721. 狼たちの午後
《ネタバレ》 期せずして劇場型犯罪になってしまった銀行襲撃。かなり間抜けな強盗をパチーノが演じる。序盤、これはコメディなのかと思えるシーンもあるが、演出がパチーノの人間味にフォーカスして行き、人質の銀行員たちも彼に共感しておかしな風景が展開する。中盤でパチーノの「愛人」が登場するあたりからストーリーは悲喜劇の様相を帯び、サルが国外の逃亡先に「ワイオミング」を指定するところではすでに笑えなくなっていました。実話ベースらしい。生中継がメディアとして活躍し始めた頃の事件という意味では日本の「よど号」や「浅間山荘」にも被るのだけど、政治思想に直結しているそれらの事件と違い、こちらは庶民的な社会状況を背景にしています。ベトナム帰還兵の精神衛生、刑務所環境、ゲイ、同性愛結婚、犯罪者を盛り立てる野次馬たち。それらをひっくるめてひとつの作品の中でごった煮にした印象だけど、鑑賞後に残る倦怠的な苦さは当時の米国社会そのものだったと想像できる。邦題は「狼」。原題は「犬」。でも、観終わった感想は「迷える羊」でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-11-30 23:32:13) |
722. nude
《ネタバレ》 AV女優みひろの自伝小説の映画化。原作は読んでいません。エロチック系の作品かと思ったら、とても真面目な内容でした。地方の高校を卒業し、上京して東京で就職。スカウトされヌードグラビアのモデルへ。彼女なりの葛藤を経てグラビアからVシネへ、そしてAVへ。特段に面白くはないけれど、普段は触れることの無いAV女優の内面に対する興味だけで見られる作品でした。故郷にいる親友、付き合っている彼氏、みんながその職業に否定的。それに抗う彼女。その構図でストーリーが進行する。裸身や性を売り物にする嫌悪の中味は男女によって違う。親友の女性は専らAV女優の友人と見られることを嫌がっているようでした。つまりは自分が可愛いってこと。私は友人が男優をやっていても絶交しないけど女性同士の関係はピュアが基本のようです。彼氏は彼女を独占できなくなる、というより、彼女を共有する大勢のなかの一人って気分になるのが嫌なんですね。その心情は良く分かる。親友に絶交され、彼氏が去ってもAV出演を続ける主人公。自身で決めたことに対してプライドを持って取り組んでいるという描写でしたが、何が彼女にそうさせるのか、根本の動機部分は説明されない。そこにもう少し突っ込んで欲しかったです。中盤でAV女優にならない主人公を「中途半端」と断罪する偉そうなプロデューサーが出て来くるのが可笑しかった。あんな奴、本当にいるんですかね。もの凄く狭い世界で女性の可能性を決めつける変人でした。原作者も着衣で出演されています。主人公より可愛いです。「共演した男優さんたちはみんな優しかった」って独白台詞が妙に印象に残りました。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-11-30 22:29:41)(良:1票) |
723. デイズ・オブ・サンダー
《ネタバレ》 ニコール・キッドマンのナマ足でスリップ・ストリームの説明をするおバカ映画です。やってみたい。ほとんど「トップガン」と同じ展開で登場人物たちがおバカに見えるところも同じです。不思議と戦闘機よりこちらの方がスピード感がありました。背景の違いなんでしょうね。楽しかったです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-11-29 01:09:56) |
724. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 奥さんはイケメンに魅かれて結婚し子供を二人産んだけど、旦那の癖が強くて一緒に居られなくなった。至って普通の離婚でしょう。その普通の離婚家庭に全く異常な状況をぶつけてくる。オープニングから最初のトライポッドが動き出すシーンなどは体が硬直したまま動かせない程のスペクタクル。破壊の量感と質感の作り込みが圧倒的な迫力で絶対的な戦闘力を演出する。トライポッド1体の破壊力を見せつけた後に大軍を進軍させて絶望感を深めて行く。従来の作品に類型するなら、その破壊描写との落差を感じる離婚家族の普通さも、物語のリアリティ演出だと考えると納得しやすい。子供たちを愛していてもコミュニケーションが上手く取れない不器用な男が、不器用なりに揺るぎなく子供たちを愛し続ける。だからと言って子供たちのヒーローに昇格する訳でも無く、最後までダメ親父のままで終わる。このままならない悲哀の残酷さが現実味を醸す。オリジナルを踏襲するしか無かったと解釈できるウィルスのオチですが、あれは警告なんじゃないかな。よく考えてくださいよ。1950年代の人たちはウィルスで納得したかも知れないけど、今の時代に納得する人がいますか? 光年でしか測れない距離を征服している奴らがそんなに迂闊なことをしますか? 誰が見ても突っ込みどころ満載のエンディングで、そこだけがリアル描写から大きく逸脱している。つまり、もし現実に征服者が現れたら「絶対にこの映画のように終わらない」って事です。「未知との遭遇」や「ET」で楽観論を展開しすぎたスピルバーグの反省映画ですかね。 [DVD(字幕)] 8点(2011-11-29 00:25:31)(良:1票) |
725. コンテイジョン
《ネタバレ》 確かに主役級がずらりと並ぶが主役はいません。最初のウィルス感染からパンデミック、パニック、ワクチン開発、そして収束に至る事態の流れを、様々な立場の人の均等な描写によって見せる。でも、豪華役者陣がお互いに絡むことはほとんど無い。無駄遣いって言葉も浮かんだけど、もし本作に無名役者を並べたら顔と劇中の役割が一致する前に映画が終わっていたかも。それほどエンタテイメント性が希薄なシナリオでした。だから、作品をもたせる意味でこのキャスティングには意味があったと思います。見慣れない単語のタイトルの意味は「接触感染」。ストレートです。物語を捉える視線もストレートで、すごく真面目な作品という印象を受けました。従来の同類作品ならワクチンが開発されれば大団円だったが、本作では製造が追いつかないワクチンの接種順を決める問題にまで踏み込む。パニックを予見しインサイダー情報を身内に流すフィッシュバーンや、世間を悪い方向へ扇動しているようなジュード・ロウ、そしてマリオン・コティアールを拉致する中国人たちが悪人に見えない。明らかに悪人に見えないように演出的な配慮がなされている。彼らの行為は実際に起こる可能性が高いものだけど、本作はその行為を糾弾することが目的ではないからだろう。実際、死に直結するウィルスが蔓延したら、誰が悪いなんて責任論を展開するよりも先にやることがあるはずだから。映画としての娯楽性を考えたら、終盤でもう一度くらいは何かが起こるのかと思ったけどそうはならなかった。ホントに真面目。これは現実に事が起こった際のシミュレーションと捉えると納得しやすいかも。面白かったかと聞かれると困るけど、観た意義は感じられる作品でした。 [映画館(字幕)] 5点(2011-11-22 11:24:59)(良:3票) |
726. インモータルズ/神々の戦い
《ネタバレ》 内容はどぎつくても言葉としては無機質に感じられるのが「神話」ですが、本作のあらすじを文章にしたら、まさに「神話」になるという印象です。特定の登場人物の心情に共感するような作り方では無いので、ストーリーから感動を貰いたい人には不向きな映画だと思います。私は最初からそこには期待していなかったので、というより、映像美を期待して観に行ったので、充分に満足させて貰いました。見どころは神が戦うシーン。人対人の戦いと神対神の戦いにきっちりと違いを付けています。スピードとパワーで。ゼウス、アテナ、ポセイドン、アポロンなど、聞き慣れた名前の神々が天上から降臨して闇の軍団と肉弾戦を繰り広げますが、まさに「肉弾戦」で、肉体の弾け飛び方が半端じゃなく凄まじい。そのグロさを美しく見せるのがターセム・シンらしい。広告では『300』のスタッフが作った映画と言ってましたが、個人的にはターセム・シンが作った映画と言って欲しい作品です。 『300』のザック・スナイダーも映像に強い拘りを持つ監督ですが、ターセム・シンは少し違うところを標榜しているように感じます。ストーリーそっちのけは二人とも似ていますが、ザック・スナイダーが映像の迫力に拘る人だとしたら、ターセム・シンは映像の美に深く沈潜して行くような耽美的な映像を作る人、というのが私の見立てです。本作は戦闘シーンが多く、ターセム・シンの絵作りが活きる素材とは言いにくい。前作『落下の王国』のような作品の方が彼の表現が活かせるのではないかと個人的には思う次第です。 [映画館(字幕)] 8点(2011-11-21 05:53:19)(良:1票) |
727. WXIII 機動警察パトレイバー
《ネタバレ》 公開時は「WXIII」というタイトルが何のことかさっぱり解からなかったです。それもあって興味が湧かなかった。ポスターを観ただけで「パトレイバー」のシリーズと認識できた人は少なかったと思う。特車2課の面々の出番が少なく、パトレイバーシリーズである必要がほとんど無い中身だとしても、興行的に有利なタイトルとは思えない。集客する気、あったんでしょうかね? 内容はバイオハザードと警察小説のミックスでストーリーの進め方やオチの付け方は悪くないんだけど、比較的淡々と進むことが「慣れてる」感じで作品から新味やパワーを感じなかった。それは2001年の作品を今頃になって鑑賞したからかもしれないけど。難点は本作の時代設定が過去なのか近未来なのか分らないこと。公開時はすでに携帯電話がそれなりに浸透していたはずだけど、劇中には出てこない。刑事たちはポケベルと公衆電話を使う。ネット上の掲示板も少し出てくるが、あくまで趣味人だけの領域といった描写だった。でも、現代にも存在しないレイバーと云う人型ロボットは存在する。中年刑事のアナログ趣味を強調する目的があったとしても、レイバーが存在する時点で公開時より過去の設定はあり得ないと思う。シナリオは緻密な密度を持っているが、最も気を遣うべき部分が意味不明のおざなりです。何か意図があったのか? レイバーを扱いながらポケベルは止めてくれ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-11-20 12:46:03) |
728. マネーボール
《ネタバレ》 主人公はメジャーリーグ球団のゼネラル・マネージャー(GM)なので、当たり前ですが野球の話というより経営の話でした。経営の目的は利益を生む状況を作り、維持し、向上させること。商品は野球選手のプレイとゲームの結果。イメージの中では繋がりにくい双方を、性格的に癖のあるGMが独自の理屈を持ち込んで強引に結び付けて結果を残す。仕事の世界は結果オーライな部分が多く、殊更にマネージメントの分野にはその傾向が強い。それだけ、と言っても良い。稼げる奴はどんなろくでなしでも偉く、稼げない奴はいかな聖人君子で役立たず。その構図がはっきりと見える。一般論に還元するなら、教訓はふたつ。初めての取り組みには必ず軋轢が生じるけど、始めてみないと何も変わらないこと。そして、一度始めたことはある程度結果が出るまで続けないと、良かったのか悪かったのかさえ分からないってこと。逆風を受けながらも、辣腕を発揮するGMをブラピが演じていて、これはハマり役でしたね。強引なやり方に対する内面の不安も、ブラピらしく様になって演じられている。最近は癖があるというより変人役が多かったので、久しぶりに彼の演技を落ち着いて観られました。 [映画館(字幕)] 6点(2011-11-16 12:18:17)(良:1票) |
729. 駅馬車(1939)
殊更に面白いとは思わなかったなぁ。ずっと以前にも地上波で観た記憶はあるけれど、その時よりこじんまりとした印象を受けた。それは現代の視線での感想で、多様なキャラと人間関係とアクションのバランスが良く、製作当時は娯楽という部類を一歩抜けた見え方だったと想像できる。アパッチによる駅馬車襲撃シーンなどは迫力あるし、ジョン・ウェインは西部男の代表としてのポジションを築いて行ったことが頷ける存在感。まさに古典ってことだと思います。 [地上波(吹替)] 5点(2011-11-16 12:12:35)(良:1票) |
730. 宇宙戦争(1953)
私には50年以上前の古さを感じさせる作品でしか無かったです。展開の多くをナレーションだけで済ませるのも手抜きだよね。当時の世相や一般的な科学知識のレベルの低さは分りました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2011-11-12 21:56:37) |
731. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
ストーリーに転と決があったので1作目よりは良かったです。人間の国はいくつかに別れているようだけど、地名とそれらの国の繋がりが良く分からない。分からなくても何となく観れてしまうから大きな問題では無いんだけど、もう少し説明して欲しかったかな。ホビットを除く旅の仲間に連帯感が生まれて来ていることが感じられ、多少は感情移入できるようになった。ぼーっと観ていると途中からサウロンとサルマンが混同されてきて、1作目と同様の意見になるんだけど、敵の親玉の存在感が希薄で緊張感に重みが足りない。最後の峡谷の闘いにサルマンが姿を見せなかったのもどうかと思う。絵の作り込みが圧倒的なだけに少し勿体ないと思いました。 [DVD(字幕)] 6点(2011-11-12 21:46:47) |
732. この森で、天使はバスを降りた
《ネタバレ》 主人公を最後に殺して欲しくなかったなぁ。あの街に希望の種を植えて逝ってしまったけど、彼女にこそ希望を与えて実現させてあげたかった。死んだ方が彼女の功績が印象づけられると計算があっての展開なんだろうけど、釈然としないものが残りまくってます。だって、彼女が死ななくても、すでにあの街は良い方向に向かっていましたから。彼女を疑ってコンテストの応募金を隠そうとした男の偏見を正すための代償だったとしたら、高く付き過ぎです。これは制作側の思慮が浅いと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-11-12 21:27:57)(良:1票) |
733. ルディ/涙のウイニング・ラン
《ネタバレ》 最後は少し涙が溜まったんですが、それはおそらく周囲の期待と心遣いが実ったからで、彼の夢が叶ったからという訳ではなかったと思う。彼の熱意には敬意を表するけど、本当にこれで良いのだろうかと思いながら観ておりました。カレッジフットボールにそこまで入れ込む動機が良く解からないから。身近に翻訳すると、東京六大学リーグなら早稲田以外はNG、対抗戦グループなら明治以外はNG、箱根駅伝は順天堂以外はNG、って感じですよね。スポーツに情熱を注ぎ純粋に自分の限界に挑みたいということであれば解かるんだけど、家族がファンだった大学のフットボールチームに限定しているところに偏愛という言葉が浮かびます。必然的に卒業したら夢が終わってしまう訳で、スポーツってそんなものじゃないと思うから。いいお話だとは思うのだけどシンプルに普遍化できる内容では無く、特殊な夢を実現させた頑張り屋さんのお話でした。高校時代に怪物と呼ばれたあるピッチャーは、野球ではなくジャイアンツにこだわって夢を実現させました。ルディもそのピッチャーと精神的には同類ですね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2011-11-11 04:49:31)(良:2票) |
734. どですかでん
《ネタバレ》 こんな作品だったのか。私は黒澤を「ブランド」としては評価しないのではっきり言いたいけど、酷い作品だと思いますよ。ただただ、痛い人たち、弱い人たち、変な人たちを羅列する。乞食親子の息子を殺すことに何の意味がある? 不貞を犯した妻を無視し続けることに何の意味がある? 黒澤作品を全部レビューしようと思っているので我慢したけど、最後まで観るのが辛く、また自分には何を言いたいのか全く分からない作品でした。同監督の「どん底」は貧しいながらも人間のバイタリティを感じさせてくれる作品だったけど、こちらは弱い部分をさらけ出し、解決しないままに放り出す。過去に自身が作って来た作品は欺瞞だったと懺悔でもしたかったのだろうか。あるいは、そういう映画的ではない物語の結び方に芸術性を見い出そうとしたのか。なんか、ふざけんなよって気分ですね。腹立たしかったです。 [CS・衛星(邦画)] 1点(2011-11-11 04:38:15) |
735. ファイナル・デッドサーキット 3D
《ネタバレ》 上映中にそんなにしゃべっちゃダメでしょ。鑑賞マナーがなっていないよ。上映中は死んでも静かに座って鑑賞しましょう。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2011-11-10 23:23:52)(笑:2票) |
736. ロード・オブ・ザ・リング
《ネタバレ》 私の映画史で最も大きな部分を占めるファンタジー三部作って「スター・ウォーズ」の旧シリーズなんだけど(あれは個人的にはSFではなくファンタジー)、現代の三部作ってこれになるんでしょうね。ファンタジーとしての世界観の作り方は念入りで、丹念な種族の描き分けやロケ地の選定に感心しました。でも、この一作目はさほど面白いと思わなかったのです。なぜか? たぶん理由は二つあって、ひとつ目は冥王サウロンが何者かが良く分からず、具体的な恐怖や畏れを感じないこと。物語の緊張感に直結する部分なだけに、お遣いの魔物だけでは物足りなかったです。もうひとつは、後半のロードムービー体裁が中途半端ってこと。ロードムービーとは舞台の展開にシンクロして登場人物たちの意識や関係が深くなって行くものですが、どうも危機が羅列されるだけで個々はバラバラのままって印象でした。だからラストシーンは「仲間」になる前に別れたみたいで、別行動になることが残念に思えない。尺的には十分に長い作品ですが2作目・3作目の流れを考えると、ここはもう少し仲間感を醸成するべきだったと思うのでした。 [DVD(字幕)] 5点(2011-11-10 23:18:04) |
737. 喧嘩太郎
《ネタバレ》 当時は無かった言葉ですが、ツンデレです。芦川いづみさんの。しかも婦警の制服でツンデレします。いやぁ、可愛い! [CS・衛星(邦画)] 5点(2011-11-10 22:32:31) |
738. がんばっていきまっしょい(1998)
《ネタバレ》 逆光の海を滑るボートを眺め、そのどこに魅かれたのかは解からないけどボート部入部を決意する主人公。この適当とも思える動機付けがとても印象的でした。人が何か始めるきっかけって、大概はそんなものだと思う。それが「自分にはボートしかない」とまで言い切るほどに入れ込んでしまう。本作はそんな記憶があるか無いかで、随分と視線が変化する作品だと思います。私はただただ、30年以上も昔のことになる自らの部活を思い出しながら観ておりました。自分は陸の上を駆ける競技だったのでボートとは全く無縁ですが、劇中の彼女たちとほぼ同年代だからなのか類似するシチュエーションが多々あって、無条件に共感してしまう。合宿の思い出、故障して満足に練習できない焦り、簡単に辞めろと言う肉親、年度が進むごとに緊張が増す試合、あと一歩で届かなかった目標、などなど。劇中に自分が見えました。部活に打ち込んだ記憶は年齢とともに遠くなっても減衰することはなく、私はこの種の映画には滅法弱い。個人的にとても素晴らしい作品でした。過去を懐かしむことに何の意味があるのかと問われれば、人生ってそんなものでしょ、と答えます。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-11-10 22:21:00)(良:2票) |
739. 彼岸島
《ネタバレ》 まぁ、こんなもんでしょう。私は原作を評価していないので完璧に映画化されても高い点数を付けたかどうか…。情報通信技術が発達した現代において、ああいう島が存在し得ること自体にもっと念入りな設定が必要だと思いました。それと、心情を言葉にし過ぎですね。身近な人を思いやる台詞が多すぎて、喋れば喋るほど友情ごっこに見えて物語と自分の距離が拡がって行く。吸血鬼にされた兄ちゃんが仲間への恨みを吐露するシーンなどは観ていてゲンナリするんだけど、彼に反撃できない主人公にはそれを通り越して凄くイライラしました。息の根を止めた兄貴に感謝したもんね。欠点が多い作品ですが、丁寧に描こうとしている部分が最大の欠点になっていると感じた次第。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2011-11-06 11:43:46)(良:2票) |
740. ミッション:8ミニッツ
《ネタバレ》 バーチャル・リアリティって言葉を聞かなくなったように、仮想現実の世界を提示されるだけでは物足りなくなった昨今、本作はかなり捻りを効かせた作品でした。事故死した男の最後の8分の記憶に主人公の意識を送り込み、その8分間を追体験させる。メモリーした時点から何度でもやり直せるアドベンチャーゲームのようでした。鏡に映った自分が別人の顔をしているシーンは、設定を理解させるうえで有効かつ秀逸な演出でした。そのシーンの後も彼(ジェイク・ギレンホール)の顔のままストーリーが進行する。あくまで主人公は彼の意識である。テロを防止するプロジェクトの目的からテーマはスライドして彼自身にフォーカスして行く。主人公自身が何者であるかを探求する流れは観る者を引き付けます。そして問題のラストシーン。彼が見た8分より後の世界とは何なのか。それを考えるのは楽しかった。元の世界から多元宇宙の一つへ分裂したのか? 肉体の呪縛から解放された「ゴースト」(「攻殻機動隊」参照)が終わらない夢を見ているのか? あるいは「あの世」の情景か? 色々な解釈ができる。いずれにせよ、彼は死んだ男の記憶にあった世界の延長上であの世界を手に入れた。そこに実体が存在するかどうかは、実は大きな問題では無いとも思う。我々が脳内の信号によって世界を知覚するように、それがリアルに感じられればその者にとって紛れもなく「リアル」であるから。本作はそこに至るトリガーとして「生きたい」「愛したい」「守りたい」といったの意志の力を提示し、人間の可能性を示唆する。この邦題も悪くないけど、プログラム名である原題はオチに直結していますね。ダンカン・ジョーンズ監督はこの2作目で本物を証明しました。観る側の興味を引き付けるストーリー性、足元が瓦解するような不安感を煽る語り口、そして人間の本質に回帰するテーマ性など、卓越したセンスを感じます。 [映画館(字幕)] 7点(2011-11-06 10:45:56)(良:2票) |