781. チャップリンの殺人狂時代
《ネタバレ》 ~Monsieur Verdoux~ムッシュ・ヴェルドゥ。=ヴェルドゥさん。 これは伝わりにくいタイトルだ。調べたら元ネタはヴェルヌイエ(地名)の連続殺人鬼アンリ・ランドリュー。第一次大戦の未亡人を狙った有名な結婚詐欺の殺人犯なので、当時の欧米人だったら“あぁこのタイトルは、あの事件を元ネタにしてるのね”ってイメージが出来ただろうけど、日本で公開される30年も前の外国の出来事だし、今の私たちはもちろん、当時の日本人もほとんどの人が知らないだろうから、この、いかにもな邦題も納得がいく。 自分の墓から始まり、最初のガヤガヤした家族とテルマの家の売買から、ヴェルドゥの次のターゲット・リディア殺害に移り、アナベラ殺害を練りつつもグロネーを口説く。そして足の悪い奥さんと、子猫を抱いた刑務所帰りの娘…忙しく動き回るヴェルドゥと汽車の車輪。詐欺と言うとズルして楽に稼ぐイメージだけど、“普通に働いたほうが楽じゃない?”ってくらい忙しく見せて、そのギャップを楽しむのかもしれないけど、元ネタを知らないのもあって、観てるコッチは状況把握に忙しい。 後半の毒を誤って飲む辺りからチャップリン映画らしさが出て、他のチャップリン映画と同じノリの“わかりやすい”面白さが出てくる。 そして最後の「一人を殺せば悪党、万人を殺せば英雄。数が罪を正当化する」は、あまりに有名な言葉。 当時はかなりインパクトが有ったと思うけど、この言葉の為の映画と考えると、今では既に私たちの日常に染み込んでいる言葉でもあり、驚きには結びつかない。“私利私欲で殺人を犯したお前が言うな”感もある。 大量破壊兵器と大量殺人について言及する死刑判決の裁判シーン。「皆さんとは程なくお会いすることになる」は “アンリ・ヴェルドゥ” “1880-1937” 第二次世界大戦の2年前に処刑された、冒頭の墓のシーンに繋がる。 メッセージはストレートだけど、頭の中で整理しないと意味が結びつかない作品で、今までのチャップリン映画とは趣が異なる。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-09-10 16:45:38) |
782. ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
《ネタバレ》 ~Rogue One~はぐれ者(のひとり)。 他の中隊はゴールド2とかレッド5とか『色+数字』で名付ける法則があるみたいだけど、咄嗟に嘘を言うボーディ(帝国軍人)はそんな事知らないから“Rouge1”でなく“Rouge one”。 Rougeは他に“人を騙す”って意味もあるそうな。あと“反乱者”って意味もあるそうだから、EP5のローグ中隊は帝国から敗走中の状況から、本来そんな意味で付けたのかもしれない。だけど本作の主人公たちにもぴったりなネーミングだ。 SWシリーズ初の本格的なスピンオフとして作られた本作はEP4の前日譚、EP4のオープニングで、ほんの数行語られたエピソード。 旧3部作に思い入れが強い私には、まさに待望の作品。X-ウイングの活躍。AT-ATウォーカーとの白兵戦。迫力ある艦隊戦。ゲームの世界や、頭の中で想像するしか無かったSW登場兵器が、今の最新技術で映像化されている。デス・スターの破壊力がこれほど恐ろしく描かれたのも本作が初で、まさに最終兵器というヤバさが伝わってくる。ターキン提督、ゴールドとレッド各中隊長。モン・モスマ。EP3より年齢を重ねたベイル・オーガナまで。シリーズにしっかりと繋がる登場人物たちの配置の仕方も上手い。 後半のスカリフ戦からの畳み掛ける展開は、終始胸アツの鳥肌モノ。歩兵目線でAT-ATウォーカーを見上げる怖さ。劣勢の中ブルー中隊が来てくれた時の安心感。真ん中が空いたウォーカーの、あの薄いとこ撃ちたい感。ハンマーヘッド・コルベットのあまりに男らしい戦い方。沈むスター・デストロイヤーの重厚感。CGで何でも作れる時代だけど“観たいと思うものを見せる”のは結構難しい。この作品は本当によく練られてると思う。 最後に抱き合うジンとキャシアンが、最初観た時(?)だった。この2人に恋愛要素なんてあったっけ?と。 2人とも幼いときに両親と離れて、頼る相手もなく、自分が生きるために色んな悪事を働いてきた。ゲイレン暗殺は軍の命令だけど、お父さんを助けたいジンの気持ちがわかるから、キャシアンは撃てなかった。 ヤヴィン4出撃前に「最悪のときはいつも独りだったの」と言うジンにキャシアンは「welcome home(おかえり)」と返してた。あぁこの時から2人は、お互いにとって家族なんだ。やっぱりSWだから、本作も親子、家族の話なんだ。 「誰かに届いたかなぁ」「きっと誰かに届いてるわよ」 父親が残したデータは送信した。けど結果はわからない。もう生きて帰れないし、自分たちを待つ人もいない。2人の短い会話に涙が出た。 キスをするでもなく見つめ合い、恋人繋ぎをするでなく手を繋ぎ、そして親と再会した子供のように抱き合う。 そういうことだったのかって、自分の中でやっと納得しました。 フォースも使えない普通の人たちが、多くの命を犠牲にして繋いだ小さな希望。希望のための戦いは宇宙でも続く。スター・デストロイヤーに衝突して砕ける輸送船。劣勢の中、旗艦を守るため盾になる護衛艦。こういうシーンをサラッと入れようなんて、よく思い付くわ。 ダース・ベイダーの圧倒的な力は、シリーズ随一と言って良いくらい強くて怖い。脱出を諦め、手から手へと渡される希望。そして最後のサプライズ、若いままのレイア姫には驚いた。CGで何でも作れる時代なのに、思わず「おぉっ!」って声が出そうになった。 EP4、A New Hopeのオープニングに直結するエンディング。観た直後すぐにEP4を観たくなる。最高の完成度と、満足度の高いスピンオフ。 [映画館(字幕)] 10点(2021-09-10 15:48:00) |
783. アラビアのロレンス 完全版
《ネタバレ》 ロレンスの葬儀、語る人それぞれで一致しない人物像。スエズ運河の対岸でバイクの男が問い掛ける「お前は何者だ!?」 イギリス人でありながら、エル・オレンスという名を与えられ、1人だけの部族としてトーブに身を包む。カメラを向けられるとヒラリと舞ってみせる。自分のやることがほぼ上手く行って、神か英雄の気分だろうか、相当なナルシストなんだろう。 ガシムを処刑し流砂でダウドを死なせたことを「楽しんだ」と告白してしまう。アカバから休まる暇が無かったためもあるけど、この時すでにかなり精神的に追い詰められていたから出た発言に思える。オスマン帝国軍に捕まり、自信喪失してアッサリ転属を願い出るところは、理想よりも恐ろしい現実を見せつけられたんだろう。かと思えばモトの任務にもアッサリ戻るところから、行動に一貫性がない。子供のような人物だ。 村の虐殺に感化され、感情のまま皆殺し命令を出したり、ダマスカスを占領したけど、アラブ民族会議をまとめられなかったり。カリスマ性はあっても、軍人としても政治家としても一流とは言えないロレンス。ダマスカス侵攻中、まだ熟れてない葡萄を口にしたロレンス。上手く機能しないアラブ民族会議にバラバラに散るアラブ部族。“もし実れば見事な果実だった”は、ロレンス自身のツメの甘さ、未熟さを表すかのようだ。アラブのためと言いつつ、自分が誰かに認められるための戦いだったように思える。結局、あれだけの活躍をしたのに、イギリスにもファイサルにも利用され、終いには砂漠に居場所がなく、すごすごと本国に帰るしか無いロレンスが寂しい。だけど未だに国家としてまとまっていないアラブ諸部族を考えると、ロレンスの能力に関わらず、西洋とは文化が違いすぎるために、イギリスやフランスがアラブを国家というワクにハメること自体が、そもそもの間違いなんだとしか思えない。 この映像凄い。これは音楽とマッチして、とっても良いシーンだな。…とか思ったところがそのまんまウィキに書かれていて、なんかリーン監督の思うツボって感じでちょっと悔しい。 マッチの火を吹き消すと画面に広がる曙色の朝焼け。蜃気楼から現れるアリ。砂漠のアカバ戦で役に立たない大砲とその先の海。夕暮れの海岸をラクダで進むロレンス。想像を超える砂漠の世界の美しさ。映画という文化が伝える自然のダイナミズム。おそらく誰が観ても圧倒される映像美。オリジナリティのない表現で悔しいけど、これが映画だ。とても長い映画だけど、しばらくするとまた観たくなる魅力がある。 コロナの影響はもちろん、中東の不安定な政局を考えると、今後しばらくは、本物のこの風景を安全に見ることは難しいかもしれない。生きているうちに一度は見てみたいな。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-09 00:52:02)(良:1票) |
784. ロボコップ(1987)
《ネタバレ》 ロボットを“ロボ”って呼ぶの、日本だけだと思ってた。 ヤマハのスポーツ心臓とか核戦争ゲームとか、真面目にふざけたCM。ニュース番組は緊迫した世界情勢と街の事件をゴチャまぜにして、アナウンサーも同じトーンで話す。バーホーベンらしいブラックユーモア。『1$で楽しむべ~!!』いったいどんなコメディ番組だ?通して観てみたい。 警察が民営化された世界で、待遇の悪さからストを考える警官たち。ここもバーホーベンらしく男女同じ更衣室。 飛び散る血しぶき。緊急搬送されるマーフィーの痛々しさ。手術台のマーフィが本当に死んでそうに見えるリアリティもバーホーベンらしい。 こんなにバーホーベン要素が高いマニアックなバイオレンス映画なのに、何故か一般ウケした。思い返せばこの時代が映画の出血量のピークだったかもしれない。当時は結構血に耐性が出来ていて、逆に今観ると「うわっこんなに血が出てたんだ」って驚かされる。 その場の空気の作り方がとても上手。ED209が制御不能な時の科学者たちの慌てよう。モートンがトイレでジョーンズの悪口を言ってる時の他の幹部たち。一瞬でこちらにまでヤバい空気が伝わってくる。ロボコップ製作中のニューイヤー・パーティの浮かれっぷりも人間臭くて良い感じ。 悪党の1人がロボコップを観て、よくマーフィだと気がついたなって思ったけど、「デッドオアアライブ・・・!」同じセリフだったから気がついたのね。 マーフィを苦しめた第4指令と、最後の使い方が痛快。…てか撃たれるジョーンズを見るジョンソン嬉しそう。社長に名を聞かれ「マーフィ」と名乗るエンディングも痺れる。 ルイス巡査のその後、家族のその後、マーフィのその後。実際の続編はバイオレンス色が強くなりすぎたので、この名作の続きは心の中の想像で補完したい。 [ビデオ(字幕)] 8点(2021-09-08 22:56:50) |
785. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
《ネタバレ》 新3部作の最後だけに悲しい結末は想像できたけど、そこに至るまで何を観せてくれるのか?アナキンはどうしてあのマスクを被り、ダースベイダーと名乗るようになったのか?色々な思いを持って劇場に行ったけど、思った以上に悲劇に向かって一直線だった。 序盤のパルパティーン誘拐は、本来のSWらしく楽しく描かれている。コルサント上空での大規模な艦隊戦は当時のCG技術の集大成とも言えるくらい美しく迫力がある。このシリーズのお約束になったR2の活躍や、アナキン「すぐR2が来ますよ」オビ「…プランBは?」ジェダイ2人のやりとりも微笑ましい。逃げる2人とR2と一緒に、場違いなパルパティーンが居るのがなんか可笑しい。…だけど公開当時は悲しい結末に身構えるあまり、ドゥークー伯爵を殺すよう命じたことや、2人のやり取りもどことなくピリピリしているような気がして、素直に楽しめなかったように思う。 あと場面の切り替えが頻繁で、どっかで戦闘が起きたら次コルサント。すぐまた場所が移って次コルサントって感じに。もっと一箇所のストーリーをじっくり見せてほしかったかな。 艦隊戦はクレオパトラやベン・ハー辺り、上陸作戦は史上最大の作戦辺りがモトだろうか。SWと言えば撃たれれば死ぬ。切られたら死ぬ。と単純だったけど、今回の戦闘シーンはパイロットが宙に放り出されるとか、撃たれて苦しむトルーパーとか、SWらしくなく生々しい。でもそれは後の“オーダー66”やジェダイ聖堂虐殺シーンに繋がることになる。 まだ幼いパダワンたちが殺されるのは辛かったが、これをルーカスが撮ったことが凄いことだと思った。ルーカスはSWというドル箱を掴みながら、ボバ・フェットやハン・ソロでなく、イウォークを主役にしたスピンオフを作ってしまうような人。子供が好きで、子供の楽しめるものを作りたかった人だと思う。だからEP1はずっと子供が主人公だし。そんなルーカスが子供を殺すシーンを入れた。前作のサンドピープルのように、言葉の説明だけで済むのに。 ルーカスが大事にしていると思う単語が2つあり、1つは“THX(-1138)”で、もう1つは“スカイウォーカー”。私は、アナキンがあのマスクを付けてからダースベイダーを名乗ると思っていたけど、あら予想外、アナキンの姿のままダースベイダー襲名になった。そうしないとあの聖堂の虐殺のやり切れない悲しさが出せないのと、やはりルーカスは、どうしてもアナキン“スカイウォーカー”に子供殺しはさせられなかったんだと思った。 「嬉しいお知らせよ、妊娠したの…どうしよう」過激な外交も厭わない、気丈な政治家の顔は鳴りを潜め、アナキンに頼る“か弱い女性”になったパドメ。前作では想像出来ない隠居生活を考えるパドメと、マスターとして評議会入りしたいアナキンの将来像のズレ。「子供が暮らしを変えるわ」「子供が幸せを運んでくる」悲しい伏線。ナブーの葬儀の時、パドメの手に幼いアニーからもらった「ジャポーのお守り」。EP2の序盤で再会した時、成長したアニーに気が付かない風なフリをして、パドメもずっとアニーを思っていたことが伺われる。 勝負が付いてアナキンの「I Hate You!」にオビは「I Love You!」と返す。SWで「I Love You」と言えば「I Know」と返すのが定番。きっとアナキンも、オビの気持ちは解っていたんじゃないかな。 マスクを付けられるアナキンとともに流れるダースベイダーのテーマ。離ればなれになる双子。オーガナ王女に抱かれるレイアとともに流れるレイアのテーマ。オーウェンとベルに抱かれるルークとともに流れるフォースのテーマ。新3部作で初登場(だったと思う)の、印象的なタトゥイーンの双子の夕日をココに持ってくるセンス。あまりの美しさに泣きましたよ。 “シスを倒しフォースのバランスを正す選ばれし者”のむかし話から、いまの我々の時代の~A New Hope~新たな希望の物語へ。見事に繋がる終わり方。 [映画館(字幕)] 8点(2021-09-04 20:12:55)(良:1票) |
786. スティング
《ネタバレ》 ~The Sting~ぼったくる。 去年DVDを買って観て、何故かオチが予測出来て『あれれ?こういう終わり方か?もしかして、前に観たっけな?』と思った作品。いやその時が初見だと思うから、きっと他のオマージュ作品か、TVの映画特集とかでオチを観ていたのか。良い映画だけど新鮮味は無い。って残念に思ったっけ。 今回、内容をほぼ覚えてる状態で再見したけど、まぁ~面白い。 前回と違い、オチを知っているということがマイナス要因にならなかったため、一つ一つのトリックがどうあのオチにつながるのかを楽しめた。前回気に留めずに見流していたシーンが、結構意味のあるシーンに見えてきたりして、古い映画でもこれだけ純粋に楽しめるのかと驚いた。 フッカーがルーレットで3000ドルをスる場面。最初ディーラーは高額勝負に驚いて、リミットがあるからとか断ろうとする心遣い。断っちゃいけない立場だけど、知り合いからイカサマで金を巻き上げるのは忍びないから、元締めに気づかれる前にフッカーが金をしまうよう願うこの間。「ホッとしたよ、負けてたら俺が大変だった」とフッカーを見ながら自分に言い聞かせるディーラー。こういうの、見流してた。 ゴンドーフのカード捌き。ポール・ニューマンだから本当に出来てもおかしくないな、とは思いつつ、あまりにも華麗なカード捌きはマジシャンがやってるそうな。でも、どこで入れ替わったのか?・・・あ!もしかしてここ?って。編集が上手い。映画で見る手品だわ。 サリーノの使い方。前回観たとき予想もしていなかったから、一番驚いた。前に食堂で働いてたジューン。ロレッタは辞めたって言ったけど、消されたのか? 最後の「複勝って言ったろ」からの、畳みかけるような展開、オチに向けての爽快感は見事としか言えない。 去年レビューしていたら、この点数じゃなかったろうな。次に観たときにレビューしてたら、やはりこの点数でもないだろう。 [DVD(字幕)] 9点(2021-09-03 18:08:43) |
787. 追憶(1973)
《ネタバレ》 ~The Way We Were~私達それぞれの選んだ生き方。 バーの外の、花に囲まれた席でビールを飲むハベル。もうどっからどう見ても王子様ではないか。色気とは無縁の学生生活をしてきたケイティが、ついつい見とれてしまうのが痛いほどわかる。ダンスのシーン、どう見てもモテそうにないフランキーから、あっさりケイティを奪い去り、用が済んだら返すハベル。ブルジョアでプレイボーイで、もう住む世界が違うのだ。 そんなハベルがたまたま酔いつぶれてたら、お持ち帰りしたくなる気持ちもわかる。部屋に帰ってからのケイティがテキパキお茶を入れる姿とか、ハベルの寝るベッドに裸になって身体を滑り込ませるとか、ある意味可愛らしい。そしてあとはオートマティック。…でも実際あったら怖い。ケイティは後々、この時の話をハベルにしたんだろうか? 自分のライフスタイルにケイティを合わせようとするハベル。というか、自分流に過ごすだけで、全然ケイティに合わせようとしないハベルに、それで良いのか?って思った。そういう時代だったかもしれないけど。喧嘩して、別れて、折れて、また付き合う。根本的にこの二人は合わないと思うけど、それでも惹かれ合う二人の描き方がとても丁寧。マルクス兄妹の仮装をするパーティで、ハーポとグルーチョに扮した二人が可愛い。 二人が再開した時、ハベルの奥さんが“いかにも”って感じの、綺麗で物分りの良さそうな人だった。ケイティと出会わずに生きていても、そのうちどこかで(どこでも)出会う女性の1人と結婚したハベル。夫婦で家に遊びに来る誘い。本気の恋愛だったから断るハベル。辛いことばかりだったかもしれないけど、それ以上にお互いに良い恋愛だったんだな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-02 22:31:05)(良:1票) |
788. スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃
《ネタバレ》 思ってたのと違うEP1の出来に、制作側がファンの納得する作品を作ろうと努力したと思われる本作。 劇場予告から期待が高まる。やっぱりC-3POはあのカタチでないと。ボバ・フェットが出てくるのか(ボバのお父さんだった)。前作のレトロ感のあったメカから、70年代風SFメカにシフトしてきた。だんだんSWらしくなってきた。って言ったら変かな。 ジャワのサンドクローラーが2台…彼らにも歴史があるんだなぁ。青い牛乳…タトゥイーンと言えばだ。サイズミック・チャージの破壊力…おぉ、新しい。多脚歩行メカ…コレ出てくるとSWって感じがする。白いトルーパー…味方側なんだ、へぇぇ~。ジェダイの集団戦…おぉ!アツい!!。呆気ないジャンゴ・フェットの最後…そういやボバも呆気なかったな。ダースモールといい、強そうな敵が呆気ないのがSWらしいかも?などなど、旧作のファンが喜びそうな展開が嬉しい。パドメ暗殺のカーチェイスで、オビ「遅いぞ!」アナキン「良いのがなくて、オープンタイプで早いヤツ」ハンとレイアがしそうな会話も、これこそSWって思えた。そして何より空飛ぶR2と、素早くて強いヨーダには驚いた。新3部作に期待してたのって、こういうのだったんだと思う。 前作はポッドレースで今回は闘技場。近年公開されたグラディエーターの影響もあるだろうけど、クォ・ヴァディスやスパルタカスといった往年の名画がモトなんだと思う。 アナキン「不安だろうけどR2が付いているよ」のあと、パドメの「アハハ!」が可愛い。幼い頃から女王として自由のなかったパドメの、少女らしい笑い声。 でもこのアナキンとパドメの恋愛描写が何とも不評だった。草原を転げ回ってキャッキャ・ウフフって中学生か!って。ハンとレイアがサバサバした今風の恋愛をしていたのに対し、アナキンとパドメはシェイクスピアの戯曲のような恋愛、敢えて古典的な恋愛として描こうとした結果だと考える。別に恋愛悲劇の代名詞タイタニックがやりたかったんじゃなく、ロミオとジュリエットみたいなベタな恋愛描写を入れることに、意味があるんだと。 EP1ではあまりピンとこなかったけど、EP2を観て強く感じたことは、この新3部作は旧3部作から見た昔話というポジションで描かれている。旧3部作は現代(と言っても70年代後半)で、私たちも現代人。あくまで旧3部作を基準として、その過去と、その未来を描くのが、SW9作品の構成なんじゃないかと。だから“prequel trilogy(前日譚・三部作)”なんだと。昔話だからメカがレトロなのはもちろん、アナキンとパドメの恋愛も、私たちから見たら古風な描写なんだろうと、私はそう思ったわけです。 この物語の結末は変わらない。タトゥイーンでアナキンが夕焼けに照らされるシルエットがダースベイダーっぽかったりとかは、避けられない結末を表しているようで悲しくも感じる。 前作の不評の要因、ジャージャーの出番を激減させたのは良い判断。そしてパドメに代わり、パルパティーンに非常時特権を与える動議を出すという大役。出てくる度に何かやらかすジャージャーは、ついには共和制をぶち壊すキッカケを作ってしまった。ってのは、なかなか上手な使い方。 [映画館(字幕)] 8点(2021-09-02 18:07:55)(良:1票) |
789. 我等の生涯の最良の年
《ネタバレ》 ~The Best Years Of Our Lives~邦題まま。 両手のない水兵ホーマー。義手でサインしたりマッチの火を付けたり、本当に器用だ。戦争で手足を失った人が多かっただろうこの時代、ジロジロ見るのは気が引けるけど、映画だったら見て学べる。「そうやって使うんだ。凄い練習したんだろうな、上手だなぁ」と。腫れ物に触れるような扱い、気にしない風にしてるのが、却ってホーマーを傷つける。 アルが戦地から持ってきたお土産、ジャップの刀と寄せ書き。見ていて複雑な気持ちになったけど、寄せ書きの意味を知っている息子が、きちんと複雑な心境を表現してくれた。もう「本物だ、すげえ!」と素直に喜ぶ年齢じゃなくなっていた。 新婚生活を再スタートしたのに、思うような仕事が見つからないフレッド。週32.50ドル。節約を強いられる生活と、まだまだ遊び歩きたい妻。 戦地からの帰還兵と、受け入れる側の家族のギャップと、それを埋めるためのお互いの歩み寄りを丁寧に描いた映画を、第二次世界大戦の終戦翌年に公開しているのが、凄い。 「ジャップやナチは共産主義を叩きたかっただけなのに、英国に利用された。無駄な犠牲だ。」戦後1年目だと戦勝ムード真っ盛りなイメージだったけど、当時そんな考えもあったなんて、今まで想像も付かなかった。 他の映画でも見たことあるけど、飛行機の墓場。繰り返しになるけど、戦後1年であれだけの軍用機が不要になるアメリカ、とんでもない国と戦争をしたものだ。エンジンのないB-17の不気味なこと… 建築材料にリサイクルされる軍用機、そこで働くことにするフレッド。戦争は終わった。人も兵器も次の役目が待っている。いつまでも戦後を引きずらない、アメリカって前向きな国だね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-02 01:09:18) |
790. スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
《ネタバレ》 ~The Phantom Menace~見えざる脅威。“prequel trilogy(前日譚・三部作)”と呼ばれてるらしい。 公開前から大々的にプロモーションをしていて、CMがバンバン流れて、ペプシのボトルキャップとかグッズもたくさん出ていたっけ。とても期待が大きかった分、公開から“なんかイマイチだった”と噂が広まり、私もタイミングを逃してテレビで観たんだよな。 スターウォーズらしくないメカ。トルーパーより弱そうな敵軍のドロイド兵。鬱陶しいジャージャー・ビンクス。あっさり負けるダースモール…私も良い印象が無く、たぶん4回くらいしか観てないと思う。今回SWシリーズのレビューを書くにあたって、EP4~6を観た流れで、改めて観てみた。 普通に見ていたら案外普通に楽しめる。2人のジェダイとか、ダースモールの美しい剣術とか、なかなか胸熱なんだけど… 政治と組織の争いの話が多く、小難しい。SWにそんな高度な話は期待していない。“そう言えば旧3部作って、ほとんど現場の話だったなぁ”と、改めて思ってしまった。一方でジャージャーが出てくるたび、いちいち面白い事をするので何かとテンポが悪い。画面がジャージャー1人になるたび“もう詰まらない事するな!ってか、出てくるな!”って思ってしまう。 難しい組織図とジャージャーの笑えないギャグ。どんな年齢層がターゲットなのか、どうにもバランスが悪い。 また奴隷のアナキンがジェダイを手助けする動機が弱いとか、ナブーとグンガンはどうして最初から仲良く出来なかったの?とか、今ひとつ掘り下げ不足でご都合主義。色々削ったりして、アナキンの幼少時代は1時間位にまとめて、後半は成長したアナキンのヤンチャ話にでもしてほしかった。 アナキンがパドメと比べて幼すぎるので、今後の展開を考えると、もう少し見た目の年齢差を感じさせない方が…とも思う。だけど母との別れを悲しむアニー坊やが、後のダース・ベイダーなんて… アミダラが乗るシルバーの宇宙船は滑らかなデザインでレトロ感があり、大昔のSF映画の宇宙船や60年代のアメ車のよう。X-ウイングが70年代のマッスルカーのようだから、逆算してあんなデザインにしたんだろう。 レトロ感と言えばポッドレース。“レース長すぎ”と不評のようだが、モトはベン・ハーの戦車戦から着想したんだろう。往年の名画のクライマックスだけに、盛り上がると思ったんだろう。レース自体は面白いんだけど、SWらしさがあまり感じられない。あとレースに出てくるエイリアン(双頭の司会者とかカメムシみたいなのとか)が、なんかSWのキャラらしくないなぁ、別のカートゥーンのキャラみたい。 このシリーズは最後がダース・ベイダー誕生という悲しい結末だから、敢えて明るいエンディングにしたんだろう。 最後明るく終わるSWって、EP1、4、6くらいだっけ。 [地上波(吹替)] 5点(2021-09-02 00:03:27)(良:1票) |
791. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
《ネタバレ》 ~The Poseidon Adventure~ポセイドン号の思いがけない出来事。でどうだろう? 船の転覆という異常事態から、命の掛かった選択と結果が連続する展開は、とてもハラハラするし、私がその場に居たらどうするか?を考えさせられる。 大晦日のパーティから、不気味なサイレン。さっきまでパーティを楽しんでいた人たちが死んでいく地獄絵図。 逆さまになった世界。ここに残るか、自力脱出を目指すか。判断材料の一つが“責任者や信頼できる人の判断に従う”だと思う。 そもそもの転覆自体、無理に速度を上げるよう指示したオーナーの命令からだった。もちろんあの中では一番権力ある人物。 会場内の最高責任者パーサーが『ここで救助を待つのが最善だ』と。一番船に詳しい人がそう言うのだから。多くの人は従うと思う。 船医と共に船首に向かう乗客。船の詳しさとか責任とか関係なく、単に誰かに頼りたい心理、自分の命さえ他人に委ねてしまったんだろう。 “責任者や信頼できる人の判断に従う”は、今回残念ながら全部が裏目に出てしまった。 ジョン牧師『残ったら助からないかもしれないが、全員を置いていけない』スコット牧師の考えを認めつつ、弱い人のため、怪我をして動けない人のために残る。考えの違う2人の牧師が、お互いを尊重して別れる演出が見事。 何かとスコット牧師と衝突するロゴ。エイカーズが落ちた時、真っ先に海水に飛び込んで探すし、船尾ルートを探すスコットを17分も待つ。愛情からリンダを6回も逮捕したように、周りに誤解されるけど彼なりの人への思いが感じられた。 見た目から足手まといになると思われていたローゼン婦人の活躍。映画観ながら一緒に息を止めてみたけど、私は助からなかったわ… 「最後に愛してるって言ったのは、いつ?」『さぁ20年前かな?昨日かも?』名セリフ、こんな老夫婦になりたい。 目的地は船底、薄いとは言え1インチの鉄板。そこから先どうするんだろう?と思ったが、彼らが助かったのは、波の影響で転覆すると読んで、早い段階でメーデーを出した船長の判断だった。そのため救助隊も早く到着していたんだろう。 パニック映画は数々あるけど、これほど、みんな助かってもらいたい映画も少ない。短い時間だけど人物描写が的確で、魅力を引き出せているからだと思う。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-28 20:37:55)(良:2票) |
792. ぼくらの七日間戦争(1988)
学校への不満、教師への反抗、立入禁止の廃工場、自分たちだけの生活。誰もが共感できて、誰もがワクワクする。私も同級生と、当時こんな事がしたかった。かつて少年少女だった全ての人のロマン。 でも初めて観た時は、私はもう15~6歳だったから、面倒くさいお年頃だったと思う。 外国のデモ隊と警官隊の衝突のニュース映像なんかを見た経験から『機動隊のやられ方、嘘くさ!戦車が出てきた時点で、警察も本気でツブしにくるだろ』学校祭の出し物、展示物を何日も掛けて制作した経験から『最後の罠とか花火とか、嘘ばっかり!』なんて。特に映画の後半部分の嘘くささが鼻について、気持ちが冷めていったっけ…あぁ、もう少し子供だった頃に観たかった。 いい大人になった今は、TMネットワークの歌とともに懐かしさも感じながら、当時よりずっと楽しめたかな。 何より宮沢りえの“時の人オーラ”が凄い。彼女の白い肌と透明感。他の女の子と並んだとき、腰の位置が違う。このあと芸能界で色んな仕事をさせられるけど、このときは宮沢りえの存在全てが絶対領域だった。 体育教師にジーンズの裾を引っ張られて破れる。中山役の宮沢りえをホットパンツ姿にする見事な演出。 中山「エレーナをそんなにぶたないで(棒)」カッキーが戦車を見上げると、あらら大胆な改造ホットパンツに。 ここのシーン、しゃがんだ中山が立ち上がるまでを、もっとネチッこく撮りたかったハズだし、その意図で入れたシーンだと思うけど、意外なほどアッサリしたカメラワーク。“宮沢りえをそんな目で見てはいけない”という意識が働いたのかもしれない。なんて思ってしまうほどの彼女の存在感だった。 菊池と中山の仲を見て急に機嫌が悪くなる安永。かといってこの三角関係が発展するとか無く、淡いままで終わらせるとか、いかにも当時の中学生らしい。 エース菊池と補欠の相原が仲が良かったり、絵の得意な久美子が、鉄の扉の外側でなく内側に大きな絵を書くとか、彼女の才能と内向的な性格が出ていてすごく良い。このくらいの歳まで、みんな才能も明るい希望や夢もあるけど、画一的な教育社会では、みんなの才能が世間に認められるわけじゃない。 61式戦車も重要。なんであんなところに居たのかは謎だけど、それが却って不思議で面白い。 何年も放置されたであろう古い鉄の塊。子どもたちの修理なんかで動くシロモノじゃない。それが動くなんてファンタジーだ。 まるでアイアン・ジャイアントやラピュタのロボット兵並みに、子どもたちのピンチに「・・・どれ、助けてやるか」と動き出すエレーナ。 61式は戦後初の国産戦車で、一度も戦闘で血を流すこと無く、今では全車退役しているそうな。そんな平和な時代の、動くはずのない戦車が、子どもたちを助け、みんなを載せて敷地内を楽しそうに駆け回り、元の位置の戻り、エンジンが焼けて寿命を迎える。 人に向けて撃つことのなかった大砲は、子どもたちの七日間戦争の終わりを告げる花火を打ち上げる。 今見ても最後の大暴れ、完成度の高すぎるトラップの数々が、11人の子供が頑張った感=リアリティが無くやりすぎで残念。 小規模にするか、せめて他の生徒も応援に来てみんなで…とかなら、多少説得力も増しただろうか? 最後どうなったのか。子どもたちはあれだけのことをして『楽しい思い出が出来たなぁ』くらいな感じで学校に通う。 バラバラに転校もさせられず、ワンポイント・ソックスも勝ち取れず、校長先生に殺されもせず。何もなかったかのような登校風景。 子供も大人もお互いに理解し合えず。って結末。最後が惜しい。 [地上波(邦画)] 6点(2021-08-25 14:23:49)(良:1票) |
793. ハチ公物語(1987)
《ネタバレ》 “キング・オブ・銅像になった実在の動物”忠犬ハチ公。 死んだ主人を迎えに駅に通い続けたというエピソードを、わかり易く映画化した作品。 東宝が南極物語のヒット以降、子象、子猫と“○○物語”という動物モノ映画が乱発された中、松竹が作った動物映画がこのハチ公物語。 当時は動物の扱いが雑で、ハチが夢の中で上野先生に飛び込むシーンとか、明らかに犬を放り投げてるのは、今ではまず撮れない映像。 そんな時代、終盤のハチの弱々しい姿が、どうやって撮られたのか考えると、ちょっと怖くなる。 実話を極力忠実に再現したのではなく、かなり創作の部分が多いようで、あくまでフィクションとして観たほうが良いみたい。 最初の、秋田から渋谷駅についた時、犬は死んでたってのは、実話ならともかく、創作なら意図のよく解らない演出。 「犬がほしい」って言い出した娘の千鶴子が、犬の世話は父任せ。アッサリ出来婚で家を出て、父の死後もハチを引き取りもしない。動物を飼うには最後まで世話をする意志が必要。って教訓だろうか? 親戚がハチを持て余し、渋々飼うことになった菊さん。史実ではハチを最後まで大事に面倒を見てくれたのに、どうしてアッサリ死ぬことにしたんだろう? 焼き鳥屋や駅員とハチのエピソードを、心温まるものに変えたのは、子供にも観せたい映画だから解らないでもないけど… 仲代達矢演じる上野先生の、溢れんばかりの本気の犬愛。演技の枠を超えて素晴らしかった。 秋田や渋谷駅、上野先生がハチと歩いた商店街の、大正~昭和初期の再現が美しい。 店のお婆ちゃんとか、クリーニング屋?の店主とか、2匹の飼い犬とか、温かい雰囲気含めて綺麗。 一方で最後のシーン、ハチが雪を被って死んでいる早朝の渋谷駅。 年々軍国化が進むような描写もあって、誰もハチが死んでるのに関心を持たないのが、リアルにも見えるけど、一方でやりすぎにも見えた。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2021-08-22 18:37:24) |
794. 悪魔の毒々モンスター
《ネタバレ》 ~The Toxic Avenger~有毒の復讐者。…なんか毒々モンスターの名前が“ザ・トクシック・アベンジャー”らしい。 邦題が良い。特に“毒々”ってところのインパクト。考えた人すごい。 むか~し、テレビの深夜映画で観た。少年を轢き殺すのが衝撃過ぎ。 母親に笑顔で見送られた自転車少年を、街の不良たちが車で轢き殺す。ルールのある殺人ゲームで、少年が死んでないから戻って轢きなおす。死体をポラロイドカメラで撮って喜ぶ…テレビで何てものを見せるんだ。軽くトラウマになったじゃないか。 罪のない少年、盲導犬、老婆と、今まであまりホラー映画のターゲットにならなかった層に対する残酷描写。 盲目のヒロイン・サラ。性格は明るく健康的でエロエロしてないのに、気がつけば胸もとがはだけてる、今で言う“隙の多い女”。 障害を持った人がお色気担当のギャップ。 『フレディやジェイソンみたいな怪人が、ヒーローのような活躍をするホラー・コメディ』だと思って観てたけど、 『バットマンやスパイダーマンのようなヒーローが、見た目も残忍さも怪人並みなヒーロー・コメディ』だった。…こんな書き方で伝わるかな。 ホラー映画でなくヒーロー物。タイトルに最近流行った“アベンジャー”が入ってるから今さら気がついたんだけど、当時まだバットマンは公開されてなくて、日本ではアメコミ・ヒーローのイメージが定着してなかったから、メルビンは日本に馴染み深いジェイソンみたいな怪人に分類されたんだろう。 邦題も“毒々ヒーロー”でなく“毒々モンスター”だし。 そう考えて観ると、メルビンはピーター・パーカーみたく事故で変身してるし、敵キャラのシガーフェイスとか、顔はんぶん黒塗りの強盗とか、ヒーロー物に付きものの個性的な悪党が出ている。 舞台のトロマビル(トロマ村。てっきりビルディングだと思ってた)は、ゴッサムシティみたいな架空の都市で、トロマ映画ではよく出てくるっぽい。 ホワイトバランスとかがカメラごとに違うから、警官の制服や空の色がカットごとに青かったり白かったり… ベッドシーンが音楽とともに終わったと思ったら、同じ音楽がまた始まって、さっき見たシーンと新しいシーンが織り交ぜになってまたベッドシーンが… 低予算なのに戦車まで出す州軍の出動シーン(同じカットが何回も)に、なんで今?ってタイミングで意味不明に入る回想シーン… メルビンたちのテントを包囲する戦車の前に、兵隊とギャラリーがまぜこぜに居たりとか… きっとピリピリしないのんびりした撮影現場で、みんなでワイワイ楽しんで作ってるんだろうなぁってのは伝わる。 この、のどかさがトロマ映画らしく、完成度が低く編集は適当。 だけど、残酷映像だけは妙にクオリティが高い。あと必要性が低いスタントシーンが多い。全体的にバランスが悪い。 レンタルビデオの普及で日本未公開だった、いわゆる“B級映画”にもビジネスチャンスが生まれた。 '84年に作られた本作も、'87年になってから奇抜な邦題で劇場公開。背徳感を感じてしまうグロ・エロ内容から、日本で突然マニアックな人気に。 『日本では俺たちの作風が売れるんだ』と勘違い(?)したらしく、急遽'89年に東京を舞台にした続編が作られた。 他のはともかく1作目は、私はけっこう好きですよ。DVD買ったとか人には言えないけど… [地上波(吹替)] 5点(2021-08-22 15:39:40) |
795. 市民ケーン
《ネタバレ》 ~Citizen Kane~邦題そのまま。 20年ほど前に初めて観た。“ばらのつぼみ”って何だろう?だけで引っ張り、ケーンという人物の幼少期から最後までを描くスタイルの斬新さに驚いた。 色々な説が出てきた結果、トンプソン記者が出した『人生は一言では語れない。“ばらのつぼみ”はケーンの人生の、失われたパズルのピースなんだろう。』は、ここまでケーンのド派手な人生を観せられた私には、充分に説得力のある結論だった。 その後倉庫のガラクタとともに映る“ばらのつぼみ”。それが人知れず燃やされる。最後のわずか数分で本当の正解を知らされたことにショックを受けた。 何だこの『誰も正解に辿り着けず終わるのに、私だけが知ってしまった』感。この衝撃を誰かに伝えたかったけど、こんな古い映画見た人なんて周りにいないし、どうにももどかしい気分になったっけ。 「彼が求めていたのは愛だけ。相手に愛を与えられないから愛を失った。彼は自分自身は愛していた。あと母親を愛していた。」 あのソリは母親が、クリスマスか誕生日にプレゼントしたものだろう。少年には、他のおもちゃと違って恐らく特別なものだったに違いない。当時の生活水準では高価な品だったとか、ねだって無理に買ってもらったとか。とにかく“ばらのつぼみ”は少年の宝物だったんだろう。 スーザンと出逢った日、ケーンはだいぶん前に亡くなった母の遺品の整理に、マンハッタンの倉庫へ向かっていた。思い出探しの感傷旅行のつもりだったと。恐らくその後、倉庫には行かなかったんだろう。 母親は幼い頃に手放したケーンの宝物“ばらのつぼみ”を捨てていなかった。ケーンが改めて倉庫に向かっていれば、ソリは見つかっていたかもしれない。 “おかえりなさいケーンさん、467名の従業員より”従業員たちが感謝の気持から給料を出し合って作ったであろう記念のカップ。 従業員たちと積み重ねた信頼より、大統領の姪エミリーとの新しい愛と野心を優先するケーン。 数年後、エミリーとの関係は冷え切っていたが、スーザンとの関係を暴露されたのち、一人息子まで失ってしまった。 ザナドゥの山のような未開封の木箱。彫刻、絵画、貴重品の数々。金で買えるものは何でも手に入るケーン。スーザンを失った時、スノーボールに幼少期のふるさとを見て、自分の欲しいもの、失ったものはもう手に入らないことに気がつく。 親元からNYに連れて行かれたケーンは、クリスマスにサッチャーから新品のソリをもらう。 同じソリでもこれはケーンが大事にしていた“ばらのつぼみ”じゃない。 自分の大事な宝物、自分の求めた愛。一度失うと、そのあと他のどんなものでも、埋め合わせることなんて出来ない。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-08-21 01:44:10)(良:1票) |
796. 私は告白する
《ネタバレ》 ~I Confess~邦題そのまま。 DIRECTION→(こちら→)からの、死体。遊び心のある演出。 夜中の11時過ぎにあんな幼い少女が二人、外を歩いてるなんて、平和だなぁ…すぐそこで殺人事件起きてるけど。 告解の内容は誰にも話せない事から、ローガン神父の苦悩と、神父に対する世間や警察の誤解に焦点が当たっている。 そっちがメインなためか、当の殺人事件や犯人の行動や動機がかなり雑な印象。 神父ももう少し警察に言えることがあるんじゃないか?って思うけど、どうなんだろ? ローガン「ビレットが死んだ」ルース「私たち自由ね」のシーン。同じ時間同じ場面を、ラルー警視側の視点と、車で来たルース側から見た視点の両方から見せるのは面白い。今では割と使われる撮影方法だけど、当時他にあったかな? 裁判での逆転劇がクライマックスかと思いきや、証拠不十分で無罪というスッキリしない判決。 恩人に罪を被せるケラーの卑怯さ加減。あぁ憎たらしい!と思っていたら、あれだけの観衆の前で銃を撃つという、最後のヤケクソ感。 最初からケラーの犯行に後ろ向きで、でも告白する勇気もない妻のアルマ。ローガン神父のために勇気を出した結果、夫に撃たれて命を落とすなんて、ひたすら可愛そう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-20 20:23:32) |
797. シコふんじゃった。
《ネタバレ》 チャラっ!軽っ!薄っぺら! 今ほどドライでなく、昭和期ほど汗臭くもなく、平成バブル末期の大学生の空気が懐かしい。良くも悪くも楽な時代だなぁ。 貴乃花がまだ貴花田だった頃、若い人にも相撲が大人気だったけど、当然自分で取るより観るものだった。宮沢りえの“ふんどしカレンダー”が話題になったあと、ジャニーズのモックンがフンドシを締めて相撲を取るって、すごい時代だなって思ったわ。…はいマワシね。 「潰れるー…」『辛抱~。辛抱~。』昔から変わらない印象の竹中直人が、この映画では見るからに若くてツヤツヤしてた。オーバーすぎる下痢芸は見事。 完敗しての打ち上げの空気…穴山先生に変わって川村くんがOBに言い返したのも、青木の涙を見て秋平がブチギレるのもカッコイイ。 弱いから当然負ける→悔しくて練習頑張る→善戦。という大会もの映画の黄金パターン。解っちゃいるんだけど、観ていて熱くなるね。 ただ序盤の取り組み結果が4連続で3勝2敗、同じ人だけ勝つパターンなのは、もうひと工夫欲しかった。 3部リーグ優勝の打ち上げの、楽しそうなことと言ったら。青木の初勝利に嬉しそうなOBが良い。こっちまで嬉しくなる。 TVで見る本物の相撲取りに比べたら全然細いんだけど、モックンも竹中直人も良い身体しているし、みんなきちんと相撲を取っている。 日本のコメディ映画も、真面目に作ればここまで面白く出来るんだ!って、当時生意気にも感心したっけ。 [地上波(邦画)] 7点(2021-08-20 19:44:02) |
798. グッドナイト&グッドラック
《ネタバレ》 ~Good Night, and Good Luck.~「おやすみなさい。そして幸運を」エドワード・R・マローがTV番組の最後に言う締めの挨拶。 現代の魔女狩りと言えるほど加熱したマッカーシズムとジャーナリストの闘いを取り上げた作品。 モノクロの渋い映像。1953年のアメリカが舞台で、序盤からたくさん人名が飛び交うので、正直置いてけぼり状態になってしまった。 番組の構成を打ち合わせ、番組を流し、出来具合を話し合い、新聞の評価で判断する。美味そうなウイスキーとダイアン・リーヴスの挿入歌がホッとさせてくれる激シブい構成。 予備知識無しで観たから、どれだけ理解できたか疑問だけど、余分な説明、私たちでもついていけるくらいの時代背景を一切省いて、ロケもなく当時のニュース映像もほぼ無く、当然娯楽性は排除して、ほぼ全編スタジオの中だけで、90分台に収めたことは、なんとも凄いバランス取りだ。 今の日本の報道番組は、何でも娯楽に結びつけてしまったり、内容よりインパクトの強さでトップニュースにしてしまうような報道が多い気がする。でも深夜のドキュメント番組とか、興味深い番組も多い。ジャーナリズム、報道番組の存在意義は、視聴率ばかりでは無いことを、忘れてはいけないね。 娯楽として楽しめる作りではないけど、駄作でもない。マッカーシズム、マローについて予備知識を入れてから観るべし。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-17 22:17:41) |
799. ダイヤルMを廻せ!
《ネタバレ》 ~Dial M for Murder~ダイヤルのMは“殺人”のM。 序盤、完全犯罪のタネ明かしから入るのは珍しいと思った。説明聞きながら電気を消して、暗い中で動けるかとか確認するスワンも芸が細かい。 タネ明かしから見せるってことは、当然その通りにいかないって想像が付くんだけど、奥さんが私も出掛けるって言われたときはドキッとした。その後時計が止まって計画がズレるけど、こっちは特に悪影響なかったんだっけか? 優秀な警部相手に、とっさの思い付きで“駅で彼を見た”とか“上司の電話番号を聞くため”とかポンポン出てくるトニー。苦しい言い訳にも取れるけど凄い。 マークの推理が、最初の完全犯罪のタネ明かしとほぼ一緒なのが、ハラハラして面白い。さすが推理小説作家。 最後の鍵がマーゴのでなくスワンのだと気がつくシーン、警部の読み通りになるところをトニーのセリフ無しで見せるのも上手いなぁ。 しかし、殺人とは言え、不倫カップルに制裁を加える夫が悪人に描かれるって、なんか時代を感じてしまうなぁ。最後にマーゴとマークが警部と一緒にトニーを出迎えるところ、ハッピーエンドと言って良いんだかモヤるけど、全てを諦めて二人に酒を薦めるトニーが格好良くも見えた。 そもそも鍵を開けてすぐ、階段のカーペットに鍵をしまったスワン。自分の家の鍵とそっくりだからそうしたのか?家の鍵が多様になった最近の家では使えないネタ。このアパートの玄関、この時代にオートロックなのか?トニーが出ていくとき鍵かけてないよーな。 有罪から死刑になって執行されるまで早っ!とか、警部令状もなしにマーゴの鍵で家宅捜索しようなんてアウトローとか思ったけど、一番ビックリしたのがインターミッション。105分の映画で途中休憩が入るなんて予想外だった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-17 21:38:47)(良:1票) |
800. トータル・リコール(1990)
《ネタバレ》 ~Total Recall~しっかり記憶し、しっかり思い出す能力。へえぇ~。 オープニングの印象的なテーマソングとともに流れるクレジット。もう壮大で格好良くて懐しくてワクワクする。 シュワの身体は最高に脂が乗っていて、表情にも人気者の余裕がある。夢の愛人に焼きもち焼く奥さん役のシャロン・ストーンが可愛い。 セーフティゾーンのレントゲン保安システム。ネイルペン。テニスの立体ホログラム。発信機取りだし器。2週間よオバサンはSF映画の名シーン。こういった夢の近未来道具の数々も素敵。 バーホーベンと言えば架空のTVCM。同僚が「リコ~ルリコ~ルリコ~ル♪」って歌うのが大好き。なんか架空の世界に厚みをもたせてる。でそのリコール社、タイトルの“Recall”でなく“REKALL”社だった。…意味は特に無いみたい。 未来の世界、タクシー運転手が会話もできるロボットなのに、ダグの仕事は手持ちのハンマードリルで岩崩しの違和感。このへんとってもバーホーベン。 リコール社で暴れるダグ。トラブルが起きて慌てるスタッフの臨場感も、バーホーベンの十八番に思う。 さて、この映画は結末がハッキリせず、見た人の想像に任せられる作り。 ①ダグは火星を救った。 ②全てリコール社のプログラムだった。 ③リコール社のプログラムに事故があり、ダグは夢から帰られなくなった。 …③な気がした。リコール社のプログラムが『火星の青い空』で、結末も青い空で終わる。①だとするとシナリオがプログラムに沿い過ぎてる気がする。 ②だとしたら、途中で奥さん殺しちゃうのはマズイから駄目だろう。 やっぱりドクター・エッジマーとローリーが来たときが、ダグ生還のターニングポイントだったんじゃないか?って。 本来はエイリアンの遺跡を見つけて、謎の遺跡を発動させると火星の空は青くなるかもしれないぞ!?続きは本物の火星で!!くらいで終わるシナリオだったところ、ダグが夢から出られなくなり、空が青くなるまで行き着いてしまったと… 前回見たときは①だと思った。観る度に結末予想が変わるのも、毎回楽しめてる証拠かな? [地上波(吹替)] 7点(2021-08-17 21:07:50) |