Menu
 > レビュワー
 > ボビー さんの口コミ一覧。3ページ目
ボビーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1016
性別 男性
ホームページ http://blog.livedoor.jp/gepper26/
年齢 37歳
自己紹介 いつまでもこどもでいたいから映画は感情で観る。その一方で、もうこどもではいられないから観終わったら映画を考える。その二分化された人間らしさがちゃんと伝わってくる映画が好き。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作年 : 2000年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
評価順1234567891011121314151617181920
212223
投稿日付順1234567891011121314151617181920
212223
変更日付順1234567891011121314151617181920
212223
>> カレンダー表示
>> 通常表示
41.  アフタースクール 《ネタバレ》 
観終わった後、気分は良かったです。楽しかったな、という感覚ははっきりとありました。でも、映画として、あるいは映画監督として、この作品が持つ存在意義や、監督が観ている側に何を伝えたかったのか、などの思想的な部分がいくら考えてもわかりませんでした。なんとなく、脚本の構成に誤魔化され、そこに圧倒された結果、それが面白かったという錯覚をもたらしているような気がしてなりません。しかし、ぼくが投稿するまでの方々が述べられている文章を読むと、そういったエンターテイメント性があれば映画は成立するのかも知れないとも思えるので、もうわけがわかりません。でも、ぼくはやはりこれは違うような気がします。映画が見せるのは、出来事の面白さではなく、人間の感情がもたらす出来事や事件によって、変わっていく人間の感情だと信じています。その変わりようを観て感情移入し、その先にある鑑賞後で、登場人物がこれからどうなっていくのか想像できることが余韻なんだと思います。それこそ、映画の醍醐味なんじゃないのかと思います。それが感じられなかったこの作品。最終的に台詞だけで感情を説教臭く説明されても、それは右から左へです。見せて欲しいのは、変わっていくその人間の姿。観客の思い込みを付いた同じやり口のM・N・シャマラン監督「シックス・センス」では人間の感情の変化が観れるから素晴らしいのです。この作品で人間を観た気にはなれません。だから、鑑賞後そろそろ一週間が経とうとしていますが、もう既にどういうストーリーで、どういう想いを抱えた人があの作品にいたのか思い出せなくなっています。きっと一年経ったら、この作品の存在すら忘れていると思います。それでいいのでしょうか?そんな流行の媒体のようなその場限りの存在で映画はあっていいのでしょうか?ぼくはそうあって欲しくないです。
[映画館(邦画)] 5点(2008-06-29 18:35:02)(良:1票)
42.  幸福の鐘 《ネタバレ》 
男に家庭がある事を裏にしているから、こいつが一体どこに何の目的を持っているのかわからず、それが明かされるのを期待して観ていましたが、最後はあれですか…じゃあ、なんでそれまで無言なのですか?あれじゃ人間に見えないですよ。無言でい続ける動機、理由がさっぱりわかりません。あれだけ温厚で饒舌な男がなぜ、無言?意味がわかりません。実験的な感じでやってみたかったんだろうなということはわかります。でも、それが何?しゃべらなければいいと?演技は、映画は台詞じゃないといいたいのですかね?それをこういう形で表現するのはいいですよ。でも、それなら最後まで貫いてくださいよ。どんな方法だろうといいですから、この方法では人間に見えません。男の全体を通した動機が理解できないままでした。
[DVD(邦画)] 4点(2008-06-29 18:32:58)
43.  エクステ
映画そのものの恐怖よりも、世界のどこで切り取られ、集められたものかも分からない髪の毛をエクステとして付けている事の恐怖を強く感じました。世界中で、髪を切り取られるだけでなく、内臓や目玉まで奪われるような事が日常的に行われていることを想像すると、世界が狂っていることを実感します。園子温監督は、緊張感を持ってほしいのでしょうか?それとも恐怖感?日常の直ぐ隣にあるような社会問題に目を向け、そこから物語を膨らまし、発想していく監督のやり方はとても素晴らしいと思います。髪の毛そのものが商品になり、それを笑顔で取り扱う全ての人間の欲望を消し去ろうとするのは、髪の毛。女性の美の象徴であったりする髪の毛が、悲しみや苦しみで染まり、それを知らない、あるいは知ろうとしない日本への叫びに鳴らない苦しみのようなものを強く感じました。素晴らしい社会派作品だと思います。ただ、エグいシーンはやっぱり苦手です…
[DVD(邦画)] 7点(2008-06-29 18:00:42)(良:2票)
44.  ぼくの大切なともだち
やろうとしている事がとても興味深くて、そそられて足を運びましたが、やはりお国柄というのでしょうか?フランスの人々は綺麗で格好いいんですが、上手く理解できないことが多々ありました。あの人たちの性格に対し、「へぇ、そうんだ」というふうに知識的には刺激がありましたが、あの登場人物達の言動含めた動機や感情全てをすんなり「はい、そうですか」と受け入れることができませんでした。やっている事自体は面白いと思ったんですが、根本的な部分は同じでもやはり国によって違ってくる感覚、思想的な部分でつまづいてしまいました。
[試写会(字幕)] 6点(2008-06-27 00:42:38)
45.  蛇イチゴ 《ネタバレ》 
この作品から最も強く感じられることは「正しさ」とはなんだ?という想いでした。正解のない世の中で、何が間違ってるかもわからなくなります。そんな想いが最も伝わるのは、主人公の教師をやっている妹の感情でした。彼女は序盤で、マスダ君という少年の母親が実際に病気であるかも確かめずに、自分の意志や考えを信じ切っているからなのか、自分なりの答えを押しつけてしまいます。物事には、どんなことでも多面性があり、「これはこうだ!」なんて一方の事実から得た情報で決めつけることはあまりにも危険なことだと思っています。だからそれをしていた彼女の真面目さというか、正しさを追い求める姿がどうなっていくんだろうというのが最も興味深い作品でした。自分の家族や仕事、そして自分自身を信じていた彼女は、その全てが離れていき、そして自信を失っていきます。自分は「正しい」と信じたい彼女の思いがよく伝わってきます。だから、終盤で兄を裏切る走るカットと電話のシーンが痛々しく感じられたんだと思います。その後の鼻歌が力強かったのも理解できました。そして、ラストシーンで蛇イチゴが食卓の上に置いてあるそれを見た彼女の失意の表情。親に裏切られても、婚約者に裏切られてもへたり込みはしなかった彼女がへたり込むという事は、自分自身に裏切られた、あるいは自分自身への信頼の喪失を描いていたのかも知れません。自分自身を見失うことはそれこそ、生きた屍だと思います。巧いなぁ~と思いましたが、できればその失意から這い上がってくるところの方が見たかったです。「ゆれる」ではそれが描かれていたように思うので、個人的には「ゆれる」の方が面白かったです。
[DVD(邦画)] 7点(2008-06-27 00:08:30)(良:2票)
46.  自殺サークル
年間の自殺者数は約32000人。一日約、87人の方が自らの命を絶っている。人知れず、約15分に一人のペースで今この瞬間も日本のどこかで、見知らぬ誰かが自分を殺している。作中で無垢な子どもが言っていたが、「自殺クラブ」なんて存在していないのに、毎日それだけの人たちが死んでいく。「ここがプラットホーム」という言葉の通り、日本中のいたるところがプラットホームのように、次々と身を投げ出して命を絶っていく。同時に54人の高校生がプラットホームから身を投げれば、あれだけ話題にもなるが、一人一人が別々の場所で身を投げても話題に上がることがない。また、自殺は法律で罰することができない。結局、誰にも止めることは出来ない。するのもやめるのも、自分の判断でしかない。だから、あなたはあなたの関係者ですか?や、勝手にしろという台詞が重く胸に圧し掛かってくる。ぼくはこの問題を覆う、多くの物事に無関心だった。園子温監督の想いがヒシヒシと鑑賞後に伝わってきました。やはり、映画は鑑賞後にしかないのだと改めて学ばせていただいたように思います。
[DVD(邦画)] 8点(2008-06-24 19:21:09)(良:4票)
47.  靖国 YASUKUNI
右側の女性国会議員さんの発言によって、映画を始めとする表現者たちの表現が奪われようとしている今日。まだ解決していないこの問題。非常に重要な問題だと思う。でも、作品の評価とそれはまったく別問題。この作品はドキュメンタリーであり、それは真実を描きながらも、監督の思想が100時間に渡る画の中から厳選し、構成された約二時間に納まって、詰まっていなければならないと思う。複雑に絡み合う人々と、国とその歴史。それはわかった。しっかり説明されてあったから、まったく知らなかったぼくにとっては非常にためになった。でも、この作品の監督の思想は中途半端だと思う。南京大虐殺はなかったといいたいのか?それぞれに思いはあるといいたいのか?なんだかあやふやでどこを掴めばいいのかわからない。ぼくはこの作品はドキュメンタリーとしてあまりにもお粗末なものだと思う。
[映画館(邦画)] 5点(2008-06-05 18:08:09)
48.  長い散歩 《ネタバレ》 
近代、社会問題として浮上し、世間一般にその存在が知れ渡り始めた児童虐待ですが、日本での児童虐待への解釈が「子どもは親が育てるもの」という意識と、子どもが親の「所有物」という二つの意識が社会通念として根強いため、この作品のような児童虐待が家庭の問題として、安易に処理される傾向が今現在もあるようです。この作品に描かれている児童虐待は、「児童虐待の防止等に関する法律」における定義の身体的虐待・ネグレクト・心理的虐待・性的虐待に挙げられている例、全てに該当する虐待が描かれていました。それらを描くことがどれだけ辛く苦しい作業だったか想像するだけで、気がどんよりと重くなります。ですが、監督がそれらを描くことでしか表現できないと信じたその想いもしっかり伝わりました。また、作品に登場する主要な人物たちにはそれぞれ事情があり、虐待されている少女の悲惨な状況と少女を虐待し続ける母親の虐待に至った動機、そしてその家庭の隣に越してきた主人公が背中に抱え続けているトラウマ的な家族への後悔とそれから逃げようとしている現状。全ての登場人物たちが逃れようにも逃れられない現実と向かい合っているのがしっかり描かれていました。そんな、個々の事情を描き、一方的かつ断定的な否定をしないところに、監督の人間に対する愛情の深さと、他者への尊重と想像を忘れない姿勢を感じることが出来ました。虐待をしている事実があるのにも拘らず、親権を盾にされてしまえば正しき行いをしている主人公が誘拐犯という犯罪者にされてしまうその描写に、現代社会が抱える問題を考えさせられました。それが作中でも描かれており、ラストシーンで主人公に救いがないのは、現代社会がそういう仕組みになっているという現実を描いていたのだと思い、それを描いた監督の社会への憤りを感じ取ることができました。PTSDになってしまった悲しき少女と、家族への償いの意識を抱え続けている主人公は目的地に向かって逃亡します。その過程で存在する我慢と愛情の姿勢に、児童虐待の解決策、あるいは子育てに最も必要な意識を垣間見たような気がします。この問題に関しての知識と考えるきっかけを与えてくださった監督に心から感謝したいと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2008-06-04 19:19:38)
49.  ALWAYS 三丁目の夕日
“戦争”という痛みと悲しみの時代を生きた人々は、戦争を終え、心に夢や希望を抱いていた。現代のように便利な物は何も無いけど、その分、心にはいつだって優しさや温もりがあった。東京タワーの足元に広がる小さな街の隅っこでは、そこに暮らす全ての人々が家族のように身を寄せ合って、助け合って生きていた。幸せや喜びを共有し、日々の暮らしの中に何気なく転がるそれらを、いつも笑顔で噛み締め合っていた。何も無いからこそ人々は前向きに生き、瞳をキラキラさせ、助け合っていた。この映画の中の時代は、本当にそんな時代だった。タバコ屋のおばちゃんも家族を失ったアクマ(タクマ)先生も、いつもタバコ屋のおばちゃんにこけさせられていた何屋かわからないおじさんも、みんな輝いていた。この頃の日本は、きっと世界一輝いていたのだろう。みんな一生懸命生活が豊かになるように努力して、東京タワーやテレビや車を作っていた。だけど、人々はたくさんの物を豊かにしていく中で、いくつもの物や人の心を見落とし、捨て去ってしまった。ゴミ捨て場に置かれたドアの開いた冷蔵庫。氷を使って冷やした冷蔵庫。そして必要のなくなった氷と氷屋のおじさん。今に至るまでに日本は、そして世界はどれだけの心を見落とし、そして捨ててきたのだろう。物が豊かになればなるほど、なくしてしまう心の豊かさ。あの頃は世界一だった東京タワーは、今は世界で何番目なのだろう。誰も気にしない。意味の無いことなのだろうか。あの頃と変わらない高さで、変わり行く時代に取り残された東京タワー。時代の流れや文化の変化は誰にも止められないけど、なくしてはいけないという心さえあれば消えはしない。それが思いやりの心や感謝の心、そして愛するという心。エンディングでも流れていたけど愛は変わらないのだ。そして変えてはいけないのだ。この映画には今の日本には無いものがたくさんある。たくさんあり過ぎてここでは伝えきれない。やっぱり本当に大切なのは心の豊かさなんだ。この映画は心を温もりと優しさで一杯にしてくれる。止めどなく流れる涙の暖かさがそれを教えてくれた。夕日は明日も明後日も50年後も、きっと空と街を今日と変わらずオレンジ色に染めてくれるだろう。僕もいつまでも、いつも変わらない夕日のように輝いていたい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-06-03 18:20:39)(良:2票)
50.  かぞくのひけつ 《ネタバレ》 
この作品は本当に大好きです。あまりの好きさに、珍しく、三度も映画館へ足を運んでしました。まず何が良いって、それは言わなくても観ればおわかりになると思うのですが、この作品の登場人物たち全員が本当に素敵。魅力的という言葉がこれ以上にないってほどシックリきます。主人公を演じるのは、作風がかなり似ていますが(監督もとても気にしておられた)、富樫森監督作品『ごめん』の久野雅弘君。このお世辞にもカッコいいとはいえない風貌と存在感が素晴らしい。ダサい、情けない、頼りないの三拍子が彼からは発せられていますが、その魅力と言ったらジャニーさんでは理解できないでしょう。この映画俳優としてだけ成立する良さが、この作品では爆発しています。そのダサさ、情けなさ、頼りなさに興味と共感の針がバンバン当たっては震えます。そして、この作品の基本的な物語のベースにあるのは笑いです。それもビリー・ワイルダー作品のような華やかさと巧さが光る笑いです。それは尾を引く、気持ちのいい爽やかな物で、最近流行の瞬発性のものとは雲泥の差です。描かれているのはごく平凡な感情ではありますが、そこに映画ならではの笑いのスパイスが含まれており、その面白さはバスター・キートンやチャップリンの作品に共通する哀愁と楽しさが含まれています。それこそ映画の醍醐味!大衆娯楽作品のど真ん中を貫いた作品です。様々な映画が溢れる今の時代、ここまで映画が誕生した本来の目的に立ち返って作品を撮った小林監督に、拍手を送りたいです。そして尊敬します。社会性のある作品も当然必要です。しかし、この作品のような映画も消えてはなりません!ぼくはそう思います。映画を観終わった後、何分後も、あるいは何時間後も、いや、何ヶ月後もこの作品の楽しさが心に残っています。登場人物たちはあれからうまく行っているかな?元気にやっているかな?そうやって登場人物たちを身近に感じ、愛しく思い、そしてまるで自分の一部のようにその存在に感じれます。映画の良さの一つは、映画のエンドロールが流れ終わり、劇場が明るくなった瞬間からその映画の登場人物たちが頭の中で、心の中で生き続けてることだと思います。「映画の終わりは始まり」と小津安二郎監督がおっしゅいましたが、まさにこの映画はそれに当てはまると思います。映画、万々歳!
[映画館(邦画)] 10点(2008-05-31 11:50:33)
51.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
19世紀の末から20世紀初頭に掛けての石油発掘ブームが齎す富によって、狂人と化していく一人の人間がこの作品には描かれていました。映画の基本は、とにかく人間を描くことであり、それはたとえ狂人と化していく人間であったとしても感情移入できなければ観客は置き去りにされ、そうなってしまえば後は出来事を眺めているしか出来なくなるので、そういった意味で、この作品に描かれている狂人の感情は上手く描かれていると思いました。富と権力を手にしていく主人公は、自分が大好きなのでしょう。それは僕も同じです。なによりわが身が大切です。しかし、この主人公は表面では他人を気遣いながら、隠れた人間の本性ともいえる部分で自らの欲望を妨害しようとするものを次々蹴落としていきます。その姿は、人間の真実の姿を写しているかのようで恐ろしくもあり、また感情移入し、彼の行動とその動機を理解できている自分さえ恐ろしく感じました。ある意味、その行動が理解できているうちは、彼は狂人ではなかったのかもしれません。それはぼくのフィルターを通した上での判断ですが、きっとこの作品に触れ、ぼくと同じように主人公に感情移入できた方も同じような意見だと信じたいです。また、あそこまで自分本位になれる姿は、人間の深層心理にある欲望を描いていたように思います。ぼくもできることなら彼のように自分本位な人間になりたいですが、それを抑えるのもまた人間の理性であり、彼のあの姿は人間の理性を切り取った、人間の欲の部分だったのだと思います。それはラストで彼が発する「終わった」という台詞に集約されており、自分の欲望を邪魔する者がいなくなったことを意味していたように思います。つまり、人間は理性を失えば、みな、あの主人公と同じような狂人になりかねないことを描いていたのだと推測します。あの姿こそ、人間の執着地点。人間からそうでない存在になる瞬間だと思います。あれは彼の人生の目的の終わりであると同時に、人間の終わりを意味しているように感じました。人間は誰もが彼と同じようになる可能性を秘めており、この作品はそんな人間の恐ろしい可能性を描いた社会派作品だと思いました。
[映画館(字幕)] 8点(2008-05-29 19:45:04)
52.  ミスト 《ネタバレ》 
久し振りにハリウッドの作品を映画館で観ましたが、やはりハリウッドの迫力は凄いですね。よかったです。この手の作品はどうしても超常現象などのCGを駆使した点に目が行きがちになってしまいますが、監督が描きたいのは、CGなどを使うことで極端化された人々の感情なのだと思います。「グリーンマイル」でもそうでしたが、ダラボン監督が描きたかったのは結局“人間の愚かさ”ではないかと思います。自らの想いばかりを優先してしまう、死と隣り合わせの状況下で、見えなくなってしまう他者の思い。それこそ一寸先は霧のようなものであり、人の愚かな心が霧を作るのだと思わされました。そして霧が晴れたときになってようやく気付き、後悔し、嘆き悲しむ。どの登場人物も自分、あるいは自分の身近な存在(大切な存在)だけのことしか考えられない。無関心であり、他人事だと割り切ってしまう。それがどれだけ愚かなことか思い知らされるラストになっています。この作品は、世界中が陥っている他者への無関心さに警鐘を鳴らしているのだと思いました。
[映画館(字幕)] 8点(2008-05-20 04:43:01)
53.  ジャンパー 《ネタバレ》 
このジャンパーって人種は、当然ながら空想の代物でしかないのだが、この映画の主人公があまりにも情けない人間だからリアルに感じてしまって、実際にこの世界のどこかにいるんじゃないかって思ってしまった自分がいる。現実世界に非現実的な人物をすえた時に生じるヒビや穴や溝が丁寧に辻褄あわせで補正されているので、ジャンパーが実際にこの地球のどこかにいるように感じてしまう。開始30分間では人物紹介と瞬間移動の魅力を前面に押し出して描かれている。テレビ画面に映る洪水の被害に苦しんでいる人たちを見て傘を手にした主人公を観て「お、助けに行くのか?」と思わせておいて遊びに行く様。そして鮮やかに銀行から大量のお金を盗んでいくあの爽快さ。実際あの力を持ったら奇麗事並べたって人間なんて結局欲で動いている生き物なのだから、その姿はむしろ微笑ましくて人間らしい。その姿を見ていると羨ましくて憧れてしまう。そう感じた時点で僕は感情移入していたのだろう。非道ではあるが、それこそ人間の裏、あるいは表の顔に見えた。あんなのが実際表社会に出ているはずが無いので、そういった意味でも僕らが知らないだけで実際は今この瞬間も瞬間移動は行われているんじゃないかと思えてくる。社会背景の描写も問題なく観れたのは大きいが、何よりこの作品がただのヒーローもんでないことが良かった。多くの人間を救おうとせず、一人の人間を救うことで一杯一杯になる姿に人間を観た気がした。
[映画館(字幕)] 8点(2008-03-02 01:48:01)(良:4票)
54.  人のセックスを笑うな 《ネタバレ》 
僕は好きです、この作品。基本的に登場人物たちが感情を口に出さないので、唯一三度目の濡れ場後に、みるめが語る台詞だけが感情の説明になっており、観る側として感じた違和感をきっとゆりちゃんも感じたのではないでしょうか。カット尻が長いのはその意味もあると思いました。感情の大きな起伏もなければ、大きな出来事もないので、ゆったりとしたカット尻の作品になるのは当然だと思います。また、登場人物たちの自由気侭な姿が愛しく感じれたのは、井口奈己監督の演出力に他ならないと思います。役者さんたちの魅力を引き出し、可愛く見せる力は間違いなく才能だと僕は思いました。また、ヒキとヨリの組み合わせや、唐突なポンヨリには思想を感じ、映画を観たと感じさせてくれました。
[映画館(邦画)] 8点(2008-02-21 22:11:47)(良:1票)
55.  酒井家のしあわせ
主人公の息子の感情がこの作品の軸になっていたのでしょう。残念ながら、僕は彼の感情が今ひとつ理解できませんでした。反抗期、反抗期と口々に言ってますが、反抗期ってこんなもんだったろうかと何とも掴み難いものがありました。ただ単純にあれは彼の性格であって、一時的なものではないように感じました。学校でも家でも、女の子と一緒にいる時でも、常にブスッとしており、無愛想で話し掛け辛いといったような性格に感じました。そんな彼が、親戚の家でユースケさんと縁側で並んで話しているシーンで見せた表情と次のみんなでご飯を食べているシーンで見せた表情の違いというか、そこでの変化がいまいちわかりませんでした。ただひと時の笑顔で元に戻るということをあらわしたかったのか、なんなのか…終始そんな感じで結局最後まで彼の感情が掴めず、出来事だけを見つめていました。もっと面白くなりそうな設定なのに…できればもっと父と子の反発を描いて見せて欲しかった。
[DVD(邦画)] 6点(2007-12-30 15:26:41)
56.  図鑑に載ってない虫
映画監督には作家性というものがつき物で、その人にしかできない演出、その人だからこそ作りあがれる雰囲気が無ければならないと思います。その点で、三木聡監督は満点だと思います。また、小さな笑いのオンパレードの中に、確実にメッセージやテーマを持って作り、ただのコメディで終わらせていない点もとても凄いと感じます。とても楽しかったです。
[DVD(邦画)] 7点(2007-12-30 15:17:09)
57.  サイドカーに犬
観終わった後の爽快感を与えてくれたのは、やはり竹内結子演ずるヨーコのキャラクターが爽やかで清々しい存在だったからでしょう。性格が実にシンプル。竹を切ったような、スパッとしたものを感じました。何事にも真剣に向かい合い、相手が子どもだろうが、下らない遊びだろうが関係なく、全てにことに真面目で堅実に向かう姿勢がとても素敵でした。とくに薫に名前を聞いた後の台詞、「美しい名前ね」という表現。綺麗だとか、素敵などという表現を使わず、あまり使わない美しいという言葉を使う彼女自身がとても美しい存在だとぼくは率直に感じました。ユーモアもあり、柔らかい表情がとても印象に残りました。薫にほんの小さな変化をさせた彼女。彼女に会いたいと思わずにはいられない。自由気侭な彼女に僕はあこがれました。
[DVD(邦画)] 8点(2007-12-30 15:05:06)(良:1票)
58.  大日本人
まっちゃんはやっぱり凄いですね。何百人、何千人という映画監督が世の中にはいて、その中で誰もやったことの無いことをやれるこの人はやっぱり凄いです。ドキュメンタリータッチでやるのが、最も大佐藤の人物を紹介し、説明するのに適当だったんだろうと思います。ウルトラマンほど飛躍させた人物ではなく、身の丈で目高の人物として主人公を描くことで、何らかの共感を抱いて欲しかったのでしょうが、その何かが正義感とかそんな大それたことではないのはわかったのですが…わかりませんね。多分、日本の歴史や文化に重きを置く日本人の心が薄れてきていることにまっちゃんが怒りとか憤りみたいなものを感じているのではないでしょうか。正直伝えたいことを読み取るのが難しかったです。というより、今も理解できていないです。しかし、これだけやりたいことしかやらないってのはやっぱり凄いと思います。映画としてこのシーンが素晴らしいとか、あの台詞がよかったとか、そういった映画としての感動がまったくないので、やはりこれはあの名作「ごっつええかんじ」のコントを一本にまとめたんでしょう。最後にCGからセットに変わってうだうだやってるシーンは楽しかったですね。きっとそれで良いんだと思います。
[DVD(邦画)] 5点(2007-12-28 20:46:04)(良:1票)
59.  街のあかり
のっぺりとした表情の変化の無い演技、独特なMの使い方、極端に少ない台詞、奥行きの無い狭い構図。どこを切り抜いてもやはり奇抜で斬新、そして唯一無二であることは観ればわかる。その演出が齎すのは、それとは対照的な場合が訪れた時に飛躍的な感動を感じることができる。例えば、刑務所内で主人公が笑う。カリウスマキ監督の演出ではないような笑い方。この瞬間、思考がフル回転する。なぜこいつは笑った?そんなに会話が楽しいのか?そっちの世界はそんなに住みやすいのか?あれだけ仲間のいないお前がなぜそんなに溶け込んでいるんだ?その演出が後に繋がってくることは無かったが、なぜかそこにグッと引き込まれた。感情は台詞やナレーションで言うのはすごく簡単で、それを安易にしてしまうと押し付けがましく、受ける側は考えなくなり、思考を止め、感情移入しなくなる。この作品にそういった説明になるような感情の描写は台詞だろうが、表情だろうが、そんなもん一切無い。あるのはほんの少し、微かに垣間見える動きである。「全て終わった…というのは嘘」という台詞が示すように、この台詞は感情の説明ではない。ではなんなのか。この主人公の人生である。そう感じ、考える事がこの台詞からは出来る。それが台詞というものなのだと改めて考えさせてくれる。このアキ・カリウスマキという監督は一見、めちゃくちゃなことをやっているのだが、彼は映画の基本をしっかり踏まえて、全ての演出を行っている。それが本当に素晴らしい。だからこの作品は素晴らしい!
[映画館(字幕)] 8点(2007-12-02 01:49:53)
60.  ALWAYS 続・三丁目の夕日 《ネタバレ》 
今回の作品の中で最も心引かれたのは、鈴木家にやって来た、元お金持ちの少女のエピソード。この少女は簡単に言ってみれば、現代の少年少女に限りなく近い存在であり、僕の目には現代と過去を対比させているように見えました。親の手伝いなどした事が無く、また食事のありがたみやお金への価値観など多くのことがこの作品の中では異常だった少女。そんな少女というフィルターを通すことで大切な何かを訴えかけているように感じました。決して現代を否定しているわけではなかったですが、少女が徐々に愛情を受け、すくすくとよい子になっていく姿を見つめている内に、昔がどれだけ素晴らしい環境だったかを自然と感じさせてくれました。現代は目に見える物こそが重要であり、それの象徴が衣服や食べ物であり、お金です。しかし、この作品が訴えようとしていたのはストレートですが「お金では買えないもの」。今流行のPricelessってやつです。綺麗な服よりも、手作りの愛情の篭った服。お金は掛かっていないが、温もりのある母が作った料理。お手伝いをした時のご褒美。そんな何気ない喜びがこの作品からは伝わってきた。そして少女の別れのシーンはもはや反則。泣かないはずがない。少女の思い。母親の思い。家族の思い。誰にでも経験のある思いをビシビシ突付いてくる優しい感情。共感。号泣。良いものを見せてもらいました、今回も。
[映画館(邦画)] 9点(2007-11-13 01:41:17)(良:3票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS