541. 電子戦隊デンジマン
《ネタバレ》 戦隊ヒーローものの劇場版。懐かしくなってつい借りてきて見たが、なんかテンポが悪く感じたし、シーンの前後のつながりもよく分からない。いきなりデンジマンの面々が子供の名前を知ってたりするのはいくらなんでも説明がなさすぎる。それにこの映画で初めてシリーズにふれる人を意識したのか、デンジマンのこれまでの経緯が描かれるシーンがあるのだが、ストーリー上必要であったとしてももう少し短く出来なかったのか。デンジマンの面々が西部劇、時代劇のコスプレを身に纏い、戦闘員と戦うシーンは面白いけど、ここがちょっと長く感じた。テレビシリーズをほとんどしらないのだが、曽我町子扮するへドリアン女王だけは知っていて、デンジマンといえばまずへドリアン女王のやつというイメージが強い。実際、彼女が演じるへドリアン女王はインパクトが強く、この後、東映特撮ヒーロー番組の悪の女王役が代名詞となる曽我町子だが、それはこのへドリアン女王役があまりのハマリ役だったからこそなのだろう。僕自身も子供のころにこの人のこういう役は何回も見たが、曽我町子ときいて真っ先に思い浮かべるのが、(デンジマン自体は先ほども書いたように馴染みはないにもかかわらず。)へドリアン女王だ。 [DVD(邦画)] 5点(2013-03-02 01:34:56) |
542. ロボジー
《ネタバレ》 「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」で若者の青春を描いた矢口史靖監督が、一転して老人を主人公としたコメディーを作っているのがまず面白い。老人を主人公にしていれば自然と老いや死にテーマがいきがちだが、その老人が発表直前に大破してしまった本物のロボットのいわゆる「中の人」をつとめることになり、一回限りのつもりがそのロボットが大人気になるというストーリーがいかにも矢口監督らしいところ。前作である「ハッピーフライト」では後半欲張りすぎたという印象があったが、この映画ではそういうこともとくに感じることはなかった。最初は渋々やっていた偏屈な老人がだんだんロボットの中に入ることに楽しみを感じはじめるあたりは良かったし、ロボットの姿のまま孫と写真を撮るシーンがほろっとさせられる。そこをもう少し膨らましても良かった気がするが、そうするとあまり矢口監督らしさは感じられなくなるかもしれないので(あまり湿っぽい展開は矢口監督の映画に似合わない。)やっぱりこれで良かったと思う。こういう話だと最後は周囲に秘密がばれておわりというパターンが多いと思うが、最後までばれずに終わったのは強引に感じる(普通絶対ばれるだろというシーンがちらほら。)もののこういうのもたまにはアリかなと思える。ラストシーンで再びロボットの「中の人」を依頼された老人のあの笑顔がなんとも印象的。ミッキー・カーチスが別名で主人公の老人を演じているが、やはり演技は落ち着いていて、安心して見ていられるし、木村電機の三人もいい味を出していて良かった。この映画で初めて見た吉高由里子もそれほど悪くない。少し甘いかもしれないが、楽しめたので7点を。 [DVD(邦画)] 7点(2013-02-26 13:23:38) |
543. 刑事コロンボ/自縛の紐<TVM>
《ネタバレ》 コロンボといえばいつも温厚で、犯人に対しても丁寧な接し方をする印象があるだけに、このように犯人に対して怒りをあらわにする姿を見てビックリしてしまった。被害者の奥さんが担ぎ込まれた病院で犯人と会ってから、犯人に対する態度が変わっているのでおそらくは下の方も書かれているように、被害者を殺した上にその奥さんに対しても精神的に追い詰める犯人がどうしても許せなかったのだろう。犯人のアリバイ工作が実は犯人自身の首を絞めていたというオチで、ラストのコロンボと犯人の対決シーンも緊迫感があって見ごたえじゅうぶんなのだが、靴の紐の結び方を証拠にするのはちょっと強引で、トリックに電話が使われているのだからそっちを調べたほうが確実で早いのにと突っ込みを入れたくなったのも事実。笑いどころは事件の舞台となった健康クラブでトレーニングする青ジャージ姿のコロンボ。いつも同じ衣装なため、新鮮といえばそうなのだが、かなりの違和感があり、それが逆に笑いを誘う。コロンボ以外でピーター・フォークを見たことがないため、もし、彼がコロンボ以外の役で出演している作品を見ることがあったら、同じように違和感を感じて笑ってしまうかもしれない。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-02-24 14:06:17) |
544. 夕陽に赤い俺の顔
《ネタバレ》 篠田正浩監督は喜劇をやるイメージがないのでどんなものなのかと思っていたら、松竹マークの出るいちばん最初の部分から日活映画と見まがうような音楽が鳴り響き、中身自体も松竹というより日活、それも鈴木清順監督の「東京流れ者」のようなぶっ飛んだ演出が光るカルト映画としか言いようのないものになっている。先に後年の篠田監督の映画を何本か見ていると、これが篠田監督の映画とは信じられないほどの怪作ぶりだ。タイトルの出し方も凝っているが、そのバックに流れる主題歌が強烈で、ここからもう一気に引き込まれる。ストーリーは単純だが、それを独特の演出で描き、インパクトを持たせる手法や、突然ミュージカル仕立てになるところも「東京流れ者」と同じ。「東京流れ者」のほうがインパクトは上だと思うが、製作されたのは「東京流れ者」よりも5年ほど前というからすごい。篠田監督の映画は今まで見た範囲では、面白いと思えた映画は少ないのだが、これは本当にカルト映画の傑作の一本と言っていい作品で、今まで見た篠田監督の映画の中ではいちばん面白かった。本作は篠田監督にとって3本目の監督作で、はっきり言ってこの調子でずっといけば篠田監督は清順監督のようなカルト映画の巨匠になっていたかもしれないとさえ思えてしまう。変な映画だが、それでも夕焼けをバックにしたラストシーンは非常に美しい。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-02-20 23:28:50)(良:1票) |
545. 刑事コロンボ/権力の墓穴<TVM>
《ネタバレ》 今回の犯人はコロンボの上司ということで、この設定はなかなか面白そうと思ったものの、その部分をドラマとしてあまり活かすことなくほぼいつも通りの展開だったのは勿体ない気がするし、この上司のアリバイ工作も本当に警察の人間なのかよと思うほどにお粗末であるし、コロンボを捜査に参加させるという行動も、おそらく署内で名刑事と評判がたっているであろう彼の実力を知らないのではと感じてしまう。だからコロンボとの対決もあまり盛り上がらなく、イマイチ。せめて犯人はコロンボの上司という設定をもっと活かした脚本にしていればもう少し面白かったのではと思う。それでも作品そのものは見ていて安心感はあるし、ラストの犯人を暴くシーンに唸らされてしまうことは確か。でも、設定そのものが面白そうだっただけに、すごく残念な作品になってしまっているのはやっぱり惜しい。何度もいうが、コロンボの上司が犯人という設定をうまく活かしてほしかった。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2013-02-17 13:33:24) |
546. 若者たち
《ネタバレ》 「若者たち」という歌は好きな曲の一つだが、元々は同名のテレビドラマの主題歌だったようで、本作はその劇場版にあたるわけだが、全篇を通してとにかく熱く、とてもエネルギッシュな映画で、登場人物たちの言動も必死さと切実さがよく伝わってくる。昨今ではテレビドラマの劇場版というと、話題になった、ヒットしたというだけで安易に作られすぎているようにも思うが、この映画は事情で打ち切りになったドラマを映画化したものであり、独立プロダクションの製作。それだけに作り手のやり残したことをやりたいという思いが感じられる映画になっているのも良かった。(ドラマは知らないのだが。)両親のいないきょうだいが助け合って生きていく中で、それぞれのドラマが展開するという内容は「ひとつ屋根の下」を彷彿とさせているが、長男(田中邦衛)の単純バカな性格は柏木達也(江口洋介)に似ているところがあり、野島伸司はそうとうこれを参考にしてあのドラマを書いたのではないかと思われる部分が多かった。(それを考えると「ひとつ屋根の下」に本作の三男役の山本圭が出ているのは偶然ではない気がする。)クライマックスは激しい取っ組み合いのきょうだいげんかのシーンだが、ほとんど嫌悪感や抵抗感もなく安心して見ていられたのは「ひとつ屋根の下」でもこういうケンカのシーンが多かったためかもしれない。(関係ないが、また「ひとつ屋根の下」が見たいなあ。)長女(佐藤オリエ)が原爆症の恋人(石立鉄男)と付き合うのを反対する長男を三男が見事に論破するシーンが印象的だった。若い頃の山本圭は根暗な学生運動家のようなイメージがあり、あまり好きではないのだが、こういう役をやると若い頃の山本圭はものすごくはまる。古い映画だが、登場人物たちに共感してしまう部分も多く、とても見ごたえのある良い映画だったと思う。続編もあるようなのでもし機会があったら見てみようかな。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-02-14 16:49:36) |
547. マダムと女房
国産初の本格的トーキー映画として知られる映画で、冒頭のシーンなど見ていると、映像とセリフがうまくシンクロしていないように感じられ、かなり試行錯誤の中で作られた映画だということが分かる。初トーキーゆえか、赤ちゃんの泣き声、猫やネズミの鳴き声、そして隣の家から聞こえてくるジャズバンドの演奏などとにかく音を過剰なまでに意識した映画になっているが、ストーリー自体はほのぼのとした雰囲気の小品で、終始ニコニコしながら見ることができた。主人公の作家(渡辺篤)が周りの騒音が原因で仕事にならないという展開はまさにトーキーならではだし、奥さん(田中絹代)とのやりとりも楽しい。主人公が奥さんを「絹代」と呼ぶに至っては思わず大笑いしてしまった。この時代の田中絹代は小津安二郎監督のサイレント映画で何本か見ているが、後年の出演作で見せる味のある名演技とは違い、まさにもうアイドルという感じしかなく、素直に可愛らしいと思えるし、声も実にキュートである。映画自体の話に戻ると、この20年後に作られる国産初のカラー映画である「カルメン故郷に帰る」と同様に歴史的価値のある映画として語られる映画で、二本とも内容的にそれ以上のものはないかもしれないが、二本とも肩の力を抜いて気楽に見られる喜劇として評価できる映画だと思う。でも個人的にはどちらかと言えば本作のほうが「カルメン故郷に帰る」よりも単純に笑いに徹していて好きである。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-02-13 22:30:48) |
548. 大江戸五人男
《ネタバレ》 バンツマと市川右太衛門が共演した伊藤大輔監督の大作時代劇。序盤こそやや退屈するも、おきぬ(高峰三枝子)が皿を数えはじめるあたりから緊張感が増して、面白くなっていった。皿を割ったのがもとで水野(市川右太衛門)に斬殺されたおきぬの話を芝居で上演した(これが「皿屋敷」のはじまりか?)役者が水野に連れて行かれ、一人で来れば返してやると言われ、死を覚悟で水野の屋敷に出向くバンツマ演じる長兵衛はかっこいいし、いったん和解しかけた長兵衛と水野が一転して直接対決にいたる展開も無理がなく、ちゃんとドラマとして見ごたえのあるものになっている。最後は二人で三島雅夫演じる近藤を倒すという展開でも良かったかもしれないが、あえてそうはしていないことでドラマ性が高くなり、この映画を単にただの2大スター共演というだけのものにしていない。ラストの長兵衛の眠る棺を抱えた葬列のシーン、泣き崩れる権八(高橋貞二)に、長兵衛の妻(山田五十鈴)がかける言葉がいい。それに、長兵衛の息子の「もうケンカはございませーん。」と叫ぶ姿も泣ける。さっきも書いたように前半はやや退屈に感じる部分もあるのだが、名作時代劇の一本と言っていい素晴らしい映画だった。ただ一つ残念なのは「大江戸五人男」というタイトルの意味がよく分からないことで、これだけ見ると「七人の侍」のようにチームとしてまとまった複数の主人公の活躍を描く映画のように思えてしまう。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-02-12 17:25:19) |
549. 妖怪大戦争(2005)
《ネタバレ》 大映の妖怪三部作をベースにした妖怪映画だが、子供向けとしてもイマイチとしか言いようのない出来で、仲間内だけで盛り上がってしまっているような映画になってしまっている。(大映の三部作は「妖怪百物語」しか見ていないが、ちゃんと見ている人のことを考えたつくりになってたし、既に子供ではない自分が見てもけっこう面白かったのだが。)水木しげるロードや、記念館が登場するのはまだいいが、宮迫がビールを飲んでいるのは完全にCMとしか思えず幻滅。企画に参加している作家たちのカメオ出演もちょっとなあ。その作家たちのうち、原作としてクレジットされてるのが荒俣宏で、ボスとして加藤保憲が登場するのだが、演じているのは嶋田久作ではなく豊川悦司。悪くはないのだが、どうしても嶋田久作が頭をよぎってしまう。というか、「帝都大戦」でヒロインを演じていた南果歩が出ている(あんまりストーリーへの絡みはないが。)のだから、よけいに加藤役は嶋田久作が良かったと思えてしまう。おそらく、それだけで本作への自分の評価は少しは上がったはずだ。たぶん。 [DVD(邦画)] 3点(2013-02-12 01:34:43) |
550. 刑事コロンボ/白鳥の歌<TVM>
《ネタバレ》 今回は宗教にハマり、カントリー歌手である夫(犯人)のギャラをすべてその宗教団体に寄付してしまい、そのうえ、夫のある弱みを握っている妻(被害者)が本当に憎たらしく、見ながら、「こんなおばはん、早く殺っちゃいなよ。」と思ってしまった。犯行は、妻とコーラスガールが同乗し、自ら操縦する自家用機をわざと山中に墜落させるという命がけのもので、この犯行シーンはけっこうハデ。全体的には犯人に思わず感情移入してしまうストーリーで面白かった。なんといってもラストの車の中での犯人とのやりとりが印象に残り、すごく余韻のある終わり方である。「あなたは悪人じゃない。」というセリフと犯人にカーステレオで犯人自らうたう曲を聴かせてやるあたりにコロンボの優しさというものが出ていて、彼の人間性を感じることができる。犯人も自分のやったことを素直に悔いているのがよく、このラストシーンは素晴らしいものになっている。しかし、巻き添えになって死んだコーラスガールが実は最初から計画的に殺されたと思わしき展開がよけいで、このために少し脚本に無理を感じる。ここは変にいじらないほうが話的にはすっきりしたと思わずにはおれず、惜しい気がする。商売上手な葬儀屋や、仕立て屋のおばさんとのコロンボのとぼけたやりとりには思わず笑ってしまった。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-02-11 13:27:48) |
551. 関の彌太ッぺ(1963)
《ネタバレ》 「瞼の母」や「沓掛時次郎 遊侠一匹」と同じく長谷川伸の原作を錦之助主演で映画化した股旅もの。以前見た加藤泰監督による二作も良かったが、山下耕作監督である本作はとにかく泣ける。冒頭の川に落ちたお小夜を弥太郎(中村錦之助)が救いだすシーンから既にヤバかったし、殺されて帰ってくるはずのない父親をきっと帰ってくると信じて待ち続けるお小夜の姿も切なくて泣けてくる。はっきり言って序盤でこんなに泣けてこの先は大丈夫なのかと心配になってしまうほどだが、後半は10年後、成長したお小夜(十朱幸代)が名も知らぬ恩人に会いたがっているという話から、新たな展開を見せる。山下監督は、花を使った演出がうまいと定評のある監督だが、クライマックスのムクゲの花を挟んだ弥太郎とお小夜の再会シーン、弥太郎が子供時代のお小夜に言った言葉がきっかけで、お小夜に恩人だと分かるシーンも泣けるのだが、このシーンでは、二人をはさんだムクゲの花もすべてを知っているかのようにそこに咲いていて、まさしく立派に「演技」している。これはもう名シーンとしかいいようがない素晴らしさだ。ラストカットの彼岸花の使い方も、弥太郎の運命を暗示しているようで印象的だった。山下監督の映画はこれまでも何本か見ているが、間違いなく本作は山下監督の代表作であるとともに、日本映画としても屈指の名作と言っていい作品だと思う。もちろん、主演の錦之助もよく、最近見た出演作が脇役での出演が多かっただけに、やっぱり主役のほうが光る俳優なのだと再認識できた。とくにこういう股旅ものの人情時代劇の主役はハマリ役だ。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2013-02-07 14:59:20) |
552. 地獄花(1957)
室生犀星の原作を映画化した伊藤大輔監督の時代劇。「地獄花」というタイトルと京マチ子がヒロインを演じていることから、大映が外国の映画祭での賞どりを狙って企画した映画だと勘ぐってしまう。確かに撮影や美術などは大映らしい素晴らしさであるが、物語的にさほど見るものはなく、イマイチ面白くなかった。京マチ子は勝気なヒロインを熱演していて、その濃い顔立ちもあってか、とても演技にインパクトが感じられるが、表情が怖く、少しひいてしまう部分もある。相手役の鶴田浩二はいいのだが、個人的にはこの頃よりももっとあとのほうが好みかな。山村聡は京マチ子に言い寄る男の役で、普段誠実で真面目な印象があるだけに違和感があり、がんばってはいたが、若干ミスキャストに感じる。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2013-02-06 12:52:13) |
553. 映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ 天使たち
《ネタバレ》 ドラえもん映画シリーズの中でも最高傑作の誉れ高い「のび太と鉄人兵団」のリメイク版。シリーズの中でもとくにメッセージ性の強い話で、また個人的にも深く印象に残っているので、かなり不安があったが、実際に見てみると、オリジナルの雰囲気を損なうことなく、本作独自のアレンジであるジュドの頭脳をキャラクター化したピッポの存在も含めてうまく脚色している。本作ではリルルと静香が友情を築いていくのと平行して、のび太がピッポと友情を築いていく過程が描かれる。見る前はいくらなんでも詰め込みすぎだろうと思っていたが、バランスよくかつ丁寧に描かれ、ピッポの心変わりがリルルをも変えていくという展開にしたのはうまいと思う。少し分かりやすすぎると感じるきらいはあるが、ここにオリジナルとは違うドラマ性をみいだすことができるし、ピッポを単なる子供受けをよくするためだけのキャラクターに終わらせていない。むしろピッポがいることによって静香だけではなくレギュラーメンバー全員が主役という位置づけになっている。ピッポがのび太に「のび太と戦いたくない。」と言って泣き出すシーンは思わずピッポに感情移入してしまった。クライマックスの消えゆくリルルとピッポがそれぞれ静香やのび太と交わす最後の会話はやはり本作でも感動的で泣けるのだが、本作ではその前にリルルとピッポの会話があり、すべてを受け入れた二人のやりとりがすごく切なくて、このシーンのほうが泣けた。ピッポの登場は賛否両論あると思うが、個人的にはこのアレンジは成功だったように思う。ただその分、ミクロスが単なる端役に終わっているのは残念な気もするが、これは致し方ないところか。ほかにも不満はないといってしまえばウソになってしまうが、本作はオリジナルよりも「友情」というテーマを前面に出し、それを見事に描ききっている。水田わさび演じる劇場版ドラえもんシリーズはリメイクものしか見たことがないのだが、その中でもいちばん完成度が高く、オリジナルに負けないくらいの傑作だと思う。 [DVD(邦画)] 8点(2013-02-06 00:36:34) |
554. 刑事コロンボ/野望の果て<TVM>
《ネタバレ》 今回はコロンボというキャラクターを知るにはもってこいのエピソードとなっていて、自分のようなシリーズ初心者には嬉しい。歯医者のシーンやガソリンスタンドの店員と話すシーン、車を止められて修理を促されるシーンなど見ているとコロンボが実に愛嬌のあるキャラクターで、魅力的な人物であることが伝わってくる。内容的には上院議員である犯人の犯行動機がやや弱いし、爆竹を使って狙撃されたように演出するというのもいささかマヌケな気がしないでもないが、コロンボのキャラクターのおかげか、最後まで安心して楽しむことができたし、この前見た「構想の死角」よりも面白かった。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-02-03 13:42:07) |
555. 刑事コロンボ/構想の死角<TVM>
《ネタバレ》 若き日のスティーブン・スピルバーグ監督が手がけたことで知られる「刑事コロンボ」の一篇。推理作家を犯人としているだけあってトリックが巧妙で、前半はかなり面白かったのだが、ラストで犯人があっさりと犯行を自白しただけで決定的な証拠もないまま逮捕されてしまう展開はかなり物足りなく、ミステリードラマの結末としても弱い。もっとちゃんとコロンボと犯人の対決を描いたほうが面白かっただろう。またこのラストの犯人の自白のせいで、前半に殺された被害者(犯人とコンビで推理小説のシリーズを書いている相棒。そういえば小説ではないが、このシリーズも二人の人間によって生み出されている。)も自分がメモに書いたことくらいおぼえておけよと突っ込みを入れたくなってしまったし、後半の脚本ははっきりいってお粗末。スピルバーグ監督のきをてらったような演出は彼らしいとは思うが、作品としては凡作の域で、スピルバーグ初期の作品というネームバリューがなければ、シリーズ最高傑作などという冠はつかなかったのではないかと思う。(このシリーズまだそんなに見たわけではないが。)同時期のスピルバーグ監督の低予算のテレビ作品である「激突!」は、他国では劇場公開もされるほどの大傑作で、彼の映画の中でいちばん面白いと思っている作品なのだが、本作はあれと比べるまでもない出来であることは言うまでもない。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2013-01-31 01:03:04) |
556. ハリーの災難
《ネタバレ》 アルフレッド・ヒッチコック監督と言えばサスペンス一筋で有名な監督だが、この映画は森の中で発見された一体の死体をめぐる騒動を描いていて、緊迫感などはなく、実にほのぼのとしたタッチのブラックなコメディーに仕上がっている。死体を発見したら普通は驚くと思うのにこの映画の登場人物たちはすごくあっけらかんとしていて終始明るい雰囲気なのがいいし、みんないい味を出している。死体が登場人物たちの都合によって何度も埋められたり掘り返される展開は、死体に思わず同情しながらも実にブラックで、思わず笑わされてしまった。シャーリー・マクレーンのデビュー作とのことだが、なんともコケティッシュなかわいい風貌で魅力的。でもだからこそこんな若い美人が死体を前にしてもあっけらかんとしているのがある意味すごく、そのギャップも笑えたりする。でも、彼女がほとんど初対面の男といきなり結婚するというのはコメディーといえどちょっとやりすぎな感じがしいないでもない。舞台が秋の村なのだが、紅葉の映像も印象に残る。サラリと軽く作られたような映画ではあるし、傑作とも言い難いのだが、出来はよく、あまり見ていないのだが、サスペンスだけではないヒッチコック監督の幅の広さを感じることができる。個人的にちょっと疲れぎみでちょうど軽めのコメディーを見たいと思っていたところだったので、何も考えずに見て、楽しめる本作のような映画はちょうどいい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-29 19:33:39)(良:1票) |
557. 上を向いて歩こう
《ネタバレ》 坂本九の世界的名曲「上を向いて歩こう」をモチーフにした舛田利雄監督による青春映画で、主演はもちろん坂本九。しかし、彼の明るい印象とは対象的に、若者たちのすれ違いや誤解から生ずる対立が描かれ、坂本九の恋人になる女性(渡辺友子)が障害者であるなどどことなく暗い内容。舛田監督といえばこういった青春映画よりもアクション映画の印象が強い監督だが、この映画でもクライマックスのケンカのシーンに力が入っており、およそ爽やかな青春映画とはかけ離れているが、その壮絶なケンカが吉永小百合演じる娘の一言によって終息するというのが、多少強引で甘いような気もしないでもないが、映画自体は思っていたよりは面白かった。劇中ずっと「上を向いて歩こう」のメロディーが流れるのだが、歌は最後だけ、という焦らしがうまく、これによって主題歌が流れまくるくどさは感じないし、逆に最後の合唱シーンで、今まで暗めの物語の中にあって、最後に流れるからこそ、明るく見終わることができるという構成がにくいし、思わず待ってましたという気にさせられる。歌われる「上を向いて歩こう」に四番歌詞が歌われているが、「手をつなぎ歌おう、若いぼくらの歌」でしめる歌詞が希望があってよく、のちにこの映画のために加筆されたものなのか、好きな歌だけにリリース盤に収録されていないのが惜しい気がする。 [DVD(邦画)] 6点(2013-01-23 18:17:07)(良:1票) |
558. コクリコ坂から
宮崎吾朗監督の前作「ゲド戦記」のときは監督としての力量云々よりもアニメ製作にまったくかかわったことのない素人同然の人を話題性だけでいきなり大作の監督に抜擢してしまった鈴木敏夫プロデューサーに驚かされたが、吾朗監督の2作目である本作は一転して小品で「ゲド戦記」よりはうまくまとまっている。しかし、内容的には決して面白いとは言えず、1960年代を舞台にした青春映画だが、最近の若い監督の作品とは思えないほど古臭く感じ、主役の二人などは見ていて日活時代の吉永小百合と浜田光夫が実写で演じていても何ら違和感がないとさえ思ってしまった。「耳をすませば」と同じく宮崎駿監督が脚本を書いているが、あれに比べると明るさも躍動感もなく、ジブリらしさもあまり感じられない。それでも全体的には無難な仕上がりで、吾朗監督は「ゲド戦記」のような大作よりも、本作のような小品を監督デビュー作として手がけたほうがまだたたかれずに済んだとも思える。が、一方で父の書いた脚本を何も言わずにそのまま映画にしてしまったようで、あまりにも無難すぎる印象があるのも事実である。 [地上波(邦画)] 4点(2013-01-20 12:41:23) |
559. 一命
《ネタバレ》 三池崇史監督が「十三人の刺客」に続いて往年の名作時代劇をリメイクした映画。「十三人の刺客」同様にオリジナルである小林正樹監督の「切腹」を見て一週間ほど経ってから見た。「十三人の刺客」はうまく現代のエンタメ時代劇としてアレンジされたものに仕上がっていて、工藤栄一監督のオリジナルを見たあとに見ても楽しむことができたが、本作は「切腹」をほぼなぞるかたちで進行する無難な仕上がりで、まったく面白くないというわけではないが、法廷サスペンスでも見ているかのような緊迫感があった「切腹」と比べると、後半になってからずっと回想シーンというのもあってか、あまり緊迫感は感じられず、「切腹」よりも人情劇としてのウェイトが強い印象で、そこが物足りないし、登場人物のセリフもやや説明的になっているような気がする。また、立ち回りのあと、役所広司演じる勘解由が後の処理を命ずるシーンがないことで本作が「切腹」とは印象がやや異なったものになっている。これによって「切腹」ではラストの井伊家側の態度を示すシーンを描くために必要と感じたラストの半四郎の立ち回りがただの見せ場と化しているような感じになっているし、劇中の季節が「切腹」とは違うのも、このシーンに雪を降らせて、3D効果による見せ場を演出したかっただけではないか。はっきり言ってこのシーンの雪は不要な気がする。それと、欠勤している三人を演じる俳優が「切腹」と比べて小粒な感じで、半四郎と彦九郎の決闘がないのも物足りない。半四郎役の海老蔵はスキャンダラスなイメージがどうしても強く、好きではないが、まずまずの好演といったところ。でもやはり仲代達矢のあの演技力には勝てないか。(当時の仲代が本作の海老蔵よりもほんの少し若かったというのは驚く。)勘解由役の役所広司もうまいのだが、やはりこれも三國連太郎のほうがはまっていたと思う。いっそ、半四郎役を役所広司で、勘解由役を仲代達矢にしてしまったほうが良かったような気もする。ところで本作はタイトルをなぜ変えたんだろう。「切腹」のままのほうがインパクトがあっていいと思うのだが。 音楽担当が坂本龍一なのは「切腹」の音楽担当が武満徹だったことを意識した起用かもしれない。 [DVD(邦画)] 5点(2013-01-17 15:41:05) |
560. 喜劇 にっぽんのお婆あちゃん
《ネタバレ》 渡辺宙明の軽快なテーマ曲にのってミヤコ蝶々と北林谷栄が街を歩く。この二人の老け役女優が良く、ほかにも最年長の東山千栄子をはじめとする老人役のほか、日本を代表するような名優たちが出演していて、それだけでも見る価値のある映画なのだが、内容は「喜劇」というには重い老人問題を扱っていてあまり笑えない社会派映画となっている。今でこそ少子高齢化社会であるが、この映画の製作当時はまだそんなことは言われていなかっただろう時代にこのテーマの映画というのは社会派・今井正監督の先見の明を感じずにはいられないし、ラスト近く、帰宅したミヤコ蝶々に対する家族の冷たい態度は現代から見ればものすごくリアルに感じられる。ただ、ラストはミヤコ蝶々演じる主人公が北林谷栄のいる老人ホームに行くところで終わったほうが少しは希望があったのでは。あのまま主人公が息子夫婦と暮らしていくよりはいいと思うのだ。とはいえ、北林谷栄はある疑いをかけられ、その老人ホームを抜け出したことからも考えられるが、老人ホームが本当に老人にとって安住の地なのかと言われれば微妙なところで、結局どちらがいいとも言えないのが実情だろう。この問題は今現代においても全く変わっておらず、むしろ今のほうが深刻になっているのだ。非常に考えさせられるいい映画だったと思う。老人ホームの職員役で小沢昭一が出ている。去年暮れに亡くなってしまったのは本当に残念だった。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-01-13 14:24:42) |