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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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801.  ファイヤーハート 怒れる戦士 《ネタバレ》 
19世紀リトアニアの反逆者で英雄のタダス・ブリンダの物語である。一応は実在した人物らしいが実像は明瞭でなく、20世紀に入ってからの演劇やTVでイメージ形成されたところが大きいらしい。撮影場所はわからないが、劇中の設定としてはリトアニア北西部のジェマイティヤ地方で、字幕ではラテン語由来の「サモギティア」と書いてある。 時代としてはロシア皇帝アレクサンドル2世による農奴解放令(1861)の時点であり、明治維新の7年前に当たる。当時の現地事情はよくわからないが、かつて独立国だったリトアニアは隣国ポーランドとの合邦の結果として社会・文化のポーランド化が進んでおり、民族集団としてのリトアニア人は社会の下層に位置づけられていたらしい。さらにこの時代にはロシア帝国の支配が及び、主人公の見解によればリトアニア内部での領主と農民の対立を煽っていたとのことである。 この映画では、リトアニア人の民族意識を持った領主が農奴解放令を受けて農民に土地を譲り渡したことにより、初めて実際の耕作者が土地を手にした(自作農になった)状況を象徴的に描いたということらしい。その領主がリトアニア風の名前であるのに対し、ラズモフスキというポーランド風の貴族が殺されたのはポーランドの影響を排する意味だったかと思われる。さらに残った敵であるロシアに対し、これから主人公が率いる抵抗軍が立ち向かうということなのだろうが、この映画でそこまでは扱っていない。  これを単純に映画として見た場合、個人的印象としてはどうも説明不足で、いつまで経っても何が起こっているのかよくわからず、登場人物の区別もしにくいのは困った。劇中世界のスケールが小さいので主人公の英雄ぶりもほどほどでしかないが、これは原題に “Pradžia”(英 “The Beginning”、始まり)とあるように、主人公の経歴の初期段階ということで正当化されると思われる。 劇中には令嬢との恋愛、回復された友情、土地と結びついたリトアニア人意識の確立といった各種要素が盛り込まれ、また領主夫人の不倫など妙なコメディ風味もあったりする。尻に関わる主人公のジョークも小気味よく、このまま連続TVドラマにすればよかっただろうという気もした。また景観面では緩い丘陵と森の土地柄のため見通しがきかない印象だが、若干ながら視界の広がりを見せる場面もあってこういう場所だったかと納得できた。 そのようなことで、異国民としてはとっつきにくいところがなくはなかったが、場所も人も言語もリトアニアの映画であるから、リトアニアに関心のある人にはぜひ見ていただきたい。
[DVD(字幕)] 4点(2016-08-05 00:55:40)
802.  殿、利息でござる! 《ネタバレ》 
劇中では特に説明がないが、黒川郡吉岡は伊達家重臣のいわば城下町のようなもので、そのうち町人町に当たる部分が吉岡宿である。遠景で小山が何個か固まって見えるところは「七ツ森」と呼ばれており、これが景観的にこの場所であることを印象づけている(ちなみに仙台からは反対側が見える)。現実の吉岡宿が映像に出たような場所だったかは不明だが(もっと街が大きい、家々の裏手に山林はない)、最後に現在の風景など出して連続性を感じさせるようにはなっていた。 全体としては気楽に見られる内容になっており、特に序盤では、都合の良すぎる展開を笑いに転化してスピーディにこなしていたのがよかった。終盤になるとまた極端に都合良すぎの展開になって、何から何までいいことづくめで終わったようだが、主人公が数年後に亡くなってしまったのは事実らしいので、それ以外の部分が完璧ハッピーエンドであることも気分的には正当化される。ちなみに個人的に泣ける場面などは特になかった。 キャスト面では、役柄との関係で印象深かったのが松田龍平と千葉雄大で、うち大肝煎様はまるきり年齢不詳に見えるのが面白い。ほか「暗殺教室」で見たはずの山本舞香という人がどこにいるか意識しないまま終わってしまったが、自分が気づかなかっただけで実際は結構目立っていた。  ところで江戸時代でも「大名貸し」自体は普通にあったことだろうから、相談しただけで処罰というのはコメディらしい誇張ではないか。それより劇中の事例が特徴的なのは、各種事業者が共同で地域全体の共通利益のために行ったという点であって、今でいえば商店街とか温泉街の維持発展のために事業主有志が尽力するようなものだろう。劇中の例では結局、資産家の個人的な人徳に頼る形になっていたが、「無私」などとあまりご立派なことを言わずに、われ人ともに栄えるという志をみなが少しずつでも持とうということであれば、現代にも十分通用する話と思われる。 しかしこれが実際に貸付金だったのか出資金のようなものなのか、あるいは献納を条件に実質的な交付金が出るようになったのか、というあたりは何となくごまかされたような気もした。そもそも主要街道(現在の国道4号)の伝馬を運営するための対策が、伊達家直轄領と家臣の拝領地で統一的に行われていないことが真の問題だった気がするが、まあ大昔の幕藩体制に今更もの申しても仕方ないので、今も昔もやるべきことは初めからちゃんとやりましょうという話である。
[映画館(邦画)] 5点(2016-07-31 19:07:15)
803.  天空の蜂 《ネタバレ》 
予告編は面白くなさそうだと思ったが本編を見ればそれなりである。映像面の迫力やスリリングな展開とともに、泣かせる場面もちゃんと用意されていて退屈しない。また個人的には、主人公の妻役をやっていたのが往年の名作ホラー「女優霊」(1996)で転落死した若手女優役の女優と気づいて少し嬉しくなった。 そういう点で大衆娯楽映画としては満足だが、ただし竹中直人の出演などは不要と思われる。  ところで社会的メッセージの面から見ると、原作由来の“ないと困るが見たくないもの”という問題提起は含まれていたようだが、原作の時点ならともかく、今ならすでにみな分かり切ったことを言っているだけに思われる。この映画を見て特に認識を改めるようなものはないわけだが、前回の事故から4年経って、忘れかけた人々に思い出してもらうくらいの意味はあるかも知れない。ただこれも原作由来のことだが「沈黙する群衆」の捉え方には疑問を感じる。“その他大勢”の全員に喧嘩を売るつもりかと聞きたい。 一方で、もう一つの“ないと困る”ものだった自衛隊に関しては、現在は災害救助の面で世間の評価が上がっていることを反映した形になっており、最後に映画全体の方向性がこっちの方にずれて終わったようなのは変な感じもあった。中盤で、問題の大型ヘリコプターが“海外で戦争できる軍隊にするためのもの”と匂わせていたのは、この映画として決して自衛隊を礼賛するものではない、と釘を刺しておいたように見えなくもない。  そのほかこの映画では、特に技術者というものの姿勢が問題視されていたように見える。主人公に関していえば“技術だけ相手にして人間に向き合おうとしていない”ということだろうが、ラストに至って次の世代が直接人間に関わる仕事に意義を見出していたのは喜ばしいことと思われる。この辺は原作と映画の時間差を利用した追加要素ということだろう。 また“技術者は技術を提供しているのであって成果物の利用に責任を負わない”という話も出ていたが、劇中でヘリコプター技術者が加害者扱いされる場面があったのは当面の問題と直接関係がなく、これはさすがに理不尽である。しかし技術者限定でなく一般論として“加担していながら事が起こってから被害者面するな”と言いたいのであれば、言う相手によっては本当に問題作になると思われる(下手すると「沈黙する群衆」に叩かれる)。
[映画館(邦画)] 5点(2016-07-31 19:07:08)
804.  杉原千畝 スギハラチウネ 《ネタバレ》 
製作委員会の中に某旅行社が入っているが、劇中でもその会社の「客船乗務員」が出て来て、難民を助けたいと領事館に対して涙ながらに訴える場面があった。自社の美談として世界に広めたいのかも知れないが、子どもの顔など見てしまえば助けたいと思うのは人として当然のことであり、それ自体が特に美談という気はしない。仮に史実とすれば領事館の功績だろう。 自分としてはあからさまな美談にみずから進んで感動したい種類の人間ではないので、この映画も最初から斜に構えた姿勢で見ていたが、しかし話の本筋としては結構まともだったようである。主人公は「世界を変えたい」と言っていた割に具体的な目標があるわけではなく、基本的には大日本帝国の国益のために働いていたようだが、そのために持てる能力を活用したいという思いは結局満たされずに終わったことになる。しかし、いわば本国政府にまでPersona non grata扱いされたビザ発給の方が、結果的に希望の実現につながったのだと解される。 一人の人間が直接世界を変えるほど大きな仕事をするのが難しいのは当然で、それは優秀な外交官でも同じことだろう。しかし普通の人間が普通の人生の中で、普段の行動を通じて周りの人々に伝えることが多ければ、それが少しずつでも世界を変えていくことになる。一人の人間ができることなど結局その程度でしかないわけだが、そのような意志を持つこと自体は誰にでもできるのであり、逆にそういうレベルで考えるなら、主人公のやったことはまさに偉業ともいえる。それを改めて示したことが、単なる美談の紹介にとどまらないこの映画固有の価値と思われる。  ところでこの映画では、主人公が科学者を逃がしたのが結果的に「別の命を救った」という話になっていたが、さすがに日本人の立場として、広島・長崎の人々が殺されたのは世界平和のために有益だったなどというメッセージを許容するわけにはいかない。所詮アメリカ人の監督だから、アメリカの正義は世界の正義と言いたいのだろうと解していいのか。このことでロシア女が主人公を薄ら馬鹿のように憐れんでいたらしいのも腹立たしい。劇中の出来事が事実とは限らないにせよ、これで主人公のモデルになった実在の人物の名誉が損なわれないよう願うしかない。 なお主人公の妻がケーニヒスベルクの近郊で「日傘を差す女」を気取っていたのは意味不明だったが、こういうのは単なるお遊びと思っていいか。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-30 21:41:02)
805.  海難1890 《ネタバレ》 
まず前半では、海難と遊興の対比が意味不明だとか、悪人が突然転向して本当はいい人だったことになるといったマイナス要素が何かと多いが、そういうのも感動物語に紛れて見過ごしにしてしまう面がなくはない。一ついいと思ったのは、日本人は相手に頭を下げられると頭を下げ返さずにはいられない人々だというのを映像化していた場面だった。 しかし素朴な疑問として、両国の民に共通のメロディがスコットランド民謡(誰かさんと誰かさんが麦畑)だったというのは実話なのか。2013年の別の映画でも似たような場面があったが、それは当の相手国の歌であり(蛍の光/Auld Lang Syne)、かつ原歌詞がその場面に合っていたからこそ感動的だったのであって、トルコ人相手に同じことをしても違和感しかない。表層的な文化は違っても、人の心は間違いなく通じたというだけでいいのではないのか。 また劇中の海難救助が「村人たちにとって当たり前のことなんだ」というのは紀伊大島に限らずその通りと思うが、それなら助けられた当人を相手にして、これでもかこれでもかと恩を着せるようなことを言うものではない。トルコ人は船が難破すると生存者を殺して財物を奪う民だとでも言いたいのか。自分の善行を強調しすぎて相手を貶めている。  後半に関していえば、日本人も陸路で逃げればいいのでは、という素朴な疑問を解消しようともしないまま、トルコ人の一部を排除してまで日本人が割り込んだ形になっていたのは非常に抵抗感がある。助けられたのは事実であるから感謝しなければならないが、そもそも日本国政府とナショナルフラッグキャリアの尻拭いを他国にやらせておいて、それは恩返しだから当然だ、というような映画を作ったのは日本側として恥ずかしくないか。そんな根性でよくも前半では偉そうに説教などしたものだ。 加えて、緊急時に怒鳴るばかりで妻子を危険にさらすような男を、よりによって真っ先に助けるなどという展開は全く受容できない。男児が泣いていたのは父親が激高していたのが原因だろうが。自分だけ残って死ね馬鹿が。  以上、ネット動画で見ていればいいものをまともに映画化などするような話か、というのが正直な感想だった。点数は日本人とトルコ人の友情のために入れておく。ちなみに個人的には自室の壁にトルコの青い目玉の魔除けを3個も飾ったりして親トルコ派のつもりだが、最近は何かと物騒な国になってしまったのが悲しい。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-30 21:40:59)
806.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
90年代にVHSのレンタルで見たのが初見だが、その時点で印象に残ったのは近代科学への警鐘でもなく愛する人の幸せを願いながらの悲しい自己犠牲ということでもなく、ゴジラ襲来後に収容された重傷者や母親を呼んで泣く子ども、立ち働く白衣の天使とその映像に被さる女学生の歌声だった。これは先の大戦に直接関わる慟哭の思いと鎮魂の祈りの表現としか思われず、この映画だけは他のゴジラ映画と異質だというのが率直な感想だった。 また今の目で見直すと、放射線の測定機器を子どもに直接向ける光景が、5年前の現実の事故のことを思い出させて非常に痛々しい。放射能を帯びた怪獣との設定はその後も一応引き継がれていたわけだが、これが虚構のキャラクターの単なる一属性というだけでなく、いつの時代にも再現されうる現実の脅威を表現したものであったことが改めて思い知らされる。 そのほか単なる怪獣映画として見た場合にも、特撮映像は昔の映画ながら文句をいう気にならない迫力があり、巨大な生物に対して地べたを這う人間の恐怖感が表現されている。この映画では魚・牛・豚(と娘っ子)を食うことになっていたが、これはその後に引き継がれなかった設定と思われる。また出演者では何といっても河内桃子さんが可憐で可愛らしい(やたらに触るな、と宝田明氏に言いたい)。巡視船PM20こうず、PM21しきねの撮影協力もご苦労様でした。
[DVD(邦画)] 8点(2016-07-30 21:40:53)(良:1票)
807.  八つ墓村(1996) 《ネタバレ》 
場所の設定としては「岡山県真庭郡八つ墓村」とされている。1977年の前作では阿哲郡だったが、名前の上でのモデルと言われる「八束村」(やつかそん)が真庭郡だったことから、今作ではあえてこのようにしたのかも知れない。原作と前作では季節が夏だったが、今作は冬(から春?)の風景なのが特徴的で、景観面でも高所らしく冷涼で乾いた印象があった。現実の八束村(現・真庭市)にあるという蒜山高原の雰囲気でも出そうとしたのかと想像したが、実際のロケ地は全く違う場所だったらしい(屋敷と鍾乳洞以外は岡山県備前市の「八塔寺ふるさと村」が中心か)。  ストーリーとしては基本的に原作を踏襲しようとしていたようだが、前作では落としていた里村慎太郎を出し、これと美也子との関係を中心に据えたのが特徴である。今回の美也子は変に現代的すぎる気がするが、しかし結構いい具合に色気があり(嫌いでない)、美也子にしては意外に健気で純な思いをみせていた。 一方で、里村慎太郎と美也子をメインにしたこととの関連からか、かえって本来のヒロインである里村典子が登場する余地もできたらしく、これがこの映画の一つの売りとも取れる。何かと省略されがちな人物なので動向が注目されたが、最初から馬鹿を装っていただけのように見えながら馬鹿を装う理由が不明であり、終盤まで辰弥も単なる馬鹿だと思っていた節がある。最後に至ってやっとまともに話が通じる相手だということが明らかになっていたが、この間にどういう経過で相思相愛になったのかもわからない。年上の男女の関係が破綻した後に、若い世代の希望を示すものとして位置づけてはいたのだろうが、実際は極めて不徹底に終わっていた。 また春代さんも外見的には艶めかしい感じではあるが、個人的に好みの女優でないのと、辰弥への思いの表現が唐突で半端な存在になっていたのは残念なことである。  以上、全体的にさらりとした印象だが若干気の抜けた感じもあり、またこういうお話だとすれば、タタリとか双子婆とか洞窟(ただの地下室?)とか32人殺しとかいう濃い要素が出て来る必然性もない気がする。それがなければ映画にならないのかも知れないが。
[DVD(邦画)] 4点(2016-07-25 19:52:27)
808.  丑三つの村 《ネタバレ》 
個人的に思い入れのある「八つ墓村」(1977)の関連映画として見たが、そのほか出演女優の大胆な演技が見られるというのも大きな動機である。しかし当然ながら主人公には全く共感できず、この男のドラマとしては見るところがない。 劇中では「天才と○チガイは紙一重」という発言が出ていたが、少なくとも天才には見えないのでこの言葉が当たっているとは思えない。主人公が徴兵検査から帰ると村人の態度が一変していたのは情報伝播が早すぎて不自然に見えたが、これが主人公の被害妄想による主観映像だったとすれば、これから精神状態が悪化していく最初の兆候だったとも取れる。何かと不安定な逢魔が時に“不要な人間は山に埋める”などという話を聞いたため、殺される殺されるで頭が一杯になってしまったのはまことに気の毒なことである。 また決行に当たり、女が来るのを期待して手紙を出すというのもみっともない話だが、終盤の別れの場面なども、もしかするとこれで本人としてはヒロイックな(格好いい)つもりだったのかも知れない。とにかく若年者のこっ恥ずかしい妄想を大真面目に映画化したようで、同感というより単に痛々しい。 最後の山上の場面では、近くの山に送電線の鉄塔が建っていたり眼下の集落の道路がアスファルト舗装のように見えたりで、まるで主人公が突然時間を飛び越えて現代に出現したような変な印象があった。ここで主人公がカメラ目線で皆様へ別れを言ったりするので、これは現代の観客に対して直接何かを訴えかけているのだろうとは思ったが、自分としては全く聞く気がなく、早く映画を終わりにしろと思っただけだった。 そのようなことで、決して内容のない映画ではないとは思うが、個人的には出演女優それぞれの持ち味を賞する以上のものにはならなかった。点数は女優陣に入れておく。
[DVD(邦画)] 3点(2016-07-25 19:52:24)
809.  八つ墓村(1977) 《ネタバレ》 
最初にこれを見た時点ではまだ若かったので、劇中で村の有力者が婦女を拉致監禁して凌辱するのを誰も咎められないのが当時としては非常に衝撃的だった。そのせいで、農村社会とはこういうもの、と当時は思い込んでしまっていたが、長じるにつれて農村社会の全部がこんなわけはないと思うようにはなっている。それでも最初と最後に出る近代的な空港と、舞台になっている山村の間にある断絶感が、かえって日本にまだこういう所があるかも知れないという気にさせるところがある。 またテーマ曲もこの映画の印象づくりに大きく貢献している。個人的にはこの曲から、表面的には平穏に見える風景も実は暗く抑圧された感情と深い悲しみを秘めており、それを無表情の奥に隠しながら黙々と生きる人々の姿がイメージされた。若い頃の自分が農村社会に偏見まで抱いたのは、半分はこのテーマ曲のせいである。  その他の点としては女性の登場人物が印象深い。まず姉の春代さんがきっちりした清楚な女性で、しっかり者のようだが不安を抱えて眠れない夜が続いていたのではないかと案じてしまう。この人の最後は大変可哀想で、主人公も姉として慕うようになっていたらしいのが切ない。また当然ながら鶴子の境遇にも胸が痛むものがあり、子を慈しむ母親の表情を見せながら同時に可愛らしくも見えるのが悲しい。加えて最初の方に出る和江という人(美也子の妹)も、端役ながら個人的に好きな女優(夏純子さん)なので見逃せない。顔はよく見えないが、はっきりしてよく通る声が心地いい。 一方で森美也子に関しては、まずは序盤でスカートが風でめくれるのが気にならなくもないわけだが、そういう色仕掛けに騙されてはならないという警戒感をこの段階で抱かせる怪しさがある。終盤の洞窟内でいきなり「あたしたち」扱いされるのは気色悪く、実際に言われたら思い切り引くだろうと見るたびに思う。  だいたい以上のような印象から(あまり説得力がないかも知れないが)個人的には永遠の名画の扱いになっている。ちなみに全般的に、口から液体を吐くのが汚らしい映画である。 なお余談として、最初の落武者の場面で遠方に見える高い山が何なのかずっと気になっていたが、DVD特典を見ると伯耆大山(鳥取県、1,729m)を南側から見た風景だったことがわかって感激した。こういうのも真面目に見ておくと勉強になる。
[DVD(邦画)] 8点(2016-07-25 19:52:21)(良:1票)
810.  鬼談百景 《ネタバレ》 
作家の小野不由美による同名の実話怪談集(全99話)から、10話を選んで映画化したオムニバスである。6人の監督が脚本を含めて担当している。 【追い越し】 原話の不思議さが不足、無駄話が多い。 【影男】 音そのものが神経に響く。異音が付随しているのも嫌な感じ。窓から見えた空も意味不明だが怖い。最初は睡眠時無呼吸症候群かとも思えるがそうともいえなくなって戦慄。 【尾けてくる】 作業着の男がいかにもそれらしい顔。女子高生~女子大生の見開いた目はいいが若干くどい。ラストの街角遠望は好きだ(渋谷二丁目、青山学院近く)。 【一緒に見ていた】 原話にない背景事情を大きく加えた形。一回やっただけというより人格低劣で因果応報。倒れた男子生徒、ぶつかった女子生徒のいた風景がいい。 【赤い女】 女子高生絶叫ホラー。怖いことは怖いが階段をドタバタ駆け上がるのはなぜなのか(笑)。登場人物が高校生にしては変に大人っぽく、加弥乃さんは可愛らしいがヒガリノ(比嘉梨乃)さんはひときわ色気がある。 【空きチャンネル】 普通。特殊効果はやりすぎだが一瞬怖い。 【どこの子】 小学生のくせに妙にエロい。取り残されるシチュエーションは怖いが方言の男には笑わされる。 【続きをしよう】 子役がいい感じ。出演は9人だが顔が見えるのは8人、声がするときに誰の口も動いていない。流血の連続で児童虐待のようだが、走り回る子どもらを見ていると、この監督は本当に子ども好きなのだろうと思った。 【どろぼう】 難解で意味深。果実の隠喩と時間の経過、スカートの下にジャージをはいていないなど。何にせよ流産監督らしいテーマと思われる。女子高生が美形なのはいいとして、子沢山の母親がこういう顔だとは原作からは想像していなかった。 【密閉】 原話の投稿者が隠していた真相はこれだ、という感じの話。主演女優の顔が好きだ。  第1話を除く各話が「こんな手紙が届いた」で始まるのは、夏目漱石「夢十夜」の趣向に倣ったものと思われる。基本的には全て原話の筋立てに沿っているが、映画的なイメージを膨らませたり独自の解釈を施したものもあり、必ずしも実話とはいえないものが多いと思われる。しかし本物の怖さを出したもののほか怖がりながら笑えるもの、ストーリーとして面白いなど多様であり、映像的にもいい出来のように見える。これまで見たオムニバスホラーの中では最も良質だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-16 22:30:45)
811.  たまこちゃんとコックボー 《ネタバレ》 
一応説明しておくと、「たまこちゃんとコックボー」とは1本1分で多数制作されたアニメコンテンツのシリーズで、主に広島県と秋田県のローカルTVで天気予報のバックなどに流れているものらしい。この映画はいわばその劇場版で、舞台もTV放送のエリアに合わせて広島県(広島市)と秋田県(男鹿市?)に設定されている。アニメと実写のパートが混在しているが、アニメのキャラクターが実写パートにも登場するのでアニメの実写化のようなところもある。 映画の主演はアイドルグループ「私立恵比寿中学」(エビ中)所属の「廣田あいか」(ぁぃぁぃ)という人である。もとのアニメシリーズでは「たまこちゃん」「コックボー」に次ぐ第3のキャラクター「モグP」の声を担当しており、鼻にかかった甲高い声は演技かと思ったら普段からのことらしい。映画では「広島市立海老巣中学校」の3年生であり、ほかに実写パートで出るたまこちゃんもこの人の二役だが、別人の子役がたまこちゃんを演じる場面もあって、この子役の方がキャラクター本来の想定年齢に近いものと思われる。  映画の内容は主人公が現実世界とアニメの世界を行き来するファンタジーになっており、アニメの世界はもちろん実写映像の方も色彩感豊かで楽しい。しかし主人公は幼児ではなく高校受験を控えた中学生であるから、テーマとしては“現実逃避の克服”ということにならざるを得ないわけで、序盤からしてすでに破綻の予兆が見えている。最後も結構シビアで切ない結末で、チョコレートがなぜ甘いかの答えは少し泣かせるものがあったが、しかしラストで主題歌が流れて題名が表示される箇所はけっこう感動的だった。この主題歌自体もなかなかいい曲だったかもしれない。 そういうことでおおむね好意的ではあるが、児童生徒はともかく社会人としては遵法精神というものが身についているので、登場人物がトラックの荷台に侵入して勝手放題やらかす展開はさすがに見過ごしにできない。いくらファンタジーでも現実世界が舞台であるからには、まともな大人が見て反発を感じる要素は入れないでもらいたかった。ここは残念なところである。 なお映像面で目を引いたのは秋田新幹線の高速走行の迫力だった。何でここに力が入っているのか不明だが。また細かいところでは、夕食時に主人公がニンジン?を全部父親に食わせていたのが微妙に可笑しい。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-16 13:02:24)(良:1票)
812.  ゆるせない、逢いたい 《ネタバレ》 
撮影場所は茨城県筑西市とのことで、馴染みのない地名と思ったら要は以前の下館市ほか3町が合併したところらしい。筑波山が大きく見えていたのが印象に残る。 物語としては「デートレイプ」の問題を扱っており、その中に主人公の精神的自立の過程を大きくからめた形になっている。自分としては年齢性別が違うため直接共感できるわけでもなかったが、主人公の表情や言動を通じて、劇中事件がもたらした複雑な感情の動きが表現されているようには見えた。ラストの決意表明は若干唐突な感じもあったが、それを含めて前を向いて生きようとする主人公を素直に応援したくなる。「対話」の場面で見せた賢明さを未来に生かしてもらいたい。 また主人公の母親に関しては、過干渉というのはその通りだろうが、母親としての思いを加害者に向けてまともにぶつけた場面はよかった(これは娘のいる所ではいえないだろう)。劇中で共感を寄せられそうな人物といえば実際問題としてこの母親だけだったが、父親が生きていれば父親の立場で見ていたかも知れない。  ところでこの話をラブストーリーとして見た場合、どう考えてもハッピーエンドなど望めない設定になっている。これから二人の進路が重なっていく見通しは基本的になく、そもそも生育環境が違い過ぎるため、最初から忌避すべき相手だというのが正しい判断である(つまりお父さんとしては賛成できない、という立場)。 後見人はご苦労と思わなくもないが、他人の立場からすれば本人の身の上など関係ないのであって、現に何をやらかしたか、これから何をやらかすか、ということだけが関心事である。この男の顔つき(目つき)など見ていると、以前に成功体験があったので今回も平気でやらかしたのだろうとしか思われず、こんな男に情けをかけるのはかえって危険という気さえする。ちなみに加害者側の弁護士というのも胡散臭い。  以上のようなことで、恐らく制作側が意図したことの半分程度しか受容できていないのではないかと思うが、全体的には極めて真摯な態度で誠実に、かつ美的に作られた映画に思われた。細かい点ではカエルに関する友人とのやりとりが和む。 なお主演の吉倉あおいという人は、他の映画で見たときはきついタイプの人かと思ったが、この映画では普通に弱さと強さを持った(可愛いところもある)高校生になっていて好印象だった。
[DVD(邦画)] 7点(2016-07-09 09:30:32)
813.  転校生(2012) 《ネタバレ》 
20分の短編映画だが、各地の映画祭で受賞したりして好評らしい。題名があまりに単純で1982年の同名邦画との区別がつかないが、これは当初「○○○の転校生」(一部伏字)としていたところ、ネタバレなのでやめた方がいいとの助言があってこうなったとのことである。映像ソフトとしては同じ監督(金井純一)の長編映画「ゆるせない、逢いたい」(2013)のDVD特典として収録されている。 出演者のうち役者は森川葵(川野容子)、増田璃子(狭山リサ)、藤原倫己(笹島/クラスの担任)の3人だけで、あとは「筑西市立明野中学校のみなさん」のエキストラ協力である(台詞のある生徒もいる)。撮影場所は前記の「ゆるせない、逢いたい」と同じ茨城県筑西市で、筑波山も映っている。  内容に関しては、これから長く続いていく人生の中で、束の間ながら確実に人と心を通じあわせた一瞬のお話である。ほのぼの笑ってしみじみ泣かせる佳作であり、バックに流れる「パッヘルベルのカノン」も、選曲としてはありきたりだが心に染みるのは間違いない。 物語は「ついてくんなよ」の繰り返しで構成されているが、登場人物それぞれの「ついてくんなよ」は別の意味になっている。最後の「ついてくんなよ」だけは少し新しい意味とも取れるが、ここで人間関係を断ち切ろうとしている点で発言者の姿勢は一貫していたようでもある。それでも言外に込めた思いは見た通りなのだろうし、最後も実は何かがついてきて、この人の後ろ髪をひいていたのかも知れない。 なお主演の森川葵という人はこの時点で17歳くらいだろうが、とぼけた感じの馴れ馴れしさに何ともいえない可笑しみを感じる。森川さんのジュリエットが見たかった。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-09 09:30:30)
814.  ファンタズム(2014)<OV> 《ネタバレ》 
自主映画ということだろうが、各地の映画祭に出して評判がよかったらしい。同名の洋画(1979年製作、以降シリーズ化)との関係があるかどうかはわからない。 これを単なるホラー映画として見た場合、通常の和風ホラーの特徴を備えたあまり独創性のない映画に見える(大して怖くもない)。家の中に何か出るとか、最後に現場へ突撃するといった展開は基本的に既存パターンに乗っかった感じがある。また子どもの絵で区切りを入れるのは悪くないが「呪怨」の章立て方法を真似たようでもあり、ビデオ映像の顔が歪むのもありきたりである。ただ危機が迫った場面でドラのような音が鳴り渡るといったところは独特な表現だったかも知れない。 また娘役の末永みゆという人は「日テレジェニック2013グランプリ」とのことで、それなりにアイドルホラーとしての性質も備えていたりする。その面からすれば「あみちゃん」の章が見どころだろうが、これもありがちな怖がらせに終わっていたようで、この部分が最も普通の低予算C級ホラーのように見えた。  一方この映画で特徴的だったのは、怖さというより家族の心の問題を根幹に据えたように感じられることである。個別の場面としては息子の死去後の、平穏に見えながらも爆発寸前のような夕食場面には緊張感を覚えた。そのあと最初の怖い場面でも、心霊現象の予兆というより精神面の危機が強調されており、こういうところにこの映画としての方向性が示されていたように思われる。 また特に印象的だったのは、妻(母)が降霊術を必要とした理由がわかったと降霊術師が告げて以降「理解できなくてもやれることはあります」までの場面である。ここは単純に夫(父)の知的能力の限界を示したようでもあるが(幅が狭く硬直的)、より一般化して考えると、理性的判断と心の問題は互いに排他的なものでなく別系統で併存すべきものであって、深刻な齟齬が生じた場合は理性の方が心の問題に寄り添う必要がある、というように受け取れた。 劇中では、最初は気丈そうに見えた妻(母)が表面では理性的な態度を崩さないながらも、内心とのギャップに耐えかねて日常世界から外れていくのが痛々しく見えた。ラストは「予言」(2004)のようでもあるが、自分としては全体的に「仄暗い水の底から」(2001)を想起する。似ているところがあるから悪いというわけではなく、同種の感慨を覚えるいい映画だった。
[DVD(邦画)] 6点(2016-07-09 09:30:28)(良:1票)
815.  -×- (マイナス・カケル・マイナス) 《ネタバレ》 
とりあえず密度の高いものをじっくり見せられた気はするが、娯楽気分で見るのは厳しい。 人の神経を逆撫でする要素を各所に多数入れてあり、また人物の会話も素直につながらず、何かと棘が刺さるようで苛立ちが募る。終盤に至ってもまだ緊張を強いられる気がする一方、登場人物が社会通念を無視した感情表現をするのが気に障って安心して見ていられない(公共交通機関内で大声で歌うなど)。個人的感覚としては劇中に和む場面が全くなかったが、そのように延々と精神的負荷をかけられた後で、最後に中学生がにっこり笑った(+金魚を入れた、襟を洗った、チョコレートが落ちた、アパート前にタクシーを止めた)くらいでは心の収支がプラスに転じない。登場人物に心底共感できる観客なら別かも知れないが、自分としては見るのがつらい感じの映画だった。 またこの映画で、相互に関係しない物語をあえて一緒にしてみせたことにはあまり積極的な意義が感じられない。自分としては最後にどうつながるのかを期待していたわけだが、その期待が満足させられなかったのも全体としてマイナス方向に作用している。自分の感覚でいえば、人はそれぞれ事情を抱えているので世界情勢とか他人の動向など視野に入らなくても仕方ないだろうと思うわけだが、まあできれば世界の広がりに関する想像力くらいはみな持っていた方がいいという気はしなくもない。  ところで女子中学生役の寿美菜子という人は、現時点では声優として有名のようだが(自分の知る範囲では「けいおん!」の琴吹紬役)、この映画を撮影したのは2007年とのことで、その時点ではまだ15~16歳だったようである。劇中ずっと不穏な表情だったこの人が終盤では普通に可愛らしく見えたのは悪くなかった。またその友人役の大島正華という人も、年齢(14歳くらい?)の割に面構えに迫力がある。そのほか、近年は怖い役ばかりやっている感じの長宗我部陽子さんが、この映画では普通に(というか非常に)色気と可愛気のある女性役なのは結構なことだった。それでも少し怖い感じだが。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-09 09:30:25)
816.  賃走談 2号車<OV> 《ネタバレ》 
「賃走談 1号車」の続きであり、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「2」である。「1」と同じく古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。  【帰ってきた女】 視聴環境によるかも知れないが画面が暗すぎる(女優の顔がよく見えないではないか)。また男の口調が気に入らない(3人とも)。話の基本構造としては単純だが、しかし登場人物の立場によって出来事の性質が変わるのは面白い。[4] 【チイちゃん】 雨の日の不吉感がある。人物を暗く見せたり明るく見せたりして混乱させるのが面白い。印象が二転三転する。[4] 【くりかえす最後の記憶】 題名だけでどういう話かわかってしまい、また男の行動で何が起こったのか容易に想像できる。そもそも男の動機が不明なのは困ったことだが、最大の問題点はタクシーがほとんど関係ないことである。なお管理人のジョークはオヤジじみているが、年長者が若年者に気配りしている感じが出ており、彼我の年齢差を超えてかろうじて同調してもらえそうなあたりを狙っているのがいい。[4] 【怪談タクシー】 悪くない題名である。冷静な運転手と感情豊かな客の対比は面白い。愛すべき女性像に好感が持たれるが、最後は可哀想で切なくなる。2006年でさえなく2014年だったことの衝撃が印象的だった。ただ最後の駄目押しは聞かなくてもよかった。別の締め方がなかったものか。[7]  前作と同じくスターダストプロモーションの所属タレントが多く出演しているが、今回は女優の方に少し重心が移った感じで、タクシー運転手が主人公とも限らなくなっている。基本的に若手女優はスターダストの所属だが、「チイちゃん」だけは女優といっても子役(2005年生まれ)である。 前作と同じ企画の一部であるから水準としては変わりなく、怖いものではないが映像作品としての印象は悪くない。最底辺の安物ホラー群の中にも、結構見られるものがあるのだなとこれで少し見直した。特に「怪談タクシー」は個人的に好きな女優が出ていることもあって印象深いエピソードである。
[DVD(邦画)] 5点(2016-07-03 19:06:38)
817.  賃走談 1号車<OV> 《ネタバレ》 
「タクシー怪談に焦点を絞った」ホラーとのことで、全8話のオムニバスを4話ずつ「1」「2」に分けたうちの「1」である。この世界では名の知られた?古賀奏一郎と吉川久岳という人物が脚本・監督・編集をそれぞれ2話ずつ担当している。[ ]は点数。  【手形】 夜勤明けの風景が爽やかだが音楽が沈痛。カーテンの色に溶け込んでいた脚は誰だったのか。心霊現象が中心ではなく「ほんとに怖いのは人間」的な話だったのは残念だが、逃げ出そうとした女性客と死にそうな女性客はなかなか真に迫っていた。[4] 【犬】 平凡な話かと思ったら最後に意表をつかれた。それを含めてありきたりな展開と評されるかも知れないが、あえて先読みしようとせずにボーッと見ている限りは少し驚かされる。[4] 【歪み】 運転手は学習能力がないのかと思ったが、どうやっても同じ結果になるということだったらしい。ラストはよくわからなかったが、抜本的解決を図ろうとしたらこうなったということか。女性客(演・相葉香凛)はほんわか系だが、最後の一言に裏があるのではと勘繰ってしまう。[4] 【11号車】 第1話の「手形」を別の監督が引き継いで後日談を作った形になっている。「手形」の方は「ほんとに怖いのは人間」的性格が強かったが、それは発端がそうだったというだけで、ここに至って本格的な心霊現象に移行したらしい。そうすると逆にこれが怪談の本体であって「手形」が前日談とも捉えられる。窓に映る顔の怖さが少し目を引いたが、終盤の視覚効果がいかにも安い感じで、またグロいのも不要に思われる。 なお見栄晴も年を取ったものだと思うが、同じように自分も年を取ったわけである。[3]  企画・製作が株式会社SDPであり、同社が関わった他のオムニバスホラーと同様、スターダストプロモーションの所属タレントを多く出演させている。他のものは女優の魅力で見せるものが多い気がするが、今回のこれは全てタクシー運転手が主人公になっており、男に重点が置かれた印象が強い。 題名は“珍走団”から来ていると思われるのでふざけた感じだが、映像作品としての印象は悪くなく、話としても少し気の利いた作りになっている。どうせ最底辺の安物ホラーだろうと思っていたら意外に悪くなかったというのが実感だった。
[DVD(邦画)] 4点(2016-07-03 19:06:23)
818.  怖譚 コワタン<OV> 《ネタバレ》 
「最恐の女子校生ホラー」とのことで、全5話のオムニバスである。[ ]は点数。 【集金人】 冒頭のナレーションで回想譚とわかり、本人は無事だったと確認されるので安心してしまう。“あとで聞いたらこうだった”というオチまでついているのは、実話というより古風な読者投稿の雰囲気を出しているともいえる。暗闇の顔が不気味。[3] 【異界からの招待状】 怖いことは怖いが心霊写真の怖さである。主人公の行動が不自然で、ベランダに出た時点で右側が気にならないはずがない。[3] 【理想のトモダチ】 時間が最長。子役時代からキャリアの長い役者を出してエピソードとしての充実を図ったのかも知れないが、出来事自体に新味がなく、ただの女子高生?が超自然的能力を発揮して無理矢理な流血沙汰に至る話を素直に受け入れるわけにはいかない。主人公が錯乱した場面で、近くの仮設ゲートが風で揺れていたのは巧妙な表現かと思ったが、これは実際に風の強い日に撮影したようでどれだけ意図したものか不明。童顔の殺人者に+1点。[3] 【ユウタイリダツ】 時間が最短。美少女がパンツを下ろして便器に腰かけているのは大胆。怖いというよりほのぼの系。[4] 【覗き魔】 個人的好みとしてはこれの主役の人(青山奈桜)が一番かわいく見える。見た目は可愛いが近所のオバサンと比べると明らかに長身で(165.5cm)、最近の日本人は体格がよくなったものだという感慨がある。この人に+1点。[4] 【ベッドの下に…】 大変よろしくない特徴を備えた最低ホラーである。題名だけでわかる古いネタを使っているが、原話を改変した結果として何の捻りもないただの殺人になってしまっている。これで警察の追及を受けなくて済むと思っているのかどうか。意外性を優先して現実味を簡単に犠牲にしたように見えるが、超常現象に頼らないつもりならもう少しありそうな話にしてもらいたい。ただし「みんな言ってるよ」が2回出たのは少しよかった。[1]  SDPが製作し、スターダストプロモーションの所属タレントが多く出演するオムニバスホラーで、今回は若手女優に重点を置いたらしい。 女子高生から取材した実話をもとにしたとのことだが、どこまで実話なのか怪しい話ばかりである。オーソドックスな怖さを重視した面もあるが、外と思ったら中にいた、とか、どこかと思ったらここだった、といったありがちなパターンで済ませたところもあり、全体的に納得できる水準ではない。
[DVD(邦画)] 3点(2016-07-03 18:53:27)
819.  不良少女 魔子 《ネタバレ》 
世代限定の映画のような気もするが、とりあえず思ったことを書かせていただく。 まず題名の「少女」が意味不明である。主人公をはじめとしてみな外見的にはオトナに見えるわけだが、あえて「少女」なのは精神的に未成熟だということか。主人公に関していえば、自由に生きたいのに邪魔ばかり多い、と当人は思っていたかも知れないが、現実にはどこまでも優しい兄の庇護があってこそのやりたい放題だったわけである。誰かに守られていながら反抗するという甘えの構造は、劇中では兄だが親に置き換えても同じだろう。これではただの駄々っ子である。 またこの映画では、主人公が盾突く相手が国家権力などではなく市井の暴力組織であり、国家が諸悪の根源だといった責任転嫁ができない設定になっている。劇中では社会の表も裏も関係なく、どんな世界にもその場その場の仁義がある、という極めて当たり前のことを若年者に突きつけていたように見えたが、それを主人公は全く認識できていなかったようで、そういう点でも人になり切れない少女ということだろう。 もしかすると当時の感覚としては、単純に若者の反抗や女性の暴力を小気味いいものとして捉えるとか、あるいは劇中人物の閉塞感と苛立ちを自分のこととして共感するような見方が普通だったのかも知れないが、世代も年代も違う自分としてはそれをそのまま肯定することはできない。普通に見る限り、どこまでも好き勝手に生きようとして周囲を巻き込んで破滅してしまい、結果的に“魔”の字にふさわしい役回りになった少女の悲しい愚かさを描いた映画に思われる。 主人公にしても、一途に妹を思う兄の苦しい立場がわからなかったはずはないのであって、劇中で自分が唯一共感できるのはこの兄だった。  なお主演の夏純子さんは当時日活の専属で、これ以前からスケ番映画の主役をこなしてきていたが、この映画の後に日活がロマンポルノ路線に転換したため松竹に移籍したとのことである。その後もしばらく各種映画に出演していたが(脇役か端役)、個人的にはこの映画の直後の特撮TV番組「シルバー仮面」(1971)でのレギュラー出演が印象深い。日活でスケ番をやっていた頃は野性的と見られていたようだが、自分としては唇を引き締めてきりっとした顔に見える方が好きだ(惚れている)。
[DVD(邦画)] 5点(2016-06-28 22:17:12)
820.  天使の欲望(2013)<OV> 《ネタバレ》 
宣伝写真の印象が強烈だったので見たが、ホラーではなく真面目な映画である。映画美学校フィクション・コース第13期高等科助成金作品とのことで、商業映画ではないだろうがDVD化はされており、ネット上では評価すべき点を挙げたレビューもあって納得させられる。1979年の同名の邦画との関係は不明だが、全く無関係ということでもないらしい。 全体として昭和のスケ番映画を意識して作られているとのことだったが、そのように聞くと題名の字体や最初にクレジットを出す構成、また現代にしては違和感のある台詞や棒読みのような口調までがそういう意図だったように思われて来る。棒読みは明らかに不自然だが、そのうち耳に馴染んで来て、「甘ったれるんじゃないよ」のあたりまで来ると心地よく聞こえるようになる。この場面は発声がいいからかも知れない。  物語の内容に関しては、まず女性の心情に関わることは自分にはわからない…ということは、この映画のほとんどの部分がわからない(監督の説明は理解できる)。ほか男に関していうと幼馴染の性格付けが非常に変で、制作側の意図に合わせて都合のいい行動をするキャラクターを作っただけに見える。だいたいこういう奴が純な心で思いを寄せたくなるような外見を主人公はしていない。また最初に主人公が帰って来た動機がどうも不明瞭に感じられ、これと実際に行われたこととの関係も明確でなく、そのため納得のいく全体構成ができていなかったように思われる。 結果として、この映画が好きになれる要素がなかったのは残念だが、監督の名前は憶えた(いそがい、という読み方をするのは別人の例で知っていた)ので次に期待したい。
[DVD(邦画)] 3点(2016-06-28 22:14:02)
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