後に藤竜也と結婚してフェードアウトしてしまったのも必然だったのかなと思います。 こんなドロドロしたお話しなのに、監督しているのがモダニスト・中平康なのでちょっと洒落た雰囲気させ感じさせてくれます。劇中で2~3か所、屋外でバーブ佐竹の『女心の唄』を大音量で流す宣伝カーみたいな車が、ストーリーと無関係に映されるのがなんかシュールでいかにも中平康らしい。ひょっとしたらこれって、『青春デンデケデケデケ』に出てくる南野陽子が乗った謎の『潮来笠』を流して町内を走り回る宣伝車の元ネタなんじゃないでしょうか。だとしたら、大林宣彦もかなりのシネフィルですね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-06-30 18:42:53)
468.  トゥモロー・ワールド 《ネタバレ》 
少子化どころか人類すべてが妊娠できなくなってしまった世界、なぜそうなったのかは全然解明されていないが、そこは説明過多に陥らないのでストーリーテリングとしてはアリでしょう。それよりも、英国以外の国家システムが崩壊して難民が押し寄せる世界という設定がイマイチ「?」なのです。秩序が崩壊した原因は子供が生まれなくなったのが遠因とこの映画では仄めかす様な表現で終わっていますが、人間ってそこまで自暴自棄になりますかね?はっきり言って子供が欲しいと切望する若者は別としても、新しい生命が誕生しないだけで今生きている生命には疫病のような危機は発生していないように見受けられるし、そんなに焦りまくる事態ではないようにも思えるんですけど。でも地球上のすべての生命体の共通の本能は自己の子孫を残すという進化論的な命題に収束するわけで、人類といえども今の世代で種が絶えてしまうと認識してしまったら理性が失われて文明崩壊が起こるかもしれません。そういう哲学的な思弁の行き着く果てが、この映画と言うか原作の世界観なのかもしれません。 メキシコ人であるアルフォンソ・キュアロンにとっては、不法入国・難民問題は他人事と涼しい顔はできない現実でもあるでしょう。全体主義国家になってしまった英国での難民取り締まりの描写は、イラクやシリアでの現実を踏まえた恐ろしい描写ですが、まさかキュアロンも、難民こそ殺到しませんが10年後に英国がブレグジットで大陸から孤立する道を選ぶとは、夢にも思わなかったでしょう。政府も蜂起を狙う抵抗勢力も血も涙もない集団で、ヒューマン・プロジェクトなる団体だけが善玉というか信頼できる組織、でもこの三者はキーが産む子供を巡って争っているわけではない。この人類の救世主になるかもしれない赤ん坊と騒乱に満ちた実世界との係わりを上手くつなげられなかったところが、本作の弱さかもしれません。もっともそこは監督のあえて意図した撮り方だったかもしれません、突然出現した赤ん坊に兵士も難民も畏敬に打たれたように道を空けるシーン、これこそがキュアロンがこの映画でもっとも見せたかったところなのかもしれません。この映画を語られるときに長回しばかりが取り上げられるのは、ちょっと不本意なのかもね。 出演者ではやはりマイケル・ケインが光っていました。この役作りは、もうジョン・レノンにしか見えません。レノンも長生きできたら、きっとこんな感じの老人になってたんだろうな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-27 22:37:34)
469.  泥棒野郎 《ネタバレ》 
時々ウディ・アレンの初監督作として紹介されているのを見かける本作ですが、アレンの初監督作はあくまで"What's Up, Tiger Lily?"ですからね(きっぱり)。日本じゃ絶対に観ることのできない彼の黒歴史である"What's Up, Tiger Lily?"よりも、中編ながらもちゃんと劇映画として製作された本作は実質的には初監督作として認定してあげてもいい様な気もしますがね。 巷では初期アレン映画の最高作は『スリーパー』ということになっていますが、いや違う!私は『泥棒野郎』だと断言しちゃいます。驚くことに、アレンはこの第一作から早くもいわゆるモキュメンタリ―的なストーリーテリングで脚本を書いているんですね。この手法は後に『カメレオンマン』などにも使われているアレンの得意技ですが、60年代というとひょっとしてモキュメンタリーの始祖はアレンなのかもしれません。内容はスタンダップ・コメディアン時代からのナンセンス・ネタがてんこ盛り。傑作“メモを渡して銀行強盗”のネタはあまりにも有名ですけど、個人的には“何度も踏みつぶされるアレンの眼鏡”ネタもお好みです。音楽担当がマーヴィン・ハムリッシュだというところは、ノスタルジック・ジャズの名曲ばかり使う後のアレン映画とは違った雰囲気になっています。ヒロインもその後一度もアレン映画に出ていない無名女優ですが、いまいち掴みどころのないキャラですけどキュートで良かったです。思うにアレンのコメディはダイアン・キートンと組むようになってから変化したわけで、ナンセンス・ギャグがキレまくる『スリーパー』までの初期アレン・コメディは今となっては貴重なのかもしれません。
[ビデオ(字幕)] 7点(2020-06-24 20:34:08)
470.  パニック・トレイン 《ネタバレ》 
まったく予備知識なしで鑑賞。息子連れの医師のほかはバカ騒ぎする若者集団やマナーが悪い非英国人と思われる男などの乗客集団、これは『ある戦慄』風のストーリーなのかと思いきや、どんどん客は降りていって残るは医師親子を含めて六人の男女。そこからいきなり『激突!』の列車バージョンに突入、追っかけられるんじゃなくて謎の犯人と一緒に暴走させられて降りれないというところが新パターンです。それでも子供を除く五人の誰かに謎の暴走を操る奴が隠れてるんじゃと当然のごとく疑いますが、結果から言うとみんなただの巻き込まれた被害者、ここが本作でのある意味最大のサプライズとなりましょうか。つまり、伏線なんかまったく張らずに暴走する列車の乗客たちのサバイバルを単純明快に観客に見せることに徹した映画だったというわけです。犯人像がまったく不明なだけに、まさかこんな単純なお話しとは予想もしない観客の疑心暗鬼がかえってサスペンスを生むという皮肉な効果を生んでいます、これは製作サイドの意図したことなのか単なる怪我の功名なのかは謎ですけど。列車がひたすら飛ばしまくる疾走感だけは上手くとらえていて、なんか初期のピーター・イエーツが撮ったかのような感じがしました。B級映画としては良くできている部類ですが、これをわざわざクラウドファンディングまでして製作する意義は果たしてどうなの?どうせならもっと独創的な企画の方が良かったんじゃない? それにしてもロンドンの鉄道車両の汚いことと言ったら、せめて窓ぐらい綺麗にしとけよ!
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-06-21 21:36:25)
471.  ショック療法 《ネタバレ》 
古来より若返りの秘術には禍々しさが付き物、そのためには胎児を料理することすら厭わなかった中華帝国皇帝の逸話すら存在するのに、アラン・ドロンが運営するこの療養所の秘薬はまあ大人しい部類じゃないでしょうか。大金を積んでやって来るいわゆる上級国民たちへ羊の胎児にポルトガル人の内臓と血液をカクテルして注射するのがミソ、まあそう言われればそうかもしれませんが大してショックはなかったですね。それよりもショックだったと推測されるのは、“ダーバン”のCMでその渋さが日本中で知れ渡っていた真っ最中に、陽気な音楽にのせてフルチンで砂浜を駆けるドロン様のお姿に女性ファンは驚愕(いや狂喜?)したんじゃないでしょうか。この療養所自体が半分ヌーディスト村みたいなもので、ヌーディズムなんてまだ未知の文化だった日本人には刺激が強かったかもしれません。それにしても70年代のフランスの男優・女優の脱ぎっぷりの良さには感心します。 サスペンスとしてはユルユルもいいとこで、まあ評価はできません。肝心のドロンのキャラがマッド・サイエンティストなのか単なる女好きなのか判断に苦しむようじゃ、どうしようもないですね。アニー・ジラルドのヒロインも、物語の探偵役なのか被害者サイドなのか立ち位置が不明瞭でしたね。ドロンと一夜を共にした朝、まるで少女の様にはしゃぎながらシャワーを浴びるところは苦笑するしかなかったです。たしか彼女は冒頭の問診には自分はレズだと答えていたのに、よっぽどドロンのテクニックが凄かったんでしょう、そりゃあ天下のアラン・ドロンですからねえ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2020-06-18 22:07:11)
472.  ゲット スマート
懐かしの『それゆけスマート』の映画化でオリジナルで脚本担当だったメル・ブルックスとバック・ヘンリーが監修ということなので期待するところもあったけど、まあ可もなく不可もなくという感じでした。この映画を愉しめるかのカギは、ストーリー展開はありきたりのスパイ・コメディなので、スティーヴ・カレルの演技をどう受け止めるかということになるんでしょうが、たぶん日本人にはウケないタイプのコメディアンでしょうね。徹底的に無表情かつ自虐に徹して笑いをとる、こういうバスター・キートンに通じる芸風は個人的には大好物です。同じような芸風の役者は最近のビル・マーレイ(そういや本作にもカメオ出演してましたね)が近いような気がしますが、たしかに日本の俳優・芸人には見かけないタイプです。アン・ハサウェイも本来芸達者なのでコメディも余裕でこなしちゃいますが、まさかこの後ガチなミュージカルでオスカーをゲットするとは想像できませんでした。ジェームズ・カーンやテレンス・スタンプと言ったレジェンド級を脇に持ってくるのはこの種の映画のいわば定番みたいなものですが、若造ですがマシ・オカをできればもっと有効に使えれば良かったんじゃないでそうか。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-06-15 22:08:24)
473.  エイリアン:コヴェナント 《ネタバレ》 
いやー、皆さん“『プロメテウス』のストーリーを忘却してしまった”告白の嵐で、自分は少し安堵してしまいました。なんせ「そういやマイケル・ファスビンダーが出てたよな、でもエリザベス・ショウって誰だったっけ?そうかノオミ・ラパスが演じたキャラか、でもラストで二人が生き残って旅立ったってことらしいけど、ヤバい、全然記憶がないぞ…」とわが身にゲシュタルト崩壊が起こったのかと慄いてしまってましたから(笑)。本作は『プロメテウス』と時間的間隔を空けずに鑑賞することがコツなのかもしれません。 感想はひとこと、リドリー・スコットも老いたというか才能が枯渇しちゃったのかな?となります。だいたいウォルターとデヴィッドが揃ったところでもうオチはバレバレでしょう。ヒロインにはリプリーみたいな凄みが無いし(この女優さんは、名脇役サム・ウォーターストンの娘なんですね、たしかに親父さんの面影は濃厚でしたがちょっとミスキャストでは)、やはり代理船長はじめ乗員たちの判断や行動はおバカすぎです。『プロメテウス』以降舞台が未知の惑星というオープン・スペースになりましたが、『エイリアン』ストーリーはその密室性が成功した秘訣であると正しく理解してるリドリー・スコットは、本作ではエイリアンが本格的に登場するシークエンスをすべて夜にして王道に回帰しようとしましたが、いかんせんただ暗いだけの映像にしかなりませんでした。シリーズの前日譚という設定なのでフェイス・ハガーが飛び出してくるところなどエイリアン関連のネタは何度も見せられてきた類のものなのでデジャブ感が濃厚、そろそろ新しいアイデアを出してもいいんじゃない?
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-06-12 22:08:46)
474.  パーティで女の子に話しかけるには
時は1977年、エリザベス女王の在位25周年が祝われジミー・カーターが合衆国大統領だった時代、英国ではパンク・ムーヴメントの嵐が吹き荒れている真っ最中にロンドン郊外のクロイドンでパンク野郎と異星人の女の子の儚いボーイ・ミーツ・ガールがあったのでした。『パーティで女の子に話しかけるには』なんてタイトルからはとても想像がつかない、ちょっと胸キュンなSF恋愛ストーリーでした。『ラビット・ホール』では雇われ監督もそつなくこなしたジョン・キャメロン・ミッチェルが久々に自分のやりたいことに没頭したって感じの作品で、自分はあの『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から受けた衝撃を思い出させてもらいました。エル・ファニングのキュートさと“人喰いパンク”を即興でシャウトするカッコよさのギャップは最高。でも『ラビット・ホール』からの縁で出演したニコール・キッドマンのパンク女王がまた存在感強くて、もっとも始めは誰だか判りませんでしたけどね。六つの種族に別れる異星人たちの設定や行動様式はほとんど理解不能でしたけど、あのパーティー(?)での脱力系ダンスには自分のツボが突きまくられました。 海外での評価は高くないというか酷評も多いですが、日本では意外と高評価されているみたいです。これは確かに将来カルト化するかもしれませんね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-09 19:44:56)
475.  狂人ドクター 《ネタバレ》 
“どうか貴方の人生の90分を無駄にしないでください”と言うのがIMDBに載ってる筆頭レヴューです(笑)。いくら何でもここまで酷評せんでもと思いますが、アサイラム系のおバカ映画と違ってそこそこにプロットは整っているし撮影も丁寧(暗いシーンはやはり見にくくて☓)だから、余計にハラが立つんでしょう。自分としてもあのジェームズ・フランコが監督して準主役で出演もしているとなれば多少は期待があったことは否定いたしません。彼は最近は監督業に進出して本作ではプロデューサーまで務めているわけですが、映画製作者としてどこを目指しているのかちょっと心配です。監督クレジットを見るともうひとり女性名があるので、実はこの映画の主導権は彼女の方にあったと思ってあげたいけど、そんなわけないわな。それでこの映画のどこがダメだったのかと振り返ってみると、ヒロインの後半のキャラ変やちょっとしたどんでん返しも盛り込んでいるけど、脚本があまりに平版で盛り上がらなかったところでしょう。言ってみれば、『ヘレディタリー 継承』の超劣化版というのがピッタリかも。そして“エリック・ロバーツが出演している映画には駄作しかない(除く『暴走機関車』)”という恐るべきジンクスが今回も立証されました(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2020-06-06 22:35:27)
476.  眠狂四郎 無頼剣 《ネタバレ》 
シリーズ八作目にして最強の敵である愛染・天知茂が満を持して登場、今まで二作に顔を出している若山富三郎もいるけど、役者の格は別にしてもキャラ付けからして迫力が違います。旧新東宝の残党組としては丹波哲郎は別格として天知茂・菅原文太・吉田輝雄がいわば三羽烏でありますが、けっきょく映画界で大成したのは文太だけで天知が70年代にはTV界に活躍の舞台を移してしまったのは残念至極です。愛染は大塩平八郎の残党を率いて老中・水野忠邦をつけ狙うテロリスト集団の頭領、復讐のためなら江戸を焼き払うことも躊躇しない過激さは、当時の学生運動が投影されていることは間違いなしでしょう。肝心の水野へのテロは見抜かれていて失敗、自ら放った炎を遠景として狂四郎に討ち取られて屍をさらす愛染とその一味の姿は、その後の全共闘運動の末路を予言しているみたいです。 というわけで本作に関しては天知が主役で雷蔵ですら脇で盛り上げ役に回っているような感じすらします。本作の狂四郎は妙に品行方正で愛染の方がはるかにニヒルなのがヘンな感じです。撮影中に雷蔵は「これじゃ天知茂が目立ちすぎ、主役は俺だ!」と怒ってマジにスタッフと険悪になったそうですが、本来温和な雷蔵をここまで嫉妬させた天知茂という役者は、やはりただ者ではなかったんでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-06-03 20:01:03)
477.  最高殊勲夫人 《ネタバレ》 
増村保造・若尾文子コンビのコメディと言えば、やはり本作が代表作(ていうか、このコンビでほかにコメディってあったっけ?)。若尾はまだ伸び盛りの若手女優で、増村は洋行帰りの若き大映のエース監督、60年代増村作品のドロドロ風味は微塵もなく、スクリューボールと呼べるほどのスピーディーな展開のラブコメであります。この頃の若尾様は演技力よりも輝く個性が持ち味でして、本作のキャラみたいな因習にこだわらない合理的で活発な女性を演じられたら観る方はメロメロにされてしまいます。脇を固める役者たちがその分それぞれの持ち味を出して若尾様をサポートしていて、とくに船越英二と宮口精二は好演でした。川口浩も若尾様と共演すると彼の魅力が最大限に引き出され、育ちの良さをこれほど自らの個性にできた俳優は彼のほかに見当たらないでしょう。舞台となるオフィスは丸の内という設定で、デートや会食の場面が何度も出てきますがそこは丸ビル地下街を彷彿させます。この地下街の風景は撮影された昭和34年ではまさに最先端だったでしょうけど、その雰囲気や活気は現代でも通用するモダンな撮り方だと感じます。ストーリー自体は「そんなアホな…」と突っ込みたくなるところですが、観客にそれを許さないスピーディーなストーリーテリングが重要なんだとさすが増村は良く理解しておいでです。彼にはもっとコメディを撮って欲しかったな。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-05-31 21:14:48)
478.  君も出世ができる 《ネタバレ》 
自分は戦後日本映画界の最高峰ミュージカルは『狸御殿』シリーズだと思っていましたが、どうしてどうして、この東宝が放ったカルト・ミュージカルもななかのいい勝負してます。 まず、アニメーションのタイトルデザインがソウル・バスが関わったかと思わせるほど洒落て秀逸。舞台となる東和観光のオフィスは確かにシャレまくったセットで、色彩と言いデザインといいカネかけたなというのが良くわかる豪華さ。フランキー堺や高島忠夫を始めとして芸達者な役者と中尾ミエと雪村いづみといった本職歌手の女優をそろえた豪華キャスト、皆さんほんとスキルが高いですね。中でもフランキー堺のダンスというか身のこなしの華麗さ、ほんと天才的としか言いようがないです。でも浜美枝みたいにそっちの方の芸が劣る女優は歌わせないというのは賢明な選択、そういや有島一郎もほとんど歌ってなかったですね。しかし本作の浜美枝はキュートさが爆発状態、ピンクで統一された彼女の部屋のオシャレさは現代でもなかなか観れないセンスです(愛犬のプードルまでピンクなのは笑ってしまいました)。 この映画はアメリカ帰りの雪村いづみが登場してからの展開が本番です。二言目には「アメリカでは」と社員に説教する“アメリカ出羽守”ぶりが笑えます。この「アメリカでは」はメインスコアにもなっていて、なんと40年近く経ってピチカート・ファイブが雪村いづみを使ってカヴァーしているんですよ。どうりでなんか聞いたことある曲だなと思ったわけです。こういうバタ臭いコメディになると東宝の独壇場なんですけど、アメリカ出羽守・雪村いづみと対峙する高島忠夫のテーマソングは「あこがれのタクラマカン」、でもなんでタクラマカン砂漠なのかは理解不能でした(笑)。そしてワン・シーンだけですが植木等がノン・クレジット登場でフランキー堺と絶妙な掛け合いを見せてくれます。この二人の共演はたぶんこれだけなんじゃないでしょうか、貴重です。 しかし何といっても「凄いもの見せられたな~」とため息が出るのは、やはりクライマックスのサラリーマン軍団のモブ・ダンスで、邦画でここまでのミュージカル・シーンがあったとは、これはぜひとも大スクリーンで観てみたいものです。これがヒットしなくてカルトになってしまうという現実、やっぱ日本じゃミュージカル映画は根付かないのかなあ…
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-28 21:58:30)(良:1票)
479.  マリー・アントワネット(2006) 《ネタバレ》 
いやー、正直言って自分にはなんでこんなに酷評されるのか理解できません。とくにフランスでは評判が悪かったそうですが、これはフランス革命を否定的なニュアンスで描いたように捉えられたのだろうか?皆さんはソフィア・コッポラに何を期待していたんでしょうかね。贅沢三昧の生活と愚行のあげくに革命に囚われてギロチンの露と消えた生涯を、ストレートにソフィアが映画化するわけないじゃないですか。マリー・アントワネットをガーリーなセレブとして表現する、やはり彼女にしかできない発想だと自分は感心しました。 この映画は、実は『ロスト・イン・トランスレーション』と同じ視点でマリー・アントワネットの宮廷生活をガーリー・ムーヴィーとして撮っているんです。異邦人としてフランス宮廷に嫁いできたアントワネットの孤独は、『ロスト…』のスカヨハの抱えていた疎外感と同じです。アントワネット役にスカヨハじゃなくキルスティン・ダンストを持ってきたのは、個人的には彼女の顔は好みじゃないけど、正解だったのかなと思います。もっとも実際のアントワネットはバストサイズが100センチを超える巨乳だったそうで、そういう面では実像からはかけ離れているんですけどね(笑)。そしてソフィア・コッポラと言えば欠かすことのできない音楽選びの感性、仮面舞踏会のシーンなんてまるでNYのクラブみたいでほんとセンスいいですよね。やはりコッポラのファミリーネームがものを言ったのかヴェルサイユ宮殿で撮影を許されるという快挙、これはもう眼福としか言いようがないです。ソフィアはセレブライフを撮らせたら、やはり右に出るものはいませんよ。 “19世紀はフランス革命に始まって第一次世界大戦で終わる”と解釈する風潮が広まってきましたが、ルイ16世とマリー・アントワネットの処刑で始まりニコライ二世一家の惨殺で終わったヨーロッパは、まさに“王殺し”の世紀だったと言えるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-25 23:36:27)(良:1票)
480.  13デイズ 《ネタバレ》 
1962年のキューバ危機を、ジョン・F・ケネディ大統領の側近でいわゆる“アイリッシュ・マフィア”の一員だったケネス・オドネル特別補佐官の視点で見せるのがストーリーです。この人はロバート・ケネディとは大学時代からの友人でJFKの選挙参謀を経てホワイトハウス入りしたわけですが、調べてみるとこの時代がキャリアの頂点みたいなもので、ケネディ兄弟の死とその後の知事選での敗北から立ち直れずアル中になり、50代半ばで失意の中で死去した悲劇的な人物だったみたいです。この役をケヴィン・コスナーが好演しているわけですが、私には『JFK』のギャリソン検事のイメージが被り過ぎてヘンな感じでした。オドネル補佐官は判りませんが、ケネディ兄弟はじめ当時の閣僚たちはかなり似た容貌の役者を揃えていて良かったんじゃないですか。すでに歴史的な出来事なので結果は誰も知っているわけですけど、ホワイトハウス内だけの視点というか情報だけで語るストーリーテリングはソ連・フルシチョフの考えていることが全く判らないわけで、そこがサスペンスを引き締める役割を果たしています。どこまで真実に近いのかはわかりませんけど、ほとんどクーデターでも起こすつもりかと言いたくなる高級軍人たちの反抗的な態度、この13日間にJFKが知らないところで演習や核実験をしていたとは恐ろしいことです。実際に戦闘が起こったわけではないので派手な絵面は見せれませんが、それでも米国連大使がソ連大使を論破するところとU2偵察機が撃墜されるシークエンスがこの映画の見せ場だったのかなと思います。まあ言ってみれば頗る真面目な映画と総括できるわけですが、同じアイルランド系ながら出身階級が違い過ぎるケネディ兄弟と補佐官とのそこから生じるうっすらとした確執を見せたりする脚本はけっこう良い出来だと思います。それにしてもなんでフルシチョフはキューバにミサイルを配備する気になったんでしょうかね、こういう結果に終わることは自明だったと思うんですが、私は昔から不思議でならないんです。 あと気が付いたことが一つ、この危機の間ジョンソン副大統領がまったく登場しないんですよ。別にハブったわけではなくこれが史実なんでしょうけど、合衆国の副大統領職がここまで盲腸的な存在なのかと驚かされます。ルーズベルト大統領から原爆開発のことを全く知らされてなかった副大統領トルーマンのことが思い出されますが、ブッシュ政権のチェイニーみたいな副大統領は例外的な存在だったみたいです。セリフでは一か所だけジョンソンが出てきますが、仲間内で暗に彼をディスっているだけです。JFKのホワイトハウスもどこかの国と変わらない“お友達政権”だったんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-22 22:47:20)
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