541. ピクチャー・クレア
地元でトラブルを起こし、行きずりのカメラマンを当てにして逃げる様にトロントへ出てきた田舎の不良娘が、「ロスト・イン・トランスレーション」状態で犯罪に巻き込まれていくサスペンス映画。特別優れた作品だとは思いませんが、危なっかしい雰囲気を持つ童顔のジュリエット・ルイスと、危険な香りを漂わせる大人顔のジーナ・ガーション(延々とタクシーを追いかけるシーンが良い)のダブル・ヒロインの魅力で、最後まで飽きずに観れました。それほど期待しなければ普通に楽しめると思います。ところで、カナダの都市だったらもう少しフランス語が通じるんじゃないの? 5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-12-02 00:02:39) |
542. レ・ミゼラブル(1998)
デンマーク人監督ビレ・アウグストの文芸大作第二弾(?)。話が有名な分、「愛と精霊の家」よりは面白く鑑賞できましたけど、物語に特別な新解釈も見当たらず、とにかく駆け足でストーリーを語っていく。3時間とは言いませんが、もう少し長くしても良かったんじゃないでしょうか。ところで、私にはジャベールが余り嫌な奴に映りません。彼は他人に対して非情ながら、清廉潔白の上、自分にも他人同様に厳しい男。正に法の無情さを体現すると共に、執行官として理想的だと思います。また、リーアム・ニーソンが空を見上げて浮かべるラストの笑みは私には良かったです、6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-12-02 00:02:15) |
543. リトル・プリンセス
TVアニメも含めて、今まで「小公女」に触れる機会が無かったので、「小公女」というタイトルからイメージしてた話とは随分違いましたね。何でもかんでもカタカナにするのも気が引けますが、確かに現在では「リトル・プリンセス」という言葉の響きの方が内容的にしっくりくる様な気がします(漢字だと本物の王女様、カタカナだと軽い愛称という印象)。主人公のセーラは、明朗で機智に富み、誰にでも優しく、そして勇ましくも健気という、女の子のロール・モデルとしては完璧な子。確かに女児向け文学として長年に亘り読み継がれてきただけのことはあります。本作の美術や色使いも女の子が好みそうな雰囲気をきちんと作り上げてます。98分という長さも丁度良いし、私も優良なファミリー・ムービーとしてお薦めします、6点献上。 [地上波(字幕)] 6点(2005-12-02 00:01:50) |
544. 愛と精霊の家
結構なオールスター・キャストで激動の歴史を描く大河ドラマというのは好みのジャンルですけど、私も期待程は楽しめませんでした。主要キャストを英米人にしてチリの歴史を描く、デンマーク人が監督・脚本の英語作品という、良く言えば国際的な、しかし悪く言えば趣旨の良く判らない作品プロフィールそのままに、物語の趣旨も良く判らないまま終了してしまいました。基本的にはジェレミー・アイアンズの一代記で間違いないんでしょうけど、「精霊の家」というタイトルにしてる位ですから、元々のメリル・ストリープの役はもっと重要だったんじゃないでしょうか。その他の家族のエピソードが有りがちな分、たぶん彼女の役割が最も重要な物語上のポイントだった筈。何か肝心な部分を飛ばされてしまった様な印象です、4点献上。 [ビデオ(字幕)] 4点(2005-12-02 00:01:24) |
545. 王子と乞食(1977)
昔の名優を贅沢に配置した大味な大作という、この時期の流行を取り入れたファミリー・ムービー。やっぱり本作一番のミス・キャストが主役のマーク・レスター。子役時代(と言っても、この当時でも19歳)も美しく可愛かっただけで演技が上手かった訳じゃない。だから、ひょろひょろと中途半端に成長した本作の彼は最早見る影も無い(彼自身が既に「昔の名優」って感じか…)。底辺の暮らしと雲の上の暮らしを対比させた物語の本質も、サラッと流しただけでお終い。その分、陰の主役となって物語を引っ張ったのがオリバー・リードでした。忠義と愛情を奉ずる落武者(?)という役柄は、彼の容姿も相まって中々迫力がありカッコ良かったです。決して名作ではないですが、今でも普通には観れるんじゃないでしょうか、5点献上。 [映画館(字幕)] 5点(2005-12-02 00:00:56) |
546. クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち
聖書絡みの猟奇連続殺人事件が、いつの間にやら「インディ・ジョーンズ」になってしまうという呆れた展開。リュック・ベッソンが関わったことでストーリーや事件自体が無茶苦茶になってしまい、全く話の辻褄が合ってない。とにかくハリウッドで流行ったものを全部ブチ込んじゃおうという馬鹿馬鹿しさ。しかし、盛り沢山の内容だったので飽きずに観れたことは確かです。ヤマカシ・アクションは良かったですけど、高いビルから飛び降りて無傷ってのはいくら何でもやり過ぎ(これは「ペンタグラム/悪魔の烙印」を思い出したゾ)。ブノワ・マジメルの追跡能力も超人並でしたね、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2005-11-26 00:05:39) |
547. かげろう(2003)
良くも悪くも非常にフランス映画的仕上がりの、現実逃避的な少年と大人の女のラヴ・ストーリー。同監督の「溺れゆく女」に近い雰囲気でした。一応、大戦時が舞台になってますけど、この映画に於ける「戦争」は登場人物達を1ヶ所に閉じ込めておく為の方便で、生きるのに必要な日常の雑事を一切廃して各キャラクターの立ち位置だけを純化する、一種のファンタジー空間です。戦争の終わる時が現実に帰る時。ファンタジー世界の住人であるナイーブな少年は、当然現実世界で生き抜く強さなど持ち合わせてはいない。そして私には、エマニュエル・ベアールの心情なり変化なりが全く解りませんでした。「溺れゆく女」よりは良かったですけど、私の様な人種にとっては退屈な作品であることに変わりありません、4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2005-11-26 00:05:09) |
548. ルビー&カンタン
本作のDVDパッケージも最近ではかなり酷い。この映画がコメディであることに一切触れてないじゃん。まるで「RONIN」みたいなジャン・レノ主演の犯罪アクション映画の装丁で、ジェラール・ドパルデューの役がフランス一のアホであることも隠したまま。マイナーなB級ビデオ・スルー作品ならまだ許せますけど、この映画は劇場公開もされてるし、日本でもそれなりにファンが多いと思われるA級フレンチ・コメディの旗手・フランシス・ヴェベール監督作品。この会社は映画とマーケティングを理解してるのか? で、本作の真の姿は、究極の馬鹿が「活躍」する「奇人たちの晩餐会」系コメディ。中々憎めないカンタンの行動が一々可笑しく、脚本は確かに薄味でしたけど、私は「奇人~」よりもずっと楽しめました。そんなことで、6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-11-26 00:04:45) |
549. いつか、きっと
主人公の娼婦はこの逃避行で、図らずも自らの人生を溯って行くことになる。そこには売春から足を洗えそうなターニング・ポイントがいくつかあったものの、彼女はその都度「約束された暮らし」(これが原題)に二の足を踏んでるらしい。これは多分、「約束の地」を目前に信仰が揺らぎ、神の怒りによって荒野を彷徨うことになるイスラエルの民になぞらえてるんだと思う。彼女は未来の「新たな自分」を信じることが出来ない。だとすると、「いつか、きっと」等という未来形の邦題とは裏腹に、「約束の人生」を得られるのは娘だけってことでしょうか。そして二人を導いた男はモーゼってこと? 例によって聖書に疎い私には難しかったです。序盤は不安定な手持ちカメラ主体で、徐々にフィックスした映像(風景が美しい!)に移行していく、主人公の心情を表したと思われる演出は良かったです。「クリムゾン・リバー2/黙示録の天使たち」と同じ監督とは思えませんでした、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-11-26 00:04:18) |
550. 憎しみ
パリ郊外に住むユダヤ系、アラブ系、アフリカ系という3人の若者の、出口のない鬱屈した日常生活を淡々と、しかし緊張感たっぷりに描き出す。一般的にイメージされる文化の香り高い「フランス映画」には余り出てこない、「移民国家」としてのフランスの姿。いつ引き金が引かれてもおかしくない状況の中で、一丁の銃が街を彷徨い、そして悲劇を生む。ラスト・シーンは結構衝撃的でした。そして私も、フランスでの暴動のニュースを見て真っ先に連想したのが1995年の本作です。つまり最低でもこの10年の間、フランスではいつ今回の様な暴動が発生してもおかしくない状況がずっと続いてたってことですよね。暮らしへの不満は、いつしか他者への憎しみになる。マチュー・カソヴィッツの先見性と問題提起に+1点、7点献上。 [地上波(字幕)] 7点(2005-11-26 00:03:49) |
551. ジャンヌ/薔薇の十字架
前・後編共、ストーリーは有名なジャンヌ・ダルクの「伝説」に忠実で、話自体への特別な新解釈は見当たりません。ジャック・リヴェットとしては虚飾を廃して、ジャンヌを一人の平凡な少女として描きたかったのかもしれませんが、それでも「闇雲に信心深い癇癪持ちの乙女」であることには変わりないので、ただ演出が地味になっただけという感じです。となると、やっぱり作風の好き嫌いで評価が分かれますね。唯、「投獄」と題された本作後半のジャンヌは、教会と信仰に見放される哀れな少女なので、前編よりはリヴェットの作風に合っていたと思います。ということで、5点献上。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2005-11-26 00:03:11) |
552. ジャンヌ/愛と自由の天使
「美しき諍い女」に途中挫折した経験を持つ私にとって、初のジャック・リヴェット作品。前・後編を合わせれば「美しき~」と同じ位の長さになりますが、2本に分かれたことでだいぶ心理的負担は軽減されてます。もちろんこの長尺好きの監督に、リュック・ベッソンの様なテンションの高さは最初から求めていませんが、それにしても本作は、「戦い」と題されてる割には地味すぎ。発色を抑えた陰鬱な映像にBGMもほとんどなく、とにかく淡々と話が進んでいく。エキストラの数が多い訳でもないのに、戦闘シーンも引きの長回しばかりで、ホントに閑散とした印象(当時の合戦はこんな感じだったのかな?)。私には今一つリヴェット監督の趣旨が計りかねます。ということで、少し低すぎる様な気もしますが自身の正直な点数、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2005-11-26 00:02:45) |
553. 神風
当時は「ベルリン忠臣蔵」と双璧を成す「勘違い映画」として、80年代ビデオ・バブルの一翼を担ってましたっけ。もちろんリュック・ベッソンもロマーヌ・ボーランジェ(当時13歳! 可愛い!)もまだメジャーではなく、単なるZ級映画という位置づけでした。で、中身の方は【エスねこ】さんのお書きの通り、もの凄くシリアスな馬鹿映画。何でこんなに馬鹿馬鹿しい話をシリアスに展開するんだろう? この犯人は何で歌舞伎風白塗りメイクに特攻鉢巻なんだろう? そもそも、本作の何処が“KAMIKAZE”なんだろう? 雰囲気的には「世界で一番醜い女」に近いかもしれません、3点献上。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2005-11-26 00:02:09) |
554. 暗黒街のふたり
私もこの邦題は酷いと思う。出演者からしてギャング映画か犯罪モノだと思っちゃうじゃない。せめて「街角の男たち」位にしといてくれれば良かったのに…(原題は誰にでも起こり得ることを示唆してる筈)。で、この映画の実際の姿は、ジョゼ・ジョバンニらしく、警察権力の横暴と犯人に対する情状酌量、そして死刑制度と執行方法を取り上げた重いドラマ。元死刑囚の監督(凄いプロフィールだ…)としては死刑制度自体よりも、その前の、警察が犯罪者を作り上げていくプロセスと、偏見によって情状を考慮されない不条理に主眼を置いてるんだと思う。最近我が国でも保護監察中の再犯、そして保護観察制度が話題となりました。本作の「ふたり」は理想的な関係でしたが、前科に対する偏見というのも難しい問題です、6点献上。 [地上波(吹替)] 6点(2005-11-26 00:01:35)(良:2票) |
555. 七つの大罪(1952)
(少し長くなっちゃいました) フランスとイタリアの名匠達が「セブン」でも有名な七つの大罪をテーマに、硬軟長短織り交ぜて描く7話構成のオムニバス映画。「強欲と怒り」はオーソドックスな教訓話。映画演出の教科書的テクニックが満載で、イザ・ミランダのキレた演技も見所。「怠惰」は現代社会を風刺したチープでモダンな特撮コメディ。凄く楽しい作品です。「肉欲」は捲り上がるスカートとショッキングな展開で、ファースト・カットから観客の肉欲を刺激してくる。その割にオチが弱いかな。「ねたみ」はサイコな心理劇。日常生活から来る漠然とした不満がテーマになってます。「大食」は単純なショート・コント。カルロ・リムのウィットを楽しめます。「高慢」は没落貴族のプライドを描く。とにかくフランソワーズ・ロゼーとルイ・セニエの演技が見もので、この中では一番好きな作品です。そして、エピローグ的に映画を締め括るのが「第八の罪」。ジェラール・フィリップの軽妙な語りと共に、観客を映画に巻き込む鮮やかな幕切れ。最近のオムニバスが当たり外れのある小粒の点心セットなら、こちらは三ツ星のフルコース。前菜からデザートまで美味を満喫できますヨ、9点献上。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-11-26 00:01:04) |
556. イントゥ・ザ・サン
栄えある2005年度のワースト1はこれに決まり。ことごとく評判の悪いセガール映画の中でも、これはかなり下の方に位置するんじゃないでしょうか。出来損ないの「ブラック・レイン」と言ったら「ブラック~」に申し訳ない程の出来。出来損ないのVシネマとも言えないぞ。本作と比べれば「キル・ビルvol.1」がもの凄く普通の映画に見える…。お話は滅茶苦茶、言語体系も無茶苦茶。アメリカの工作員とかFBIとか、日本で何やってんだよ! おまけに栗山千明の出演シーンなんて5秒じゃんかよ! それにセガールよ、お前、ホントに日本語喋れるのか? 主題歌なんか歌ってる場合じゃないぞ! そんなことで、ヤクザが事務所で「ガメラ/大怪獣空中決戦」を観てるシーンをわざわざ入れるという涙ぐましい親心に+1点、2点献上。 [試写会(字幕)] 2点(2005-11-20 00:05:45)(笑:1票) (良:1票) |
557. ダーク・ウォーター
《ネタバレ》 「仄暗い水の底から」は未見、そして原作も未読なのでどこまで脚色が違うのかは判りませんが、主人公が結局取り殺されちゃうストーリーを、よくハリウッドが映画化したなぁという印象。個人的には、追いつめられるジェニファー・コネリーの精神状態にもっと重点を置いても良かったと思いますし、全体的には確かに地味。また、水の中から死体を見つけて、一旦終わったと思わせてから本当の恐怖がやって来るという「リング」と全く同じ構成が気になりました。しかし、後半は少しゾッとさせて貰ったし、これはこれで中々良く出来た怪談話だとも思いました。そういうことで、折角協力したのに、この縁起の悪い映画のお陰で益々不動産価格が下がってしまった(?)というルーズベルト島団地の人達に、6点献上。 [映画館(字幕)] 6点(2005-11-20 00:05:20) |
558. アイ・スパイ
この時期ハリウッドでは、一瞬スパイ映画が量産されてましたよね。この映画も他の作品とベースが同じ東欧が舞台で相手は犯罪組織。この辺に、安上がりに済まそうというやっつけ仕事感が漂います。しかも無意味な設定のオン・パレード。物語上、若しくはギャグ上、ボクサーであったりステルス戦闘機であったりする意味が無い。トップ・エージェントでも大ドジ野郎でもないオーウェン・ウィルソンのキャラクター設定同様、全てが中途半端。だから話も笑いも盛り上がらず、作品自体が凄く小さくまとまってしまいました。これは脚本のスクリーニング段階での手抜きです、4点献上。 [地上波(字幕)] 4点(2005-11-20 00:04:55) |
559. ドメスティック・フィアー
タイトルに偽りなく、話がほぼ家庭内の人間関係だけで収まってしまう非常にスケールの小さなサスペンス映画。しかもこの展開なら、息子を主人公にして殺人者と同居する緊迫感を描くか、息子の言ってることの真偽を巡るストーリーにするのが定石の筈なのに、「別居中」の実父を主人公にしてしまった為、サスペンスもミステリーも二の次になってしまった。上映時間が短い所為もあってそんなに退屈はしませんが、人物描写も薄っぺらなので取り立てて面白くもありません。ところで、私はトラボルタの恋人役をてっきりマーシャ・ゲイ・ハーデンだとばかり思ってました…、4点献上。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2005-11-20 00:04:21) |
560. ミミック2
これ、(↑)TVムービーじゃなくて、本国ではお蔵入りしてビデオ・スルーになっちゃったんじゃないのかな、確か?(こういう場合はOVA扱いなのか?) ま、それも解らないでもない仕上がり。無理矢理作った感がミエミエで何から何まで凄く小ぢんまりしちゃってます。擬態の「進化」も全く意味の無いまま、いきなり終わっちゃいましたね。そんな作品を一々劇場公開した日本の配給元は、本作に需要があると思ったんですかね、2点献上。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2005-11-20 00:03:58) |