621. シン・シティ
コントラストの利いたモノクロ映像とワンポイントの原色パートカラーで、ざらついた質の悪い紙にスミで一色印刷したドギツいアメコミを、そのままスクリーンに再現したバイオレンス・ムービー。アニメーションよりもコミックらしい映像表現は新鮮で、そのデフォルメがハード・バイオレンスをスタイリッシュに見せてます。しかし、これはかなり観る人を選ぶと思う。ポイントは映像やバイオレンスの好き嫌いではなく、しつこい位に心情を語る古風でハードボイルドな主人公達に着いていけるかどうかです。男の美学は嫌いではないですけど、こんな主人公が三人も出てきてひたすらカッコつけられては、私でも少し消化不良を起こしそうです。それにしても、これだけの主演級スターが次々と呆気なく死んでいく映画は「マーズ・アタック!」以来。ここが本作一番の見所でしょう。とにかく今回、私はオムニバスだったことに一番驚きました(もっと下調べしてから観ろってか…)、6点献上。 [映画館(字幕)] 6点(2005-10-02 00:05:10) |
622. Uターン
一人の小悪党が不運のスパイラルに囚われて、田舎町でドツボにハマっていく様子を描くサスペンス・コメディ(?)。コーエン兄弟が好みそうな題材も、オリバー・ストーンにかかるとやけにテンションの高い映画になる。金を持ち逃げした相手(?)にまで送金依頼するほど切羽詰ったショーン・ペンがおかしい。誰一人マトモな人間がいない町で、私も一番のヒットはバカップル。こいつらは当て逃げに等しいゾ。苦労の末、手に入れたバスの乗車券を食われてしまった所は大笑いしました。ここまで追い詰められれば小心者もキレて当然、後は坂道を転がり落ちるだけです、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-10-02 00:03:14) |
623. ボーイズ・オン・ザ・サイド
《ネタバレ》 力強くも傷つき易く、自らの足で立ちつつも支えを探し求めて漂流する、現代の女性達の友情物語…と見せかけた、黒人中年レズビアンのプラトニック・ラヴ・ストーリー(だと思う)。ハリウッド映画では無い物強請りかもしれませんし、女性映画の巨匠(?)ハーバート・ロスにも無理な注文かもしれませんが、ストーリーをもう少し同性愛者の苦悩に寄っていれば、もっと良い映画、そして95年時点での新しい映画になっていたと思います。それにしても「出産」は強い。命の誕生は何物にも勝るハッピー・エンド。これこそ女の特権、「ボーイズ・オン・ザ・サイド」です、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-10-02 00:02:24) |
624. ナチュラル・ボーン・キラーズ
確かにこの編集やエピソードの提示の仕方は、コラージュやトリップ映像と言うよりザッピングに近いかもしれませんね。刺激的な内容と合わせて、退屈することなく観ることは出来ました。しかし普段生活してて2時間もザッピングすることはまず無いので、もう少し構成を考えて欲しかった。また、私は本作から特別なメッセージを感じとれません。別にメッセージなんて無くても良いんですけど、それにしては視点が中途半端に感じます。いっそ劇中のメディアと同じ視点で徹底的にお祭り騒ぎ的ノリを貫けば、本当の意味での問題作になったかもしれません。という訳で、6点献上。 [ビデオ(字幕)] 6点(2005-10-02 00:01:34) |
625. ひめゆりの塔(1995)
そう、出演者が現代人(しかも、かなりイケてる)にしか見えないってのが本作最大のウィーク・ポイント。しかし旬の美少女達を切り捨てて、田舎臭い娘だけを集めて興収を切り捨てる訳にもいきませんし、これは痛し痒しです。また、折角リメイクするんだから、戦争体験がすっかり風化した90年代なりの新しい解釈で脚色しても良かったかもしれません(例えば日本軍の沖縄の人々に対する非道な扱いをもっと大きくするとか、動員前の思想教育の部分を詳しく描くとか)。本作の出来自体にそれほど不満はありませんが、もう少し時代を考えて映画化して欲しいと思います、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-24 00:07:11) |
626. 戦争と人間 第三部 完結篇
ソ連の所蔵する資料映像(?)の力も借りて、最終作に相応しい邦画屈指の大規模戦場シーンとなったノモンハン事件がクライマックスの完結篇。日中・日露での勝利を引きずり、裏付けの無い自信だけで戦争に突き進む無能な「皇軍」が良く描けてました。しかししかし、本作の決定的なマイナス要因は、「完結篇」と銘打っておきながら全然完結していないこと。あれだけいた登場人物達を全員おっぽり出したまま終わりかよー! この後の展開が凄く気になる。原作との兼ね合いがあったのかもしれませんが、この辺はオリジナル脚色でちゃんとまとめて欲しかったです、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-24 00:05:52) |
627. あゝひめゆりの塔
序盤は吉永小百合・浜田光夫の黄金コンビによる日活青春映画のノリ(オープニングは女子高の運動会)。しかし、沖縄決戦が直ぐそこまで迫っている中では青春を謳歌している暇はなく、黄金コンビも勤労動員からの帰り道でお互いが目配せする程度。やがて学童疎開船・対馬丸が撃沈されて、肉親を失った者達が悲嘆に暮れる中、本格的戦闘が始まる。卒業間近の女学生達も「ひめゆり学徒隊」として看護動員され、次々と戦場に散っていく…。本作は導入部と後半の落差が激しいので、「ひめゆりの塔」に詳しくなかった人は結構衝撃的だったんじゃないでしょうか、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-24 00:04:42) |
628. 独立愚連隊
戦争映画と言うよりは、【ロンメル元帥】(略名)さんが書かれてる通り完全に西部劇。ウエスタンの日本への翻案としては、日活の無国籍アクションよりも遥かに方向性が正しく、現在観ても全く古びた感じはしません(逆に日活アクションの古臭いこと古臭いこと…)。岡本喜八のダイナミックな演出は破天荒な登場人物達をイキイキと描いており、特に「渋い脇役」位の認識でしかなかった佐藤允と中谷一郎が、腹に一物があっても決してそれを表に出さず、且つ思い切り肝が据わってて凄くカッコ良い! 私としては愚連隊全員に、狡猾に生き延びて欲しかったですけどね、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-24 00:03:54) |
629. 明治天皇と日露大戦争
日露戦争の発端から日本海海戦の大勝利までを、あからさまに日本側の視点だけで気持ち良く描いた戦争超大作。新東宝が社運を賭けた戦場シーンは、満州進軍、旅順港封鎖、二〇三高地の攻防、日本海海戦等と、特撮と大規模ロケと無数のエキストラを駆使して圧巻の一言。また、どこまで本当なのかは知りませんが、登場人物達も嵐寛寿郎演じる明治天皇を始め、全員がとてつもない人格者ばかりとなってます。現在からは考えられないほど右寄りな内容が奏功してか、本作は大ヒット、この後いくつかの「明治天皇シリーズ」が作られたそうです。私はこれを東京MXテレビで観たんですけど、こんな映画を堂々とゴールデン・タイムに放送できるのは、日本広しと言えども石原慎太郎のお膝元くらいでしょう…、6点献上。 [地上波(字幕)] 6点(2005-09-24 00:03:28) |
630. 人生は、時々晴れ
夢も希望も、しかし絶望も無いイギリスの低所得層のリアルな日常生活を、ひたすら淡々と追ったホーム・ドラマ。人間、何かしら希望があれば努力もするし、何かに挫折したりするから死を考えたりもする。しかしそこに何も無ければ、程々に貧乏のまま毎日を流されていくだけ。若者達も親を軽蔑しつつ、しかし家を出て一旗挙げようという気を起こす訳でもなく、既に親と同じ諦めの境地。これがイギリス下層階級の抱える閉塞感なんでしょうか。全編が息苦しい感じのする映画ですけど、この一家はラストで少しは晴々とした気持ちになったんでしょうか。姉の方が最後まで仏頂面を崩さないのが少し気になりました。それと「秘密と嘘」同様、クライマックスの台詞と演技が突然舞台風になってしまうのが玉に瑕でしょうか、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-20 00:10:57) |
631. サンダーパンツ!
古典的児童文学の物語を下ネタとSF的設定で粉飾し、オーソドックスながら凄くモダンな童話に仕上げた、子供向けとしては非常に優良なコメディ映画。生まれながらに負け組入りが約束されてる様な主人公の少年が、友情によって短所を長所に変えて夢を叶えるというのは、イギリスお得意のダメ人間再生物語でもあります。何十年も生きてると、今日も昨日と変わらない一日を生きるしかない訳ですけど、本作の主人公は毎日が「人生最高」か「人生最悪」の日。これは毎日を新鮮に生きられる子供の特権です。繰り返されるこのモノローグに私は一番グッときました、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-20 00:10:25)(良:1票) |
632. スティル・クレイジー
一時代を築きつつも現在は落ちぶれたロック・バンド仲間が、ン十年の時を経て再結集し、夢と絆を取り戻そうと奮闘努力する姿を描いた、イギリス映画十八番のダメ人間再生コメディ。もう少し感動させて貰えるかと思ったんですけど、意外にあっさり終わってしまいました。ここは語り部であり観客の分身であるビリー・コノリーを、もっと前面に出した方が良かったと思います。一番感心したのはラストのロック・フェスのシーン。これだけこじんまりした映画でも、大規模ロック・フェスが「大規模」に見える様に、金をかける所にはちゃんとかけている。こういうことは重要です、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-20 00:08:28) |
633. ザ・インタープリター
国連本部内での初めてのロケや空撮を駆使した映像、主演二人の存在感等で重厚な映画にはなってますが、サスペンス色は薄い仕上がり。それは、物語が「暗殺計画」と「通訳の過去」に二分されてしまう為。これなら暗殺計画を偶然聞いてしまうシーンはカットして、最後までニコール・キッドマンの証言の真偽を伏せておいた方が良かった。それに、私には本作のキッドマンの人物設定が凄くご都合主義的に見えた。てか、そもそもこんな人間を国連が雇うか? 物語の背景となる国際政治情勢の描き方も中途半端なので、社会派作品としても今一な印象。それでも最後まで飽きさせずに観せる所が名匠の実力なんでしょうか。ところで、バスのシーンはロンドン同時爆破テロを思い出させて、少しゾッとしましたね、6点献上。 [映画館(字幕)] 6点(2005-09-09 00:08:21) |
634. リプリー
《ネタバレ》 原作を知らないので判りませんが、犯行動機が「金持ちへの妬み」から「痴情のもつれ」に変わったことで、原作に近い物語になったのでしょうか。アンソニー・ミンゲラとしてはサスペンス映画にせず、リプリーの苦悩に重点を置いたお得意の文芸作品を目指し、また、アラン・ドロンを髣髴とさせる二枚目ジュード・ロウを殺され役に据えることで、「太陽がいっぱい」も葬りたかったのかもしれません。本作のリプリーは殺人隠匿の為だけに行動する。問題はラストの捉え方。私は、ピーターを殺したのは犯行がバレるのを恐れた為ではないと思う。彼はピーターに犯行を知られるのを恐れたのでしょう。と同時に、逃げ場の無い船上での殺人は、リプリーにとって自首にも等しい最後の凶行になった筈です、6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-09-09 00:06:32)(良:1票) |
635. がんばっていきまっしょい(1998)
う~ん、想像してたよりは楽しめませんでした。あくまでもリアルな青春の1ページという感じで、「青春映画っ!」という感じじゃなかったのが私には良くなかったみたい。しかし、これは偏に私の先入観の所為。もう一点、ラストがあっさりし過ぎなのも物足りなく感じた理由。そもそも、オープニングに現在(てか、いつかは判らないけど、物語から何十年後か先)のシーンを持ってきてるのに、何でラストで現在に戻らないの? だったらオープニングのシーンなんてカットして、直ぐ物語に入って欲しかった。そんなことで、溌剌とした女子ボート部員達の健康的なブルマー姿に、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-09-03 00:06:18) |
636. 炎の戦線エル・アラメイン
マニアの方ならいざ知らず、私の様なパンピーにとっては、同じ同盟国だったのに今一マイナーな印象のイタリア軍の、北アフリカ戦線エル・アラメインでの戦いを描いた戦争映画。「炎の戦線」というタイトルとは裏腹に、ここで描かれる物資不足の部隊の戦いはひたすら地味。砂漠に掘られた塹壕に身を潜め、時たま狙撃し合うか、時たま迫撃砲を撃ち合うかだけ。これが本当の消耗戦。この戦いが戦局に影響を及ぼすとも考えられず、正に砂漠らしい不毛の戦い。私は別の戦争映画の、米兵捕虜に届いた小包を見たドイツ士官の台詞を思い出した。「奴らは国で母親が焼いたケーキを、海を超えて一兵卒に届けている。しかし我々には、本国から弾薬さえ届かない」。戦争の勝敗はロジスティクスで決まるのです、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-08-26 00:09:41) |
637. 永遠のマリア・カラス
どことなく高尚な響きを持つ邦題に反し、映画は安っぽいロック・ミュージックと安っぽい“CALLAS FOREVER”という黄文字のクレジットで幕を開け、いきなり観客の腰を折る。そこに登場するのが、安っぽいポニー・テール姿のジェレミー・アイアンズ。フランコ・ゼフィレッリがこのオープニングで予告したのは、「これは本格オペラ映画じゃないんですよ」ってこと。大体が、マリア・カラスが口パクで映画を撮るということ自体が安っぽい設定。しかし映画自体は安っぽくありません。しかもカラスが口パクという設定ならば、熱演のファニー・アルダンが口パクでも何ら違和感が生じないのです。過去に埋没して生きてきたカラスが、例え声を失っていても、今ある自分を受け入れるラストは感動的。詳しくはないんですけど、実際のカラスは過去に埋もれたまま亡くなってしまったんじゃないでしょうか。これはゼフィレッリの「こうあって欲しかった」という願いの様に感じられました、6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-08-26 00:08:30) |
638. シティ・オブ・ゴッド
ヒップホップ・モンタージュで綴られるブラジル版、そして子供版(!)の「仁義なき戦い」。世評が高いのでもっとハードな内容なのかと思ってたら、内容は充分ハードでしたけど、映画の作りは非常にライト。これは賛否のある所だとは思いますが、作り方自体は「レクイエム・フォー・ドリーム」同様、私は支持します。これをリアリズムを徹底した実録風に作ったら、陰惨すぎてとても観られない映画になっていたと思います。やはり問題提起は人に知って貰うのが第一目標。ブラジルの現状を世界に知らしめるという役目は、十二分に果たせたんじゃないでしょうか。という訳で、6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-08-26 00:08:04) |
639. この素晴らしき世界
《ネタバレ》 ナチ占領下のチェコスロバキアでの人間模様を描いた戦争映画と言うよりは、その舞台を借りて、そのまま聖書の逸話を描いたファンタジー悲喜劇として見た方が良いと思う。流石に処女懐胎という訳にはいきませんが、マリアの腹を借りて生まれてくるのはヨセフの子ではない。となると、この子は明らかにキリストです。瓦礫の街に生誕した神の子が、これまでに起きた全てのことに敵味方なく贖罪を与えて物語は幕を閉じる。ナチの悪行や人の愚かさを声高に叫ぶのではなく、全てを水に流そうという、この発展系のラストには好感が持てました。しかしキリスト教に馴染みの無い私に、この展開は今一つピンと来なかったのも正直な所です。たぶん凄く良い映画の様な気はするんですけど、私的には6点献上。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2005-08-26 00:07:13) |
640. ライフ・イズ・ビューティフル
中々チャーミングな作品ではありますが、一人で脚本の90%以上の台詞を喋りまくる(多くはアドリブなのかな?)ロベルト・ベニーニのテンションに、最後まで着いていけるかどうかに全てがかかってる。イタリア語は全く解さないので、いくら字幕を読んでたにしても、私は非常に耳障りに感じました(「ピノッキオ」の後遺症か?)。あと、主人公と「素敵な」エピソードばかりに焦点を絞り過ぎて、その後ろでどれだけの人が迷惑を被っているのかが一切描かれないことも気になった。例えば車と商品を駄目にされた友人がどんな目に遭っているかとか、放送機材を使ったことで捕虜達がどんな目に遭っているかとか(たぶん凄く酷い目に遭ってる筈)。その辺もユーモアを交えて描いておけば、だいぶ印象も変わったと思います、6点献上。 [DVD(字幕)] 6点(2005-08-26 00:06:45) |