61. ライトスタッフ
“宇宙フロンティアに飛び出していった現代のカウボーイ”というのが物語の核。映画はその宇宙飛行士たちの俗っぽさや人間臭さを、ときには個人の誇りを守ろうとする男たちの友情もからめて、丹念にユーモラスに描かれていく。サム・シェパードが墓地上空の弔意飛行を示すジェット機を、眩しそうに見上げるシーンが印象的。 9点(2000-12-17 17:37:24) |
62. ミッドナイト・ラン
デ・ニーロの作品の中では彼の放つアクの強さが(よい意味で)最も希薄であることと、C・グローディンの好演とが上手くマッチングして本作を一層爽やかな印象にしている。やはりこれは才人M・ブレスト監督作品のもつ“天性の明るさ”のイメージがモノを言ったようだ。 9点(2000-11-26 23:59:53) |
63. 田舎の日曜日
パリ郊外。樹木の葉が黄色く色づくある日曜日。年とった画家が住む邸宅の内外の佇まい。そこへ実直な息子夫婦が孫を連れてやってくる・・・。物静かな佇まいの中にしみじみと語られる、さりげない会話に人生が滲み出る。このフランス映画独自の世界は何ものにも代えがたい貴重なもの。そしてワンカット・ワンカットが老画家の印象派絵画そのものの美しさ。 8点(2000-11-26 21:58:25) |
64. ミッシング(1982)
実際に起こったアメリカ青年の失踪をモデルにしているこの作品は、民主主義政権が戦車と銃器によって倒され、戒厳令下に入った首都の不気味な雰囲気を、ドキュメンタリー・タッチな映像で見事に再現されている。又、そのクーデターがCIAや多国籍企業が陰で糸を操っていた事を、J・レモンの父親とその息子の嫁が身を持って実証していく姿が感動的だ。 8点(2000-11-26 21:46:18) |
65. 未来世紀ブラジル
人間の情報が管理化され無気力に働く人々という灰色の未来。その中で管理社会に圧殺されていく一人の男の悲劇を、風刺を交えた圧倒的なイマジネーションで描いた異色の近未来SF。主人公が翼をつけた鎧を身にまとい空を飛び、美しい娘の為に悪玉をやっつける。それを阻もうと地面から突如出現するビルディング。主人公のアパートの壁に這うように機能している無数の管のイメージ等々、T・ギリアムの“すべてが夢の中の出来事あるかのような”創造物に対する異能ぶりが如何なく発揮された秀作。スタンダード・ナンバーのサンバのリズムがなぜか哀しく聞こえる。 8点(2000-11-26 17:33:34) |
66. 蜘蛛女のキス
政治犯のバレンティンと、同性愛者のモリーナの奇妙なラブ・ストーリーが獄中で展開される。主演の二人が、その本性を現わしたかのような演技合戦のその凄さ。終盤、警察の手先であるモリーナが政治犯仲間と接触するという市街地でのスリリングな展開と、閉鎖された空間から一気に開放感あふれる、そのロケーションが圧倒的に素晴らしい。 8点(2000-11-19 23:53:50) |
67. グロリア(1980)
生活臭がなく根無し草のような自由奔放に生きてきた中年女性グロリア(彼女はギャングのボスの元情婦)が、ひょんな事でギャングから命を狙われるプエルトリコ系の子供を守るはめになり、ニューヨークで逃避行を続ける。本来子供嫌いの女と、人を信用するなと教えられてきた子供(怯えて、彼女にまとわりつく姿がいじらしく切ない)は、当初互いに反目しあっているが、やがて彼女に母性本能が芽生えていく。「母親になりたい」という、彼女が初めて知ったもう一つの生き方。その志を拒む者を、彼女は先手必勝で躊躇することなく、次々と正確に撃ち倒していく。たびたび描写されるタクシーを呼び止める姿なども含め、とにかくグロリアの男まさりで惚れ惚れするようなカッコ良さは他に類を見ない。哀愁をおびた旋律のテーマ曲も、この作品をさらに引き立てている。(近年のリメイク版は似て非なるもの) 9点(2000-11-16 14:07:28) |
68. 未来警察
本作品はM・クライトンならではの奇想天外な仕掛け、特に人間社会に溶け込んだ感のあるロボットの数々(中でも家庭用、ハイウェイ攻撃型、毒グモ型etc)や小型熱誘導ミサイルといったハイテク・メカの取り入れ方が実にうまい。ほとんどまだ実現していないのにも拘わらず、それを実にリアルに本物らしく画面に登場させてくれるというサービス精神。アナログで小粒でいかにも手作りという感じの作品だが、細かいアイデアの積み重ねで最後まで飽きさせない。特に工事用エレベーターで数匹の毒グモと対決するクライマックスは、主人公が高所恐怖症と言うこともあって実にスリリングに展開する。 8点(2000-11-13 00:12:37) |
69. ブルース・ブラザース
迫力満点のカーチェイスを中心とした、徹底的な破壊のエネルギーの凄まじさと爽快感!ドタバタのギャクの連発!ブルースやソウルなどとダンスの乱舞するミユージカルとしての楽しさ!ザッツ・エンターティンメント!ただ国民性の違いもあるんだろうけど余りにもアホらしい。いかに無邪気になれるかなれないかで、評価が違ってくるように思う。 6点(2000-11-11 17:45:35) |
70. ハンター(1980)
マックィーンの遺作ともなった本作は、彼の作品歴の中でもあまり語られる事がない。それだけに、まるで彼の遺言のようで余計にいとおしく思える。彼が今まで演じてきたカッコよさよりも、老いに対してのあからさまな描写には驚かされるし、彼の人生そのものを感じざるを得ない。常にカッコいいマックィーンをリアルタイムで観つづけてきた者にとって、厳しい現実というものを突きつけられたようで、なんと辛くて寂しいことか。映画は、彼が死を自覚し、新しい世代に自分の夢を託すかのように、生まれた子供を抱きかかえるシーンで終わる。賞金稼ぎの役で売り出し、そして賞金稼ぎの役で終わった事に感慨深いものを感じる。 7点(2000-11-11 16:56:33)(良:4票) |
71. バグダッド・カフェ
最初は、ん?って感じでしたが、やがてドラマが進むにつれ登場人物たちに感情移入し、どんどん作品世界に引き込まれ、そして最後はほんわかとした気分で映画館をあとにする事ができました。 8点(2000-10-26 23:07:28) |
72. オールウェイズ
本来、スピルバーグは恋愛モノが苦手なはず。だからすぐファンタジーにしてごまかすんだよねっ!彼の持ち味を生かして、森林大火災の一大スペクタクル・ドラマに絞ったほうが良かったのでは・・・?どっちつかずの中途半端な印象しか残ってません。 6点(2000-10-20 11:18:15) |
73. ザ・フライ
着る物にあれこれ迷わなくて済むというわけで、まったく同じツィードのジャケットが数着吊るしてあるシーンや、転送実験でのジーナ・デイビスが片足立ちでヒールを脱ぐ色っぽさ等々、本来、ストーリーとはあんまり関係のないようなシーンがやけに強く印象に残っています。それだけに名作といってもいい程で、クロネンバーグ監督としても唯一明快な作品として仕上がってます。 7点(2000-10-19 23:23:29) |
74. 遊星からの物体X
古典「遊星よりの物体X」のリメイクだが、工夫された特殊効果には格段の違いを感じる。宇宙生物のボディスナッチャーもので、限られた空間内で誰の体内に“それ”が侵入しているかが判らず、皆がお互いに疑心暗鬼になっていくプロセスが恐怖とサスペンスを盛り上げる。正体を現わしたときのクリーチャーや“ぬけ殻”の造形のその凄いこと! 8点(2000-10-17 23:30:49) |
75. フィールド・オブ・ドリームス
“だからなんなの?”“それがどうしたの?”って思わずツッコミたくなるような話の強引さに、拒絶反応をおこしてしまいました。いい映画なんだろうけど、最後までノレませんでした。 6点(2000-10-15 16:06:15) |
76. インナースペース
傑作「ミクロの決死圏」を観てしまっている以上、テクノロジーも格段に進歩していることだし、これを超える作品として期待したんですけど・・・。SFX的には実に“ショボい”出来ーというより、コミカルなドラマのほうに重点を置いてる作品。そういう意味では肩透かしを喰らった感じだけど、本筋はなかなか良く出来てました。 7点(2000-10-13 00:44:00) |
77. シャイニング(1980)
独特の映像哲学であらゆるジャンルに挑戦し続けるS・キューブリックの今回のテーマはオカルト・スリラー。この作品、観る人によって意見が分かれるでしょうね~。ただ原作をあえて無視してまでも自分独自の世界を構築するといった、彼の一貫した姿勢だけは評価しておきたい。相変わらずの洗練されてはいるが無機質な左右対称の構図や、本来誰もいないはずの広間に大勢の話し声が聞こえてくるシーン、クライマックスの積雪でできた迷路でのスティディカムの撮影効果などなど、これぞキューブリックの世界だと強烈に印象づけられるシーンばかり。ただ少女の亡霊などのさまざまな魑魅魍魎の登場シーンや、あるいはエレベーターから血が噴出すシーンなどは、意外なほどパンチが効いていない。J・ニコルソンの怪演がモノをいったような一作でもありました。 8点(2000-10-12 14:59:56)(良:1票) |
78. アビス(1989)
昨今見慣れてしまった「T2」の形状記憶合金のSFXの原型を、本作の“水”の動きで実験済みなんですけど、でも最初観たときはド肝を抜かれましたよ。ホント。エド・ハリスっていつも役になりきって本物に見えてくるところが凄い。終盤はちょっとベタな安っぽい仕上がりで評価を下げました。 7点(2000-10-12 00:54:34) |
79. 愛と哀しみの果て
この作品、同じアフリカを舞台にしている分けでもないんだろうけど、「野生のエルザ」の旋律に近い、スケール感をともなったリリカルなJ・バリーのスコアに、随分恩恵を蒙っているように思えます。 7点(2000-10-12 00:20:45) |
80. フルメタル・ジャケット
S・キューブリックが描いたベトナム戦争映画。しかし一連のベトナムものとはやはり肌ざわりが違う。前半、軍隊の非常さを否応無しに描かれる。教官は訓練というなのもとに人間の尊厳を徹底的に踏みにじるかのように罵声を浴びせつづけ、訓練兵は狂人と化して自殺にまで及んでしまう。後半の戦闘シーンになぜかジャングルが出てこないことや、女性スナイパーの“シュート・ミー”のセリフのシーンが妙に艶っぽかったり等、キューブリク独特の作品世界が展開される。ベトナムというのはたまたまであって、いつの時代にも通じる普遍的な戦争の狂気を、彼なりに表現した秀作です。 8点(2000-09-29 15:25:59) |