41. ユーズド・カー
《ネタバレ》 道路を挟んだ2軒の中古車販売店の商売騒動!というあまりにもこぢんまりした設定が実に魅力的。さぞや馬鹿げた下らないネタがいろいろと、と期待したのですが、意外にストーリーが跳ねない。至るところで妙に深刻だったり真面目だったりする。終盤の中古車一斉大移動はそれはそれで壮観であり、むしろここから逆算したんだろなどと思いつつ、それでもやはり本来の作品世界とは合っていない。というわけで、妙に長く感じました。いえ、実際にもこの設定と内容で110分超えって、長いんですが。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-12-30 22:08:18) |
42. 台風クラブ
台風の接近と青春の衝動の爆発やねじれを重ね合わせるというコンセプトはとても面白く、また描写のインパクトも強いので、低い点はつけられないのですが、作品として普通に楽しめたかと言われたら、ノーです。特に、やたら暗い映像と、役者の表情などどうでもいいと思っているかもしれないロングショットばかりのカメラに参りました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-12-13 01:10:20)(良:1票) |
43. 土佐の一本釣り
土佐の漁師の漁やら生活やら恋物語を綴った作品かと思いきや、それだけにあらず。登場人物を配置して動かすだけではなく、何というか、その中に、漁師たちの文化というか、慣習というか、回路というか、そういったものまで自然と浮かび上がっているのです。それぞれのキャラが、芝居をするだけではなくて、画面の中で呼吸をして生きています。それは、傍目には驚くような行動や発言でも、全員が迷いなく自信満々に行い切っていること(そしてそれを一貫して引き出している演出の腕)によるものでしょう。一方で恋物語の部分については、スーちゃんのセーラー服女子高生姿が存分に拝めるという贅沢すぎる付加価値もさることながら、適度にすれ違いや心理の綾も織り込んでいて、単純には終わっていません。また、宍戸錠、加藤武、蟹江敬三、阿藤海といった熟練の皆様の渋いサポートぶりも心地よいところです。それにしても、スーちゃんという人は、「世界の歴史で最も、しかめっ面が可愛らしい女優」なんだなあ。 [DVD(邦画)] 7点(2022-12-05 00:13:01) |
44. 極道の妻たち 三代目姐
ショーケンは存在感はなかなかなのだが、演出上の人格造形が何ともまずく、下っ端のチンピラなのかそれなりの威厳のある若頭的存在なのかが分からなくなっている。輪をかけて、三田佳子とかたせ梨乃の双方に男女関係的なものを絡めてしまったのがまずく、三田佳子がさっぱり「極道の妻」には見えない(メロドラマの主人公にしか見えない)のを筆頭に、全員が共倒れになっている。●見どころとしては、上田耕一兄貴が幹部クラスで割と出番が多いところでしょうか。あと、画面の中にいるだけで周囲の空気まで変えてしまう、綿引勝彦の伯父貴。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-11-29 23:56:24) |
45. サボテン・ブラザース
《ネタバレ》 発想一発でシンプルに勝負、内容は素直に勧善懲悪。こういうのはそれでいいのです。クライマックスの「作戦」なんてのは、ネタとしても優れている上に(アミーゴの理念が村全体に拡がったという象徴機能も込み)、ビジュアル面でもインパクトがあって美味しかったりします。 [DVD(字幕)] 8点(2022-11-24 01:51:46)(良:1票) |
46. 極道の妻たちⅡ
《ネタバレ》 十朱幸代の凜とした存在感はもちろんさすがなのですが、制作側がそこに依存して終わってしまいました。かたせ梨乃は最初は堅気だったのがいつしか「極妻」へ、と思っていたら、結局そのまんまで、あれなら最後の処理も含めてその辺のチンピラの愛人と同じです。村上弘明は途中から不自然に出番が増えすぎで、かえって立ち位置がはっきりしなくなっています。で、そういった合間合間に十朱幸代と藤岡琢也の夫婦漫才もどきのやりとりが挿入されているので、さらに方向性が迷走しています。神山繁先生の対抗組織の大親分というのは、なかなか貴重かも。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2022-11-20 01:32:12) |
47. 極道の妻たち
《ネタバレ》 終盤くらいまでは、低空飛行と上昇を繰り返しながら、(かなりの部分が成田三樹夫頼みとはいえ)何とか息を接いで見ることはできる。ただ、クライマックスのはずのキャットファイト以降が完全にグダグダで。あの取っ組み合い自体、同じ五社監督の「陽暉楼」の池上季実子vs.浅野温子の足元にも及ばないが、最後のオヨヨワンワンは何なのか。外で待機しているお付き部隊の表情が、呆れているようにしか見えないし、それはこの作品を見ている側の心境と同じ。私はてっきり、最後にかたせ梨乃がガバッと諸肌脱ぎになったら、その背中には一面の刺青が、というシーンを予想していたのですが(あれだけ前半で刺青をどうのこうのしてますからね)。またその後も、世良公則や佐藤慶を死なせる必要はまったくないし、そこまでの流れにも逆流している。というわけで、実は誰も「極道の妻」ではありませんでした(岩下志麻の場合、その存在自体がすでに極道でしょ)。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-11-13 00:59:40) |
48. ゴースト・ハンターズ
《ネタバレ》 前に見たときはC級以下としか思わなかったのに、まさかこんなに味わいある作品だったとは・・・。もっともらしく誘拐される空港シーンで、これは背後に壮大な陰謀が?と思ったら、理由はまさかの「目が緑色だから」。これがすべてを象徴しています。さしたる必然性もなく登場人物はてんこ盛りです。敵味方含めて、強いのか弱いのかもよく分かりません。そんなカオス状態な中でも、「悪の勢力に捕らわれたお姫様を助け出す」という超古典ストーリーの枠組は固く維持されています。いうまでもなく、こんな作品の主役が務まるのは、カート・ラッセルだけです。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2022-11-11 23:53:19) |
49. マリリンに逢いたい
《ネタバレ》 主演の彼の演技がびっくりするほど下手。安田成美も、後の名女優の気配すらない棒読み演技。●そもそも、肝心の兄弟がそれぞれ頭が悪いとしかいいようがなく、人間的魅力が皆無なのは痛いです。動物の頑張り(モデルという意味でも演技という意味でも)に対し、これほど周りの人間が足を引っ張っている作品も珍しいのではないでしょうか。しかも、犬自体も「泳いで会いに行っている」という以外には何も描かれておらず、出番の大半は人間の側なので、さらにそこが作品の質を落としています。●結局これって、作中でシロの「画」だけを撮ろうとしているテレビスタッフが揶揄的に描かれますが、それと次元において同じことを制作者自身がやってしまっているんではないの? [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-11-07 23:41:34) |
50. ミッドナイト・エンジェル/暴力の掟
《ネタバレ》 誰が何をしたいのか分からないまま序盤が進み、何とそのまま進んでいく。あれこれうろちょろする3人組は、無軌道で未熟な少年という設定のようなのだが、どうみてもヒッキーのオタクトリオにしか見えないので、どこから行動原理が出ているのかが分からない。そこに絡んでくる女も、進行を混乱させているだけだし、輪をかけて、救世主的に登場したっぽいその兄(刑事)は、何も機能していない。よって、外国のシンジケートがどうのこうのと言われても、そもそも問題設定としてまったくかみ合わないのです。つまり、それっぽい映像の細切れを何とか並べただけのこと。 [DVD(字幕)] 2点(2022-11-01 01:14:02) |
51. スクープ・悪意の不在
《ネタバレ》 おおこれは硬派な題材、しかもニューマンにサリー・フィールド、と期待しながら見始めたのですが、思ったほど話が弾まない。これはやはり、女性記者の視点で構成してしまったのが失敗ではないでしょうか。筋からいえばニューマンの報復話であるはずなのに、その立ち位置が曖昧になっていて、しかも男女の仲がどうのこうのまで絡んでしまったのだからなおさら。よって最後も、無理矢理まとめたようにしか映りません。サリー・フィールドの純粋一直線な記者役というのは案外新鮮だったので、点数はそこに対して。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-10-25 00:34:58) |
52. 戦場(1989)
《ネタバレ》 ジャングルの奥深く分け入ったら、同胞が現地の王として君臨し、そこに同化していた・・・となれば、「あの作品」の終幕部分を連想しますし、あそこから話をどう広げたんだろう、と期待が湧きます。はたして序盤は、日常を微妙に逸脱した不穏な空気のままに、いい感じに進みます。ところが中盤以降は、別にそんな設定の必要もないような、友情もの&戦地アクションものに結局は終始してしまいました。ニック・ノルティも、最初はノルティでなければ持ちえないような独特の存在感を発していましたが、中盤からは、ほかでも見られるような演技になってしまっています。 [DVD(字幕)] 5点(2022-10-24 20:54:37) |
53. 夏の別れ
《ネタバレ》 萬田久子を対象とする青春年上女性ものなんて、その時点で期待がどこまでも高まるというものなのに、これはまったくいかん!そもそも、出番自体が全然少ないし、まったく綺麗に撮られてもいない。そもそも恋に落ちるべき要因がありません。主人公はやってることは変態犯罪行為のオンパレードで、恋心も憧憬の情もあったものじゃない。ラストの強引さには、誰かが何か自棄でも起こしたのかと思いました。萬田久子のこんな使い方をするな。 [DVD(邦画)] 3点(2022-10-23 18:54:34) |
54. タップ
《ネタバレ》 とにかくタップを見せる!あらゆるシチュエーションで見せる!主人公以外も見せる!という統一された意識が何とも美しい。またその中で、ただタップをさせるというだけではなくて、主人公のタップの作り方とか(工事現場の勢揃いタップは名シーンだと思います)、ストリートタップとブロードウェイタップの違いとかにも食い込んでいて、制作者のタップへの愛情を感じます。それと比較すると、昔の仲間とどうこうはいらないんじゃないか?と思っていましたが、オーディションで恥をかかされた反動でそっちに走ってしまうくだりで、上手くつながりました。あと、暗めのところに光が差して溜まっているようなスタジオの撮り方も巧いと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-09-18 00:37:08) |
55. ドライビング Miss デイジー
《ネタバレ》 いろんなところで笑ってしまった後で、いつしかそれが涙に変わっていくという卑怯な映画。派手な映像や凝った設定がなくても、人の心の動きや変化が的確に表現できて、それが見ている側に伝わったら、感動は生まれるのです。文盲の問題や黒人差別の問題など、ベタな演出をしたらいくらでもできたと思いますが、この話の中心的主題はそんなところではないし、あえてそれをせずにこのレベルに達したのは素晴らしい。人物については、デイジーおばあちゃんは救いがたいほど頑固なのに妙に憎めないし、ホークの方も、単に有能なだけではなく、言動は結構俗っぽいところが面白い。最後、ボケたデイジーがホークの手を握るところでいつもぐっときます(2人の身体が接するのは、この場面だけなんですよね)。 [映画館(字幕)] 8点(2022-09-11 14:00:37)(良:1票) |
56. ドグラ・マグラ(1988)
この異形の怪作を映画化しようと真面目に考えて、そして本当に作ってしまったというだけでも価値のある作品。そのチャレンジャーぶりは、「不連続殺人事件」と双璧をなすともいえるのではないか。変にまともっぽいことをせず、淡々と粛々と進んでいく作り方に好感。もっとも、原作が原作なだけに、親切な分かりやすい作品には間違ってもならないのだが。 [DVD(邦画)] 5点(2022-08-06 01:51:01) |
57. クリープショー
《ネタバレ》 ホラー作品というのは、ただ怖い生き物や不気味な現象だけをそのまんま出しても面白くなくて、ある程度理性に訴えたり、現実との関連性を示してくれたりしないと、怖くないのです。その意味から考えると、これは不合格です。作中に煽りが入れば入るほど、逆に怖くなくなっています。これはパルプ・フィクションですよという冒頭の設定も、別に機能していません。ただ、もしかするとタランティーノはこれを見ていて、「自分ならもっとセンス良くできるぜ」とか思ったのかも。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-07-29 21:31:25) |
58. ガン・ホー
《ネタバレ》 世にトンデモ日本映画は数あれど、これはかなり凄いというか、いっちゃってるレベルですね。まさに日本がアメリカの国土まで買い漁ろうという勢いだった80年代の一面を反映しています。しかも監督がロン・ハワードというのも驚きです。ただ、コメディ演技をどこまでも真剣にできるマイケル・キートンのおかげで、なぜか破綻を免れているという不思議な作品でもあります。エンディングのジミー・バーンズ"Working Class Man"(作曲はジョナサン・ケイン!)に3点。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-07-15 00:39:33) |
59. 男はつらいよ 寅次郎真実一路
《ネタバレ》 マドンナが大原麗子といえばもちろんあの名作「噂の寅次郎」が思いつくのであり、でもあれを超えるのはそう簡単ではないだろうと思いながら見てしまうのですが、やはり超えられませんでした。「噂の」ではシャープな演出で麗子さんの魅力を鋭く引き出したわけですが、こちらでは、制作側が逆に麗子さんに寄りかかっています。とはいえそれにも耐えうるほどの麗子さんの輝きと存在感は、さすがです。●コンセプトとしては、「都心の高層ビルや新興住宅に登場する寅」がやりたかったんだろうな。それはそれで貴重ですが、やっぱり寅はどうやっても生きてないというか、居心地悪そうです(笑)。そして終盤には、失踪夫の存在をどう捉えるかというドラマに直面するわけですが、「俺の心は汚い」のくだりは、無法松から継承して馬鹿シリーズから続く、監督生涯のモチーフですね。●再見して気づいた点。津島恵子のお見事薩摩弁。そういえば大河ドラマの「山河燃ゆ」と同じ年なんだけど、まさか監督、あれを見ていて津島さんを拝借したんじゃないだろうなあ・・・。●そして実は一番ぞくっとしたのは、鹿児島ツアーでメインの桜島に着いたと思ったら、「もう帰りましょう」とあっさり収束するあの切れ味。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2022-06-09 00:55:17) |
60. コンペティション(1980)
ところどころやたら気合が入っているのだが、一番まずいのは、当事者たちの競技会に向けたスタンスであるとか、周辺人物の立ち位置であるとか、その辺のベクトルが全然はっきりしないこと。それによって、全体の描写がものすごく中途半端になってしまっているし、演奏シーンによりかかった内容になってしまっている。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-05-31 00:57:55) |