61. ポセイドン(2006)
《ネタバレ》 だめだ~。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』のごとくクリスマスツリーに群がる人々。阿鼻叫喚の中、扉を閉める神父。オリジナルにあった人間のエゴが全く感じられない。初対面の人間の命令に断固たる異議を唱えるシーンがゼロに等しく、オリジナルに目がクギづけとなった僕から観れば、非常に物足りない。脱出経路が一方通行で、「こっちだ」「いやあっちだ」といった、一瞬の判断に対する意見の衝突がないので、映像だけで緊迫感を演出しても伝わってこない。自分の考えに絶対の自信がある者、足手まといだけど意外な局面で特技を発揮する者、そういう人物設定があったオリジナルの素晴らしさを皮肉にも改めて思い知らされました。映像はたしかに素晴らしい。爆炎と水流に吹っ飛ばされるシーンも圧巻ではある。しかし、役者たちの演技が淡々としていて、せっかくの舞台セットを素通りしている印象しか残りませんでした。水圧で飛ぶネジとか、「カン・カン・カン」の使いどころは唸らされただけに少し残念です。 [DVD(吹替)] 5点(2006-10-13 21:45:48)(良:1票) |
62. ディック&ジェーン 復讐は最高!
悪人になりきれないディックがとっても微笑ましい。犯罪は抵抗がありますけど、生きていくために、家族のために頑張ってるのがとても面白い。不況のせいでツケを負わされるのはいつも従業員で、経営トップに対する皮肉がこの映画のテーマなわけだけど、ジム・キャリー独特のオーバーアクションに抱腹絶倒です。ティア・レオーニもよくこんな女を捨てた役を受けてくれたと思います。どんなに落ちぶれても、決して離婚せず、夫を支えているジェーンがとても可愛らしかったです。仕事の取り合いっことか、移民とか、企業年金とか、アメリカ社会について知っていればもっと面白かったと思います。平均点6点だったので観るとき躊躇しましたが、僕にはツボにはまりました。下品な映画ではないし、テンポも非常にサクサクしているので気持ち良かったです。 [DVD(吹替)] 8点(2006-09-30 16:22:10) |
63. Vフォー・ヴェンデッタ
"V"が、どう見ても『こち亀』のホンダラ親父に見えまつ。 [DVD(吹替)] 7点(2006-09-26 23:29:39) |
64. 東京原発
いま、電気を使用して書き込んでいます。この電気はどこからやってくるのか?考えたことなどない。トイレから流したオシッコは?考えたことなどない。しかし、どこかで循環されてまた社会に入り込んでくる。電気はたしかに必要です。でも発電所のメルトダウンは恐い。電気は必要だけど原子力発電所はいりません。あ、矛盾してる。ここがこの映画のポイントなんだ。反対するのは簡単です。大事なのは非難の矛先をどこに向けるのか、そこにあるということをこの映画は教えてくれました。あの謎の博士といい、塩見さん演ずるドライバーといい、笑かしてくれましたが、久々に、まさに映画、を観た気持ちでいっぱいです。会社の命令でしぶしぶ観に行った映画ですが、上映終了後、速攻で廊下の原発建設反対運動の名簿に署名しました。 [試写会(邦画)] 8点(2006-09-23 22:27:49) |
65. ホテル・ルワンダ
『内政不干渉』という言葉の意味が重くのしかかる映画でした。そこの国で起こっている事態は、他国の軍人が解決してはならないという風潮。条約に基づき国連軍がいようがいまいが、民兵の暴走には太刀打ちできない。誰も助けてくれない。四面楚歌でもがくドン・チードルの胸中がつぶさに伝わります。ホテルの支配人としての職責と、一家の主としての苦悩と、公私混同することなく、敵である政府軍司令官へのワイロを、絶やすことなく、自分を捨てていく姿が、”男らしい”みたいな単純なありきたりの言葉では到底片付けらない。「この大量虐殺の映像を見ても、『まぁ、怖い』の一言で終わり、みんなまた食事に戻る」というホアキンの一言一言が非常に印象に残りました。いつもテレビでどこかの国の紛争の、空爆やらテロやらを耳にしますが、対岸の火事で終わってしまう。特に日本人は募金箱に10円玉を入れて、国際平和に貢献した気でいます。悲惨だと分かっていても何もできない無力感で、自分自身に腹立たしさを感じてしまいます。しかし、紛争の原因が、民族間の下らない偏見によるものだというのが、解決を目論むにはあまりにも根深く立ちはだかっています。おそらくナタでTutsi族の者を殺すHutu族の青年も、なぜ殺さなければならないのか分かっていないと思う。ただ周りのみんながTutsi族をゴキブリ呼ばわりしているから同調しているだけ。しかしそれが戦禍の火種となっている現実がやるせない。 最近ですと、アメリカ軍がイラクを制圧しましたが、国際平和は基より、人道的見地からも経済的見地からも果たしてそれが誰にとって良かったことなのか、ふっと考えさせられました。 [DVD(吹替)] 9点(2006-08-24 17:58:25) |
66. SWEET SIXTEEN
《ネタバレ》 小銭を稼いできた子供が、夢のために大金を稼ごうとする。単純なことなのに、観ていてとても哀しかったです。手に入れようとすればするほど、色んなものをどんどん失ってしまう過程が、まさに抜け出せないの一言に尽きます。やってることは全て犯罪でどうしようもないんだけど、目的が…。16歳から一人前の大人ということがテーマなんだけど、15歳のうちの、どうしたらいいのか分からないもどかしさみたいなのが脚本に上手く表れていたと思います。『大人は判ってくれない』とか、『リリィ・シュシュのすべて』を観たときのような少年期の脆さがあって、後味が悪いのにとても良い映画でした。 [地上波(字幕)] 8点(2006-08-17 23:39:42) |
67. シムソンズ
とてもすがすがしい映画でした。試合に勝つことではなく、カーリングを楽しむことにテーマが置いてあり、分かりやすいけど爽やかな感動を与えてくれました。オニオンスープとか、牛舎でのトレーニングとか、くすっと笑ってしまうシーンも多いですが、それがひたむさにつながっており、応援したくなります。やりたいことは今しかできない、高校生らしさをつぶさに描いてありました。カーリングのルールについて、きちんと説明してくれているところも好印象です。地味なスポーツだけど、観ているひともやってみたくなる演出は心地よさがあります。やはり真の主人公は、大泉洋さんが演じるコーチでしょう。最初出てきたときはどうすんだと思ったけど、僕ら社会に出た人間からすれば、一番共感する部分がありました。 [DVD(邦画)] 9点(2006-08-03 11:59:11) |
68. ザ・ミッション 非情の掟
すごいよ、すごいよこれ! たった81分間に裏社会の掟と男たちの友情が凝縮されてる! これは雰囲気に浸る映画なんだと思う。悪のボディガードであることもさながら、拳銃で人を始末するということがどういうことかを、一人、また一人殺すごとに、あぁ、そういうことなんだ、と伝わってくる。あの紙くずでのサッカー、北野武監督の映画の影響を受けてる印象はあるけど、言わんとすることは伝わってくる。あの無口で無愛想なフェイが、タクシーの中で何度も親分に弁解する練習をするシーン、5人の友情がどんな深い絆であるか伝わってくる。だからこそ、組織の中で生きることの掟の重さも冷酷なものであることを反芻する。こんな名作が埋もれていたなんて非常に驚き。 [DVD(吹替)] 9点(2006-08-02 20:49:19) |
69. ドッジボール
夜勤明けで、帰宅途中の近所のゲオで780円で買って、グラタン食べながら観ました。おっかしー(笑)。思わず麦茶を吹き出しました。暴力シーンが妙に痛々しいけど、体当たり的な印象で面白い! 悪役の脇役なのに、ベン・スティラーの表情と妙な動きがグーd(・∀・) アスパラドリンクの「一本いっとく?」の外国人を思い出しました(たしか不法滞在で捕まったよね)。アベレージ・ジョーのメンバーもそれぞれ暗い過去をお持ちで、ドッジボール大会を通じて、アイデンティティを取り戻していく筋書きも意外に好印象でした。小学生のころやってたドッジボールとルールがちょっと違うので、本場のドッジボールについて、勉強になりました。疲れたときに、こーいうくだらない映画を観ると、仕事であった嫌なことも吹っ飛びます。よし、観るか、と構えて観る映画ではないですけど、こういうのもアリだと思いました。エッチな水着を着た女の子も出てくるし。 [DVD(吹替)] 7点(2006-07-20 18:41:01) |
70. ギャングスター・ナンバー1
タイトルとポール・ベタニーの鋭い眼光に惹かれて観ました。狂ってる。その一語でしか言い表せない。最大の目標のフレディが全く違う方向へ人生を歩みだしたときの、老ギャングスターの喪失感たるや。あれだけ、残虐、冷酷、冷徹に組織を乗っ取ってきた若きギャングと見間違うほどの取り乱し様に、戦慄を感じます。ゴッド・ファーザー3のラストに感じた、なんとも苦い幕の引き方でした。ポール・ベタニーの刺すような、全てを敵に回すかのような目が、身振り手振りなくても体現してる。久しぶりに息がつまる思いをしました。 [DVD(吹替)] 7点(2006-06-17 14:41:35)(良:1票) |
71. サマータイムマシン・ブルース
今、観終わりました。これは文句なしに面白いw いまだにおなかが痛いw ここまで笑ったのは、シベ超以来の充実感w タイムマシンの恐ろしさを、根本的に理解していないSF研に大いにウケました。最初から小道具の全てに至るまで伏線を張りまくりでありながら、オチにつなげていく過程に全く矛盾を感じない!(ネタバレ)だって、たしかに映像に映ってんだもんw 爆笑のカゲで、実は一番驚かされたのはカメラワーク。ズーム・アップ・バック、使い方が絶妙すぎる…。ホントにこれ邦画なの!? と惹き込まれてしまう。下妻物語とかツボった人には、間違いなく最適の映画だと思います。あんまり書くと楽しみを奪ってしまいそうなので、もうこれ以上は書きませんよ。思い出し笑いしてしまう映画って、こういうのを言うんだね。キャストが地味なんで、実は最初、観るのを躊躇したんだけど、面白い映画ってのは、キャストなんて関係ないんですね! 皆さんにもぜひぜひ観て欲しい。 [DVD(邦画)] 9点(2006-06-13 20:10:36) |
72. ナポレオン・ダイナマイト
《ネタバレ》 なんだこれわ(笑)。映画には感動を求めている僕には笑撃的でした。美男美女ではなく、オタクやエキストラに焦点を当てるとこんな面白い映画になるんだぁ。美男美女が題材だと、センスの良さ、人柄の良さ、時にはとげとげしさ、話が膨らむ。しかし、それとは母集団がちがう人間を取り扱うと、宇宙人に会ったかのような衝撃を受ける(宇宙人に会ったことはないがな)。アメリカ人に対するイメージって様々ですが、日本の高校生と比べると私服のセンスがシンプルだけど、友人関係が社交的なところとか、何よりも個性的なところに憧れを感じます。そんな社会でもオタクは異端視されるわけですが、この映画は偏見とされるその個性を”改善”するような無粋なオチを良しとせず、最後のデビーとの戯れを観ても思うに、みんなじゃなくても、誰か1人でも認めてくれればいいんじゃないの?という姿勢が感じられます。そこにどことなく人間への讃美を感じ、アメリカ人を身近に感じてしまいます。登場人物がゆるくて、とにかくゆるくて、魅力的です。草尾毅さんのムダに力強い吹替も面白い。なぜか全員ハッピーエンドになるのも◎です。一番の見所は最後のジャミロクワイの曲でのダンスでしょう。何であんなに上手いんだよ(笑) [DVD(吹替)] 9点(2006-06-12 17:11:00) |
73. バイオハザード(2001)
《ネタバレ》 まるでテレビゲームみたいな映画でした(笑)。ゾンビはもちろんこわいんですけど、冒頭に出てきた職員さんたちが、中盤に、「ああ、このゾンビがあのときの人か!」と探してみるほうが、けっこう楽しいです。ぼくは5人までしか分かりませんでした(笑)。序盤に、ミシェル・ロドリゲスが、列車の下でケーブルをつなぐ場面で通気孔を覗くシーンがあります。まったく無意味でしたが、初見する分には非常に怖かったですね。 [DVD(吹替)] 6点(2006-06-10 22:18:17) |
74. 炎のメモリアル
ホアキンもトラボルタもロバート・パトリックも僕の中では悪役の俳優なんですが、3人とも血の通った熱い演技をみせてくれました。たった1人の消防隊員ごときに、あんなに人数総出で葬式をあげるなんてオーバーだなぁ、と最初は思いました。しかし、ジャックの回想を追っていくうちに、たった1人だけど、その1人にも、守り、支えられる家族がある。普段はおちゃらけている消防隊員仲間がいる。任務のために死と隣り合わせの仕事。次々と仲間を失う絶望感、そして家族と仕事を天秤にかけなければならない苦悩。好きを仕事にするとか、充実感を仕事に見出したいとか、消防隊員にスポットを当てた映画なんだけど、つい僕自身が今やっている仕事についても回顧させられました。『9.11テロ』で殉職していった消防隊員たちを讃えた映画だそうですが、そういう背景を抜きにしても感動しました。 [DVD(吹替)] 6点(2006-06-10 22:17:12) |
75. 恋愛適齢期
《ネタバレ》 ダイアン・キートンのモテっぷりはどうも鼻につきますが、面白かったです。”年相応の恋愛”と”年の差の恋愛”の良い面を面白おかしく演出しています。最初、ジャック・ニコルソンのだらしなさぶりに、どうするんだと思いましたが、ダイアン・キートンとの大人の恋を通り越した、飾らない恋がほのぼのしていて、最後まで観ることができました。年相応、熟恋のジャック・ニコルソンをとるか、年の差ロマンスのキアヌをとるかがテーマなんだと思いますが、精神的な部分のつながりも大切だし、肉体だけのつながりもまた大切? この映画では、精神的とか肉体的とか、そういう切り離した考え方ではなく、恋をすることで、自分が若返る、これまでの恋愛感を振り返る、何よりも”愛”ほど重いテーマではない”恋”にスポットを当てたのが好感がもてます。血圧のくだりが一番大笑いしました。 [DVD(吹替)] 6点(2006-06-10 22:16:14) |
76. インビジブル(2000)
《ネタバレ》 透明になると、まぶたを閉じても光がまぶしい、というアイデアというか事実には、思わず、おおっ!と唸ってしまいました。ケビン・ベーコンは好きな役者さんなので、けっこうお得でした。なぜ、善人っぽい所員まで殺してしまうのかが疑問でしたが、透明人間になったらやりたいことを網羅していたと思いました。ていうか、透明人間の設定でコメディに走らず、ホラーサスペンスを選んで正解だったと思いました。 [地上波(吹替)] 6点(2006-06-10 22:15:57) |
77. 私の頭の中の消しゴム
《ネタバレ》 夫のチョルスがツンデレだったので、ウン?と思ったけど感動しました。韓国人は、喜怒哀楽がはっきりしている国民性があると、よく耳にします。だからこの映画でも感情の抑揚が出ていて惹きこまれました。僕も最近、韓国映画を見直しているのでいつも感嘆させられます。この映画は恋愛というよりも愛情がテーマでした。どんどん加速的に忘れていく妻を、夫が献身的に支えていく。前半は妻が夫を支えていただけに、夫婦の愛情の育みを(典型的と言えども)安心して観ることができました。介護の大変さはもっと過酷なものだとは思います。特に下の世話なんて…。介護の場面を前面に押し出せば、現実により近づいていてもっと良くなったかもしれないです。この映画で微笑ましいのはおじいちゃんたちの存在。あと、あんな可愛いお嫁さんをもらってうらやましい。 [DVD(吹替)] 7点(2006-06-10 22:15:20) |
78. アイランド(2005)
《ネタバレ》 SF映画で大事なことって、映像だけでなく『どこまでその世界観にどっぷりハマれるか』にあると思うんです。思うにこの映画、2019年という年代設定もあり、現在の技術でももう少しで届きそうな電車のデザインやセットが現実離れしておらず、スッと物語に入り込めました。これって、けっこう大事なんです。あの、オシッコと一緒に出てくる虫とか、みんな同じ白い服を着てるとか、いろんな小道具を使って楽しませてくれました。管理された社会を最新鋭の機器で統制していき、その中の小さなホコロビがシステムを破綻させてしまう。ありがちですけど、テーマは分かりやすい。冷静に考えると、クローンたちのクライアントって、みな金持ちなんですよね? ずいぶん若い人が多すぎるような。ブシェーミの変な性癖がこの映画で、イチオシですね(笑)。 終盤、ダラダラ感はあったものの、面白かったことは確かなので、限りなく9点に近い8点ぐらいで。 [DVD(吹替)] 7点(2006-06-10 22:15:02)(良:1票) |
79. 誰も知らない(2004)
《ネタバレ》 正直、この映画のDVDを売り払おうか迷いました。邦画だし、低予算映画だし、テーマが重いし。育児放棄した母親と、生き延びようとする子供たちと、2つの視点で鑑賞する必要があると思います。僕は後者で観ています。主人公・明が長男としての責任を務めようとするのが痛々しい。弟や妹たちは幼いころは従順であっても、成長していくにつれて、子供特有のわがままを言ってくる。明は、まともな学校教育を受けてきていないから、感情に訴えた叱りしかできない。テレビゲームや少年野球など、明にとっての束の間の息抜き。我々には、親や学校、塾など、何らかのコミュニティーに属している安心があります。それがかえって、見放された子供たちの状況を真摯に伝えている。観ていてつらい。しかし目をそむけてはならない。カップめんのカップで植物(たぶん食料)を育ててるシーンが一番、胸にグサリときました。DVDは、もう少し売らないでとっておこう。最近、迷い子猫を拾って育てているので、大事にしようと思います。 [DVD(吹替)] 7点(2006-06-10 22:14:06) |
80. あの頃ペニー・レインと
バンドと追っかけの映画でしたが、ウィリアムの視点で観るか、ペニー・レインの視点で観るかの2つの楽しみ方があると思います。ラッセルのマジ顔がウィリアムに感化されているもの、と思って観ていたので、バンドとグルーピーたちと同行する中で成長していくウィリアムという、主人公の人間描写が分かりやすくて良かったです。ケイト・ハドソンがきらきら光っていました。 [DVD(吹替)] 7点(2006-06-10 22:13:42) |