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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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681.  68歳の新入社員<TVM> 《ネタバレ》 
2018/6/18にフジテレビ系で放送されたTVドラマである。「68歳の新入社員」が40歳年下の女性の上司を助けて働く話で、オリジナル脚本とのことだが2015年のアメリカ映画との類似性が指摘されている。 題名の割に、どちらかというと若い女性の活躍を応援する方に重点が置かれているようで、パートナーの性格付けなどいかにもな感じである。部下を侮辱されるのが許せないのは人として悪くないが、その割に、明らかに年上の部下に対して敬語を使わず呼び捨てにまでしていたのは気に入らない。まるで学生感覚か体育会系かという印象だったが、若いとかえってこうなるというつもりだったのか。 一方の新入社員は、会社に戻ってみると極めて常識的な組織人だったのが拍子抜けだった。死ぬまで働けという最近の風潮に乗せられた形だが、結局は仕事するしか能のない人間で終わったらしく、昔よく言われた“亭主元気で留守がいい”という感じなのも進歩がないが、この世代がそうだということならまあ仕方ない。過去にこだわることなく柔軟な姿勢で人の役に立とうとすること自体は悪くない。 ストーリーとしては当然ハッピーエンドだが、“転”のところで社内の嫌がらせを極端なほどエスカレートさせておいて、最後は結局“ほんとはみんないい人”パターンに持ち込んだのは面白くない。例えば今回は「引き分け上等」にして、これからも戦いは続くという方が個人的には好きだが、単発のTVドラマであればこういう締め方が正解なのかも知れない。ただ最後まで見ていて主人公の人格設定とか話し方とか顔とかが嫌になって来たのと、新入社員の妻がいちいち全部口に出して解説するのがやかましく、基本的にTVドラマというのが自分には向いてないのかという気はした。 なおキャストとしては、金澤美穂さんは出番が少ないがショートヘアがかわいく見えて大変よかった。また今でいえば超イケメン俳優だった草刈正雄氏が年齢なりの人物を演じているのはさすがである。
[DVD(邦画)] 5点(2018-08-15 23:46:01)
682.  ソ満国境 15歳の夏 《ネタバレ》 
「文部科学省選定 少年向き」とのことで大変ご立派な映画らしい。これは平成27年6月に、文部科学省の「教育映像等審査制度」によって「教育上価値が高く、学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められるもの」として選定されたという意味であり、「少年向き」とはあるが男女兼用と思っておく(当然だ)。公開は2015年(H27)8月1日だが撮影は2012年11月とのことで、中学生役のうち最年長の金澤美穂さんは満18歳、最年少の清水尋也は満13歳ということになる。ちなみにその清水尋也の実兄の清水尚弥も新京の中学生役で(哀れっぽい感じで)出ている。  まず題名の出来事は同名の原作本(劇中に実物が出ている)に基づくものであり、脚色はあるにしてもこの通りに受け取るべきものと思われる。文部科学省がこれを「選定」したのは懺悔なのか、あるいは陸軍のせいだから関係ないと思っているのか。原作者は主に官僚の無責任体質に批判的だったようで、正すべきところは正していくのは当然である。 また劇中の満州パートでは、昔の素朴な日中友好・熱烈歓迎の時代を懐かしむような雰囲気があり、現地ガイド役の青年の善人顔などはいかにもそれらしい。日本と他国の関係(日中・日朝)に関して両論併記的に語っているところがあったのは、両者の間に立って融和を図る意図だったかも知れない。また民族に関係なく、いいことも悪いことも含めて「人間とはそういうもの」というのは妥当な認識だろうとは思う。  終盤に至るとなぜか原発災害の話題に移行するが、これを満州の出来事と関連付けて語るのには無理を感じる。確かに状況は似ており、当事者の立場として無責任だと言いたくなるのも同じだろうが、さすがに昔の軍隊と同じことを原発事故当時の政府が(今はなき民主党政権だが)意図的にやっていたとまでは思われず、何を問題にすべきかという点でずれがある。また故郷の喪失という点も共通ということらしいが、原発事故がなければよかったというのはその通りとして、戦争に負けなければ満州国も存続して日本人も住んでいられたはずと言いたいのか(または、そのように受け取られてもいいのか)。どうも気分的に言いくるめようとしているだけのようで気に入らない。 まあ文科省選定の教育映画でもあり、今の中学生に自分自身で考えてもらいたいというのが本来の趣旨だろうとは思うが、この映画のどこが変かを考えない限りは単純な「戦争ダメ」「原発ダメ」以上のものは出て来そうになく、要はそういう教育映画なのだろうと思うしかない。さらに最後に出ていた結婚の話はやりすぎで、これでいったい何を考えろというのかわからない。全国の少年少女はともかく当事者の身になれば、せいぜい台詞にあった「今からわかんない」という話にしかならないだろうが、そこをわざわざ指摘してみせるのは、それこそ言うだけ言って終わりの無責任体質に見える。  なお余談として、かつて満州に住んでいた身内にこの映画を見せたところ、“甘っちょろいが中学生向け映画なら仕方ない”とのことだった。実体験もないのに何を偉そうに言うかという気はするが、日頃からこの問題に関心のある人間の率直な感想としてはそうだったということである。あまり見せた甲斐はないようだった。
[DVD(邦画)] 5点(2018-08-15 23:45:58)
683.  恋につきもの 《ネタバレ》 
東京芸大大学院映像研究科の卒業制作とのことで、監督3人が同じ作家のマンガを原作にしたオムニバスになっている。以下[ ]内は点数。  「いばらのばら」 もう少しまともに作ってもらいたい。石はもっとキラキラしていなければならないだろうし紙袋も唐突で、映像に出しておきながら意味不明のまま放置というのは最悪だ。見ている間じゅう原作はどうなっているのか気になって仕方なかった。最後に出たのはサボテンの花か(題名からすると違うだろうが)。[2] 「豆腐の家」 中盤まではかなり怖かったが種明かししてから少し気が抜けた。しかし最後まで少し心に痛みが残る(やはりちゃんと食べた方がいい)。勤め先の対応が良心的なので安心したが、これで本人も若干前に進むことができたと思っていいのかどうか。なお主演女優(谷口蘭)はモデルが本業だそうだがかなりいい雰囲気で、特に泣き声が印象的だった。[6] 「恋につきもの」 心霊ラブストーリー。主演女優(趣里)は水谷豊・伊藤蘭夫妻の娘とのことで個性的な風貌に目を引かれる。この人をずっと見ていたかったが途中であまり顔が出なくなるのは残念だ(男の役者が代わる)。話としては最もストレートで娯楽性が高いが、最後の一言はわざわざ言うほどのことかという感じだった。[6]  以上、最初のだけは呆れたがほかは見られるものになっており、映画独自の雰囲気も出している。(性的な)マイノリティというところが共通のようで、その点で共感できるところはあまりないが、共感できなければ見られないということもない。なお「絶叫学級」(2013)で印象に残る松本花奈という人が出ているが、この映画ではどちらかというと普通に(普通でない)美少女に見える。そのほか最近有名な伊藤沙莉という人も出ているが役として面白くない(前記)。
[DVD(邦画)] 5点(2018-08-11 17:12:38)
684.  チェリーボーイズ 《ネタバレ》 
同名マンガの映画化とのことだが読んだことはない。内容は題名の通りで、中高生ならまだしも25歳というのが共感の条件をかなり外している。 登場人物を見て笑う映画のようだが自分としてはバカな連中の出る映画が嫌いなので可笑しくもなく、何でこんなのを見てしまったかと後悔しながら耐えていた。最初に笑ったのは全体の2/3くらいのところで、パチンコ店女子従業員の表情をあまりにじっくり見せられたのでちょっと吹き出してしまった(こんなに可愛いのにこれまで何もなかったわけがない)。また終盤で見せた池田エライザ嬢の呆れ顔も可笑しかったので、女優の顔を見ている方が面白いのかと思ったが、最後のオチがあまりに馬鹿馬鹿しいのでついに笑わされてしまった。 男はみな一様にバカなのかと思えば実際は三者三様で、うち2人は酒屋の男に最後まで付き合う動機はなかったはずだが、それでもついて行ってやったのは友情の証とでも思うしかない。ラストはわずかな前進を見せて終わったようでもあり、それでよくやった、頑張れと言ってやりたくなったわけでもないが、まあ結果的にはそれなりの物語ができていたようではある。自分としては「映画 みんな!エスパーだよ!」(2015)とどっちがマシかと比べてしまったが、大して変わらなかったということで点数は同じにしておく。主要キャストの役者ぶりには感動した。 ※なお「強制性交等」は犯罪です(刑法第177条)。未遂も罰せられます(同第180条)。劇中の公務員は懲戒免職になります。
[DVD(邦画)] 5点(2018-08-04 13:57:01)
685.  寄生獣 完結編 《ネタバレ》 
前回に続いて普通に面白かったが後半は少しバタバタした感があり、また物語の面でも特に切ないとか愛しいとかいう感情が湧くほどではなかった。しかし唐突な交合場面はけっこう痛々しい印象で、これを見た橋本愛ファンの反応は内心どうだったのかとは思った。ちなみに自分としては、いまだに大森南朋と新井浩文の区別がつかないので同じ映画に出すのはやめてもらいたいと思ったが、同じ映画に出ていることでかえって違いが目立ってわかりやすかったということはある。  以下余談として、前回から気になっていたことのうち、まず前回冒頭のナレーションに対応するものとしては市長の大演説が目立っていたが、環境テロリストの自己正当化の主張などまともに相手にしていられるかという感じで説得力どころでない。こういう糾弾型の主張はいまだに時々やっているが、聞かされる方はたまったものではない(やかましい怒鳴るな)。 また犬の件に関しては、要は共生の観念につながっていたようだが、どうもペットと散歩するとか添い寝する程度のイメージしかないようで正直落胆した。クマとかコモドオオトカゲが相手では寄り添いづらいだろうが、そもそも人類の身体を乗っ取らなければ生存できない生物など、自分のこととして考えれば誰も存在を容認できないはずである(奇特な志願者がいれば別)。 最終的には、人類が他の生物と折り合いをつけながらそれぞれに生きる、という現実的なあり方が一応示されていたと取れなくもないが、やはり通常の野生動物と同列に扱えない架空の生物を使って、人間と自然の共生にまで結び付けるには無理が出ている。原作の方は結構まともな内容だったとすれば、やはり映画では表現できていないことが多いのではないかと想像するが、これを見て何を書くかと一応考える機会にはなったといえなくもない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-07-28 17:28:17)
686.  寄生獣 《ネタバレ》 
原作が有名なのは知っていたが読んだことはない。この映画を見る限り普通に面白い話にはなっている。 映像面でいえば、以前に「海賊とよばれた男」(2016)というのを見た時は(三丁目は見ていない)、かつて実在していたものを現に存在しているように見せられたので驚いたが、この映画ではマンガを立体化して実写映像と違和感なくすり合わせした感じなので、それ自体で感動というほどでもない。 また出演者に関して、個人的には深津絵里、橋本愛といった女優を好きだと思ったことがないので主要キャストに関しては不満足である。主人公の同級生役で出ていた山谷花純という人は前から知っていたので注目していたが、最後に二つになってしまったのは残念だ(原作では死なないはずではなかったのか)。ほかどうでもいいことだが、東出昌大という役者は身長が高すぎだ。  以下余談として、原作は1988年からの発表とのことだが、この映画でも冒頭からしていかにも20世紀の青臭い環境論が鼻につく。それほど人類による環境負荷を嫌うのなら、半分とか1/100とか言わず絶滅させてしまえばいいだろうがと思うわけで、何をどうしようという観念もなく声高にアピール(自己主張)して終わりの昭和臭さを感じる。何なら先進国が温室効果ガスを削減する代わりに途上国には人口を削減してもらうかといった皮肉も言いたくなる。 また犬に関することでは、生きた犬も死んだ犬も同じく尊重すべきと思うのは構わないが、そういうことをいえばヘビもカラスもカマドウマもコウガイビルも全部同じように扱わなくていいのかと言いたい。愛護動物を前面に出した方が一般にはわかりやすいとしても、地球環境問題を尖った形で取り上げる割に、生物多様性という面では大して考えていない状態のように見えた。 まあ続編があることがわかっているのでここで突っ込んでも仕方ない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-07-28 17:28:14)
687.  劇場版 私立バカレア高校 《ネタバレ》 
まりやぎという人が出ているので見たが、そもそもAKBというものに全く関心がなかったので(1回だけ総選挙でチーム8の人に投票したことがあるが)、ヒロイン役を含めてほとんど誰の顔も知らない。かろうじてみおりんという人は外見が特徴的(小顔)なのでわかったのと、見ているうちに高身長なのが光宗薫という人だというのも薄々わかって来た(同年の「女子カメラ」というのを見たことがある)。 しかし今になってみると、ここに出ているAKBのメンバーは既にほとんど卒業してしまっているようで、世の変転は激しいともいえるがそれでもAKB自体は不滅だともいえる。そういう面で一定の感慨を覚える映画ではあった。 ちなみに石井杏奈という人の顔も見えたがこれが映画初出演とのことで、その後はE-girlsに所属して各種映画にも出ているので知らない人でもない。  中身に関しては、意外にもというか当然だろうがストーリーはちゃんとできており、男連中の話の方が主軸になって、そこに女子の物語がからんで来る感じに見えた。男女それぞれのファンが見に行く前提だったはずだが、どうせ数的には女子中高生が多いのだろうから、男の友情とかアクション(暴力沙汰)でとにかく盛り上げるように作ったのかも知れない。女子の方はお嬢様というだけでなく知能程度も高かったようで、ヒロインに関していえば、こういうしょうもないお話からも一定の人生訓を学び取る賢明さを備えた人物のようだった。最後の「自分でみつける」というあたりはうまく感動的にまとめてある。 TVシリーズは見ていなかったが(当然だが)それでも劇中の回想場面から、それなりの積み重ねがあった上に今があることがわかり、また「大嫌い」というのがいわば(2人限定の?)キーワードだったらしいのも知られる。この手の企画を毛嫌いせず、大らかに受け入れようとする気にさえなれば、娯楽として見る分には支障がない映画だった。 ちなみにヒロイン役の人は、周囲が全員アイドルであるのにその中でちゃんと特別の美少女として目立っていたのに感心したので、そのうち「劇場霊」(2015)でも見るかという気にはなった(特に期待はしない)。
[DVD(邦画)] 5点(2018-07-20 19:59:09)
688.  HALLOWEEN NIGHTMARE ハロウィン ナイトメア 《ネタバレ》 
「ハロウィン ナイトメア2」(2015)の方は前に見たが、この映画の主演が「かぐや姫の物語」(2013)の主演声優だったとのことでこれも見た。「かぐや姫」の方はあまり可愛げのないキャラクターだったが今回は当然顔出しで、自然体で活動的な編集者の役がなかなかいい印象である。ちなみに劇中の編集長には美少女の娘がいることが次作で明らかになる。  基本的な性質としては低予算ホラーだが、監督と脚本家が「口裂け女2」(2008)と同じのため一応期待が高まらなくもない。短い映画ながら主人公をオカルト雑誌の編集者という設定にして、10年前から続く不気味な事件の謎を解明していく形にしている。日本でハロウィンのホラーというのは無理やりだが一応の説明は付けてあり、変な外来種を持ち込んだために、国内で被害が拡大していく結果を生んだ関係者は罪深いと思わせる。 また不自然さ(制作側にとっての都合よさ)をそれほど感じさせない作りになっており、登場人物の微妙にユーモラスな掛け合いや皮肉な物言いが気の利いた印象を出している。最初の事件が小平市といった地味目の地名だったことや、職場でフォトショップが使える、フェイスブックも効果がある(ない)といった具体的な事物が劇中世界と現実との距離を縮めていた。それにしても登場人物が何で「甲府事件」(1975)なるもの(ストーリーと直接無関係)を重視していたのかはわからない。スタッフの中にこの手のマニアでもいたということか。 視覚的には黒い霧などは安っぽいが、全体的には絞った形でスリリングな場面を設定している。最後の12分間を視覚化するための場所選定も(多少無理はあったが)効果的で、エンディングにつながるところも心地いい。主人公はよく頑張ったと言ってやりたい。  なお雑談として、主人公の友人が真昼間に襲われた場所は千代田区とされていたが、撮影場所は川崎市の武蔵小杉(中原区小杉町)にあるカフェだったらしい。いかにもただの古い住宅を改装した作りで、同種のものが「ハロウィン ナイトメア2」でも使われていたが、近年こういうのが好まれるようになっているということか。現地は「シン・ゴジラ」(2016)にも出たタワーマンションが林立する地区に接しており、長期的な土地利用でもないだろうが、空き家のとりあえずの活用方法としてはよさそうな感じである。
[DVD(邦画)] 5点(2018-06-30 20:23:04)
689.  きみの声をとどけたい 《ネタバレ》 
言霊を扱った映画は「学校の怪談 呪いの言霊」(2014)以来である(中身は全く違う)。 個人的には最後の展開が意外だった。まさかこうなるとは思わなかった。年少者向けアニメとはいえ一応は現実世界のこと(紫玉は主人公の主観的な現象という前提)として話が進んでいくので、キセキという名目で絶対あり得ないこと(皆が見ているところで紫玉が大量発生)を起こすとまでは予想していなかったわけだが、まあこれは初めからこういうものだったと割り切るしかない。意識障害からの回復は絶対あり得なくはないので、そういうことなら普通に奇跡として受け入れられる。 中心テーマのコトダマに関しては、悪口を言うと本人に返るというのは現実的な教訓だが、願いを言葉にすれば必ずかなうとも思われない。口に出すのが実現のための第一歩というならそうかも知れないが、それは努力家のお嬢様にこそふさわしい行動様式である。そこまでご立派でなかった主人公も、自分の言ったことを自分で受け取った結果として生きる姿勢を改めて、それがその後の就職につながった…と思えばいいのかも知れないが、どうも派手なキセキに気を取られて、まともな成長ドラマの部分が見えない気がする。  一方、音楽著作権には厳しい割に、その他社会通念は無視というのはこの手のアニメに必須だとでもいうことなのか。特に、いくら高校生の趣味的活動でも、商店街の協力者やリスナーを巻き込んだ時点でそれなりの責任が発生するのであって、病院の母親とさえ直接関係のない個人レベルの事情で放送を使うのには反感を覚える。いろいろ気に障ることは多いながらも、“これはほのぼの系アニメだから”と自ら宥めながら見ることを強いられて、それが最後に全部帳消しになるほどの大感動はない感じだった。 ちなみに劇中の女子高生が外見的にみな可愛いのはアニメなので当然として、人格的に最も魅力がないのは主人公だった(一般代表を兼ねているからか)。人間以外ではカエルの位置付けが半端である(仏様の化身?)。  なお余談として、「長寿の鐘 お題目を唱えてからおつき下さい。」と書いてあるのに主人公が完全無視していたのは自分が咎めることではないとして(この宗派に特に義理はない)、その方面では有名と思われる「龍ノ口法難」というのがこの辺のことだったというのは今回初めて知った。この宗派でも言霊は重要なのか。
[DVD(邦画)] 5点(2018-06-24 12:56:23)
690.  ホワイトアウト フローズン・リベンジ 《ネタバレ》 
邦題は気分的なカタカナ言葉を長々と連ねているが、原題の”Прячься”というのは隠す/隠れるという意味の動詞の単数命令形のようで、要は「隠せ」とか「隠れろ」の意味かと思われる。 日本向け宣伝では「クローズド・サークル・サスペンス」とされており、非常に真面目な作りで変な見せ場は全くない(オカルト・SF・ファンタジーなし)。人里離れた測候所で消息を絶った5人と、後日、それを捜査に来た捜査官2人を中心に、何が起こったのかを次第に明らかにしていく物語で、時間差のある出来事が並行して進んでいく形になっている。それで特にわかりにくいわけではないが、最初に時間を遡った場面で、画面の左下にロシア語で「二日前」と表示されていたのを字幕で説明していないのは不親切である。 世間的な評判としては悪くないようだが、自分にとっては申し訳ないがそれほど感慨深い話でもなかった。ただし名探偵の相棒を気取っていた若手捜査官が、最初に自ら進んで残留したのが残念な結果になったのだなとは思う。また昔起こった殺人の理由は不明瞭なまま終わったが、こういう国ではそういうことがよくあった(ある?)のだろうなと思わせる台詞は出ていた。  なお舞台の測候所は高地にあり、それほど厳寒期でもなく地表面も見えるので「ホワイトアウト」の状態に至る場面はなかったが、天候によっては全く視界が効かなくなり、また晴れれば遠くの平地まで視界が広がって開放感が生じるといった変化は出していた。序盤のヘリコプターで空からしか来られない場所ということが印象づけられるので、当方としては字幕に出ていた「ウラルから極東まで」のどこかをイメージしていたわけだが、実際の撮影場所はクリミア半島だったらしいのは意外だった。そういうつもりで見れば、遠方の都市部のように見える場所はクリミアの首都シンフェロポリかという気もするが、そのように思ってしまうとかなり興醒めである(シベリアとかだと思いたかった)。 そのほか登場人物に関して、妻役の女優はハンガリー生まれのロシア人で、NHKの「坂の上の雲」にも出演したマリーナ・アレクサンドロワという人だが、この映画では単なる化粧の濃い美女であって特に可愛く見えるところはない。19歳の男を誘惑する30歳の女(女優の年齢は27~28歳くらい)という役どころで、素っ裸になりそうでいてならないのはちゃんと抑制がかかっている。
[DVD(字幕)] 5点(2018-06-10 19:30:00)
691.  THE レジェンド -伝説の勇者- 《ネタバレ》 
邦題が俗な感じで全く信用する気にならない。原題の“Stara baśń. Kiedy słońce było bogiem”は英語でいえば“Ancient Tale: When the Sun Was God”のようで、要はポーランドにキリスト教が導入される以前、太陽を信仰していた頃の昔話である。 この辺の歴史はよく知らないが(それをいえばどこの歴史もよく知らないが)、ポーランド王国の最初の王朝「ピャスト朝」につながるピャスト家の創始に関わる映画であるらしい。年代としては9世紀あたりのようで、日本では平安時代に当たる。史実とも限らないが全部が創作ということでもなく、年代記に書かれた内容をもとにして、英雄とか恋愛とか当時の風習などの見どころを加えて娯楽性を高めようとしたものらしい。大昔の話ということで若干のファンタジー感も出してある。 話の大筋としては、部族連合の長?だった王が絶対権力を得ようとして失敗し、代わりに皆の支持を集めた者が王になって、サクソン族やバイキングといった外敵に対抗する体制を整えた形になっている。王の専制を否定する点で、後世のいわゆる「貴族共和国」のようなあり方を目指していたようでもある。  しかし実際見て思うのは著しくスケールが小さいことで、せいぜい田舎の村同士で抗争している印象しかないが、逆にこの時代のこの場所では実際この程度のものだった、というようにも取れる。少々古くさい映画に見えなくもないが、それでもCGを入れたりしているのは一応21世紀の創作物である。 考証的に正しいのかわからないが興味深かったのは、夫が死ぬと妻が生きたまま一緒に火葬される風習(本当か?)やバイキングの行動様式といったものである。湖水に守られた木造の城塞は目を引くが、これに当たるものが実際にKruszwicaという場所にあったらしい。また舟で渡る聖堂の島はアルノルト・ベックリンの「死の島」を意識していたように見える。ほか王が籠城を決めた後に、何が行われているかをしばらく説明せず、王子の死で一気にわからせるといった少し気の利いた展開もあった。 登場人物としては、ヒロイン役のマリーナ・アレクサンドロワという人はハンガリー生まれのロシア人で、NHKの「坂の上の雲」では可愛らしいロシア女性を演じていたが、この映画でも注目せずにはいられない可憐な美女になっている。主人公の男もけっこう格好いいのでヒロインとはお似合いだと思ったが、この男に横恋慕した船着場の娘はかわいそうだった。
[DVD(字幕)] 5点(2018-06-04 21:25:50)
692.  2085年、恋愛消滅。 《ネタバレ》 
冒頭から出る文字のフォントとか、全編にわたる視覚効果や各種小道具によってレトロでファンタジックかつ作り物感とチープ感のある世界像を作っている。非常に安っぽく見える映画だが、あえて狙ってやっているのだと言われればそれまでである。時々出るモニターの出現の仕方などはけっこう気に入ってしまった。 基本設定に関しては、2014から連載されて2017年に映画化もされた「恋と嘘」の影響を受けている可能性もある。劇中世界の状況に関する解説を聞いてもそれほど現実味がある気はしなかったが、最大の問題が少子化であって、男女雇用機会均等法をその発端に位置づける感覚自体は理解できる。劇中の国の政策は、現実に地方の公的機関などもやっている婚活イベントを国家プロジェクトとしてやるようなものと思えばいいらしい。 運営側のスタッフは実はみな90歳以上とのことで、恋愛に消極的な若者にハッパをかける年長者という位置づけになっているが、2085年で仮に90歳とすれば1995年生まれで出演者と同世代ということになる。この映画の対象層も同じくらいだとすれば、こういう未来を回避するために、今の若者に奮起を促そうとする映画というつもりかも知れない。  お話の方は「恋愛合宿」とのことで基本的にはラブコメ調だが、全国最高レベルの超奥手集団という設定のため、ひたすら素朴な失笑ラブストーリーになっている。また主人公の妹が可愛らしいので和む。 国の意向に従わなければ処罰というような、国家による圧迫を示唆するディストピア風の設定もあるが、「国の思惑なんかには負けたくない」というヒロインの台詞からすれば、社会は社会として自分は自分という主体性はきっちり確保されていたようである。「R地区」「P地区」の設定を悲劇的に使うのかと思っていたが、人生の多様な充実感を表現する方向につながっていたようで安心した。 なお点数としては、普通に映画として見ればいい点はつけられないが、個人的に話の内容が嫌いでないのと、ヒロイン役の溝口恵という人のカラッとした感じが好きなので少し上げておく。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-21 14:28:13)
693.  宇宙刑事シャイダー NEXT GENERATION<OV> 《ネタバレ》 
昭和の東映TV特撮「宇宙刑事シャイダー」(1984-85)から30年ぶりの映像化ということになる。今回だけでも一応まとまった話ではあるが、前作の「宇宙刑事シャリバン NEXT GENERATION」(2014)の続きという意味もあるようで、ラストは前作を含めた二部作の総まとめとして、全てを動かしていた真の悪が姿を現す意外な展開になっている。 TV放送当時に本編をじっくり見た覚えはないが、最初から女宇宙刑事の蹴りが豪快だったりするのはもともとそういう番組だったのだろうとは思う。ただ主人公とヒロインがラブラブというまではいいとして、主人公が浮気性だったりキスシーンがあったり登場人物の衣服をはぎ取って肌を露わにするのは子ども向けとも思えないが、これはこの映画の対象層がこの当時で40代くらい?の人々だからということか。結果的に大人向けなのか何なのかよくわからない微妙な話になっているが、しかし昔も今も対象年齢から若干外れた世代の立場でも、それほど退屈せずに面白く見ることはできたので問題ない。終盤で「行こう、おしおきにな」と言ったところの宇宙刑事3人は最高に格好よかった。 そのほか出演者としてはヒロイン役女優のアクションが本格的なので驚く。また銀河連邦警察長官の娘で(つまり宇宙人だが)外人名前で日本風女子高生というわけのわからない重要人物役は山谷花純という人だが(後のモモニンジャー)、この人が敵に引っ張り回されて困った顔をするだけの役かと思ったら、終盤でちゃんと演技をする場があったので安心した。またついでに書くと今回登場の「不思議獣ピタピタ」というのがデザインとしても造形的にも良好だった。  ところで当時の本編を見た覚えはなくとも番組のテーマ曲は記憶に残っており、特にエンディングテーマの「おもしろいことが大好きで 悪いことは許せない」は印象的だが、今になってみるとこれが人の本来あるべき姿を端的に表現しているようで心に染みる。 あえて理屈をいえば、「おもしろいこと…」は個人の存立に関わるもので、自分という存在を自ら支えるための基盤をなすものである。また「悪いこと…」は見た通り、個人の社会への関わり方を示している。今回の物語中で、この二つはセットでなければならないことを端的に示した場面があったのは少し感動的だった。こういうところをしっかり押さえるのは子ども向けにも大人向けにも大事なことと思われる。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-15 19:22:52)
694.  フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ 《ネタバレ》 
前作「フランケンシュタイン対地底怪獣」(1965)に続くフランケンシュタイン第2作である。前作と異なり、同時上映の映画は明らかに子ども向けだったようなので、今回は普通に怪獣映画の扱いだったと思われる。 基本的な設定としては前作の経過を引き継いだ形だが、水野久美さんが共通の出演者というだけで、ほかは役者も登場人物の名前も違っており、ずれのある並行世界のようである。今回も日米合作とのことで、水野久美さんが洋モノ映画で見るような、感情で動いて面倒を起こすバカ女の役になっていたのは残念なことである。メイクもきついので可愛気がない。 また怪物の造形も、もさっとした着ぐるみになってしまってケモノの印象が増しており、これはキングコング対キングコングのつもりだろうかとも思う。羽田で人が食われたのは衝撃的だったが、前回は人間っぽかった怪人が、条件次第でいつ今回のようなケモノに変わるかわからないというのでは、やはり全部駆除しておいた方が無難ということになってしまう。劇中の科学者も研究材料が失われないようにとしか考えていなかったようで、前作に比べて人の心が失われた単なる怪獣映画のように見えた。かろうじて兄弟愛という点で、最初に兄が出現した時の、おれの弟に何をするんだ、という抗議の姿勢が印象に残った程度である。 ちなみにタコを最初に出すことにしたのは前回からの改善点ということかも知れない。今回も最後は海底火山の爆発というのが唐突だが、これは1952年の「明神礁」爆発が人々の記憶に残っていたからだと思われるので、その発想自体は理解できなくはない(「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」(1967)でも冒頭にニュース映像が出る)。  なお今回の見どころは何といっても陸上自衛隊の大活躍である。最初に何をするか明示してからの準備がかなり念入りに見えたが、その甲斐あって効果は絶大で、怪物が今にも死にそうなところまで追い詰めたのは前代未聞の大戦果である。ヘリコプターが身を挺しての遅延策も功を奏し、怪物が木をなぎ倒しながらひたすら逃げ回るのは痛快だった。日頃から不死身の大怪獣を相手に戦っている自衛隊がその気になれば、サル人間程度は容易に倒せるということである。今回初出の殺獣光線車の重量感がいい。 また人型の怪物がミニチュアセットの中で、その辺のものを蹴散らしながらドカドカ走って行くのは珍しい眺めだった。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-08 23:28:04)
695.  ホラーの天使 《ネタバレ》 
「葵わかな初主演映画」とのことで、朝ドラヒロインの初主演映画としては自慢にもならない感じだが、まあ若いうちはいろいろあるということか。また「くちびるに歌を」(2014)で主人公(本来の)だった恒松祐里、「先輩と彼女」(2015)で印象に残る水谷果穂といった人々が出ており、ほかにアイドル役で現役アイドルも2人出ているが、アイドル映画というより普通に若手女優の出る映画という感じである(男は無視)。 内容としては一般的なフェイクドキュメンタリーで、ほとんど全面的にPOVを取り入れている。映画撮影・漫才・アイドル合宿の3グループの話を並行させておいて最後に統合してみせる形になっており、終盤で一気にネタばらししているところもあるが、序盤でも真相を示唆するものが一部出ていたようなので、そういうものを探しながら謎解きの気分で見る趣向と思われる。  監督としてはとにかく怖い映画を作ろうとしたとのことだったが、純粋に怖い映画というより不快な映画という印象が強い。特に女子のやることが非常に気に障るので精神的に負荷がかかり、その上に突然バケモノが出てギャーギャー騒いで血が飛散するようなのを見せられてはやかまし過ぎて閉口する。前記の取っつきやすい謎解きを含め、主に若年者を面白がらせるホラーとしてはよくできているのだろうとは思ったが、ある程度年を取った立場としては付き合いきれないところもある。これがこの監督の作風と思えばいいのかも知れないが。 なお少しよかったのは人物造形で、特にアイドルの「ミク」はこの人物の本質的なところがよく出ていると思ったが、だからといって好きになれるキャラクターというわけでは全くない。題名の意味は結局わからなかったが、これはもしかすると出演者の誰かをそれぞれの好みで天使認定すればいいのだということか。主要人物として男も出てはいるが、若手女子しか印象に残らないのは間違いない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-01-06 10:59:08)
696.  ひかりをあててしぼる 《ネタバレ》 
2006年に渋谷で起こった殺人事件を題材にした映画とのことである。なぜかアメリカのホラー映画賞(最優秀作品賞と最優秀主演女優賞)をとったそうだが、普通一般のホラーとして見れば怖くも何ともないのでそういう見方はしない方がいい。 内容的には自分が見る限り、大変申し訳ないが何が言いたいのかわからない。実際の事件に合わせた展開に見えるが事件自体の映画化ではないらしい。また仮に普通の夫婦でも起こりうることを表現しようとしたのなら、まずは夫婦の相対関係の変化を地道に積み上げる形にしてもらいたかったところだが、特に序盤は実際の事件に合わせたエピソードが取ってつけたようで説得力に欠けている。第三者的に見る限りは何も感じ取れない話だったので、あとは個々の観客が、それぞれの事情に照らして見るべきところがあると思うかどうかの問題だと思われる。  出演者に関しては、夫役はこの役者としては普通の役どころに見えて特に驚きもなかったが、妻役の女優はこの人自体が見どころと思わずには済まない存在感を出している。この女優は近年では「渇き。」(2014)でも結構ハードな役をやっていたので、今回のこれもそういう流れの延長上と捉えるべきか。 観客側の立場としては、女優を見るからには主に表情とか声色とかを気にしているわけだが、しかし本人としては“身体の筋が見えるような(力のこもった?)動きが妻の怖さを表現している”というようなことが重要だったらしい。自分としても酒瓶を全力で振り下ろすのは思い切った感じでよかったと思うが、その後に細く長い手足で力技というのも強烈だったかも知れない。ボディラインが見える場面が多いので本当に細身の人だというのが印象づけられる(昔からそうだったが)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-12-27 19:52:34)
697.  アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ 《ネタバレ》 
冒頭でEurimages(ユーリマージュ、「欧州評議会」の文化支援基金)とスロバキア共和国文化省・チェコ共和国文化省の名前がクレジットされる。物語の主な舞台であるチェイテ城は現在のスロバキアにあるので、スロバキアにとってはご当地映画的な扱いなのかも知れないが、主人公を含めた登場人物の多くはハンガリー人であるから郷土の偉人のような位置づけではないと思われる。チェコは何の義理があったのかわからない。 主人公のバートリ・エルジェーベト(1560~1614)は題名のとおり「血の伯爵夫人」と呼ばれており、今日では残虐な常習的殺人者として知られている。しかしこの映画はその固定観念をひっくり返すことを目的としていたようで、これまで主人公の悪業とされてきたことを取り上げて、誤解だとか曲解だとかそれなりの事情があったとかいう形で丁寧に言い訳している印象だった。まあ高位の貴族なので臣下や領民の全員を人道的に扱っていたわけでもないだろうが、少なくとも大量殺人をする人物ではないものとして表現されている。 物語としては、残虐行為抜きだと普通にヨーロッパ貴族の没落の話になるのでそれほどの面白味はなく、また時間が長い割にダイジェスト感があったりもして娯楽性が弱い気がする。加えて珍妙な発明をする人物がいたりするのは意味不明で、必然性のないものを無理に入れ込んだようで目障りだった。しかし個人的には最初のところで本物のチェイテ城を映した後に、時代を遡って過去の全体像が復元されていく映像を出していたのは好きだ。こういうのを見ると観光誘客の効果はあるかも知れないとは思う。また死体が運ばれて行った後に黒ネコがニャンと言いながら全速力で道を横切った、というような芸の細かさはある。  ところでこの主人公は流血を伴う残虐行為で知られたせいで、後世の吸血鬼カーミラ(1872年の小説「カーミラ」より)のモデルということになっている。主人公に痣があったのは史実というよりカーミラのほくろに似せたものと思われる。 同様に近代の吸血鬼イメージの元になったとされる人物としては、現在のルーマニアにいたワラキア公ヴラド3世(1431~1476)が吸血鬼ドラキュラ(1897年の小説「ドラキュラ」より)のモデルとして知られている。この人物も残虐行為が多かったとされており、実際に串刺し刑を多用したからこそ「串刺し公」と呼ばれたわけだが、それにしても対立勢力によるネガティブキャンペーンのせいで、殊更に極悪なイメージが後世に伝えられたという説もある。現在のルーマニアでは、オスマン帝国の侵攻に果敢に抵抗した英雄として肯定的評価がなされるようになっていると思うが、これに倣って?この映画でも、悪名高い「血の伯爵夫人」の名誉回復を試みる意図があったのかも知れない。 ただ残虐行為がなかったことにしてしまうと単に陰謀で破滅した未亡人ということになり、この人物に注目する理由自体がなくなってしまう気がするわけだが、しかしそういうこととは別に、事実を尊重する気のない集団が悪意をもって情報操作した場合に、それが歴史として定着してしまうことの恐ろしさを訴えたとすれば、日本人にとっても現代的な意義のある映画といえる。
[DVD(字幕)] 5点(2017-12-14 22:58:13)
698.  バンパイア・ラヴァーズ 《ネタバレ》 
題名の印象は全く違うが、1872年にアイルランド人作家が英語で書いた小説「カーミラ」(吸血鬼カーミラ)の映画化である。最初に出た古城の映像(絵)がいかにも安手で、続いて男が殺されたあたりで型どおりの定番ホラーかと落胆したが、その後は意外に原作に忠実にできている。舞台は一応原作通りオーストリアのスティリア(シュタイアーマルク)に設定されており、年代としては最初の古城が18世紀末、続く本体エピソードが19世紀前半ということになる。 全体構成としては、原作では登場人物の体験談だったものを映画では独立のエピソードとして起こし、時系列順に並べて見どころを作りながら盛り上げていく形になっている。終盤では、関係者が揃って古城に乗り込んでいくところでもう大丈夫、という安心感を生じさせず、屋敷での出来事を別に作って並行させることでスリリングな印象を出していた。ほかオッパイとか全裸の映像が無造作に出るがそれほど刺激的でもなく、かえってあっけらかんとした感じに見える。ちなみに男を誘惑するのは「カーミラ」の映画化としては反則と思われる。 なおカーミラ(カルミーラ)役の女優は右目の下にほくろがあるようだが、これをこの映画では原作に沿った形で生かす気がなかったらしい。古城にあった絵にもこれを描けばいいだけのことだが、なぜかしていないのはかえって意味不明である。  ところで登場人物に関して、劇中の「エマ」は原作の「ローラ」に相当する人物だろうが、原作では清楚なお嬢さんのイメージだったのに対し、映画ではそうでないとまでは言わないが若干のお転婆感が出ており(目玉も目立ちすぎ)、吸血鬼としてはその辺に惹かれたのだろうが自分としては必ずしも同調できなかった。原作では村娘の葬列が来た際、この人も一緒に歌うことで心優しい人物との印象を出していたが、映画では省略されていたようで残念だった。  題名のとおり映画では女子2人の恋愛感情をはっきり出す形になっているが、ラストでそれがどう表現されたのか自分としてはわからなかった。日本人的にはいわゆる成仏して終わったように受け取れるが、もう1人に継承されたというならちょっと洒落にならない結末であるからそういう解釈はなしにしてもらいたい。
[DVD(字幕)] 5点(2017-12-14 22:58:10)
699.  富江 replay 《ネタバレ》 
伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の映画化第2作である。第1作の続編ではなく完全に独立した別の映画だが、エンディングテーマは第1作とアレンジ違いの同じ曲を使っている。音楽についてはサントラCDまで出ていたりして、この当時はそういうところにも力が入っていたらしい。 今回は原作の「地下室」の話をもとにして、第1作よりは原作に近い雰囲気を出している。ただし一般の心霊ホラーのような演出で、自宅に何か出そうだとか押入れに何かいるとか天井を這っていたとかいうような場面もあるが、少なくとも自分はその手の怖がらせを富江映画には求めていない。また険悪な面相の特殊メイクなども不要である。 ドラマ部分では、いろいろあっても人間を信じたい、というようなことがバケモノとの対比で語られており、結局最後に愛が勝つストーリーだったのは大変結構だと思うが、一方で死ねない苦しみ、悲しみまで表現されていたのはバケモノの擬人化が過ぎる。分裂して増殖する生物?がもう終わりにしたいなどとは思わないだろうし、そもそも人を破滅させるのが生きる喜びというのが富江だろうが、まあそういうところがこの映画の特色かも知れない。  今回の富江に関しては、文句なしに美形だが少しきつい感じで、男の前に脚を伸ばしてみせておいてはぐらかすような行動は好きだ。なぜか出番があまり多くなかったのは残念だが、ラストで首だけになった顔は可愛らしく、自分なら投げる前にほっぺたを撫でたくなるだろうと思った。 またわずかながらドッキリ系の驚愕場面もあったが日本人形の件などは嫌いでない。主人公が可哀想な少女の自宅に行ったところで黒い影がヒラヒラしていたのも意味不明だったが悪くない(風で回転する葉っぱの影か)。また別の部屋にいた主人公が来て、男に毛布をかぶせたところは純粋にいい場面だった。 そのほか余談として、劇中語られていた「踏み出せばそこに道ができる」というのは、いかにも飲食店店主(自営業の創業者)が言いそうなことなので笑った。確かに、人生そのように自ら心に決めるということが大事である。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-20 20:53:32)
700.  富江 アナザフェイス<TVM> 《ネタバレ》 
伊藤潤二原作のホラーマンガシリーズ「富江」の実写化である。シリーズ初の映画「富江 tomie」(富江役:菅野美穂)と同年に放映されたTVドラマで、同じ女優が違う富江を演じる3話オムニバスになっている。  【第一話】「クラスメートの富江が、死んでしまいました」のナレーションは原作最初のエピソードとほぼ同じ。女子高生を主人公とする学園ドラマの体裁で、殺しても生き返るという基本的な特性を見せている。富江役の女優は当時17歳くらいだろうから年齢的に最も違和感がなく、上ずったような甘ったれた声には笑ってしまう。「どうしてそんなひどいことを言うの…(泣)」が好きだ。 【第二話】カメラマンを主人公にして“富江は写真映りが悪い”という特徴を扱っている。劇中2人の富江が出ており、思い出のお姉さんの方はまだしも夜の女が踊るあたりは少し無理があったようだが、まあ笑って許す感じになっている。 【第三話】全体構成上の「転」「結」に当たる部分で、前2話でも顔見せしていた富江バスターのような男が表に出て来たが、富江退治には失敗していた(当然だ)。警察の記録で、制服姿で磔になっているとか浴衣で川に半分浸かっているとか多様な死体を見せていたのはいちいち着替えて撮ったのだろうから手間がかかっている。  ストーリーはほとんどオリジナルだがそれほど違和感もなく、オムニバス形式なのが原作マンガらしい雰囲気を出している。富江役の永井流奈という人は美少女ともいえるがカワイイ方へ寄った感じで、グロい場面は皆無だが(エロい場面もあまりないが)妖しいかわいさのある富江が見られる意義はある。安手の作りではあるが、現在までの実写化の中では最も普通に富江っぽい話になっていて好きだ。
[DVD(邦画)] 5点(2017-11-14 19:27:56)
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