781. 崖の上のポニョ
公開初日の事だ。ポップコーンを頬ばりながら、何度も足を組み替える。 しばらくすると後ろの方から 「つまんないー、まだー?」と数組の家族がうるさい。母親は顕名に子供を黙らせようとするが止まない。父親の動作がガサガサと伝わる。声を出したらまずい事は分かっているらしい。 彼らだけが感じた事では無いだろうが本当にお話として面白いのだろうか。 それでも主題歌やポニョの絵的かわいらしさを、テレビでまずは子どもにすり込んでから何となく本編を映画館で見させるような作戦が効いたらしい。 何週か遅れて見に行った友人が言うには、 「エンディングでいきなり大合唱だった」 公開から夏の間、テレビを点けるとやたら女の子が歌っていたがこれが大変重いボディブローだったようで、子ども達は見事にはまってしまっていたらしい。 公開初日の午前中のあの子ども達。実は彼らの本性では無いだろうか。 あの満員の劇場でつまんないと大声で自己顕示して見せた子らも、お行儀よく早く終んねーかなと待ち構えていた子ども達も、きっとテレビに染まらない時点での正直な気持ちだった。終わった後、出口に向かうバイアスの掛かっていない家族連れは皆一様に 「微妙だったね」 と当惑していた。子供が万が一にも楽しんでいたかもしてないと、遠慮していたのは間違いない空気だった。 今思うとテレビの後方支援は大正解、まさに神算鬼謀である。子どもが嬉しそうに主題歌を歌っているのが可愛ければそのほうが良いし、鬼のようなネタバレ後でもポニョが変身するだけのことや最後の主題歌を楽しみにすればこそ、満席の劇場で大声でつまらない事を主張しないですむ。 だったら刷り込みくらい有った方が良い。子どもが喜ぶのを楽しみにして、朝、大張り切りで劇場に向かったであろう若い夫婦の事を考えるとそれしか無い。 その後地上波放送を観てみると、意外とその年のアリエッティよりは面白かった。それでも 「面白いのか、これは」と悩むのだ。 母親をリサーと呼ぶ子ども。しんちゃんとかそうすけは30歳になってもミサエーとかリサーとか自分の母親を呼ぶのだろうか。受け止められることも大事かもしれない。けど、子供には銀河鉄道の夜で楽しんでもらった方が健全だと思うのは古くさいのだろうか。 [映画館(邦画)] 6点(2008-07-27 21:59:30) |
782. 火垂るの墓(1988)
《ネタバレ》 祖父母がセイタさん世代で存命の方は、彼らとこの映画を一緒に見ると感慨ひとしお。 うちの祖父さんのセリフは「現代っ子かよ、ちったあ手伝え」 でした。こっち見て言うな。 ここ数年になって高畑勲のインタビューの紹介や、プロットの解明が進んで叔母が批判されることは、ほぼなくなりました。 しかし、相変わらず清太が日本の良心のような誤読はされ続けていますね。彼らはたぶん二〇〇〇年代に生きる自分そのものと清太を重ねてるんじゃないかなと思ったりするわけです。彼らにとってテーマは「居場所」なんでしょう。トトロの都市伝説の如く、この映画も勝手読みで別のお話として楽しまれているようです。 なお、兄妹が死んでしまう事って、これ戦争関係無くない? 2015年に生きてても彼ら、巣鴨置き去り事件とかの類の結末に至るのではないだろうか。 [地上波(邦画)] 0点(2008-07-27 20:56:15) |
783. ハプニング
《ネタバレ》 味わいのある映画。監督がシャマランなので、ホラーやスリラーじゃない。 人がいちばん怯えていたのは、大切な人が死んでしまうことや逢えなくなってしまうことで、その状況下でのドラマが主題でした。こういうの好きです。シャマラン的には、サインの別企画なんでしょうか。この映画も宇宙戦争のオマージュがちりばめられています。 サインにはなかった納屋の男的なエピソードがこちらにはきちんと入っています。観ていてだんだんハハァ、とわかってくる作りが秀逸でしたがテーマ性とシャマラン性のバランスがやや良くない感じも。新しい方向を模索してるのかもしれないですね。 それから邦題が良くない。素直に直訳の熟語で良かったと思うんですよね。日常を破壊する「出来事」を体験する映画として見ると楽しめます。オチとかどんでん返しの突飛さにばかりフォーカスされますがそういう映画はもう撮らないのかも。 [映画館(字幕)] 7点(2008-07-27 20:29:45) |
784. AVP2 エイリアンズVS. プレデター
《ネタバレ》 おもしろかったです。単純にどっちが強いの?を見せてくれて良い。 画面が暗いのは、DVDのフォーマット的限界でしょう。コントラストやテレビ側の明るさを変えても暗部にノイズが乗らないため、結構エンコーディングには気を遣ったと思われる作りだと思いますが、モニタを調整しないと見れないのって違うかなと。 物語はエイリアン2へのオマージュやプレデター1のストイックさが懐かしく、非常に楽しめました。プレデリアンとか核オチはこの手の映画ならでは、笑ってすませられます。店頭ポップや思わせぶりな宣伝で、対象外の人にも見せてしまおうという映画ではないので頭空っぽにして楽しめました。 [DVD(字幕)] 7点(2008-07-21 14:48:28) |
785. 28週後...
《ネタバレ》 あまりのつっこみどころの多さに唖然。民間人が軍施設の中枢部に出入り自由とか、軍そのものが素人以下の弱さとか、保菌者を国外に逃がすとか、好き放題のゾンビとこれの続編(28ヶ月後でしょうか)を作る人たちに都合がよすぎます。 導入部の悲劇とか、人類が滅亡に瀕している中での家族視点の絶望とか、そういうテーマは良く、それに期待したんですが、設定作成者のやっつけ仕事ぶりと、いい加減な設定をこれ幸いと上手に使ってしまう監督や脚本に落胆。 この手の映画がリアリティの隙間をぬった設定を作る必要は全然無いと思うけれど、あとほんの少しはリアルじゃないと突っ込みどころを考えるよりも先に、反射的にあり得ないと頭に浮かんでしまって頭で補いきれない。めんどくさいといわない人たちが作るべきだった。作り手の大人の都合が見えすぎです。 [DVD(字幕)] 4点(2008-07-21 14:33:55) |
786. アメリ
変人過ぎてついて行かれませんでした。 映像は綺麗だし、雰囲気をかわいらしく感じたのも事実なんですが、どうしてもビデオクリップ以上映画未満に感じました。 [DVD(邦画)] 4点(2008-07-21 02:43:26) |
787. 風の谷のナウシカ
昔見たときはいたく感動し、その感動が失せることはないと思った記憶が有るのですが、今観ると愛とか平和、文明の定義が現代のそれとものすごくずれている。2013年末に放送するにはその主義は間違った信仰のように人の心を毒す。 80年代的な「アニメ独特の愛」がカルト宗教的な思想を帯びてしまっており現代の認識では、そんなことで何か大きな諍いが解決するわけがないのになと一瞬で理解できてしまう。なぜそうなるのか登場人物達の心情理解に対してなんとなく拒絶感を感じないこともない。 巨大な恣意と暴力で、思い思いに人を蹂躙する。トルメキアの兵士は武装を間違った意識で使うし、それを殺害するテロリズムという最悪の方法で自己実現するサブキャラ達の存在もどうしようも無く不愉快だ。テロリストであるアスベルに至っては、ただ殺人を楽しむ理由を合理的な理由に落とし込めてすらいない。 風の谷の人間は政治や社会構築を見下しているようで、現代の基準の誠実な人間ではとても、ない。そして虫達は虫たちで有り、愛の象徴である理由などどこにも無い。悪意や怒りが原動力の蹂躙や殺戮をする人や虫の気持ちを害しないように、自分を殺害させておもてなしをする気持ちの悪さは七十年前から四半世紀前の日本に蔓延していた、ある種の 破滅願望では無いだろうか。 今の欧米や日本には存在しないこの信仰心は役割を終えた。 一方、非常に安価に手に入るマンガ版はこれよりもずっと洗練された話になっている。当時のアニメ映画に携わる人たちの、主義や教養の限界というものが見えないでもなく、後に主張や寓意を別の作品で昇華させずっと高い完成度に持って行くことが出来たことを見ると、必ずしも宮崎駿が本作のような宗教的諦観主義者ではないのであろうと言う事がわかり、映像メディア産業の病根のようなものが見て取れる。 [DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2008-07-20 22:45:42) |
788. 28日後...
《ネタバレ》 序盤は引き込まれましたが、中盤以降の雑さがっかりしました。違う脚本をニコイチしてしまったような雑さに一気に集中力が・・・。 筋をニコイチするのって今時良く出きたものだと感心してしまいました。脳内補完で何とかなる範囲でゾンビ映画に興味がない人が観ると相当厳しいです。パニックやサスペンスなのかなと思って観たらビックリ。 最近、ジャケットやレンタル店のポップで惹かれて観てみると、ゾンビ映画だった!というモノに妙に当たります。ゾンビや感染を主題にすると作りやすいのは分かるんですが、情報をシャットアウトしてシーン一つ一つに浸りたい人もいるって言うことを忘れないで欲しいな、と思います。 [DVD(邦画)] 3点(2008-07-20 22:29:03) |
789. ロード・オブ・ザ・リング - スペシャル・エクステンデッド・エディション -
長すぎるので娯楽目的の作品や映画という意味では成立してないかなという気がします。でも、指輪物語をきちんと時間制限を気にせず映像化したんだ。という記録的な視点から見るとものすごい貴重な作品、映画として語り継がれるだろうことは間違いありません。 原作や通常版を未見の人、ファンタジーものに特にどうとも思わない人からは蛇足きわまりなく、興味がわかないエピソードが多く挟まりますが、対象者が絞ってあり、原作の超高級な挿絵のようなものとして考えると大変な価値を持ちます。 [DVD(邦画)] 9点(2008-07-20 18:20:23) |
790. アイ・アム・レジェンド
《ネタバレ》 別につまらなくは無いけれど、特におもしろいというほどでもない出来。 プロットにつっこみどころがありすぎて、上手く挿入してある回想の足を引っ張ります。さすがにストーリーで何とか出来るレベルじゃないくらいの考えてなさなのかもしれない。序盤作り出した雰囲気と展開し始めるストーリーのバラバラ感は脳内補完で何とかするしかない感じ。 とはいえホリデーシーズン向けっぽい映画にもかかわらず、背景などの表現は緻密で、張りぼてだけの大道具の時代は終わりつつあるなと感じさせてくれます。ただCGの予算的制限か、時間的制限か、動くキャラはモーション、テクスチャの質感ともによくありませんでした。 純粋なサスペンスや謎を掘り下げる映画を求めると足をすくわれます。宣伝やプロモーションではサスペンスやスリラー系の演出してたから楽しみにしていたんですが、ゾンビ映画やホラーに全く興味がない人のことも考えてほしかった・・・。 [DVD(邦画)] 6点(2008-07-20 18:08:42) |
791. もののけ姫
《ネタバレ》 神話世界と過去に人が生きた世界の境界線のような混沌とした時代に引き込まれてしまう。ナウシカのテーマを高度に作り直したかったのだろう本作は実に骨太。 ナウシカの方は今みると、当時流行りと思われる「分け隔て無い愛は世界を治療する」という方向のテーマに鼻白む。ほんとにそうか?とどうしても違和感を感じてしまう。こちらは幻想や神話の世界が終わって、現実の普通の世界に向け粛々と続いて行く予感が何とも心地よい。 本人の主張をどこかで借りてきたような思想に置き換えて仕上げてしまった映画のナウシカのテーマを、自身の主張でよりスマートで、より深く現実的なものにしたのは大きな意義があると思う。 ナウシカを聖典のように扱うフリークとの決別的な意味合いすら感じる。こういう形で作り直してくれて本当に良かった。この世界の人たちの、生活や生きる事へのマジメさに魅力を感じる。 どんな大げさな舞台にあっても、生活や日常の大切さを忘れない。宮崎駿のこの主張は千と千尋まではぶれない。 [映画館(邦画)] 9点(2008-07-20 00:47:54)(良:1票) |